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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20220325BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
E02F9/00 D
F01N3/24 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019049506
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020153070
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】石川 喜久
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183545(JP,A)
【文献】特開2011-157721(JP,A)
【文献】特開2017-029017(JP,A)
【文献】特開2016-188645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で後側に突出する湾曲部を有する旋回フレームと、
前記旋回フレームの後部に配置されたエンジンと、
前記エンジンと並んで配置され、前記エンジンの排気ガスを処理する排気ガス処理装置と、
前記エンジン及び前記排気ガス処理装置を覆うボンネットと、
を備え、
前記排気ガス処理装置は、第1処理装置と、第2処理装置と、を備え、
排気ガスは、前記第1処理装置によって処理された後、前記第2処理装置によって処理され、
前記第1処理装置及び前記第2処理装置のそれぞれは、長手方向が上下方向に沿うように配置され、
前記第1処理装置及び前記第2処理装置は、前記ボンネットの周壁の後部の湾曲部分に対向するように、上下方向に対して垂直な方向に並べて配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械であって、
前記第1処理装置の下部には、第1処理装置導入口が形成され、
前記第1処理装置の上部には、第1処理装置排出口が形成され、
前記第2処理装置の下部には、第2処理装置導入口が形成され、
前記第2処理装置の上部には、第2処理装置排出口が形成され、
前記第1処理装置排出口が、前記第2処理装置導入口に接続されていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械であって、
油圧ポンプを備え、
前記油圧ポンプの入力軸は、前記エンジンの駆動軸と同軸で配置されて一体的に回転し、
前記排気ガス処理装置は、前記ボンネット内で前記油圧ポンプの上方に配置されていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンに対して排気ガス処置装置が設けられた建設機械が知られている。特許文献1及び2は、この種の建設機械を開示する。
【0003】
特許文献1は、後方小旋回型建設機械を開示する。特許文献1の建設機械において、排気ガス処理装置は、後方側に凸の略半円弧状の周壁である後側周壁の連接壁の一部により形成されるエンジン室に設けられている。排気ガス処理装置は、第1処理部と、第2処理部とを有している。第1処理部及び第2処理部は、それぞれ、後側周壁の連接壁の内壁面に一定間隔を隔てて沿う位置決め線上に、後側周壁の連接壁の内面壁からの距離が最も近い箇所に位置するように配置されている。
【0004】
特許文献2は、小旋回型ショベルを開示する。この小旋回型ショベルは、後部の形状が円弧である上部旋回体を備える。上部旋回体に、排ガス処理装置が設けられている。排ガス処理装置は、上部旋回体の後部の中央に配置されたエンジンの右側に配置されている。排ガス処理装置は、上部旋回体の前後方向に対して傾斜するように、斜めに配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-157721号公報
【文献】特開2016-176318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構成は、排気ガス処理装置の第1処理部及び第2処理部が、それぞれの長手方向が前後方向に沿うように寝た状態で配置されている。そのため、第1処理部のうち長手方向に沿って延びる外壁、及び第2処理部のうち長手方向に沿って延びる外壁の各々と、後側周壁の連接壁と、の間に比較的に広いデッドスペースが形成される。よって、排気ガス処理装置が、エンジン周辺のスペースを圧迫するように配置され易い。従って、エンジンのメンテナンス性が良好であるとはいいがたい。
【0007】
また、特許文献2の構成は、排ガス処理装置が、上部旋回体の前後方向に対して傾斜するように、斜めに配置されている。ここで、排ガス処理装置は、長手方向が上下方向と直交する方向に沿うように寝た状態で配置されている。よって、排ガス処理装置がエンジン周辺のスペースを圧迫し易く、特許文献1と同様に、エンジンのメンテナンス性の観点で改善の余地があった。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、エンジンに対して排気ガス処理装置が設けられた建設機械において、エンジンのメンテナンス性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の観点によれば、以下の構成の建設機械が提供される。即ち、この建設機械は、旋回フレームと、エンジンと、排気ガス処理装置と、ボンネットと、を備える。前記旋回フレームは、平面視で後側に突出する湾曲部を有する。前記エンジンは、前記旋回フレームの後部に配置される。前記排気ガス処理装置は、前記エンジンと並んで配置され、前記エンジンの排気ガスを処理する。前記ボンネットは、前記エンジン及び前記排気ガス処理装置を覆う。前記排気ガス処理装置は、第1処理装置と、第2処理装置と、を備える。排気ガスは、前記第1処理装置によって処理された後、前記第2処理装置によって処理される。前記第1処理装置及び前記第2処理装置のそれぞれは、長手方向が上下方向に沿うように配置される。前記第1処理装置及び前記第2処理装置は、前記ボンネットの周壁の後部の湾曲部分に対向するように、上下方向に対して垂直な方向に並べて配置されている。
【0011】
これにより、ボンネット内において、排気ガス処理装置の第1処理装置及び第2処理装置をコンパクトなスペースに配置することができる。従って、エンジン周辺のスペースが排気ガス処理装置により圧迫されることを防止することができる。また、スペースを効率的に利用してエンジン及び排気ガス処理装置を配置することができるので、ボンネット内のデッドスペースを生じにくくすることができる。
【0012】
前記の建設機械においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1処理装置の下部には、第1処理装置導入口が形成される。前記第1処理装置の上部には、第1処理装置排出口が形成される。前記第2処理装置の下部には、第2処理装置導入口が形成される。前記第2処理装置の上部には、第2処理装置排出口が形成される。前記第1処理装置排出口が、前記第2処理装置導入口に接続されている。
【0013】
これにより、排気ガス処理装置において、エンジンの排気口から排出された排気ガスを第1処理装置及び第2処理装置の各々において下側から上側に流すことが可能となる。従って、排気ガス処理装置において処理が完了した排気ガスを上部から排出することを前提にして、排気ガスの処理のために必要な経路長を各装置において確保しつつ、簡潔なレイアウトを実現できる。
【0014】
前記の建設機械においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この建設機械は、油圧ポンプを備える。前記油圧ポンプは、前記エンジンの駆動軸に連結される。前記排気ガス処理装置は、前記ボンネット内で前記油圧ポンプの上方に配置される。
【0015】
これにより、油圧ポンプを含めて、ボンネット内のスペースをより有効に活用したレイアウトを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る旋回作業車の全体的な構成を示す斜視図。
図2】ボンネットの内部の構成を示す平面図。
図3】ボンネットの内部の構成を示す斜視図。
図4】排気ガス処理装置の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る旋回作業車1の全体的な構成を示す斜視図である。
【0018】
図1に示す旋回作業車(建設機械)1は、後方小旋回型バックホーであり、走行部11と、旋回部12と、を備えている。
【0019】
走行部11は、左右1対の前輪21及び後輪22を備えている。走行部11は、左右の前輪21及び後輪22を駆動して、前方又は後方への直進、旋回等の各種の走行を行うことができる。
【0020】
旋回部12は、旋回フレーム31と、エンジン32と、ボンネット33と、操縦部34と、作業装置35と、を備えている。
【0021】
旋回フレーム31は、走行部11の上方に配置され、垂直な軸を中心として回転可能となるように走行部11に支持されている。旋回フレーム31は、旋回モータの駆動により、走行部11に対して回転することができる。
【0022】
エンジン32は、例えばディーゼルエンジンとして構成されている。エンジン32は、旋回部12の後部に配置されている。エンジン32は、旋回フレーム31に支持されている。
【0023】
ボンネット33は、エンジン32等の部材を覆う。ボンネット33は、旋回フレーム31の上方に設けられている。ボンネット33は、旋回フレーム31上において、操縦部34のキャビン38と並べて配置されている。
【0024】
操縦部34は、オペレータが座る運転座席と、様々な操作部材と、これらを覆うキャビン38と、を備えている。オペレータは、上記の操作部材を操作することにより、各種の指示を旋回作業車1に与えることができる。操縦部34は、旋回部12の左前部に配置されている。
【0025】
以下、旋回部12に取り付けられる各部材の位置関係等を説明する場合には、運転座席に座るオペレータが向く方向を前として、前後方向及び左右方向を定義する。
【0026】
作業装置35は、ブーム41と、アーム42と、バケット43と、ブームシリンダ44と、アームシリンダ45と、バケットシリンダ46と、を備えている。
【0027】
ブーム41は細長い部材として構成されており、その基端部が、旋回フレーム31の前部に回転可能に支持されている。ブーム41にはブームシリンダ44が取り付けられており、ブームシリンダ44が伸縮することでブーム41を回転させることができる。
【0028】
アーム42は細長い部材として構成されており、その基端部が、ブーム41の先端部に回転可能に支持されている。アーム42にはアームシリンダ45が取り付けられており、アームシリンダ45が伸縮することでアーム42を回転させることができる。
【0029】
バケット43は、容器状に形成された部材として構成されており、その端部が、アーム42の先端部に回転可能に支持されている。バケット43にはバケットシリンダ46が取り付けられており、バケットシリンダ46が伸縮することでバケット43を回転させて、すくい動作/ダンプ動作を行うことができる。
【0030】
次に、ボンネット33の内部の構成について説明する。図2は、ボンネット33の内部の構成を示す平面図である。図3は、ボンネット33の内部の構成を示す斜視図である。
【0031】
図2図3に示すように、旋回フレーム31の後部には、平面視で後側へ突出する湾曲部39が備えられている。ボンネット33は、その後部が旋回フレーム31の湾曲部39に沿うように湾曲した状態で旋回フレーム31上に設けられている。
【0032】
ボンネット33の内部には、エンジン32、排気ガス処理装置71、油圧ポンプ72、オイルクーラ73、燃料タンク74、及び作動油タンク75等が配置されている。
【0033】
エンジン32は、ボンネット33内の後部中央に配置されている。エンジン32は、ボンネット33の周壁のうち当該エンジン32の後方に位置する後部の湾曲部分と対向している。エンジン32は、左右方向に水平に配置された図示しない駆動軸を備える。
【0034】
排気ガス処理装置71は、エンジン32から排出される排気ガスを処理する。排気ガス処理装置71は、旋回フレーム31上においてエンジン32の右側方に配置されている。排気ガス処理装置71は、エンジン32と概ね左右方向に並んで配置されている。また、排気ガス処理装置71は、油圧ポンプ72の上方に配置されている。
【0035】
油圧ポンプ72は、作業装置35のシリンダ等の油圧装置へ作動油を供給する。油圧ポンプ72は、エンジン32が備えるエンジン本体の右側面に取り付けられている。油圧ポンプ72の入力軸は、エンジン32の駆動軸に直列に連結されている。従って、エンジン32の駆動と連動して、油圧ポンプ72による作動油の吸入及び吐出が行われる。
【0036】
油圧ポンプ72は、旋回フレーム31上において、エンジン32の右側方に配置されている。油圧ポンプ72は、エンジン32と隣接している。そして、油圧ポンプ72は、上下方向において旋回フレーム31と排気ガス処理装置71との間(排気ガス処理装置71の下方)のスペースに設けられている。逆に言えば、排気ガス処理装置71は、油圧ポンプ72の上方に配置されている。
【0037】
オイルクーラ73は、エンジン32の左側方に配置されている。オイルクーラの左側方には、エアクリーナ77が配置されている。
【0038】
燃料タンク74及び作動油タンク75は、エンジン32の右前方であって、排気ガス処理装置71の前方に配置されている。燃料タンク74及び作動油タンク75は、左右方向に並べて配置されている。
【0039】
次に、排気ガス処理装置71について説明する。図4は、排気ガス処理装置71の構成を示す斜視図である。
【0040】
図4に示すように、排気ガス処理装置71は、第1処理装置としてのDPF装置81と、第2処理装置としてのSCR装置82と、を備えている。DPFは、Diesel Particulate Filterの略称である。SCRは、Selective Catalytic Reductionの略称である。
【0041】
図2及び図3に示すように、DPF装置81及びSCR装置82は、それぞれの長手方向が上下方向となるように(それぞれ起立した状態となるように)、互いに並べて配置されている。DPF装置81及びSCR装置82は、何れも旋回フレーム31の上方に配置され、当該旋回フレーム31に支持部材85を介して支持されている。
【0042】
DPF装置81は、旋回フレーム31の湾曲部39付近に設けられており、ボンネット33の周壁の後部の湾曲部分に対向している。DPF装置81は、SCR装置82よりもエンジン32に近い位置に配置されている。
【0043】
DPF装置81は、排気ガスに含まれる粒子状物質(particulate matter、PM)を除去することができる。DPF装置81は、酸化触媒及びフィルタと、これらを収納するDPFケース87と、を備えている。
【0044】
酸化触媒は、白金等で構成されており、排気ガスに含まれる未燃燃料、一酸化炭素、一酸化窒素等を酸化(燃焼)するための触媒である。フィルタは、例えばウォールフロー型のフィルタとして構成されており、酸化触媒で処理された排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集する。
【0045】
DPFケース87は、略円筒状の中空の部材である。DPFケース87は、円筒の軸方向に細長く形成されている。DPFケース87は、エンジン32と隣り合う位置で、その長手方向が上下方向に沿うように配置されている。
【0046】
DPFケース87の形状が、DPF装置81の外形形状に相当する。従って、DPFケース87の長手方向が、DPF装置81の長手方向に相当する。DPF装置81の長手方向は、DPFケース87の長手方向と同様に、上下方向に沿うように配置される。
【0047】
DPF装置81には、第1導入口(第1処理装置導入口)91と、第1排出口(第1処理装置排出口)92と、が形成されている。第1導入口91は、DPF装置81の下部に配置される。第1排出口92は、DPF装置81の上部に配置される。第1導入口91と第1排出口92は、DPFケース87の内部空間を介して互いに接続されている。排気ガスは、第1導入口91からDPFケース87の内部に入って、第1排出口92から排出される。
【0048】
第1導入口91は、上下方向に向けられたDPFケース87の下側(長手方向一端部側)において、当該DPFケース87の外周面に開口するように配置されている。第1排出口92は、DPFケース87の上側(長手方向他端部側)に、当該DPFケース87の上面に開口するように配置されている。
【0049】
第1導入口91は、適宜の配管等を用いて、エンジン32の排気口と接続される。第1排出口92は、後述の接続管96を用いて、SCR装置82の第2導入口93と接続される。
【0050】
SCR装置82は、旋回フレーム31の湾曲部39付近に設けられており、ボンネット33の周壁の後部の湾曲部分に対向している。SCR装置82は、DPF装置81よりもエンジン32から遠い位置に配置されている。
【0051】
SCR装置82は、排気ガスに含まれるNOxを除去することができる。SCR装置82は、SCR触媒及びアンモニア酸化触媒と、これらを収納するSCRケース88と、を備えている。
【0052】
SCR触媒は、アンモニアを吸着するゼオライト及びセラミック等の素材で構成されている。アンモニア酸化触媒は、SCR触媒から脱離したりSCR触媒に吸着されなかったりしたアンモニアが外部に放出されることを防止する触媒である。アンモニア酸化触媒は、アンモニアを酸化させる白金等の酸化触媒であり、アンモニアを酸化させて窒素、一酸化酸素、水等に変化させる。
【0053】
SCRケース88は、略円筒状の中空の部材である。SCRケース88は、円筒の軸方向に細長く形成されている。SCRケース88は、DPFケース87と隣り合う位置で、その長手方向が上下方向に沿うように配置されている。
【0054】
SCRケース88の形状が、SCR装置82の外形形状に相当する。従って、SCRケース88の長手方向が、SCR装置82の長手方向に相当する。SCR装置82の長手方向は、SCRケース88の長手方向と同様に、上下方向に沿うように配置されている。
【0055】
DPF装置81及びSCR装置82は、何れも、上下方向に延びるように起立した姿勢で配置される。従って、DPF装置81及びSCR装置82の長手方向は、互いに平行である。DPF装置81及びSCR装置82は、それぞれの延びる方向(長手方向)と直交する方向に適宜の(小さな)間隔をあけて並べて配置される。具体的には、SCR装置82は、DPF装置81の右前方(斜め前方)に位置している。DPF装置81及びSCR装置82が並べられる方向に沿って見たときに、DPF装置81及びSCR装置82は、互いに重複する部分を有する。これにより、排気ガス処理装置71の上下方向の大きさをコンパクトにすることができる。
【0056】
SCR装置82には、第2導入口(第2処理装置導入口)93と、第2排出口(第2処理装置排出口)94と、が形成される。第2導入口93は、SCR装置82の下部に配置される。第2排出口94は、SCR装置82の上部に配置される。第2導入口93と第2排出口94は、SCRケース88の内部空間を介して互いに接続されている。排気ガスは、第2導入口93からSCRケース88の内部に入って、第2排出口94から排出される。
【0057】
第2導入口93は、接続管96を介して、DPF装置81の第1排出口92と接続される。第2排出口94には、図1に示す排出管95が接続される。排出管95は、排気ガス処理装置71で処理された排気ガスをボンネット33の外部空間へ逃がすことができる。排出管95がボンネット33の外側において形成する開口は、操縦部34から離れる方向に向けられている。
【0058】
第2導入口93は、上下方向に向けられたSCRケース88の下側(長手方向一端部側)に、当該SCRケース88の側方に向けて開口するように配置されている。第2排出口94は、SCRケース88の上側(長手方向他端部側)に、当該SCRケース88の側方に向けて開口するように配置されている。
【0059】
接続管96は、直線部97と、第1接続端部98と、第2接続端部99と、を有している。
【0060】
直線部97は、接続管96における排気ガスの経路の中間部に形成されている。直線部97は、DPFケース87及びSCRケース88と平行な方向(上下方向)に直線状に延びるように形成されている。
【0061】
第1接続端部98は、直線部97の長手方向一端部において、直線部97に対して垂直に接続している。第1接続端部98は、適宜曲げられて、DPF装置81の上面に形成された第1排出口92に接続される。
【0062】
第2接続端部99は、直線部97の長手方向で第1接続端部98と反対側の端部において、直線部97に対して垂直に接続している。第2接続端部99は、SCR装置82の第2導入口93に接続される。
【0063】
接続管96には、尿素水噴射部100が設けられている。尿素水噴射部100は、第1接続端部98と直線部97とが接続する箇所の近傍に配置されている。尿素水噴射部100は、接続管96内を流れる排気ガスに対して尿素水を噴射することができる。
【0064】
尿素水は、接続管96の直線部97において上側から下側に流れる排気ガスに対して、上側から噴射される。直線状に流れる排気ガスの経路において、その経路に沿う向きに尿素水を噴射することで、尿素を良好に加水分解して、NOxの還元処理に必要なアンモニアを効率的に生成することができる。
【0065】
尿素水噴射部100は、尿素水を噴射する尿素水噴射ノズル101と、尿素水噴射管102と、尿素水ポンプと、を備えている。尿素水噴射ノズル101は、接続管96の上部に設けられている。
【0066】
尿素水ポンプは、図示しない尿素水タンクから尿素水を吸入し、尿素水噴射管102を介して尿素水噴射ノズル101へ送り出す。尿素水タンクは、旋回部12の任意の場所に設けて良いが、例えば、排気ガス処理装置71の下方のスペース等に配置することが考えられる。
【0067】
この構成で、エンジン32から排出される排気ガスは、排気ガス処理装置71に送られて、その後にボンネット33の外部に排出される。排気ガス処理装置71においては、排気ガスが先ずDPF装置81によって処理され、その後にSCR装置82によって処理される。
【0068】
詳しくは、排気ガスは、エンジン32の排気口から排出された後、DPF装置81のDPFケース87内に第1導入口91を介して導入される。DPFケース87内への導入後、排気ガスは、酸化触媒及びフィルタにより処理されつつDPFケース87の下側から上側へ流れ、第1排出口92から接続管96へ排出される。
【0069】
その後、排気ガスは、接続管96を経由してDPF装置81の第1排出口92からSCR装置82の第2導入口93に向かって上側から下側へ流れる。このとき、接続管96内において、排気ガスに対して尿素水噴射部100により尿素水が噴射される。これにより、尿素が加水分解してアンモニアが発生する。アンモニアを含む排気ガスは、接続管96内からSCR装置82のSCRケース88内に第2導入口93を介して導入される。
【0070】
SCRケース88内への導入後、アンモニアを含む排気ガスは、SCR触媒及びアンモニア酸化触媒により処理されつつSCRケース88の下側から上側へ流れ、第2排出口94から外部へ排出される。
【0071】
SCRケース88内においては、排気ガス中のアンモニアがSCR触媒に吸着する。排気ガスに含まれるNOxは、アンモニアを吸着したSCR触媒に触れることで還元され、窒素と水に変化する。SCR触媒から脱離したりSCR触媒に吸着されなかったりしたアンモニアは、アンモニア酸化触媒により酸化して、窒素、一酸化酸素、水等に変化する。
【0072】
本実施形態では、排気ガス処理装置71が、上下方向に向けられたDPF装置81とSCR装置82が水平方向に並べられて、エンジン32の側方(右方)に配置されている。従って、排気ガス処理装置71をエンジン32から少し離して配置することができるので、エンジン32の周囲(特に、上側)にメンテナンスのための空間を広く確保することができる。特に本実施形態では、エンジン32をメンテナンスする場合は上方からエンジン32にアクセスするので、排気ガス処理装置71を上記のように配置することが特に有利である。
【0073】
また、排気ガス処理装置71を構成するDPF装置81及びSCR装置82の何れも、ボンネット33の周壁の後部の湾曲部分に近接して配置されている。従って、ボンネット33の内部空間の端部に排気ガス処理装置71をコンパクトに配置できるので、デッドスペースが生じにくく、空間を有効に活用することができる。この結果、例えば、作動油タンク75及び燃料タンク74の容量を大きく確保することが容易である。
【0074】
特に、本実施形態では、油圧ポンプ72の上方に排気ガス処理装置71が支持されている。従って、ボンネット33内のスペースをより有効に活用したレイアウトを実現することができる。例えば、排気ガス処理装置71の下方のスペースに、油圧ポンプ72のほか、当該排気ガス処理装置71の関連部品(尿素水を供給するための部材等)を配置することができる。
【0075】
排気ガスは、DPF装置81の下部に供給されて上方に流れ、DPF装置81の上部から排出される。続いて、排気ガスは、接続管96を下方に流れ、SCR装置82の下部に供給される。その後、排気ガスは、SCR装置82を上方に流れ、SCR装置82の上部から排出される。このように、排気ガスは、上下方向に2回Uターンする経路を通過する過程で、DPF装置81及びSCR装置82のそれぞれを下から上に流れる。従って、各装置において排気ガスを有効に処理するために必要な経路長を十分に確保しつつ、排気ガス処理装置71を全体としてコンパクトに構成することができる。また、接続管96において上から下に流れる排気ガスに対して尿素水が添加されるので、アンモニアを生成するための経路長も十分に確保できる。最終的には排気ガスは排気ガス処理装置71の上部から排出されるので、本実施形態の旋回作業車1のようにボンネット33の上方に排出管95の開口が配置されるレイアウトに対して、容易に適合させることができる。
【0076】
以上に説明したように、本実施形態の旋回作業車1は、エンジン32と、排気ガス処理装置71と、ボンネット33と、を備える。排気ガス処理装置71は、エンジン32の排気ガスを処理する。ボンネット33は、エンジン32及び排気ガス処理装置71を覆う。排気ガス処理装置71は、DPF装置81と、SCR装置82と、を備える。排気ガスは、DPF装置81によって処理された後、SCR装置82によって処理される。DPF装置81及びSCR装置82のそれぞれは、長手方向が上下方向に沿うように配置される。DPF装置81及びSCR装置82は、上下方向に対して垂直な方向に並べて配置されている。
【0077】
これにより、ボンネット33内において、排気ガス処理装置71のDPF装置81及びSCR装置82をコンパクトなスペースに配置することができる。従って、エンジン32周辺のスペースが排気ガス処理装置71により圧迫されることを防止することができる。スペースを効率的に利用してエンジン32及び排気ガス処理装置71を配置することができるので、ボンネット33内のデッドスペースを生じにくくすることができる。
【0078】
また、本実施形態の旋回作業車1において、DPF装置81の下部には、第1導入口91が形成される。DPF装置81の上部には、第1排出口92が形成される。SCR装置82の下部には、第2導入口93が形成される。SCR装置82の上部には、第2排出口94が形成される。第1排出口92が、第2導入口93に接続されている。
【0079】
これにより、排気ガス処理装置71において、エンジン32の排気口から排出された排気ガスをDPF装置81及びSCR装置82の各々において下側から上側に流すことが可能となる。従って、排気ガス処理装置71において処理が完了した排気ガスを上部から排出することを前提にして、排気ガスの処理のために必要な経路長を各装置において確保しつつ、簡潔なレイアウトを実現できる。
【0080】
また、本実施形態の旋回作業車1は、油圧ポンプ72を備える。油圧ポンプ72の入力軸は、エンジン32の駆動軸と同軸で配置されて一体的に回転する。排気ガス処理装置71は、ボンネット33内で油圧ポンプ72の上方に配置されている。
【0081】
これにより、エンジン32の駆動軸を水平に配置した場合に、駆動軸の端部に取り付けられる油圧ポンプ72の上方に排気ガス処理装置71が配置されるので、エンジン32の上方の空間が排気ガス処理装置71によって覆われなくなる。従って、エンジン32を上側からメンテナンスすることが容易になる。
【0082】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0083】
DPF装置81及びSCR装置82が並べられる方向は、斜め方向に限定されず、例えば前後方向又は左右方向とすることができる。
【0084】
第1導入口91を、DPF装置81の下面に配置しても良い。第1排出口92を、DPF装置81の上部の外周面に配置しても良い。
【0085】
第2導入口93を、SCR装置82の下面に配置しても良い。第2排出口94を、SCR装置82の上面に配置しても良い。
【0086】
DPF装置81とSCR装置82とを接続する接続管96は、図4等で示す形状に限定されず、適宜変更することができる。
【0087】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0088】
1 旋回作業車(建設機械)
32 エンジン
33 ボンネット
71 排気ガス処理装置
72 油圧ポンプ
81 DPF装置(第1処理装置)
82 SCR装置(第2処理装置)
91 第1導入口(第1処理装置導入口)
92 第1排出口(第1処理装置排出口)
93 第2導入口(第2処理装置導入口)
94 第2排出口(第2処理装置排出口)
図1
図2
図3
図4