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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-29
(45)【発行日】2022-04-06
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/10 20060101AFI20220330BHJP
   A01B 71/02 20060101ALI20220330BHJP
【FI】
A01B63/10 F
A01B71/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018161253
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2020031589
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 敏之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 拓実
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-337102(JP,A)
【文献】特開2010-022239(JP,A)
【文献】特開2003-184603(JP,A)
【文献】特開平11-346513(JP,A)
【文献】特開平02-299991(JP,A)
【文献】特開2015-039334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/10
A01B 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両であって、
外部ポートを介して作業油を供給可能な油圧回路と、
前記作業車両に接続された作業機と通信可能に構成された車両コントローラと、を備え、
前記車両コントローラは、接続されている作業機が油圧シリンダにより開閉可能な開閉機構を有し且つ前記外部ポートを介して前記油圧シリンダに作業油が供給される制御対象の作業機であるか否かを前記作業機との通信結果に基づいて判定し、
接続されている作業機が制御対象の作業機であると判定した場合に、前記作業油の供給量が前記開閉機構の開閉動作に必要な量に対して不足しているか否かを判定し、
前記作業油の供給量が不足していると判定し、前記作業車両が停止状態で開閉操作がなされたと判定した場合に、前記作業油の供給量を増大させる、作業車両。
【請求項2】
前記油圧回路は、油圧ポンプを駆動するエンジンの回転数によって前記作業油の供給量が定まり、
前記車両コントローラは、前記エンジンの回転数を増大させることで前記作業油の供給量を増大させる、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記車両コントローラは、前記開閉機構の開閉動作が終了したか否かを判定し、開閉動作が終了したと判定した場合には、前記エンジンの回転数を減少させる、請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記開閉操作がなされた後に、接続された作業機の種類に応じた時間を経過した場合に、開閉動作が終了したと判定するように構成されている、請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記作業車両は、前記作業機を昇降させる昇降駆動部を有し、
前記車両コントローラは、前記作業車両が停止状態であり且つ前記作業車両に対する前記作業機の昇降高さが第1所定高さ以下の場合に、前記開閉機構を開く操作を許容し、
前記作業車両が停止状態であり且つ前記作業車両に対する前記作業機の昇降高さが第2所定高さ以上の場合に、前記開閉機構の閉じる操作を許容するように、構成されている、請求項1~4のいずれかに記載の作業車両。
【請求項6】
前記作業機へ供給する動力を生成するエンジンと、
作業時の前記エンジンの回転数と前記作業機の種類とを関連付けた作業様態を予め記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている複数の作業様態から、接続された作業機に対応する作業様態を表示し、ユーザに選択させる表示入力装置と、を備え、
前記油圧回路は、油圧ポンプを駆動するエンジンの回転数によって前記作業油の供給量が定まり、
前記車両コントローラは、前記作業油の供給量が不足していると判定し、開閉操作がなされたと判定した場合に、前記エンジンの回転数を増大させ、その後、作業様態が選択されている場合には、選択された作業様態に対応するエンジン回転数に設定するように、構成されている、請求項1~5のいずれかに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機に接続可能に構成されている作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、折り畳み式の代掻きハローを開閉する構成が開示されている。特許文献2には、作業機の制御様態を記憶し、オペレータの操作により制御様態の切り換えが可能な作業車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3426536号公報
【文献】特開2016-768650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
代掻きハロー等の開閉機構を有する作業機は、開いた状態の開閉機構は車幅を超えるほど広がるので、走行時又は運搬時には開閉機構を閉じ、圃場で作業する際に開閉機構を開いて作業を行う。特許文献1には開示されていないが、油圧シリンダの伸縮により開閉機構を開閉するように構成された作業機が知られている。作業車両の油圧回路の作業油を、外部ポートを介して作業機の油圧シリンダに接続可能に構成されている。
【0005】
しかしながら、代掻き作業を開始する前の開閉機構を開く際には、アイドリング状態が多く、エンジン回転数が低く、外部ポートから作業機の油圧シリンダへ供給される作業油の流量が少なく、それゆえ開閉機構の開閉動作に時間がかかってしまう。
【0006】
本開示は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、油圧回路の外部ポートを介して作業機の油圧シリンダに作業油を供給する構成において、油圧シリンダにより開閉する開閉機構の動作を自動で適正化した作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の作業車両は、
外部ポートを介して作業油を供給可能な油圧回路と、
前記作業車両に接続された作業機と通信可能に構成された車両コントローラと、を備え、
前記車両コントローラは、接続されている作業機が油圧シリンダにより開閉可能な開閉機構を有し且つ前記外部ポートを介して前記油圧シリンダに作業油が供給される制御対象の作業機であるか否かを前記作業機との通信結果に基づいて判定し、
接続されている作業機が制御対象の作業機であると判定した場合に、前記作業油の供給量が前記開閉機構の開閉動作に必要な量に対して不足しているか否かを判定し、
前記作業油の供給量が不足していると判定し、開閉操作がなされたと判定した場合に、前記作業油の供給量を増大させる。
【0008】
この構成によれば、油圧シリンダにより開閉可能な開閉機構を有する作業機が接続されており、油圧シリンダに供給される作業脂の供給量が不足していると判定されれば、作業油の供給量が増大されるので、油圧シリンダの駆動量、すなわち開閉機構の開閉動作を早くすることが可能となる。したがって、油圧シリンダにより開閉する開閉機構の動作を自動で適正化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の作業車両及び作業機を示す側面図
図2】第1実施形態の作業車両及び作業機の構成を示すブロック図
図3】第1実施形態の油圧回路を示す図
図4】第1実施形態の作業車両で実行される開閉動作許可判定処理を示すフローチャート
図5】第1実施形態の作業車両で実行される流量制御処理を示すフローチャート
図6】第2実施形態の油圧回路を示す図
図7】第3実施形態の作業車両及び作業機の構成を示すブロック図
図8】第3実施形態の表示入力装置の画面を示す図
図9】第3実施形態の作業車両で実行される流量制御処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
本開示の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、作業車両1は、走行する車体2を備える。車体2には、作業機3が接続可能である。作業車両1は、作業する際に、前方へ向けて走行する。作業機3として、ロータリー耕耘機や、代掻きハロー、播種機が取り付け可能であるが、これに限定されない。本実施形態では、代掻きハローが接続されているとして説明する。代掻きハロー等の作業機3は、耕耘爪などの作業機構を展開状態又は収納状態にするための開閉機構(図示せず)と、開閉機構を開閉するための油圧シリンダ33(図2、3参照)と、を有する。作業車両1に接続される作業機3がロータリー耕耘機の場合には、代掻きハローのような開閉機構を有さない機種がある。
【0012】
図1において、第1方向D1は、前後方向D1である。第2方向D2は、左右方向D2である。第3方向D3は、上下方向D3である。第1方向D1のうち、矢印方向は、前方向であって、その反対方向は、後方向である。第2方向D2のうち、矢印方向は、左方向であって、その反対方向は、右方向である。第3方向D3のうち、矢印方向は、上方向であって、その反対方向は、下方向である。
【0013】
車体2は、ボディ2aと、ボディ2aの内部に搭載されるエンジン2bと、操向輪である一対の前輪2cと、一対の後輪2dと、座席2eと、一対の前輪2cと連係される操舵部2f(例えば、ハンドル)と、駆動輪(前輪2c及び後輪2d)と連結される操速部2g(例えば、アクセルペダル)と、走行駆動部2hと、を有する。走行駆動部2hは、ギヤ、クラッチ、リンク等の伝達機構で構成され、前輪2c及び後輪2dを回転させたり、前輪2cに舵角を与えたりする。
【0014】
車体2は、作業機3と接続される接続部2iと、作業機3を昇降させる昇降駆動部2jと、作業機3をローリングさせるローリング駆動部2kと、を有する。接続部2iは、上方に配置される上部リンク2mと、左右に配置される一対の下部リンク2nと、を有する三点支持機構である。昇降駆動部2jは、往復動する油圧シリンダを有する。ローリング駆動部2kは、往復動する油圧シリンダを有する。
【0015】
昇降駆動部2jのシリンダが往復動することによって、作業機3は、車体2に対して昇降する。図2に示す上昇スイッチ61が押下されることにより、車両コントローラ7は昇降駆動部2jを制御し、作業機3を最大高さ位置まで上昇させる。また、図2に示す下降スイッチ62が押下されることにより、車両コントローラ7は昇降駆動部2jを制御し、作業機3を最低高さ位置まで下降させる。
【0016】
また、ローリング駆動部2kのシリンダが往復動することによって、作業機3は、車体2に対してローリングする。なお、ローリングするとは、前後方向D1回りに揺動(回動)することをいう。
【0017】
図1に示すように、エンジン2bから図示しないミッションを介してPTO軸18(動力伝達軸)を通じて作業機3に動力が伝達され、この動力は、作業機3の耕耘爪などの作業機構を駆動するために利用される。すなわち、エンジン2bは、作業機3へ供給する動力を生成する。
【0018】
図3に示すように、作業車両1は、油圧回路40を有する。油圧回路40は、エンジン2bにより駆動される油圧ポンプ41a,41b,41cと、外部ポート42と、を有する。油圧回路40は、外部ポート42を介して作業油を供給可能に構成されている。タンク5内に貯留された作動油は、無段変速機47や昇降駆動部2j、ローリング駆動部2k、油圧クラッチ、外部油圧機器(作業機3)の作動油として利用される。エンジン2bの出力軸から歯車等を介して、油圧ポンプ41a,41b,41cが駆動される。油圧ポンプ41aから吐出される圧油により1速クラッチ44と2速クラッチ45と後進クラッチ46が作動可能とされる。油圧ポンプ41bから吐出される圧油により、昇降駆動部2j(昇降シリンダ)やローリング駆動部2kや外部油圧機器(作業機3の開閉機構の油圧シリンダ33)が作動可能とされる。
【0019】
図2に示すように、作業車両1は、車両コントローラ7を有する。車両コントローラ7は、エンジン2b及び走行駆動部2hを制御し、作業車両1の走行を制御可能である。車両コントローラ7は、昇降駆動部2jを制御することで作業車両1(車体2)に対して作業機3を昇降させる。車両コントローラ7は、ローリング駆動部2kを制御することで作業車両1(車体2)に対して作業機3をローリングさせる。
【0020】
車両コントローラ7は、作業機3のECU30と通信可能に構成されている。車両コントローラ7は、作業機3のECU30との通信により、作業機3の種類(型番、耕耘機か代掻きハローか、油圧シリンダにより開閉機構を駆動するかなど)、作業機3に関する情報を受信可能である。車両コントローラ7と作業機3のECU30との通信には、ISOBUSが利用されている。車両コントローラ7は、作業機3のECU30と通信することにより、作業機3の開閉機構を開く又は閉じるための開閉操作がなされた否かを知ることができる。図2に示すように作業機3に設けられた全開スイッチ31又は全閉スイッチ32を押すことで、開閉操作を可能である。全開スイッチ31又は全閉スイッチ32が操作されると、作業機3のECU30は、開閉機構を開閉するための油圧シリンダ33に対して、外部ポート42を介して供給を受けている作業油を流して油圧シリンダ33を駆動させ、開閉機構を開く又は閉じるように制御する。
【0021】
図2に示すように、作業機3の全開スイッチ31を押下する代わりに、作業車両1に設けられた下降スイッチ62を長押しすることにより、作業機3の開閉機構を開く操作がなされたことを示す信号を作業機3のECU30に送信するようにしてもよい。同様に、作業機3の全閉スイッチ32を押下する代わりに、作業車両1に設けられた上昇スイッチ61を長押しすることにより、作業機3の開閉機構を閉じる操作がなされたことを示す信号を作業機3のECU30に送信するようにしてもよい。
【0022】
また、ディスプレイ及びタッチパネルを有する表示入力装置60に、作業機3の開閉機構を開閉するためのボタンを表示して、表示されたボタンが操作されれば、作業機3の開閉操作がなされたことを示す信号を作業機3のECU30に送信するようにしてもよい。
【0023】
図2に示すように、車両コントローラ7は、図4に示すルーチンを実行することにより、開閉動作許可判定部70を実現する。車両コントローラ7は、図5に示すルーチンを実行することにより、制御対象機種判定部71と、油量不足判定部72と、供給量制御部73と、開閉動作後処理部74と、を実現する。
【0024】
図2に示す開閉動作許可判定部70は、作業車両1が停止状態であり且つ作業車両1に対する作業機3の昇降高さが第1所定高さ以下の場合に、作業機3の開閉機構を開く操作を許容し、作業車両1が停止状態であり且つ作業車両1に対する作業機3の昇降高さが第2所定高さ以上である場合に、作業機3の開閉機構を閉じる操作を許容するように、構成されている。第1及び第2所定高さは適宜設定可能であるが、第1所定高さ≦第2所定高さであることが好ましい。第1所定高さ及び第2所定高さは、作業機3の機種によらずに一律に同じ値を設定してもよいし、作業機3のECU30から設定値を取得するようにしてもよいし、作業機3からの情報(機種、耕耘幅等)に基づき算出してもよい。
【0025】
開閉動作許可判定部70が実行する具体的なフローは、図に示すように、ステップST10において、開閉動作許可判定部70は、車速に基づき停止状態であるかを判定する。ステップST10において、停止状態でないと判定された場合(ST10:NO)には、開閉動作許可判定部70は、開閉機構を閉じる操作及び開く操作を禁止し(ST11)、ステップST10の実行に戻る。ステップST10において、停止状態であると判定した場合には(ST10:YES)、次のステップST12において、開閉動作許可判定部70は、作業車両1に対する作業機3の昇降高さが第1所定高さ以下であるか否かを判定する。ステップST12において、作業機3の昇降高さが第1所定高さ以下であると判定した場合(ST12:YES)には、開閉機構の開動作を許可し(ST13)、ステップST10に戻る。作業機3の昇降高さが第1所定高さ以下でない場合(ST12:NO)には、次のステップST14において、開閉動作許可判定部70は、作業車両1に対する作業機3の昇降高さが第2所定高さ以上であるか否かを判定する。ステップST14において、作業車両1に対する作業機3の昇降高さが第2所定高さ以上であると判定した場合には(ST14:YES)、開閉機構の閉動作を許可し(ST15)、ステップST10に戻る。ステップST14において、作業車両1に対する作業機3の昇降高さが第2所定高さ以上でないと判定した場合には(ST14:NO)、開閉動作許可判定部70は、開閉機構を閉じる操作及び開く操作を禁止し(ST11)、ステップST10の実行に戻る。
なお、開閉動作許可判定部70は、省略することが可能である。
【0026】
図2に示す制御対象機種判定部71は、接続されている作業機3が制御対象の作業機であるか否かを判定する。制御対象の作業機は、油圧シリンダ33により開閉可能な開閉機構を有する作業機であり、且つ外部ポート42を介して油圧シリンダ33に作業油が供給される作業機である。具体的には、作業機3との通信結果に基づき、機種及び油圧シリンダ仕様であるかにより判定する。具体的なフローは、図5に示すように、開閉動作許可判定部70により開閉操作が許可されている場合(ステップST20:YES)に、制御対象機種判定部71は、作業機3からの情報に基づき機種が所定機種(代掻きハロー)であるかを判定し(ステップST21)、機種が所定機種である場合には(ST21:YES)、制御対象機種判定部71は、作業機3が油圧シリンダ仕様(外部ポート42を介して油圧シリンダ33に作業油が供給される作業機)であるか否かを判定する(ステップST22)。
【0027】
図2に示す油量不足判定部72は、制御対象機種判定部71により接続されている作業機が制御対象の作業機であると判定された場合に(ステップST22:YES)、作業油の供給量が開閉機構の開閉動作に必要な量に達しているか否かを判定する(ステップST23)。本実施形態では、エンジン回転数が外部ポート42を介した作業油の供給量に比例することから、現在のエンジン回転数[rpm]が規定値より低いことをもって、作業油が不足していると判断している。規定値は作業機3の機種によらず一定値でもよいし、作業機3からの情報に基づき規定値を設定してもよい。本実施形態では、エンジン回転数を作業油の流量にみたてているが、実際の流量を計測して制御するようにしてもよい。
【0028】
図2に示す供給量制御部73は、油量不足判定部72により作業油の供給量が不足していると判定され(ステップST23:YES)、開閉操作がなされたと判定された場合に(ステップST24:YES)、作業油の供給量を増大させる(ステップST25)。本実施形態では、油圧回路40は、油圧ポンプ41bを駆動するエンジン2bの回転数によって外部ポート42から供給される作業油の供給量が定まる。車両コントローラ7は、エンジン2bの回転数を増大させることで作業油の供給量を増大させている。
【0029】
図2に示す開閉動作後処理部74は、開閉操作がなされた後(ST24:YES)に、開閉機構の開閉動作が完了したか否かを判定し(ST26)、開閉動作が完了したと判定した場合(ST26:YES)に、作業油の供給量を減少させ(ST27)、ステップST20に戻る。本実施形態では、ステップST25において作業油の供給量を増大させるためにエンジン回転数を増大させたので、ステップST27においてエンジン回転数を減少させている。
【0030】
本実施形態において、開閉動作後処理部74は、開閉操作がなされた後に、接続された作業機3の種類に応じた時間を経過した場合に、開閉動作が終了したと判断するように構成されている。この構成であれば、時間経過のみで判定可能であり、センサが不要となり、低コストで実装可能となる。もちろん、油圧シリンダ33のシリンダ位置を作業機3のECU30から取得して、開閉機構の開閉動作が完了したか否かを判定するように構成してもよい。更に、開閉機構の開度を検出する別途のセンサを設けて、開閉動作の完了を検出するように構成してもよい。
【0031】
<第2実施形態>
第1実施形態では、エンジン回転数を増大させることによって、外部ポート42を介して油圧シリンダ33に供給される作業油の供給量を増大させているが、これに限定されない。例えば、図6に示す第2実施形態のように、油圧ポンプ41bから外部ポート42に至る作業油の流路に、流量を変更する流量制御弁49を設け、流量制御弁49を絞り状態から解放状態にすることにより、外部ポート42へ供給する作業油の流量を増大させるようにしてもよい。逆に、流量制御弁49を解放状態から絞り状態にすることで、外部ポート42へ供給する作業油の流量を減少させることが可能となる。
【0032】
<第3実施形態>
第3実施形態は、図7に示すように、車両コントローラ7は、作業時のエンジンの回転数と作業機の種類とを関連付けた作業様態を予め記憶する記憶部75を有する。同図に示すように、記憶部75には、機種「代掻ハロー1」と、作業名「Eco代掻」と、エンジン回転数N1とが関連付けて記憶してあり、同様に、機種「代掻ハロー1」と、作業名「普通代掻」と、エンジン回転数N2とが関連付けて記憶してある。アイドリング時のエンジン回転数がN0とすれば、N0<N1<N2とする。図8に示すように、表示入力装置60は、記憶部75に記憶されている複数の作業様態のうち、接続された作用機に対応する作用様態を表示し、ユーザが選択可能に構成されている。
【0033】
第1実施形態においては、アイドリング時のエンジン回転数N0から、開閉操作がなされたことをもって、エンジン回転数N3(N2よりも大きい)となり、その後、エンジン回転数をN0に戻す制御が行われる。第3実施形態においては、予め作業様態を選択しておき、エンジン回転数を戻すときに、選択した作用様態のエンジン回転数に戻す制御を行う。
【0034】
具体的には、図9に示す流量制御処理において、ステップST27、ST28、ST29が第1実施形態と異なる。すなわち、車両コントローラ7は、作業油が不足していると判断し(ST23:YES)、開閉操作がなされたと判定した場合(ST24:YES)には、エンジン2bの回転数を増大させ(ST25)、その後、表示入力装置60により作業様態が選択されている場合(ST27:YES)には、選択された作業態様に対応するエンジン回転数に設定する(ST28)。表示入力装置60により作業様態が選択されていない場合(ST27:NO)には、エンジン回転数を減少させる(ST29)。
【0035】
なお、上記実施形態では、制御対象の作業機3が、油圧シリンダ33で開閉する開閉機構を有する代掻きハローを例として述べたが、油圧シリンダ33で開閉する開閉機構を有する作業機であれば、これに限定されない。例えば、ジャイロテッダ・ジャイロレーキ、レーザーレベラー、モアなどが挙げられる。
【0036】
以上のように、第1、第2又は第3実施形態の作業車両1は、
外部ポート42を介して作業油を供給可能な油圧回路40と、
作業車両1に接続された作業機3と通信可能に構成された車両コントローラ7と、を備える。車両コントローラ7は、接続されている作業機3が油圧シリンダ33により開閉可能な開閉機構を有し且つ外部ポート42を介して油圧シリンダ33に作業油が供給される制御対象の作業機であるか否かを作業機3との通信結果に基づいて判定し(ST21,22)、
接続されている作業機3が制御対象の作業機3であると判定した場合に、作業油の供給量が開閉機構の開閉動作に必要な量に対して不足しているか否かを判定し(ST23)、
作業油の供給量が不足していると判定し、開閉操作がなされたと判定した場合に(ST24)、作業油の供給量を増大させる(ST25)。
【0037】
この構成によれば、油圧シリンダ33により開閉可能な開閉機構を有する作業機3が接続されており、油圧シリンダ33に供給される作業脂の供給量が不足していると判定されれば、作業油の供給量が増大されるので、油圧シリンダ33の駆動量、すなわち開閉機構の開閉動作を早くすることが可能となる。したがって、油圧シリンダ33により開閉する開閉機構の動作を自動で適正化することが可能となる。
【0038】
第1又は第3実施形態において、油圧回路40は、油圧ポンプ41bを駆動するエンジン2bの回転数によって作業油の供給量が定まる。車両コントローラ7は、エンジン2bの回転数を増大させることで作業油の供給量を増大させる。
【0039】
この構成によれば、エンジン回転数の制御だけで、作業油の供給量を制御できる。
【0040】
第1、第2又は第3実施形態において、車両コントローラ7は、開閉機構の開閉動作が終了したか否かを判定し(ST26)、開閉動作が終了したと判定した場合には、エンジン2bの回転数を減少させる。
【0041】
この構成によれば、エンジン回転数を高めた作業機3の開閉機構の迅速な開閉動作と、その後のエンジン回転数の減少による燃費の低下と、を両立可能となる。
【0042】
第1、第2又は第3実施形態において、開閉操作がなされた後に、接続された作業機の種類に応じた時間を経過した場合(ST26:YES)に、開閉動作が終了したと判定するように構成されている。
【0043】
この構成によれば、開閉動作が終了したことを検出するためのセンサが不要となり、低コストで実装可能となる。
【0044】
第1、第2又は第3実施形態において、作業車両1は、作業機3を昇降させる昇降駆動部2jを有する。車両コントローラ7は、作業車両1が停止状態であり(ST10:YES)且つ作業車両1に対する作業機3の昇降高さが第1所定高さ以下の場合(ST12:YES)に、開閉機構を開く操作を許容し(ST13)、作業車両1が停止状態であり(ST10:YES)且つ作業車両1に対する作業機3の昇降高さが第2所定高さ以上の場合(ST14:YES)に、開閉機構の閉じる操作を許容する(ST15)ように、構成されている。
【0045】
この構成によれば、開閉操作が許容されるために条件を設けることで、安全性を向上させることが可能となる。
【0046】
第3実施形態において、作業機3へ供給する動力を生成するエンジン2bと、作業時のエンジン2bの回転数と作業機3の種類とを関連付けた作業様態を予め記憶する記憶部75と、記憶部75に記憶されている複数の作業様態から、接続された作業機3に対応する作業様態を表示し、ユーザに選択させる表示入力装置60と、を備える。油圧回路40は、油圧ポンプ41bを駆動するエンジン2bの回転数によって作業油の供給量が定まる。車両コントローラ7は、作業油の供給量が不足していると判定し(ST23:YES)、開閉操作がなされたと判定した場合(ST24:YES)に、エンジン2bの回転数を増大させ(ST25)、その後、選択された作業様態に対応するエンジン回転数に設定する(ST28)、ように構成されている。
【0047】
この構成によれば、エンジン回転数の増大により開閉機構の開閉動作を早めることができ、開閉動作の完了後には、次の作業に適したエンジン回転数に設定されるので、次の作業にスムーズに移行可能となる。
【0048】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 作業車両
2b エンジン
2j 昇降駆動部
3 作業機
33 油圧シリンダ
40 油圧回路
42 外部ポート
60 表示入力装置
7 車両コントローラ
75 記憶部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9