(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】搬送設備及び搬送設備の制御方法
(51)【国際特許分類】
B65G 65/06 20060101AFI20220325BHJP
B65G 63/00 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
B65G65/06
B65G63/00 C
(21)【出願番号】P 2017216539
(22)【出願日】2017-11-09
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢二
(72)【発明者】
【氏名】赤山 優太
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-154930(JP,U)
【文献】特開2003-206033(JP,A)
【文献】特開2004-018129(JP,A)
【文献】実開昭50-108176(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0120038(US,A1)
【文献】特開2014-037284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 65/06
B65G 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばら物を積み上げて形成されたパイルに沿って延びるヤードコンベヤと、
前記ヤードコンベヤに沿って第1領域内を往復走行しながらスクレーパが設けられたブームで前記パイルからばら物をかき取り、かき取ったばら物を前記ヤードコンベヤに払い出すスクレーパ式の第1リクレーマと、
前記ヤードコンベヤに沿って前記第1領域に隣接
し前記第1領域とは異なる第2領域内を往復走行しながらスクレーパが設けられたブームで前記パイルからばら物をかき取り、かき取ったばら物を前記ヤードコンベヤに払い出すスクレーパ式の第2リクレーマと、
前記第1リクレーマの走行速度及びブーム角度、並びに、前記第2リクレーマの走行速度及びブーム角度を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記第1領域と前記第2領域の境界付近で前記第1リクレーマと前記第2リクレーマが接触する可能性があると判断したとき、前記第1リクレーマと前記第2リクレーマの接触が回避できるように前記第1リクレーマ及び前記第2リクレーマのうち一方又は両方のリクレーマの走行速度を予め設定された値から停止しない範囲で変更し、かつ、前記一方又は両方のリクレーマの走行速度の変更前後において前記一方又は両方のリクレーマから前記ヤードコンベヤへ払い出すばら物の払出量が変動しないように前記一方又は両方のリクレーマの変更後の走行速度に応じて前記一方又は両方のリクレーマのブーム角度を予め設定された値から変更する接触回避プログラムを実行する、搬送設備。
【請求項2】
前記制御装置は、前記接触回避プログラムを実行するにあたり、前記第1領域と前記第2領域の境界付近で前記第1リクレーマと前記第2リクレーマが接触する可能性があると判断したとき、前記第1リクレーマ及び前記第2リクレーマのうち一方のリクレーマのみ走行速度を予め設定された値から変更した後、再び前記第1領域と前記第2領域の境界付近で前記第1リクレーマと前記第2リクレーマが接触する可能性があると判断したとき、前記第1リクレーマ及び前記第2リクレーマのうち他方のリクレーマのみ走行速度を予め設定された値から変更する、請求項1に記載の搬送設備。
【請求項3】
前記制御装置は、前記接触回避プログラムを実行するにあたり、前記第1領域と前記第2領域の境界付近で前記第1リクレーマと前記第2リクレーマが接触する可能性があると判断したとき、前記第1リクレーマ及び前記第2リクレーマのうち一方又は両方のリクレーマの走行速度を予め設定された値よりも小さくなるように変更する、請求項1に記載の搬送設備。
【請求項4】
前記制御装置は、前記接触回避プログラムを実行するにあたり、前記一方又は両方のリクレーマの走行速度を変更する場合、前記一方又は両方のリクレーマが往復走行する領域の一方の端部に位置したときに走行速度を変更し、変更後の走行速度を他方の端部に至るまで維持する、請求項1に記載の搬送設備。
【請求項5】
前記制御装置は、前記接触回避プログラムを実行するにあたり、前記一方又は両方のリクレーマが往復走行する領域の両端部以外の変更位置で前記一方又は両方のリクレーマの走行速度を変更するとともにブーム角度を変更したことによりパイルに段差が生じた場合、その後、前記パイルに生じた段差がなくなるように前記一方又は両方のリクレーマが往復走行する領域の一方の端部から他方の端部まで前記一方又は両方のリクレーマのブーム角度を維持し、かつ、前記一方又は両方のリクレーマが前記変更位置を通過する前後で前記払出量が変動しないように前記変更位置を通過する際に前記一方又は両方のリクレーマの走行速度を変更する、請求項1に記載の搬送設備。
【請求項6】
当該搬送設備は、
前記ヤードコンベヤに対して平行に設けられ、前記パイルから見て前記ヤードコンベヤと反対側に位置する縦壁と、
前記縦壁に対して垂直に設けられて前記縦壁を支持し、前記第1領域と前記第2領域の境界に位置する横壁と、をさらに備える、
請求項1乃至5のうちいずれか一の項に記載の搬送設備。
【請求項7】
ばら物を積み上げて形成されたパイルに沿って延びるヤードコンベヤと、
前記ヤードコンベヤに沿って第1領域内を往復走行しながらスクレーパが設けられたブームで前記パイルからばら物をかき取り、かき取ったばら物を前記ヤードコンベヤに払い出すスクレーパ式の第1リクレーマと、
前記ヤードコンベヤに沿って前記第1領域に隣接
し前記第1領域とは異なる第2領域内を往復走行しながらスクレーパが設けられたブームで前記パイルからばら物をかき取り、かき取ったばら物を前記ヤードコンベヤに払い出すスクレーパ式の第2リクレーマと、を備えた搬送設備の制御方法であって、
前記第1領域と前記第2領域の境界付近で前記第1リクレーマと前記第2リクレーマが接触する可能性があるとき、前記第1リクレーマと前記第2リクレーマの接触が回避できるように前記第1リクレーマ及び前記第2リクレーマのうち一方又は両方のリクレーマの走行速度を予め設定された値から停止しない範囲で変更し、かつ、前記一方又は両方のリクレーマの走行速度の変更前後において前記一方又は両方のリクレーマから前記ヤードコンベヤへ払い出すばら物の払出量が変動しないように前記一方又は両方のリクレーマの変更後の走行速度に応じて前記一方又は両方のリクレーマのブーム角度を予め設定された値から変更する、搬送設備の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクレーパ式のリクレーマを備えた搬送設備、及び、スクレーパ式のリクレーマを備えた搬送設備の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクレーパ式のリクレーマは、スクレーパが設けられたブームを備えており、このブームを用いて、石炭や鉱物などの「ばら物」が積み上げられたパイルからばら物をかき取り、かき取ったばら物をヤードコンベヤに払い出す(特許文献1参照)。スクレーパ式のリクレーマを複数備えた搬送設備では、異なる種類のばら物をそれぞれ積み上げて複数のパイルを形成しておき、各リクレーマが各パイルからばら物をかき取って同じヤードコンベヤに払い出せば、複数種類のばら物を任意の割合で混合したばら物を作ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スクレーパ式のリクレーマは予め定められた領域を往復走行しながらばら物をかき取る。そのため、往復走行する領域の広さや走行速度が異なると、隣り合うリクレーマ同士が接触するおそれがある。これを回避するには、隣り合うリクレーマの一方を停止することが考えられる。しかしながら、スクレーパ式のリクレーマは、ブームに設けられたスクレーパをパイルに押し付け、ばら物をかき取るため、スクレーパを押し付ける角度(食い込み量)と、走行速度によってばら物のかき取り量が変わる。そのため、リクレーマの走行が停止するとばら物が払い出しされない。したがって、隣り合うリクレーマの一方を停止すると、停止したリクレーマからはばら物が払い出されないため、複数種類のばら物を任意の割合で混合することができなくなる。
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、スクレーパ式のリクレーマを複数備えた搬送設備であって、リクレーマ同士の接触を回避しつつ、各リクレーマのばら物の払出量の変動を抑制できる搬送設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る搬送設備は、ばら物を積み上げて形成されたパイルに沿って延びるヤードコンベヤと、前記ヤードコンベヤに沿って第1領域内を往復走行しながらスクレーパが設けられたブームで前記パイルからばら物をかき取り、かき取ったばら物を前記ヤードコンベヤに払い出すスクレーパ式の第1リクレーマと、前記ヤードコンベヤに沿って前記第1領域に隣接する第2領域内を往復走行しながらスクレーパが設けられたブームで前記パイルからばら物をかき取り、かき取ったばら物を前記ヤードコンベヤに払い出すスクレーパ式の第2リクレーマと、前記第1クレーマの走行速度及びブーム角度、並びに、前記第2リクレーマの走行速度及びブーム角度を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1領域と前記第2領域の境界付近で前記第1リクレーマと前記第2リクレーマが接触する可能性があると判断したとき、前記第1リクレーマと前記第2リクレーマの接触が回避できるように前記第1リクレーマ及び前記第2リクレーマのうち一方又は両方のリクレーマの走行速度を予め設定された値から停止しない範囲で変更し、かつ、前記一方又は両方のリクレーマの走行速度の変更前後において前記一方又は両方のリクレーマから前記ヤードコンベヤへ払い出すばら物の払出量が変動しないように前記一方又は両方のリクレーマの変更後の走行速度に応じて前記一方又は両方のリクレーマのブーム角度を予め設定された値から変更する接触回避プログラムを実行する。
【0007】
この構成によれば、第1リクレーマと第2リクレーマの接触を回避することができるとともに、リクレーマからヤードコンベヤへ払い出すばら物の払出量の変動を抑制することができる。
【0008】
上記の搬送設備において、前記制御装置は、前記接触回避プログラムを実行するにあたり、前記第1領域と前記第2領域の境界付近で前記第1リクレーマと前記第2リクレーマが接触する可能性があると判断したとき、前記第1リクレーマ及び前記第2リクレーマのうち一方のリクレーマのみ走行速度を予め設定された値から変更した後、再び前記第1領域と前記第2領域の境界付近で前記第1リクレーマと前記第2リクレーマが接触する可能性があると判断したとき、前記第1リクレーマ及び前記第2リクレーマのうち他方のリクレーマのみ走行速度を予め設定された値から変更するようにしてもよい。
【0009】
この構成によれば、走行速度及びブーム角度の変更を第1リクレーマと第2リクレーマにおいて交互に行うことになる。その結果、第1領域のパイル及び第2領域のパイルのうち一方のパイルが他方のパイルに比べて大きく変形してしまうのを抑制することができる。
【0010】
上記の搬送設備において、前記制御装置は、前記接触回避プログラムを実行するにあたり、前記第1領域と前記第2領域の境界付近で前記第1リクレーマと前記第2リクレーマが接触する可能性があると判断したとき、前記第1リクレーマ及び前記第2リクレーマのうち一方又は両方のリクレーマの走行速度を予め設定された値よりも小さくなるように変更してもよい。
【0011】
スクレーパ式のリクレーマの場合、走行速度を過度に増加させると、ブームでばら物をかき取る際にブームに設けられたスクレーパからばら物がこぼれ落ちてしまい、ばら物を十分かき取れないおそれがある。そのため、第1リクレーマ及び第2リクレーマのうち一方又は両方のリクレーマの走行速度を変化させる場合、上記のように走行速度を小さくなるように変更すれば、ばら物を確実にかき取ることができる。
【0012】
上記の搬送設備において、前記制御装置は、前記接触回避プログラムを実行するにあたり、前記一方又は両方のリクレーマの走行速度を変更する場合、前記一方又は両方のリクレーマが往復走行する領域の一方の端部に位置したときに走行速度を変更し、変更後の走行速度を他方の端部に至るまで維持するようにしてもよい。
【0013】
この構成によれば、リクレーマの走行速度は走行領域の一方の端部から他方の端部まで一定となり、その間はブーム角度も維持されることになる。これにより、リクレーマが往復走行する領域の途中でブーム角度が変更されることがないため、パイルに段差が生じるのを回避することができる。
【0014】
上記の搬送設備において、前記制御装置は、前記接触回避プログラムを実行するにあたり、前記一方又は両方のリクレーマが往復走行する領域の両端部以外の変更位置で前記一方又は両方のリクレーマの走行速度を変更するとともにブーム角度を変更したことによりパイルに段差が生じた場合、その後、前記パイルに生じた段差がなくなるように前記一方又は両方のリクレーマが往復走行する領域の一方の端部から他方の端部まで前記一方又は両方のリクレーマのブーム角度を維持し、かつ、前記一方又は両方のリクレーマが前記変更位置を通過する前後で前記払出量が変動しないように前記変更位置を通過する際に前記一方又は両方のリクレーマの走行速度を変更するようにしてもよい。
【0015】
この構成によれば、パイルに段差が生じたとしても、その後、パイルに生じた段差をなくすことができるとともに、その際における払出量の変動を抑制することができる。
【0016】
上記の搬送設備において、前記第1リクレーマ及び前記第2リクレーマは、いずれも1つのブームのみで前記パイルからばら物をかき取るセミポータル型のリクレーマであって、当該搬送設備は、前記ヤードコンベヤに対して平行に設けられ、前記パイルから見て前記ヤードコンベヤと反対側に位置する縦壁と、前記縦壁に対して垂直に設けられて前記縦壁を支持し、前記第1領域と前記第2領域の境界に位置する横壁と、をさらに備えていてもよい。
【0017】
搬送設備が備えるリクレーマがセミポータル型である場合は、ヤードに縦壁および横壁が設置される。この場合、横壁の際までばら物が積み上げられることになるため、リクレーマ同士が横壁の壁際まで接近し接触するリスクが高まる。よって、上記のように第1リクレーマと第2リクレーマがセミポータル型のリクレーマである場合には、上述した接触回避プログラムは非常に有効である。
【0018】
また、本発明の一態様に係る搬送設備の制御方法は、ばら物を積み上げて形成されたパイルに沿って延びるヤードコンベヤと、前記ヤードコンベヤに沿って第1領域内を往復走行しながらスクレーパが設けられたブームで前記パイルからばら物をかき取り、かき取ったばら物を前記ヤードコンベヤに払い出すスクレーパ式の第1リクレーマと、前記ヤードコンベヤに沿って前記第1領域に隣接する第2領域内を往復走行しながらスクレーパが設けられたブームで前記パイルからばら物をかき取り、かき取ったばら物を前記ヤードコンベヤに払い出すスクレーパ式の第2リクレーマと、を備えた搬送設備の制御方法であって、前記第1領域と前記第2領域の境界付近で前記第1リクレーマと前記第2リクレーマが接触する可能性があるとき、前記第1リクレーマと前記第2リクレーマの接触が回避できるように前記第1リクレーマ及び前記第2リクレーマのうち一方又は両方のリクレーマの走行速度を予め設定された値から停止しない範囲で変更し、かつ、前記一方又は両方のリクレーマの走行速度の変更前後において前記一方又は両方のリクレーマから前記ヤードコンベヤへ払い出すばら物の払出量が変動しないように前記一方又は両方のリクレーマの変更後の走行速度に応じて前記一方又は両方のリクレーマのブーム角度を予め設定された値から変更する。
【発明の効果】
【0019】
上記の搬送設備によれば、リクレーマ同士の接触を回避しつつ、各リクレーマのばら物の払出量の変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】
図3は、搬送設備の制御系のブロック図である。
【
図4】
図4は、接触回避プログラムのフローチャートである。
【
図5】
図5は、変形例に係る接触回避プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0022】
<搬送設備の全体構成>
はじめに、搬送設備100の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る搬送設備100の概略平面図である。本実施形態に係る搬送設備100は、石炭や鉱物などのばら物101を積み上げて形成されたパイル102からばら物101をかき取って別の場所へ搬送する設備である。なお、本実施形態では、
図1の紙面右方がばら物101の搬送方向である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る搬送設備100は、搬送方向に向かって延びる縦壁10と、縦壁10に対して垂直に設けられ、縦壁10を支持する横壁11と、を備えている。これらの縦壁10及び横壁11はヤード103を区画し、第1領域12及び第2領域13を含む複数の領域を形成する。そのため、第1領域12と第2領域13の境界には横壁11が位置することになる。また、各領域にはそれぞれ種類の異なるばら物101からなるパイル102が形成されている。
【0024】
さらに、搬送設備100は、パイル102に沿って延びるヤードコンベヤ14と、ヤードコンベヤ14に沿って第1領域12内を往復走行する第1リクレーマ15と、ヤードコンベヤ14に沿って第1領域12に隣接する第2領域13内を往復走行する第2リクレーマ16と、を備えている。
【0025】
ヤードコンベヤ14は、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16から払い出されたばら物101を搬送方向に搬送する装置である。つまり、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16から払い出されたばら物は同じヤードコンベヤ14に供給される。なお、上述した縦壁10はヤードコンベヤ14に対して平行に設けられており、当該縦壁10はパイル102から見てヤードコンベヤ14と反対側に位置している。
【0026】
第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16は、いずれもスクレーパ33(
図2参照)が設けられたブーム22を用いてパイル102からばら物をかき取り、かき取ったばら物101をヤードコンベヤ14に払い出すスクレーパ式のリクレーマである。また、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16は、1つのブーム22のみでばら物101をかき取るセミポータル型のリクレーマである。
【0027】
<リクレーマの構成>
次に、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16の構成をより詳しく説明する。本実施形態では、第1リクレーマ15と第2リクレーマ16は同じ構成を有しているため、以下では第1リクレーマ15の構成を説明し、第2リクレーマ16の構成の説明は省略する。
【0028】
図2は、第1リクレーマ15の側面図である。
図2の紙面手前方向がばら物101の搬送方向である。本実施形態の第1リクレーマ15は、走行装置21と、ブーム22と、ブーム角度調整機構23と、を備えている。
【0029】
走行装置21は、ヤードコンベヤ14を挟んでパイル102とは反対側に配置されており、ヤードコンベヤ14に沿って図外のレール上を走行する。走行装置21は、車輪24と、車輪24を回転させる走行モータ26(
図3参照)と、車輪24の回転角度を測定する車輪角度計27(
図3参照)を有している。また、走行装置21には、走行装置21から斜め上方に向かって延びるポータル25が設けられている。ポータル25の先端は縦壁10の上縁部に支持されており、ポータル25の先端はこの縦壁10の上縁部に沿って移動する。
【0030】
ブーム22は、パイル102からばら物101をかき取る装置である。ブーム22は、基端部分が走行装置21に回動可能に支持された本体フレーム31と、本体フレーム31の周りを周回する周回駆動部32と、周回駆動部32に等間隔に設けられた複数のスクレーパ33と、を有している。周回駆動部32を周回(
図2では時計回りに周回)させることにより、スクレーパ33がパイル102からばら物101をかき取って、ブーム22の基端付近に寄せてシュート34に供給する(
図2中の白抜き矢印を参照)。そして、シュート34に供給されたばら物101は、その下方に位置するヤードコンベヤ14に払い出される。
【0031】
ブーム角度調整機構23は、ブーム22の角度を調整する機構である。ブーム角度調整機構23は、ブーム22の本体フレーム31に設けられたブームハンガー35と、ブームハンガー35とポータル25をつなぐ吊下げワイヤ36と、吊下げワイヤ36の長さを調整するウインチ37と、を有している。ウインチ37によって吊下げワイヤ36の長さを調整することで、ブーム22の角度を任意に設定することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、ブーム22の先端が最も下方に位置するときを基準位置とし、基準位置にあるブーム22に対する角度を「ブーム角度」と称する。つまり、吊下げワイヤ36を短くしてブーム22の先端が高い位置にあるときブーム角度は大きく、吊下げワイヤ36を長くしてブーム22の先端が低い位置にあるときブーム角度は小さい。また、ブーム22には、ブーム角度を測定するブーム角度計38(
図3参照)が設けられている。
【0033】
第1リクレーマ15は以上のように構成されており、通常時は第1領域12の一方の端部から他方の端部まで走行速度を一定にして走行しながらブーム22でパイル102のばら物101をかき取る。そして、第1リクレーマ15が他方の端部に達するとブーム角度を小さくして他方の端部から一方の端部まで走行速度を一定にして走行しながらブーム22でパイル102のばら物101をかき取る。
【0034】
なお、第1リクレーマ15の走行速度が同じであれば、ブーム角度が小さいほどパイル102に対するスクレーパ33の食い込み量が大きくなり、第1リクレーマ15からヤードコンベヤ14に供給するばら物の時間あたりの供給量が多くなる。一方、ブーム角度が同じであれば、走行速度が早いほど時間あたりの供給量が多くなる。
【0035】
<制御系の構成>
次に、搬送設備100の制御系の構成について説明する。
図3は、搬送設備100の制御系のブロック図である。
図3に示すように、搬送設備100は制御装置40を備えている。制御装置40は、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、及びI/Oインターフェース等を有しており、第1リクレーマ15の走行速度及びブーム角度、並びに、第2リクレーマ16の走行速度及びブーム角度を制御する。
【0036】
制御装置40は、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16がそれぞれ有する車輪角度計27及びブーム角度計38と電気的に接続されており、これらの機器から送信された計測信号を受信する。制御装置40は、各車輪角度計27から受信した計測信号に基づいて、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16の位置及び走行速度を取得することができる。また、制御装置40は、各ブーム角度計38から受信した計測信号に基づいて、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16のブーム22のブーム角度を取得することができる。
【0037】
また、制御装置40は、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16がそれぞれ有する走行モータ26及びウインチ37と電気的に接続されており、これらの機器に制御信号を送信する。これにより、第1リクレーマ15の走行速度及びブーム角度、並びに、第2リクレーマ16の走行速度及びブーム角度を制御することができる。なお、本実施形態では、第1リクレーマ15の走行速度及びブーム角度、並びに、第2リクレーマ16の走行速度及びブーム角度は予め設定されている。ただし、制御装置40は後述する接触回避プログラムを実行し、所定の条件を満たせば各種の設定を変更することになる。
【0038】
<接触回避プログラム>
次に、接触回避プログラムについて説明する。接触回避プログラムは、制御装置40によって実行される。
図4は、接触回避プログラムのフローチャートである。
【0039】
図4に示すように、接触回避プログラムが開始されると、制御装置40は、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16の車輪角度計27から受信した測定信号に基づいて、各リクレーマ15、16の位置及び走行速度を取得する(ステップS1)。
【0040】
続いて、制御装置40は、各リクレーマ15、16の位置及び走行速度に基づいて、第1領域12と第2領域13の境界付近で両リクレーマ15、16が接触する可能性があるか否かを判定する(ステップS2)。両リクレーマ15、16が接触する可能性がないと判定した場合(ステップS2でNO)、ステップS1に戻ってステップS1から再度処理を行う。
【0041】
一方、両リクレーマ15、16が接触する可能性があると判定した場合(ステップS2でYES)、設定を変更するリクレーマを決定する(ステップS3)。つまり、後述のとおり後のステップでリクレーマの設定が変更されるが、第1リクレーマ15と第2リクレーマ16のうちどちらのリクレーマの設定を変更するかを決定する。
【0042】
本実施形態では、第1リクレーマ15と第2リクレーマ16を交互に、設定変更を行うリクレーマとして決定する。つまり、ステップS3において例えば設定を変更するリクレーマを第1リクレーマ15に決定したとすると、その後、他のステップを経た後に再びステップS3に戻ったとき、設定を変更するリクレーマを第2リクレーマ16に決定する。
【0043】
続いて、制御装置40は、設定変更するリクレーマが往復走行する領域の端部に位置しているか否かを判定する(ステップS4)。例えば、ステップS3において、設定変更するリクレーマを第1リクレーマ15に決定したとき、第1リクレーマ15が第1領域12の第2領域13に近い方の端部又は遠い方の端部に位置しているか否かを判定する。設定変更するリクレーマが往復走行する領域の端部に位置していない場合は(ステップS4でNO)、端部に位置するまでステップS4を繰り返す。
【0044】
一方、設定変更するリクレーマが領域の端部に位置している場合は(ステップS4でYES)、そのリクレーマの走行速度とブーム角度を予め設定された値から変更する(ステップS5)。本実施形態では、両リクレーマ15、16の接触が回避できるように、リクレーマの走行速度を予め設定された値から停止しない範囲で変更する。走行速度を変更する場合は、走行速度は予め設定された値よりも大きくなるように変更してもよく小さくなるように変更してもよい。ただし、走行速度が過度に大きければ、ブーム22でばら物をかき取る際にスクレーパ33からばら物がもれ出るおそれがある。そのため、走行速度を変更する場合は、予め設定された値よりも小さくするのが望ましい。
【0045】
ここで、走行速度を変更すると、走行速度を変更したリクレーマからヤードコンベヤ14に払い出されるばら物の払出量が変化してしまう。そこで、本実施形態では、走行速度の変更前後において払出量が変動しないように変更後の走行速度に応じてブーム角度を変更する。例えば、リクレーマの走行速度を小さくしたときには、ブーム角度を予め設定されていた値より小さくする(すなわち食込み量を大きくする)。
【0046】
続いて、制御装置40は、設定変更を行ったリクレーマが設定変更を行ったとき位置していた端部とは異なる他の端部に位置しているか否かを判定する(ステップS6)。例えば、第1リクレーマ15が第1領域12の第2領域13に遠い方の端部に位置するときに設定変更したとすると、第1リクレーマ15が第1領域12の第2領域13に近い方の端部に位置しているか否かを判定する。設定変更したリクレーマが他の端部に位置していない場合は(ステップS6でNO)、他の端部に位置するまでステップS6を繰り返す。
【0047】
一方、設定変更したリクレーマが他の端部に位置している場合は(ステップS6でYES)、そのリクレーマの走行速度とブーム角度を予め設定されていた値に戻す(ステップS7)。ステップS7を経た後は、再度ステップS1に戻ってステップS1からS7を繰り返す。以上が、接触回避プログラムのフローである。
【0048】
本実施形態の接触回避プログラムでは、リクレーマが往復走行する領域の一方の端部に位置したときに走行速度を変更し、変更後の走行速度を他方の端部に至るまで維持する。つまり、往復移動する領域の一方の端部から他方の端部まで走行速度は一定である。そして、リクレーマからヤードコンベヤ14へ払い出すばら物の払出量が変動しないようにするためにはブーム角度を変動する必要はないことからブーム角度も一定となる。このように、本実施形態では、往復走行する領域の途中でブーム角度が変化することがないため、パイル102に段差が生じることもなく、リクレーマが段差部分を通過する際に払出量が変動してしまうのを回避することができる。
【0049】
<変形例>
続いて、上述した実施形態の変形例について説明する。
図5は、変形例に係る接触回避プログラムのフローチャートである。変形例に係る接触回避プログラムでは、リクレーマの設定を往復走行する領域の途中で変更し、これにより生じたパイル102の段差を接触回避後に解消する点が前述した接触回避プログラムと相違する。
【0050】
図5に示すように、変形例に係る接触回避プログラムが開始されると、制御装置40は各リクレーマ15、16の位置及び走行速度を取得し(ステップS11)、両リクレーマ15、16が接触する可能性があるか否かを判定する(ステップS12)。両リクレーマ15、16が接触する可能性がないと判定した場合(ステップS12でNO)、ステップS11に戻ってステップS11から再度処理を行う。一方、両リクレーマ15、16が接触する可能性があると判定した場合(ステップS12でYES)、設定を変更するリクレーマを決定する(ステップS13)。
【0051】
そして、変形例に係る接触回避プログラムでは、設定を変更するリクレーマが往復走行する領域の端部に位置しているか否かにかかわらず、走行速度とブーム角度を変更する(ステップS14)。これにより、両リクレーマ15、16の接触は回避されるが、パイル102には段差が生じてしまう。そこで、この段差をなくすために、以下で説明するステップを実行する。なお、以下では、リクレーマの設定変更を行ったときの当該リクレーマの走行方向位置を「変更位置」という。
【0052】
まず、制御装置40は、設定変更を行ったリクレーマが往復走行する領域の端部に位置しているか否かを判定する(ステップS15)。設定変更したリクレーマが往復走行する領域の端部に位置していない場合は(ステップS15でNO)、リクレーマが往復走行する領域の端部に位置するまでステップS15を繰り返す。
【0053】
一方、設定変更したリクレーマが往復走行する領域の端部に位置している場合は(ステップS15でYES)、ブーム角度を予め設定されていた値に戻す(ステップS16)。このままブーム角度を一定にしてリクレーマが往復走行すれば、同じ高さ位置でばら物101をかき取ることになるため、パイル102の段差は解消される。しかしながら、ステップS4においてブーム角度を変更した後にリクレーマが通過した領域(以下、「変更領域」と称する)では、パイル102の高さ当初予定していた高さと異なっている。そのため、走行速度とブーム角度を予め設定した値に戻すと、変更領域ではスクレーパ33の食い込み量は当初予定した量と異なるため、払出量も当初予定していた値と異なってしまう。例えば、ステップS4においてブーム角度を予め設定された値より小さくしたことで(スクレーパ33の食い込み量を大きくたことで)、変更領域におけるパイル102の高さが当初予定していた高さよりも低くなっている場合、走行速度とブーム角度を予め設定されていた値に戻すと払出量が少なくなってしまう。
【0054】
そこで、ステップS16では、走行速度については予め設定されていた値に戻さず、予定していた払出量が実現できるように予め設定されていた値から変更する。例えば、パイル102の高さが低く、払出量が当初予定していた値より少なくなるような場合は、走行速度を大きくする。
【0055】
続いて、制御装置40は、設定変更を行ったリクレーマが変更位置に位置しているか否かを判定する(ステップS17)。つまり、設定変更を行ったリクレーマが、その設定を行った位置まで戻ったか否かを判定する。設定変更を行ったリクレーマが変更位置に位置していない場合は(ステップS17でNO)、リクレーマが変更位置に位置するまでステップS17を繰り返す。一方、リクレーマが変更位置に位置している場合は(ステップS17でYES)、走行速度を予め設定されていた値に戻す(ステップS18)。このように、リクレーマが変更位置を通過する前後で払出量が変動しないように変更位置を通過する際にリクレーマの走行速度を変更する。
【0056】
上記のステップS18を経た後は、再度ステップS11に戻ってステップS11からS18を繰り返す。以上が、変形例に係る接触回避プログラムのフローである。
【0057】
上述した実施形態では、第1リクレーマ15の設定と第2リクレーマ16の設定を交互に変更しているが、一方のリクレーマの設定のみを常に変更してもよい。また、第1リクレーマ15と第2リクレーマ16のうち一方のリクレーマの設定を変更する場合について説明したが、第1リクレーマ15と第2リクレーマ16の両方の設定を変更してもよい。
【0058】
また、上述の実施形態では、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16が往復走行している途中で、制御装置40が、両リクレーマ15、16が接触する可能性があるか否かを判定していたが、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16が往復走行する前に判定するようにしてもよい。例えば、制御装置40が、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16の1日分の動きを把握しているような場合は、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16が往復走行する前に両リクレーマ15、16が接触する可能性があるか否かを判定することができる。
【0059】
なお、上述した実施形態では、第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16がいずれもブーム22を1つ有するリクレーマである場合について説明したが、各リクレーマ15、16は複数のブーム22を有するリクレーマであってもよい。また、上述した実施形態では、搬送設備100が2台のリクレーマ(第1リクレーマ15及び第2リクレーマ16)を備える場合について説明したが、搬送設備100は3台以上のリクレーマを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 縦壁
11 横壁
12 第1領域
13 第2領域
14 ヤードコンベヤ
15 第1リクレーマ
16 第2リクレーマ
22 ブーム
33 スクレーパ
40 制御装置
100 搬送設備
101 ばら物
102 パイル
103 ヤード