(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】セラミックス回路基板および半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/13 20060101AFI20220329BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20220329BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20220329BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
H01L23/12 C
H01L25/04 C
H01L23/36 C
(21)【出願番号】P 2018527681
(86)(22)【出願日】2017-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2017025729
(87)【国際公開番号】W WO2018012616
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2016139735
(32)【優先日】2016-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】那波 隆之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛正
(72)【発明者】
【氏名】矢野 圭一
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-019494(JP,A)
【文献】国際公開第2015/019602(WO,A1)
【文献】特開2004-134703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/13
H01L 25/07
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と第2の面とを有し、前記第1の面が第1の領域と第2の領域とを含む、厚さ1.0mm以下のセラミックス基板と、
前記第1の領域に接合された第1の金属板と、
前記第2の面に接合された第2の金属板と、を具備し、
前記第1の面は、第1の方向、および前記第1の方向と交差する第2の方向に延在し、
前記第1の面の前記第1の方向に延在する第1の辺に沿って測定される前記第2の領域の第1のうねり曲線は、1つ以下の極値を有し、
前記第1の面の前記第2の方向に延在する第2の辺に沿って測定される前記第2の領域の第2のうねり曲線は、2つ以上3つ以下の極値を有し、
前記第1の辺の長さは、前記第2の辺の長さの1.25倍以上である
、セラミックス回路基板。
【請求項2】
前記第1のうねり曲線は、略円弧形状であり、
前記第2のうねり曲線は、略M字形状または略S字形状である、請求項1に記載のセラミックス回路基板。
【請求項3】
前記第1の金属板および前記第2の金属板の少なくとも一つの厚さが0.6mm以上である、請求項1に記載のセラミックス回路基板。
【請求項4】
前記第1の金属板および前記第2の金属板のうち最も厚い金属板の厚さに対する、前記セラミックス基板の厚さの比は、1.5以下である、請求項1に記載のセラミックス回路基板。
【請求項5】
前記セラミックス基板は、厚さ0.33mm以下の窒化珪素基板である、請求項1に記載のセラミックス回路基板。
【請求項6】
前記第1の金属板および前記第2の金属板の少なくとも一つは、接合層を介して前記セラミックス基板に接合されている、請求項1に記載のセラミックス回路基板。
【請求項7】
前記第1のうねり曲線および前記第2のうねり曲線の少なくとも一つの最大値と最小値との差が10μm以上である、請求項1に記載のセラミックス回路基板。
【請求項8】
前記第1の金属板に接合された、厚さ0.2mm以上のリード端子をさらに具備する、請求項1に記載のセラミックス回路基板。
【請求項9】
前記第1のうねり曲線および前記第2のうねり曲線の少なくとも一つの最大値と最小値の差が40μm以下である、
請求項8に記載のセラミックス回路基板。
【請求項10】
請求項8に記載のセラミックス回路基板と、
前記第1の金属板の上に設けられた半導体素子と、
前記第2の金属板の上に設けられた放熱部材と、を具備する、半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、セラミックス回路基板および半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業機器の高性能化に伴い、それに搭載されるパワーモジュールの高出力化が進んでいる。これに伴い半導体素子の高出力化が進んでいる。半導体素子の動作保証温度は、例えば125℃以上150℃以下である。今後は動作保証温度が175℃以上に上昇することが見込まれている。
【0003】
半導体素子の動作保証温度の上昇に伴い、セラミックス回路基板は高いサーマルサイクルテスト(TCT)特性を有することが要求される。TCTでは、低温→室温→高温→室温を1サイクルとし、セラミックス回路基板の耐久性を測定する。
【0004】
ろう材はみ出し部に空隙が無いセラミックス回路基板が開示されている。窒化珪素基板を有するセラミックス回路基板では、5000サイクルの耐久性を有することが示されている。ろう材はみ出し部の空隙を無くすことにより、TCT特性を改善することができる。しかしながら、半導体素子の高性能化に伴い動作保証温度が175℃以上になることが見込まれている。
【0005】
一方、半導体素子の高性能化に伴い通電容量を増やすために、大きな外部端子を用いることが検討されている。従来の外部端子の接合部を厚さ3mm以上にすることが知られている。
【0006】
外部端子は、リードフレーム、リードピンなど様々な形状がある。通電容量を増やすためにはボンディングワイヤのような細線ではなく、比較的厚いリードフレームを用いることが有効である。しかしながら、厚いリードフレームを用いると、セラミックス回路基板が大きく湾曲してしまう場合がある。セラミックス回路基板が湾曲すると放熱部材に実装する際の実装不良が発生し易い。また、リード端子を有するセラミックス回路基板に対し、高温状態の温度が175℃であるTCTを行ったとき、良い特性が得られにくい。これは、リードフレームが厚いほどセラミックス回路基板にかかる応力が高いためである。このため、厚いリードフレームと端子とを接合しても湾曲しない、良いTCT特性を有するセラミックス回路基板が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2011/034075号
【文献】特開2004-134703号公報
【発明の概要】
【0008】
実施形態にかかるセラミックス回路基板は、第1の面と第2の面とを有し、第1の面が第1の領域と第2の領域とを含む、厚さ1.0mm以下のセラミックス基板と、第1の領域に接合された第1の金属板と、第2の面に接合された第2の金属板と、を具備する。第1の面は、第1の方向、および第1の方向と交差する第2の方向に延在する。第1の面の第1の方向に延在する第1の辺に沿って測定される第2の領域の第1のうねり曲線は、1つ以下の極値を有する。第1の面の第2の方向に延在する第2の辺に沿って測定される第2の領域の第2のうねり曲線は、2つ以上3つ以下の極値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】セラミックス回路基板の他の一例を示す側面図。
【
図7】リード端子付きセラミックス回路基板の一例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は実施形態にかかるセラミックス回路基板の上面の一例を示す。
図2は実施形態にかかるセラミックス回路基板の側面の一例を示す。
図1は、セラミックス回路基板1と、セラミックス基板2と、金属板(表金属板3、裏金属板4)と、セラミックス基板2の長辺の長さL1と、セラミックス基板2の短辺の長さL2と、うねり曲線の測定箇所Wと、を図示している。
図1および
図2ではセラミックス回路基板1が2つの表金属板3と1つの裏金属板4とを有する例を示している。実施形態にかかるセラミックス回路基板の構造は、上記構造に限定されず、例えばセラミックス回路基板1が1つの表金属板3または3つ以上の表金属板3を有していてもよい。同様にセラミックス回路基板1が2つ以上の裏金属板4を有していてもよい。
【0011】
セラミックス基板2は互いに対向する面2aと面2bとを有する。面2aおよび面2bのそれぞれは、第1の方向および第2の方向に延在する。第2の方向は、第1の方向と交差する。面2aおよび面2bのそれぞれが例えば長方形の面である場合、第1の方向は例えば長方形の長辺方向であり、第2の方向は例えば長方形の短辺方向である。
【0012】
面2aは、表金属板3を受けるための領域21と、領域21の周りの領域22と、を含む。領域22は、例えば領域21から面2aの端部まで延在する。なお、複数の表金属板3がセラミックス基板2に接合されている場合、領域22は複数の表金属板3の間の領域を含んでいてもよい。面2bは、裏金属板4を受けるための領域23と、領域23の周りの領域24と、を有していてもよい。領域23は、例えば領域23から面2bの端部まで延在する。なお、複数の裏金属板4がセラミックス基板2に接合されている場合、領域24は複数の裏金属板4の間の領域を含んでいてもよい。
【0013】
セラミックス基板2の厚さは1.0mm以下であることが好ましい。セラミックス基板2の厚さが1.0mmを超えると所定のうねり曲線を実現することが困難となる。セラミックス基板2の厚さを薄くすることにより所定のうねり曲線を実現し易い。セラミックス基板2の3点曲げ強度は500MPa以上であることが好ましい。3点曲げ強度が500MPa以上であるセラミックス基板を使うことにより、基板厚さを0.4mm以下に薄くすることができる。3点曲げ強度が500MPa以上のセラミックス基板の例は、窒化珪素基板を含む。上記セラミックス基板の例は、高強度化された窒化アルミニウム基板、高強度化されたアルミナ基板、および高強度化されたジルコニア含有アルミナ基板を含む。
【0014】
セラミックス基板としては窒化珪素基板が特に好ましい。通常の窒化アルミニウム基板、アルミナ基板の3点曲げ強度は300~450MPa程度である。500MPa未満の強度の基板では厚さを0.4mm以下まで薄くするとTCT特性が低下する。特に、TCTの高温状態時の温度を175℃以上まで高くしたときに耐久性が低下する。窒化珪素基板として、3点曲げ強度500MPa以上、さらには600MPa以上の高強度の窒化珪素基板がある。窒化珪素基板として、熱伝導率が50W/m・K以上、さらには80W/m・K以上の窒化珪素基板がある。近年は高強度と高熱伝導の両方を併せ持つ窒化珪素基板もある。3点曲げ強度500MPa以上、熱伝導率80W/m・K以上の窒化珪素基板であれば、基板厚さを0.33mm以下と薄くすることもできる。3点曲げ強度はJIS-R-1601、熱伝導率はJIS-R-1611に準じて測定される。
【0015】
表金属板3は領域21に接合される。裏金属板4は領域23に接合される。すなわち、領域21は、面2aにおいて表金属板3と接合された領域を示す。領域23は、面2bにおいて裏金属板4と接合された領域を示す。表金属板3および裏金属板4は、銅、アルミニウムまたはそれらを主成分とする合金を含むことが好ましい。これら金属板は、電気抵抗が低いため回路に使用しやすい。また、銅およびアルミニウムの熱伝導率はいずれも高く、それぞれ398W/m・K、237W/m・Kである。このため、放熱性を向上させることができる。これらの特性を活かして金属板(表金属板3および裏金属板4)の厚さを0.6mm以上、さらには0.8mm以上にすることが好ましい。金属板を厚くすることにより、通電容量の確保と放熱性の向上の両立を図ることができる。なお、金属板の厚さの上限は特に限定されないが、5mm以下が好ましい。5mmを超えて大きいと、リード端子を取り付けたときに半導体モジュールの大型化を招いてしまう。セラミックス基板と金属板の接合方法の例は、接合層を介して接合する方法と接合層を介さずに直接接合する方法とを含む。なお、後述するようにTCT特性を向上させるためには接合層を介した構造であることが好ましい。
【0016】
面2aの上記第1の方向に延在する第1の辺に沿って測定される領域22のうねり曲線(第1のうねり曲線)は、1つ以下の極値を有する。すなわち、上記うねり曲線の極値の個数は1である。面2aの上記第2の方向に延在する第2の辺に沿って測定される領域22のうねり曲線(第2のうねり曲線)は、2つ以上3つ以下の極値を有する。すなわち、上記うねり曲線の極値の個数は2または3である。それぞれの極値は、極大値または極小値である。面2bの上記第1の辺に沿って測定されるうねり曲線が1つ以下の極値を有し、面2bの上記第2の辺に沿って測定されるうねり曲線が2つ以上3つ以下の極値を有していてもよい。
【0017】
面2aが長方形の面である場合、面2aの長辺の沿面のうねり曲線と短辺の沿面のうねり曲線の一方が略円弧形状、他方が略M字形状または略S字形状であることが好ましい。沿面とは、面2aの端から表金属板3のパターン(例えば銅パターン)の最外周までのセラミックス面を示す。
【0018】
うねり曲線(Waviness Profile)はJIS-B0601に準じて測定される。うねり曲線は断面曲線にカットオフ値λfおよびλcの輪郭曲線フィルタを順次適用することによって得られる輪郭曲線であり、粗さ曲線とは異なる。測定方式の例は、レーザ方式および接触方式を含む。面2aの長辺の沿面のうねり曲線を測定していく。長辺を一度に測定することが好ましい。仮に、基板サイズや装置サイズにより、一度に測定できないときは複数回に分けて測定して、一つのうねり曲線の測定値とする。また、短辺についても同様である。さらに、面2bについてうねり曲線を測定する場合も同様である。また、うねり曲線の測定箇所はセラミックス基板2の端部から0.5~1mmの範囲内である。
【0019】
面2aの長辺の沿面のうねり曲線と短辺の沿面のうねり曲線の一方が略円弧形状、他方が略M字形状または略S字形状となっている。
図3~5はうねり曲線の一例を示す。
図3は略円弧形状のうねり曲線を例示する。
図4は略M字形状のうねり曲線を例示する。
図5は略S字形状のうねり曲線を例示する。
【0020】
略円弧形状とは、曲線状に上がっていき、極大点(最上点)を過ぎたところで曲線状に下がっていく形状である。このとき、極値点は一箇所のみである。極値点が表面側、裏面側のどちらであってもよい。なお、極値点が裏面側を向いているときは、曲線状に下がっていき、極小点(最下点)を過ぎたところで曲線状に上がっていく形状となる。また、うねり曲線の始まりと終わりの部分は富士山の裾野のような広がった形状であっても良い。つまり、略円弧状とはうねり曲線において極値が1つである形状である。
【0021】
略M字形状とは、曲線状に上がっていき、第1の極大点(最上点)を過ぎたところで下がっていく、また、極小点(最下点)を過ぎたら上がっていき、第2の極大点(最上点)を過ぎたところで下がっていく形状である。最上点(第1の極大点)→最下点(極小点)→最上点(第2の極大点)を曲線状に描く形状である。また、最上点と最下点は逆向きになってもよい。この場合、略W字になる。このため、略M字は、略W字も含む。また、うねり曲線の始まりと終わりの部分は富士山の裾野のような広がった形状であっても良い。つまり、略M字形状とはうねり曲線において極値が3つである形状である。
【0022】
略S字形状とは、曲線状に上がっていき、極大点(最上点)を過ぎたところで下がっていく、また、極小点(最下点)を過ぎたら上がっていく形状である。最上点→最下点を曲線状に描く形状である。また、最上点と最下点は逆向きになってもよい。また、うねり曲線の始まりと終わりの部分は富士山の裾野のような広がった形状であっても良い。つまり、略S字形状とはうねり曲線において、極値が2つである形状である。
【0023】
第1のうねり曲線が略円弧形状、第2のうねり曲線が略M字形状または略S字形状であることが好ましい。面2aが長方形の面である場合、面2aは互いに対向する2つの長辺を有する。2つの長辺に沿って測定される2つの第1のうねり曲線のうち、少なくとも一方の第1のうねり曲線が略円弧形状に延在することが好ましく、さらには2つの第1のうねり曲線が略円弧形状に延在することが好ましい。対向する2つの長辺に沿って測定される2つの第1のうねり曲線は、それぞれ略円弧形状に延在すればよく、形状は互いに完全に一致していなくてもよい。
【0024】
2つの第2のうねり曲線のうち、少なくとも一方の第2のうねり曲線が略M字形状または略S字形状に延在することが好ましく、さらには2つの第2のうねり曲線が略M字形状または略S字形状に延在することが好ましい。2つの第2のうねり曲線は、それぞれ略M字形状または略S字形状に延在すればよく、形状は互いに完全に一致していなくてもよい。一方の第2のうねり曲線が略M字形状に延在する場合は、もう一方の第2のうねり曲線も略M字形状に延在することが好ましい。同様に、一方の第2のうねり曲線が略S字形状に延在する場合は、もう一方の第2のうねり曲線も略S字形状に延在することが好ましい。
【0025】
図3~5はさらにうねり曲線の最大値と最小値の差Zを図示している。うねり曲線の最大値と最小値の差Zは10μm以上であることが好ましい。最大値は、うねり曲線の最上点の中で最も大きな値である。また、最小値はうねり曲線の最下点の中で最も小さな値である。うねり曲線の最大値と最小値の差Zは10μm以上、さらには50μm以上であることが好ましい。うねり曲線の最大値と最小値の差Zを大きくすることにより、リード端子を接合した後にセラミックス基板2のうねりを小さくすることができる。なお、うねり曲線の最大値と最小値の差Zの最大値は特に限定されないが400μm以下であることが好ましい。400μmを超えると、セラミックス基板2のうねりが大きいためリード端子を接合後にうねりが残存し、放熱部材への実装性が低下するおそれがある。
【0026】
セラミックス基板2の厚さ/金属板の厚さの比は1.5以下であることが好ましい。表金属板3および裏金属板4を含む複数の金属板をセラミックス基板2に接合しているときは、その中で最も厚い金属板の厚さを用いて上記比が算出される。セラミックス基板2の厚さ/金属板の厚さの比は1.5以下、さらには0.5以下であることが好ましい。セラミックス基板2の厚さ/金属板の厚さの比が0.5以下であることは、セラミックス基板2を薄くすること、または金属板を厚くすることを示している。これにより、うねり曲線を制御し易くすることができる。セラミックス基板の長辺の長さL1と短辺の長さL2の比が、(L1/L2)≧1.25を満足することが好ましい。すなわち、L1は、L2の1.25倍以上であることが好ましい。基板の長辺が長いほど、所望のうねりを付与し易くなる。
【0027】
セラミックス基板2の厚さが0.4mm以下、金属板の厚さが0.6mm以上のときは長辺の沿面のうねり曲線が略円弧形状、短辺の沿面のうねり曲線が略M字形状であることが好ましい。この形状であれば、セラミックス基板2のうねりが対称構造になっているので、リード端子を接合した後のセラミックス基板2のうねり曲線の最大値と最小値の差を小さくできる。また、窒化珪素基板であれば厚さを0.33mm以下、さらには0.30mm以下と薄くできる。セラミックス基板2の厚さを0.4mm以下と薄くすることにより、うねり曲線を制御し易くなる。
【0028】
セラミックス基板2の長辺の沿面の第1のうねり曲線と短辺の沿面の第2のうねり曲線を制御するために、金属板の配置構造を調整することも有効である。
図6は金属板の配置構造の一例を示す図である。
図6は、セラミックス基板2と、表金属板3として金属板3aと、金属板3bと、金属板3cと、金属板3dと、セラミックス基板2の長辺の長さL1と、セラミックス基板2の短辺の長さL2と、金属板3cの長辺の長さM
1-1と、金属板3dの長辺の長さM
1-2と、金属板3aの短辺の長さM
2-1と、金属板3bの短辺の長さM
2-2と、金属板3dの短辺の長さM
2-3と、を図示する。
【0029】
金属板の長辺の長さの合計をΣM
nとしたとき、L1に対するΣM
nの比は、0.50≦ΣM
n/L1≦0.95を満足することが好ましい。ΣM
nは、セラミックス基板2の長辺の沿面に最も近い金属板の長さの合計である。nは、対象となる金属板の個数によって決まる。
図6では、金属板3cと金属板3dがセラミックス基板2の長辺の沿面に最も近い。よって、ΣM
nはM
1-1+M
1-2との和である。一つの金属板の長さをMで示したとき、M/L1≦0.5であることが好ましい。
図6では金属板3cと金属板3dを図示しているが、金属板の個数は3個以上であってもよい。
【0030】
金属板の短辺側の長さの合計をΣM
mとしたとき、L2に対するΣM
mの比は、0.50≦ΣM
m/L2≦0.95を満足することが好ましい。ΣM
mは、セラミックス基板2の短辺の沿面に最も近い金属板の長さの合計値である。nは、対象となる金属板の個数によって決まる。
図6では、金属板3a、3b、3dがセラミックス基板2の短辺の沿面に最も近い。よってΣM
mはM
2-1とM
2-2とM
2-3との和である。また、一つの金属板の長さをMで示したとき、M/L2≦0.5であることが好ましい。
図6では金属板3a、金属板3b、金属板3dを図示しているが、金属板の個数は4個以上であってもよい。
【0031】
セラミックス基板2の長さL1、L2に対し、ΣMn値、ΣMm値、M値を制御することにより、うねり曲線の形状を制御することができる。これにより、金属板の配置数が3個以上と増えても、うねり曲線の形状を望ましい形状にすることができる。つまり、表金属板3の配置数が3個以上の複雑なパターン形状であってもうねり曲線の制御が可能となる。
【0032】
図6は、セラミックス基板2の短辺の沿面に設けられた3個の金属板(3a、3b、3d)を図示している。金属板3aと金属板3bの間および金属板3bと金属板3dの間に隙間ができる。この隙間にうねり曲線の極値を形成し易くなる。長辺側についても同様である。0.50≦ΣM
n/L1≦0.95、0.50≦ΣM
m/L2≦0.95、M/L1≦0.5、M/L2≦0.5、のいずれか1種または2種以上を組み合わせても良い。
【0033】
セラミックス回路基板1は、リード端子付きセラミックス回路基板に好適である。
図7はリード端子付きセラミックス回路基板の一例を示す図である。
図8は半導体モジュールの一例を示す図である。
図7および
図8は、セラミックス回路基板1と、リード端子5と、半導体素子6と、放熱部材7と、リード端子付きセラミックス回路基板10と、半導体モジュール20とを図示している。
【0034】
リード端子付きセラミックス回路基板10は、セラミックス回路基板1と、セラミックス回路基板1に接合された表金属板3と、表金属板3に接合されたリード端子5と、を備える。リード端子5は、外部に導通させるための外部電極としての機能を有する。リード端子5の形状の例は、リードフレーム型およびリードピン型を含む。リード端子5の接合個数は特に限定されない。必要であれば、リード端子とワイヤボンディングとを併用してもよい。
【0035】
リード端子付きセラミックス回路基板10は、表金属板3に厚さ0.2mm以上のリード端子5を接合した構造に好適である。リード端子5の厚さは0.2mm以上、さらには0.4mm以上であることが好ましい。なお、リード端子5の厚さは、リードフレーム型の場合はリードフレーム板の厚さ、リードピン型の場合はリードピンの幅により定義される。リード端子5は、銅、アルミニウムまたはそれらの合金などの導電性の良い材料を含むことが好ましい。表金属板3とリード端子5との接合方法の例は、はんだ接合、ろう材接合、超音波接合、および圧接接合を含む。リード端子5を厚くすることにより通電容量を増加させ、インダクタンスを低減することができる。これにより、高性能化した半導体素子の良さを活かすことができる。
【0036】
リード端子付きセラミックス回路基板10は、うねり曲線の最大値と最小値の差Zを40μm以下に小さくすることができる。厚さ0.2mm以上のリード端子5を接合すると、表金属板3が部分的に厚くなる。このような構造の場合、セラミックス基板2のうねりが大きい。セラミックス基板2は、長辺または短辺に沿って所定のうねりを有している。これにより、リード端子5の接合により発生するうねりを相殺することができる。この結果、リード端子付きセラミックス回路基板のうねり曲線の最大値と最小値の差Zを40μm以下、さらには20μm以下にすることができる。
【0037】
リード端子の厚さの上限は特に限定されないが、3mm以下であることが好ましい。厚さ0.2mm以上3mm以下のリードピンであれば、表金属板3の表面の任意の箇所に接合してもうねりを小さくすることができる。セラミックス基板2のうねりを小さくすることにより、放熱部材7への実装性を向上させることができる。
【0038】
半導体モジュール20は、リード端子付きセラミックス回路基板10と、リード端子付きセラミックス回路基板10に実装された半導体素子6と、放熱部材7と、を具備する。半導体素子6は表金属板3に接合される。半導体素子6の実装個数、実装箇所は表金属板3上であれば任意である。
【0039】
放熱部材7は、裏金属板4を実装するための部材である。放熱部材7は、裏金属板4の上に設けられる。放熱部材7の例はヒートシンク、ベースプレート、および冷却フィンを含む。放熱部材7は、板状、くし歯状、溝型やピン型など様々な形状であってもよい。放熱部材7は、銅、Al、AlSiCなど放熱性の良い材料を含む部材が適用される。
【0040】
放熱部材7と裏金属板4の間に、はんだ、グリースなど介在層が設けられてもよい。リード端子付きセラミックス回路基板10のうねり曲線の最大値と最小値の差Zが小さいため、放熱部材7と裏金属板4の隙間が小さくなる。このため、はんだやグリースなどの介在層の塗布ムラがなくなる。これにより、位置ずれや介在物のはみ出しなどの実装不良の発生を防ぐことができる。
【0041】
半導体モジュール20は、ねじ止め構造などのセラミックス回路基板に応力がかかる実装構造を有していてもよい。ねじ止め構造であっても、放熱部材7と裏金属板4の隙間が小さいため、密着性を向上させることができる。これにより、ねじ止め時の応力集中が生じることを抑制できるため、実装不良を低減できる。
【0042】
放熱部材7と裏金属板4の密着性を向上させることは、放熱性の向上にもつながる。放熱性の向上は半導体モジュールとしてのTCT特性の向上につながる。半導体素子の高性能化に伴い動作保証温度が175℃以上と高くなる。放熱性を向上させるために金属板を厚くすること、セラミックス基板2を薄くすることが検討されている。実施形態にかかるセラミックス回路基板は所定のうねり曲線を付与することにより、リード端子をつけた構造にしたとしても放熱性を向上させることができる。
【0043】
TCT特性を向上させるために、セラミックス基板2と金属板を接合層を介して接合することが好ましい。
図9は金属板側面と接合層の形状の一例を示す図である。
図9は、セラミックス基板2と、金属板(表金属板3)と、接合層8と、接合層と金属板側面の接触角θとを図示する。
図9では表金属板3を例示したが、裏金属板4も同様である。
【0044】
接合層は、活性金属を含むことが好ましい。活性金属は、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Nb(ニオブ)、およびAl(アルミニウム)から選ばれる少なくとも一つの元素を含む。活性金属を含むろう材ペーストを用いて接合する。金属板が銅板(銅合金板を含む)であるときは、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、およびNb(ニオブ)から選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが好ましい。これらの活性金属の中ではTiが好ましい。また、これら活性金属を含む接合層は、40質量%以上80質量%以下のAgと、20質量%以上60質量%以下のCuと、0.1質量%以上12質量%以下の活性金属と、0質量%以上20質量%以下のSnと、0質量%以上20質量%以下のInと、を合計100質量%以下含む活性金属ろう材を含むことが好ましい。金属板がアルミニウム板(アルミニウム合金板を含む)であるときは、Alを主成分とするろう材を用いる。Alろう材は、Siを0.1質量%以上12質量%以下含むことが好ましい。
【0045】
接合層8はセラミックス基板2と金属板3との間からはみ出た接合層はみ出し部を有することが好ましい。この接合層はみ出し部は金属板の端部から10μm以上100μm以下の領域に設けられることが好ましい。また、接合層8と金属板3の側面の接触角θは、80度以下、さらには60度以下であることが好ましい。接合層はみ出し部と接触角θを制御することにより、TCT特性を向上させることができる。特に、リード端子付きセラミックス回路基板としてTCT特性を向上させることができる。接合層はみ出し部および金属板側面形状はエッチング加工を利用することにより制御できる。
【0046】
必要に応じ、樹脂封止を行ってもよい。樹脂封止工程はトランスファーモールド法などの方法が適用できる。実施形態にかかる半導体モジュールは厚いリード端子を接合しているため、樹脂封止工程にてリード端子が断線することが無い。一方、ワイヤボンディングでは線が細いため、トランスファーモールド法のように型圧力の高い方法では断線が生じ易い。言い換えると、厚いリード端子を用いることにより、樹脂封止し易いモジュール構造とすることができる。
【0047】
次に、上記セラミックス回路基板の製造方法について説明する。セラミックス回路基板は上記構成を具備すれば、その製造方法は特に限定されないが歩留り良く得るための方法として次の方法が挙げられる。
【0048】
第一の製造方法は、目的とするうねり曲線を得るためにセラミックス成形体(グリーンシート)を加工した後、焼結する方法である。加工方法の例は、目的とするうねり曲線を得るためのうねりを有する金型を使った金型プレスを含む。グリーンシートを打ち抜く際に、目的とするうねり曲線を得るためのうねりを有する金型を使う方法もある。打ち抜いた後の乾燥工程にて目的とするうねり曲線を得るためのうねりを有する金型を使う方法もある。
【0049】
第二の製造方法は、焼結後のセラミックス基板に目的とするうねり曲線を得るためにうねりを付与する方法である。通常のセラミックス基板の反り直し工程は荷重をかけながら加熱し、基板を平坦にする。このとき、目的とするうねり曲線を得るためのうねりを有する型で荷重をかけながら加熱する方法が有効である。
【0050】
第三の製造方法は、金属板とセラミックス基板の接合工程で目的とするうねり曲線を得るためのうねりを付与する方法である。金属板とセラミックス基板を接合する際に、金属板に引張り応力を付与する。金属板に引張り応力を付与することにより、接合工程で金属板が収縮し、セラミックス基板にうねりが付与される。金属板に引張り応力を付与する方法の例はホーニング加工を含む。
【0051】
第四の製造方法は、セラミックス回路基板の金属板の上からホーニング加工を行うことである。ホーニング加工を直線的に行うことにより、その部分を凸状にすることができる。
【0052】
第五の製造方法は、表裏の金属板の体積比を制御する方法である。上記の第一ないし第五の製造方法は、それぞれ単独で行っても良いし、組合せてもよい。
【0053】
第一の製造方法は厚さが0.4mm以下の薄型のセラミックス基板に特に有効である。セラミックス基板の厚さが0.6mm以上と厚いと、焼結工程にてセラミックス成形体の収縮が大きくなり、うねり曲線の制御が難しくなる。
【0054】
第一の製造方法と同様に第二の製造方法も厚さが0.4mm以下の薄型のセラミックス基板に特に有効である。厚さが0.6mm以上のセラミックス基板にうねりを付与しようとすると、基板が破損する恐れがある。特に、強度が400MPa以下かつ厚さが0.6mm以上となると基板の柔軟性が不足するので破損し易くなる。
【0055】
第三の製造方法は、厚さ0.6mm以上の厚い金属板に特に有効である。金属板の厚さが0.3mm以下と薄いと引張り応力が大きくなり難いため、うねりの付与が不十分となりやすい。
【0056】
第四の製造方法は、厚さ0.6mm以上の厚い金属板に特に有効である。金属板の厚さが0.3mm以下と薄いと引張り応力が大きくなり難いため、うねりの付与が不十分となりやすい。
【0057】
第五の製造方法は、表裏の金属板の厚さの差を有する場合に有効である。このため、厚さ0.33mm以下の窒化珪素基板と厚さ0.6mm以上の金属板(例えば銅板)の組合せが作り易い組合せとなる。
【0058】
セラミックス基板と金属板の接合方法は、接合層を介した接合方法、接合層を介さずに直接接合する接合方法のどちらであってもよい。接合層を介した接合方法は、活性金属接合法が好ましい。活性金属接合法は、活性金属を含有した活性金属ろう材を用いる方法である。
【0059】
活性金属は、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Nb(ニオブ)、およびAl(アルミニウム)から選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが好ましい。金属板が銅板(銅合金板を含む)であるときは、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、およびNb(ニオブ)から選ばれる少なくとも一つの元素を含むことが好ましい。これらの活性金属の中ではTiが好ましい。
【0060】
上記活性金属を含む接合層は、40質量%以上80質量%以下のAgと、20質量%以上60質量%以下のCuと、0.1質量%以上12質量%以下の活性金属と、0質量%以上20質量%以下のSnと、0質量%以上20質量%以下のInと、を含有し、それらの合計含有量が100質量%以下である活性金属ろう材を用いて形成されることが好ましい。Tiを含む活性金属ろう材は窒化物セラミックス(窒化珪素基板、窒化アルミニウム基板)と反応してTiNを形成する。これにより、接合強度を向上させることができる。金属板がアルミニウム板(アルミニウム合金板を含む)であるときは、Alを主成分とするろう材を用いる。Alろう材は、Siを0.1質量%以上12質量%以下含むことが好ましい。
【0061】
セラミックス基板上に活性金属ろう材ペーストを塗布し、金属板を載置する。活性金属ろう材ペーストの塗布厚さは10μm以上40μm以下であることが好ましい。接合工程は、600℃以上950℃以下の温度で行うことが好ましい。活性金属がTi、Zr、Hf、およびNbから選ばれる少なくとも一つの元素を含む場合は800℃以上950℃以下の温度で行うことが好ましい。活性金属がAlを含む場合は600℃以上800℃以下の温度で行うことが好ましい。加熱雰囲気は非酸化性雰囲気であることが好ましい。必要に応じ、エッチング加工によりパターン形状を形成してもよい。金属板の側面をエッチング加工して、接合層のはみ出し部と金属板の接触角θを制御することができる。
【0062】
接合層を介さすに接合する直接接合法により、セラミックス基板と金属板を接合してもよい。金属板が銅板の場合、銅と酸素の共晶を利用した直接接合法を用いることができる。セラミックス基板が窒化物の場合は、表面に酸化膜を形成して行う。金属板がAl板の場合は、AlSi合金板を用いて直接接合する。
【0063】
上記工程を行うことにより、セラミックス基板のうねり曲線を制御することができ、例えばセラミックス基板の長辺または短辺のうねり曲線を略円弧形状、もう一方を略M字形状または略S字形状にすることができる。また、第一ないし第三の製造方法の条件を調整することにより、うねり曲線の最大値と最小値の差Zを調整することができる。
【0064】
次に、上記リード端子付きセラミックス回路基板の製造方法を説明する。リード端子付きセラミックス回路基板は、上記セラミックス回路基板にリード端子を接合することにより製造される。
【0065】
リード端子の例は、リードフレーム型リード端子およびリードピン型リード端子を含む。リード端子の形状の例は、板状、ピン状、S字状、およびL字状を含む。リード端子は銅、Alまたはそれらの合金を含むことが好ましい。
【0066】
リード端子はセラミックス回路基板の表金属板に接合される。リード端子と表金属板の接合方法の例は、接合材を使う方法、超音波接合、および圧接接合法を含む。接合材としては、はんだやろう材が挙げられる。
【0067】
セラミックス回路基板に所定のうねり曲線を付与することにより、リード端子の厚さが0.2mm以上、さらには0.4mm以上と大型化したときにセラミックス基板が湾曲するのを防ぐことができる。このため、リード端子付きセラミックス回路基板は長辺および短辺のうねり曲線の最大値と最小値の差Zを40μm以下、さらには20μm以下と小さくすることができる。
【0068】
前述のように、0.50≦ΣMn/L1≦0.95、0.10≦ΣMm/L2≦0.95、M/L1≦0.5、M/L2≦0.5、のいずれか1種または2種以上を付与することが好ましい。このような範囲とすることにより、表金属板3が3個以上となったとしてもうねり曲線を制御することができる。例えば、表金属板3を2つ以上の複数枚接合し、金属板同士の隙間を設けることにより、うねり曲線の極値を付与し易くなる。セラミックス基板2と表金属板3の沿面距離を1mm以上2mm以下と狭くしたとしても、所定のうねり曲線を付与することができる。
【0069】
次に、半導体モジュールの製造方法を説明する。半導体モジュールの製造方法は、上記リード端子付きセラミックス回路基板に半導体素子を実装する工程、放熱部材に実装する工程を具備する。
【0070】
半導体素子を実装する工程では、表金属板上に半導体素子を実装する。半導体素子ははんだなどの接合層を介して接合されることが好ましい。放熱部材に実装する工程では、セラミックス回路基板の裏金属板を放熱部材に実装する。裏金属板と放熱部材の間には、必要に応じ、グリース、はんだ、ろう材などを介在させてもよい。
【0071】
必要に応じ、セラミックス基板をねじ止めしてもよい。ねじ止め構造の例は、セラミックス基板にねじ穴を設ける構造、セラミックス基板の端部を押さえ治具で固定してねじ止めする構造を含む。
【0072】
上記リード端子付きセラミックス回路基板は、長辺および短辺のうねり曲線の最大値と最小値の差Zが小さい。このため、放熱部材への実装時に、裏金属板と放熱部材の隙間を小さくすることができる。このため、裏金属板と放熱部材の間の放熱性を向上させることができる。
【0073】
裏金属板と放熱部材の密着性を向上させるため、ねじ止めなどのようにセラミックス基板に応力がかかる固定方法を行ったとしても、位置ずれや破損などの実装不良が発生し難い。これに対し、必要に応じ、樹脂封止工程を行ってもよい。樹脂封止工程の例は、トランスファーモールド法を含む。トランスファーモールド法は、成型圧力を高めて量産性を向上させた封止方法である。厚さ0.2mm以上のリード端子を接合することにより、トランスファーモールド工程中のリード端子の断線を防ぐことができる。言い換えると、リード端子付きセラミックス回路基板およびそれを用いた半導体モジュールはトランスファーモールド工程に適している。
【実施例】
【0074】
(実施例1~8、比較例1~3)
表1に示す窒化珪素回路基板を作製した。窒化珪素基板として熱伝導率90W/m・K、3点曲げ強度700MPaの窒化珪素基板を用意した。表金属板、裏金属板として銅板を用意した。窒化珪素基板と銅板とをTiを含有する活性金属ろう材を用いて接合した。活性金属ろう材として、Ag(残部)、Cu(30質量%)、Ti(5質量%)、Sn(10質量%)からなるろう材を用いた。活性金属ろう材ペーストを厚さ20μmで塗布し、850℃、非酸化性雰囲気で加熱して窒化珪素基板と銅板を接合した。銅板を接合した後、エッチング加工により、接合層はみ出し部サイズ、銅板側面端部と接合層はみ出し部との接触角θを調整した。接合層はみ出し部の長さは20~40μm、銅板側面端部と接合層はみ出し部との接触角θは40~60度に調整した。表銅板の銅板間距離は1.5~3.0mmとした。表銅板とセラミックス基板との沿面距離を1.5mmに統一した。実施例はうねりの付与工程として、第二の製造方法(セラミックス基板に目的とするうねりを付与する方法)または第四の製造方法(金属板上に直線的にホーニング加工を施す)を行った。比較例1は反り直し工程により、うねりを無くした。また、比較例2、3は実施例と同様の方法でうねりを付与した。
【0075】
【0076】
実施例および比較例にかかるセラミックス回路基板に対し、ΣMn/L1、ΣMm/L2、M/L1、M/L2を測定した。これらの測定は、セラミックス基板の長辺側(L1側)および短辺側(L2側)において沿面に一番近い箇所にある表金属板を基準に行った。なお、M/L1、M/L2はサイズの異なる金属板を接合したときは、最も大きな値を示した。その結果を表2に示す。
【0077】
【0078】
表2から分かる通り、実施例にかかる窒化珪素回路基板は、0.50≦ΣMn/L1≦0.95、0.50≦ΣMm/L2≦0.95、M/L1≦0.5、M/L2≦0.5の1つまたは2つ以上を満たしていた。
【0079】
次に実施例および比較例にかかるセラミックス回路基板の長辺および短辺のうねり曲線を測定した。うねり曲線の測定は、セラミックス基板の端部から1mm内側の部分をレーザスキャンして測定した。測定結果をJIS-B0601に準じてうねり曲線にした。また、うねり曲線の最大値と最小値の差Zも併せて測定した。その結果を表3に示す。
【0080】
【0081】
実施例および比較例にかかるセラミックス回路基板にリード端子を接合した。リード端子は表4に示すリード端子を用いた。なお、リード端子はすべて銅からなるリード端子を用いた。リードフレーム型は平板形状、リードピン型は円柱形状とした。リードピン型の場合、リード端子の厚さは直径となる。
【0082】
【0083】
次に、実施例および比較例にかかるセラミックス回路基板に表4に示すリード端子を接合した。リード端子の接合個数は一つの表金属板に接合した個数で示した。つまり、表金属板が2つあるので、実際の接続個数は2倍となる。例えば、実施例1は、一つの金属板に2つのリード端子1を接合した。実施例1では2つの表金属板を設けているため、リード端子1の接続個数は全部で4つとなる。その後、長辺側のうねり曲線(第1のうねり曲線)および短辺側のうねり曲線(第2のうねり曲線)の最大値と最小値の差Zを測定した。その結果を表5に示す。
【0084】
【0085】
表から分かる通り、実施例にかかるリード端子付きセラミックス回路基板はうねり曲線の最大値と最小値の差Zが20μm以下と小さかった。それに対し、比較例は、いずれも大きな値となった。
【0086】
次に、実施例および比較例にかかるリード端子付きセラミックス回路基板に対し、TCT特性、実装性の確認試験を行った。TCTは、-40℃×30分→室温×10分→175℃×30分→室温×10分を1サイクルとし、5000サイクル後の不良の発生率を測定した。TCTによる不良発生率が0%は不良なし、100%はすべて不良品(接合層またはセラミックス基板へのクラック発生)である。
【0087】
実装性の確認試験は、放熱部材にねじ止めにより固定する際の不良の発生率を測定した。ねじ止めは裏金属板と放熱部材の間にグリースを介して行った。熱抵抗(K/W)についても測定した。その結果を表6に示す。
【0088】
【0089】
表から分かる通り、実施例にかかるリード端子付きセラミックス回路基板は、TCT特性、実装性共に良好な結果が得られた。それに対し、比較例はうねりが大きいため特性が低下した。このため、実施例は厚いリード端子を接合するセラミックス回路基板に好適であることが分かった。窒化珪素基板を0.32mm以下、さらには0.25mm以下と薄くしても優れた耐久性を示した。
【0090】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。