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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-23
(45)【発行日】2022-03-31
(54)【発明の名称】排出部診断システム
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/127 20060101AFI20220324BHJP
   A01F 12/46 20060101ALI20220324BHJP
   A01F 12/60 20060101ALI20220324BHJP
【FI】
A01D41/127
A01D41/127 120
A01F12/46
A01F12/60
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018236900
(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2020096566
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】小山 実
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-131528(JP,A)
【文献】特開2013-66402(JP,A)
【文献】実開昭60-27625(JP,U)
【文献】特許第4714456(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/127
A01F 12/46
A01F 12/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒貯留部に貯留された穀粒を外部に排出する排出部を診断する排出部診断システムであって、
前記排出部による所定量の前記穀粒の排出に要した排出時間と、当該所定量の前記穀粒の排出に要する標準排出時間と、に基づいて、前記排出部のメンテナンスの要否を判定することを特徴とする排出部診断システム。
【請求項2】
請求項1に記載の排出部診断システムであって、
前記穀粒貯留部には、当該穀粒貯留部内に形成される穀粒溜まりの上面の高さを段階的に検出するための複数の穀粒検出部が設けられており、
前記複数の穀粒検出部のうち、一の穀粒検出部が前記穀粒を検出しなくなってから、前記一の穀粒検出部より下側に設けられた他の穀粒検出部が前記穀粒を検出しなくなるまでに要した時間を、前記排出時間とすることを特徴とする排出部診断システム。
【請求項3】
請求項2に記載の排出部診断システムであって、
前記複数の穀粒検出部は、
前記穀粒貯留部の内壁に設けられた第1穀粒検出部と、
前記第1穀粒検出部より上側の前記穀粒貯留部の前記内壁に設けられた第2穀粒検出部と、
前記第2穀粒検出部より上側の前記穀粒貯留部の前記内壁に設けられた第3穀粒検出部と、
前記第3穀粒検出部より上側の前記穀粒貯留部の前記内壁に設けられた第4穀粒検出部と、
を含み、
前記第3穀粒検出部が前記穀粒を検出しなくなってから、前記第2穀粒検出部が前記穀粒を検出しなくなるまでに要した時間を、前記排出時間とすることを特徴とする排出部診断システム。
【請求項4】
請求項1に記載の排出部診断システムであって、
前記穀粒貯留部には、当該穀粒貯留部に貯留された前記穀粒の量を検出する貯留量検出部が設けられており、
前記貯留量検出部により量が検出された前記穀粒の少なくとも一部を排出するのに要した時間を前記排出時間とし、
前記貯留量検出部の検出結果に基づいて前記標準排出時間を算出することを特徴とする排出部診断システム。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の排出部診断システムであって、
前記標準排出時間は、エンジン回転数に応じて算出されることを特徴とする排出部診断システム。
【請求項6】
請求項1から4までの何れか一項に記載の排出部診断システムであって、
前記排出部は、スクリューを回転させて穀粒を搬送するオーガを備え、
前記標準排出時間は、オーガ回転数に応じて算出されることを特徴とする排出部診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒貯留部に貯留された穀粒を外部に排出する排出部を診断する診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、穀稈を刈り取って脱穀する収穫機としてのコンバインが知られている。特許文献1は、この種のコンバイン等の作業車両における制御装置を開示する。
【0003】
特許文献1の制御装置は、記憶手段としてのEPROMを備える。EPROMには、作業車両に備わる機器や部品毎のメンテナンス時期が記憶される。制御装置は、稼動積算時間が各機器や部品毎に前記メンテナンス時期に達すると、電源投入時、液晶パネルにメンテナンスの実施を促す表示を行うように制御する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4102269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンバインは、穀粒排出オーガ等の装置から構成された排出部を備えるが、この排出部も、使用に伴って摩耗する。排出部の摩耗の進行は、搬送する穀粒に含まれる水分の多少(水分量)等によって異なる。上記特許文献1における単に稼動積算時間に基づいてメンテナンスの要否を判定する構成は、排出部の実際の摩耗程度を反映できず、メンテナンスの時期を正確に表示できないという点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、穀粒の排出部に関して、現実の摩耗の程度を反映でき、メンテナンス時期を正確に診断できる排出部診断システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の排出部診断システムが提供される。即ち、この排出部診断システムは、コンバインの穀粒貯留部に貯留された穀粒を外部に排出する排出部を診断する。当該排出部診断システムは、前記排出部による所定量の前記穀粒の排出に要した排出時間と、当該所定量の前記穀粒の排出に要する標準排出時間と、に基づいて、前記排出部のメンテナンスの要否を判定する。
【0009】
これにより、排出部の現実の摩耗の程度を反映させて、排出部のメンテナンス時期の判定を高精度で行うことができる。
【0010】
前記の排出部診断システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記穀粒貯留部には、当該穀粒貯留部内に形成される穀粒溜まりの上面の高さを段階的に検出するための複数の穀粒検出部が設けられている。前記排出部診断システムは、前記複数の穀粒検出部のうち、一の穀粒検出部が前記穀粒を検出しなくなってから、前記一の穀粒検出部より下側に設けられた他の穀粒検出部が前記穀粒を検出しなくなるまでに要した時間を、前記排出時間とする。
【0011】
これにより、排出時間を容易かつ正確に求めることができる。
【0012】
前記の排出部診断システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記複数の穀粒検出部は、第1穀粒検出部と、第2穀粒検出部と、第3穀粒検出部と、第4穀粒検出部と、を含む。前記第1穀粒検出部は、前記穀粒貯留部の内壁に設けられる。前記第2穀粒検出部は、前記第1穀粒検出部より上側の前記穀粒貯留部の前記内壁に設けられる。前記第3穀粒検出部は、前記第2穀粒検出部より上側の前記穀粒貯留部の前記内壁に設けられる。前記第4穀粒検出部は、前記第3穀粒検出部より上側の前記穀粒貯留部の前記内壁に設けられる。前記排出部診断システムは、前記第3穀粒検出部が前記穀粒を検出しなくなってから、前記第2穀粒検出部が前記穀粒を検出しなくなるまでに要した時間を、前記排出時間とする。
【0013】
これにより、穀粒排出時間を求める機会を多く確保することができる。また、穀粒排出時間を正確に求めることができる。
【0014】
前記の排出部診断システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記穀粒貯留部には、貯留量検出部が設けられている。前記貯留量検出部は、当該穀粒貯留部に貯留された前記穀粒の量を検出する。この排出部診断システムは、前記貯留量検出部により量が検出された前記穀粒の少なくとも一部を排出するのに要した時間を前記排出時間とする。当該排出部診断システムは、前記貯留量検出部の検出結果に基づいて前記標準排出時間を算出する。
【0015】
これにより、他の検出部を要せずに、排出時間及び設定標準排出時間を正確に求めることができる。
【0016】
前記の排出部診断システムにおいては、前記標準排出時間は、エンジン回転数に応じて算出されることが好ましい。
【0017】
これにより、エンジン回転数による穀粒の排出速度への影響を考慮でき、標準排出時間を一層正確に算出することができる。
【0018】
前記の排出部診断システムにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記排出部は、スクリューを回転させて穀粒を搬送するオーガを備える。前記標準排出時間は、オーガ回転数に応じて算出される。
【0019】
これにより、オーガ回転数による穀粒の排出速度への影響を考慮でき、標準排出時間を一層正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示す側面図。
図2】コンバインの動力伝達のための構成を示すスケルトン図。
図3】グレンタンクの構成を示す正面断面図。
図4】コンバインの電気的構成の一部を示すブロック図。
図5】穀粒排出時間の取得制御の例を示すフローチャート。
図6】変形例の排出オーガ診断システムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るコンバイン100の全体的な構成を示す側面図である。図2は、コンバイン100の動力伝達のための構成を示すスケルトン図である。図3は、グレンタンク5の構成を示す正面断面図である。図4は、コンバイン100の電気的構成の一部を示すブロック図である。
【0022】
以下の説明で「前」とは、コンバイン100が刈取り時に進行する方向を意味し、「後」とは、その反対の方向を意味する。また、「左」及び「右」とは、前進するコンバイン100を基準とした左及び右を意味する。
【0023】
図1等に示すように、第1実施形態のコンバイン100は、本体部1と、クローラ装置2と、刈取装置3と、脱穀装置4と、選別装置7と、グレンタンク(穀粒貯留部)5と、穀粒排出装置6と、運転部16と、エンジン20と、を備える。
【0024】
本体部1は、コンバイン100の駆動源であるエンジン20を支持する。本体部1は、クローラ装置2によって圃場を走行することができる。
【0025】
クローラ装置2は、本体部1の下部に設けられている。クローラ装置2は、無端状のクローラを備えた走行装置として構成されている。
【0026】
刈取装置3は、本体部1の前部に接続されている。刈取装置3は、米等の作物の穀稈の株元を刈り取ることができる。
【0027】
脱穀装置4は、本体部1の左部に設けられている。脱穀装置4は、刈取装置3の後方に配置されている。脱穀装置4は、刈取装置3で刈り取った穀稈を脱穀する。
【0028】
選別装置7は、本体部1の左部に設けられている。選別装置7は、脱穀装置4の下方に配置されている。選別装置7は、脱穀装置4で脱穀された穀粒を選別して取り出す。
【0029】
グレンタンク5は、本体部1の右部後側に設けられている。グレンタンク5は、選別装置7の右側方に配置されている。グレンタンク5は、選別装置7で選別された穀粒を貯留する。グレンタンク5の詳細な構成は後述する。
【0030】
穀粒排出装置6は、グレンタンク5の後部の下側に接続されている。穀粒排出装置6は、グレンタンク5に貯留された穀粒を当該グレンタンク5の外部に排出することができる。
【0031】
運転部16は、本体部1の右部前側に設けられている。運転部16は、刈取装置3とグレンタンク5との間に配置されている。運転部16はキャビンとして構成され、その内部には、コンバイン100を運転するオペレータの居住空間が構成されている。
【0032】
運転部16には、オペレータが座る運転座席17が配置される。また、運転部16は、コンバイン100の走行及び刈取作業等をオペレータが指示するための操作部材(例えば、ステアリングホイール18)を備える。
【0033】
運転部16の適宜位置には、制御装置11が配置されている。制御装置11は、図4に示すように、制御部11aと、記憶部11bと、表示部11cと、を備える。
【0034】
制御部11aは、制御装置11内に配置されたCPU等の演算装置、又はFPGA、ASIC等の演算装置から構成される。制御部11aは、記憶部11bに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することで、オペレータの操作等に応じて様々な処理を行う。
【0035】
記憶部11bは、フラッシュメモリ、ハードディスク、又は光ディスク等の不揮発性メモリから構成されている。記憶部11bは、穀粒排出オーガ62のメンテナンス時期の診断に関する閾値Tt等を記憶している。
【0036】
表示部11cは、例えば液晶ディスプレイから構成される。表示部11cは、コンバイン100の運転情報や、コンバイン100各部のメンテナンス時期を示すメンテナンス情報等を表示する。
【0037】
エンジン20は、運転部16の下方に配置される。このエンジン20は、例えばディーゼルエンジンとして構成されている。
【0038】
エンジン20の動力は、図2に示すように、出力軸21から、無段変速装置22と、刈取装置3と、脱穀装置4と、穀粒排出装置6と、にそれぞれ分岐して伝達される。
【0039】
無段変速装置22は、例えば、静圧油圧式無段変速式の変速装置(HST)として構成されている。この無段変速装置22は、図略の油圧ポンプと油圧モータの対を備えた公知の構造であるため、詳細な説明は省略する。無段変速装置22によって変速された動力によって、クローラ装置2が駆動される。
【0040】
次に、グレンタンク5の構成について、図3等を参照して詳細に説明する。
【0041】
グレンタンク5は、穀粒を貯留するために用いられる。グレンタンク5は、本体部1の左右方向において、脱穀装置4の左側に配置されている。グレンタンク5は、選別装置7で選別された穀粒を貯留する。グレンタンク5には、収穫量センサ(貯留量検出部)51と、籾センサ(穀粒検出部)52と、が設けられている。
【0042】
収穫量センサ51は、コンバイン100で収穫された穀粒の量である収穫量HAを検出する。収穫量センサ51は、図3に示すように、グレンタンク5の内部の天井面から吊り下げるように取り付けられている。収穫量センサ51は、歪みゲージ又は圧電素子等から構成され、外部からの衝撃を検出する。
【0043】
図3に示すように、グレンタンク5には、選別装置7で選別された穀粒を搬送する揚穀コンベア81が接続されている。揚穀コンベア81はスクリューコンベアとして構成され、この軸の搬送方向下流側の端部には、放出羽根82が設けられている。放出羽根82は、揚穀コンベア81により搬送された穀粒をグレンタンク5に向けて跳ね飛ばす。収穫量センサ51は、放出羽根82により跳ね飛ばされた穀粒が当たることによる衝撃力を検出して、制御装置11へ出力する。
【0044】
制御装置11が備える制御部11aは、収穫量センサ51から入力された検出結果に基づいて、収穫された穀粒の収穫量HAを算出する。即ち、収穫量センサ51が検出した衝撃力が大きい程、揚穀コンベア81から単位時間当たりにグレンタンク5に供給される穀粒量が多いということができる。制御部11aは、収穫量センサ51の検出結果に基づいて、グレンタンク5への単位時間当たりの穀粒投入量を推定し、これを累積することで収穫量HAを求める。制御部11aで算出された収穫量HAは、記憶部11bに記憶される。この収穫量HAは、穀粒排出装置6を介してグレンタンク5の全ての穀粒を排出した時点(即ち、グレンタンク5内に穀粒が貯留されていない状態)から、現在までに、コンバイン100の作業によってグレンタンク5に供給された穀粒の総量を示す。
【0045】
籾センサ52は、グレンタンク5の内部に貯留された穀粒の堆積量(ひいては貯留量)を検出する。厳密に言えば、籾センサ52は、グレンタンク5の内部に貯留されている穀粒(穀粒溜まり)の上面の高さを、段階的に検出する。籾センサ52は、所定間隔をあけて上下方向に並べて複数(本実施形態においては5つ)設けられている。それぞれの籾センサ52は、グレンタンク5の内壁に取り付けられている。それぞれの籾センサ52は、穀粒溜まりの上面が当該籾センサ52の高さよりも上にあるか下にあるかを実質的に検出することができる。
【0046】
なお、以下の説明においては、複数の籾センサ52のそれぞれを特定するために、最も下側から順に、第1籾センサ(第1穀粒検出部)52a、第2籾センサ(第2穀粒検出部)52b、第3籾センサ(第3穀粒検出部)52c、第4籾センサ(第4穀粒検出部)52d、第5籾センサ52eと呼ぶことがある。
【0047】
籾センサ52は、例えば、押圧式スイッチから構成される。当該複数の籾センサ52は、グレンタンク5に穀粒が貯留されるに従って、下側から順に押圧される。穀粒により押圧された籾センサ52は、検出信号を制御装置11へ出力する。
【0048】
本実施形態では、籾センサ52がグレンタンク5内に貯留された穀粒により押圧されたとき、当該籾センサ52はONとなる。一方、籾センサ52が穀粒により押圧されていないとき、当該籾センサ52はOFFとなる。ただし、ON/OFFが逆になっても良い。
【0049】
それぞれの籾センサ52のON/OFF状態に基づいて、制御装置11は、グレンタンク5内に貯留されている穀粒の貯留量を推定することができる。そして、制御装置11は、隣接する2つの籾センサ52がONとなる時間差に基づいて、穀粒の貯留速度等を推定することができる。これにより、制御装置11は、例えば、グレンタンク5が満量となる時間等を予測して、表示部11cに表示することができる。
【0050】
本実施形態のコンバイン100において、上から2番目に設けられた第4籾センサ52dは、グレンタンク5の満量に相当する位置に設けられている。図4の制御装置11は、第4籾センサ52dがONになると、満量であることを表示部11cに表示させる。第4籾センサ52dは、グレンタンク5の物理的な貯留限界に対して適宜のマージンを確保した高さに配置されている。これにより、満量である旨が表示部11cに表示されてから、刈取装置3及び脱穀装置4が停止されるまで、収穫される穀粒の貯留空間を確保することができる。
【0051】
最も上に配置された第5籾センサ52eは、故障を防止するために設けられている。制御装置11は、第5籾センサ52eがONになると、刈取装置3及び脱穀装置4を自動的に停止させる。これにより、穀粒を貯留し過ぎることによる装置の破損を回避することができる。
【0052】
穀粒排出装置6は、グレンタンク5内に貯留されている穀粒を外部へ排出するために用いられる。穀粒排出装置6は、底コンベア61と、穀粒排出オーガ(排出部)62と、を備える。
【0053】
底コンベア61は、図3に示すように、グレンタンク5の底部に配置されている。底コンベア61は、本体部1の前後方向に延びる軸まわりに回転するスクリューから構成されている。底コンベア61は、図2に示すように、エンジン20からの駆動力によって回転駆動される。底コンベア61は、グレンタンク5内に貯留されている穀粒を後方へ搬送する。
【0054】
底コンベア61とエンジン20との間の駆動伝達経路には、図2に示すように、オーガクラッチ91が配置されている。オーガクラッチ91は、伝動ベルトにテンションを付与する状態と付与しない状態とを切り替えるベルトテンションクラッチとして構成されている。オーガクラッチ91は、底コンベア61に対するエンジン20の駆動力の伝達/遮断を切り換える。
【0055】
穀粒排出オーガ62は、底コンベア61により搬送された穀粒を外部へ排出するために用いられる。穀粒排出オーガ62は、縦排出オーガ63と、横排出オーガ64と、から構成されている。
【0056】
縦排出オーガ63は、グレンタンク5の後方であって、上下方向に延びるように配置されている。縦排出オーガ63は、縦排出オーガ筒65と、縦排出コンベア66と、を備える。
【0057】
縦排出オーガ筒65は、例えば、円管状部材から構成されている。縦排出オーガ筒65の内部には、縦排出コンベア66が内蔵されている。
【0058】
縦排出コンベア66は、上下方向に延びる軸まわりに回転するスクリューから構成されている。縦排出コンベア66は、図2に示すように、ベベルギアを介して底コンベア61に連結されている。縦排出コンベア66は、底コンベア61を介して伝達された駆動力によって回転駆動される。
【0059】
横排出オーガ64は、図1に示す収納状態において、本体部1の上部であって、略前後方向に延びるように配置されている。横排出オーガ64は、横排出オーガ筒67と、横排出コンベア68と、を備える。
【0060】
横排出オーガ筒67は、例えば、円管状部材から構成されている。横排出オーガ筒67の内部には、横排出コンベア68が内蔵されている。
【0061】
横排出コンベア68は、横排出オーガ64の収納状態において略前後方向に延びる軸まわりに回転するスクリューから構成されている。横排出コンベア68は、ベベルギアを介して縦排出コンベア66に連結されている。横排出コンベア68は、底コンベア61及び縦排出コンベア66を介して伝達された駆動力によって回転駆動される。
【0062】
上記の構成により、オーガクラッチ91が接続された状態において、エンジン20からの駆動力によって、底コンベア61、縦排出コンベア66及び横排出コンベア68が回転駆動され、穀粒排出オーガ62から穀粒が排出される。オーガクラッチ91が切断された状態において、エンジン20からの駆動力が遮断され、底コンベア61、縦排出コンベア66及び横排出コンベア68の回転が停止するので、穀粒排出オーガ62による穀粒の排出が停止される。
【0063】
穀粒排出装置6によって穀粒が搬送されるのに伴い、穀粒が、縦排出オーガ筒65の内壁、縦排出コンベア66、横排出オーガ筒67の内壁、横排出コンベア68等に対して接触及び衝突する。これにより、縦排出オーガ筒65の内壁、縦排出コンベア66、横排出オーガ筒67の内壁、横排出コンベア68等が徐々に摩耗する。摩耗の進行速度は、穀粒の硬さ、水分量等に応じて様々に異なる。
【0064】
穀粒排出オーガ62における摩耗の進行によって、縦排出オーガ筒65と縦排出コンベア66との間の隙間、及び横排出オーガ筒67と横排出コンベア68との間の隙間が徐々に大きくなり、穀粒の排出効率が低下して、排出時間が長くなる。従って、穀粒排出オーガ62の摩耗が一定程度進行した場合には、穀粒排出オーガ62の交換等のメンテナンスを行う必要がある。
【0065】
本実施形態のコンバイン100は、排出オーガ診断システム(排出部診断システム)10を備える。排出オーガ診断システム10は、穀粒排出オーガ62の摩耗の程度を判定し、穀粒排出オーガ62のメンテナンス時期をオペレータに知らせることができる。
【0066】
排出オーガ診断システム10は、図4に示す制御装置11を用いて、様々なセンサからの検出結果に基づいて、穀粒排出オーガ62におけるメンテナンスの要否を判定している。
【0067】
判定に用いられるセンサは、例えば、エンジン回転数センサ12と、オーガ回転数センサ13と、オーガクラッチセンサ14と、収穫量センサ51と、籾センサ52と、を含む。
【0068】
エンジン回転数センサ12は、エンジン回転数Neを検出するために用いられる。エンジン回転数センサ12の構成は任意であるが、例えば、エンジン20の出力軸21の回転に応じてパルスを発生するパルス発生装置とすることが考えられる。エンジン回転数センサ12は、検出したエンジン回転数Neを制御装置11へ出力する。
【0069】
オーガ回転数センサ13は、穀粒排出オーガ62のオーガ回転数Naを検出するために用いられる。オーガ回転数センサ13は、例えば縦排出コンベア66の回転軸又は横排出コンベア68の回転軸に取り付けられている。オーガ回転数センサ13は、エンジン回転数センサ12と同じ構成としても良いし、異なる構成としても良い。エンジン回転数センサ12は、検出したオーガ回転数Naを制御装置11へ出力する。
【0070】
オーガクラッチセンサ14は、オーガクラッチ91の入り切り状態(即ち、接続/切断に関する状態)を検出するものである。オーガクラッチセンサ14は、検出したオーガクラッチ91の状態を制御装置11へ出力する。
【0071】
排出オーガ診断システム10は、上記の様々なセンサからの検出結果を用いて、所定量Aの穀粒を排出するために要した穀粒排出時間Tと、当該所定量Aの穀粒を排出するために要する設計上の標準排出時間T0と、を求める。
【0072】
当該所定量Aは、例えば、図3の2つの鎖線に挟まれた領域に相当する穀粒の量、即ち、互いに隣接する2つの籾センサ52の間に貯留されている穀粒の量とすることができる。しかし、これに限定されない。
【0073】
穀粒がグレンタンク5の底部から排出されるのに伴って、穀粒溜まりの上面の高さが徐々に低下していく。上側に位置する籾センサ52がONからOFFとなるタイミングと、下側に位置する籾センサ52がONからOFFとなるタイミングと、の時間差を求めることで、穀粒排出時間Tを容易に得ることができる。
【0074】
ところで、コンバイン100が刈取りを行ってグレンタンク5に貯留される収穫量HAが満量に達する前に、グレンタンク5からの穀粒を排出する場合は少なくない。従って、穀粒排出時間Tを求めるために仮に第4籾センサ52dを用いる場合、穀粒排出装置6による排出を行っているにもかかわらず穀粒排出時間Tを求めることができない状況が頻繁に発生する。
【0075】
また、グレンタンク5に貯留される穀粒の圧力は、穀粒溜まりの深い部分に位置する程大きくなる。従って、例えば満量近くの穀粒を貯留した場合、深い場所に位置する第1籾センサ52aの周囲において、穀粒が特に強く押し固められることがある。この結果、グレンタンク5からの穀粒の排出が進んで、穀粒溜まりの上面の高さが第1籾センサ52aよりも低くなっているにもかかわらず、第1籾センサ52aの周囲に一部の穀粒が留まる場合も考えられる。従って、穀粒排出時間Tを求めるために仮に第1籾センサ52aを用いる場合、穀粒排出時間Tに大きな誤差が発生するおそれがある。
【0076】
上記の事情を考慮して、本実施形態の排出オーガ診断システム10は、上下方向に並べられる籾センサ52のうち、満量を検出する第4籾センサ52dよりも下で、かつ、空の状態に最も近い量を検出する第1籾センサ52aよりも上の籾センサ52(第2籾センサ52b及び第3籾センサ52c)を用いて、穀粒排出時間Tを求めている。これにより、穀粒排出時間Tを取得する機会を多く確保するとともに、穀粒排出時間Tの取得精度を高めることができる。この結果、穀粒排出オーガ62のメンテナンス時期の判定をより正確に行うことができる。
【0077】
次に、図5を参照して、制御装置11において穀粒排出時間Tを求める処理を詳細に説明する。図5は、穀粒排出時間の取得制御の例を示すフローチャートである。なお、図5のフローがスタートする段階で、グレンタンク5には穀粒が十分な量(例えば、満量)貯留されているものとする。
【0078】
図5のフローがスタートすると、制御装置11は、この瞬間に、第3籾センサ52cがONからOFFに切り替わったか否かを判定する(ステップS101)。この判定は、第3籾センサ52cの現在の状態と、直前の状態と、を用いて行うことができる。例えば第3籾センサ52cがONを継続している場合は、制御装置11は、穀粒排出時間Tのカウント値を初期化する(ステップS102)。その後、処理はステップS101に戻る。
【0079】
ステップS101の判断で、第3籾センサ52cのONからOFFへの切り替わりがあったと判定した場合は、制御装置11は、オーガクラッチセンサ14からの検出結果に基づいて、オーガクラッチ91が接続状態であるか否かを判定する(ステップS103)。
【0080】
ステップS103の判断で、オーガクラッチ91が接続状態である場合は、制御装置11は、穀粒排出時間Tのカウント値を1だけ増加させる(ステップS104)。ステップS103の判断で、オーガクラッチ91が切断状態である場合は、ステップS104の処理はスキップされる。
【0081】
その後、制御装置11は、この瞬間に、第2籾センサ52bがONからOFFに切り替わったか否かを判定する(ステップS105)。この判定は、第2籾センサ52bの現在の状態と、直前の状態と、を用いて行うことができる。例えば第2籾センサ52bがONを継続している場合は、処理はステップS103に戻る。
【0082】
ステップS103~ステップS105の処理により、オーガクラッチ91の接続を条件として、穀粒排出時間Tのカウントが繰り返される。ステップS103~ステップS105のループは、一定の周期で行われる。
【0083】
ステップS105の判断で、第2籾センサ52bのONからOFFへの切り替わりがあったと判定した場合は、制御装置11は、その時点での穀粒排出時間Tのカウント値を取得する(ステップS106)。このカウント値に、上記のステップS103~ステップS105のループ周期を乗じることにより、穀粒排出時間Tを求めることができる。その後、処理はステップS101に戻る。
【0084】
以上の処理により、グレンタンク5への穀粒への貯留、グレンタンク5からの穀粒の排出が繰り返されるのに応じて、制御装置11は、第3籾センサ52cの高さに相当する量から第2籾センサ52bの高さに相当する量に貯留量が至るまで、穀粒排出装置6によって穀粒が排出されるのに要した実質的な時間を取得することができる。
【0085】
穀粒排出時間Tを求めるために用いる籾センサ52は、第2籾センサ52b及び第3籾センサ52cに限定されない。穀粒を排出する直前において、5つの籾センサ52のうち少なくとも2つがONであれば、ONである複数の籾センサ52から任意に選択された2つが穀粒排出に伴ってOFFになるタイミングを用いて、穀粒排出時間Tを求めることができる。
【0086】
標準排出時間T0は、所定量Aの穀粒の排出に要した穀粒排出時間Tが長過ぎるか否かを判定する基準として用いられる。標準排出時間T0は、異なるエンジン回転数Ne及びオーガ回転数Naの値に応じて複数設定され、例えばマップの形で記憶部11bに記憶される。
【0087】
次に、排出オーガ診断システム10は、求められた穀粒排出時間Tと、標準排出時間T0と、を比較し、当該穀粒排出時間Tと標準排出時間T0との時間差である排出遅延時間ΔT(即ち、ΔT=T-T0)を求める。排出遅延時間ΔTは、穀粒排出オーガ62の摩耗の程度を示していると考えることができる。
【0088】
本実施形態の排出オーガ診断システム10においては、排出遅延時間ΔTが過大であるか否か(言い換えれば、穀粒排出オーガ62のメンテナンスが必要な程度まで摩耗が進行しているか否か)を判断するための閾値Ttが予め設定されている。
【0089】
当該閾値Ttは、エンジン回転数Ne及びオーガ回転数Naと、上記所定量Aと、に基づいて設定される。閾値Ttは、異なるエンジン回転数Ne及びオーガ回転数Naの値に応じて複数設定され、例えばマップの形で記憶部11bに記憶される。
【0090】
排出オーガ診断システム10は、上記のように求められた排出遅延時間ΔTと、穀粒を排出する際におけるエンジン回転数Ne及びオーガ回転数Naに対応する閾値Ttと、を比較し、穀粒排出オーガ62のメンテナンスの要否を判定する。
【0091】
具体的には、ΔTが閾値Tt以下である場合、穀粒排出オーガ62のメンテナンスが必要ではないと判定し、排出遅延時間ΔTが閾値Ttより大きい場合、穀粒排出オーガ62のメンテナンスが必要であると判定する。穀粒排出オーガ62のメンテナンスが必要と判定された場合、排出オーガ診断システム10は、当該診断結果を表示部11cに表示させる。
【0092】
上述したように、従来は、単に穀粒排出オーガ62の稼動累積時間に基づいて、穀粒排出オーガ62のメンテナンス時期を判定していた。これに比べて、本実施形態の排出オーガ診断システム10は、それぞれのコンバイン100の穀粒排出オーガ62の使用状況に応じた現実の摩耗の程度に即して、穀粒排出オーガ62のメンテナンス時期に対する診断をより正確に行うことができる。
【0093】
診断は、図5のステップS106で穀粒排出時間Tが求められる毎に行うことができる。ただし、排出オーガ診断システム10は、穀粒排出オーガ62に対する所定稼動時間毎に診断を行っても良い。また、排出オーガ診断システム10は、今回の診断で判定された穀粒排出オーガ62の摩耗程度に応じた稼動時間間隔で、次回の診断を行っても良い。
【0094】
以上に説明したように、本実施形態の排出オーガ診断システム10は、穀粒を貯留するグレンタンク5に貯留された穀粒を外部に排出する穀粒排出オーガ62を診断する。当該排出オーガ診断システム10は、穀粒排出オーガ62による所定量Aの穀粒の排出に要した穀粒排出時間Tと、当該所定量Aの穀粒の排出に要する標準排出時間T0と、に基づいて、穀粒排出オーガ62のメンテナンスの要否を判定する。
【0095】
これにより、穀粒排出オーガ62の現実の摩耗の程度を反映させて、穀粒排出オーガ62のメンテナンス時期の判定を高精度で行うことができる。
【0096】
また、本実施形態の排出オーガ診断システム10において、グレンタンク5には、複数の籾センサ52が設けられている。籾センサ52は、グレンタンク5内に形成される穀粒溜まりの上面の高さを段階的に検出する。排出オーガ診断システム10は、複数の籾センサ52のうち、一の籾センサ52が穀粒を検出しなくなってから、当該一の籾センサ52より下側に設けられた他の籾センサ52が穀粒を検出しなくなるまでに要した時間を、穀粒排出時間Tとする。
【0097】
これにより、穀粒排出時間Tを容易かつ正確に求めることができる。
【0098】
また、本実施形態の排出オーガ診断システム10において、複数の籾センサ52は、第1籾センサ52aと、第2籾センサ52bと、第3籾センサ52cと、第4籾センサ52dと、を含む。第1籾センサ52aは、グレンタンク5の内壁に設けられる。第2籾センサ52bは、第1籾センサ52aより上側のグレンタンク5の内壁に設けられる。第3籾センサ52cは、第2籾センサ52bより上側のグレンタンク5の内壁に設けられる。第4籾センサ52dは、第3籾センサ52cより上側のグレンタンク5の内壁に設けられる。排出オーガ診断システム10は、第3籾センサ52cが穀粒を検出しなくなってから、第2籾センサ52bが穀粒を検出しなくなるまでに要した時間を、穀粒排出時間Tとする。
【0099】
これにより、穀粒排出時間Tを求める機会を多く確保することができる。また、穀粒排出時間Tを正確に求めることができる。
【0100】
また、本実施形態の排出オーガ診断システム10において、標準排出時間T0は、エンジン回転数Neに応じて算出される。
【0101】
ただし、標準排出時間T0は、オーガ回転数Naに応じて算出することもできる。
【0102】
これにより、エンジン回転数Ne又はオーガ回転数Naによる穀粒の排出速度への影響を考慮でき、標準排出時間T0を一層正確に算出することができる。
【0103】
次に、第2実施形態を説明する。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の内容について説明を省略する場合がある。
【0104】
本実施形態の排出オーガ診断システム10は、グレンタンク5内に貯留された穀粒の全てを排出するのに要した時間を穀粒排出時間Tとする。即ち、排出オーガ診断システム10は、穀粒排出オーガ62のメンテナンス時期を判定する際に、籾センサ52の代わりに、収穫量センサ51による検出結果を用いる。
【0105】
言い換えれば、本実施形態における所定量Aは、グレンタンク5内に貯留された穀粒が全て排出された後から、穀粒を排出する直前までに、収穫量センサ51により検出された新たに収穫した穀粒の収穫量HAとなる。
【0106】
本実施形態の排出オーガ診断システム10においては、エンジン回転数Ne及びオーガ回転数Naと、に基づいて、単位排出量ΔA及び単位閾値ΔTtが予め設定されている。
【0107】
単位排出量ΔAとは、穀粒排出装置6による単位時間当たりの設計上の標準排出量である。収穫量HAを単位排出量ΔAで除算することで、標準排出時間T0を得ることができる。
【0108】
単位閾値ΔTtとは、単位時間当たりの閾値である。標準排出時間T0に単位閾値ΔTtを乗じることで、閾値Ttを求めることができる。
【0109】
排出オーガ診断システム10は、求められた収穫量HAの穀粒を排出するのに要した穀粒排出時間Tと、当該収穫量HAの穀粒を排出するのに要する標準排出時間T0と、を用いて排出遅延時間ΔTを算出する。
【0110】
その後、排出オーガ診断システム10は、算出された排出遅延時間ΔTと、上記のように求められた閾値Ttと、を比較する。排出遅延時間ΔTが閾値Ttより大きい場合、穀粒排出オーガ62のメンテナンスが必要と判定し、表示部11cに当該診断結果を表示させる。
【0111】
以上に説明したように、本実施形態の排出オーガ診断システム10において、グレンタンク5には、グレンタンク5に貯留された穀粒の量(収穫量HA)を検出する収穫量センサ51が設けられている。排出オーガ診断システム10では、収穫量センサ51により収穫量HAが検出された穀粒の全てを排出するのに要した時間を排出時間とする。排出オーガ診断システム10では、収穫量センサ51の検出結果に基づいて標準排出時間T0を算出する。
【0112】
これにより、他の検出部を要せずに、穀粒排出時間T及び標準排出時間T0を正確に求めることができる。
【0113】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。図6は、変形例の排出オーガ診断システム10xの構成を示すブロック図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0114】
本変形例の排出オーガ診断システム10xは、穀粒排出オーガ62のメンテナンス時期を、コンバイン100の代わりに管理サーバ31が診断する。
【0115】
コンバイン100が備える制御装置11は、前述の制御部11a、記憶部11b、及び表示部11cのほか、通信部11dを備える。
【0116】
管理サーバ31は、コンバイン100とは異なる場所(例えば、サービスセンター等)に設置されている。管理サーバ31は、図6に示すように、制御部31aと、記憶部31bと、表示部31cと、通信部31dと、を備える。
【0117】
管理サーバ31の通信部31dは、コンバイン100の制御装置11が備えた通信部11dとの間で通信を行うことができる。この通信には、WAN及び適宜の無線通信手段(例えば、携帯電話回線)を用いることができる。
【0118】
この通信により、管理サーバ31は、コンバイン100を特定するための識別情報とともに、診断に関する各種の情報を制御装置11から取得することができる。診断に関する情報としては、例えば、穀粒排出時間T、標準排出時間T0、穀粒を排出する際におけるエンジン回転数Ne及びオーガ回転数Na等を挙げることができる。管理サーバ31は、第1実施形態の制御装置11と同様に、穀粒排出時間T及び標準排出時間T0に基づいて、穀粒排出オーガ62のメンテナンスの要否を判定する。
【0119】
コンバイン100の穀粒排出オーガ62のメンテナンスが必要であると管理サーバ31が判定した場合、管理サーバ31は、制御装置11に対して、通信によりその旨を通知する。制御装置11は、メンテナンスが必要であること等を、表示部11cに表示する。
【0120】
管理サーバ31は、当該管理サーバ31に携帯情報端末等を用いてアクセスしたメンテナンスサービス担当者等に対して、メンテナンスが必要なコンバイン100に関する情報を通知しても良い。メンテナンスの必要性を知らせる方法としては、例えば、診断結果及びコンバイン100の特定情報等を、携帯情報端末等が備える図略の表示部等に表示させることが考えられる。
【0121】
本変形例の排出オーガ診断システム10xでは、コンバイン100の穀粒排出オーガ62のメンテナンス時期を集中的に管理することができ、メンテナンスが必要な場合、関係者にタイムリーに通知することができる。この結果、良いアフターサービスを提供することができる。
【0122】
本変形例では、各所で稼動しているコンバイン100の情報を管理サーバ31において収集することができるので、例えば、地域毎における穀粒排出オーガ62のメンテナンス時期を分析することができる。分析結果は、例えば管理サーバ31の表示部31cに表示させることができる。従って、穀粒排出オーガ62の摩耗が早い地域に対して、メンテナンスを早い時期で行うように、例えばメンテナンスサービス担当者に関連情報を提供することができる。よって、穀粒排出オーガ62のメンテナンスの遅れによる作業効率の低下を回避することができ、サービスの向上を実現することができる。
【0123】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0124】
標準排出時間は、設計上の排出時間を用いることに代えて、例えば、新品の穀粒排出装置6を用いて実際に測定した排出時間を用いることもできる。
【0125】
穀粒排出時間Tは、穀粒の排出毎に求められた排出時間を複数回測定した平均(例えば、移動平均)とすることもできる。これにより、排出時間のバラツキによる誤判断を回避することができる。
【0126】
標準排出時間T0及び閾値Tt(単位閾値ΔTt)は、収穫する作物の種類に応じて求めても良い。この場合、作物の種類は、オペレータが入力した作物の情報から判定しても良いし、適宜のセンサを用いて判定しても良い。
【0127】
標準排出時間T0は、収穫された穀粒に含まれる水分を検出する水分センサからの検出結果に基づいて求めても良い。これにより、穀粒排出オーガ62のメンテナンス時期に対する診断を一層正確に行うことができる。
【0128】
収穫量センサ51は、跳ね飛ばされてきた穀粒による衝撃力を用いて収穫量を検出する構成の代わりに、例えば、グレンタンク5の重量を検出することで収穫量を検出するように構成されても良い。
【0129】
第2実施形態において、例えば、収穫量センサによって検出したグレンタンク5の重量が排出前と比較して所定値だけ減少するまでの時間を、穀粒排出時間Tとすることもできる。言い換えれば、穀粒排出時間Tは、収穫量センサによって量が検出された穀粒の一部だけを排出するのに要した時間としても良い。
【0130】
必要に応じて、互いに隣接していない2つの籾センサ52を用いて穀粒排出時間Tを求めても良い。この場合、所定量Aは、用いられる2つの籾センサ52の間に貯留された穀粒の量となる。
【0131】
籾センサ52が穀粒を検出する構成は、押圧センサに限定されず、例えば、光によって穀粒を検出する光センサとして構成しても良い。
【0132】
オーガ回転数Naは、エンジン回転数Neから算出されても良い。この場合、オーガ回転数センサ13を設けなくても良い。
【0133】
オーガクラッチ91は、伝動軸等に設置された電磁クラッチから構成されても良い。この場合、オーガクラッチ91への出力信号に基づいて当該オーガクラッチ91のON/OFF情報を取得することができるので、オーガクラッチセンサ14を設けなくても良い。
【0134】
排出オーガ診断システム10,10xは、穀粒排出時間Tの代わりに、穀粒の排出速度Vに基づいて、穀粒排出オーガ62のメンテナンス時期を判定しても良い。
【0135】
排出オーガ診断システム10,10xは、排出遅延時間ΔTと閾値Ttとの差に基づいて、穀粒排出オーガ62のメンテナンス時期までの予測時間を推定して、オペレータ又はメンテナンスサービス担当者に知らせても良い。
【0136】
排出オーガ診断システム10,10xを用いて、底コンベア61のメンテナンス時期を判定することもできる。
【0137】
排出部が、オーガ以外の構成(例えば、ベルトコンベア)を有する構成とすることもできる。
【0138】
本実施形態の診断システムは、コンバイン以外(作業車両、施設)等に適用することもできる。
【符号の説明】
【0139】
5 グレンタンク(穀粒貯留部)
10 排出オーガ診断システム(排出部診断システム)
62 穀粒排出オーガ(排出部)
A 所定量
T 穀粒排出時間(排出時間)
T0 標準排出時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6