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特許70461603次元細胞培養のための培養容器およびこれを利用した3次元細胞共培養方法
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  • 特許-3次元細胞培養のための培養容器およびこれを利用した3次元細胞共培養方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-24
(45)【発行日】2022-04-01
(54)【発明の名称】3次元細胞培養のための培養容器およびこれを利用した3次元細胞共培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/32 20060101AFI20220325BHJP
   C12N 5/00 20060101ALI20220325BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20220325BHJP
【FI】
C12M1/32
C12N5/00
C12M3/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020511163
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 KR2018009688
(87)【国際公開番号】W WO2019039875
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-02-21
(31)【優先権主張番号】10-2017-0106348
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0097285
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513269240
【氏名又は名称】コリア インスティチュート オブ インダストリアル テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】517082560
【氏名又は名称】セフォ カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】305026873
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】515111060
【氏名又は名称】韓国標準科学研究院
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESERCH INSTITUTE OF STANDARDS AND SCIENCE
【住所又は居所原語表記】267 Gajeong-ro,Yuseong-gu,Daejeon 34113,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】イ ドンモク
(72)【発明者】
【氏名】イ ウジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ウジン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒョンスク
(72)【発明者】
【氏名】イ スンレ
(72)【発明者】
【氏名】キム キヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ソンボム
(72)【発明者】
【氏名】キム クァンロク
(72)【発明者】
【氏名】コ ボムソク
(72)【発明者】
【氏名】チョエ キョンジン
(72)【発明者】
【氏名】ナム ヘジン
(72)【発明者】
【氏名】カン ドクジン
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-509663(JP,A)
【文献】特許第4632400(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元細胞培養のための培養容器において、
前記培養容器の底面上に位置する中空ののそれぞれの内部に形成されたウェル(well)と、前記ウェルの内部に3つまたは4つが互いに離隔して形成され、前記柱から突出した複数の支持部とを含み、
前記複数の支持部は、その最上端が前記柱の20~60%の高さに位置し、細胞が接種された3次元構造体に対する支持が可能な3次元細胞培養のための培養容器。
【請求項2】
前記支持部は、前記培養容器の底面から離隔して位置することを特徴とする請求項1に記載の3次元細胞培養のための培養容器。
【請求項3】
前記支持部は、前記培養容器の底面に接する形態であって、前記柱の側面に沿って支持部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の3次元細胞培養のための培養容器。
【請求項4】
前記ウェルの断面部を基準として、前記柱から前記支持部の終端までの距離は、前記ウェルの直径対比15~30%であることを特徴とする請求項1に記載の3次元細胞培養のための培養容器。
【請求項5】
前記支持部と接する前記柱領域のうち少なくとも一部と前記柱領域に接する前記支持部領域のうち少なくとも一部が除去されたことを特徴とする請求項3に記載の3次元細胞培養のための培養容器。
【請求項6】
3次元細胞培養のための培養容器において、
前記培養容器の底面上に位置する中空ののそれぞれの内部に形成されたウェル(well)と、前記ウェルの内部に3つまたは4つが互いに離隔して形成され、前記培養容器の底面から突出した複数の支持部とを含み、
前記複数の支持部は、その上端表面のうち少なくとも一部が凹状に掘られた形態で構成され、その最上端が前記柱の20~60%の高さに位置し、細胞が接種された3次元構造体に対する支持が可能な3次元細胞培養のための培養容器。
【請求項7】
前記支持部の上端表面は、端部領域と中央部領域に区分され、前記中央部領域は、凹状に掘られた形態であり、前記端部領域は、フラットにしたり突出方向に凸状に突出した形態であり、前記支持部の上端表面で、前記端部領域は、10~30%、前記中央部領域は、70~90%の面積を占めることを特徴とする請求項6に記載の3次元細胞培養のための培養容器。
【請求項8】
前記支持部の上端は、曲面形態で構成されていることを特徴とする請求項6に記載の3次元細胞培養のための培養容器。
【請求項9】
培養容器の底面上に位置する中空ののそれぞれの内部に形成されたウェル(well)と、該ウェルの内部に3つまたは4つが前記柱または前記底面から突出し、互いに離隔して形成された複数の支持部とをそれぞれ含む培養容器を利用した3次元細胞共培養方法であって、
前記培養容器を準備する準備段階と、
第1細胞を前記ウェルの内部に接種する接種段階と、
前記第1細胞を培養した後、上澄み液を除去し、培養液を少なくとも一部交換する交換段階と、
第2細胞が接種された3次元構造体を前記支持部上に位置させて共培養する共培養段階と、を含み、
前記準備段階で、前記支持部の最上端は、前記柱の20~60%の高さに位置する3次元細胞共培養方法。
【請求項10】
前記共培養段階の後に、1~5日間隔で前記培養液を交替する交換段階;をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の3次元細胞共培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元細胞培養のための培養容器およびこれを利用した3次元細胞共培養方法に関し、より詳細には、従来とは異なって、培養容器の底面から離隔した位置で細胞が培養されることによって、3次元細胞培養構造物に必要な空気の供給が円滑な3次元細胞培養のための培養容器およびこれを利用した3次元細胞共培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の培養は、バイオ分野研究において最も基本となる研究方法であって、生命体の機能研究だけでなく、人体疾患を研究するのにも非常に広範囲に用いられている。一般的な真核細胞(eukaryotic cell)の細胞培養方法が開発および確立されて以来、40年余りが経過したが、付着細胞(adherent cell)の成長を支持するために現在まで最も頻繁に使用されている方法は、ポリスチレン(polystyrene),ポリプロピレン(polypropylene)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリカーボネート(PC)のような合成ポリマー樹脂あるいはガラス(glass)よりなる基質からなる2次元表面で細胞を培養することである。
【0003】
しかしながら、単層細胞培養方法である2次元的細胞培養法により成長する細胞は、細胞が良好に付着し得るように処理された培養容器の表面に付着して成長するので、3次元的生体組織環境で成長する細胞と多くの差異点を示す。したがって、2次元的および3次元的細胞培養は、全般的な形態学的差異を示し、また、通常の2次元的細胞培養を通じて起こる受容体の発現、遺伝子の転写調節、細胞の移動およびアポトーシス(apoptosis)など多くの複雑な生命現象が実際生体組織環境で起こる現象と大きく異なっているので、2次元的細胞培養方法は、3次元上で細胞が成長する生体の生理的環境を正確に反映できないという問題点を有している。
【0004】
実際に、肥満、糖尿、動脈硬化などのような代謝性疾患(metabolic disease)の治療剤の開発時に、初期試験管内(in vitro)実験では優れた薬効を示した薬物が生体内(in vivo)動物実験では薬効が顕著に劣るなど新薬の開発に多くの困難が伴っている。このような問題を解決するためには、治療剤の開発の初期段階から薬物の正確な効能および毒性を予測できる生体内モデルと類似した試験管内モデルが必要である。
【0005】
従来の細胞培養容器は、3次元細胞の培養時に空間的限界によって空気の供給と循環が円滑でないため、3次元細胞の成長と組織形成が十分に行われにくいので、薬物スクリーニングや毒性試験に適用するのに困難があった。
【0006】
したがって、このような問題点を解決するために、3次元細胞の速い成長に適しており、かつ、2次元と3次元の共培養も可能な細胞培養容器に対する技術開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題点を解決するためのものであって、従来とは異なって、培養容器の底面から離隔した位置で細胞が培養されることによって、3次元細胞培養構造物に必要な空気循環と供給が円滑な3次元細胞培養のための培養容器およびこれを利用した3次元細胞共培養方法を提供することを目的とする。
【0008】
培養容器上に3次元構造体を別に支持する支持部の構造を具現することによって、3次元構造体の挿入と獲得および除去が容易であることを目的とする。
【0009】
また、3次元培養に最適化した支持部の構造によって、空気循環と培養液内栄養成分の円滑な供給により3次元細胞培養だけでなく、二つ以上の細胞を共培養する場合、これを効率的に維持できることを目的とする。
【0010】
本発明による3次元細胞培養方法は、細胞の成長が速く、多様なサイズ調節が可能であり、3次元培養分化した細胞は、動物代替試験に適用して、薬物スクリーニングや毒性試験などに効果的に利用することができる。
【0011】
また、支持部領域が内側に掘られた形態で設計することによって、柱に突出した支持部による外観収縮現象を防止して、耐久性が高い3次元細胞培養のための培養容器およびこれを利用した3次元細胞共培養方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、損傷した人体組織機能を復元するための3次元細胞培養および分化あるいは組織培養容器として活用可能であることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明による3次元細胞培養のための培養容器は、前記培養容器の底面上に位置する柱によりウェル(well)が形成され、前記ウェルの内部には、前記柱から突出した少なくとも一つの支持部を含むことができる。
【0014】
前記支持部は、前記培養容器の底面から離隔して前記柱の20~60%の高さに位置することができる。
【0015】
または、前記支持部は、前記培養容器の底面に接する形態であって、前記柱の側面に沿って支持部が形成され得る。ここで、前記支持部の最上端は、前記培養容器から前記柱の20~60%の高さに位置することができる。
【0016】
本発明による3次元細胞培養のための培養容器において、前記ウェルの断面部を基準として、前記柱から前記支持部の終端までの距離は、前記ウェルの直径対比15~30%でありうる。
【0017】
また、前記支持部と接する前記柱領域のうち少なくとも一部と前記柱領域に接する前記支持部領域のうち少なくとも一部が除去され得る。
【0018】
また、本発明による3次元細胞培養のための培養容器は、前記培養容器の底面上に位置する柱によりウェル(well)が形成され、前記ウェルの内部には、前記培養容器の底面から突出した少なくとも一つの支持部を含み、前記支持部の上端表面のうち少なくとも一部が凹状に掘られた形態で構成され得る。前記支持部の上端表面は、端部領域と中央部領域に区分され、前記中央部領域は、凹状に掘られた形態であり、前記端部領域は、フラットにしたり、突出方向に凸状に突出した形態であり、前記支持部の上端表面で、前記端部領域は、10~30%、前記中央部領域は、70~90%の面積を占めることができる。
【0019】
前記支持部の上端は、曲面形態で構成され、前記支持部の最上端は、前記柱の20~60%の高さに位置することができる。
【0020】
また、本発明による3次元細胞共培養方法は、培養容器の底面上に位置する柱により形成されたウェル(well)の内部に前記柱または前記底面から突出した少なくとも一つの支持部を含む3次元細胞培養のための培養容器を準備する準備段階と、第1細胞を前記ウェルの内部に接種する接種段階と、前記第1細胞を培養した後、上澄み液を除去し、培養液を少なくとも一部交換する交換段階と、第2細胞が接種された3次元構造体を前記支持部上に位置させて共培養する共培養段階とを含むことができる。
【0021】
前記共培養段階の後に、1~5日間隔で前記培養液を交替する交換段階;をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の3次元細胞培養のための培養容器およびこれを利用した3次元細胞共培養方法によれば、従来とは異なって、培養容器の底面から離隔した位置で細胞が培養されることによって、3次元細胞培養構造物に必要な酸素供給が円滑であるという長所がある。
【0023】
培養容器上に3次元構造体を別に支持する支持部の構造を具現することによって、3次元構造体の挿入と獲得および除去が容易であるという長所がある。
【0024】
また、3次元培養に最適化された支持部の構造によって、3次元細胞培養だけでなく、2種類以上の細胞共培養を効率的に進行できるという長所がある。
【0025】
本発明による3次元細胞培養方法は、細胞の成長が速く、多様なサイズ調節が可能であり、生体模写モデルあるいは動物代替試験法で薬物スクリーニングや薬効確認、毒性試験などにさらに効果的であるという長所がある。
【0026】
また、支持部領域が内側に掘られた形態で設計することによって、柱に突出した支持部による外観収縮現象を防止して、耐久性が高いという長所がある。
【0027】
また、損傷した人体組織機能を復元するための3次元細胞培養および組織培養容器として活用可能であるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の3次元細胞培養のための培養容器の第1実施例を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の3次元細胞培養のための培養容器の第1実施例を示す平面図である。
図3図3は、本発明の3次元細胞培養のための培養容器の第2実施例を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の3次元細胞培養のための培養容器の16ウェル形態を示す斜視図である。
図5図5は、本発明の3次元細胞培養のための培養容器の第3実施例を示す斜視図である。
図6図6は、本発明の3次元細胞培養のための培養容器の第3実施例を示す外面図である。
図7図7は、本発明の3次元細胞培養のための培養容器の第4実施例を示す斜視図である。
図8図8は、本発明の3次元細胞培養のための培養容器の第4実施例を示す平面図である。
図9図9は、本発明の3次元細胞培養のための培養容器の第5実施例を示す平面図である。
図10図10は、本発明の3次元細胞培養のための培養容器の第6実施例を示す平面図である。
図11図11は、本発明の3次元細胞培養のための培養容器で3次元細胞培養を実施した実験結果を示すグラフである。
図12図12は、本発明の3次元細胞培養のための培養容器を具現した具現例であって、(a)は、具現された培養容器で細胞が含まれたビーズを培養するイメージ、および(b)は、細胞が含まれたビーズを培養容器で取得する段階を示すイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明による3次元細胞培養のための培養容器およびこれを利用した3次元細胞共培養方法について本発明の好ましい一つの実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。本発明は、下記の実施例によりさらに良好に理解され得、下記の実施例は、本発明の例示目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲により限定される保護範囲を制限しようとするものではない。
【0030】
図1および図2に示されたように、本発明の3次元細胞培養のための培養容器100の第1実施例は、培養容器の底面110上に位置する柱120によりウェル(well)140が形成され、前記ウェル140の内部には、前記柱120から突出した少なくとも一つの支持部130を含むことができる。
【0031】
まず、培養容器の底面110は、基礎を形成する面であって、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ガラスなど細胞培養に適用されるいずれの素材で構成されてもよい。
【0032】
前記柱120は、培養容器の底面110に接して形成され、底面110と同じ素材で構成されることが好ましく、一体に形成され得る。柱120は、一つの培養容器の底面110上に複数個位置することができ、各柱120ごとにウェル140が形成され得る。図4に示されたように、16ウェル、96ウェルのように多様な数のウェルを有するように構成され得る。
【0033】
柱120の断面形態は、円形または多角形であってもよく、好ましくは、楕円形または円形、最も好ましくは、円形でありうる。
【0034】
前記支持部130は、前記培養容器の底面110から離隔して前記底面110から前記柱120の20~60%の高さに位置することが好ましく、より好ましくは25~50%の高さに位置し、最も好ましくは30~35%の高さに位置することが効果的である。20%未満の高さに位置する場合には、下部での細胞への円滑な空気循環および供給が難しく、60%を超過する高さに位置する場合には、支持部130上に載置される3次元細胞構造体とウェル140に入れた他の細胞間の共培養が行われにくいという問題がある。
【0035】
また、図2に示されたように、前記ウェル140の断面部を基準として、前記柱120から前記支持部130の終端までの距離は、ウェル140の直径対比15~30%であることが好ましく、より好ましくは20~25%、最も好ましくは22~23%であることが効果的である。15%未満である場合には、3次元細胞構造体を安定的に支持しにくく、30%を超過する場合には、支持部130の底面110からの離隔効果が劣り、すなわち円滑な空気循環および供給が難しいため、細胞成長に悪影響を与える問題がある。
【0036】
前記支持部130の個数は、2~5個であることが好ましく、より好ましくは、3~4個、最も好ましくは、3個であることが効果的である。2個未満の場合には、事実上3次元細胞構造体の支持が不可能であり、5個を超過する場合には、支持部130と培養容器の底面110間のオープン空間が過度に狭いため、空気循環および供給、2種以上の細胞共培養などの効率が顕著に低下する問題がある。
【0037】
図3に示されたように、本発明の3次元細胞培養のための培養容器100の第2実施例は、前記支持部130は、前記培養容器の底面110に接する形態であって、前記柱120の側面に沿って支持部130が形成され得る。
【0038】
このように、前記培養容器の底面110から柱120の側面に沿って支持部130が形成されるので、一体に形成が容易であり、製造工程が単純になり、経済性が高まるという長所がある。それだけでなく、支持部130が柱120の側面に沿って柱形態で形成されるので、より高い安定性と耐久性を有する。
【0039】
ここで、前記支持部130の最上端は、前記培養容器の底面110から前記柱120の20~60%の高さに位置することが好ましく、より好ましくは、25~50%の高さに位置し、最も好ましくは、30~35%の高さに位置することが効果的である。20%未満の高さに位置する場合には、下部での細胞への円滑な酸素供給が難しく、60%を超過する高さに位置する場合には、支持部130上に載置される3次元細胞構造体とウェル140に入れた他の細胞間の共培養が行われにくいという問題がある。
【0040】
図5および図6に示されたように、本発明の3次元細胞培養のための培養容器100の第3実施例は、前記支持部130と接する前記柱120領域のうち少なくとも一部と前記柱120領域に接する前記支持部130領域のうち少なくとも一部が除去され得る。
【0041】
ここで、支持部130領域のうち除去された一部の領域と支持部130と接する柱120領域のうち除去された一部は、図5および図6に示されたアンダーカット領域150であって、ウェル140の内部に形成された支持部130の表面を除いた残りの領域は、全部除去されることが好ましい。
【0042】
また、図7および図8に示されたように、本発明の3次元細胞培養のための培養容器100の第4実施例は、培養容器の底面110上に位置する柱120によりウェル(well)140が形成され、ウェル140の内部には、前記培養容器の底面110から突出した少なくとも一つの支持部130を含むことができる。これは、柱120でなく、培養容器の底面110上に支持部130が突出することによって、培養容器の底面110との3次元細胞構造体を離隔させる役割をする。
【0043】
前記支持部130の最上端は、前記培養容器の底面110から前記柱120の20~60%の高さに位置することが好ましく、より好ましくは、25~50%の高さに位置し、最も好ましくは、30~35%の高さに位置することが効果的である。20%未満の高さに位置する場合には、下部での細胞への円滑な酸素供給が難しく、60%を超過する高さに位置する場合には、支持部130上に載置される3次元細胞構造体とウェル140に入れた他の細胞間の共培養が行われにくい問題がある。
【0044】
図8に示されたように、前記ウェル140の断面部を基準として、前記支持部130の直径は、ウェル140の直径対比2~10%であることが好ましく、より好ましくは、4~8%、最も好ましくは、5~6%であることが効果的である。2%未満である場合には、3次元細胞構造体を安定的に支持しにくく、10%を超過する場合には、支持部130の培養容器の底面110からの離隔効果が劣り、すなわち円滑な空気循環と栄養成分の供給が難しいため、細胞成長に悪影響を与える問題がある。
【0045】
また、図9に示されたように、本発明の3次元細胞培養のための培養容器100の第5実施例は、前記支持部130の上端が曲面形態131で構成され得る。曲面で形成されることによって、角のある領域による細胞損傷を防止できると共に、細胞が接種された3次元構造体がさらに安定的に支持され得るので、生存率が高まる長所がある。
【0046】
図10に示されたように、本発明の3次元細胞培養のための培養容器100の第6実施例は、前記支持部130の上端表面のうち少なくとも一部が凹状に掘られた形態で構成され得る。支持部130上端の中央部位が最も深いように凹状に掘られているので、細胞支持がさらに安定的であるので、共培養の効率と生存率を顕著に向上させることができる。また、細胞が支持部130に接触する面が最小化され、凹状に掘られた面は、円滑な空気循環効果を最大化させることができるので、細胞成長に効果的である。
【0047】
前記支持部130の上端表面は、端部領域と中央部領域132に区分され、前記中央部領域132は、凹状に掘られた形態であり、前記端部領域は、フラットにしたり突出方向に凸状に突出した形態でありうる。細胞が端部領域にのみ接触することになって、損傷を最小化すると共に、円滑な空気循環により生存率が非常に高くなるという長所がある。
【0048】
前記支持部130の上端表面で、前記端部領域は、10~30%、前記中央部領域は、70~90%の面積を占めることができ、より好ましくは、前記端部領域は、15~20%、前記中央部領域は、80~85%の面積を占めることが効果的である。これは、細胞が安定的に支持されるための最適な面積を提供すると共に、細胞成長および生存率を最大限高めることができるように、数回の実験を通じて最適化された面積範囲である。
【0049】
次に、本発明の3次元細胞培養方法は、準備段階S10と、培養段階S11とを含むことができる。これは、本発明の3次元細胞培養のための培養容器構造を利用して効果的に細胞を培養できる方法である。
【0050】
まず、準備段階S10は、培養容器の底面上に位置する柱により形成されたウェル(well)の内部に前記柱から突出した少なくとも一つの支持部または前記培養容器の底面から突出した少なくとも一つの支持部を含む3次元細胞培養のための培養容器を準備する段階である。前記準備段階S10で、前記支持部の最上端は、前記柱または前記培養容器の底面から前記柱の20~60%の高さに位置することができる。
【0051】
培養段階S11は、細胞が接種された3次元構造体を前記支持部上に位置させて培養する段階である。3次元培養に最適化された支持部の構造によって、3次元細胞培養が効率的に進行される。
【0052】
次に、本発明の3次元細胞共培養方法は、準備段階S20と、接種段階S21と、交換段階S22と、共培養段階S23とを含むことができる。これは、第1細胞と第2細胞を本発明の3次元細胞培養のための培養容器構造を利用して効果的に共培養できる方法である。
【0053】
まず、準備段階S20は、培養容器上に位置する柱により形成されたウェル(well)の内部に前記柱から突出した少なくとも一つの支持部または前記培養容器の底面から突出した少なくとも一つの支持部を含む3次元細胞培養のための培養容器を準備する段階である。前記準備段階S20で、前記支持部の最上端は、前記柱または前記培養容器の底面から前記柱の20~60%の高さに位置することができる。
【0054】
接種段階S21は、第1細胞を前記ウェルの内部に接種する段階である。すなわち第1細胞と培養液をウェルの内部に接種することができる。
【0055】
ここで、第1細胞は、第2細胞と共培養が可能ないずれの細胞であってもよいが、正確には、付着細胞であってもよく、間葉系細胞あるいは間葉系幹細胞、脂肪前駆細胞、脂肪細胞、平滑筋細胞(Smooth Muscle Cell,SMC)またはマクロファージ(macrophage)のうち少なくとも一つでありうる。
【0056】
交換段階S22は、前記第1細胞を培養した後、上澄み液を除去し、培養液を少なくとも一部交換する段階である。ウェル内の培養液から第1細胞培養によって発生した上澄み液を除去し、培養液の一部または全部を交換することによって、共培養効率を高めることができる。
【0057】
共培養段階S23は、第2細胞が接種された3次元構造体を前記支持部上に位置させて共培養する段階である。ここで、3次元構造体は、ビーズまたは支持体の形態であることが好ましい。
【0058】
ここで、前記第2細胞は、培養可能な真核細胞であってもよく、より詳細には、上皮細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、幹細胞、臍帯血細胞、臍帯由来間葉系幹細胞(Umbilical cord mesenchymal stem cell,UCMSC)、脂肪由来間葉系幹細胞(Adipose derived mesenchymal stem cell,ADMSC)または骨髄由来間葉系幹細胞(Bone marrow-derived mesenchymal stem cell,BMMSC)のうち少なくとも一つでありうる。
【0059】
最後に、交換段階S24は、前記共培養段階S23の後に、1~5日間隔で前記培養液を交替する段階である。より好ましくは、2~3日間隔で交替することが効果的である。これは、細胞培養に必要な栄養成分の供給と培養中に生成される細胞生存阻害物質を除去することによって、細胞または組織が持続的に成長するようにするためである。
【0060】
実施例1:培養容器の製作および滅菌
本開発の実施例としてラピッドプロトタイピング(RP;rapid prototyping)装備を利用した任意形状製作(SFF;solid freeform fabrication)方式で1層、1層積層して形状を製作する3Dプリンティング技術を利用して培養容器を製作し、滅菌は、電子ビーム加速器を使用して行った。
【0061】
実施例2:第1細胞培養
本発明の3次元細胞培養のための培養容器を利用した3次元細胞培養の効果を測定するための実験として次のような条件で実験を実施した。
【0062】
-細胞:3T3-L1(脂肪前駆細胞)(2.45×10cells/5mL/Tube)、脂肪由来間葉系幹細胞(ADMSC)
-培養期間:7日間培養
-細胞計数:0、3、7日目細胞計数
-アルギネート混合:1.3%濃度
【0063】
第1細胞は、3T3-L1(脂肪前駆細胞)であって、具体的に、冷凍保管された第1細胞を37℃恒温水槽で解凍して15mlのチューブに移った後、基本培地(DMEM+ 1%antibiotics)を追加して1,500RPMで5分間遠心分離して上澄み液を除去し、もう一度基本培地を追加して前記の方法を繰り返すことによって、凍結保存液成分を完全に除去した後、100mmの培養皿にDMEM+1%antibiotics+10%FBSを含む培地とともに細胞を接種して、37℃、5%二酸化炭素培養器で培養し、4~5日後に十分に細胞が増殖すると、0.05%trypsin-EDTAを処理して、培養容器のウェル当たり細胞を1×10濃度で接種した。
【0064】
実施例3:第2細胞が含まれたビーズの製作
第2細胞は、脂肪由来間葉系幹細胞(Adipose derived mesenchymal stem cell,ADMSC)であって、第2細胞が接種された3次元構造体をビーズ形態に製作した。
【0065】
ビーズは、培養液、アルギネートおよびゼラチンをチューブに投入して65℃下で溶かすメルティング段階と、前記チューブの温度を37℃に下げ、前記チューブに前記第2細胞(2.45×10cells/5mL/Tube)を投入して、500RPMで2分間撹拌する撹拌段階と、前と記チューブ内の混合物をビーズ形態に作り、塩化カルシウム溶液に入れて架橋させ製造する製造段階とを含んで製造された。
【0066】
撹拌後には、遠心分離を通じて1500RPMでバブルを除去する。前記製造段階で、塩化カルシウム溶液の濃度は、5%にした。
【0067】
前記架橋されたビーズは、リン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline,PBS)で洗浄し、10%ウシ胎児血清が含有された培養液に入れて、37℃、5%二酸化炭素培養器で培養することによって、前記第2細胞が接種されたビーズ形態の3次元構造体を製造した。
【0068】
実施例4:支持体の製作と滅菌工程
支持体は、ポリカプロラクトンを利用して製作した。まず、ポリカプロラクトンをチューブに投入して90℃下で650~730kPaの圧力を加えた後には、エアコントローラーの吸入機能を利用して3次元支持体を製作し、電子ビーム加速度を利用して滅菌工程を処理した。
【0069】
実施例5:第2細胞が含まれた支持体を利用した3次元細胞培養
第2細胞が含まれた支持体を利用した3次元細胞培養は、第2細胞を25μlずつ4個のドロップ(drop)支持体上に接種した後、1時間の間培養し、1ml培地添加し、37℃、5%二酸化炭素の条件下で培養することによって、前記第2細胞が接種された支持体形態の3次元構造体を製造した。
【0070】
図11および図12に示されたように、本発明による培養容器を使用して実施した3次元細胞培養は、一般的な培養容器を利用した2次元細胞培養とは異なって、培養時間が経過するほど細胞数が減少せずに増加することが分かる。すなわち、本発明の培養容器で3次元細胞培養がさらに持続的に行われ得ることを実際の実験で確認することができた。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明は、多様な変化と変更および均等物を使用することができる。本発明は、前記実施例を適切に変形して同一に応用できることが明確である。したがって、前記記載内容は、下記特許請求の範囲の限界により定められる本発明の範囲を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、3次元細胞培養のための培養容器およびこれを利用した3次元細胞共培養方法に関するものであって、産業上の利用可能性がある。
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図12