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特許7049085可変ブラインド信号源分離フィルタを並列処理及びパイプライン処理するためのシステムと方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】可変ブラインド信号源分離フィルタを並列処理及びパイプライン処理するためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/41 20060101AFI20220330BHJP
   H03H 17/04 20060101ALI20220330BHJP
   G01S 7/38 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
G01S7/41
H03H17/04 613J
G01S7/38
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017163872
(22)【出願日】2017-08-29
(65)【公開番号】P2018077213
(43)【公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】15/263,016
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(73)【特許権者】
【識別番号】501411651
【氏名又は名称】エイチアールエル ラボラトリーズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】HRL LABORATORIES, LLC
【住所又は居所原語表記】3011 Malibu Canyon Road, Malibu, CA 90265-4799, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】レイ, ゲイリー アラン
(72)【発明者】
【氏名】ペトレ, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マーティン, チャールズ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ラオ, シャンカル アール.
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0096586(US,A1)
【文献】特開2011-191142(JP,A)
【文献】米国特許第06043771(US,A)
【文献】米国特許第05572213(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0362774(US,A1)
【文献】尾知博,“第7章 信号処理システムのアーキテクチャ”,シミュレーションで学ぶディジタル信号処理[ISBN:4-7898-3320-8],2001年07月01日,Pages 106-116
【文献】CHENG, Chi-Hao 外3名,“Electronic Warfare Receiver with Multiple FFT Frame Sizes”,IEEE TRANSACTIONS ON AEROSPACE AND ELECTRONIC SYSTEMS,Volume 48,Number 4,2012年10月08日,Pages 3318-3330,< DOI: 10.1109/TAES.2012.6324709 >
【文献】SATHEESH, Gowri 外1名,“Simulation Of Direction Finding Algorithm And Estimation Of Losses In An RWR System”,INTERNATIONAL JOURNAL OF SCIENTIFIC & TECHNOLOGY RESEARCH [ISSN 2277-8616],2014年08月,Volume 3, Issue 8,Pages 29-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 - G01S 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の時変信号(114/116)のうちの少なくとも1つの時変信号の少なくとも1つのパラメータを特定するため、信号データプロセッサ(101)に通信可能に連結されたセンサ(103)で受信された前記複数の時変信号(114/116)を処理する方法(1200)であって、該方法は、
前記信号データプロセッサ(101)の複数のブラインド信号源分離(“BSS”)モジュール(120)において、前記複数の時変信号(114/116)に由来する信号(124/126)を受信すること(1202)であって、前記複数のBSSモジュール(120)の各BSSモジュール(120)はフィルタ処理サブシステム(207)を含み、各BSSモジュール(120)内のフィルタ処理サブシステム(207)はパイプライン構造と並列構造を有する、受信すること(1202)と、
前記複数のBSSモジュール(120)を使用して、複数のブラインド信号源分離信号(129)を生成すること(1204)と、
前記複数のブラインド信号源分離信号(129)に基づいて、少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号(138)を前記信号データプロセッサ(101)のコンピューティングデバイス(132)へ送信すること(1206)と、
前記コンピューティングデバイス(132)を使用して、前記少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号(138)から少なくとも1つのパラメータを特定すること(1208)と、
前記信号データプロセッサ(101)から前記少なくとも1つのパラメータを出力すること(1210)と
を含み、
複数のブラインド信号源分離信号(129)を生成することは、第1のフィルタ係数(α)と第2のフィルタ係数(β)に従って各フィルタ処理サブシステム(207)を操作すること、並びに、前記少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号(138)と前記各フィルタ処理サブシステム(207)からのフィードバックとに基づいて前記第1及び第2のフィルタ係数(α、β)を連続的に更新することによって、前記複数のブラインド信号源分離信号(129)を生成することを含む、方法(1200)。
【請求項2】
信号(124/126)を受信すること(1202)は、少なくとも1つの信号ノイズ除去モジュール(118)からノイズ除去された信号(124)と状態エネルギー信号(126)を受信すること(1202)を含む、請求項1に記載の方法(1200)。
【請求項3】
複数のブラインド信号源分離信号(129)を生成することは、複数の加算ツリーモジュール(508)を使用して、前記複数のブラインド信号源分離信号(129)を生成することを含む、請求項1又は2に記載の方法(1200)。
【請求項4】
各フィルタ処理サブシステム(207)は複数のフィルタ処理モジュール(207a/207b/207c)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(1200)。
【請求項5】
フィルタ処理サブシステムについての前記第1及び第2のフィルタ係数(α、β)は、前記各フィルタ処理サブシステム(207)でフィルタ入力信号(228)の第1のパルスを受信後、2ハードウェアクロックサイクル以内に更新される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法(1200)。
【請求項6】
前記信号データプロセッサ(101)から前記少なくとも1つのパラメータを出力すること(1210)は、前記少なくとも1つのパラメータに基づいてビークル(146)の動きを指示することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法(1200)。
【請求項7】
複数の時変信号(114/116)のうちの少なくとも1つの時変信号の少なくとも1つのパラメータを特定するため、前記複数の時変信号(114/116)を処理するシステム(100)であって、前記システム(100)は、
前記複数の時変信号(114/116)を受信するように構成されたセンサ(103)と、
前記センサ(103)に通信可能に連結され、複数のブラインド信号源分離(“BSS”)モジュール(120)を備える信号データプロセッサ(101)であって、前記複数のBSSモジュール(120)の各BSSモジュール(120)はフィルタ処理サブシステム(207)を含む、信号データプロセッサ(101)とを備え、各BSSモジュール(120)内の前記フィルタ処理サブシステム(207)はパイプライン構造と並列構造を有し、前記信号データプロセッサ(101)は、
前記複数のBSSモジュール(120)において、前記複数の時変信号(114/116)に由来する信号(124/126)を受信し、
前記複数のBSSモジュール(120)を使用して、複数のブラインド信号源分離信号(129)を生成し、
前記複数のブラインド信号源分離信号(129)に基づいて、少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号(138)を前記信号データプロセッサ(101)のコンピューティングデバイス(132)へ送信し、
前記コンピューティングデバイス(132)を使用して、前記少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号(138)から前記少なくとも1つのパラメータを特定し、
前記信号データプロセッサ(101)から前記少なくとも1つのパラメータを出力する
ように構成されており、
各フィルタ処理サブシステムは、第1のフィルタ係数(α)と第2のフィルタ係数(β)に従って動作するように構成され、前記信号データプロセッサ(101)は更に、前記少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号(138)と前記各フィルタ処理サブシステム(207)からのフィードバックとに基づいて、前記第1及び第2のフィルタ係数(α、β)を連続的に更新するように構成される、システム(100)。
【請求項8】
前記信号データプロセッサ(101)は更に、前記複数のBSSモジュール(120)に前記信号(124/126)を提供するように構成された少なくとも1つの信号ノイズ除去モジュール(118)を備える、請求項7に記載のシステム(100)。
【請求項9】
フィルタ処理サブシステムについての前記第1及び第2のフィルタ係数(α、β)は、前記各フィルタ処理サブシステム(207)でフィルタ入力信号(228)の第1のパルスを受信後、2ハードウェアクロックサイクル以内に更新される、請求項7又は8に記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのパラメータを出力するため、前記信号データプロセッサ(101)は、前記少なくとも1つのパラメータに基づいて、ビークル(146)の動きを指示するように構成される、請求項7から9のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は概して、複数の混合信号から注目している信号を分離して特定することに関し、より具体的には、可変ブラインド信号源分離フィルタを並列処理及びパイプライン処理するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも幾つかの既知の信号処理システムでは、複数の混合信号(例えば、レーダー信号)は、ブラインド信号源分離フィルタに通信可能に連結されたセンサによって受信される。信号処理技術を使用して、ブラインド信号源分離フィルタは、複数の混合信号から注目している信号を正確に分離して特定することを試みる。性能を高めるため、少なくとも幾つかの既知のブラインド信号源分離フィルタは、パイプライン処理及び並列処理技術を使用する。しかしながら、パイプライン処理及び並列処理フィルタは一般的に、調整された各周波数に対して新しいフィルタ係数を決定することが必要で、また、集約的なメモリと計算リソースを必要とする比較的大きな参照テーブルも必要とする。加えて、少なくとも幾つかの既知のシステムでは、連続的な生成、分類、及びトラッキング中に遭遇する過剰なハードウェア遅延時間(例えば、クロックサイクルによる)によって、注目しているポテンシャル信号が誤って分類されること、或いは信号トラッキングに含まれないことが起こりうる。また、少なくとも幾つかの信号フィルタ調整のシステム及び方法では、パイプライン処理及び並列処理による信号フィルタ処理は、様々なプラットフォームで使用するには、実質的に異なる回路及びハードウェアバージョンを必要とする。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、複数の時変信号(time-varying signals)のうちの少なくとも1つの時変信号の少なくとも1つのパラメータを特定するため、信号データプロセッサに通信可能に連結されたセンサで受信された複数の時変信号を処理する方法が提供される。本方法は、信号データプロセッサの複数のブラインド信号源分離(BSS)モジュールで、複数の時変信号に由来する信号を受信することを含み、複数のBSSモジュールの各BSSモジュールはフィルタ処理サブシステムを含み、各BSSモジュール内のフィルタ処理サブシステムはパイプライン構造と並列構造を有する。本方法はまた、複数のBSSモジュールを使用して、複数のブラインド信号源分離信号を生成すること、並びに、複数のブラインド信号源分離信号に基づいて、少なくとも1つのパルス記述子ワード(PDW)パラメータベクトル信号を信号データプロセッサのコンピューティングデバイスへ送信することを含む。本方法は更に、コンピューティングデバイスを使用して、少なくとも1つのPDWパラメータベクトル信号から少なくとも1つのパラメータを特定すること、並びに、信号データプロセッサから少なくとも1つのパラメータを出力することを含む。
【0004】
別の態様では、複数の時変信号のうちの少なくとも1つの時変信号の少なくとも1つのパラメータを特定するため、複数の時変信号を処理するシステムが提供される。このシステムは、複数の時変信号を受信するように構成されたセンサ、及びそのセンサに通信可能に連結された信号データプロセッサを含む。信号データプロセッサは複数のBSSモジュールを含み、複数のBSSモジュールの各BSSモジュールはフィルタ処理サブシステムを含む。フィルタ処理サブシステムはパイプライン構造と並列構造を有する。信号データプロセッサは、複数のBSSモジュールで、複数の時変信号に由来する信号を受信し、複数のBSSモジュールを使用して、複数のブラインド信号源分離信号を生成するように構成されている。信号データプロセッサはまた、複数のブラインド信号源分離信号に基づいて、少なくとも1つのPDWパラメータベクトル信号を信号データプロセッサのコンピューティングデバイスへ送信するように構成されている。信号データプロセッサは更に、コンピューティングデバイスを使用して、少なくとも1つのPDWパラメータベクトル信号から少なくとも1つのパラメータを特定し、信号データプロセッサから少なくとも1つのパラメータを出力するように構成されている。
【0005】
更に別の態様では、複数の時変信号のうちの少なくとも1つの時変信号の少なくとも1つのパラメータを特定するため、複数の時変信号を処理する信号データプロセッサが提供される。信号データプロセッサは複数のBSSモジュールを含み、複数のBSSモジュールの各BSSモジュールはフィルタ処理サブシステムを含む。フィルタ処理サブシステムはパイプライン構造と並列構造を有する。信号データプロセッサは、複数のBSSモジュールで、複数の時変信号に由来する信号を受信し、複数のBSSモジュールを使用して、複数のブラインド信号源分離信号を生成するように構成されている。信号データプロセッサはまた、複数のブラインド信号源分離信号に基づいて、少なくとも1つのPDWパラメータベクトル信号を信号データプロセッサのコンピューティングデバイスへ送信するように構成されている。信号データプロセッサは更に、コンピューティングデバイスを使用して、少なくとも1つのPDWパラメータベクトル信号から少なくとも1つのパラメータを特定し、信号データプロセッサから少なくとも1つのパラメータを出力するように構成されている。
【0006】
本開示の上記の特徴、態様、及び利点、及びその他の特徴、態様、及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことで、より良く理解される。図面全体を通して、同様の特徴は同様の部分を表わしている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ブラインド信号源分離(BSS)を使用して、パルス記述子ワード(PDW)を生成するための例示的な信号処理システムの概略図である。
図2図1に示した信号処理システムの一部を形成する例示的なBSSチャネルの概略図である。
図3図2に示したフィルタ処理サブシステムと併用されうる、例示的なフィルタモジュールのパイプライン構造の概略図である。
図4図3に示したフィルタモジュールと併用されうる、例示的なフィルタ回路の詳細図である。
図5図2に示したフィルタ処理サブシステムと併用されうる、例示的なフィルタモジュールの並列構造の概略図である。
図6図5に示した並列フィルタ構造(P=4、及びM=4に対してNt=100)での、既知の正規化周波数(GHz)に対する周波数トラッキング誤差(Hz)の例示的なプロットである。
図7図5に示した並列フィルタ構造(P=4、及びM=4に対してNt=1000)での、既知の正規化周波数(GHz)に対する周波数トラッキング誤差(Hz)の例示的なプロットである。
図8図5に示した並列フィルタ構造(P=4、及びM=4に対してNt=10000)での、既知の正規化周波数(GHz)に対する周波数トラッキング誤差(Hz)の例示的なプロットである。
図9図5に示した並列フィルタ構造(P=8に対してNt=1000)での、既知の正規化周波数(GHz)に対する周波数トラッキング誤差(Hz)の例示的なプロットである。
図10図1に示した信号処理システム100の動作のグラフィック表現で、倍精度フィルタ及び中心周波数875.0メガヘルツ(MHz)でパイプライン処理された並列固定点フィルタについて、周波数に対する出力スペクトル密度(PSD)を表わしている。
図11図5に示した並列フィルタ構造の動作のグラフィック表現で、28種類の異なるフィルタ係数の補間点の個数に対して、多相(polyphase)システム関数で決定されるフィルタ中心周波数の誤差(Hz)を示している。
図12図1に示した信号処理システムと併用されうる複数の時変信号の例示的な処理方法のフロー図である。
【0008】
特に明記されない限り、本書で提供される図面は、本開示の実装の特徴を説明することを意図している。これらの特徴は、本開示の一又は複数の実装を含む多種多様なシステムに適用可能と考えられている。同様に、これらの図面は、当業者にとって既知で、本書に開示した実装の実行に欠かせない、従来のすべての機能を含むことを意図しているわけではない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の明細書及び特許請求の範囲では、以下の意味を有するように定義される幾つかの用語について言及される。
【0010】
文脈において他のことを明示されていない限り、単数形「1つの(「a」、「an」、及び「the」)」は、複数の対象を含む。
【0011】
「オプションの」又は「オプションにより」は、記述されているイベントや状況が起こることもあれば起こらないこともありうること、また、その記述が、イベントが発生する事例とイベントが発生しない事例を含むことを意味する。
【0012】
近似的な言葉は、本書で明細書及び特許請求の範囲の随所で使用されているように、関連する基本的な機能を変化させることなく、許容範囲内で変化しうる量的な表現を修飾するときに適用されうる。したがって、「約」、「およそ」及び「実質的に」などの表現は、指定された正確な値に限定されない。少なくとも幾つかの例では、近似的な言葉は、値を測定するための機器の精度に対応しうる。ここでは、また、明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、範囲の限界は組み合わされてもよく、及び/又は交換されてもよく、このような範囲は特定され、前後関係又は言語表現によって別途示されていないかぎり、そこに含まれるすべての部分範囲を含む。
【0013】
本書で使用されているように、「プロセッサ」及び「コンピュータ」という用語、並びに、「処理デバイス」、「コンピューティングデバイス」及び「コントローラ」などの関連用語は、従来技術においてコンピュータと称される集積回路に限定されることはなく、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び他のプログラマブル回路を広義に意味し、本書ではこれらの用語は交換可能に使用される。本書に記載の実装では、限定するものではないが、メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などのコンピュータ可読媒体、及び、フラッシュメモリなどのコンピュータ可読不揮発性媒体などを含みうる。代替的に、フロッピーディスク、コンパクトディスク-読出し専用メモリ(CD-ROM)、光磁気ディスク(MOD)、及び/又はデジタル多用途ディスク(DVD)が使用されうる。また、本書に記載の実装では、付加的な入力チャネルは、限定するものではないが、マウスやキーボードなどのオペレータインターフェースに関連付けられたコンピュータ周辺機器であってもよい。代替的に、例えば、限定するものではないが、スキャナを含みうる他のコンピュータ周辺機器も使用されうる。更に、例示的な実施形態では、付加的な出力チャネルは、限定するものではないが、オペレータインターフェースモニタを含みうる。
【0014】
更に、本書で使用されているように、「リアルタイム」という用語は、関連するイベントの発生時刻、所定のデータの測定及び収集の時刻、データを処理する時刻、及びイベントと環境にシステムが応答する時刻のうちの少なくとも1つを意味する。本書に記載の実装では、これらの活動とイベントは実質的に即時発生する。
【0015】
本書に記載のシステムと方法は、信号処理システムを対象とする。信号処理システムは、センサを使用して複数の混合信号(例えば、レーダー信号)を検出する。センサに通信可能に連結された信号データプロセッサは、複数の混合信号から一又は複数の注目している信号を分離して特定するため、ブラインド信号源分離(BSS)及び他の信号処理技術を使用する。例えば、注目している各信号の信号パラメータ(例えば、周波数、振幅など)が特定される。特定された注目の信号は、信号データプロセッサから出力される。例えば、特定された信号は、表示用のヒューマンマシンインターフェースに出力されてもよく、及び/又は、特定された信号に基づいてビークルの制御操作を促進するため、ビークルに出力されてもよい。
【0016】
信号データプロセッサは、注目している信号を分離して特定するため、フィルタ係数を使用する。本書に記載のシステム及び方法では、可変ブラインド信号源分離フィルタのフィルタ係数を即座に(例えば、1クロックサイクルほどの短いハードウェア遅延時間で)更新するため、並列処理及びパイプライン処理技術が使用される。本書に記載の実装はまた、既知のシステムおよび方法と比べて著しく小さな参照テーブルからの線形補間によって、連続フィルタチューニングと正確な信号パラメータトラッキングを促進する。本書に記載の実装は更に、既知のシステム及び方法よりも少ないメモリと計算リソースを使用して、パルス化された信号パラメータの生成、分類、及びトラッキングを可能にする。本書に記載の可変ブラインド信号源分離フィルタを並列処理及びパイプライン処理するためのシステムと方法はまた、FPGAベースの設計とASICベースの設計の両方について実質的に同様の回路とハードウェア実装で、無限インパルス応答(IIR)フィルタの並列処理とパイプライン処理を結合する。
【0017】
図1は、BSSを使用してパルス記述子ワード(PDW)を生成するための例示的な信号処理システム100の概略図である。BSSは、ブラインド信号源分離として知られるが、複数の混合信号から一又は複数の注目している信号を分離(例えば、フィルタ)するためにも使用される。限定するものではないが、未決定の(例えば、信号源よりも観測信号が少ない)ケースを含む応用では、信号エミッタ、注目している信号、又は信号混合プロセスに関する相当量の既知の情報に依存することなく、任意の時変信号(例えば、一又は複数の信号エミッタからのレーダーパルス)の組から注目している信号だけを分離して特定することが、BSSによって容易になる。
【0018】
例示的な実施形態では、信号処理システム100は、アンテナ102に通信可能に連結された信号データプロセッサ101を含む。例示的な実施形態では、アンテナ102は広域センサ103である。信号データプロセッサ101は、プリプロセッサ104とポストプロセッサ105を含む。センサ103は、レーダー信号エミッタ106及び107からの信号を受信するように構成されている。図1には、2つのレーダー信号エミッタ106及び107が示されているが、当業者であれば、センサ103が任意の数のレーダー信号エミッタ106及び107からの信号を受信しうることを理解するであろう。
【0019】
センサ103は、プレコンディショナー108を介して、プリプロセッサ104に通信可能に連結されている。例示的な実施形態では、プレコンディショナー108は、低ノイズ増幅器109、バンドパスフィルタ110、及び広帯域アナログ-デジタル変換器(ADC)111を含む。動作中、プレコンディショナー108は、センサ103から受信したセンサ出力信号112を、プリプロセッサ104へ送信される上り信号113に変換するように構成されている。各上り信号113は、センサ103で受信した時変信号に由来する。時変信号は、レーダー信号エミッタ106及び107から受信した混合信号を含みうる。例えば、時変信号は、第1のレーダー信号114及び第2のレーダー信号116を含みうる。
【0020】
例示的な実施形態では、プリプロセッサ104は、一又は複数の信号ノイズ除去モジュール118、及び複数のブラインド信号源分離(BSS)モジュール120を含む。各BSSモジュール120は、単一の信号ノイズ除去モジュール118に連結され、1つのBSSチャネルを表わす。信号処理システム100のBSSチャネルの総数はKで表わされる。信号ノイズ除去モジュール118はノイズ除去された信号124と状態エネルギー信号126を、複数のBSSモジュール120の各BSSモジュール120(例えば、120a,120b・・・120K)へ送信する。状態エネルギー信号126は、特定のサンプル時点(例えば、状態)での上り信号113の振幅に比例する量(例えば、アナログ電圧レベル)を表わす。
【0021】
動作中に、上り信号113は、プレコンディショナー108から、上り信号113がノイズ除去を受ける信号ノイズ除去モジュール118へ送信され、その後、ノイズ除去された信号124として各BSSモジュール120へ送信される。例えば、第1のレーダー信号114は最初、限定するものではないが、周波数と帯域幅を含む信号特性を有するパルスとして、センサ103で受信される。この例では、プレコンディショナー108によって処理された後の第1のレーダー信号114の信号パルスは、混合信号として信号ノイズ除去モジュール118で受信される(例えば、上り信号113は第1のレーダー信号114の信号パルスを表わし、限定するものではないが、ノイズ及び注目している所望の情報以外の情報を含む、様々な特性を有する)。信号ノイズ除去モジュール118は、周波数及び帯域幅(又は、規則的なパターンの周波数及び帯域幅)を有するノイズ除去された信号124をBSSモジュール120へ送信する前に、混合された上り信号113をノイズ除去する。信号処理システム100によって実装される方法は、上述の、また、図2を参照して以下で更に詳細に説明される、装置及びシステムによってほぼリアルタイムで実行される。
【0022】
更に、例示的な実施形態では、プリプロセッサ104は、各BSSモジュール120に連結された一又は複数のPDW生成モジュール128、並びに、各BSSモジュール120に連結されたパルスノイズ除去モジュール130を含む。PDW生成モジュール128は、各BSSモジュール120から受信したブラインド信号源分離信号129に基づいて、PDWパラメータベクトル信号138を生成する。各PDWパラメータベクトル信号138は、ブラインド信号源分離信号129の特異パルスに由来するレーダー信号114及び116の1つの注目している特性(例えば、周波数、帯域幅、到来時刻(time of arrival)、離脱時刻(time of departure)、パルス幅、パルス振幅、パルス反復間隔、及び/又は到来角(AOA))を表わすデータを含む。パルスノイズ除去モジュール130はまた、ブラインド信号源分離信号129に基づいて、未知の信号状態空間表現信号(signal state space representation signal)139を生成する。未知の信号状態空間表現信号139は、レーダー信号エミッタ106及び107のうちの1つについて使用可能な空間情報が識別できる、レーダー信号114及び116のうちの1つの注目している付加的な(例えば、非PDWタイプ)特性を表わすデータを含む。PDWパラメータベクトル信号138及び未知の信号状態空間表現信号139は、ポストプロセッサ105へ送信される。信号ノイズ除去モジュール118、PDW生成モジュール128、及びパルスノイズ除去モジュール130は、適切な信号フィルタ処理、信号増幅、信号変調、信号分離、信号調節、及び/又は、アナログ/デジタル電子回路コンポーネントを使用して実装されるADC回路を含む。また、例示的な実施形態では、各BSSモジュール120は、各ブラインド信号源分離信号129(例えば、129a,129b・・・129K)を、PDW生成モジュール128及びパルスノイズ除去モジュール130へ送信する。
【0023】
ポストプロセッサ105は、メモリ134を含むコンピューティングデバイス132を含む。上述のように、PDW生成モジュール128は、各BSSモジュール120からブラインド信号源分離信号129を受信する。次に、PDW生成モジュール128はブラインド信号源分離信号129を利用してPDWパラメータベクトル信号138を生成し、これはその後、ポストプロセッサ105へ送信される。PDWパラメータベクトル信号138はコンピューティングデバイス132によって受信され、限定するものではないが、少なくとも1つのバッファされたデータセットを含むコンピュータ可読データとして、メモリ134に保存される。パルスノイズ除去モジュール130はまた、各BSSモジュール120からブラインド信号源分離信号129を受信するように構成されている。パルスノイズ除去モジュール130は更に、ブラインド信号源分離信号129を利用して未知の信号状態空間表現信号139を生成するように構成されており、これはその後、ポストプロセッサ105へ送信される。未知の信号状態空間表現信号139はコンピューティングデバイス132によって受信され、限定するものではないが、少なくとも1つのバッファされたデータセットを含むコンピュータ可読データとして、メモリ134に保存される。例示的な実施形態では、コンピューティングデバイス132は、メモリ134に保存されている命令セットから(例えば、一又は複数のコンピュータ可読記憶媒体から)実行されるソフトウェアを実行するオペレーティングシステムを採用するコンピュータに基づく方法を利用して処理するため、バッファされたデータセットをメモリ134から取り出す。
【0024】
コンピューティングデバイス132は、PDWパラメータベクトル信号138及び未知の信号状態空間表現信号139のうちの少なくとも1つに含まれるデータに基づいて操作を実行するため、コンピュータに基づく方法(例えば、限定するものではないが、メモリ134を含む、一又は複数のコンピュータ可読記憶媒体に保存されたソフトウェア命令)を実装する。このような操作は、限定するものではないが、PDWパラメータベクトル信号138及び未知の信号状態空間表現信号139のうちの少なくとも1つでデータとして表わされる少なくとも1つのレーダー信号(例えば、信号114及び116)の様々な特性を(例えば、人が読むことのできる形態で)検出すること、処理すること、定量すること、保存すること、及び表示することを含む。例えば、PDW生成モジュール128によって生成されたPDWパラメータベクトル信号138は、ベクトルの形態で構築された複数のPDWベクトルデータブロックを含み、各PDWベクトルデータブロックは第1のレーダー信号114の1つのパラメータを含む。パラメータ(例えば、第1のレーダー信号114の少なくとも1つの特性を表わす)は、限定するものではないが、周波数、帯域幅、到来時刻、離脱時刻、パルス幅、パルス振幅、パルス反復間隔、及び/又はAOAを含む。コンピューティングデバイス132はPDWパラメータベクトル信号138を読み、複数のPDWベクトルデータブロックのうちの少なくとも1つのPDWベクトルデータブロックで、前述の操作の少なくとも1つを実行する。また、例示的な実施形態では、コンピューティングデバイス132は、PDWパラメータベクトル信号138を、その構成要素であるPDWベクトルデータブロックへ読込んで分離(例えば、デインターリーブ)し、PDWパラメータベクトル信号138に含まれていたPDWベクトルデータブロックの総数よりも少ないPDWベクトルデータブロックをメモリ134に保存する。PDWパラメータベクトル信号138のデインターリーブにより、例えば、限定するものではないが、レーダー信号エミッタ106及び/又は107の空間情報を正確に決定して追跡するため、コンピューティングデバイス132によって、レーダー信号114及び/又は116のうちの注目している信号の特性を決定することができる。他の実装では、コンピューティングデバイス132は、すべてのPDWベクトルデータブロックを読み込んで互いに分離し、そこに含まれる全データをメモリ134に保存する。コンピューティングデバイス132は、センサ103によってレーダー信号114及び116を受信するとほぼ同時に(例えば、リアルタイムで)、前述の操作を実行する。
【0025】
コンピューティングデバイス132によって実行された操作の結果得られるデータは、メモリ134に保存される。更に、例示的な実施形態では、信号処理システム100のユーザーによる、相互作用、修正、視覚化、少なくとも1つの更なる操作、及びレーダー信号114及び116に関する情報の可視的な記録のうちの少なくとも1つを促進するため、コンピューティングデバイス132によって、ポストプロセッサ105はデータ出力信号142をヒューマンマシンインターフェース(HMI)へ送信する。HMIは、例えば、ポストプロセッサ105からデータ出力信号142を受信するディスプレイ144である。一実施例では、レーダー信号エミッタ106及び107の物理的配置を表わす特性(例えば、物理的な空間ドメイン内のグリッド座標などの配置特性)は、信号処理システム100によって決定されるように、ディスプレイ144上に表示され、ほぼリアルタイムで更新される。データ出力信号142はまた、ポストプロセッサ105から、信号処理システム100に関連付けられた少なくとも1つのデバイス及び/又はシステム(例えば、ビークル146)へ送信される。更に、コンピューティングデバイス132により、ポストプロセッサ105は、アクチュエータ制御信号148をビークル内に含まれるアクチュエータ制御装置150にほぼリアルタイムで送信し、ビークル146の制御を促進することができる。例えば、ビークル146は、遠隔操作及び/又は自律操作される陸上ビークル及び/又は無人航空ビークル(UAV)であってもよい。
【0026】
1つの操作モードでは、各PDWパラメータベクトル信号138に含まれる周波数及び帯域幅の情報の少なくとも1つは、各レーダー信号エミッタ106及び107の配置に沿ってディスプレイ144に表示され、配置の正確なトラッキングと特定のレーダー信号エミッタ106及び107との関連付けを促進する。少なくとも1つのレーダー信号エミッタ106及び107が移動式の場合、各移動式レーダー信号エミッタ106及び107の少なくとも1つの配置情報を示すため、ディスプレイ144はほぼリアルタイムで自動的に更新される。更に、コンピューティングデバイス132はまた、各移動式レーダー信号エミッタ106及び107の少なくとも1つの速度、加速度、軌跡、軌道(例えば、現在又は以前の配置を含む)のうちの少なくとも1つを決定する。操作の別のモードでは、信号データプロセッサ101によって確定した特性はまた、信号処理システム100と通信を行う物理的装置及びシステムの様々なほぼリアルタイムの物理動作を起動する。例えば、信号処理システム100によって確定した周波数及び帯域幅を含むレーダー信号エミッタ106及び107の特性は、データとして(例えば、UAVのラダー及びフラップを制御するため)、ビークル146のアクチュエータ制御装置150にほぼリアルタイムで送信される。レーダー信号エミッタ106及び107が、脅威になりうると判断された認証されていない(例えば、敵対的である、これまでは検出されていないなどの)レーダー信号エミッタである場合には、アクチュエータ制御装置150は、信号エミッタ106及び107の操作領域を回避するため、又は信号エミッタ106及び107を採用するため、ビークル146を操作する。更なる実施例として、本書に記載の信号データ処理方法によって確定したレーダー信号エミッタ106及び107の特性は、例えば、レーダー妨害信号を、センサ103の監視可能な環境内で認証なしで動作しているレーダー信号エミッタ106及び107に向けるため、信号処理システム100に関連付けられた電子支援対策(ESM)装置及び電子戦(EW)システムのうちの少なくとも1つへの制御信号と、ほぼリアルタイムで送信される。
【0027】
動作中、信号処理システム100の複数のBSSモジュール120の各BSSモジュール120は、周波数、中心周波数、帯域幅、パルス時間、及びパルス幅情報のうちの少なくとも1つを含む高品質PWDの生成を可能にするため、動的更新によるフィタリング方法を実装する。BSSモジュール120は、本書に記載のパイプライン構造と並列構造を有する。例えば、注目しているレーダー信号の周波数及び帯域幅を追跡するための、PDWの精度及び分解能のこのような改良は、関連するレーダー信号が放射されるレーダー信号エミッタ106及び107の特定、決定、及び/又は解析を促進する。例えば、限定するものではないが、レーダー信号エミッタ106及び107のPDWに由来する情報を含む情報は、送信された後、ポストプロセッサ105によって、上述のようにデータ出力信号142としてディスプレイ144に表示される。この情報の改善により、信号処理システム100は、第1のレーダー信号エミッタ106を第2のレーダー信号エミッタ107と識別することができる。また、例えば、センサ103の監視環境内の異なるレーダー信号エミッタ(例えば、第1のレーダー信号エミッタ106及び第2のレーダー信号エミッタ107)は、ディスプレイ144上のそれぞれの配置(例えば、グリッド座標)に、(例えば、マップとして)プロットされる。
【0028】
また、動作中、複数のBSSモジュール120は、複数のノイズ除去された信号124を分離する。図2及び図3を参照して以下に示され、説明されるように、各BSSモジュール120は複数の可変フィルタを含み、各フィルタは、限定するものではないが、中心周波数及び帯域幅を含む、フィルタパラメータに基づいて動作する。更に、例示的な実施形態では、プリプロセッサ104はBSS制御モジュール196を含み、複数のBSSモジュール120の各BSSモジュール120の制御を促進する。BSS制御モジュール196は、限定するものではないが、周波数、帯域幅、及び状態を含むBSS関連情報を包含する各BSSデータ信号197(例えば、197a,197b・・・197K)を、複数のBSSモジュール120の各BSSモジュール120から受信する。BSSデータ信号197に含まれるBSS関連情報に基づいて、BSS制御モジュール196はまた、例えば、限定するものではないが、ノイズ除去された信号124の受信、並びに、PDW生成モジュール128及びパルスノイズ除去モジュール130のうちの少なくとも1つへの各ブラインド信号源分離信号129の送信のタイミングを制御するため、各BSS制御信号198(例えば、198a,198b・・・198K)を生成し、各BSSモジュール120へ返信する。BSSデータ信号197及びBSS制御信号198に含まれる情報は、フィードバック制御ループの実装を促進するためBSS制御モジュール196によって使用される。
【0029】
図2は、図1に示した信号処理システム100の一部を形成する例示的なBSSチャネル200(例えば、信号ノイズ除去モジュール118からノイズ除去した信号124を受信するBSSモジュール120a)の概略図である。上述のように、信号ノイズ除去モジュール118は、ノイズ除去された信号124と状態エネルギー信号126を送信する。また、例示的な実施形態では、状態エネルギー信号126は複数の状態エネルギー信号126で具現化される。複数の状態エネルギー信号126の各状態エネルギー信号126は、信号ノイズ除去モジュール118の各状態出力202の状態(例えば、特定のサンプル時刻での上り信号113の振幅に比例するアナログ電圧レベル)を表わす情報を含む。複数の状態エネルギー信号126は、状態エネルギー解析サブシステム204によって受信される。状態エネルギー解析サブシステム204は、フィルタ処理サブシステム207のSフィルタ状態に対応するS信号(例えば、126a,126b・・・126S)の各状態エネルギー信号126の中心周波数(例えば、f)を決定する。状態エネルギー解析サブシステム204は、長さNのSウィンドウの組(例えば、BSSモジュール120aのBSSチャネル状態マシンモジュール208の各状態の1つ)の中の総エネルギーを決定するように構成されたウィンドウ加算器モジュール206を含む。BSSチャネル状態マシンモジュール208は、フィルタ処理サブシステム207によって、ノイズ除去された信号124のフィルタ処理のタイミングを調整する。状態エネルギー解析サブシステム204はまた、ウィンドウ加算器モジュール206に連結された最大エネルギー検出モジュール210を含む。最大エネルギー検出モジュール210は、S加算されたウィンドウ信号212(例えば、212a,212b・・・212S)を受信し、S加算されたウィンドウ信号212の各加算されたウィンドウ信号212の最大エネルギーを決定するように構成されている。最大エネルギー検出モジュール210は更に、初期周波数信号214を決定し、最大エネルギー検出モジュール210に連結された信号周波数及び帯域幅トラッカモジュール216へ送信するように構成されている。
【0030】
例示的な実施形態では、初期周波数信号214は、BSSチャネル200の関連する状態に対応する各状態エネルギー信号126の最大エネルギーfを表わしている。信号周波数及び帯域幅トラッカモジュール216は、BSSチャネル200の最大エネルギー状態に対応する各加算されたウィンドウ信号212の中心周波数(“Cf”)及び帯域幅(“BW”)を決定するように、初期周波数214を使用する。信号周波数及び帯域幅トラッカモジュール216は更に、Cf及びBW信号218をBSSチャネル状態マシンモジュール208に出力する。BSSチャネル状態マシンモジュール208は、フィルタ処理サブシステム207、信号周波数及び帯域幅トラッカモジュール216、入力バッファモジュール220、及びコンピューティングデバイス132に連結されている。BSSチャネル状態マシンモジュール208による、信号周波数及び帯域幅トラッカモジュール216からのCf及びBW信号218の受信とほぼ同時に、(以下で更に述べるように)BSSチャネル状態マシン208がフィルタ処理サブシステム207のCf及びBWフィルタパラメータを更新できるように、入力バッファモジュール220は、フィルタ処理サブシステム207によって、ノイズ除去された信号124のフィルタ処理を遅らせる。
【0031】
例示的な実施形態では、フィルタ処理サブシステム207は、例えば、限定するものではないが、ローフィルタ(“Flo”)モジュール207a、メインフィルタ(“F”)モジュール207b、及びハイフィルタ(“Fhi”)モジュール207cを含む、複数のフィルタモジュールを含む可変フィルタバンクである。他の実装では(例えば、図5を参照して以下に示し、説明するように)、フィルタ処理サブシステム207は、4個以上又は2個以下のフィルタモジュールを含む。入力バッファモジュール220は、フィルタ処理サブシステム207と信号ノイズ除去モジュール118に、また、両者の間に連結されており、フィルタ処理サブシステム207の各フィルタモジュール(例えば、207a,207b,及び207c)に、複数のフィルタ入力信号228(例えば、228a,228b,及び228c)を送信するように構成されている。入力バッファモジュール220は更に、BSSチャネル状態マシンモジュール208の第1の出力から送信された遅延信号227を受信するように構成されている。遅延信号227は、フィルタ処理サブシステム207へのフィルタ入力信号228の出力のタイミングを指示する。第2の出力から、BSSチャネル状態マシンモジュール208は、中心周波数及び帯域幅更新信号232をフィルタ処理サブシステム207へ送信する。中心周波数及び帯域幅更新信号232により、フィルタ処理サブシステム207の各フィルタモジュール(例えば、207a,207b,及び207c)のCf及びBW操作パラメータと関連するフィルタ係数α(アルファ)及びβ(ベータ)の連続更新が可能になる。中心周波数及び帯域幅更新信号232はこのようにして、BSSモジュール120a及びBSSチャネル200から出力される連続した歪のないブラインド信号源分離信号129aを得るため、ノイズ除去された信号124の周波数及び帯域幅の正確なトラッキングを促進する。
【0032】
例示的な実施形態では、フィルタ処理サブシステム207は、限定するものではないが、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)及び特定用途向け集積回路(ASIC)のうちの少なくとも1つで例示された回路を含む、デジタル及び/又はアナログ電子回路を使用する。また、例示的な実施形態では、BSSチャネル200に実装された方法の少なくとも一部は、汎用プロセッサ(例えば、コンピューティングデバイス132)及びデジタル信号プロセッサ(DSP)のうちの少なくとも1つのソフトウェアを介して例示される。更に、例示的な実施形態では、フィルタ処理サブシステム207の各フィルタモジュール(例えば、207a,207b,及び207c)の操作パラメータはメモリ134に保存され、BSSチャネル状態マシンモジュール208による中心周波数及び帯域幅更新信号232の送信とほぼ同時に(例えば、リアルタイムで)更新される。フィルタモジュール207a,207b,及び207cは、例示的な実施形態で、(図3に関連して以下で説明される)パイプライン構造と(図4に関連して以下で説明される)並列構造の両方を有する。
【0033】
例示的な実施形態では、フィルタモジュールFlo 207a、フィルタモジュールF 207b、及びフィルタモジュールFhi 207cは、入力バッファモジュール220からそれぞれのフィルタ入力信号(例えば、228a,228b,及び228c)を受信し、各々は更にBSSチャネル状態マシンモジュール208に連結されている。フィルタ処理サブシステム207は更に、複数の信号エネルギー信号234を送信するように構成されており、各々のフィルタモジュールFlo 207a,F 207b,及びFhi 207cは信号エネルギー信号(例えば、それぞれ234a,234b,及び234c)をBSSチャネル状態マシンモジュール208へ送信する。更に、例示的な実施形態では、フィルタモジュールF 207bはまた、更なる処理(例えば、図1を参照して上記で示され説明されたように、コンピューティングデバイス132によるPDWパラメータベクトル信号138のデインターリーブ)のために、BSSモジュール120aからPDW生成モジュール128及びパルスノイズ除去モジュール130まで送信される各ブラインド信号源分離信号129aとして、信号エネルギー信号234bを送信する。複数の信号エネルギー信号234に含まれる情報は、(図3及び図4を参照して、以下で更に示し、説明するように)中心周波数及び帯域幅更新信号232を生成して、フィルタ処理サブシステム207へ送信するため、BSSチャネル状態マシンモジュール208によって使用される。
【0034】
動作中に、BSSチャネル200のフィードバックは、フィルタ処理サブシステム207の各フィルタモジュール(例えば、フィルタモジュールFlo 207a,F 207b,及びFhi 207c)のCf及びBWを、時間全体に対してどこで配置するかを決定するために使用される。フィードバックは、既存のフィルタ設定(例えば、信号エネルギー信号234a,234b,及び234c)に由来するエネルギー測定値を取得すること、及び、可能な限り完全に時間と周波数の範囲を維持しつつ、連続的に且つ適応的に各フィルタパラメータCfとBW、並びにフィルタ係数αとβを更新することを含む。効率性の高い方法で(例えば、図1を参照して上述されているように、BSS制御モジュール196の少なくとも一部の制御下で)マルチタスクを行うため、レーダー信号のその後のパルスは、可能なフィルタ処理サブシステム207に合わせて調整されたそれぞれのフィルタパラメータとフィルタ係数を有するフィルタモジュールFlo 207a,F 207b,及びFhi 207cを備えるフィルタ処理サブシステム207によってフィルタ処理される。
【0035】
また、動作中、信号周波数及び帯域幅トラッカモジュール216は、初期周波数信号214の値を追跡するためのトラッキングアルゴリズムを含む。具体的には、初期周波数信号214のCfは、トラッキングアルゴリズムによって設定された所定の最大レート(例えば、コンピューティングデバイス132、BSSチャネル状態マシンモジュール208、及びBSS制御モジュール196のうちの少なくとも1つによって決定される)までの任意のレートで変化する。トラッキングアルゴリズムの追跡ウィンドウは、チャープレート(chirp rate)をサポートできるよう充分に短いが、信号ノイズレベルを扱えるよう充分に長い。特に、トラッキングアルゴリズムは、BSSチャネル200によってロバストに実装されており、BSSチャネル200は、限定するものではないが、複数のフィルタモジュール(例えば、207a,207b,及び207c)のパラメータ及び/又は係数設定値、ノイズレベル、信号周波数変化特性、振幅差、及び、信号ノイズ除去モジュール118によって要求される帯域幅に信号を引き込む能力、のすべての関数として、コンピューティングデバイス132と連動している。例えば、限定するものではないが、信号ノイズ除去モジュール118が1GHzの帯域幅で20個の状態(例えば、S=20)を有する場合、BSSチャネル200は、初期周波数(例えば、引き込み周波数帯域幅)から最大±25MHz(例えば、0.025GHz)までの周波数オフセットでレーダー信号を追跡する。
【0036】
例示的な実施形態では、フィルタ処理サブシステム207の各フィルタモジュール(例えば、207a,207b,及び207c)は、無限インパルス応答(IIR)フィルタである。また、例示的な実施形態では、BSSチャネル200は通信信号ではなくレーダー信号を処理するため、その結果、IIRフィルタの使用によって引き起こされる非定常群遅延の影響は、通信信号ほど重要ではない。IIRフィルタは、ポストプロセッサ105によるポストフィルタ処理PDWデインターリーブに要求される信号品質を適切に満たす。
【0037】
フィルタモジュールF 207bは、ノイズ除去された信号124に由来するフィルタ入力信号228bを分離するための一次フィルタとして使用される。フィルタ入力信号228a及び228cのフィルタモジュールFlo 207a及びFhi 207cによるそれぞれのフィルタ処理は、周波数及び帯域幅の決定で、フィルタモジュールF 207bを比較的正確に保つため、トラッキングプロセスで使用される。また、例示的な実施形態では、フィルタモジュールFlo 207a及びFhi 207cは、周波数と帯域幅において一定量だけオフセットされ、フィルタモジュールF 207bと同様に、CfとBWの適切且つタイムリーな調整を促進するため、常にモニタされる。
【0038】
フィルタモジュールFlo 207a,F 207b,及びFhi 207cの各々は、2つの値(例えば、CfとBW)によってパラメータ調整される。代替的な実装(図示せず)では、フィルタ処理サブシステム207は、3つのフィルタモジュールではなく2つのフィルタモジュール(例えば、フィルタモジュールF 207b及びFhi 207c)を含み、BSSチャネル200は固定されたBWを有し、単純化されたトラッキングプロセスは周波数のみを追跡する。この単純化された事例では、フィルタモジュールF 207bのCfとBWは、次のようにfとwで表わされる。
中心周波数(Fhi)=f+Δf 方程式1
帯域幅(Fhi)=w 方程式2
【0039】
フィルタ処理サブシステム207が3つのフィルタモジュール(例えば、フィルタモジュールFlo 207a,F 207b,及びFhi 207c)を含む例示的な実施形態では、フィルタモジュールF 207bのCfとBWは方程式1と2に従って定義され、フィルタモジュールFlo 207aとFhi 207cのCfとBW(例えば、fとw)は次のように定義される。
中心周波数(Flo)=f-Δf 方程式3
帯域幅(Flo)=w-Δw 方程式4
中心周波数(Fhi)=f+2Δf 方程式5
帯域幅 (Fhi)=w+2Δw 方程式6
【0040】
また、動作中、フィルタ処理サブシステム207の各フィルタモジュール(例えば、フィルタモジュールFlo 207a,F 207b,及びFhi 207c)によって出力される各信号エネルギー信号234(例えば、234a,234b,及び234c)は、限定するものではないが、コンピューティングデバイス132及びBSS制御モジュール196のうちの少なくとも1つを使用して実行される方法に連動するBSSチャネル状態マシンモジュール208によって決定される出力エネルギーを有する。実数値の信号エネルギー信号234に関しては、出力エネルギーは二乗することによって決定され、複素数値の信号エネルギー信号234に関しては、出力エネルギーは絶対値をとることによって決定される。.実数値又は複素数値のいずれかの信号エネルギー信号234に関して、3つのフィルタモジュール(例えば、Flo 207a,F 207b,及びFhi 207c)を有するフィルタ処理サブシステム207の場合の出力エネルギーの決定は、3つのエネルギー測定値の数列(E(n),Elo(n),Ehi(n)),n=1,2,・・・)になる。ここで、nは上述のようにBSSチャネル200の状態を表わす。単純化された2つのフィルタの場合には、信号エネルギー信号234の出力エネルギーの決定は、2つのエネルギー測定値の数列(E(n),Ehi(n)),n=1,2,・・・)になり、フィルタモジュールF 207b及びFhi 207cのCf(例えば、f)パラメータに対する以下の更新を容易にする。
f←f+α*[(E(n)-Ehi(n))/(E(n)+Ehi(n))]+α 方程式7
【0041】
フィルタ処理サブシステム207が3つのフィルタモジュール(例えば、Flo 207a,F 207b,及びFhi 207c)を含む例示的な実施形態では、f及びwパラメータは次のように更新される。
f←f+α*[(E(n)-Elo(n))/(E(n)+Elo(n))]+α*[(E(n)-Ehi(n))/(E(n)+Ehi(n))]+α 方程式8
w←w+β*[E(n)-Elo(n)]/[E(n)+Elo(n)]+β*[(E(n)-Ehi(n))/(E(n)+Ehi(n))]+β 方程式9
係数ベクトルαとβの初期値は、プレトレーニングプロセス(例えば、コンピューティングデバイス132、BSSチャネル状態マシンモジュール208、及びBSS制御モジュール196のうちの少なくとも1つによって実装される)中に決定されて、メモリ134に保存されるが、ウィンドウサイズ、BW、及び信号対ノイズ比(SNR)の関数になっている。αとβの初期値は、初期のノイズ除去された信号124及びBSSチャネル200で受信した初期状態エネルギー信号126のうちの1つから決定される。
【0042】
図2を再度参照して、例示的な実施形態の動作中に、ノイズ除去された信号124に由来する各フィルタ入力信号(例えば、228a,228b,及び228c)は、信号処理システム100における複数のBSSモジュール120の各BSSモジュール120のフィルタ処理サブシステム207で、各フィルタモジュール(例えば、Flo 207a,F 207b,及びFhi 207c)にほぼ同時に提供される。BSSチャネル200では、例えば、フィルタ処理サブシステム207による出力で得られるブラインド信号源分離信号129aは更に、少なくとも1つのレーダー信号の周波数及び/又は帯域幅の正確なトラッキングと決定を更に促進するため、PDW生成モジュール128によって、PDWパラメータベクトル信号138にベクトル化される。したがって、BSSチャネル200により、信号処理システム100は、プリプロセッサ104を介して、複数の時変レーダー信号ストリーミングの高性能リアルタイムトラッキングを実装することができる。
【0043】
前述のフィルタ処理の方法により、信号処理システム100は、レーダー信号エミッタ106及び107の特定、決定、及び解析に使用される高品質のPDWパラメータベクトル信号138を生成することができる。例えば、レーダー信号エミッタ106に関連付けられたPDWパラメータベクトル信号138が、上述のようにディスプレイ144に表示される。また、例えば、少なくとも2つのPDWパラメータベクトル信号138に含まれる周波数及び/又は帯域幅に関する情報を改善することによって、信号処理システム100は第1のレーダー信号エミッタ106を第2のレーダー信号エミッタ107と識別することができる。これらのレーダー信号エミッタ106及び107は、ディスプレイ144上のそれぞれの配置に(例えば、地図として)プロットされる。
【0044】
図3は、図2に示したフィルタ処理サブシステム207と併用されうる例示的なフィルタモジュール(例えば、フィルタモジュールF 207b)の概略図である。図3に示し、本書で述べているように、フィルタ処理サブシステム207はパイプライン構造を有する。本書で使用されているように、「パイプライン」「パイプラインされた」及び「パイプラインする」という用語は、異なるタスクを同時に実行する異なる機能ユニットを促進することによって、信号処理システム100の速度とスループットを高めることができる、フィルタ処理モジュールと関連操作ユニットの方法と構成について言及している。例示的な実施形態では、フィルタモジュールF 207bは、それぞれの信号エネルギー信号234bをBSSチャネル状態マシンモジュール208に出力するように構成されている、有効な6次のIIRフィルタ301を含む。フィルタモジュール207a及び207cは、例示的な実施形態で同様に実装されている。
【0045】
例示的な実施形態では、6次のIIRフィルタ301は7つのBWフィルタ回路303(例えば、303a,303b・・・303g)を含み、各BWフィルタ回路303は2次のIIRフィルタで具現化され、それぞれβ係数(“β0”,“β1”・・・“β6”と表わされる)を有する。6次のIIRフィルタ301はまた、2つのCfフィルタ回路304(例えば、304a,304b)を含み、各Cfフィルタ回路304は、2次のIIRフィルタで具現化され、それぞれα係数(“α1”及び“α2”と表わされる)を有する。フィルタモジュールF 207bはまた、複数のBWフィルタ回路303と複数のCfフィルタ回路304のパイプライン処理を3倍促進するパイプライン構造302(例えば、コンピューティングデバイス132、BSSチャネル状態マシンモジュール208、及びBSS制御モジュール196のうちの少なくとも1つと連動して実装されている)を含む。したがって、例示的な実施形態では、フィルタモジュールF 207bは、6つのゼロ(例えば、分子中の6つの係数β)と2つの極(例えば、分母中の2つの係数α)を有し、α0 = 1という値を仮定する伝達関数を備える6次のIIRフィルタとして機能する。
【0046】
動作中、BWフィルタ回路303とCfフィルタ回路304の係数αとβはそれぞれ、フィルタ入力信号228bの第1のパルスのフィルタモジュールF 207bによって受信された後、2ハードウェアクロックサイクル以内に更新される。この更新ルーチンは、(図4を参照して以下に示し、説明するように)複数の信号エネルギー信号234に含まれる情報を使用して、Cf及びBWの更新された信号232をフィルタ処理サブシステム207へ送信するBSSチャネル状態マシンモジュール208によって実装される。中心周波数及び帯域幅更新信号232にデータとして含まれる情報は、BWフィルタ回路303とCfフィルタ回路304のフィルタ係数αとβをそれぞれ更新するため、6次のIIRフィルタ301によって使用される。フィルタ入力信号228b(同様に、例えば、フィルタ入力信号228a及び228c)の2番目以降のパルスがフィルタ処理サブシステム207によって受信されると、更新されたフィルタ係数α及びβは、センサ103の監視可能な環境内の少なくとも1つのレーダー信号エミッタ(例えば、第1のレーダー信号エミッタ106)の周波数のトラッキングを促進する。
【0047】
動作中、フィルタ入力信号228bの値(例えば、V(n)input)とBWフィルタ回路303aの係数β0の値との積は、第1の乗算器306によって決定される。ほぼ同時に、係数β1~β6がBWフィルタ回路303b~303gから複数の乗算器308(例えば、6つの乗算器308a,308b・・・308f)へ送信される。複数の乗算器308の各乗算器308はまた、それぞれ1次のz変換遅延(Z-1)310(例えば、310a,310b・・・310f)を入力する。各Z-1遅延310は、複数の乗算器308の各乗算器308へ入力される前に、フィルタ入力信号228bに遅延値を適用する。第1の乗算器306の出力と複数の乗算器308の各乗算器308の出力は、第1の加算器312へ送信される。第1の加算器312は、第1の乗算器306の出力と複数の乗算器308の各乗算器308との出力の和を決定する。
【0048】
第1の乗算器306の出力と複数の乗算器308の各乗算器308の出力との和が決定されるとほぼ同時に、Cfフィルタ回路304a及び304bは、係数α1とα2の値を第2の乗算器314と第3の乗算器316にそれぞれ送信する。第2の乗算器314と第3の乗算器316はそれぞれ、3次のz変換遅延(Z-3)318(例えば、318a,318b)を入力する。各Z-3遅延318は、第2の乗算器314と第3の乗算器316へ入力される前に、信号エネルギー信号234bの遅延値を適用する。第2の乗算器314及び第3の乗算器316に入力されるα係数(α0=1と仮定)の3倍のβ係数が複数の乗算器308の各乗算器308に入力されるため、3次のZ変換遅延318の値は、1次のz変換遅延310の値の3倍になる。これによって、ASICに加えてFPGA上でのフィルタモジュールF 207bの実装が可能になる。第2の乗算器314と第3の乗算器316とによって決定される積は、第2の加算器320へ送信される。第2の加算器320は、第2の乗算器314及び第3の乗算器316の出力と、第1の加算器312の出力との和を決定する。このように、第2の加算器320は、信号エネルギー信号234bを出力として生成する。
【0049】
フィルタモジュールF 207bによって受信されたその後のフィルタ入力信号228bによって、フィルタ係数の更新とフィードバックによるパイプライン処理は、各BWフィルタ回路303と各Cfフィルタ回路304のα及びβ係数、並びに動作パラメータ(限定するものではないが、中心周波数と帯域幅を含む)の連続的な調整を可能にする。V(n)input値のフィルタ入力信号228b(例えば、x[n])のその後のパルスが与えられると、上述のパイプラインフィルタ処理プロセスによって、フィルタモジュールF 207bは、パイプライン構造302によって次のように実装された差分関数に従って、純化された(例えば、追跡された)信号エネルギー信号234bを出力することができる。
ここで、x[n]項は、第1の加算器312によって加算された、複数の乗算器308(例えば、M=6)の各乗算器308の個々のパイプライン処理された出力で、また、y[n]項は、第2の加算器320によって加算された第2の乗算器314と第3の乗算器316(例えば、N=2)のパイプライン処理された出力である。したがって、例示的な実施形態では、フィルタ入力信号228bの少なくとも7個のパルスがフィルタモジュールF 207bによって受信された後、差分方程式からそれぞれ新しい出力を計算するため、合計8個の係数が更新され(例えば、α0=1は一定のまま)、合計1+M+N個の乗算器が必要とされる。
【0050】
フィルタモジュールF 207bを経由するフィルタ入力信号228bの8個以上のパルスの流れに従う信号エネルギー信号234bの値の決定は、次のシステム関数H(z)によって上記の差分関数から更に簡略化されうる。
ここで、H(z)は並列な2次のIIRフィルタの形態(例えば、M=N=2)に引き下げられた多相分解で、和を構成する部分数列x[n]は(すべてのnに対する)親数列(parent sequence)x[n]の多相コンポーネントで、Gは各BWフィルタ回路303及び各Cfフィルタ回路304へCf及びBWの更新信号232を送信する前に、BSSチャネル状態マシンモジュール208によって導かれる値(例えば、n=0且つα0=1における信号エネルギー信号234bの値)である。
【0051】
また、動作中、例示的な実施形態では、2ハードウェアクロックサイクル以内に前述の更新を提供するため、フィルタモジュールF 207bは、フィルタ係数α及びβの最終値の決定を可能にする補間プロセスを実装する。図4を参照して以下に示され、更に説明されるように、Cf及びBWの更新信号232は、周波数値及び帯域幅値をそれぞれ含む周波数ワード及び帯域幅ワードのうちの少なくとも1つを含む。BSSチャネル状態マシンモジュール208からのCf及びBWの更新信号232の送信とほぼ同時に、トラッキングアルゴリズムは、メモリ134に保存された固定係数のテーブルと共に参照及び補間ルーチンを使用し、周波数ワード及び/又は帯域幅ワードの更新値によって問い合わされた固定係数のテーブルから値を補間することによって、フィルタ係数値α及び/又はβを決定する。また、参照及び補間ルーチンとほぼ同時に、フィルタ入力信号228bのその後の事例に対して、フィルタ係数α及びβの参照、補間、及び更新のその後のサイクルを可能にするため、フィルタ係数α及び/又はβの値の組はメモリ134内で更新される。したがって、2ハードウェアクロックサイクル以内に、フィルタモジュールF 207bによって、信号処理システム100は、Cf及びBW更新信号232がBSSチャネル状態マシンモジュール208から送信しうるのと同じ速度で誤動作することなく、急速に変化する到来レーダー信号(例えば、広帯域チャープ)を迅速且つ適切に追跡することができ、幅広く分離された周波数でのレーダー信号間の切り換えをリアルタイムで行うことができる。
【0052】
図4は、図3に示されたフィルタモジュールF 207bと併用されうる例示的なフィルタ回路(例えば、Cfフィルタ回路304a)の詳細図である。例示的な実施形態では、BSSチャネル状態マシンモジュール208は、周波数ワードを含むCf及びBW更新信号232をCfフィルタ回路304aへ送信し、そこで周波数ワードデータは、上位半分のビットセット(F)402と下位半分のビットセット(F)404に分割される。例示的な実施形態では、中間レジスタ406はF 402の36ビットを受信し、乗算器408はF 404を受信する。中間レジスタ406によるF 402の受信とほぼ同時に、減算器410は、中間レジスタ406内のF 402の上位18ビット414から、中間レジスタ406内のF 402の下位18ビット412を差し引く。中間レジスタ406によるF 402の受信とほぼ同時に、F 404と下位18ビット412と上位18ビット414の間の差分418との積416は乗算器408によって決定される。次に、加算器420は、下位18ビット412と積416との和422を決定する。和422は、フィルタ入力信号228bのその後のパルスを受信するパイプライン構造302によって実装される次のサイクルに対して更新されるCfフィルタ回路304a(例えば、図3で“α1”と示される)のフィルタ係数αの値を表わす。Cfフィルタ回路304aはこのようにして、以下のように、固定係数のテーブルからの補間によって、更新されたフィルタ係数値α1を決定する。
フィルタ係数=F*(R-R)+R 方程式12
ここで、FはF 404の値を表わし、Rは中間レジスタ406からのF 402の上位18ビット414の値で、Rは中間レジスタ406からのF 402の下位18ビット412の値である。したがって、和422は、BSSチャネル状態マシンモジュール208からのその後のCf及びBWの更新信号232の送信とほぼ同時に、6次のIIRフィルタ301から第2の乗算器314へ送信されるα1の更新値を含む。
【0053】
例えば、BWフィルタ回路303aの場合には、送信され帯域幅ワードを含むCf及びBWの更新信号232は、対応する上位半分のビットセットと下位半分のビットセットとに分割され、更新されたフィルタ係数βの値(例えば、図3では“βj0”と表わされる)は、α1に関して上記に示し説明したのとほぼ同じ方法で決定される。しかしながら、BWフィルタ回路303aの場合には、和422は、6次のIIRフィルタ301から第2の乗算器314、第1の乗算器306へ送信されたβ0の更新値を含む。
【0054】
図5は、図2に示したフィルタ処理サブシステム207と併用されうる例示的なフィルタモジュール(例えば、フィルタモジュールF 207a)の概略図である。図5に示し、本書で説明しているように、フィルタ処理サブシステム207は並列化されたフィルタ構造500を有する。例示的な実施形態では、並列フィルタ構造500は4つのフィルタコンポーネント501(例えば、501a,501b,501c,及び501d)を含む。各フィルタコンポーネント501は、入力バッファモジュール220(図2に示す)から第1のフィルタ入力信号228aを受信する。228aの個々の例は、入力バッファモジュール220によって互いに対して遅延されうる。並列フィルタ構造500は、例えば、限定するものではないが、BesselタイプフィルタによるアダプティブBSSフィルタ処理、並びに、複数のフィルタ入力信号228aの各フィルタ入力信号228aのための多相方法を可能にするFPGA及びASICのうちの1つに実装可能である。例示的な実施形態では、並列フィルタ構造500は、複数のフィルタコンポーネント501のそれぞれの中で、4つ一組のサブモジュール(例えば、サブモジュール502a,502b,502c,及び502d)上で、線形補間(例えば、図3及び図4を参照して上記に示され説明されているように)を実装する。補間はCfパラメータに基づいている。BWはまた、2次元補間に対して調整され、フィルタサブモジュール(例えば、502a,502b,502c,及び502d)は、4つのフィルタ入力信号228aパルスの解析で使用する連続周波数レンジをカバーする。
【0055】
並列フィルタ構造500では、入力バッファモジュール220(図2に示す)は、ノイズ除去された信号124(図1及び図2に示す)の連続受信パルスから、4つの各フィルタ入力信号228aのベクトルを生成する。次に、4つのフィルタ入力信号228aはそれぞれ、フィルタコンポーネント501a,501b,501c,及び501dによって受信される。各フィルタコンポーネント501は、4つの各中間信号エネルギー信号セット503(例えば、503a,503b,503c,及び503d)として、複数の中間信号エネルギー信号503を出力する。例えば、限定するものではないが、各中間信号エネルギー信号セット503は、4つの各中間信号からなる。図5では、4つのフィルタコンポーネント501中の合計16個のサブモジュール502a~502dは、1/4のサンプルレートで動作する4つの並列チャネルを有するフィルタモジュール207aとして、同一の結果を生み出す。フィルタモジュール207b及び207cは、例示的な実施形態で同様に実装される。
【0056】
また、例示的な実施形態では、4つの中間信号エネルギー信号セット503は、4つの並列信号504(例えば、504a,504b,504c,及び504d)に並列化される。例えば、4つのブラインド信号源分離モジュール501の各フィルタモジュール502aから出力される中間信号エネルギー信号503は、第1の並列信号504aに結合される。同様に、4つのブラインド信号源分離モジュール501の各フィルタモジュール502bから出力される中間信号エネルギー信号503は、第1の並列信号504bなどに結合される。第1のブラインド信号源分離モジュール501aの4つのフィルタモジュール502a~502dから出力される信号エネルギー信号234のいずれも、関連する1次z変換遅延モジュール506を含まず、第2の中間信号エネルギー信号セット503bの少なくとも1つの各中間信号エネルギー信号503、第3の中間信号エネルギー信号セット503c、及び第4の中間信号エネルギー信号セット503dは、関連する少なくとも1つの1次z変換遅延モジュール506を含む。
【0057】
更に、例示的な実施形態では、4つの並列信号504の各並列信号504は、4つの加算ツリーモジュール508(例えば、508a,508b,508c,及び508d)の各加算ツリーモジュール508へ送信される。4つの加算ツリーモジュール508の各加算ツリーモジュール508は、各並列信号504の各中間信号エネルギー信号503の値を加算する。4つの加算ツリーモジュール508の各加算ツリーモジュール508は更に、各並列加算信号509(例えば、509a,509b,509c,及び509d)を、4つの出力レジスタ(例えば、510a,510b,510c,及び510d)の各出力レジスタ510へ送信するように構成されている。各出力レジスタ510は、各並列信号エネルギー信号529(例えば、529a,529b,529c,及び529d)をBSSチャネル状態マシンモジュール208へ送信する(例えば、フィルタモジュール207aの並列信号エネルギー信号529は、図2を参照して上記で示され説明されているように信号エネルギー信号234aに対応する)。
【0058】
4つのBSSモジュール501によって、各フィルタ入力信号228aのその後のパルスが受信されると、フィルタ係数α及び/又はβの各値は、図2図4を参照して上記で示され説明されているシステム及びプロセスを使用して、ほぼ同じ方法で更新される。したがって、並列フィルタ構造500は、4つの別個のブラインド信号源分離モジュール120a(図1及び図2に示す)の直列連結に対して、4つの並列化因子を実装する。しかも、任意の並列化次数Pでの並列フィルタ構造500に多相分解の方法を実装することにより(図3を参照して上述されているように)、P連続フィルタ出力を表わすクロック周期ごとに、P値の1つのベクトルを生成するパイプライン処理された加算ツリーモジュール508に結合されたPフィルタのアレイに、1つの2次IIR可変フィルタを複製することができる。これにより更に、フィルタをクロックレートのP倍で動作させることが可能になる。例えば、25ビットのデータと18ビットの係数を有するフィルタの数値性能は基本的に、倍精度のフィルタと識別できないほどで、既知の並列化や直列フィルタアプローチを超える改善をもたらす。
【0059】
動作中、例示的な実施形態では、4つのBSSモジュール501の各々で、複数のフィルタモジュール(例えば、502a,502b,502c,及び502d)の無限精度の多相形態により、帯域幅にわたって選択されたすべての最悪の補間点に対する検索は、変動する周波数テーブルサイズ(例えば、Nt)、及び、信号処理システム100の並列フィルタ構造500の実施形態での可変フィルタ処理の性能でのP値の影響を示している。例示的な実施形態の動作を図解するため、図6は、P=4、M=4に対してNt=100で図5に示された、並列フィルタ構造500での既知の正規化された周波数(GHz)に対する周波数トラッキング誤差(Hz)の例示的なプロット600となっている。例示的な実施形態では、第1の曲線602及び第2の曲線604は、信号処理システム100の並列フィルタ構造500の実装で、例えば、BSSモジュール501aによって実装された100点補間に対する、正規化誤差性能及び最大誤差性能をそれぞれ表わしている。図7は、P=4、M=4に対してNt=1000で図5に示された並列フィルタ構造500の既知の正規化周波数(GHz)に対する周波数トラッキング誤差(Hz)の例示的なプロット700である。例示的な実施形態では、第3の曲線702及び第4の曲線704は、信号処理システム100の並列フィルタ構造500の実装で、例えば、BSSモジュール501aによって実装された1000点補間に対する、正規化誤差性能及び最大誤差性能をそれぞれ表わしている。図8は、P=4、M=4に対してNt=10000で図5に示された並列フィルタ構造500の既知の正規化周波数(GHz)に対する周波数トラッキング誤差(Hz)の例示的なプロット800である。例示的な実施形態では、第5の曲線802及び第6の曲線804は、信号処理システム100の並列フィルタ構造500の実装で、例えば、BSSモジュール501aによって実装された10000点補間に対する、正規化誤差性能及び最大誤差性能をそれぞれ表わしている。図9は、P=8に対してNt=1000で図5に示された並列フィルタ構造500の既知の正規化周波数(GHz)に対する周波数トラッキング誤差(Hz)の例示的なプロット900である。例示的な実施形態では、第7の曲線902及び第8の曲線904は、信号処理システム100の並列フィルタ構造500の実装で、例えば、BSSモジュール501aによって実装された1000点補間に対する、正規化誤差性能及び最大誤差性能をそれぞれ表わしている。
【0060】
プロット600の第1の曲線602と第2の曲線604の両方によって、最悪のケースで再構成された並列信号誤差は、100点補間でのチャネル間移行時に発生するが、このように見込まれているのは、BSSモジュール501aのフィルタモジュール(例えば、502a,502b,502c,及び502d)が正確な周波数及び帯域幅のトラッキングを可能にするためである。図8に示したP=4でNt=10000のケースは、図6及び図7にそれぞれ示されているプロット600及び700を実行する場合よりも、10000点補間での全体的な誤差は小さいことを示している。P=4でPを一定に保つと、信号処理システム100の並列フィルタ構造500の実装では、Ntの値が増大するにつれて誤差は減少する。しかしながら、図9に示したように、P=8で1000点補間のケースでは、図7に示したP=4でNt=1000のケースと比較して、全体的な誤差性能はほぼ2桁悪化する。したがって、信号処理システム100の並列フィルタ構造500の実装では、より大きなPに対しては動作はコスト高になる傾向があり、より集約的で効率の低いメモリと計算リソースの利用が必要になる。このようなリソースの利用は、信号処理システム100の並列フィルタ構造500の実装では、BSSチャネル200の数によって増加し、Pが増大するにつれて更に増大する。
【0061】
この結果に基づいて、例示的な実施形態では、周波数テーブルは、P=1,2,3,4のような小さな並列化因子については、512×36ビットモードの単一の18k×1 BRAMで使用される512エントリを採用する。より大きなP値では、前述の例示的な実施形態で比較的小さなBRAMの代わりに、より大きなメモリ及びより大きな計算力のうちの少なくとも1つを有する異なるアプローチを必要とする。P≧4で信号処理システム100に並列フィルタ構造500を実装するアプローチは、例えば、チャネル移行時に前述の問題に対処するため、BSSモジュール501aによって実行される非一様補間技術を含む。この第1のアプローチは、1つではなく3つのハードウェアクロックサイクルを必要とし、また、かなり大きな周波数テーブルサイズ(例えば、Nt値)を必要とする。この第1のアプローチで10000点の補間が採用される場合には、点の数には必要とされるフィルタ係数α及び/又はβの数が乗じられるが、BSSチャネル200を経由するフィルタ数がかなり小さい場合には、実際には第1のアプローチは実行不可能になる。P≧4で信号処理システム100に並列フィルタ構造500を実装する第2のアプローチは、例えば、コンピューティングデバイス132を使用してフィルタ係数α及び/又はβを決定することを含む。この第2のアプローチは、複数のハードウェアクロックサイクルを必要とするが、(図6図9を参照して上記に示し説明したように)非一様な誤差を含まないという利点を有し、信号処理システム100で必要となる回路が要求されるメモリ134に比べて小さいため、実際に実行可能である。
【0062】
P≧4で、或いは任意のP値で、信号処理システム100に並列フィルタ構造500を実装する前述の2つのアプローチのいずれかによって、IIRフィルタは利用可能になる。また、動作中、IIRタイプのフィルタは、P≦4で信号処理システム100に並列フィルタ構造500を実装する第1のアプローチで使用される。更に、IIRタイプのフィルタは、P>4に対する第2の実装アプローチの並列フィルタ構造500の4つのBSSモジュール501すべてで、全フィルタモジュール(例えば、502a,502b,502c,及び502d)に対して使用される。このようにIIRフィルタが使用されるとき、この方法のコンピューティングデバイス132で部分分解が使用される場合であっても、単純な2次のBesselタイプのIIRフィルタが適合のため採用されるという事実は、周波数と帯域幅との間に、また、更新とトラッキングに対して最終的に結合された解析の係数α及び/又はβの中に論理的な関係があることを意味する。
【0063】
図10は、中心周波数が875.0メガヘルツ(MHz)である倍精度フィルタ及びパイプライン処理された並列固定点フィルタについて、周波数に対して出力スペクトル密度(PSD)を描いた図1に示した信号処理システム100の動作のグラフィック表現(例えば、グラフ1000)である。例示的な実施形態では、グラフ1000は、倍精度フィルタ(プロット1002)並びに、25ビットデータと18ビットフィルタ係数α及びβを有する信号処理システム100のFPGA実装(プロット1004)を使用して、追跡した周波数(Mhz、x軸)に対するPSD振幅(dBm/MHz、y軸)の結果をプロットする。プロット1004に示した、パイプライン処理及び並列処理(上記で示し説明したように)による信号処理システム100の周波数トラッキング性能は、プロット1002に示した倍精度フィルタの周波数トラッキング性能に厳密に一致する。225MHzから1000MHzまでの周波数では、プロット1002とプロット1004との間のPSD振幅の変動は5dBm/MHzを超えない。30MHzから225MHzまでの周波数で、22dBm/MHzの最大PSD振幅変動は210MHzで発生し、0MHzから30MHzまでの周波数では、PSD振幅は、6MHzの周波数で最大55dBm/MHzまで変動する。
【0064】
図11は、図5に示した並列フィルタ構造500のグラフィカル表示(例えば、グラフ1100)で、補間点の数に対して多相システム関数H(z)が決定したフィルタ中心周波数の誤差(Hz)を、28個の異なるフィルタ係数について表示している。プロット1102は28本の曲線の組を含み、各曲線は、補間点の数が0から512に増えるにつれて、H(z)が決定したフィルタ中心周波数の誤差(例えば、既知の中心周波数値に対する)における減少傾向を示している。プロット1102の曲線の第1のサブセット1104は、図5に示した4つのBSSモジュール501の各BSSモジュール501のそれぞれの第1の乗算器306(例えば、図3のBWフィルタ回路303aでは“β0”と表示されている)に関連するそれぞれのフィルタ係数βを表わす4本の曲線を含む。プロット1102の曲線の第2のサブセット1106は、図5に示した4つのBSSモジュール501の各BSSモジュール501の複数の乗算器308(例えば、図3のBWフィルタ回路303b・・・303gで“β1”・・・“β6”と表示されている)の各乗算器308に関連するそれぞれのフィルタ係数βを表わす24本の曲線を含む。
【0065】
グラフ1100の最初の幾つかの補間点の範囲内では、プロット1102の28本の曲線の各曲線に対して決定されフィルタ処理された周波数での最大誤差はおよそ1.8×10Hzである。プロット1102の全曲線に対する誤差の値は、最初の幾つかの補間点から補間点250まで、ほぼ指数関数的減衰のように急速に低下し、補間点250では誤差の値は0.1Hzから1.4×10Hzの間の範囲内にある。補間点250から512までの間、確定した中心周波数の誤差の値は小さな補間点の場合よりも徐々に低下し、補間点512では誤差の値は1.2×10-1Hzから1.8×10Hzの間の範囲内にある。グラフ1100は、4つのBSSモジュール501のうちの各BSSモジュール501で、特定のBWフィルタ回路303に対して、あるフィルタ係数βでの影響の幅広いバリエーションを示している。更に、グラフ1100に描かれているような動作結果によって、信号処理システム100のユーザーは、4つのBSSモジュール501のうちの各BSSモジュール501で、特定のフィルタモジュール(例えば、502a,502b,502c,及び/又は502d)に対して所望の精度を得るため、プリプロセッサ104及びポストプロセッサ105のうちの少なくとも1つのメモリに保存しなければならない点の数を決定することができる。
【0066】
図12は、図1に示した信号処理システム100と併用されうる複数の時変信号(例えば、第1のレーダー信号114及び第2のレーダー信号116のうちの少なくとも1つ)を処理する例示的方法1200のフロー図である。複数の時変信号は、信号データプロセッサ101に通信可能に連結されたセンサ103で受信され、方法1200は、複数の時変信号のうちの少なくとも1つの時変信号の少なくとも1つのパラメータを特定するために使用される。例示的な実施形態では、方法1200は、信号データプロセッサ101の複数のBSSモジュール(例えば、BSSモジュール120)で、複数の時変信号に由来する信号(例えば、少なくとも1つのノイズ除去した信号124及び少なくとも1つの状態エネルギー信号126)を受信すること1202を含む。
【0067】
方法1200はまた、複数のBSSモジュール120を使用して、複数のブラインド信号源分離信号129(例えば、129a,129b・・・129K)を生成すること1204を含む。方法1200は更に、複数のブラインド信号源分離信号129に基づいて、少なくとも1つのPDWパラメータベクトル信号138を信号データプロセッサ101のコンピューティングデバイス132へ送信すること1206を含む。方法1200はまた、コンピューティングデバイス132を使用して、少なくとも1つのPDWパラメータベクトル信号138から少なくとも1つのパラメータを特定すること1208を含む。方法1200は更に、信号データプロセッサ101から少なくとも1つのパラメータを出力すること1210を含む。
【0068】
可変ブラインド信号源分離フィルタを並列処理及びパイプライン処理するための上述のシステム及び方法はまた、1クロックサイクル程度の短いハードウェア遅延時間で、更新されたフィルタ係数の決定を可能にする。上述の実装また、既知のシステム及び方法と比べて、著しく小さな参照テーブルからの線形補間によって、連続フィルタ調整と正確な信号パラメータトラッキングを促進する。上述の実装は更に、既知のシステム及び方法よりも少ないメモリ及び計算リソースを使用して、周波数を含むパルス化信号パラメータの連続生成、分類、及びトラッキングを可能にする。可変ブラインド信号源分離フィルタを並列処理及びパイプライン処理するための上述のシステム及び方法はまた、FPGAベースの設計及びASICベースの設計の両方に対して、ほぼ同様の回路及びハードウェアの実装によって、IIRフィルタの並列処理とパイプライン処理の組み合わせを提供する。
【0069】
可変ブラインド信号源分離フィルタを並列処理及びパイプライン処理するための、前述のシステム及び方法の例示的な技術的効果は、(a)1クロックサイクル程度の短いハードウェア遅延時間で、更新されたフィルタ係数の決定を可能にすること、(b)既知のシステム及び方法と比べて、著しく小さな参照テーブルからの線形補間によって、連続フィルタ調整と正確な信号パラメータトラッキングを促進すること、(c)既知のシステム及び方法よりも少ないメモリ及び計算リソースを使用して、周波数を含むパルス化信号パラメータの連続生成、分類、及びトラッキングを可能にすること、(d)FPGAベースの設計及びASICベースの設計の両方に対して、ほぼ同様の回路及びハードウェアの実装によって、IIRフィルタの並列処理及びパイプライン処理の組み合わせを提供すること、のうちの少なくとも1つを含む。
【0070】
本開示の種々の実装の特定の機能が一部の図面には示されて他の図面には示されないことがあるが、このような図解は便宜的に行われているにすぎない。本開示の原理によれば、図面のいかなる特徴も、任意の他の図面の任意の特徴と組み合わせて参照される及び/又は特許請求されうる。
【0071】
幾つかの実装は、一又は複数の電子デバイス又はコンピューティングデバイスの使用を含む。このようなデバイスは典型的に、汎用中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、マイクロコントローラ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)プロセッサ、ASIC、プログラマブル論理回路(PLC)、FPGA、デジタル信号処理(DSP)デバイス、及び/又は、本書に記載の機能を実行可能な任意の他の回路又は処理デバイスなどの、プロセッサ、処理デバイス、又はコントローラを含む。本書に記載の方法は、限定するものではないが、記憶デバイス及び/又はメモリデバイス含むコンピュータ可読媒体で具現化される実行可能な命令として符号化されうる。このような命令は、処理デバイスで実行された場合、本書に記載された方法の少なくとも一部を処理デバイスに行わせることができる。上記の実施例は例示的なものにすぎず、したがって、プロセッサ及び処理デバイスという用語の定義及び/又は意味を、いかなる方法においても、限定することを意図していない。
【0072】
更に、本開示は、下記の条項による実施形態を含む。
【0073】
条項1. 複数の時変信号のうちの少なくとも1つの時変信号の少なくとも1つのパラメータを特定するため、信号データプロセッサに通信可能に連結されたセンサで受信された前記複数の時変信号を処理する方法であって、
前記信号データプロセッサの複数のブラインド信号源分離(“BSS”)モジュールにおいて、前記複数の時変信号に由来する信号を受信することであって、前記複数のBSSモジュールの各BSSモジュールはフィルタ処理サブシステムを含み、各BSSモジュール内のフィルタ処理サブシステムはパイプライン構造と並列構造を有する、受信することと、
前記複数のBSSモジュールを使用して、複数のブラインド信号源分離信号を生成することと、
前記複数のブラインド信号源分離信号に基づいて、少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号を前記信号データプロセッサのコンピューティングデバイスへ送信することと、
前記コンピューティングデバイスを使用して、前記少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号から少なくとも1つのパラメータを特定することと、
前記信号データプロセッサから前記少なくとも1つのパラメータを出力することと
を含む、方法。
【0074】
条項2. 信号を受信することは、少なくとも1つの信号ノイズ除去モジュールからノイズ除去された信号と状態エネルギー信号を受信することを含む、条項1に記載の方法。
【0075】
条項3. 複数のブラインド信号源分離信号を生成することは、複数の加算ツリーモジュールを使用して、前記複数のブラインド信号源分離信号を生成することを含む、条項1に記載の方法。
【0076】
条項4. フィルタ処理サブシステムは複数のフィルタ処理モジュールを含む、条項1に記載の方法。
【0077】
条項5. 数のブラインド信号源分離信号を生成することは、第1のフィルタ係数(α)と第2のフィルタ係数(β)に従って各フィルタ処理サブシステムを操作することによって複数のブラインド信号源分離信号を生成することを含む、条項1に記載の方法。
【0078】
条項6. 記少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号に基づいて、第1及び第2のフィルタ係数(α、β)を連続的に更新することを更に含む、条項5に記載の方法。
【0079】
条項7. 記信号データプロセッサから前記少なくとも1つのパラメータを出力することは、少なくとも1つのパラメータに基づいてビークルの動きを指示することを含む、条項1に記載の方法。
【0080】
条項8. 記信号データプロセッサから前記少なくとも1つのパラメータを出力することは、前記少なくとも1つのパラメータをディスプレイに表示することを含む、条項1に記載の方法。
【0081】
条項9. 複数の時変信号のうちの少なくとも1つの時変信号の少なくとも1つのパラメータを特定するため、前記複数の時変信号を処理するシステムであって、前記システムは、
前記複数の時変信号を受信するように構成されたセンサと、
前記センサに通信可能に連結され、複数のブラインド信号源分離(“BSS”)モジュールを備える信号データプロセッサであって、前記複数のBSSモジュールの各BSSモジュールはフィルタ処理サブシステムを含む、信号データプロセッサとを備え、各BSSモジュール内の前記フィルタ処理サブシステムはパイプライン構造と並列構造を有し、前記信号データプロセッサは、
前記複数のBSSモジュールにおいて、前記複数の時変信号に由来する信号を受信し、
前記複数のBSSモジュールを使用して、複数のブラインド信号源分離信号を生成し、
前記複数のブラインド信号源分離信号に基づいて、少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号を前記信号データプロセッサのコンピューティングデバイスへ送信し、
前記コンピューティングデバイスを使用して、前記少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号から前記少なくとも1つのパラメータを特定し、
前記信号データプロセッサから前記少なくとも1つのパラメータを出力する
ように構成される、システム。
【0082】
条項10. 記信号データプロセッサは更に、前記複数のBSSモジュールに前記信号を提供するように構成された少なくとも1つの信号ノイズ除去モジュールを備える、条項9に記載のシステム。
【0083】
条項11. 記信号データプロセッサは更に、複数の加算ツリーモジュールを備える、条項9に記載のシステム。
【0084】
条項12. フィルタ処理サブシステムは複数のフィルタ処理モジュールを含む、条項9に記載のシステム。
【0085】
条項14. 各フィルタ処理サブシステムは第1のフィルタ係数(α)と第2のフィルタ係数(β)に従って動作するように構成される、条項9に記載のシステム。
【0086】
条項15. 前記信号データプロセッサは更に、前記少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号に基づいて、前記第1及び第2のフィルタ係数(α、β)を連続的に更新するように構成される、条項14に記載のシステム。
【0087】
条項16. 前記少なくとも1つのパラメータを出力するため、前記信号データプロセッサは、前記少なくとも1つのパラメータに基づいて、ビークルの動きを指示するように構成される、条項9に記載のシステム。
【0088】
条項17. 前記少なくとも1つのパラメータを出力するため、前記信号データプロセッサは、前記少なくとも1つのパラメータをディスプレイ上に表示するように構成される、条項9に記載のシステム。
【0089】
条項18. 複数の時変信号のうちの少なくとも1つの時変信号の少なくとも1つのパラメータを特定するため、前記複数の時変信号を処理する信号データプロセッサであって、前記信号データプロセッサは、
複数のブラインド信号源分離(“BSS”)モジュールを備え、前記複数のBSSモジュールの各BSSモジュールはフィルタ処理サブシステムを備え、各BSSモジュール内の前記フィルタ処理サブシステムはパイプライン構造と並列構造を有し、前記信号データプロセッサは、
前記複数のBSSモジュールにおいて、前記複数の時変信号に由来する信号を受信し、
前記複数のBSSモジュールを使用して、複数のブラインド信号源分離信号を生成し、
前記複数のブラインド信号源分離信号に基づいて、少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号を前記信号データプロセッサのコンピューティングデバイスへ送信し、
前記コンピューティングデバイスを使用して、前記少なくとも1つのパルス記述子ワードパラメータベクトル信号から前記少なくとも1つのパラメータを特定し、
前記信号データプロセッサから前記少なくとも1つのパラメータを出力する
ように構成される、信号データプロセッサ。
【0090】
条項19. 前記信号データプロセッサは更に、前記複数のBSSモジュールに前記信号を提供するように構成された少なくとも1つの信号ノイズ除去モジュールを備える、条項18に記載の信号データプロセッサ。
【0091】
条項20. 前記信号データプロセッサは更に、複数の加算ツリーモジュールを備える、条項18に記載の信号データプロセッサ。
【0092】
ここに記載した説明では、ベストモードを含む本実装態様を開示し、且つ当業者が任意の機器やシステムの作成及び使用、並びに組込まれた任意の方法の実行を含め、本実装態様を実施することを可能にするために実施例を使用している。本開示の特許性の範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に想起される他の例も含みうる。このような他の例は、それらが特許請求の範囲の文言と異ならない構成要素を有する場合、あるいは、それらが特許請求の範囲の文言とわずかに異なる均等な構成要素を含む場合は、特許請求の範囲の範囲内にあることを意図する。
図1
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