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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】筐体の製作方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/00 20060101AFI20220325BHJP
   B22D 21/04 20060101ALI20220325BHJP
   B22D 17/22 20060101ALI20220325BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20220325BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
B22D17/00 B
B22D21/04 A
B22D17/22 B
B22C9/06 C
B29C33/44
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018017798
(22)【出願日】2018-02-05
(65)【公開番号】P2019135057
(43)【公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹 治彦
(72)【発明者】
【氏名】富永 翔太
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-090211(JP,A)
【文献】実開昭61-004859(JP,U)
【文献】特開平03-264320(JP,A)
【文献】実開平06-071778(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00-17/32
B22C 9/06
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体が組み立てられたときに外側の面を構成する面のなす角が90度となるように接続された2つの板部を有する第1部品に対応し第1型及び第2型を有する第1金型の内部のキャビティに溶湯を注入し、2つの前記板部における2つの前記主面を、前記第1型及び前記第2型のうちの1つの型のみで成型することによって、前記第1部品を形成する第1部品形成工程と、
筐体が組み立てられたときに外側の面を構成する面のなす角が90度となるように接続された2つの板部を有する第2部品に対応し第3型及び第4型を有する第2金型の内部のキャビティに溶湯を注入し、2つの前記板部における2つの前記主面を、前記第3型及び前記第4型のうちの1つの型のみで成型することによって、前記第2部品を形成する第2部品形成工程と、
前記第1部品形成工程で得られた前記第1部品と、前記第2部品形成工程で得られた前記第2部品とを接続することにより、3つの板部を有する筐体形成部材を形成する筐体形成部材組立工程と、
前記筐体形成部材組立工程で得られた前記筐体形成部材に、前記筐体を構成する面のうち、前記筐体形成部材によって構成される面以外の面を構成する部材を取り付けることにより前記筐体を形成する筐体形成工程と
を備え
前記第1部品形成工程及び前記第2部品形成工程において、それぞれのキャビティは、前記第1金型及び前記第2金型のそれぞれの内部で、2つの前記板部の、前記筐体が組み立てられたときに外側の面を構成する面同士が交差して形成された交線が最も下側の位置となるように形成され、
前記第1部品形成工程及び前記第2部品形成工程において、それぞれのキャビティは、前記第1金型及び前記第2金型のそれぞれの内部で、前記交線から一方の板部の延びる方向が水平面に対し傾く姿勢で前記第1部品及び前記第2部品が形成されるように設けられていることを特徴とする筐体の製作方法。
【請求項2】
前記溶湯は、アルミニウムが溶融されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の筐体の製作方法。
【請求項3】
前記筐体は、制御基板を収容するコントローラ用筐体であることを特徴とする請求項1または2に記載の筐体の製作方法。
【請求項4】
前記制御基板は、ロボットを制御するための制御基板であることを特徴とする請求項に記載の筐体の製作方法。
【請求項5】
筐体が組み立てられたときに外側の面を構成する面のなす角が90度となるように接続された2つの板部を有する第3部品に対応し第5型及び第6型を有する第3金型の内部のキャビティに溶湯を注入し、2つの前記板部における2つの前記主面を、前記第5型及び前記第6型のうちの1つの型のみで成型することによって、前記第3部品を形成する第3部品形成工程と、
前記第3部品形成工程で得られた前記第3部品を2つ用い、2つの前記第3部品同士接続することにより、3つの板部を有する筐体形成部材を形成する筐体形成部材組立工程と、
前記筐体形成部材組立工程で得られた前記筐体形成部材に、前記筐体を構成する面のうち、前記筐体形成部材によって構成される面以外の面を構成する部材を取り付けることにより前記筐体を形成する筐体形成工程と
を備え
前記第3部品形成工程において、キャビティは、前記第3金型の内部で、2つの前記板部の、前記筐体が組み立てられたときに外側の面を構成する面同士が交差して形成された交線が最も下側の位置となるように形成され、
前記第3部品形成工程において、キャビティは、前記第3金型の内部で、前記交線から一方の板部の延びる方向が水平面に対し傾く姿勢で前記第3部品が形成されるように設けられていることを特徴とする筐体の製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストによって筐体を製作する筐体の製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御基板を収納する筐体を製造するに当たり、筐体がダイカストによって製造される場合がある。特許文献1には、制御基板を収納する筐体がダイカストによって製造されることが開示されている。特許文献1では、アルミニウムを用いたダイカストによって筐体が製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-357925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、コ字型に構成された複数の部品がダイカストによって製造され、製造されたコ字型の部品を組み立てることによって筐体が製造されている。
【0005】
部品をダイカストによって製造するには、ダイカストによって製造された部品を金型から抜く工程が必要になる。一般に、部品をダイカストによって製造する際には、金型から抜かれるように部品に抜き勾配を形成することが必要になる。そのため、部品が、テーパ状の形状を有して形成されることが必要になる。
【0006】
しかしながら、部品が金型から抜かれるためにテーパ状に形成されると、筐体の隣り合う側面同士の間で垂直な関係を保てなくなる可能性がある。特に、部品が3つの面を有し、それらの3つの面によってコ字型の形状が形成される場合には、部品の3つの面の間で、隣り合う面同士が直角に交差した関係が維持できない可能性がある。そのため、筐体が組み立てられて製造された結果、隣り合う面同士が直角に交差した関係が保たれない可能性がある。
【0007】
制御基板を格納する筐体は、場合によっては、広い面が接地されて配置されるだけでなく、配置スペースを考慮し、姿勢を変えて狭い面が接地されて立てられた状態で配置されることも考えられる。そのような場合、筐体の隣り合う側面同士の間で垂直な関係が保たれていないときには、筐体が傾いた状態で配置されることが考えられる。筐体が傾いて配置されると、筐体が設置されている間に倒れてしまい、このときの衝撃から筐体の故障を招いてしまう可能性がある。
【0008】
また、部品が金型から抜かれるためにテーパ状に形成されるので、金型から取り出された部品によって筐体が組み立てられた結果、筐体における対向する内側の面同士が平行でなく、筐体内部の一部でスペースが狭くなっている場合が考えられる。その場合、筐体の内部のスペースが狭くなることにより、筐体内で収納できる容量が少なくなってしまう可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、隣り合う面同士の間で垂直な関係が保たれる筐体の製作方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の筐体の製作方法は、主面のなす角が90度となるように接続された2つの板部を有する第1部品に対応し第1型及び第2型を有する第1金型の内部のキャビティに溶湯を注入し、2つの前記板部における2つの前記主面を、前記第1型及び前記第2型のうちの1つの型のみで成型することによって、前記第1部品を形成する第1部品形成工程と、主面のなす角が90度となるように接続された2つの板部を有する第2部品に対応し第3型及び第4型を有する第2金型の内部のキャビティに溶湯を注入し、2つの前記板部における2つの前記主面を、前記第3型及び前記第4型のうちの1つの型のみで成型することによって、前記第2部品を形成する第2部品形成工程と、前記第1部品形成工程で得られた前記第1部品と、前記第2部品形成工程で得られた前記第2部品とを組み立てることにより、3つの板部を有する筐体形成部材を形成する筐体形成部材組立工程と、前記筐体形成部材組立工程で得られた前記筐体形成部材を用いて筐体を形成する筐体形成工程とを備えたことを特徴とする。
【0011】
上記構成の筐体の製作方法では、主面のなす角度が90度となるように接続された2つの板部を有する第1部品に対応し第1型及び第2型を有する第1金型の内部のキャビティに溶湯を注入し、2つの板部における2つの主面を第1型及び第2型のうちの1つの型のみで成型することによって、第1部品を形成する第1部品形成工程で第1部品を形成し、主面のなす角が90度となるように接続された2つの板部を有する第2部品に対応し第3型及び第4型を有する第2金型の内部のキャビティに溶湯を注入し、2つの板部における2つの主面を第3型及び第4型のうちの1つの型のみで成型することによって、第2部品を形成する第2部品形成工程で第2部品を形成するので、それぞれ主面のなす角度が90度となるように接続された2つの板部を有する第1部品と第2部品とを形成することができる。従って、これらの部品を用いて形成された筐体は、隣り合う面において、主面のなす角度が90度となるように形成される。 また、前記第1部品形成工程及び前記第2部品形成工程において、それぞれのキャビティは、前記第1金型及び前記第2金型のそれぞれの内部で、2つの板部の主面同士が交差して形成された交線が最も下側の位置となるように形成されていてもよい。
【0012】
第1金型及び第2金型の内部で2つの板部の主面同士が交差して形成された交線が最も下側の位置となるように形成されているので、第1金型及び第2金型からの第1部品及び第2部品の抜きを円滑に行うことができる。
【0013】
また、前記第1部品形成工程及び前記第2部品形成工程において、それぞれのキャビティは、前記第1金型及び前記第2金型のそれぞれの内部で、前記交線から一方の板部の延びる方向が水平面に対し傾く姿勢で前記第1部品及び第2部品が形成されるように設けられていてもよい。
【0014】
第1金型及び第2金型の内部で、2つの板部の外側の面同士が交差して形成された交線から一方の板部の延びる方向が水平面に対し傾く姿勢で第1部品及び第2部品が形成されるので、第1金型及び第2金型からの第1部品及び第2部品の抜きをより円滑に行うことができる。
【0015】
また、前記溶湯は、アルミニウムが溶融されて形成されていてもよい。
【0016】
溶湯は、アルミニウムが溶融されて形成されているので、製作された筐体はアルミニウムによって形成される。筐体がアルミニウムによって形成されるので、筐体内部で発生した熱を効率良く外部に放熱させることができる。
【0017】
また、前記筐体は、制御基板を収容するコントローラ用筐体であってもよい。
【0018】
筐体が、制御基板を収容するコントローラ用筐体であるので、コントローラ用筐体において、隣り合う外側の面同士の間で、外側の面同士が直角となるように形成されることが可能になる。
【0019】
また、前記制御基板は、ロボットを制御するための制御基板であってもよい。
【0020】
筐体が、ロボットを制御するための制御基板を収容するコントローラであるので、ロボットを制御するための制御基板を収容するコントローラ用筐体において、隣り合う外側の面同士の間で、外側の面同士が直角となるように形成されることが可能になる。
【0021】
また、本発明の筐体の製作方法は、主面のなす角が90度となるように接続された2つの板部を有する第3部品に対応し第5型及び第6型を有する第3金型の内部のキャビティに溶湯を注入し、2つの前記板部における2つの前記主面を、前記第5型及び前記第6型のうちの1つの型のみで成型することによって、前記第3部品を形成する第3部品形成工程と、前記第3部品形成工程で得られた前記第3部品を2つ用い、2つの前記第3部品を組み立てることにより、3つの板部を有する筐体形成部材を形成する筐体形成部材組立工程と、前記筐体形成部材組立工程で得られた前記筐体形成部材を用いて筐体を形成する筐体形成工程とを備えたことを特徴とする。
【0022】
上記構成の筐体の製作方法では、主面のなす角度が90度となるように接続された2つの板部を有する第3部品に対応し第5型及び第6型を有する第3金型の内部のキャビティに溶湯を注入し、2つの板部における2つの主面を第5型及び第6型のうちの1つの型のみで成型することによって、第3部品を形成する第3部品形成工程で第3部品を形成すると共に、第3部品を2つ用い、2つの第3部品を組み立てることにより、3つの板部を有する筐体形成部材を形成するので、それぞれ主面のなす角度が90度となるように接続された2つの板部を有する2つの第3部品を形成することができる。従って、2つの第3部品を用いて形成された筐体は、隣り合う面において、主面のなす角度が90度となるように形成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、隣り合う面において、主面のなす角度が90度となるように形成された筐体が製作されるので、接地する面が変更されても安定した状態で配置されることが可能な筐体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る筐体の製作方法によって製作された筐体の斜視図である。
図2図1の筐体がロボットコントローラ用筐体として用いられた場合の筐体及びロボットの構成図である。
図3図1の筐体の下部に位置する筐体形成部材についての斜視図である。
図4図3の筐体形成部材が2つの部品に分割された状態の、筐体形成部材についての斜視図である。
図5図3の筐体形成部材を構成する部品がダイカストによって形成される際の、金型及び部品の断面図を示す。
図6】(a)~(d)は、図3の筐体形成部材を構成する部品が、ダイカストによって形成される際の各工程について示した構成図である。
図7図1の筐体が製作される際のフローについて示したフローチャートである。
図8図3の筐体形成部材を構成する部品の内側に付属品を取り付ける場合の、各工程の部品について示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る筐体の製作方法について、添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1に、本発明の実施形態に係る筐体の製作方法によって製作される筐体100の斜視図を示す。
【0027】
本実施形態では、筐体100は、直方体の形状を有している。従って、筐体100は、隣接する面同士が直角に交差して形成されている。筐体100は、ロボットの制御基板を内部に収容し、ロボットを制御するロボットコントローラの筐体として構成される。
【0028】
図2に、本実施形態の筐体100が、ロボット60を制御するロボットコントローラの筐体として用いられる場合の構成図を示す。
【0029】
図2に示されるように、本実施形態の筐体100は、内部に、ロボット60の動作を制御するための制御基板80を収容している。従って、筐体100は、制御基板80を収容するコントローラ用筐体として機能する。本実施形態では、ロボット60は、多軸の産業用ロボットとして用いられている。
【0030】
なお、本実施形態では、筐体内部に収容された制御基板によって制御されるロボットが産業用ロボットである形態について説明しているが、本発明は上記の実施形態に限定されない。筐体内部に収容された制御基板によって制御されるロボットは、他の形式のロボットであってもよい。ロボットは、筐体内部の制御基板によって制御されるのであれば、どんな形式のものであってもよい。また、筐体の内部に収容される制御基板は、ロボットを制御するためのものでなくてもよい。筐体の内部には、ロボット以外のものを制御するための制御基板が収容されていてもよい。また、筐体の内部に収容されるものは、制御基板でなくてもよい。制御基板以外のものを収容するための筐体に本発明が適用されてもよい。
【0031】
本実施形態では、筐体100は、アルミニウムによって形成されている。筐体100がロボットコントローラとして用いられる場合には、ロボット60を動作させている間に制御基板80から大きな熱が発生する。そのため、筐体100は、放熱性の高いアルミニウムによって形成されている。
【0032】
また、本実施形態では、直方体の形状を有する筐体100は、断面がコ字型に形成された筐体形成部材10が用いられて形成されている。
【0033】
図3に、筐体100を構成する2つの筐体形成部材10についての斜視図を示す。筐体形成部材10は、筐体100における下部に位置し接地する面を有している。
【0034】
筐体形成部材10は、3つの板状の部分がそれぞれ垂直に接続されることにより、断面がコ字型に形成されている。また、断面がコ字型に形成された筐体形成部材10は、2つのL字型の部品が組み立てられて形成されている。
【0035】
図4に、筐体形成部材10が、2つの部品(第1部品、第2部品)11、12に分割された状態の筐体形成部材10についての斜視図を示す。
【0036】
部品11、12は、それぞれ2つの板状の部分の板部における主面のなす角度が90度となるように接続されることにより、断面がL字型に形成されている。本実施形態では、部品11は、2つの板部11a、11bにおける主面のなす角度が90度となるように接続されることにより、断面がL字型に形成されている。すなわち、2つの板部11a、11bは、主面のなす角度が90度となるように接続されている。本実施形態では、2つの板部11a、11bにおける主面は、板部11a、11bの外側の面である。同様に、部品12は、2つの板部12a、12bにおける主面のなす角度が90度となるように接続されることにより、断面がL字型に形成されている。すなわち、2つの板部12a、12bは、主面のなす角度が90度となるように接続されている。本実施形態では、2つの板部12a、12bにおける主面は、板部12a、12bの外側の面である。
【0037】
次に、筐体100の製作方法について説明する。
【0038】
本実施形態では、筐体形成部材10の一部を構成し、断面がL字型の部品30が、ダイカストによって形成される。部品30は、直交する2つの板部30a、30bによって断面がL字型となるように構成されている。
【0039】
図5に、部品30がダイカストによって形成される際の、金型50及び部品30の断面図を示す。
【0040】
金型(第1金型)50は、上型(第1型)51と、下型(第2型)52とを有している。上型51及び下型52が、相対的に近接、離間することが可能に構成されている。
【0041】
上型51と下型52との間には、部品30の形状に対応したキャビティ53が形成されている。キャビティ53は、直交する2つの板部30a、30bによって形成された部品30をダイカストによって形成するためのものである。部品30が製作される際には、キャビティ53の内部に、アルミニウムが溶融された溶湯が圧入される。その後、キャビティ53の内部で溶湯が冷却され、そこで溶湯が固化されることにより部品30が形成される。そのため、結果的に、キャビティ53の形状に沿った形状を有し、アルミニウムによって形成された部品30が形成される。
【0042】
キャビティ53は、部品30に対応して金型50に形成され、直交する2つの板部30a、30bに対応した板部用キャビティ53a、53bを有している。キャビティ53は、金型50の内部で、2つの板部30a、30bの主面同士が交差して形成された交線lが最も下側の位置に配置されるように形成されている。つまり、2つの板部同士が交差して形成された交線lに対応する位置が、金型50内で最も下側に位置するように、キャビティ53が形成されている。また、交線lから一方の板部30bの延びる方向が水平面に対し傾く姿勢で部品30が形成されるように、キャビティ53が形成されている。従って、キャビティ53においては、2つの板部30a、30b同士が交差して形成された交線lに対応する位置が最も下側の位置にある。また、キャビティ53においては、交線lから、板部30bを形成する部位の延びる方向が、水平面に対し傾いて形成されている。
【0043】
そのため、本実施形態では、部品30に形成された2つの板部30a、30bのうち、金型50内で下側に位置する板部30bの延びる方向が水平面に対し傾く姿勢で、部品30が形成される。本実施形態では、板部30bの延びる方向が水平面に対し1度以上2度以下の角度αで傾く姿勢で、部品30が形成される。
【0044】
また、部品30に形成された2つの板部30a、30bが互いに直交しているので、部品30に形成された2つの板部30a、30bのうち、金型50内で上側に位置する板部30aの延びる方向についても鉛直方向に対し傾く姿勢で、部品30が形成される。本実施形態では、板部30aの延びる方向が鉛直方向に対し1度以上2度以下の角度αで傾く姿勢で、部品30が形成される。特に、板部30bが水平面に対し傾く角度及び板部30aの延びる方向が鉛直方向に対し傾く角度αは、1.5度以上であることが望ましい。なお、あまり大きく傾けた場合には、板部に形成されたネジ穴等の形状により、金型からの抜きが難しくなる可能性がある。そのため、本実施形態においては、板部30bが水平面に対し傾く角度及び板部30aの延びる方向が鉛直方向に対し傾く角度αは、1度以上2度以下の角度であることが好ましい。
【0045】
図6(a)~(d)を参照して部品30がダイカストによって形成される際の各工程について説明する。また、図7に、本実施形態の筐体100の製作方法によって筐体100が製作される際のフローについてのフローチャートを示す。
【0046】
まず、図6(a)に示されるように、金型50における上型51と下型52とを近接させ、図6(b)に示されるように上型51と下型52とを当接させる。上型51と下型52とが当接して金型50が閉じた状態となることにより、上型51と下型52との間にキャビティ53が形成される。
【0047】
キャビティ53が形成されると、図6(c)に示されるように、金型50内で傾いて形成されたキャビティ53の内部にアルミニウムが熱されて溶融した溶湯が注入される。ここでは、キャビティ53の隅々に亘って溶湯が行き渡るように、溶湯に圧力がかけられた状態で、溶湯がキャビティ53の内部に注入される。このように、溶湯がキャビティ53の内部に圧入される(S1)。
【0048】
キャビティ53の内部に溶湯が圧入され金型50が冷却されると、金型50の内部で溶湯が固化することによって部品30がキャビティ53に対応した形状に形成される。これにより、所望の形状となった部品30が、キャビティ53の内部で形成される。
【0049】
キャビティ53内部で部品30が形成されると、金型50における上型51と下型52とが離間する(S2)。上型51と下型52とが離間すると、図6(d)に示されるように、上型51と下型52との間で形成された部品30がキャビティ53から取り出される。本実施形態では、上型51と下型52とが相対的に離間したときに、部品30が上型51に付着した状態で、部品30がキャビティ53から取り出される。部品30がキャビティ53から取り出されると、部品30が上型51から取り外され、部品30が金型50から取り出される(S3)。
【0050】
このとき、金型50が上型51と下型52とに2つに分割され、2つの板部30a、30bにおける2つの外側の面(主面)を、上型51及び下型52のうちの1つの型のみで成型することによって、部品30が形成されている。本実施形態では、下型52の成型によって、2つの板部30a、30bにおける2つの外側の面(主面)が形成されている。
【0051】
このように、本実施形態では、ダイカストによって部品30が製作される。本実施形態では、ダイカストによって種類の異なる部品30が複数形成され、部品30のうちの1つの部品11が、筐体形成部材10を構成する部品11、12のうちの、一方の部品(第1部品)11として機能する。また、一方の部品11を形成する金型は、一方の金型(第1金型)50として機能する。このように、ダイカストによって、筐体形成部材10を構成する部品11、12のうちの一方の部品11が形成される(第1部品形成工程)。一方の部品11が一方の金型50の内部で形成されると、一方の部品11が一方の金型50から取り出される(S3)。
【0052】
ダイカストによって一方の部品11が形成されると、筐体形成部材10を構成する部品11、12のうち、他方の部品(第2部品)12が形成される。
【0053】
図4に示されるように、一方の部品11と他方の部品12とは形状が異なるので、他方の部品12を製作する際には、一方の部品11を製作する際に用いられた金型(第1金型)とは異なる金型(第2金型)が用いられる。しかしながら、一方の部品11と他方の部品12とは概ね同じ構成を有しているので、他方の部品12の製作工程では、一方の部品11の製作工程と同様の製作工程が用いられる。従って、他方の部品12を製作する際についても、図6(a)~(d)に示される製作工程によって製作される。
【0054】
つまり、図6(a)に示されるように他方の金型(第2金型)の上型(第3型)と下型(第4型)とが離間した状態から、図6(b)に示されるように他方の金型の上型と下型とが当接して、これらの間にキャビティが形成される。他方の金型の上型と下型との間にキャビティが形成されると、図6(c)に示されるように、他方の金型内で傾いて形成されたキャビティの内部に溶湯が圧入される(S4)。他方の金型内に溶湯が圧入されると、そこで他方の金型が冷却され、他方の金型の内部で溶湯が固化することによって他方の部品が形成される。これにより、他方の部品(第2部品)が、キャビティの内部で形成される(第2部品形成工程)。キャビティ内部で他方の部品が形成されると、他方の金型における上型と下型とが離間する(S5)。上型と下型とが離間することにより、図6(d)に示されるように、上型と下型との間で形成された他方の部品が上型に付着してキャビティから取り出される。他方の部品がキャビティから取り出されると、他方の部品が上型から取り外され、他方の部品が他方の金型から取り出される(S6)。
【0055】
なお、本実施形態では、2つの部品11、12が、互いに異なる形状を有している構成について説明している。そのため、部品11を形成するための一方の金型(第1金型)と、部品12を形成するための他方の金型(第2金型)との間では、キャビティの形状が異なる形態について説明している。しかしながら、本発明は上記実施形態に限定されない。部品11(第1部品)の形状と部品12(第2部品)の形状とが、同じ形状であってもよい。
【0056】
その場合、部品11を形成するための金型と、部品12を形成するための金型とが、共通したものであってもよい。共通した上型(第5型)及び下型(第6型)を有する共通した金型(第3金型)によって同じ形状を有する2つの部品(第3部品)を製作することで、筐体形成部材10を構成する2つの部品を形成してもよい。すなわち、共通した2つの部品(第3部品)を形成する工程(第3部品形成工程)を2回行い、共通した部品を2つ形成する。このように、共通した金型によって2つの部品(第3部品)を製作するので、必要な金型の数を減少させることができ、筐体100の製造コストを少なく抑えることができる。
【0057】
ダイカストによって筐体形成部材10を構成する2つの部品11、12の両方が形成されると、部品11、12が組み立てられることにより、筐体形成部材10が形成される(筐体形成部材組立工程)(S7)。本実施形態では、2つの部品11、12が互いにネジによって締結されることにより、筐体形成部材10が組み立てられる。
【0058】
なお、共通した金型によって2つの部品が形成される際には、そこで得られた共通した部品を2つ用い、2つの部品を組み立てることにより、筐体形成部材10が形成されてもよい。このとき、共通した2つの部品がネジによって締結されることにより、筐体形成部材10が組み立てられてもよい。
【0059】
2つの部品11、12が互いに締結されることにより、筐体形成部材10が形成される。本実施形態では、一方の部品11の有する2つの板部11a、11bのうちの板部11bと、他方の部品12の有する板部12a、12bのうちの板部12aとが、互いに接続されて一つの板部13を形成している。従って、結果的に、筐体形成部材10は、3つの板部11a、13、12bを有している。
【0060】
一方の部品11を構成する板部11aと板部11bとは、主面のなす角が90度となるように接続されているので、板部11aと板部13とは、外側の面同士のなす角が90度となるように接続されている。また、他方の部品12を構成する板部12aと板部12bとは外側の面同士のなす角が90度となるように接続されているので、板部11aと板部13とは、外側の面同士のなす角が90度となるように接続されている。従って、筐体形成部材10を構成する3つの板部11a、13、12bは、それぞれ外側の面同士のなす角が90度となるように、コ字型に接続されている。
【0061】
筐体形成部材10が形成されると、筐体形成部材10を用いて筐体100が形成される(筐体形成工程)(S8)。本実施形態では、コ字型の筐体形成部材10に対し、他の側面を取り付けると共に、筐体100の上側に位置した面を取り付けることにより、筐体100を形成する。
【0062】
図1に示されるように、筐体100においては、接地されて底面となる面F1と、面F1に隣接した面F2と、面F2に対向した面(不図示)が、筐体形成部材10として、ダイカストによって一体的に形成されている。面F1、面F2及び面F2に対向した面以外の面が、筐体形成部材10に取り付けられ、筐体100が形成される。
【0063】
このように、ダイカストによって得られた部品11、12が組み立てられて筐体形成部材10が形成され、筐体形成部材10が用いられて筐体100が形成される。
【0064】
なお、上記実施形態では、ネジによる締結によって2つの部品11、12が組み立てられ、筐体形成部材10が形成される形態について説明している。しかしながら、本発明は上記実施形態に限定されず、部品同士の間の組み立ては、ネジによる締結以外の方法によって行われてもよい。例えば、接着剤による接着等、他の方法によって部品同士の間の組み立てが行われてもよい。
【0065】
本実施形態によれば、ダイカストによって部品11、12が形成され、部品11、12を組み立てることによって筐体形成部材10が形成される。筐体形成部材10が分割された部品11、12のそれぞれが、ダイカストによって形成される。従って、部品11、12をダイカストによって製作する際に、2つの板部を有して構成された部品11、12をそれぞれ製作するので、部品11、12を、2つの板部が接続されたL字型の形状に形成することができる。また、部品11、12のそれぞれが2つの板部を有してL字型に形成されるので、2つの板部同士が、外側の面同士のなす角が90度となるような関係が維持された状態で接続されて、部品11、12を形成することができる。これにより、筐体形成部材10における隣接する面同士の間で、外側の面同士のなす角が90度となるように接続されて、筐体100が形成される。従って、筐体100において、隣接する板部材の間で、外側の面同士のなす角が90度となるように接続される。これにより、筐体100において、隣接する板部材の間における外側の面同士のなす角が90度となる関係が維持される。
【0066】
特に、筐体形成部材10を構成する3つの板部11a、13、12bの外側の面同士のなす角が90度となるように、板部11a、13、12bが互いに接続されている。筐体100の隣接する面同士の間のなす角が90度である関係が維持されるので、筐体100の接地する面を変更したとしても、筐体100を安定した状態で配置させることができる。筐体100の設置スペースに合わせて筐体100の姿勢を変えて配置したとしても、筐体100を安定して配置することができるので、筐体100を置くための小さなスペースが空いている場合に、空いたスペースに合わせて姿勢を変更して筐体100を配置することができる。例えば、細長い狭小なスペースしか設置スペースがないような場合にも、設置スペースに合わせて筐体100の姿勢を変えて配置すると共に、筐体100を安定して配置することができる。これにより、筐体100の設置のためのスペースをより効率的に使用することができる。また、安定して筐体100を配置することができるので、筐体100が倒れることを抑えることができ、筐体100の信頼性を向上させることができる。従って、筐体100がロボットのコントローラとして用いられる場合には、コントローラの信頼性を向上させることができる。
【0067】
特に、ロボットを設置する際には、ロボットの設置される場所によっては、制御基板80を収納したコントローラとしての筐体100の設置スペースが限られる場合がある。そのような場合には、限られたスペースに合わせて姿勢を変え、筐体100をスペースに収まるように配置することが求められる。例えば、設置スペースが細長い形状である場合には、図1に示される筐体100の状態から、姿勢を変更して筐体100を設置スペースに配置することが考えられる。図1に示される状態では、筐体100は、面F1が接地した状態で配置されているが、姿勢を変更し、面F2が接地した状態で配置することが考えられる。このように、筐体100が姿勢を変更して配置されることにより、設置スペースが細長い場合には、細長い設置スペースに合わせて筐体100を配置させることができる。これにより、設置スペースを効率的に用いることができる。
【0068】
また、筐体100の隣接する面同士の間の直交した関係が維持されるので、筐体100の意匠面の品質を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、金型50が上型51と下型52とに2つに分割され、2つの板部30a、30bにおける2つの外側の面(主面)を上型51及び下型52のうちの1つの型のみで成型することによって、部品30が形成されている。従って、板部30a、30bにおける主面としての外側の面が、1つの型(下型52)によって成型されて形成されている。これにより、板部30a、30bにおける主面としての外側の面同士のなす角が90度となるように、板部30a、30bにおける外側の面を精度良く形成することができる。
【0070】
また、部品30が、金型50の内部で傾いた姿勢で形成される。金型50の内部で、2つの板部30a、30bの外側の面同士が交差して形成された交線lが最も下側の位置に配置され、且つ、交線lから一方の板部30bの延びる方向が水平面に対し傾く姿勢で部品30が形成されるように、キャビティ53が形成されている。そのため、キャビティ53は、金型50の内部で、下側に向かって凸形状となるように形成されている。キャビティ53における板部30a、30bに対応する部分のそれぞれが、抜き勾配を有するように構成されている。従って、金型50によって製作された部品30は、2つの板部30a、30b同士が直交するように形成されていても、部品30を金型50から抜く際の抜き勾配が確保されている。板部30aの外側の面が鉛直方向に対し傾き、板部30bの外側の面が水平方向に対し傾いているので、部品30の抜き勾配が確保されている。従って、部品30がダイカストによって製作されて部品30が金型50から取り出される際に、部品30を金型50から円滑に取り出すことができる。
【0071】
また、外側の面だけでなく、ダイカストによって製作された部品11、12のそれぞれにおける2つの板部の間の直交した関係が維持されるので、部品11、12が組み立てられて形成された筐体形成部材10における隣接する板部材同士の間の直交した関係が維持される。従って、筐体100が組み立てられた際に、筐体100において隣接する板部材同士の間の直交した関係が維持される。このとき、筐体100における筐体形成部材10を構成する板部材同士の間の直交した関係が維持される。
【0072】
また、本実施形態では、部品に抜き勾配を形成する必要がなく、部品を構成する板部の側面をテーパ状に形成する必要がないので、それぞれの板部の板厚を均一に形成することができる。従って、筐体100の意匠面の品質をさらに向上させることができる。また、部品を構成する板部の板厚を均一に形成することができるので、板部同士が接続された部分の周辺が厚く形成されずに済む。従って、板部同士が接続された部分の周辺で、スペースをより大きく確保することができる。これにより、板部同士が接続された部分の周辺のスペースに付属品等を収納することができ、筐体としてより多くのものを収納することができる。このように、筐体内部の空間をより効率的に使用することができる。
【0073】
一般に、ロボットのコントローラとして筐体が用いられる場合には、筐体が比較的大きくなってしまう可能性が高い。筐体が小さい場合には、金型からの抜き勾配を形成するために筐体の隣接する面同士のなす角度において90度からずれが生じたとしても、そのことによる影響は小さいので問題にはならない。しかしながら、筐体のサイズが大きくなってしまう場合には、隣接する面同士のなす角度が90度からわずかにずれたとしても、そのことによる影響が大きくなってしまう。筐体のサイズが大きい場合には、隣接する面同士のなす角度の90度からのずれがわずかであっても、そのずれによって生じる勾配の大きさが大きくなってしまい、対向する面の端部同士の間で高低差が大きくなってしまう。そのため、筐体における接地させる面を変更させるように姿勢を変えた場合に、筐体の接地した面が傾いていることから、筐体の配置が不安定になる可能性がある。筐体が不安定な状態で配置されていることから、筐体が配置されている間に接触や揺れがあったときに筐体が倒れてしまう可能性がある。
【0074】
従来には、比較的大きな筐体をダイカストによって製作する際には、抜き勾配を形成したことによる隣接する面同士の交差する角度の直角からのずれによる突出した部分を切削することによって除去する場合もあった。これによって、隣接する面同士のなす角度が90度に保たれた筐体を製作することができる。しかしながら、このように突出した部分を切削によって除去する方法では、筐体における突出した部分を除去する工程が必要になり、その分余計に手間がかかっていた。また、除去される部分が無駄に廃棄され、その分材料が多く必要とされ、余分な材料の分の製造コストが高くなっていた。
【0075】
本実施形態の筐体100では、大きなサイズの筐体100であっても、板部30a、30bの間の直交した関係が維持された状態で、金型50からの抜き勾配が確保される。板部30a、30bの間のなす角度が90度である関係が維持されるので、結果的に、筐体100における隣接する面同士の間のなす角度が90度である関係が維持される。そのため、筐体100における接地させる面を変更させるように姿勢を変えた場合にも、筐体100を安定した状態で配置することができる。
【0076】
また、抜き勾配を形成せずに隣接する面同士の間のなす角度が90度である関係を維持するために、金型の構造を変更することも考えられる。金型における型同士の間の型締め及び型開きの態様、動作を変更することによって、部材における隣接する面同士の間の直角な関係を維持することが考えられる。しかしながら、金型における型同士の間の型締め及び型開きの態様、動作を部材に対応させるために変更させてダイカストを行う場合、金型の形状、動作が複雑になる。従って、金型の製造コストが大きくなってしまう可能性がある。
【0077】
本実施形態では、金型50が上型51と下型52とに2つに分割され、2つの板部30a、30bにおける2つの外側の面(主面)を上型51及び下型52のうちの1つの型のみで成型することによって、部品30が形成されている。金型50が上型51と下型52とに2つに分割され、板部30a、30bにおける主面としての外側の面同士のなす角が90度となるように、板部30a、30bにおける外側の面が精度良く形成されるので、簡易な構成の金型50によって、外側の面同士のなす角が90度となるように交差した部品を精度良く形成することができる。金型50の構成を簡易にすることができるので、筐体100の製造コストを少なく抑えることができる。
【0078】
また、本実施形態では、筐体100を形成するための部品30がそれぞれアルミニウムによって形成され、結果的に筐体100がアルミニウムによって形成される。従って、筐体100は、放熱性能が高く維持される。
【0079】
本実施形態では、筐体100は、内部にロボット60の動作を制御するための制御基板80を収容し、ロボットコントローラとして構成されている。そのため、制御基板80からは大きな熱が発生する。本実施形態では、筐体100がアルミニウムによって形成されているので、制御基板80から発生した熱が効率的に筐体100の外部へ放出される。従って、熱による制御基板80の機能への影響を少なく抑えることができる。
【0080】
また、筐体100がアルミニウムによって製作されるので、筐体100を軽量化することができる。従って、筐体100の持ち運びを容易に行うことができる。
【0081】
また、本実施形態では、アルミニウムによって形成された部品30が、ダイカストによって製作される。従って、ダイカストによってアルミニウムの製品である部品30を低コストで大量に製作することができる。
【0082】
また、L字型の部品30を組み立ててコ字型の筐体形成部材10が形成され、筐体形成部材10を用いて箱型の筐体100が形成されるので、L字型の部品30の段階で部品30に基板や付属品を取り付ける作業を行うことができる。L字型の部品30の段階で基板や付属品が部品30に取り付けられるので、上側に開放された空間で基板や付属品の部品30への取り付け作業を行うことができる。そのため、筐体100への基板や付属品の取り付け作業を行い易く、取り付け作業を含めた組み立てを容易に行うことができる。
【0083】
また、本実施形態では、図4に示されるように、筐体100における内側の面に様々な加工が施されている。特に、筐体100をロボットのコントローラとして用いる場合には、基板を筐体100の内部に取り付けたときに、基板で発生した熱を筐体100の側面に伝達させて熱を筐体100側に吸収させ、筐体100の側面の一部をヒートシンクとして用いる場合がある。そのような場合、筐体100の側面の内側に、基板を載せる部位とヒートシンクとして機能する部位とを形成するので、筐体100の側面の内側の形状が複雑になる場合がある。
【0084】
このように筐体100の側面の内側を複雑な形状とする際に、筐体100の側面の内側の部分への加工を機械加工によって行う場合がある。筐体100の内側の面を複雑な形状とするための加工を機械加工によって行う場合、切削機械の刃を板状の部材で囲まれた空間に入れ、刃を板状の部材の内側の面に突き当てる必要がある。部材がコ字型に形成されている場合には、刃を入れるための空間が制限され、刃を板状の部材で囲まれた空間に入れることが難しい場合がある。
【0085】
本実施形態では、部品30の段階で内側の面に加工を行うことができる。本実施形態では、筐体100を製作する途中の段階で、コ字型の筐体形成部材10が、L字型の部品30に分割されている。L字型の部品30の段階で内側の面に加工を行うことが可能なので、上側が開放されてスペースを制限されずに部品30の内側の面に加工を行うことができる。従って、部品30の内側の面の加工を容易に精度良く行うことができる。
【0086】
また、L字型の部品30の段階で基板や付属品が部品30に取り付けられるので、筐体100の内側の側面に付属品を取り付ける場合であっても、部品30の背面が接地された状態で安定して付属品の取り付けを行うことができる。
【0087】
図8は、部品30に付属品を取り付ける場合の、各工程の部品30について示した側面図である。図8では、付属品として、上下に2つの基板が部品30に取り付けられる形態について説明する。
【0088】
まず、図8(a)に示されるように、部品30の接地される側の板部30bに、下方に配置される基板70が取り付けられる。基板70は、板部30bにおける内側の面に沿って取り付けられる。このとき、接地される側の板部30bの外側の面が接地した状態で、安定して基板70を板部30bに取り付けることができる。
【0089】
接地される側の板部30bへの基板70の取り付けが行われると、図8(b)に示されるように、部品30の姿勢を変え、接地された面を変更させる。これにより、基板70の取り付けの際に接地されていた板部30bが直立し、基板70の取り付けの際に直立していた板部30aが接地される。
【0090】
部品30が姿勢を変え、板部30aが接地されると、上方に取り付けられる基板71が、板部30aに取り付けられる。基板71は、板部30aの側面から板部30bの延びる方向に沿って取り付けられる。このとき、接地される側の板部30aの外側の面が接地した状態で、安定して基板71を板部30aに取り付けることができる。
【0091】
本実施形態では、基板71を板部30aに取り付けるために、支持部72を介して基板71が板部30aに取り付けられている。基板71が支持部72に取り付けられ、支持部72に形成された穴73を介してネジによって支持部72が板部30aに取り付けられる。従って、ネジが板部30aに直交した状態で、ネジによって支持部72を板部30aに取り付けることができる。これにより、安定した状態で支持部72の板部30aへの取り付けを行うことができる。
【0092】
このように、本実施形態では、L字型の部品30に対し付属品が取り付けられるので、板部30bの外側の面が接地された状態で板部30bに対し付属品を取り付けることができる。また、板部30aの外側の面が接地された状態で板部30aの内側の面に対し付属品を取り付けることができる。従って、L字型の部品30の2つの板部の両方に対し、板部が接地されて安定した状態で付属品を取り付けることができる。従って、筐体100への付属品の取り付けを容易に行うことができる。また、付属品を筐体100に確実に取り付けることができ、筐体100の信頼性を向上させることができる。
【0093】
なお、上記実施形態では、溶湯はアルミニウムが溶融されて形成された形態について説明しているが、本発明は上記実施形態に限定されない。溶湯は、アルミニウム以外の材料によって形成されてもよい。金属として筐体を形成することができるのであれば、他の種類の溶湯が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0094】
30 部品
30a、30b 板部
50 金型
53 キャビティ
100 筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8