(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】ロボットシステム及びロボット制御方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
(21)【出願番号】P 2017200433
(22)【出願日】2017-10-16
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】久下 守正
(72)【発明者】
【氏名】切通 隆則
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀幸
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-082060(JP,A)
【文献】特開2002-351531(JP,A)
【文献】特開平08-029359(JP,A)
【文献】特開2014-205206(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0081459(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/16-13/08
G01B 11/22
G05B 19/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの厚み及び表面欠陥の少なくとも一方の検査を行う検査装置と、
前記検査装置に対する前記ワークの相対位置を変化させるロボットと、
前記ワークの少なくとも一部の形状を計測する計測装置と、
前記ワークの3次元データに基づいて設定された教示点を記憶する教示データ記憶部と、
前記ワークの自重による撓み及び前記ワークの内部歪みの少なくとも一方に起因する形状の差異を示す差異データを、前記計測装置の計測結果と前記ワークの3次元データとを比較することで算出する差異データ算出部と、
前記教示点を、前記差異データに基づいて補正した補正教示点を算出する教示データ補正部と、
前記補正教示点に基づいて前記ロボットを動作させることで前記検査装置による前記ワークの検査を行わせる動作制御部と、
を備え
、
前記ロボットが前記ワークを保持して移動させることで、当該ワークの端部が前記検査装置により検査され、
前記計測装置は、前記ワークの端部の鉛直方向の位置を計測することを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
請求項
1に記載のロボットシステムであって、
前記計測装置は、前記ワークの端部の少なくとも1点の鉛直方向の位置を計測し、
前記差異データ算出部は、前記計測装置の計測結果に基づいて、前記ワークの端部のうち、計測された部分だけでなく、計測されていない部分についても前記差異データを算出することを特徴とするロボットシステム。
【請求項3】
請求項
1に記載のロボットシステムであって、
前記計測装置は、前記ワークの端部の少なくとも3点の鉛直方向の位置を計測し、
前記差異データ算出部は、前記計測装置の計測結果に基づいて、鉛直方向の形状だけでなく、前記ワークの向きについても前記差異データを算出することを特徴とするロボットシステム。
【請求項4】
ワークの厚み及び表面欠陥の少なくとも一方の検査を行う検査装置と、
前記検査装置に対する前記ワークの相対位置を変化させるロボットと、
前記ワークの少なくとも一部の形状を計測する計測装置と、
前記ワークの3次元データに基づいて設定された教示点を記憶する教示データ記憶部と、
前記ワークの自重による撓み及び前記ワークの内部歪みの少なくとも一方に起因する形状の差異を示す差異データを、前記計測装置の計測結果と前記ワークの3次元データとを比較することで算出する差異データ算出部と、
前記教示点を、前記差異データに基づいて補正した補正教示点を算出する教示データ補正部と、
前記補正教示点に基づいて前記ロボットを動作させることで前記検査装置による前記ワークの検査を行わせる動作制御部と、
を備え
、
前記検査装置及び前記計測装置が前記ロボットに取り付けられており、
前記ロボットは、作業台に前記ワークを置いた状態で当該ワークに対して計測及び検査を行うことを特徴とするロボットシステム。
【請求項5】
請求項
4に記載のロボットシステムであって、
前記計測装置は、前記ワークまでの距離を計測
することを特徴とするロボットシステム。
【請求項6】
請求項
5に記載のロボットシステムであって、
前記ロボットの移動方向において、前記検査装置よりも前側に前記計測装置が取り付けられており、
前記計測装置による計測が行われた位置において、前記差異データ及び前記補正教示点が算出されて当該補正教示点に基づいて前記ワークに対する前記ロボットの高さが調整された状態で、前記検査装置による検査が行われることを特徴とするロボットシステム。
【請求項7】
請求項
5に記載のロボットシステムであって、
前記ロボットには、3つ以上の前記計測装置が取り付けられており、
前記計測装置の計測結果に基づいて、前記差異データ及び前記補正教示点が算出されることで、前記ワークに対する前記ロボットの高さだけでなく、前記ワークに対する前記ロボットの向きについても調整された状態で、前記検査装置による前記ワークの該当位置の検査が行われることを特徴とするロボットシステム。
【請求項8】
請求項1
から7までの何れか一項に記載のロボットシステムであって、
前記検査装置による前記ワークの検査と並行して、前記差異データ算出部による前記差異データの算出及び前記教示データ補正部による前記補正教示点の算出を行うことを特徴とするロボットシステム。
【請求項9】
請求項1
から7までの何れか一項に記載のロボットシステムであって、
前記差異データ算出部による前記差異データの算出及び前記教示データ補正部による前記補正教示点の算出が行われた後に、前記検査装置による前記ワークの検査が行われることを特徴とするロボットシステム。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載のロボットシステムであって、
前記ワークがガラス板であることを特徴とするロボットシステム。
【請求項11】
ワークの厚み及び表面欠陥の少なくとも一方の検査を行う検査装置に対して前記ワークを相対移動させることで前記ワークの検査を補助するロボットを制御するロボット制御方法において、
前記ワークの少なくとも一部の形状を
計測装置で計測して計測結果を取得する計測結果取得工程と、
前記ワークの自重による撓み及び前記ワークの内部歪みの少なくとも一方に起因する形状の差異を示す差異データを、前記計測結果取得工程での計測結果と前記ワークの3次元データとを比較することで算出する差異データ算出工程と、
前記ワークの3次元データに基づいて設定された教示点を、前記差異データに基づいて補正した補正教示点を算出する補正教示点算出工程と、
前記補正教示点に基づいて前記ロボットを動作させることで前記検査装置による前記ワークの検査を行わせる動作制御工程と、
を含み
、
前記ロボットが前記ワークを保持して移動させることで、当該ワークの端部が前記検査装置により検査され、
前記計測装置は、前記ワークの端部の鉛直方向の位置を計測することを特徴とするロボット制御方法。
【請求項12】
ワークの厚み及び表面欠陥の少なくとも一方の検査を行う検査装置に対して前記ワークを相対移動させることで前記ワークの検査を補助するロボットを制御するロボット制御方法において、
前記ワークの少なくとも一部の形状を
計測装置で計測して計測結果を取得する計測結果取得工程と、
前記ワークの自重による撓み及び前記ワークの内部歪みの少なくとも一方に起因する形状の差異を示す差異データを、前記計測結果取得工程での計測結果と前記ワークの3次元データとを比較することで算出する差異データ算出工程と、
前記ワークの3次元データに基づいて設定された教示点を、前記差異データに基づいて補正した補正教示点を算出する補正教示点算出工程と、
前記補正教示点に基づいて前記ロボットを動作させることで前記検査装置による前記ワークの検査を行わせる動作制御工程と、
を含み、
前記検査装置及び前記計測装置が前記ロボットに取り付けられており、
前記ロボットは、作業台に前記ワークを置いた状態で当該ワークに対して計測及び検査を行うことを特徴とするロボット制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、3次元データを用いてロボットに教示が行われるロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、平板状かつ剛性が低い検査対象物(以下、ワーク)に対して検査を行う場合、ワークを載置面に置いて検査を行うことで、ワークの自重による撓みを防止しつつ、検査を行うことができる。しかし、例えば湾曲した板状のワークに対して検査を行う場合、ワークを載置面に置いた場合でも、ワークの剛性によっては、ワークが自重により撓むことがある。
【0003】
特許文献1には、ガラス板の設計データに基づいて、ガラス板を検査台に載置させたときの形状を示す仮想設計データを算出し、この仮想設計データによりガラス板の形状を検査する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、ロボットを用いてワークの検査を行わせる方法が知られている。この方法では、ロボットの動作手順を記述した3次元CADデータに基づくプログラムを作成する必要がある。上述のように検査時においてワークが撓む場合は、検査時のワークの形状と3次元CADデータ上のワークの形状とが異なるため、このプログラムの作成が困難となる。以上の事情により、撓みが生じるワークに対して形状に応じた検査をロボットに行わせるためにはロボットに直接教示する必要があり、採用する際の障害となっている。そのため、従来では、目視による検査が行われていた。また、特許文献1では、撓みを考慮してガラス板の形状を検査する方法を開示しているだけであり、撓みが生じたワーク(ガラス板)に対して、形状に応じた検査を行うことは開示されていない。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、撓みが生じたワークに対しても、ワークの形状に応じた検査を直接教示することなしにロボットに行わせることが可能なロボットシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のロボットシステムが提供される。即ち、このロボットシステムは、検査装置と、ロボットと、計測装置と、教示データ記憶部と、差異データ算出部と、教示データ補正部と、動作制御部と、を備える。前記検査装置は、ワークの厚み及び表面欠陥の少なくとも一方の検査を行う。前記ロボットは、前記検査装置に対する前記ワークの相対位置を変化させる。前記計測装置は、前記ワークの少なくとも一部の形状を計測する。前記教示データ記憶部は、前記ワークの3次元データに基づいて設定された教示点を記憶する。前記差異データ算出部は、前記ワークの自重による撓み及び前記ワークの内部歪みの少なくとも一方に起因する形状の差異を示す差異データを、前記計測装置の計測結果と前記ワークの3次元データとを比較することで算出する。前記教示データ補正部は、前記教示点を、前記差異データに基づいて補正した補正教示点を算出する。前記動作制御部は、前記補正教示点に基づいて前記ロボットを動作させることで前記検査装置による前記ワークの検査を行わせる。前記ロボットが前記ワークを保持して移動させることで、当該ワークの端部が前記検査装置により検査される。前記計測装置は、前記ワークの端部の鉛直方向の位置を計測する。
本発明の別の観点によれば、前記検査装置及び前記計測装置が前記ロボットに取り付けられており、前記ロボットは、作業台に前記ワークを置いた状態で当該ワークに対して計測及び検査を行うことが好ましい。
【0009】
本発明の第2の観点によれば、以下のロボット制御方法が提供される。即ち、このロボット制御方法では、ワークの厚み及び表面欠陥の少なくとも一方の検査を行う検査装置に対して前記ワークを相対移動させることで前記ワークの検査を補助するロボットを制御する。このロボット制御方法は、計測結果取得工程と、差異データ算出工程と、補正教示点算出工程と、動作制御工程と、を含む。前記計測結果取得工程では、前記ワークの少なくとも一部の形状を計測装置で計測して計測結果を取得する。前記差異データ算出工程では、前記ワークの自重による撓み及び前記ワークの内部歪みの少なくとも一方に起因する形状の差異を示す差異データを、前記計測結果取得工程での計測結果と前記ワークの3次元データとを比較することで算出する。前記補正教示点算出工程では、前記ワークの3次元データに基づいて設定された教示点を、前記差異データに基づいて補正した補正教示点を算出する。前記動作制御工程では、前記補正教示点に基づいて前記ロボットを動作させることで前記検査装置による前記ワークの検査を行わせる。前記ロボットが前記ワークを保持して移動させることで、当該ワークの端部が前記検査装置により検査される。前記計測装置は、前記ワークの端部の鉛直方向の位置を計測する。
本発明の別の観点によれば、前記検査装置及び前記計測装置が前記ロボットに取り付けられており、前記ロボットは、作業台に前記ワークを置いた状態で当該ワークに対して計測及び検査を行うことが好ましい。
【0010】
これにより、ワークの3次元データと実際の形状との差異に基づいて教示点を補正できるので、撓みが生じたワークの形状に応じた適切な検査を直接教示することなしにロボットに行わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撓みが生じたワークに対しても、ワークの形状に応じた検査を直接教示することなしにロボットに行わせることが可能なロボットシステムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係るロボットシステムの構成を示すブロック図。
【
図2】ロボットがワークを保持して検査を行う様子を示す斜視図。
【
図3】3次元データを用いて教示を行う処理を示すフローチャート。
【
図4】内部歪み及び撓みによりワークが変形する様子を示す模式図。
【
図5】ワークの検査を開始する前に教示データの補正を行う処理を示すフローチャート。
【
図6】ワークの検査と並行して教示データの補正を行う処理を示すフローチャート。
【
図7】ワークの端部の1点のみを計測する様子を示す図、及び、それにより作成される補正教示データを示す表。
【
図8】ワークの端部の複数点を計測する様子を示す図、及び、それにより作成される補正教示データを示す表。
【
図9】ワークの端部の複数点の鉛直方向の位置及び水平方向の位置を計測する様子を示す図、及び、それにより作成される補正教示データを示す表。
【
図10】第2実施形態で行われる検査の様子を示す斜視図。
【
図11】ワークと検査装置の距離に応じてロボットの位置を補正する様子を示す図。
【
図12】ワークと検査装置の距離及び傾きに応じてロボットの位置を補正する様子を示す図。
【
図13】距離センサを増やすことでワークの端部においても傾きを計測できることを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1を参照して第1実施形態のロボットシステム1について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るロボットシステム1の構成を示すブロック図である。
【0014】
ロボットシステム1は、ロボット10と、制御装置20と、教示装置30と、を備えている。ロボットシステム1は、教示装置30によりロボット10の教示を行って教示データを作成し、この教示データを用いて制御装置20がロボット10を制御することで、検査対象物であるワーク100に対して所定の検査が行われる。
【0015】
本発明においてロボット10が行う検査は、ワーク100の形状に応じてロボット10を動作させる必要がある検査である。この検査としては、例えばワーク100の表面欠陥を調べる検査、ワーク100の厚みを調べる検査等がある。
【0016】
本実施形態のロボットシステム1は、作業時においてワーク100の撓みの影響が無視できない場合に特に有効である。従って、ワーク100は、撓みが生じ易い形状(湾曲又は屈曲等が含まれる板状、3軸の立体座標系で表面形状を表したときに3軸全ての値が変化する部分を有する形状等)であることが好ましい。また、ワーク100の材料としては、ヤング率等の弾性率が小さいこと(即ち剛性が低い材料であること)が好ましい。以下では、一例として、ガラス板の表面欠陥を検査する作業について説明する。
【0017】
なお、本実施形態のロボットシステム1は、様々な用途のガラス板に対して検査を行うことが可能であるが、例えば自動車等の乗物用の窓ガラス(特にプロジェクタが照射した映像を表示するヘッドアップディスプレイに用いられるガラス)や、曲面形状の有機ELパネルや液晶パネルに用いられるガラスは、曲面形状かつ要求される品質が高いので、本実施形態の機能を特に有効に活用できる。
【0018】
ロボット10は、支持台11と、多関節アーム12と、エンドエフェクタ13と、を備える。支持台11は施設内の所定の位置に固定されている。多関節アーム12は、複数の関節を有しており、各関節にはアクチュエータが備えられている。これらのアクチュエータが制御装置20により制御されることで、多関節アーム12の姿勢(位置)及び速度が調整される。エンドエフェクタ13は、多関節アーム12の先端に取り付けられている。エンドエフェクタ13には、例えばワーク100を把持するためのツールが取り付けられる。
【0019】
制御装置20は、公知のコンピュータにより構成されており、演算装置(CPU等)と記憶装置(ROM、RAM、HDD等)を備えている。また、この記憶装置には、各種のプログラムが記憶されている。演算装置がこのプログラムをRAM等に読み出して実行することで制御装置20はロボット10に関する様々な制御を行う。これにより、制御装置20を動作制御部21として機能させることができる。動作制御部21は、上記の多関節アーム12及びエンドエフェクタ13を制御する。また、制御装置20は、教示装置30が作成した教示データを記憶する教示データ記憶部22を備える。
【0020】
教示装置30は、公知のコンピュータにロボット10の教示を行うためのソフトウェアがインストールされた構成である。従って、教示装置30も制御装置20と同様に演算装置及び記憶装置を備えている。教示装置30は、3次元データ読込み部31と、教示データ作成部32と、差異データ算出部33と、教示データ補正部34と、を備える。なお、これらが行う処理については後述する。
【0021】
ここで、本実施形態のロボットシステム1では、制御装置20と教示装置30が異なるハードウェアから構成されているが、本発明の機能が発揮できるのであれば、ハードウェアの構成は任意である。例えば、制御装置20と教示装置30とが同じハードウェアであってもよいし、制御装置20と教示装置30に加えて別のハードウェアを更に備える構成であってもよい。また、本実施形態の教示装置30が有する機能の少なくとも一部を制御装置20に持たせてもよいし、制御装置20が有する機能の少なくとも一部を教示装置30に持たせてもよい。
【0022】
次に、ロボットシステム1を用いて行う検査の内容及び検査を行うための機器について、更に
図2を参照して説明する。
図2は、ロボット10がワーク100を保持して作業を行う様子を示す斜視図である。
【0023】
本実施形態のワーク100は板状であり、面積が大きい2つの面(厚み方向に略垂直な面)を主表面101と称する。また、2つの主表面を接続する面(厚み方向に略平行な面)を端面102と称する。また、端面102及びその近傍(即ち主表面101の縁部)を含む部分を端部と称する。本実施形態では、ワーク100の端部の表面欠陥(傷、欠け、異常形状等)の有無及び程度等を調べる検査を行う方法を説明する。
【0024】
この検査は、
図2に示す端部検査装置(検査装置)40を用いて行われる。端部検査装置40は、一例として3方が壁面で囲まれた検査領域を有しており、これらの3方の壁面には撮像孔41がそれぞれ形成されている。撮像孔41の内部にはCCD等の撮像装置が配置されている。この構成により、2つの主表面101の縁部及び端面102の画像がそれぞれ撮影される。この画像を解析することで、ワーク100の端部の表面欠陥を検査することができる。
【0025】
ロボット10は、エンドエフェクタ13によりワーク100を保持した状態で、当該ワーク100の端部を端部検査装置40の検査領域まで移動させることで、ワーク100の端部の検査を行う。また、ロボット10は、ワーク100が端部検査装置40等に当たらないように多関節アーム12の姿勢を変えつつエンドエフェクタ13を回転させることで、ワーク100の全ての端部(検査対象が一部の端部の場合は、当該一部の端部)について端部検査装置40による検査が行われる。また、端部検査装置40による検査結果は、ワーク100の検査等を管理する検査システム管理装置60に送信される。また、端部検査装置40の近傍には、距離センサ71及び水平形状センサ72等の計測装置が配置されており、ワーク100の形状を計測する。なお、計測装置による計測及びそれに伴う処理については後述する。
【0026】
次に、ロボット10を教示する際に教示装置30が行う処理について
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
ここで、本実施形態の教示装置30は、ロボット10を実際に動かすのではなく、コンピュータ上で構築される仮想空間においてロボット10、周辺装置、及びワーク100の3次元モデルを配置して教示を行う。初めに、教示装置30(3次元データ読込み部31)は、ワーク100の3次元データを読み込む(S101)。ここで、教示装置30が読み込む3次元データは、設計時等に作成した3次元のCADデータである。なお、この3次元データでは、無重力状態で外力を受けていない状態でのワーク100の形状を示すデータである。これにより、仮想空間上にワーク100を表示することができる。
【0028】
次に、教示装置30は、作業者の入力等に基づいて、ワーク100の作業箇所、作業順序、作業内容、及び作業条件等を設定する(S102)。次に、教示装置30(教示データ作成部32)は、ステップS102で設定した内容に基づいて、ロボット10(エンドエフェクタ13)に行わせる動作の順序に応じて空間上の点(座標)を教示点として設定する処理を自動で行う(S103)。また、教示点には、空間上の位置だけでなく向き(x軸回りの回転角α、y軸回りの回転角β)についても設定される、なお、本実施形態では、ロボット10に教示を行うことで作成したデータであって、ロボット10を制御するために用いられるデータ(教示点及び作業条件等が含まれたデータ)を教示データと称する。
【0029】
次に、教示装置30は、作成した教示データに基づいて、仮想空間上でロボット10を動作させるシミュレーションを行うことで、ロボット10の動作及び干渉等のチェックを行う(S104)。そして、干渉等が生じず、かつ、作業者が教示データが適切であると判断することで教示作業が完了し、教示データが保存される(S105)。教示装置30に保存された教示データは、有線通信又は無線通信により制御装置20へ送られる。以上により、ロボット10に教示を行うことができる。
【0030】
次に、ワーク100が自重による撓み及び内部歪みにより変形することが、ワーク100の検査に及ぼす影響について
図4を参照して説明する。
【0031】
本実施形態のワーク100であるガラス板は、高温状態から冷却を行うことで製造される。このとき、ガラス板の内部の温度ムラ等に起因して内部歪みが発生することで、
図4(a)に示すように、ガラス板が変形することがある。従って、3次元データ上のワーク100と、実際のワーク100と、は形状に差異が生じることがある。更に、実際の作業時においては、ガラス板のように剛性が低いワーク100は、エンドエフェクタ13によって中央近傍が保持されることで、
図4(b)に示すように、ワーク100(特に端部)に自重による撓みが生じる。なお、ワーク100の内部歪みによる変形と、ワーク100の自重による撓みのうち一方のみが生じることもある。
【0032】
ここで、教示装置30が読み込んだワーク100の3次元データは、撓み及び内部歪み等に起因する変形が生じていない形状のデータである。そのため、ワーク100の3次元データを用いて教示装置30が作成した教示データを用いて制御装置20がロボット10を制御する場合、ワーク100が端部検査装置40等の周辺機器に接触してしまう可能性がある。また、接触しない場合であっても、端部検査装置40が撮像を行う位置及び向きがズレることで、正しい検査結果が得られない可能性がある。
【0033】
以上を考慮し、本実施形態では、自重による撓み及び内部歪みによりワーク100が変形することを考慮して、教示データを補正しつつ、ワーク100の検査を行う。
【0034】
撓み等により変形したワーク100を考慮して教示データを補正する処理としては、ワーク100の検査前に予め教示データを補正する方法と、ワーク100の検査と並行して教示データを補正する方法と、がある。
【0035】
初めに、ワーク100の検査前に予め教示データを補正する方法について、
図5を参照して説明する。教示装置30は、計測装置によるワーク100の形状の計測結果を取得する(S201)。なお、ワーク100の形状の計測方法(計測機器及び計測箇所等)には様々なバリエーションがあり、詳細は後述する。
【0036】
次に、教示装置30(差異データ算出部33)は、ワーク100の三次元データと、ワーク100の計測結果と、を比較して、これらの形状の差異を示す差異データを算出する(S202)。次に、教示装置30は、差異データの値が閾値以上か否かを判定する(S203)。差異データの値が閾値より小さい場合は、ワーク100の3次元データと、計測結果(実際のワーク100の形状)と、の差異が小さいため、教示装置30は、事前に作成した教示データの補正を行うことなく、制御装置20へワーク100の検査を指示する(S205)。
【0037】
一方、差異データの値が閾値以上である場合は、教示装置30(教示データ補正部34)は、ワーク100の3次元データと、計測結果(実際のワーク100の形状)と、の差異に応じて、事前に作成した教示データを補正して補正教示データを作成する(S204)。また、この補正教示データは、制御装置20へ送信される。その後、教示装置30は、制御装置20へワーク100の検査を指示する(S205)。制御装置20が補正教示データに基づいてロボット10を制御することで、ワーク100の検査が行われる。
【0038】
次に、ワーク100の検査と並行して教示データを補正する方法について、
図6を参照して説明する。教示装置30は、ワーク100の検査の開始後において、検査のためにワークを移動させる過程において、計測装置によるワーク100の形状の計測結果を取得する(S301)。
【0039】
次に、教示装置30(差異データ算出部33)は、計測結果を取得した範囲において、ワーク100の三次元データと、ワークの計測結果と、を比較して、これらの形状の差異を示す差異データを算出する(S302)。なお、
図6の処理では、ワーク100の検査と計測が並行して行われるため、ステップS302で算出される差異データもワーク100の一部分の差異データである。
【0040】
次に、教示装置30は、差異データの値が閾値以上か否かを判定する(S303)。差異データの値が閾値以上である場合は、教示装置30(教示データ補正部34)は、差異データを算出した範囲において補正教示データを作成する(S304)。また、この補正教示データは、制御装置20へ送信される。次に、教示装置30は、ワーク100の検査が完了したか否かを判断し(S305)、ワーク100の検査が完了していない場合は、再びステップS301以降の処理を行う。このように、ステップS301からS305の処理を繰り返すことで、ワーク100の検査と並行して教示データを補正することができる。また、これらの処理はオンラインで即座に実行されるので安定した検査が行われる。
【0041】
ワーク100の検査前に教示データを補正する場合、教示データの補正が完了した状態でロボット10を制御できるため、ワーク100を素早く移動させた場合であっても衝突が生じる可能性が低い。これに対し、ワーク100の検査と並行して教示データを補正する場合、事前の計測作業が不要となる。このように、これらの処理は長所が異なるため、どちらのタイミングで教示データを補正するかは、計測に掛かる時間、計測装置の構成、要求される仕様等に基づいて決定することが好ましい。
【0042】
次に、ワーク100の計測方法及び教示データの補正方法について複数の例を挙げて説明する。なお、以下で説明する処理は、基本的には、ワーク100の検査前に予め教示データを補正する方法、ワーク100の検査と並行して教示データを補正する方法の何れにも適用可能である。また、以下で説明する補正方法は、全てのワーク100に対して行ってもよいし、ロットが変更された場合の最初のワーク100に対して行ってもよいし、同じ形状のワーク100に対して1回のみ行ってもよい。
【0043】
初めに、
図7を参照して、ワーク100の端部の1点のみを計測して教示データを補正する処理を説明する。
【0044】
第1実施形態では、検査対象がワーク100の端部であるため、ワーク100の端部の位置が重要である。また、エンドエフェクタ13がワーク100の中央を把持する場合であって、ワーク100の厚み等が一様であれば、ワーク100の端部の変形量(3次元データのワーク100との差異)は大きくは異ならないと考えられる。以上を考慮し、
図7の補正方法では、
図7(a)に示すように、レーザセンサ等の距離センサ71により計測を行うことで、距離センサ71からワーク100の端部までの距離が1点計測される。ここで、教示装置30は、距離センサ71と3次元データ上のワーク100の端部の形状及び位置を把握しているため、距離センサ71の計測結果に基づいて、ワーク100の端部の鉛直方向下方への変形量ΔZを算出することができる。
【0045】
また、教示装置30は、変形量ΔZの影響を打ち消すために、
図7(b)に示すように、全ての教示点のz方向の値をΔZ変化させる。なお、教示点の値を変更する処理に代えて、教示点の座標のz軸の基準点をΔZ変化させてもよい。教示点の値の変更及び教示点の座標の変更の何れが補正された場合であっても、この補正が行われた後の教示点を補正教示点と称する。また、補正教示点を含む教示データを補正教示データと称する。
【0046】
図7の補正方法は、ワーク100の1点を計測するだけで全ての教示点を補正することができるので、計測及び教示データの補正に必要な時間を短くすることができる。
【0047】
なお、
図7の補正方法を応用して、ワーク100の端部が4辺である場合、第1辺から第4辺について1回ずつ鉛直方向の変形量を計測し、ワーク100の第1辺を検査する場合の教示点を第1辺の計測結果に応じて補正し、第2辺を検査する場合の教示点を第2辺の計測結果に応じて補正する等の処理を行うこともできる。
【0048】
次に、
図8を参照して、ワーク100の端部の3点以上を計測して教示データを補正する処理を説明する。
【0049】
図8の補正方法では、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、ワーク100の端部のうち、3点の鉛直方向の位置が計測されることで、鉛直方向の変形量が計測される。計測方法としては、
図8(a)に示すように距離センサ71を固定してワーク100を移動させる構成であってもよいし、ワーク100に対して距離センサ71を移動させる構成であってもよいし、複数の距離センサ71でそれぞれの位置を計測する構成であってもよい。
【0050】
また、教示装置30は、3点の鉛直方向の変形量に基づいて、ワーク100の端部の鉛直方向の変形量と、2つの回転角と、を算出する。これに基づいて、
図8(c)に示すように、各教示点の鉛直方向の変形量(Zi)、2つの回転角(αi、βi)を補正する。
【0051】
また、水平方向の変位については、距離センサ71に加え、
図2及び
図9(b)に示す水平形状センサ72を用いることで計測することができる。水平形状センサ72は、鉛直方向の一側に平行光を照射する投光部が配置され、鉛直方向の他側に平行光を受光する受光部が配置されている。投光部と受光部の間にワーク100が位置した場合、ワーク100が存在する範囲においては受光部が平行光を受光しない。この構成により、ワーク100の形状(特に鉛直方向の一側から見た形状である水平形状)を計測できる。
【0052】
距離センサ71に加えて水平形状センサ72によりワーク100の計測を行うことで、ワーク100の実際の形状を詳細に検出することができる。例えば、ワーク100の検査前に予め教示データを補正する場合は、距離センサ71及び水平形状センサ72の計測結果から得られる差異データを用いて補正教示データを作成することで、ワーク100の端部が適切に検査されるようにワーク100を動かすことができる。この場合、
図9(d)に示すように、教示データの水平方向XをΔX変化させる。
【0053】
また、ワーク100の検査と並行して教示データを補正する場合は、端部検査装置40の近傍に距離センサ71及び水平形状センサ72を配置することが好ましい。この場合、初めは補正前の教示データを用いてロボット10を動作させつつワーク100の計測を行い、距離センサ71及び水平形状センサ72の計測結果に基づいてワーク100の端部の位置が適切な位置から外れそうになった場合は、それを補正するための補正教示データを作成して制御装置20がロボット10を制御することで、ワーク100の端部が適切に検査されるようにワーク100を動かすことができる。
【0054】
以上のようにして教示データの補正を行うことで、従来は人が行うことを余儀なくされていた検査をロボット10に行わせることができるので、検査の精度及び信頼性を高めたることができる。また、撓み等による変形が生じたワーク100に対しても教示データを自動的に作成するソフトウェアを利用できるため、教示作業に掛かる時間を低減できる。また、人が作業を行った場合と異なり、作業の結果をデータとして残すことができる。従って、これらの検査結果を統計的に処理することで、ワーク100の品質を管理できる。検査システムの管理者は、例えば、ワーク100の品質が他と比べて低いロットがあった場合に、ワーク100の品質が低くなった原因を特定し、必要に応じて改善することができる。
【0055】
次に、第2実施形態について
図10から
図13を参照して説明する。なお、以降の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0056】
第1実施形態では、ロボット10がワーク100を保持して移動させるが、第2実施形態では、ワーク100を作業台110に置いて作業を行う。この場合においても、
図11に示すように、ワーク100が作業台110から自重の垂直抗力を受けることで、ワーク100に撓みが生じる。また、上述の内部歪みによる変形も生じることがある。
【0057】
また、第2実施形態では、ロボット10に主表面検査装置(検査装置)50が設けられている。主表面検査装置50はカメラ等の撮像装置であり、主表面検査装置50が撮像した画像を解析することでワーク100の主表面101に生じている表面欠陥の有無及び程度等を検査できる。
【0058】
ロボット10は、置かれているワーク100と主表面検査装置50の距離が一定となるように、かつ、ワーク100と主表面検査装置50が垂直となるように多関節アーム12を動作させつつ、ワーク100の表面に沿って主表面検査装置50を移動させることで検査を行う。これにより、ワーク100の主表面101の全体の表面欠陥を検査できる。なお、ワーク100の主表面101の一部のみの検査を行う構成であってもよい。
【0059】
ここで、ワーク100に対する主表面検査装置50の位置又は向きが変化した場合、主表面検査装置50のカメラの焦点がズレたり、撮像される画像の大きさが変化したりするため、適切な検査を行うことができない。従って、第1実施形態と同様、教示データを補正する必要がある。
【0060】
第2実施形態では、ワーク100の形状を計測する距離センサ71がロボット10に設けられている。第2実施形態では、基本的にはワーク100の検査と並行してワーク100の計測及び教示データの補正を行う。ただし、事前にワーク100の形状を計測して事前に教示データを補正する構成であってもよい。
【0061】
図11に示す例では、ロボット10(エンドエフェクタ13)に主表面検査装置50と、1つの距離センサ71と、が設けられている。ワーク100の検査中において距離センサ71は、距離センサ71からワーク100までの鉛直方向の距離を計測する。教示装置30は、距離センサ71と3次元データのワーク100の鉛直方向の距離を把握しているため、距離センサ71の計測結果に基づいてワーク100の鉛直方向の変形量(3次元データのワーク100との差異)を算出できる。従って、この変形量を打ち消すように教示データを補正することで、ワーク100から主表面検査装置50までの距離を一定に保ちつつ、ワーク100の主表面101の表面欠陥を検査できる。
【0062】
特に、本実施形態では、主表面検査装置50(エンドエフェクタ13)の移動方向が定められており、この移動方向の前側に距離センサ71が配置され、その後側に主表面検査装置50が配置されている。そのため、距離センサ71がある点の計測を行った後に、主表面検査装置50がこの点を検査するため、主表面検査装置50とワーク100の距離をより精度良く一定に保つことができる。
【0063】
図12及び
図13(a)に示す例では、主表面検査装置50の周りに等間隔で3つの距離センサ71がロボット10に設けられている。この場合、主表面検査装置50からワーク100までの距離だけでなく、ワーク100の傾きについても算出することができる。従って、3次元データのワーク100と実際のワーク100の高さ方向の差異及び傾きの差異を算出できる。教示装置30がこれらの差異に基づいて教示データを補正することで、
図12に示すように、主表面検査装置50からワーク100までの距離だけでなく、ワーク100に対する主表面検査装置50の傾きについても補正できる。従って、より適切な検査を行うことができる。
【0064】
ここで、ワーク100の主表面101の縁部近傍を計測する場合、
図13(a)に示すように、距離センサ71がワーク100の外側に位置するため、ワーク100の傾きを計測できないため、主表面検査装置50の傾きを補正することができない。
【0065】
そのため、主表面101の縁部近傍において主表面検査装置50の傾きの補正が必要である場合は、
図13(b)に示すように、更に多く(例えば主表面検査装置50の周りに等間隔で6つ)の距離センサ71を設ければよい。これにより、主表面検査装置50がワーク100のどの点を検査する場合であっても、3つ以上の距離センサ71がワーク100を計測できるため、主表面検査装置50の傾きを補正することができる。
【0066】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、ワーク100の表面欠陥を検査する構成であるが、ワーク100の厚みを検査する場合は、例えばレーザセンサを用いることができる。レーザセンサは、ワーク100にレーザを照射し、ワーク100の上側の主表面101で反射した反射光と、ワーク100の下側の主表面101で反射した反射光と、を受光素子で観測することでワーク100の厚みを計測する。この種のレーザセンサでは、レーザセンサからワーク100までの距離を一定にすること、及び、レーザセンサとワーク100の向きを揃えることが適切な検査結果を得る上で好ましい。従って、撓みが生じたワーク100の形状に沿って検査を行うことが要求されるので、上記実施形態の方法を有効に活用できる。
【0067】
以上に説明したように、上記実施形態のロボットシステム1は、検査装置(端部検査装置40又は主表面検査装置50)と、ロボット10と、計測装置(距離センサ71、水平形状センサ72)と、教示データ記憶部22と、差異データ算出部33と、教示データ補正部34と、動作制御部21と、を備える。また、制御装置20がロボット10を制御することでロボット制御方法が行われる。検査装置は、ワーク100の厚み及び表面欠陥の少なくとも一方の検査を行う。ロボット10は、(ワーク100又は検査装置の少なくとも一方の位置を変化させることで)検査装置に対するワーク100の相対位置を変化させる。計測装置は、ワーク100の少なくとも一部の形状を計測する(計測結果取得工程)。教示データ記憶部22は、ワーク100の3次元データに基づいて設定された教示点を記憶する。差異データ算出部33は、ワーク100の自重による撓み及びワーク100の内部歪みの少なくとも一方に起因する形状の差異を示す差異データを、計測装置の計測結果とワーク100の3次元データとを比較することで算出する(差異データ算出工程)。教示データ補正部34は、教示点を、差異データに基づいて補正した補正教示点を算出する(補正教示点算出工程)。動作制御部21は、補正教示点に基づいてロボット10を動作させることで検査装置によるワーク100の検査を行わせる(動作制御工程)。
【0068】
これにより、ワーク100の3次元データと実際の形状との差異に基づいて教示点を補正できるので、撓みが生じたワーク100の形状に応じた適切な検査をロボット10に行わせることができる。
【0069】
また、上記実施形態のロボットシステム1では、検査装置によるワーク100の検査と並行して、差異データ算出部33による差異データの算出及び教示データ補正部34による補正教示点の算出が行われる。
【0070】
これにより、検査を行いながら教示点を補正できるので、検査前に行う作業を減らすことができる。
【0071】
また、上記実施形態のロボットシステム1では、差異データ算出部33による差異データの算出及び教示データ補正部34による補正教示点の算出が行われた後に、検査装置によるワーク100の検査が行われる。
【0072】
これにより、事前にワーク100の形状に基づいて教示点が補正されるので、ワーク100又は検査装置を素早く動かして検査を行うことができる。
【0073】
また、上記実施形態のロボットシステム1では、ロボット10がワーク100を保持して移動させることで、当該ワーク100の端部が検査装置により検査される。計測装置は、ワーク100の端部の鉛直方向の位置を計測する。
【0074】
これにより、ロボット10がワーク100を保持して検査装置に対して移動させる場合において、撓み等が生じたワーク100の形状に応じた適切な検査を行わせることができる。
【0075】
また、上記実施形態のロボットシステム1では、計測装置は、ワーク100の端部の少なくとも1点の鉛直方向の位置を計測する。差異データ算出部33は、計測装置の計測結果に基づいて、ワーク100の端部のうち、計測された部分だけでなく、計測されていない部分についても差異データを算出する。
【0076】
これにより、高い精度が要求されない場合は、計測に掛かる時間を短くしつつ、撓み等が生じたワーク100の形状に応じた適切な検査を行わせることができる。
【0077】
また、上記実施形態のロボットシステム1では、計測装置は、ワーク100の端部の少なくとも3点の鉛直方向の位置を計測する。差異データ算出部33は、計測装置の計測結果に基づいて、鉛直方向の形状だけでなく、ワーク100の向きについても差異データを算出する。
【0078】
これにより、ワーク100の向きを考慮した検査を行う場合において、撓み等が生じたワーク100の形状に応じた適切な検査を行わせることができる。
【0079】
また、上記実施形態のロボットシステム1では、検査装置及び計測装置がロボット10に取り付けられている。計測装置は、ワーク100までの距離を計測する。ロボット10は、作業台110にワーク100を置いた状態で当該ワーク100に対して計測及び検査を行う。
【0080】
これにより、必要な機能をロボット10に集約できるので構成をシンプルにすることができる。また、ワーク100を把持して移動させることが困難な場合であっても、撓み等が生じたワーク100の形状に応じた適切な検査を行わせることができる。
【0081】
また、上記実施形態のロボットシステム1では、ロボット10の移動方向において、検査装置よりも前側に計測装置が取り付けられている。計測装置による計測が行われた位置において、差異データ及び補正教示点が算出されて当該補正教示点に基づいてワーク100に対するロボット10の高さが調整された状態で、検査装置による検査が行われる。
【0082】
これにより、計測を行って補正教示点を算出した後に検査を行うことができる。
【0083】
また、上記実施形態のロボットシステム1では、ロボット10には、3つ以上の計測装置が取り付けられている。計測装置の計測結果に基づいて、差異データ及び補正教示点が算出されることで、ワーク100に対するロボット10の高さだけでなく、ワーク100に対するロボット10の向きについても調整された状態で、検査装置によるワーク100の該当位置の検査が行われる。
【0084】
これにより、ワーク100の向きを考慮した検査を行う場合において、撓み等が生じたワーク100の形状に応じた適切な検査を行わせることができる。
【0085】
また、上記実施形態のロボットシステム1では、ワーク100がガラス板である。
【0086】
これにより、撓みが生じ易く、用途によっては厚み及び表面欠陥等の影響が大きいガラス板に対して、ロボット10による検査作業を行うことができる。
【0087】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0088】
上記実施形態では、水平形状センサ72を用いてワーク100の上面視での形状を計測する構成であるが、水平形状センサ72に代えて、距離センサ71と同様の反射型レーザ変位センサを用いて距離センサ71とワーク100の水平方向における距離を計測する構成であってもよい。
【0089】
上記実施形態では、教示装置30はワーク100の3次元データを読み込む構成であるが、教示装置30が実行するアプリケーション上で3次元データが作成される構成であってもよい。
【0090】
上述した検査装置は一例であり、例えば端部検査装置40は、3つではなく2つ以下又は4つ以上のCCDによりワーク100の端部の画像を撮像する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 ロボットシステム
10 ロボット
20 制御装置
21 動作制御部
22 教示データ記憶部
30 教示装置
40 端部検査装置(検査装置)
50 主表面検査装置(検査装置)
60 検査システム管理装置
71 距離センサ(計測装置)
72 水平形状センサ(計測装置)