(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品およびガラスセラミック
(51)【国際特許分類】
C03C 10/14 20060101AFI20220329BHJP
C03C 10/04 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
C03C10/14
C03C10/04
(21)【出願番号】P 2020567227
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 CN2018112078
(87)【国際公開番号】W WO2020082328
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511111585
【氏名又は名称】シーディージーエム グラス カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】No.359, Sec.3, Chenglong Avenue, LongQuan YI District Chengdu, Sichuan 610100 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユェン バオピン
【審査官】山田 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-233941(JP,A)
【文献】特開2001-035417(JP,A)
【文献】特開2007-223884(JP,A)
【文献】特開2001-019469(JP,A)
【文献】特開2001-097740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主結晶相として、ケイ酸リチウムおよび石英結晶相を含み、重量パーセントで以下の成分を含む組成物を有することを特徴とする電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
SiO
2:65~85%、Al
2O
3:1~15%、Li
2O:5~15%、ZrO
2:0.1~10%、K
2O:0~10%、MgO:0~10%、ZnO:0~10%、Na
2O:0~5%、およびP
2O
5が0.79%よりも多く、かつ2.5%未満であり、
(SiO
2+Al
2O
3+Li
2O+ZrO
2)/P
2O
5は、51.89~53.06、(Al
2O
3+Li
2O)/P
2O
5は、8.5~20、および(K
2O+MgO)/ZrO
2は、
0.83~0.95であり、
落下球試験高さは、700 mm以上であり、当該落下球試験高さは、132gの鋼球を落下させた場合に、150×57×0.55mmのガラスセラミック物品のサンプルが破損されない高さを示す。
【請求項2】
重量パーセントで以下の成分をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
SrO:0~5%、BaO:0~5%、TiO
2:0~5%、Y
2O
3:0~5%、B
2O
3:0~3%、および清澄剤:0~2%。
【請求項3】
(SiO
2+Li
2O)/Al
2O
3が、6~15、(SiO
2+Li
2O)/P
2O
5が、40~80、または、Li
2O/(K
2O+ZrO
2)が、2.3~4.0であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
【請求項4】
(SiO
2+Li
2O)/Al
2O
3が、8~13、(SiO
2+Li
2O)/P
2O
5が、40~70、(K
2O+MgO)/ZrO
2が、
0.84~0.95、および、Li
2O/(K
2O+ZrO
2)が、2.5~3.5であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
【請求項5】
重量パーセントで以下の成分を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
SiO
2:70~76%、Al
2O
3:4~10%、Li
2O:8~12.5%、ZrO
2:1~5%、P
2O
5:1~2.42%、K
2O:0~3%、MgO:0.3~2%、ZnO:0~3%、Na
2O:0~1%、Sb
2O
3:0~1%、SnO
2:0~1%、SnO:0~1%、またはCeO
2:0~1%。
【請求項6】
(Al
2O
3+Li
2O)/P
2O
5が、8.5~14、(SiO
2+Li
2O)/P
2O
5が、45~60、または、(SiO
2+Li
2O)/Al
2O
3が、8.5~12であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
【請求項7】
(K
2O+MgO)/ZrO
2が、
0.85~0.95、またはLi
2O/(K
2O+ZrO
2)が、2.8~3.3であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
【請求項8】
重量パーセントで、Li
2Oが8%~10%未満、SrOを含まない、BaOを含まない、TiO
2を含まない、Y
2O
3を含まない、GeO
2を含まない、CaOを含まない、Cs
2Oを含まない、PbOを含まない、B
2O
3を含まない、As
2O
3を含まない、La
2O
3を含まない、およびTb
2O
3を含まないことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
【請求項9】
結晶化度が70%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
【請求項10】
落下球試験高さが、1000mm以上、または4点曲げ強度は650MPa以上、または厚さが0.55 mmのヘイズが0.5%以下、または熱屈折率係数が-0.8×10
-6/℃以下、または、波長550nmで厚さ0.55mmの光透過率が88%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
【請求項11】
主結晶相として、ケイ酸リチウムおよび石英結晶相を含み、重量パーセントで以下の成分を含む組成物を有することを特徴とするガラスセラミック。
SiO
2:65~85%、Al
2O
3:1~15%、Li
2O:5~15%、ZrO
2:0.1~10%、K
2O:0~10%、MgO:0~10%、ZnO:0~10%、Na
2O:0~3%、Sb
2O
3:0~1%、SnO
2:0~1%、SnO:0~1%、CeO
2:0~1%、およびP
2O
5が0.79%よりも多く、かつ2.5%未満であり、
(SiO
2+Al
2O
3+Li
2O+ZrO
2)/P
2O
5が、51.89~53.06、(Al
2O
3+Li
2O)/P
2O
5が、8.5~20、および (K
2O+MgO)/ZrO
2が、
0.83~0.95であり、厚さが0.55 mmのヘイズが0.5%以下である。
【請求項12】
(SiO
2+Li
2O)/Al
2O
3が、8~13、(Al
2O
3+Li
2O)/P
2O
5が、8.5~14、(SiO
2+Li
2O)/P
2O
5が、40~70、または、Li
2O/(K
2O+ZrO
2)が、2.5~3.5であることを特徴とする請求項11に記載のガラスセラミック。
【請求項13】
SiO2:70~76%、Al
2O
3:4~10%、Li
2O:8~12.5%、ZrO
2:1~5%、P
2O
5:1~2.42%、K
2O:0~3%、MgO:0.3~2%、ZnO:0~3%、およびNa
2O:0~1%であることを特徴とする請求項11に記載のガラスセラミック。
【請求項14】
(K
2O+MgO)/ZrO
2が、
0.85~0.95、または、Li
2O/(K
2O+ZrO
2)が、2.8~3.3であることを特徴とする請求項11に記載のガラスセラミック。
【請求項15】
結晶化度が70%以上、または粒子サイズが80nm以下、または熱屈折率係数が-0.8×10
-6/℃以下、または、400~800nmの波長で1mmの厚さの平均光透過率が85%以上であることを特徴とする請求項11に記載のガラスセラミック。
【請求項16】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品、または、請求項11~15のいずれか1項に記載のガラスセラミックを含む電子デバイス用ガラスカバープレート。
【請求項17】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品、または請求項11~15のいずれか1項に記載のガラスセラミック、または請求項16に記載の電子デバイス用ガラスカバープレートを含む電子デバイス。
【請求項18】
下記の条件を満たすことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
43.35<(SiO
2+Li
2O)/P
2O
5≦80
【請求項19】
下記の条件を満たすことを特徴とする請求項11~15のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
43.35<(SiO
2+Li
2O)/P
2O
5≦80
【請求項20】
粒子サイズが50nm以下であることを特徴とする請求項11~15のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
【請求項21】
粒子サイズが40nm以下であることを特徴とする請求項11~15のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
【請求項22】
MgOが、0.3~10%であることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
【請求項23】
K
2Oが、0.5~1.1%であることを特徴とする請求項1~10、22のいずれか1項に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
【請求項24】
(SiO
2+Li
2O)/Al
2O
3が、6~15、(SiO
2+Li
2O)/P
2O
5が、40~80、およびLi
2O/(K
2O+ZrO
2)が2.3~4.0であることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミック物品およびガラスセラミックに関し、特に電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品、ガラスセラミック、電子デバイス用ガラスカバープレート、および電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスは、内部にさまざまな高度な電子部品を有しているため、内部の電子部品を保護するためにカバープレートまたはケーシングが必要である。従来技術で開示された内容では、金属がカバープレートの主要な材料である。ただし、金属には、酸化と電磁信号のシールドの影響を受けやすいという欠点がある。ガラス製のいくつかのカバープレートも従来技術に開示されている。例えば、中国特許CN101508524Aは化学強化ガラスを開示されているが、その化学強化ガラスの耐落下性や破壊靭性などの特性は実際の要求に応えることが難しい。
【0003】
ガラスセラミックは、ガラスを熱処理することでガラス内部に結晶を析出させる材料である。ガラスセラミック中に結晶が分散しているため、ガラスセラミックにはガラスでは得られない物理的価値がある。例えば、ヤング率や破壊靭性などの機械的強度、酸性またはアルカリ性の薬液に対するエッチング特性、熱膨張係数などの熱特性、ガラス転移温度の上昇または消失などである。ガラスセラミックは、機械的特性が高く、ガラスセラミック中に結晶が形成されているため、曲げ抵抗や耐摩耗性などの特性において、通常のガラスに比べて明らかな利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
上述の要因に基づいて、本発明者らは、広範な実験を通じて、優れた機械的特性を有し、電子デバイスに適したガラスセラミックを開発することを希望している。
【発明の概要】
【0006】
本発明によって解決される技術的課題は、優れた機械的特性を有する電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品を提供することである。
【0007】
本発明の技術的課題を解決するために使用される技術的解決策は、以下の通りである。
【0008】
(1) 電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品は、主結晶相として、ケイ酸リチウムおよび石英結晶相を含み、重量パーセントで以下の成分を含む組成物を有する。SiO2:65~85%、Al2O3:1~15%、Li2O:5~15%、ZrO2:0.1~10%、P2O5:0.1~10%、K2O:0~10%、MgO:0~10%、ZnO:0~10%、およびNa2O:0~5%であり、(SiO2+Al2O3+Li2O+ZrO2)/P2O5は、40~90であり、落下球試験高さは、700mm以上である。
【0009】
(2) 電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品は、重量パーセントで以下の成分を含む。SiO2:65~85%、Al2O3:1~15%、Li2O:5~15%、ZrO2:0.1~10%、P2O5:0.1~10%、K2O:0~10%、MgO:0~10%、ZnO:0~10%、およびNa2O:0~5%。
【0010】
(3) (1)~(2)のいずれかに記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品であって、重量パーセントでさらに以下を含む。SrO:0~5%、BaO:0~5%、TiO2:0~5%、Y2O3:0~5%、B2O3:0~3%、および清澄剤:0~2%。
【0011】
(4) (1)~(3)のいずれかに記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品であって、(SiO2+Li2O)/Al2O3が、6~15、(Al2O3+Li2O)/P2O5が、5~20、(SiO2+Li2O)/P2O5が、40~80、(K2O+MgO)/ZrO2が、0.6~1.2、または、Li2O/(K2O+ZrO2)が、2.3~4.0である。
【0012】
(5) (1)~(4)のいずれかに記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品であって、(SiO2+Li2O)/Al2O3が、8~13、(Al2O3+Li2O)/P2O5が、6~14、(SiO2+Li2O)/P2O5が、40~70、(SiO2+Al2O3+Li2O+ZrO2)/P2O5が、45~85、(K2O+MgO)/ZrO2が、0.7~1.1、および、Li2O/(K2O+ZrO2)が、2.5~3.5である。
【0013】
(6) (1)~(5)のいずれかに記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品であって、重量パーセントで以下の成分を含む。SiO2:70~76%、Al2O3:4~10%、Li2O:8~12.5%、ZrO2:1~5%、P2O5:1~3%、K2O:0~3%、MgO:0.3~2%、ZnO:0~3%、Na2O:0~1%、Sb2O3:0~1%、SnO2:0~1%、SnO:0~1%、またはCeO2:0~1%。
【0014】
(7) (1)~(6)のいずれかに記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品であって、(Al2O3+Li2O)/P2O5が、8.5~14、(SiO2+Li2O)/P2O5が、45~60、(SiO2+Al2O3+Li2O+ZrO2)/P2O5が、48~80、または(SiO2+Li2O)/Al2O3が、8.5~12である。
【0015】
(8) (1)~(7)のいずれかに記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品であって、(K2O+MgO)/ZrO2が、0.8~1.0、または、Li2O/(K2O+ZrO2)が、2.8~3.3である。
【0016】
(9) (1)~(8)のいずれかに記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品であって、重量パーセントで以下を含む。Li2Oが8%~10%未満、SrOを含まない、BaOを含まない、TiO2を含まない、Y2O3を含まない、GeO2を含まない、CaOを含まない、Cs2Oを含まない、PbOを含まない、B2O3を含まない、As2O3を含まない、La2O3を含まない、およびTb2O3を含まない。
【0017】
(10) (1)~(9)のいずれかに記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品であって、結晶化度が70%以上である。
【0018】
(11) (1)~(10)のいずれかに記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品であって、落下球試験高さが、1000mm以上、または4点曲げ強度は650MPa以上、または厚さが0.55mmのヘイズが0.5%以下、または熱屈折率係数が-0.8×10-6/℃以下、または、波長550nmで厚さ0.55mmの光透過率が88%以上である。
【0019】
本発明はまた、優れた機械的特性を有するガラスセラミックを提供する。
【0020】
本発明の技術的課題を解決するために使用される技術的解決策は、以下の通りである。
【0021】
(12) ガラスセラミックは、主結晶相として、ケイ酸リチウムおよび石英結晶相を含み、重量パーセントで以下の成分を含む組成物を有する。SiO2:65~85%、Al2O3:1~15%、Li2O:5~15%、ZrO2:0.1~10%、P2O5:0.1~10%、K2O:0~10%、MgO:0~10%、ZnO:0~10%、Na2O:0~3%、Sb2O3:0~1%、SnO2:0~1%、SnO:0~1%、およびCeO2:0~1%であり、(SiO2+Al2O3+Li2O+ZrO2)/P2O5が、40~90であり、(K2O+MgO)/ZrO2が、0.6~1.2であり、厚さが0.55mmのヘイズが0.5%以下である。
【0022】
(13) ガラスセラミックは、主結晶相として、ケイ酸リチウムおよび石英結晶相を含み、重量パーセントで以下の成分を含む組成物を有する。SiO2:65~85%、Al2O3:1~15%、Li2O:5~15%、ZrO2:0.1~10%、P2O5:0.1~10%、K2O:0~10%、MgO:0~10%、およびZnO:0~10%であり、(SiO2+Al2O3+Li2O+ZrO2)/P2O5が、40~90である。
【0023】
(14) ガラスセラミックは、重量パーセントで以下の成分を含む。SiO2:65~85%、Al2O3:1~15%、Li2O:5~15%、ZrO2:0.1~10%、P2O5:0.1~10%、K2O:0~10%、MgO:0~10%、およびZnO:0~10%。
【0024】
(15) (12)~(14)のいずれかに記載のガラスセラミックであって、(SiO2+Al2O3+Li2O+ZrO2)/P2O5が、45~85、(SiO2+Li2O)/Al2O3が、8~13、(Al2O3+Li2O)/P2O5が、6~14、(SiO2+Li2O)/P2O5が、40~70、または、Li2O/(K2O+ZrO2)が、2.5~3.5である。
【0025】
(16) (12)~(15)のいずれかに記載のガラスセラミックであって、SiO2:70~76%、Al2O3:4~10%、Li2O:8~12.5%、ZrO2:1~5%、P2O5:1~3%、K2O:0~3%、MgO:0.3~2%、ZnO:0~3%、およびNa2O:0~1%。
【0026】
(17) (12)~(16)のいずれかに記載のガラスセラミックであって、(K2O+MgO)/ZrO2が、0.8~1.0、または、Li2O/(K2O+ZrO2)が、2.8~3.3である。
【0027】
(18) (12)~(17)のいずれかに記載のガラスセラミックであって、結晶化度が70%以上、粒子サイズが80nm以下、熱屈折率係数が-0.8×10-6/℃以下、または、400~800nmの波長で1mmの厚さの平均光透過率が85%以上である。
【0028】
本発明はさらに、電子デバイス用ガラスカバープレートを提供する。
【0029】
(19) 電子デバイス用ガラスカバープレートは、(1)~(11)のいずれかに記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品、または(12)~(18)のいずれかに記載のガラスセラミックを含む。
【0030】
本発明はさらに、電子デバイスを提供する。
【0031】
(20) 電子デバイスは、(1)~(11)のいずれかに記載の電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品、(12)~(18)のいずれかに記載のガラスセラミック、または、(19)に記載の電子デバイス用ガラスカバープレートを含む。
【0032】
本発明は、合理的な成分の設計により、本発明のガラスセラミックおよびガラスセラミック物品が優れた機械的特性を有し、電子デバイスに適しているという有益な効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、電子デバイスカバープレート用ガラスセラミック物品を単に「ガラスセラミック物品」と称す。
【0034】
本発明のガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は、結晶相およびガラス相を有する材料であり、これらは両方とも非晶質固体とは区別される。ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の結晶相は、X線回折分析におけるX線回折パターンに現れるピーク角により、およびTEMEDXにより判別でき、主結晶相はX線回折によって測定される。
【0035】
本発明の発明者は、繰り返しの試験および研究を通じて、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品を構成する特定の成分について、その含有量および含有量比を特定の値に規定し、特定の結晶相を析出させることにより、本発明のガラスセラミックまたはガラスセラミック物品を低コストで得た。
【0036】
ガラス組成物、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の各成分の組成範囲を以下に記載する。本明細書において、特に説明がない場合、各成分の含有量は全て、酸化物に関する組成のガラス物質の総量に対する重量%で表す。ここで、「酸化物に関する組成」とは、本発明のガラス組成物、ガラスセラミック、ガラスセラミック物品の成分の原料として使用される、酸化物、複合塩、水酸化物等が、溶融時に分解され酸化物へ変換された状況の下で、この酸化物の総量を100%とすることをいう。さらに、本明細書では、ガラスは、結晶化前のガラス組成のみを指し、ガラスセラミックは、結晶化後のガラス組成を指し、ガラスセラミック物品は、化学強化された後のガラスセラミックを指す。
【0037】
特に明記しない限り、ここで記載されている数値範囲には最大値と最小値を含む。「以上」と「以下」にはエンドポイント値、この範囲内のすべての整数と分数が含まれ、範囲が制限されているときに記載されている特定の値には制限されない。ここで使用される「約」という用語は、式、パラメータ、他の量および特徴が厳密ではなく、また、厳密である必要はないが、公差、スケールファクタ、および測定誤差等を反映して、必要に応じて、近似および/または大きくまたは小さくなり得ることを指す。ここで使用される「および/または」は包括的であり、例えば、「Aおよび/またはB」は、Aのみ、またはBのみ、あるいはAとBの両方を指す。
【0038】
本発明のガラス、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は、SiO2、Al2O3、Li2Oを含み、さらには、ZrO2、P2O5およびその他の成分を含む、リチウムアルミノケイ酸塩ガラス、ガラスセラミック、ガラスセラミック物品として広く説明することができる。いくつかの実施形態では、ガラスの組成に応じて、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の第1の主結晶相はケイ酸リチウムである。いくつかの実施形態では、第1の主結晶相は葉長石である。いくつかの実施形態では、第1の主結晶相は、石英結晶相(石英または石英と石英固溶体の組み合わせを含む)である。いくつかの実施形態では、主結晶相は、ケイ酸リチウムおよび石英結晶相を含む。いくつかの実施形態では、主結晶相は、ケイ酸リチウムおよび葉長石を含む。いくつかの実施形態では、第1の結晶相はケイ酸リチウムであり、第2の結晶相は石英結晶相である。いくつかの実施形態では、第1の結晶相は石英結晶相であり、第2の結晶相はケイ酸リチウムである。いくつかの実施形態では、第1の結晶相はケイ酸リチウムであり、第2の結晶相は葉長石である。いくつかの実施形態では、第1の結晶相は葉長石であり、第2の結晶相はケイ酸リチウムである。いくつかの実施形態では、主結晶相は、ケイ酸リチウム、葉長石、および石英結晶相を含む。いくつかの実施形態では、第1の結晶相はケイ酸リチウムであり、第2の主結晶相は葉長石であり、第3の主結晶相は石英結晶相である。いくつかの実施形態では、第1の主結晶相はケイ酸リチウムであり、第2の主結晶相は石英結晶相であり、第3の主結晶相は葉長石である。いくつかの実施形態では、第1の結晶相は葉長石であり、第2の主結晶相はケイ酸リチウムであり、第3の主結晶相は石英結晶相である。いくつかの実施形態では、第1の結晶相は石英結晶相であり、第2の主結晶相はケイ酸リチウムであり、第3の主結晶相は葉長石である。いくつかの実施形態では、石英結晶相は、α六方石英結晶相である。いくつかの実施形態では、ケイ酸リチウムは、二ケイ酸リチウムである。副結晶相としては、β-スポデュメンネス(β-spodumeness)、リン酸リチウムなどもあり得る。本明細書の「石英結晶相」は、石英結晶のみを含むか、または石英および石英固溶体を含む2つの状況を包含する点に留意されたい。
【0039】
いくつかの実施形態では、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品中に残るガラス相は、8~45重量%であり、いくつかの実施形態では、10~40重量%であり、いくつかの実施形態では、12~40重量%であり、いくつかの実施形態では、15~40重量%であり、いくつかの実施形態では、15~35重量%であり、いくつかの実施形態では、15~32重量%であり、いくつかの実施形態では、20~45重量%であり、いくつかの実施形態では、20~40重量%であり、いくつかの実施形態では、32~45重量%であり、いくつかの実施形態では、32~40重量%であり、いくつかの実施形態では、35~45重量%である。
【0040】
ガラスセラミックの主結晶相が、石英結晶相、ケイ酸リチウム、葉長石、またはそれらの組み合わせのいずれかである場合、ガラスセラミックの破壊靭性は、高くなる。ガラスセラミックの主結晶相が、石英結晶相と二ケイ酸リチウムである場合、ガラスセラミックの熱屈折率係数は低くなり、破壊靭性は高くなり、ガラスセラミックの落下球試験高さが高くなり、4点曲げ強度が高くなる。
【0041】
本発明において、主結晶相は、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の50~92重量%を占め、いくつかの実施形態では、重量パーセントは60~90%に達し、いくつかの実施形態では、重量パーセントは65~85%に達し、いくつかの実施形態では、重量パーセントは70~80%に達し、いくつかの実施形態では、重量パーセントは80~92%に達する。本明細書で使用される「主結晶相」は、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品中において、他の結晶相よりも高い重量パーセントを有する結晶相を指す。
【0042】
いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の石英結晶相の重量パーセントは、70%以下である。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の石英結晶相の重量パーセントは、65%以下である。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の石英結晶相の重量パーセントは、60%以下である。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の石英結晶相の重量パーセントは、55%以下である。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の石英結晶相の重量パーセントは、50%以下である。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の石英結晶相の重量パーセントは、45%以下である。
【0043】
いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品のケイ酸リチウム結晶相の重量パーセントは、55%以下である。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品のケイ酸リチウム結晶相の重量パーセントは、50%以下である。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品のケイ酸リチウム結晶相の重量パーセントは、45%以下である。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品のケイ酸リチウム結晶相の重量パーセントは、40%以下である。
【0044】
いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の葉長石結晶相の重量パーセントは、40%以下である。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の葉長石結晶相の重量パーセントは、35%以下である。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の葉長石結晶相の重量パーセントは、30%以下である。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の葉長石結晶相の重量パーセントは、25%以下である。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の葉長石結晶相の重量パーセントは、20%以下である。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の葉長石結晶相の重量パーセントは、15%以下である。
【0045】
SiO2は、本発明のガラス組成物の基本成分であり、ガラスおよびガラスセラミックの網状構造を安定化するために使用することができる。SiO2は、結晶化した後の、ケイ酸リチウム、石英結晶相、および葉長石を構成する成分の1つである。SiO2の含有量が65%以下の場合、ガラスセラミック中に形成される結晶が減少し、粗くなる傾向がある。これは、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品のヘイズ、およびガラスセラミック物品の落下球試験高さの性能に影響を与える。したがって、SiO2の含有量の下限は、好ましくは65%、好ましくは70%である。SiO2の含有量が85%以上の場合、ガラスの溶融温度が高くなり、その結果、材料の溶融が困難になり、ガラスの成形が容易でなくなる。これは、ガラスの均一性に影響を及ぼす。したがって、SiO2の含有量の上限は、好ましくは85%、好ましくは80%、より好ましくは76%である。いくつかの実施形態において、SiO2は、約66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、および84%含有されうる。
【0046】
Al2O3は、ガラスの網状構造を形成するための成分である。Al2O3は、ガラスの成形を安定させ、化学的安定性を向上させるのに役立つ重要な成分である。Al2O3は、また、ガラスの機械的特性を向上させ、ガラスセラミック物品における、イオン交換層の深さおよび表面応力を増加させることができる。ただし、Al2O3の含有量が1%未満の場合、上述の効果は低くなる。したがって、Al2O3の含有量の下限は、1%であり、好ましくは4%である。一方で、Al2O3の含有量が15%を超えると、ガラスの溶融性や耐失透性が低下し、結晶化時に結晶が大きくなり、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の強度を低下させる。したがって、Al2O3の含有量の上限は15%であり、好ましくは12%であり、より好ましくは10%である。いくつかの実施形態において、Al2O3は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、および15%含有されうる。
【0047】
Li2Oは、結晶化後に結晶相を組成するために必要な成分である。Li2Oは、ケイ酸リチウムや葉長石などのリチウム含有結晶相を形成するのに貢献し、また、化学強化のために必要である。ただし、Li2Oの含有量が5%未満の場合、その効果は低くなる。したがって、Li2Oの含有量の下限は5%であり、好ましくは7%であり、より好ましくは8%である。いくつかの実施形態において、さらに好ましくは9%である。一方で、Li2Oが過剰に含まれていると、ガラスの化学的安定性が低下しやすく、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の光透過率が低下する。したがって、Li2Oの含有量の上限は、好ましくは15%であり、より好ましくは12.5%であり、いくつかの実施形態において、さらに好ましくは10%未満である。いくつかの実施形態において、Li2Oは、約5%、6%、7%、8%、9%、9.8%、10%、11%、12%、13%、14%および15%含有されうる。
【0048】
本発明者らは、集中的な実験および研究を通じて、ガラスの熱膨張係数、ならびにガラスセラミックおよびガラスセラミック物品のヘイズおよび粒子サイズが、SiO2、Li2OおよびAl2O3を特定の割合で導入を制御することによって影響を受ける可能性があることを発見した。特に、(SiO2+Li2O)/Al2O3が、6~15の範囲内にあると、ガラスの熱膨張係数が低くなり、結晶化後に小さな粒子が得られ、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の機械的強度が向上する。いくつかの実施形態では、(SiO2+Li2O)/Al2O3は、好ましくは8~13、より好ましくは8~12.5であると、低いヘイズが得られ、その結果、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は優れた光透過率を有する。さらに、顕著な効果をもたらすためには、(SiO2+Li2O)/Al2O3が、8.5~12であることが好ましい。いくつかの実施形態において、(SiO2+Li2O)/Al2O3の値は、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5および15となりうる。
【0049】
P2O5は、ガラスの低温溶融特性を改善するのを助け、分相によってガラス内に結晶核を形成し、結晶化中のガラスの熱膨張安定性を向上させることができる任意の成分である。P2O5の含有量の下限は、好ましくは0.1%、より好ましくは0.5%、さらに好ましくは1%である。しかし、P2O5が過剰に含まれていると、ガラスの耐失透性の低下とガラスの分相が発生しやすくなり、ガラスの機械的特性が低下する傾向がある。したがって、P2O5の含有量の上限は10%であり、好ましくは5%であり、より好ましくは3%である。いくつかの実施形態において、P2O5は、約0%、0.1%、0.3%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%および10%含有されうる。
【0050】
本発明では、(SiO2+Li2O)/P2O5の値を40~80の範囲に制御することにより、ガラスセラミック物品のイオン交換層の深さを最適化することができる。特に、(SiO2+Li2O)/P2O5の値は、40~70の範囲であり、より好ましくは(SiO2+Li2O)/P2O5の値は42~60であり、さらに好ましくは45~60である場合、ガラスセラミック物品はより深いイオン交換層を得ることができる。いくつかの実施形態では、(SiO2+Li2O)/P2O5の値が40~70、より好ましくは42~60、さらに好ましくは45~60の範囲にある場合、結晶化工程は、石英結晶相および二ケイ酸リチウムの形成を促進する。さらに、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は、-0.5×10-6/℃以下、好ましくは-0.8×10-6/℃以下、さらに好ましくは-1.1×10-6/℃以下という優れた熱屈折率係数を有し、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品中のガラス相と他の結晶相との間の温度差によって引き起こされる屈折率の差を低減する。また、温度差の変化により、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の光透過率が低下するのを防ぐ。いくつかの実施形態において、(SiO2+Li2O)/P2O5の値は、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69および70となり得る。
【0051】
大規模な実験および研究を通じて、本発明者らは、ガラスに導入されるAl2O3、Li2OおよびP2O5の比率が、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の表面応力および4点曲げ強度に大きな影響を与えることを発見した。特に、(Al2O3+Li2O)/P2O5が、5~20の範囲内にあると、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の表面応力を改善することができる。好ましくは、(Al2O3+Li2O)/P2O5は、6~14の範囲、いくつかの実施形態では、より好ましくは8~14の範囲、さらに好ましくは8.5~14の範囲であり、その結果、石英結晶相および二ケイ酸リチウムを容易に形成することができ、ガラスセラミックとガラスセラミック物品の4点曲げ強度は、明らかに改善される。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の4点曲げ強度は、600MPa以上、好ましくは650 MP以上、より好ましくは700MPa以上である。いくつかの実施形態において、(Al2O3+Li2O)/P2O5の値は、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、および20となりうる。
【0052】
ZrO2は、結晶を析出させて結晶核を形成することができ、且つ、ガラスの化学的安定性を向上させるのに寄与する任意の成分である。研究によると、ZrO2は、ガラスの失透性を大幅に低減して、成形工程中の液相線温度を下げることで、Li2O-Al2O3-SiO2-P2O5ガラスの安定性をさらに向上させることができることがわかった。本発明では、ZrO2の含有量の下限は、好ましくは0.1%であり、より好ましくは0.5%であり、さらに好ましくは1%である。しかしながら、ZrO2が過剰に含まれると、ガラスの耐失透性が下がりやすくなり、ガラス結晶化工程における制御の難しさが増す。したがって、ZrO2の含有量の上限は、10%であり、好ましくは6%であり、より好ましくは5%である。いくつかの実施形態において、ZrO2は、約0%、0.1%、0.3%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%および10%含有されうる。
【0053】
大規模な実験的研究において、本発明者らは、SiO2、Al2O3、Li2OおよびZrO2の総含有量に対するP2O5の導入量の比、即ち、(SiO2+Al2O3+Li2O+ZrO2)/P2O5を、40~90の範囲、好ましくは45~85の範囲に制御することにより、ガラスセラミック物品が、700mm以上からの落下球の衝撃を受け得ることを発見した。特にいくつかの実施形態では、(SiO2+Al2O3+Li2O+ZrO2)/P2O5が46~80の範囲にあるとき、二ケイ酸リチウムおよび石英結晶相がより容易に形成され、ガラスセラミック物品は比較的容易に優れた破壊靭性を得ることができる。破壊靭性は、1MPa・m1/2以上、好ましくは1.3MPa・m1/2以上、より好ましくは1.5MPa・m1/2以上になり得る。同時に、落下球試験高さの耐性をさらに最適化するために、(SiO2+Al2O3+Li2O+ZrO2)/P2O5は、さらに好ましくは48~80である。落下球試験高さは、700mm以上、好ましくは800mm以上、より好ましくは1000mm以上、さらに好ましくは1200mm以上である。いくつかの実施形態において、(SiO2+Al2O3+Li2O+ZrO2)/P2O5は、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89および90となりうる。
【0054】
K2Oは、ガラスの低温溶融性と成形性を向上させるのに寄与する任意の成分である。しかし、K2Oが過剰に含まれていると、ガラスの化学的安定性の低下、および平均線膨張係数の上昇が発生しやすくなる。したがって、K2Oの含有量は、0%~10%、好ましくは0%~5%、より好ましくは0%~3%である。いくつかの実施形態において、K2Oは、約0%、0%よりも多く、0.1%、0.3%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%および10%含有されうる。
【0055】
本発明において、K2OおよびZrO2の総含有量に対するLi2Oの導入比、すなわちLi2O/(K2O+ZrO2)が、2.3~4.0の範囲に制御される場合、ガラスセラミックの結晶特性を最適化することができ、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は、適度な結晶化度を有し、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品が優れた特性を有するようになる。好ましくは、Li2O/(K2O+ZrO2)は、2.5~3.5、より好ましくは2.8~3.3であると、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の落下球試験高さを増加させる。いくつかの実施形態では、落下球試験高さは、好ましくは800mm以上、より好ましくは1000mm以上、さらに好ましくは1200mm以上である。いくつかの実施形態において、Li2O/(K2O+ZrO2)の値は、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9および4.0となりうる。
【0056】
ZnOは、ガラスの溶融特性を改善し、ガラスの化学的安定性を向上させ、結晶化において粒子を細粒化することができる。ZnOの含有量の上限を10%以下に制御することにより、失透性の低下を抑えることができる。したがって、ZnOの含有量の上限は10%であり、好ましくは5%であり、より好ましくは3%である。いくつかの実施形態において、ZnOは、約0%、0%より多く、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%および10%含有されうる。
【0057】
MgOは、ガラスの粘度を下げ、成形時のガラスの結晶化を抑制し、結晶化において粒子を細粒化するのに寄与し、低温溶融特性を改善する効果がある。本発明において、MgOは、任意の成分であり、0.3%以上の含有量が好ましい。ただし、MgOが過剰に含まれていると、耐失透性が低下し、結晶化後に望ましくない結晶が得られ、その結果、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の特性が低下する可能性がある。したがって、MgOの含有量の上限は、10%であり、好ましくは5%であり、より好ましくは2%である。いくつかの実施形態において、MgOは、約0%、0%より多く、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%および10%含有されうる。
【0058】
大規模な実験的研究を通じて、本発明者は、K2OおよびMgOの総含有量(K2O+MgO)に対するZrO2の導入量の比、即ち(K2O+MgO)/ZrO2が0.6~1.2の範囲に制御された場合、Li2Oと相乗効果をもたらすことができ、その結果、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は、適切な量の結晶化度を有することを発見した。その結果、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は優れた特性を有する。それと同時に、研究によれば、好ましくは(K2O+MgO)/ZrO2を0.7~1.1に制御することにより、結晶粒子を細粒化することができ、光透過率および機械的強度をより優れたものにすることができる。より好ましくは、(K2O+MgO)/ZrO2が0.8~1.0である場合、いくつかの実施形態では、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の4点曲げ強度が高くなり、好ましくは650MPa以上となり、より好ましくは700MPa以上となる。いくつかの実施形態において、(K2O+MgO)/ZrO2は、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.05、1.1、1.15および1.2となりうる。
【0059】
SrOは、ガラスの低温溶融特性を改善し、結晶化の形成を抑制する任意の成分である。本発明において、SrOが好ましくは5%以下に制御されると、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は、優れた粒子サイズを得ることができる。好ましくは、SrOの含有量は1%以下である。いくつかの実施形態では、SrOは好ましくは導入されない。いくつかの実施形態において、SrOは、約0%、0%より多く、0.3%、0.5%、1%、2%、3%、4%、および5%含有されうる。
【0060】
BaOは、ガラスのガラス成形性を向上させるための任意の成分である。BaOの含有量が5%を超えると、ガラスの耐失透性が低下する。したがって、本発明において、BaOの含有量は、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下に制御される。いくつかの実施形態では、BaOは好ましくは導入されない。いくつかの実施形態において、BaOは、約0%、0%より多く、0.3%、0.5%、1%、2%、3%、4%、および5%含有されうる。
【0061】
TiO2は、ガラスの溶融温度を下げ、化学的安定性を向上させるのに寄与する任意の成分である。本発明において、ガラス結晶化工程は、TiO2が5%以下導入された場合に容易に制御することができる。好ましくは、TiO2の含有量は1%以下である。いくつかの実施形態では、TiO2は好ましくは導入されない。いくつかの実施形態において、TiO2は、約0%、0%より多く、0.3%、0.5%、1%、2%、3%、4%、および5%含有されうる。
【0062】
Y2O3は、ガラスの硬度と化学的安定性の向上に寄与する任意の成分である。しかし、Y2O3の含有量が多すぎると、ガラスが結晶化しやすくなる。Y2O3の含有量は、5%以下、好ましくは1%以下である。いくつかの実施形態では、Y2O3は好ましくは導入されない。いくつかの実施形態において、Y2O3は、約0%、0%より多く、0.3%、0.5%、1%、2%、3%、4%、および5%含有されうる。
【0063】
Na2Oは、ガラスの溶融性を改善するための任意の成分であり、含有量が高い場合、結晶化中に析出される結晶相が大きくなるか、または析出する結晶相の変化を引き起こす傾向がある。したがって、本発明のガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の特性を損なうことなく、ガラスセラミック物品は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下のNa2Oを含むことができる。いくつかの実施形態では、好ましくはNa2Oを含まない。いくつかの実施形態において、Na2Oは、約0%、0%よりも多く、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%および5.0%含有されうる。
【0064】
B2O3は、溶融温度が低いガラスを提供するのに寄与する。B2O3の含有量が多いと、ガラスの化学的安定性が低下する。したがって、B2O3の含有量は、3%以下である。いくつかの実施形態では、好ましくは0.1%~2%である。いくつかの実施形態では、B2O3は好ましくは導入されない。いくつかの実施形態において、B2O3は、約0%、0%よりも多く、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%および3.0%含有されうる。
【0065】
Sb2O3、SnO2、SnO、およびCeO2のうちの1または複数の成分が清澄剤として導入され、Sb2O3の含有量の上限は2%、好ましくは1%、より好ましくは0.5%である。SnO2、SnOまたはCeO2のそれぞれの含有量の上限は、それぞれ2%、好ましくは1%、より好ましくは0.5%である。いくつかの実施形態において、上記4つ清澄剤のうちの1または複数の含有量は、約0%、0%よりも多く、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%および2.0%含有されうる。
【0066】
いくつかの実施形態では、As2O3、Clの化合物、Brの化合物などを清澄剤として使用することができ、その含有量は2%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下である。
【0067】
本発明において、適切な粒子サイズおよび結晶相のタイプを得るために、いくつかの実施形態では、La2O3、Cs2O、Tb2O3、GeO2およびCaOなどの成分を導入しないことが好ましい。PbOとAs2O3は有毒物質であるため、少量添加しても環境要件に適合することができない。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、PbOおよびAs2O3は、含まれていない。
【0068】
本明細書に記載される「導入されない(“not introduced”)」、「含まない(“not comprise”)」、「含まない(“not contained”)」、「含まない(“is free of”)」および「0%」は、化合物、分子または元素が、原料として本発明のガラス、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品に意図的に添加されないことを指す。しかしながら、ガラス、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品を製造するために使用される原材料および/または機器は、意図的に添加されていないいくつかの不純物または成分を含む可能性があるため、それらの少量または微量が最終的なガラス組成物、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品に含まれる可能性があり、そのような状況も、本発明の特許の保護範囲に含まれる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態において、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品の主結晶相は、ケイ酸リチウムおよび石英結晶相を含む。ケイ酸リチウムは、二ケイ酸リチウム(Li2Si2O5)およびメタケイ酸リチウム(Li2SiO3)が含まれる。いくつかの実施形態では、二ケイ酸リチウム、および石英結晶相および/または葉長石が主結晶相として好ましく使用される。いくつかの実施形態では、二ケイ酸リチウムおよび石英結晶相が主結晶相として好ましく使用される。いくつかの好ましい実施形態では、二ケイ酸リチウムおよびα-石英結晶相が主結晶相として使用され、本発明のより優れた特性を得ることができる。
【0070】
本発明のガラスセラミックは、優れた機械的特性を備えており、イオン交換を行うことによって追加の機械的強度を得ることができる。合理的な成分の設計を通じて、本発明のガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は、適切な粒子サイズを得ることができる。同時に、本発明のガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は、良好な結晶化度を有しており、本発明のガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は、優れた機械的特性を有する。本明細書で使用される「結晶化度」は、結晶化の完全性の程度を指し、完全な結晶化を有する結晶は、内部の粒子が比較的に規則的に配置され、回折線は強く、鋭く、対称であり、回折ピークの半値全幅は装置で測定した幅に近い。結晶性の低い結晶には転位などの欠陥があり、回折線のピーク形状が広く拡散する。結晶化度が低いほど、回折能力が弱くなり、バックグラウンドで消えるまで回折ピークが広くなる。
【0071】
本発明のガラスセラミックまたはガラスセラミック物品の粒子サイズおよびヘイズは、ガラスセラミックおよび/またはガラスセラミック物品の透明性、すなわち光透過率に影響を及ぼし得る。粒子が小さいほど、透明度が高くなる。ヘイズが低いほど、透明度が高くなる。いくつかの実施形態では、0.55mmの厚さのヘイズは、0.6%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.4%以下である。いくつかの実施形態では、粒子サイズは、100nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。一方で、ガラスセラミックの結晶相とガラス相との間の屈折率の差が小さいほど、ガラスセラミックまたはガラスセラミックの透明度が高くなることが研究からわかった。
【0072】
いくつかの実施形態では、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品は、可視範囲で高い透明度を有する(すなわち、ガラスセラミックまたはガラスセラミック物品は透明である)。いくつかの実施形態では、400~800nmの範囲の波長で1mmの厚さの平均光透過率は、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上である。いくつかの好ましい実施形態では、550nmの波長で0.55mmの厚さの光透過率は、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは91%以上である。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗菌成分は、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミック物品に添加され得る。
【0074】
本発明のガラス組成物、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は、以下の方法で生成および製造することができる。
【0075】
ガラス組成物の生成:組成比の範囲に従って原料を均一に混合し、ガラス組成物の溶融難易度に応じて、プラチナまたは石英製のるつぼに均一な混合物を入れ、電気炉またはガス炉で1250~1650℃の温度範囲で5~24時間溶融し、均一になるまで攪拌し、適切な温度まで冷却して型に流し込み、徐々に冷却してガラス組成物を生成する。
【0076】
本発明のガラス組成物は、当該技術分野で知られている任意の方法で成形することができる。いくつかの実施形態では、本発明のガラス組成物の屈折率(nd)は、1.500~1.530、好ましくは1.510~1.525である。
【0077】
本発明のガラス組成物は、成形または成形工程後、結晶化工程により結晶化処理され、ガラス内で結晶が均一に析出される。このような結晶化処理は、1段階または2段階で行われる。好ましくは、結晶化処理は2段階で行われる。核形成工程が第1の温度で行われ、次に、結晶成長工程が核形成工程の温度よりも高い第2の温度で行われる。第1の温度で行われる結晶化処理は、第1の結晶化処理と呼ばれる。第2の温度で行われる結晶化処理は、第2の結晶化処理と呼ばれる。
【0078】
ガラスセラミックに所望の物理的特性を持たせるために、好ましい結晶化工程は、以下の通りである。
【0079】
上記の結晶化処理は一段階で行われ、核形成工程と結晶成長工程を連続して行うことができる。すなわち、結晶化処理の所定の温度まで温度を上げ、熱処理温度に達した後、一定時間温度を維持し、その後、温度を下げる。このような結晶化処理の温度は、所望の結晶相を析出させるために、好ましくは490~800℃、より好ましくは550~750℃である。結晶化処理の温度での保持時間は、好ましくは0~8時間、より好ましくは1~6時間である。
【0080】
上記の結晶化処理を2段階で行う場合には、第1の温度は490~650℃、第2の温度は600~850℃が好ましい。第1の温度での保持時間は、好ましくは0~24時間、より好ましくは2~15時間である。第2の温度での保持時間は、好ましくは0~10時間、より好ましくは0.5~6時間である。
【0081】
上記の0時間の保持時間は、その温度に達してから1分以内に温度が上下することを意味する。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明の結晶化処理により得られるガラスセラミックの屈折率(nd)は、1.520から1.550、好ましくは1.530から1.545である。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明のガラス組成物またはガラスセラミックは、様々な工程によって成形体に製造することができる。成形体は、シートを含むがこれには限定されない。工程には、スリット描画(slit drawing)、フローティング(floating)、ローリング(rolling)、および当技術分野で知られている他のシート形成工程が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、ガラス組成物またはガラスセラミックは、当技術分野で知られているフローティング工程またはローリング工程によって製造することができる。
【0084】
本発明のガラス組成物またはガラスセラミックは、研削または研磨工程によってシートガラス成形体に製造することができる。ただし、ガラス成形体の製造方法は、上記の方法に限定されない。
【0085】
本発明のガラスまたはガラスセラミック成形体は、特定の温度での熱間曲げまたは圧縮などの工程によって様々な形状に製造することができるが、この工程に限定されない。
【0086】
本発明のガラス組成物、ガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は、任意の合理的かつ有用な厚さを有することができる。
【0087】
本発明のガラスセラミックは、結晶を析出することによって機械的特性を改善することに加えて、圧縮応力層を形成することによってより高い強度を得ることができ、それによってガラスセラミック製品を製造することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物またはガラスセラミックは、シートに加工され、および/または成形(例えば、パンチング、熱間曲げなど)され、成形後に研磨および/または側面研磨され、次いで化学強化工程によって化学強化され得る。
【0089】
本明細書で使用される「化学強化」は、イオン交換法である。本発明のガラスおよびガラスセラミックは、当技術分野で知られている方法によってイオン交換することができる。イオン交換工程中に、ガラスまたはガラスセラミック内の小さな金属イオンは、ガラスまたはガラスセラミックの近くで、同じ原子価状態の大きな金属イオンに置き換えられるか、「交換」される。より小さなイオンはより大きなイオンに置き換えられ、ガラスまたはガラスセラミック中で圧縮応力が溜まり、圧縮応力層が形成される。
【0090】
いくつかの実施形態において、金属イオンは一価アルカリ金属イオン(例えば、Na+、K+、Rb+、Cs+など)であり、イオン交換は、より大きな金属イオンの溶融塩の少なくとも1つを含む塩浴にガラスまたはガラスセラミックを浸漬することによって行われ、より大きな金属イオンは、ガラス内のより小さな金属イオンを置き換えるために使用される。または、Ag+、Tl+、Cu+などの他の一価金属イオンを、一価のイオンと交換するために使用することができる。ガラスまたはガラスセラミックを化学強化するために使用される1つまたは複数のイオン交換工程は、単一の塩浴、または、同じもしくは、異なる組成を有する複数の塩浴にガラスまたはガラスセラミックを浸漬し、洗浄および/またはアニーリングステップを、浸漬の間に行う、ことを含み得るが、これに限定されない。
【0091】
いくつかの実施形態では、イオン交換は、ガラスまたはガラスセラミックを、約430~470℃の温度で約6~20時間、ナトリウム溶融塩(例えば、NaNO3)の塩浴に浸漬することによって行うことができる。好ましい温度範囲は435℃から460℃であり、好ましい時間範囲は8~13時間である。そのような実施形態では、Naイオンは、ガラスまたはガラスセラミック中のLiイオンの一部を置き換えて、表面圧縮層を形成し、高い機械的特性が表れる。いくつかの実施形態では、イオン交換は、ガラスまたはガラスセラミックを、約400~450℃の温度で約1~8時間(好ましい時間範囲は2~4時間)、K溶融塩(例えば、KNO3)の塩浴に浸漬することによって行うことができる。
【0092】
いくつかの好ましい実施形態では、450℃で約8時間のNa溶融塩(例えば、NaNO3)の塩浴を行うと、イオン交換層は、80μm以上、好ましくは85μm以上の深さとなる。
【0093】
いくつかの実施形態では、ガラスまたはガラスセラミックの表面層にイオンを注入するイオン注入法、ならびに、ガラスおよびガラスセラミックを加熱してから急速に冷却する熱強化法がある。
【0094】
本発明のガラス組成物、ガラスセラミックおよび/またはガラスセラミック物品の性能指標は、以下の方法で試験される。
【0095】
「熱膨張係数」
【0096】
熱膨張係数(α20℃-120℃)は、GB/T7962.16-2010の試験方法に従って試験される。
【0097】
[屈折率]
【0098】
屈折率(nd)は、GB/T7962.1-2010の方法に従って試験される。
【0099】
「ヘイズ」
【0100】
ヘイズテスターEEL57Dは、GB2410-80に準拠した厚さ0.55mmのガラスサンプルの試験に使用される。
【0101】
「粒子サイズ」
【0102】
粒子サイズはSEMで試験される。ガラスセラミックの表面をHF酸で処理した後、ガラスセラミックの表面に金をスプレーし、SEM走査型電子顕微鏡でその表面をスキャンして粒子サイズを決定する。
【0103】
「光透過率」
【0104】
サンプルを厚さ1mmに処理し、相対面を平行に研磨し、Hitachi U-41000分光光度計を使用して400~800nmの平均光透過率を測定する。
【0105】
サンプルを厚さ0.55mmに処理し、相対面を平行に研磨し、Hitachi U-41000分光光度計で550nmの平均光透過率を測定する。
【0106】
「熱屈折率係数」
【0107】
熱屈折率係数は、GB/T 7962.4-2010で指定された方法に従って試験され、20~40℃の熱屈折率係数が試験される。
【0108】
「結晶化度」
【0109】
XRD回折ピークは、パターンデータベースと比較される。結晶化度は、全体的なパターン強度に対する結晶相の回折強度の比率を計算することによって得られ、純粋な石英結晶によって内部的に区別される。
【0110】
「表面応力」および「イオン交換層の深さ」
【0111】
表面応力は、ガラス表面応力計FSM-6000LEUVによって試験される。
【0112】
イオン交換層の深さは、ガラス表面応力計SLP-2000によって試験される。
【0113】
測定条件は、屈折率1.54、光学弾性定数25.3[(nm/cm)/MPa]として計算される。
【0114】
「落下球試験の高さ」
【0115】
150×57×0.55mmのサンプルの2つの表面を研磨し、ゴムシート上に置き、132 gの鋼球を所定の高さから落下させた場合に、サンプルが破損せずに、衝撃に耐えることができる最大落下球試験高さで示す。具体的には、試験は650mmの高さから行われる。破損しなかった場合には、高さは700mm、750mm、800mm、850mm、900mm以上と順に上げられる。「落下ボール試験高さ」を有する実施形態では、ガラスセラミック物品が試験対象として使用される。実施例において、900mmとして記録された試験データは、鋼球が900mmの高さから落下した場合でも、ガラスセラミック物品が破損することなく衝撃に耐えることを示す。
【0116】
「破壊靭性」
【0117】
押し込み膨張性亀裂の大きさを直接測定する方法により、2mm×4mm×20mmのサンプルサイズで、面取りし、滑らかにし、研磨した後のサンプルを準備した後、ビッカース硬さ圧子を用いて49Nの力をサンプルに加えて30秒間維持する。押し込みを加えた後、3点曲げ法により破壊強度を測定する。
【0118】
「4点曲げ強度」
【0119】
マイクロコンピューター制御の電子ユニバーサルCMT6502が使用され、ガラスサイズは150×57×0.55mmであり、ASTM C158-2002に準拠して試験される。
【0120】
本発明のガラス組成物は、以下の特性を有する。
【0121】
1)いくつかの実施形態において、熱膨張係数(α20℃-120℃)は、45×10-7/K~70×10-7/K、好ましくは50×10-7/K~70×10-7/Kである。
【0122】
2)いくつかの実施形態において、屈折率(nd)は、1.500~1.530、好ましくは1.510~1.525である。
【0123】
本発明のガラスセラミックは、以下の特性を有する。
【0124】
1)いくつかの実施形態では、0.55mmの厚さのヘイズは、0.6%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.4%以下である。
【0125】
2)いくつかの実施形態では、粒子サイズは、100nm以下、好ましくは80nm以下、より好ましくは60nm以下、さらに好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。
【0126】
3)いくつかの実施形態において、本発明のガラスセラミックの熱屈折率係数は、-0.5×10-6/℃以下、好ましくは-0.8×10-6/℃以下、さらに好ましくは-1.1×10-6/℃以下である。
【0127】
4)いくつかの実施形態では、結晶化度は、50%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上である。
【0128】
5)いくつかの実施形態において、屈折率(nd)は、1.520~1.550、好ましくは1.530~1.545である。
【0129】
6)いくつかの実施形態では、400~800nmの範囲の波長で1mmの厚さの平均光透過率は、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上である。
【0130】
7)いくつかの実施形態では、550nmの波長で0.55mmの厚さの光透過率は、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは91%以上である。
【0131】
本発明のガラスセラミック物品は、ガラスセラミックの上述の特性に加えて、さらに以下の特性を有する。
【0132】
1)いくつかの実施形態では、表面応力は、200MPa以上、好ましくは250MPa以上、より好ましくは300MPa以上である。
【0133】
2)いくつかの実施形態では、4点曲げ強度は、600MPa以上、好ましくは650MPa以上、より好ましくは700MPa以上である。
【0134】
3)いくつかの実施形態では、イオン交換層の深さは、30μm以上、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上、さらに好ましくは80μm以上である。
【0135】
4)いくつかの実施形態では、落下球試験高さは、700mm以上、好ましくは800mm以上、より好ましくは1000mm以上、さらに好ましくは1200mm以上である。
【0136】
5)いくつかの実施形態では、破壊靭性は、1MPa・m1/2以上、好ましくは1.3MPa・m1/2、より好ましくは1.5MPa・m1/2である。
【0137】
6)いくつかの実施形態では、400~800nmの範囲の波長で1mmの厚さの平均光透過率は、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上である。
【0138】
7)いくつかの実施形態では、550nmの波長で0.55mmの厚さの光透過率は、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは91%以上である。
【0139】
上述の優れた特性により、本発明のガラスセラミックおよびガラスセラミック物品は、ガラスカバープレートまたはガラス成分に広く製造することができる。また、ガラスセラミック、ガラスセラミック物品、ガラスカバープレートまたはガラス成分は、携帯電話、時計、コンピュータ、およびタッチスクリーンディスプレイなどの電子デバイスまたはディスプレイデバイスに使用することができる。
実施例:
【0140】
本発明の技術的解決法をさらに明確に説明および例示する目的で、以下の非制限的な実施形態を示す本発明の実施形態では、数値(量、温度など)の精度を確保するために多くの努力がなされてきたが、いくつかの誤差および偏差を考慮しなければならない。組成物自体は、酸化物を基準に重量%で提供され、100%に標準化されている。
【0141】
以下の表1~3は、ガラス組成物の実施形態を示している。
【表1】
【表2】
【表3】
以下の表4~6は、ガラスセラミックの実施形態を示している。
【表4】
【表5】
【表6】
以下の表7~9は、ガラスセラミック物品の実施形態を示している。
【表7】
【表8】
【表9】