(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】基板搬送ロボット及び基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法
(51)【国際特許分類】
B25J 19/04 20060101AFI20220331BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20220331BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20220331BHJP
B25J 9/04 20060101ALI20220331BHJP
B25J 19/02 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
B25J19/04
H01L21/68 A
H01L21/68 F
B25J9/04 B
B25J19/02
(21)【出願番号】P 2018092423
(22)【出願日】2018-05-11
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅也
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-114348(JP,A)
【文献】国際公開第2011/061912(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/178300(WO,A1)
【文献】国際公開第2003/022534(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/145082(WO,A1)
【文献】特開2004-214462(JP,A)
【文献】特開2005-118951(JP,A)
【文献】特開2019-067910(JP,A)
【文献】特開2019-102695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
H01L 21/67 - 21/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持するハンド、前記ハンドの旋回軸を含み当該ハンドを変位させるロボットアーム、及び、前記ハンドの先端部に設けられた光電センサを備えた基板搬送ロボットにおいて、前記光電センサの光軸の前記ハンドに規定された理想光軸からのずれを検出する方法であって、
前記理想光軸が水平な或る第1方向に延在するような、前記旋回軸を旋回中心とする前記ハンドの基準旋回位置を取得すること、
前記ハンドを前記基準旋回位置を基準とする所定の第1旋回位置で前記旋回軸を中心とする放射方向へ移動させながら前記光電センサで第1ターゲット体を検出し、前記第1ターゲット体が検出されたときの前記ハンドの前記第1方向と直交する水平な第2方向の位置を第1検出位置として求める、一連の第1探索処理を行うこと、
前記ハンドを前記基準旋回位置を基準とする所定の第2旋回位置で前記旋回軸を中心とする放射方向へ移動させながら前記光電センサで第2ターゲット体を検出し、前記第2ターゲット体が検出されたときの前記ハンドの前記第2方向の位置を第2検出位置として求める、一連の第2探索処理を行うこと、及び、
前記第1検出位置と前記第2検出位置との差に基づいて前記光軸の前記理想光軸からの傾きを検出することを含み、
前記旋回軸から前記第1ターゲット体までの前記第2方向の距離と前記旋回軸から前記第2ターゲット体までの前記第2方向の距離とが等しく、
前記ハンド上における前記光軸と前記第1ターゲット体との交差位置と前記光軸と前記第2ターゲット体との交差位置とが相違する、
基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法。
【請求項2】
前記第1ターゲット体と前記第2ターゲット体とが前記第1方向に並び、且つ、前記第1ターゲット体と前記第2ターゲット体とが前記第2方向と垂直な同一平面内にあり、
前記第1旋回位置及び前記第2旋回位置がいずれも前記基準旋回位置である、
請求項1に記載の基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法。
【請求項3】
前記第1ターゲット体と前記第2ターゲット体とが一致し、
前記第1旋回位置及び前記第2旋回位置がいずれも前記基準旋回位置であり、
前記第1探索処理中の前記ハンドの軌跡と前記第2探索処理中の前記ハンドの軌跡とが前記第1方向に離間している、
請求項1に記載の基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法。
【請求項4】
前記第1ターゲット体と前記第2ターゲット体とが一致し、
前記第1旋回位置が前記基準旋回位置から旋回方向の一方へ所定角度だけ旋回させた位置であり、前記第2旋回位置が前記基準旋回位置から前記旋回方向の他方へ所定角度だけ旋回させた位置である、
請求項1に記載の基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法。
【請求項5】
前記ハンドを前記基準旋回位置で前記第2方向へ進出させることにより所定の基板載置位置へ移動させ、前記ハンドから当該基板載置位置に設けられた基板載置部へ前記基板を移載すること、
前記ハンドにおいて当該ハンドに保持された前記基板の中心と垂直方向に重複する位置をハンド中心と規定し、前記ハンドを前記基板載置位置から前記ハンド中心と前記理想光軸との距離に前記基板の半径を加えた距離だけ前記第2方向へ後退させ、当該ハンドの前記第2方向の位置を基準位置として求めること、
前記ハンドを前記第2方向へ進退移動させながら前記光電センサで前記基板のエッジを探索し、前記探索で前記基板のエッジが検出されたときの前記ハンドの前記第2方向の位置を第3検出位置として求めること、及び、
前記基準位置と前記第3検出位置との差に基づいて前記光軸の前記理想光軸からの位置ずれを検出することを、更に含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法。
【請求項6】
前記ハンドは、第1先端部及び第2先端部の2股に分かれた先端部を有し、それらの先端部を繋ぐ前記理想光軸と、前記ハンドの基板載置面と平行な面内において前記理想光軸と直交するハンド軸とが規定されており、
第1物体検出センサの第1センサ軸と、前記第1ターゲット体又は前記第2ターゲット体と、第2物体検出センサの第2センサ軸とが、平面視において同一直線上にこの順番で等間隔に並んでおり、
前記基準旋回位置を取得することが、
前記第1センサ軸と前記第2センサ軸との間に前記第1先端部及び前記第2先端部を進入させること、
前記第1先端部が前記第1物体検出センサで検出されるまで前記ハンドを移動させて、前記第1先端部が前記第1物体検出センサで検出されたときの前記第1先端部の平面座標を第1センサ座標として求めること、
前記第2先端部が前記第2物体検出センサで検出されるまで前記ハンドを移動させて、前記第2先端部が前記第2物体検出センサで検出されたときの前記第2先端部の平面座標を第2センサ座標として求めること、
前記第1センサ座標と前記第2センサ座標の中間座標と前記旋回軸の平面座標とを結ぶ直線と前記ハンド軸とが同一の垂直面内に入るまで前記ハンドを移動させること、及び、
前記ハンドの旋回位置を前記基準旋回位置として取得すること、を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法。
【請求項7】
基板を保持するハンド、前記ハンドを変位させるロボットアーム、及び、前記ハンドの先端部に設けられた光電センサとを備えた基板搬送ロボットにおいて、前記光電センサの光軸の前記ハンドに規定された理想光軸からのずれを検出する方法であって、
前記ハンドを前記理想光軸が水平な第1方向に延在する姿勢で前記第1方向と直交する水平な第2方向へ進出させることにより所定の基板載置位置へ移動させ、前記ハンドから当該基板載置位置に設けられた基板載置部へ前記基板を移載すること、
前記ハンドにおいて当該ハンドに保持された前記基板の中心と垂直方向に重複する位置をハンド中心と規定し、前記ハンドを前記基板載置位置から前記ハンド中心と前記理想光軸との距離に前記基板の半径を加えた距離だけ前記第2方向へ後退させ、当該ハンドの前記第2方向の位置を基準位置として求めること、
前記ハンドを前記第2方向へ進退移動させながら前記光電センサで前記基板のエッジを探索し、前記探索で前記基板のエッジが検出されたときの前記ハンドの前記第2方向の位置を検出位置として求めること、及び、
前記基準位置と前記検出位置との差に基づいて前記光軸の前記理想光軸からの位置ずれを検出することを含む、
基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法。
【請求項8】
基板を保持するハンド、前記ハンドの旋回軸を含み当該ハンドを変位させるロボットアーム、及び、前記ハンドの先端部に設けられた光電センサを有し、前記ハンドに理想光軸が規定されたロボット本体と、
第1ターゲット体及び第2ターゲット体を有する較正治具と、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記理想光軸が水平な或る第1方向に延在するような、前記旋回軸を旋回中心とする前記ハンドの基準旋回位置を取得し、前記ハンドを前記基準旋回位置を基準とする所定の第1旋回位置で前記旋回軸を中心とする放射方向へ移動させながら前記光電センサで第1ターゲット体を検出する第1探索を行い、前記ハンドを前記基準旋回位置を基準とする所定の第2旋回位置で前記旋回軸を中心とする放射方向へ移動させながら前記光電センサで第2ターゲット体を検出する第2探索を行うように、前記ロボット本体を動作させるロボット制御部と、
前記第1探索で前記第1ターゲット体が検出されたときの前記ハンドの前記第1方向と直交する水平な第2方向の位置を第1検出位置として求め、前記第2探索で前記第2ターゲット体が検出されたときの前記ハンドの前記第2方向の位置を第2検出位置として求め、前記第1検出位置と前記第2検出位置との差に基づいて前記光軸の前記理想光軸からの傾きを検出する光軸傾き検出部とを、含み、
前記旋回軸から前記第1ターゲット体までの前記第2方向の距離と前記旋回軸から前記第2ターゲット体までの前記第2方向の距離とが等しく、
前記ハンド上における前記光軸と前記第1ターゲット体との交差位置と前記光軸と前記第2ターゲット体との交差位置とが相違する、
基板搬送ロボット。
【請求項9】
前記較正治具は、前記第1方向に並んだ前記第1ターゲット体及び前記第2ターゲット体、前記第1ターゲット体を前記光電センサの検出可能範囲から検出不可範囲へ移動させる第1ターゲット移動装置、並びに、前記第2ターゲット体を前記光電センサの検出可能範囲から検出不可範囲へ移動させる第2ターゲット移動装置を有し、
前記コントローラは、前記第1探索の間、前記第1ターゲット体が検出可能範囲にあり且つ前記第2ターゲット体が検出不可範囲にあり、前記第2探索の間、前記第1ターゲット体が検出不可範囲にあり且つ前記第2ターゲット体が検出可能範囲にあるように、前記第1ターゲット移動装置及び前記第2ターゲット移動装置を動作させる治具制御部を更に含む、
請求項8に記載の基板搬送ロボット。
【請求項10】
前記第1ターゲット体と前記第2ターゲット体とが一致し、
前記第1旋回位置及び前記第2旋回位置がいずれも前記基準旋回位置であり、
前記ロボット制御部は、前記第1探索のあとで前記ハンドを前記第1方向へシフトさせてから前記第2探索を行うように、前記ロボット本体を動作させる、
請求項8に記載の基板搬送ロボット。
【請求項11】
前記第1ターゲット体と前記第2ターゲット体とが一致し、
前記第1旋回位置が前記基準旋回位置から旋回方向の一方へ所定角度だけ旋回させた位置であり、前記第2旋回位置が前記基準旋回位置から前記旋回方向の他方へ所定角度だけ旋回させた位置である、
請求項8に記載の基板搬送ロボット。
【請求項12】
前記ハンドにおいて当該ハンドに保持された前記基板の中心と垂直方向に重複する位置をハンド中心と規定し、
前記コントローラは、
前記ハンドを前記理想光軸が前記第1方向に延在する姿勢で前記第2方向へ所定の基板載置位置まで進出させ、前記ハンドから前記基板載置位置に設けられた基板載置部へ前記基板を移載し、前記ハンドを前記基板載置位置から前記ハンド中心と前記理想光軸との距離に前記基板の半径を加えた距離だけ前記第2方向へ後退した位置へ移動させ、前記ハンドを前記第2方向へ進退移動させながら前記光電センサで前記基板のエッジの探索を行うように前記ロボット本体を動作させる前記ロボット制御部と、
前記ハンドが前記後退した位置にあるときの前記第2方向の位置を基準位置として求め、前記探索で前記基板のエッジが検出されたときの前記ハンドの前記第2方向の位置を第3検出位置として求め、前記基準位置と前記第3検出位置との差に基づいて前記光軸の前記理想光軸からの位置ずれを検出する光軸位置ずれ検出部とを含む、
請求項8~11のいずれか一項に記載の基板搬送ロボット。
【請求項13】
前記ハンドは、第1先端部及び第2先端部の2股に分かれた先端部を有し、それらの先端部を繋ぐ前記理想光軸と、前記ハンドの基板載置面と平行な面内において前記理想光軸と直交するハンド軸とが規定されており、
前記較正治具は、第1物体検出センサ及び第2物体検出センサを更に有し、前記第1物体検出センサの第1センサ軸と、前記第1ターゲット体又は前記第2ターゲット体と、前記第2物体検出センサの第2センサ軸とが、平面視において同一直線上にこの順番で等間隔に並んでおり、
前記コントローラは、
前記第1センサ軸と前記第2センサ軸との間に前記第1先端部及び前記第2先端部を進入させ、前記第1先端部が前記第1物体検出センサで検出されるまで前記ハンドを移動させ、前記第2先端部が前記第2物体検出センサで検出されるまで前記ハンドを移動させ、前記第1ターゲット体又は前記第2ターゲット体の平面座標であるターゲット座標と前記旋回軸の平面座標とを結ぶ直線と前記ハンド軸とが同一の基準垂直面内に入るまで前記ハンドを移動させるように、前記ロボット本体を動作させる前記ロボット制御部と、
前記第1先端部が前記第1物体検出センサで検出されたときの前記第1先端部の平面座標を第1センサ座標として求め、前記第2先端部が前記第2物体検出センサで検出されたときの前記第2先端部の平面座標を第2センサ座標として求め、前記第1センサ座標と前記第2センサ座標の中間座標を前記ターゲット座標として求め、前記ハンド軸が前記基準垂直面内にあるときの前記ハンドの旋回位置を前記基準旋回位置として取得する基準旋回位置取得部とを含む、
請求項8~12のいずれか一項に記載の基板搬送ロボット。
【請求項14】
基板を保持するハンド、前記ハンドを変位させるロボットアーム、及び、前記ハンドの先端部に設けられた光電センサを有するロボット本体と、
所定の基板載置位置に設けられた基板載置部と、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記ハンドに理想光軸を規定し、前記ハンドにおいて当該ハンドに保持された前記基板の中心と垂直方向に重複する位置をハンド中心と規定し、
前記ハンドを前記理想光軸が水平な第1方向に延在する姿勢で前記第1方向と直交する水平な第2方向へ前記基板載置位置まで進出させ、前記ハンドから前記基板載置部へ前記基板を移載し、前記ハンドを前記基板載置位置から前記ハンド中心と前記理想光軸との距離に前記基板の半径を加えた距離だけ前記第2方向へ後退した位置へ移動させ、前記ハンドを前記第2方向へ進退移動させながら前記光電センサで前記基板のエッジの探索を行うように前記ロボット本体を動作させるロボット制御部と、
前記ハンドが前記後退した位置にあるときの前記第2方向の位置を基準位置として求め、前記探索で前記基板のエッジが検出されたときの前記ハンドの前記第2方向の位置を検出位置として求め、前記基準位置と前記検出位置との差に基づいて前記光軸の前記理想光軸からの位置ずれを検出する光軸位置ずれ検出部とを含む、
基板搬送ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送ロボットにおいて、基板保持ハンドに設けられた光電センサの光軸のずれを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板保持ハンドの先端部に透過型の光電センサを備えた基板搬送ロボットが知られている。この光電センサは、例えば、キャリアの各スロットに収容された基板のエッジを検出することにより、各スロットの基板の有無を検出するために利用される。
【0003】
透過型の光電センサは、投光器と受光器とを備え、それらが基板保持ハンドに精度よく取り付けられる。投光器と受光器とを結ぶ光軸の理想位置からの位置ずれは、専用の計測装置で計測され、コントローラに記憶され、コントローラでロボットの制御に利用されてきた。近年では、光電センサの光軸の理想位置からの位置ずれを、ロボット自身で計測する方法が提案されている。特許文献1,2では、この種の技術が開示されている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載のキャリブレーション方法は、基板の載置位置に小円板を含む教示治具を載置し、ハンドに設けた光電センサで小円板のエッジを検出して教示治具の位置を推定し、教示治具の教示位置と推定位置との差に基づいて、光軸の理想位置からのハンド軸方向の位置ずれや、光軸の理想位置からのハンド回転方向の位置ずれを求めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-118951号公報
【文献】特開2008-114348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載のキャリブレーション方法では、小円板のエッジに対しハンドを異なる角度からアプローチさせて、ハンドに設けた光電センサで小円板のエッジを検出する。そのため、検出した位置から光軸の理想位置からの位置ずれを求めるために複雑な演算が必要となる。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、特許文献1及び特許文献2に記載された手法と比較して簡易且つ精確に光軸の理想位置からの位置ずれを求める技術を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法は、基板を保持するハンド、前記ハンドの旋回軸を含み当該ハンドを変位させるロボットアーム、及び、前記ハンドの先端部に設けられた光電センサを備えた基板搬送ロボットにおいて、前記光電センサの光軸の前記ハンドに規定された理想光軸からのずれを検出する方法であって、
前記理想光軸が水平な或る第1方向に延在するような、前記旋回軸を旋回中心とする前記ハンドの基準旋回位置を取得すること、
前記ハンドを前記基準旋回位置を基準とする所定の第1旋回位置で前記旋回軸を中心とする放射方向へ移動させながら前記光電センサで第1ターゲット体を検出し、前記第1ターゲット体が検出されたときの前記ハンドの前記第1方向と直交する水平な第2方向の位置を第1検出位置として求める、一連の第1探索処理を行うこと、
前記ハンドを前記基準旋回位置を基準とする所定の第2旋回位置で前記旋回軸を中心とする放射方向へ移動させながら前記光電センサで第2ターゲット体を検出し、前記第2ターゲット体が検出されたときの前記ハンドの前記第2方向の位置を第2検出位置として求める、一連の第2探索処理を行うこと、及び、
前記第1検出位置と前記第2検出位置との差に基づいて前記光軸の前記理想光軸からの傾きを検出することを含み、
前記旋回軸から前記第1ターゲット体までの前記第2方向の距離と前記旋回軸から前記第2ターゲット体までの前記第2方向の距離とが等しく、
前記ハンド上における前記光軸と前記第1ターゲット体との交差位置と前記光軸と前記第2ターゲット体との交差位置とが相違する。
【0009】
本発明の更に別の一態様に係る基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法は、基板を保持するハンド、前記ハンドを変位させるロボットアーム、及び、前記ハンドの先端部に設けられた光電センサとを備えた基板搬送ロボットにおいて、前記光電センサの光軸の前記ハンドに規定された理想光軸からのずれを検出する方法であって、
前記ハンドを前記理想光軸が水平な第1方向に延在する姿勢で前記第1方向と直交する水平な第2方向へ進出させることにより所定の基板載置位置へ移動させ、前記ハンドから当該基板載置位置に設けられた基板載置部へ前記基板を移載すること、
前記ハンドにおいて当該ハンドに保持された前記基板の中心と垂直方向に重複する位置をハンド中心と規定し、前記ハンドを前記基板載置位置から前記ハンド中心と前記理想光軸との距離に前記基板の半径を加えた距離だけ前記第2方向へ後退させ、当該ハンドの前記第2方向の位置を基準位置として求めること、
前記ハンドを前記第2方向へ進退移動させながら前記光電センサで前記基板のエッジを探索し、前記探索で前記基板のエッジが検出されたときの前記ハンドの前記第2方向の位置を検出位置として求めること、及び、
前記基準位置と前記検出位置との差に基づいて前記光軸の前記理想光軸からの位置ずれを検出することを含む。
【0010】
本発明の更に別の一態様に係る基板搬送ロボットは、
基板を保持するハンド、前記ハンドの旋回軸を含み当該ハンドを変位させるロボットアーム、及び、前記ハンドの先端部に設けられた光電センサを有し、前記ハンドに理想光軸が規定されたロボット本体と、
第1ターゲット体及び第2ターゲット体を有する較正治具と、
コントローラとを備える。
前記コントローラは、
前記理想光軸が水平な或る第1方向に延在するような、前記旋回軸を旋回中心とする前記ハンドの基準旋回位置を取得し、前記ハンドを前記基準旋回位置を基準とする所定の第1旋回位置で前記旋回軸を中心とする放射方向へ移動させながら前記光電センサで第1ターゲット体を検出する第1探索を行い、前記ハンドを前記基準旋回位置を基準とする所定の第2旋回位置で前記旋回軸を中心とする放射方向へ移動させながら前記光電センサで第2ターゲット体を検出する第2探索を行うように、前記ロボット本体を動作させるロボット制御部と、
前記第1探索で前記第1ターゲット体が検出されたときの前記ハンドの前記第1方向と直交する水平な第2方向の位置を第1検出位置として求め、前記第2探索で前記第2ターゲット体が検出されたときの前記ハンドの前記第2方向の位置を第2検出位置として求め、前記第1検出位置と前記第2検出位置との差に基づいて前記光軸の前記理想光軸からの傾きを検出する光軸傾き検出部とを、含む。
上記において、前記旋回軸から前記第1ターゲット体までの前記第2方向の距離と前記旋回軸から前記第2ターゲット体までの前記第2方向の距離とが等しく、
前記ハンド上における前記光軸と前記第1ターゲット体との交差位置と前記光軸と前記第2ターゲット体との交差位置とが相違する。
【0011】
本発明の更に別の一態様に係る基板搬送ロボットは、基板を保持するハンド、前記ハンドを変位させるロボットアーム、及び、前記ハンドの先端部に設けられた光電センサを有するロボット本体と、所定の基板載置位置に設けられた基板載置部と、コントローラとを備える。
そして、前記コントローラは、
前記ハンドに理想光軸を規定し、前記ハンドにおいて当該ハンドに保持された前記基板の中心と垂直方向に重複する位置をハンド中心と規定し、
前記ハンドを前記理想光軸が水平な第1方向に延在する姿勢で前記第1方向と直交する水平な第2方向へ前記基板載置位置まで進出させ、前記ハンドから前記基板載置部へ前記基板を移載し、前記ハンドを前記基板載置位置から前記ハンド中心と前記理想光軸との距離に前記基板の半径を加えた距離だけ前記第2方向へ後退した位置へ移動させ、前記ハンドを前記第2方向へ進退移動させながら前記光電センサで前記基板のエッジの探索を行うように前記ロボット本体を動作させるロボット制御部と、
前記ハンドが前記後退した位置にあるときの前記第2方向の位置を基準位置として求め、前記探索で前記基板のエッジが検出されたときの前記ハンドの前記第2方向の位置を検出位置として求め、前記基準位置と前記検出位置との差に基づいて前記光軸の前記理想光軸からの位置ずれを検出する光軸位置ずれ検出部とを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来と比較して簡易且つ精確に基板保持ハンドの光軸の理想位置からのずれを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る基板搬送ロボットの概略側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す基板搬送ロボットの概略平面図である。
【
図3】
図3は、基板搬送ロボットの制御系統の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、光軸の傾きの検出方法を説明する図である。
【
図5】
図5は、光軸の傾きの検出処理のフローチャートである。
【
図6】
図6は、光軸の位置ずれの検出方法を説明する図である。
【
図7】
図7は、光軸の位置ずれの検出方法を説明する図である。
【
図8】
図8は、光軸の位置ずれの検出処理のフローチャートである。
【
図9】
図9は、変形例1に係る基板搬送ロボットを示す平面図である。
【
図11】
図11は、変形例1に係る基板搬送ロボットによる光軸の傾きの検出方法を説明する図である。
【
図12】
図12は、変形例2に係る基板搬送ロボットを示す平面図である。
【
図13】
図13は、変形例2に係る基板搬送ロボットによる光軸の傾きの検出処理を説明する図である。
【
図14】
図14は、変形例2に係る基板搬送ロボットによる光軸の傾きの検出処理を説明する図である。
【
図15】
図15は、変形例2に係る基板搬送ロボットによる光軸の傾きの検出処理を説明する図である。
【
図16】
図16は、位置決め用治具としての機能を備える較正冶具の構成を示す側面図である。
【
図17】
図17は、変形例3に係る基板搬送ロボットの基準旋回位置の自動教示処理のフローチャートである。
【
図18】
図18は、変形例3に係る基板搬送ロボットによる基準旋回位置の自動教示処理を説明する図である。
【
図19】
図19は、変形例3に係る基板搬送ロボットによる基準旋回位置の自動教示処理を説明する図である。
【
図20】
図20は、変形例3に係る基板搬送ロボットによる基準旋回位置の自動教示処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
〔基板搬送ロボット1の概略構成〕
図1は本発明の一実施形態に係る基板搬送ロボット1の概略側面図、
図2は
図1に示す基板搬送ロボット1の概略平面図である。
図1及び
図2に示す基板搬送ロボット1は、ロボット本体10と、ロボット本体10の動作を制御するコントローラ15と、較正治具9とを備える。基板搬送ロボット1は、図示されない基板載置部に対し基板Wの搬入(積載)及び搬出を行うものである。基板搬送ロボット1は、例えば、EFEM(Equipment Front End Module)、ソータ、基板処理システムなどの、各種の基板Wを搬送するシステムに備えられてよい。
【0016】
〔ロボット本体10の構成〕
ロボット本体10は、基台11と、基台11に支持されたロボットアーム(以下、「アーム12」と称する)と、アーム12の遠位端部に連設された基板保持ハンド(以下、「ハンド13」と称する)と、ハンド13に設けられた透過型の光電センサ4とを有する。なお、本実施形態では光電センサ4として透過型の光電センサが採用されているが、これに代えて回帰反射型の光電センサが採用されてもよい。
【0017】
本実施形態に係るアーム12は、水平方向に延びる第1リンク21と、第1リンク21に並進関節を介して接続された第2リンク22とから成る。第1リンク21には並進装置63が設けられており、並進装置63の動作により第2リンク22は第1リンク21に対して当該第1リンク21の長手方向と平行に並進移動する。並進装置63は、例えば、レール&スライダ、ラック&ピニオン、ボールねじ、又は、シリンダなどの直動機構(図示略)と、駆動部としてのサーボモータM3(
図3、参照)とを含む。但し、並進装置63の構成は上記に限定されない。
【0018】
アーム12の近位端部は、昇降及び旋回可能に基台11に支持されている。昇降装置61の動作により、アーム12の近位端部と連結された昇降軸23が伸縮して、アーム12は基台11に対し昇降移動する。昇降装置61は、例えば、昇降軸23を基台11から伸縮させる直動機構(図示略)と、駆動部としてのサーボモータM1(
図3、参照)とを含む。また、旋回装置62の動作により、アーム12は基台11に対し旋回軸Rを中心として旋回する。アーム12の旋回軸Rは昇降軸23の軸心と実質的に一致する。旋回装置62は、例えば、第1リンク21を旋回軸Rの周りに回転させるギア機構(図示略)と、駆動部としてのサーボモータM2(
図3、参照)とを含む。但し、昇降装置61及び旋回装置62の構成は上記に限定されない。
【0019】
ハンド13は、アーム12の遠位端部に連結されたベース部31と、ベース部31に固定されたブレード32とを備える。ブレード32は、先端部が二股に分かれたY字状(又は、U字状)を呈する薄板部材である。
【0020】
ブレード32の主面は水平であって、基板Wを支持する複数の支持パッド33がブレード32上に設けられている。複数の支持パッド33は、ブレード32に載置された基板Wのエッジと接触するように配置されている。更に、ハンド13においてブレード32の基端側には、プッシャ34が設けられている。このプッシャ34とブレード32の先端部に配置された支持パッド33との間で、ブレード32に載置された基板Wが把持される。
【0021】
なお、本実施形態に係るハンド13は、基板Wを水平な姿勢で保持しながら、搬送するものであるが、ハンド13は基板Wを垂直な姿勢で保持可能なものであってもよい。また、本実施形態に係るハンド13の基板Wの保持方式は、エッジ把持式であるが、エッジ把持式に代えて、吸着式、落とし込み式、載置式などの公知の基板Wの保持方式が採用されてもよい。
【0022】
ハンド13には、少なくとも1組の光電センサ4が設けられている。光電センサ4は、ブレード32の二股に分かれた先端部の裏面に設けられている。
図1及び
図4を参照して、光電センサ4は、ブレード32の二股に分かれた先端部の一方に設けられた投光器41と他方に設けられた受光器42とを含む。投光器41と受光器42とは、ブレード32の主面と平行な方向(即ち、水平方向)に離れている。
【0023】
投光器41は、検出媒体となる光を投射する光源を備える。受光器42は、投光器41の投射光を受けて電気信号に変換する受光素子を備える。投光器41と受光器42は対向配置されており投光器41を出た光は、直線状に進んで、受光器42の受光器の入光窓に入射する。
図4において、投光器41を出た光の光軸43が鎖線で示されている。光電センサ4は、光軸43上を物体が通過して、受光器42に入射する光量が減少したことを検出すると、検出信号をコントローラ15へ出力する。
【0024】
〔較正治具9の構成〕
本実施形態に係る較正治具9は、2本のターゲット体91,92と、これらのターゲット体91,92を個別に移動させるターゲット移動装置93,94とを備える。ターゲット体91,92は、光電センサ4で検出される高さに幅を確保し、且つ、検出位置誤差をより小さくするために、垂直方向に延びるピン、軸、又は柱形状を呈することが望ましい。但し、ターゲット体91,92の形状はこれに限定されない。
【0025】
ターゲット移動装置93,94は、ターゲット体91,92を、光電センサ4で検出できる領域(検出可能領域)と、それよりも低く且つ光電センサ4で検出できない領域(検出不可領域)との間で移動させるものであればよい。ターゲット移動装置93,94は、例えば、ラックアンドピニオンなどの直動機構と、直動機構の駆動部としての電動モータとを含む。但し、ターゲット移動装置93,94はこれに限定されない。ターゲット移動装置93,94はコントローラ15と通信可能に接続されており、ターゲット移動装置93,94の動作はコントローラ15の治具制御部152に制御される。
【0026】
平面視において、2本のターゲット体91,92が通る直線をターゲット基準線A2と規定する(
図2、参照)。2本のターゲット体91,92のターゲット基準線A2と平行な離間距離Δdは既知であり、Δdは光軸43の長さより短い。
【0027】
〔コントローラ15の構成〕
図3は、基板搬送ロボット1の制御系統の構成を示す図である。
図3に示すコントローラ15は、ロボット本体10の動作を制御するロボット制御部151と、治具制御部152と、光軸傾き検出部153と、光軸位置ずれ検出部154と、基準旋回位置取得部156との各機能部を有する。また、コントローラ15は、光軸43のずれに関する情報を記憶する光軸ずれ記憶部155を有する。
【0028】
コントローラ15は、いわゆるコンピュータであって、例えば、マイクロコントローラ、CPU、MPU、PLC、DSP、ASIC又はFPGA等の演算処理装置(プロセッサ)と、ROM、RAM等の記憶装置とを有する(いずれも図示せず)。記憶装置には、演算処理装置が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。記憶装置に記憶されたプログラムには、本実施形態に係る回転軸探索プログラムが含まれている。また、記憶装置には、アーム12の動作を制御するための教示データ、アーム12やハンド13の形状・寸法に関するデータ、ハンド13に保持された基板Wの形状・寸法に関するデータなどが格納されている。
【0029】
コントローラ15では、記憶装置に記憶されたプログラム等のソフトウェアを演算処理装置が読み出して実行することにより、前述の機能部を実現するための処理が行われる。なお、コントローラ15は単一のコンピュータによる集中制御により各処理を実行してもよいし、複数のコンピュータの協働による分散制御により各処理を実行してもよい。
【0030】
コントローラ15には、アーム12の昇降装置61のサーボモータM1、旋回装置62のサーボモータM2、及び、並進装置63のサーボモータM3が接続されている。各サーボモータM1~3には、その出力軸の回転角を検出する位置検出器E1~3が設けられており、各位置検出器E1~3の検出信号はコントローラ15へ出力される。更に、コントローラ15には、ハンド13のプッシャ34も接続されている。そして、コントローラ15のロボット制御部151は、位置検出器E1~3の各々で検出された回転位置から特定されるハンド13のポーズ(即ち、空間における位置及び姿勢)と記憶部に記憶された教示データとに基づいて所定の制御時間後の目標ポーズを演算し、所定の制御時間後にハンド13が目標ポーズとなるように各サーボモータM1~3を動作させる。
【0031】
〔光軸のずれ検出方法〕
以下、上記構成の基板搬送ロボット1によって実行されるハンド13に設けられた光電センサ4の光軸ずれ検出方法について説明する。
【0032】
図2に示すように、ハンド13には、ハンド軸A1とハンド中心Cとが規定されている。ハンド軸A1は、ハンド13の長手方向と平行に直線状に延びる軸線であり、ブレード32は平面視においてハンド軸A1を対称軸として線対称に形成されている。本実施形態においては、ハンド軸A1はアーム12の伸縮方向と平行であり、ハンド13はハンド軸A1と平行に移動する。ハンド中心Cは、ハンド13において当該ハンド13に保持された基板Wの中心と重複する垂線である。
【0033】
光電センサ4の投光器41と受光器42とは、ハンド13に精度よく取り付けられている。それであっても、投光器41と受光器42との取付誤差や個体差によって、設計された理想光軸44から実際の光軸43がずれることがある。光軸43のずれには、光軸43の理想光軸44からの傾きと、光軸43の理想光軸44からのハンド軸A1方向の位置ずれとがある。そこで、本実施形態に係る基板搬送ロボット1では、コントローラ15の光軸傾き検出部153が光軸43の理想光軸44からの傾きを検出し、コントローラ15の光軸位置ずれ検出部154が光軸43の理想光軸44からのハンド軸A1と平行な方向の位置ずれを検出し、ロボット制御部151はこれらの光軸43のずれを加味してロボット本体10を動作させる。
【0034】
〔光軸43の傾きの検出方法〕
先ず、光軸43の理想光軸44からの傾きを検出する方法から説明する。
図4は、光軸43の傾きの検出方法を説明する図であり、
図5は、基板搬送ロボット1による光軸43の傾きの検出処理のフローチャートである。
【0035】
図4に示すように、或る水平方向を第1方向Xとし、第1方向Xと直交する水平方向を第2方向Yとする。較正治具9は、ターゲット基準線A2が第1方向Xと平行となるように位置決めされる。つまり、ハンド13の旋回軸Rから第1ターゲット体91までの第2方向Yの距離と旋回軸Rから第2ターゲット体92までの第2方向Yの距離とは等しい。
【0036】
図5に示すように、コントローラ15は、先ず、ハンド13の基準旋回位置を取得する(ステップS1)。
図4に示すように、所定の待機位置にあるハンド13は、理想光軸44の延伸方向が第1方向Xであり、且つ、ハンド軸A1の延伸方向が第2方向Yである基準旋回位置にあり、ターゲット体91,92から第2方向Yへ離れている。なお、較正治具9とロボット本体10との位置関係が既知であれば、ハンド13の基準旋回位置は既知である。基準旋回位置取得部156は、予め記憶された基準旋回位置又は教示された基準旋回位置を取得し、ロボット制御部151はハンド13が基準旋回位置となるようにロボット本体10を動作させる。
【0037】
次に、コントローラ15は、第1探索処理を行う(ステップS2)。第1探索処理において、コントローラ15は、光電センサ4で第1ターゲット体91が検出されるまでハンド13を基準旋回位置で旋回軸Rを中心とする放射方向へ移動するように、ロボット本体10を動作させる。ここで、ハンド13は第2方向Yへ移動する。コントローラ15は、第1探索処理の間、第1ターゲット体91が検出可能領域に位置し、第2ターゲット体92が検出不可領域に位置するようにターゲット移動装置93,94を動作させる。
【0038】
コントローラ15は、第1探索処理で第1ターゲット体91が検出されたときのハンド13の第2方向Yの位置を求めて、それを第1検出位置として記憶する(ステップS3)。コントローラ15は、ハンド13が待機位置まで移動するように、ロボット本体10を動作させる。
【0039】
次に、コントローラ15は、第2探索処理を行う(ステップS4)。第2探索処理において、コントローラ15は、光電センサ4で第2ターゲット体92が検出されるまでハンド13を基準旋回位置で旋回軸Rを中心とする放射方向へ移動するように、ロボット本体10を動作させる。ここで、ハンド13は第2方向Yへ移動する。コントローラ15は、第2探索処理の間、第1ターゲット体91が検出不可領域に位置し、第2ターゲット体92が検出可能領域に位置するようにターゲット移動装置93,94を動作させる。
【0040】
コントローラ15は、第2探索処理で第2ターゲット体92が検出されたときのハンド13の第2方向Yの位置を求めて、それを第2検出位置として記憶する(ステップS5)。コントローラ15は、ハンド13が待機位置まで移動するように、ロボット本体10を動作させる。
【0041】
続いて、コントローラ15は、第1検出位置と第2検出位置とから光軸43の理想光軸44からの傾き角αを求める(ステップS6)。光軸43の傾き角αと、第1検出位置と第2検出位置との差ΔL(図示略)と、ターゲット体91,92の離間距離Δdとの間には、次式の関係が成立する。
tanα=ΔL/Δd
そこで、コントローラ15は、第1検出位置と第2検出位置との差ΔLを求め、上記式を利用して差ΔLとターゲット体91,92の離間距離Δdとに基づいて、光軸43の理想光軸44からの傾き角αを求める。ここで、コントローラ15は、傾き角αが実質的に0であれば光軸43の傾きが無いと判定し、傾き角αが実質的に0でなければ光軸43の傾きが有る(即ち、光軸43の傾きを検出した)と判定してよい。なお、「実質的に0」は、厳密に0に限定されるものではなく、0からプラス側とマイナス側とのそれぞれにおいて所定の調整範囲の値も含まれ得る。コントローラ15は、求めた傾き角αを光軸ずれ記憶部155に記憶して(ステップS7)、処理を終了する。
【0042】
〔光軸43の位置ずれの検出方法〕
続いて、光軸43の理想光軸44からのハンド軸A1と平行な方向の位置ずれを検出する方法を説明する。
図6及び
図7は、光軸43の位置ずれを検出方法を説明する図であり、
図8は、基板搬送ロボット1による光軸43の位置ずれの検出処理のフローチャートである。
【0043】
ロボット本体10のハンド13は、基板Wを保持し、理想光軸44の延伸方向が第1方向Xであり、且つ、ハンド軸A1の延伸方向が第2方向Yである姿勢で、任意の基板載置部から第2方向Yへ退避した位置にある。基板載置部は、例えば、基板ボート、基板キャリア、基板トレー、基板処理装置のステージ、アライナなど、基板Wを載置できればその態様を問わない。
【0044】
図8に示すように、コントローラ15は、先ず、基板Wをハンド13から基板載置部へ移載するように、ロボット本体10を動作させる(ステップS11)。ここで、コントローラ15は、アーム12を伸長させて、ハンド13を第2方向Yへ進出させることによりブレード32を基板載置部の上方へ移動させ、次いで、アーム12を降下させて、ブレード32を基板載置部の下方へ移動させる。これにより、基板Wがハンド13から基板載置部へ移載される。基板Wが基板載置部に載置されたときのハンド13の第2方向Yの位置を「基板載置位置」とする。
【0045】
図6に示すように、ハンド中心Cから理想光軸44までのハンド軸A1と平行な方向の距離L1、及び、基板Wの半径φWは、いずれも既知の値であり、予めコントローラ15に記憶されている。
図6及び
図7に示すように、コントローラ15は、ハンド13が基板載置位置から距離L1と半径φWとの和(L1+φW)だけ第2方向Yへ後退するように、ロボット本体10を動作させる(ステップS12)。コントローラ15は、ハンド13の第2方向Yの位置を基準位置として記憶する(ステップS13)。
【0046】
続いて、コントローラ15は、光電センサ4をオンとし、理想光軸44が基板Wの下から基板Wの上へ移動するまでハンド13を基準位置から上昇させるように、ロボット本体10を動作させる(ステップS14)。コントローラ15は、基板Wが検出されなければ(ステップS15でNO)、光軸43は理想光軸44よりハンド中心C側へずれていると判定する(ステップS16)。コントローラ15は、基板Wが検出されれば(ステップS15でYES)、光軸43は理想光軸44と一致する又はハンド中心Cと反対側へずれていると判定する(ステップS17)。
【0047】
コントローラ15は、ステップS16,S17の判定結果に基づいて、ハンド13を第2方向Yへ進出又は後退させながら光電センサ4で基板Wのエッジを探索するように、ロボット本体10を動作させる(ステップS18)。ここで、ステップS16で光軸43が理想光軸44よりハンド中心C側へずれていると判定した場合には、基板Wのエッジの探索に際し、光電センサ4をオンにした状態で、アーム12の微量な伸張と、アーム12の昇降とが繰り返される。一方、ステップS17で光軸43が理想光軸44と一致する又はハンド中心Cと反対側へずれていると判定した場合には、基板Wのエッジの探索に際し、光電センサ4をオンにした状態で、アーム12の微量な短縮と、アーム12の昇降とが繰り返される。
【0048】
コントローラ15は、基板Wのエッジが検出されたときのハンド13の第2方向Yの位置を検出位置として記憶する(ステップS19)。コントローラ15は、基準位置と検出位置との差を、光軸43の理想光軸44からのハンド軸A1と平行な方向の位置ずれ量として求める(ステップS20)。ここで、コントローラ15は、位置ずれ量が実質的に0であれば光軸43の位置ずれが無いと判定し、位置ずれ量が実質的に0でなければ光軸43の位置ずれが有る(即ち、光軸43の位置ずれを検出した)と判定してよい。コントローラ15は、位置ずれ量を光軸ずれ記憶部155に記憶し(ステップS21)、処理を終了する。
【0049】
コントローラ15は、光軸ずれ記憶部155に記憶された光軸43の傾き角α及び光軸43の位置ずれ量を、ロボット本体10の動作の制御に利用する。つまり、コントローラ15は、光軸43の傾き角α及び光軸43の位置ずれ量が較正されるように、ロボット本体10の動作指令を生成する。
【0050】
以上に説明したように、本実施形態の基板搬送ロボット1は、基板Wを保持するハンド13、ハンド13の旋回軸Rを含みハンド13を変位させるアーム12、及び、ハンド13の先端部に設けられた光電センサ4を有するロボット本体10と、第1ターゲット体91及び第2ターゲット体92を有する較正治具9と、コントローラ15とを備える。本実施形態に係る較正治具9は、第1ターゲット体91を光電センサ4の検出可能範囲から検出不可範囲へ移動させる第1ターゲット移動装置93、及び、第2ターゲット体92を光電センサ4の検出可能範囲から検出不可範囲へ移動させる第2ターゲット移動装置94を更に有する。第1ターゲット体91と第2ターゲット体92とは第1方向Xに並び、且つ、第1ターゲット体91と第2ターゲット体92とは第2方向Yと垂直な同一平面内にある。また、旋回軸Rから第1ターゲット体91までの第2方向Yの距離と旋回軸Rから第2ターゲット体92までの第2方向Yの距離とが等しい。ハンド13には、理想光軸44が規定されている。
【0051】
そして、上記コントローラ15は、ロボット制御部151と、治具制御部152と、光軸傾き検出部153とを含む。ロボット制御部151は、理想光軸44が水平な或る第1方向Xに延在するような、旋回軸Rを旋回中心とするハンド13の基準旋回位置を取得し、ハンド13を基準旋回位置を基準とする所定の第1旋回位置(本実施形態では基準旋回位置)で旋回軸Rを中心とする放射方向へ移動させながら光電センサ4で第1ターゲット体91を検出する第1探索を行い、ハンド13を基準旋回位置を基準とする所定の第2旋回位置(本実施形態では基準旋回位置)で旋回軸Rを中心とする放射方向へ移動させながら光電センサ4で第2ターゲット体92を検出する第2探索を行うように、ロボット本体10を動作させる。治具制御部152は、第1探索の間、第1ターゲット体91が検出可能範囲にあり且つ第2ターゲット体92が検出不可範囲にあり、第2探索の間、第1ターゲット体91が検出不可範囲にあり且つ第2ターゲット体92が検出可能範囲にあるように、第1ターゲット移動装置93及び第2ターゲット移動装置94を動作させる。光軸傾き検出部153は、第1探索で第1ターゲット体91が検出されたときのハンド13の第1方向Xと直交する水平な第2方向Yの位置を第1検出位置として求め、第2探索で第2ターゲット体92が検出されたときのハンド13の第2方向Yの位置を第2検出位置として求め、第1検出位置と第2検出位置との差に基づいて光軸43の理想光軸44からの傾きを検出する。上記において、ハンド13上における光軸43と第1ターゲット体91との交差位置と光軸43と第2ターゲット体92との交差位置とが相違する。
【0052】
同様に、本実施形態に係る基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法は、理想光軸44が水平な或る第1方向Xに延在するような、旋回軸Rを旋回中心とするハンド13の基準旋回位置を取得すること、ハンド13を基準旋回位置を基準とする所定の第1旋回位置(本実施形態では基準旋回位置)で旋回軸Rを中心とする放射方向へ移動させながら光電センサ4で第1ターゲット体91を検出し、第1ターゲット体91が検出されたときのハンド13の第1方向Xと直交する水平な第2方向Yの位置を第1検出位置として求める、一連の第1探索処理を行うこと、ハンド13を基準旋回位置を基準とする所定の第2旋回位置(本実施形態では基準旋回位置)で旋回軸Rを中心とする放射方向へ移動させながら光電センサ4で第2ターゲット体92を検出し、第2ターゲット体92が検出されたときのハンド13の第2方向Yの位置を第2検出位置として求める、一連の第2探索処理を行うこと、及び、第1検出位置と第2検出位置との差に基づいて光軸43の理想光軸44からの傾きを検出することを含む。この光軸ずれ検出方法において、旋回軸Rから第1ターゲット体91までの第2方向Yの距離と旋回軸Rから第2ターゲット体92までの第2方向Yの距離とが等しく、ハンド13上における光軸43と第1ターゲット体91との交差位置と光軸43と第2ターゲット体92との交差位置とが相違する。
【0053】
上記基板搬送ロボット1及び光軸ずれ検出方法によれば、ターゲット体91,92を検出した2つの位置(即ち、第1検出位置と第2検出位置)との差から単純な計算で光軸43のずれ(傾き)を検出することができる。しかも、第1探索及び第2探索の双方において、ハンド13を光軸43とともに第2方向Yへ移動させながらターゲット体91,92を探索するので、バックラッシなどによるロボット本体10の動作誤差や、ターゲット体91,92上の被検出位置誤差を排除することができる。よって、より確実に光軸43のずれ(傾き)を求めることができる。
【0054】
また、上記実施形態に係る基板搬送ロボット1において、コントローラ15のロボット制御部151は、ハンド13を理想光軸44が第1方向Xに延在する姿勢で第1方向Xと直交する水平な第2方向Yへ基板載置位置まで進出させ、基板Wをハンド13から基板載置部へ移載し、ハンド13を基板載置位置からハンド中心Cと理想光軸44との距離L1に基板Wの半径φWを加えた距離だけ第2方向Yへ後退した位置へ移動させ、ハンド13を第2方向Yへ進退移動させながら光電センサ4で基板Wのエッジの探索を行うようにロボット本体10を動作させる。そして、コントローラ15は、ハンド13が後退した位置にあるときの第2方向Yの位置を基準位置として求め、探索で基板Wのエッジが検出されたときのハンド13の第2方向Yの位置を検出位置(第3検出位置)として求め、基準位置と検出位置との差に基づいて光軸43の理想光軸44からの位置ずれを検出する光軸位置ずれ検出部154を含む。
【0055】
同様に、上記基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法は、ハンド13を理想光軸44が水平な第1方向Xに延在する姿勢で第1方向Xと直交する水平な第2方向Yへ進出させることにより所定の基板載置位置へ移動させ、基板Wをハンド13から基板載置位置に設けられた基板載置部へ移載すること、ハンド13において当該ハンド13に保持された基板Wの中心と垂直方向に重複する位置をハンド中心Cと規定し、ハンド13を基板載置位置からハンド中心Cと理想光軸44との距離L1に基板Wの半径φWを加えた距離だけ第2方向Yへ後退させ、当該ハンド13の第2方向Yの位置を基準位置として求めること、ハンド13を第2方向Yへ進退移動させながら光電センサ4で基板Wのエッジを探索し、探索で基板Wのエッジが検出されたときのハンド13の第2方向Yの位置を検出位置(第3検出位置)として求めること、及び、基準位置と検出位置との差に基づいて光軸43の理想光軸44からの位置ずれを検出することを含む。
【0056】
上記基板搬送ロボット1及び光軸ずれ検出方法によれば、特別な冶具を用いることなく、光軸43の理想光軸44からの位置ずれを検出することができる。
【0057】
〔変形例1〕
上記実施形態の変形例1を説明する。変形例1に係る基板搬送ロボット1Aは、ロボット本体10Aの構成が前述の実施形態に係るロボット本体10と相違し、較正治具9Aの構成も前述の実施形態に係る較正治具9と相違する。
図9は、変形例1に係る基板搬送ロボット1Aを示す平面図であり、
図10は、
図9に示す基板搬送ロボット1Aの制御系統の構成を示す図である。変形例1の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0058】
図9及び
図10に示すロボット本体10Aは、前述の実施形態に係るロボット本体10と比較して、基台11に代えて台車11Aを備える点で相違し、余の構成は実質的に同じである。台車11Aはコントローラ15によって制御される走行装置64を備え、走行装置64の動作によって台車11Aは床に敷設されたレール18上を走行する。走行装置64は、例えば、レール18上を摺動するスライダと、レール18に設けられたラックと噛合するピニオンと、ピニオンを回転駆動する電動モータとを含む(いずれも図示略)。但し、走行装置64の構成はこれに限定されない。
【0059】
このロボット本体10Aと対応付けられる較正治具9Aは、1本のピン状のターゲット体90を備える。つまり、ターゲット体90は、前述の実施形態に係る第1ターゲット体91と第2ターゲット体92とが一致したものと考えてよい。なお、ターゲット体90は、ターゲット体91,92のように移動するものでなくてよい。
【0060】
変形例1に係る基板搬送ロボット1Aで行われる光軸43の位置ずれの検出処理は前述の実施形態と実質的に同じである。変形例1に係る基板搬送ロボット1Aで行われる光軸43の傾きの検出処理は、前述の実施形態と若干異なる。
図11は、変形例1に係る基板搬送ロボット1Aによる光軸43の傾きの検出処理を説明する図である。
【0061】
光軸43の傾きの検出を開始するに際し、
図11に示すように、台車11Aの走行方向A4(即ち、レール18の延伸方向)と第1方向Xとが平行となるようにロボット本体10が位置決めされる。ロボット本体10のハンド13は、理想光軸44の延伸方向が第1方向Xであり、且つ、ハンド軸A1の延伸方向が第2方向Yである姿勢で、ターゲット体90から第2方向Yに離れた所定の待機位置にある。
【0062】
そして、コントローラ15によって、前述のステップS1からステップS7(
図5、参照)の処理が行われる。但し、ステップS3の第2探索処理の具体的な処理の内容と、ステップS5の光軸43の傾き角αを求める具体的な処理の内容とが、前述の実施形態から異なる。
【0063】
第2探索処理(ステップS4)において、
図11に示すように、コントローラ15は走行装置64に台車11Aを所定の走行距離Δd’だけ第1方向Xへ移動させてから、ロボット本体10に第1探索処理と同じターゲット体90を探索させる。
【0064】
また、光軸43の傾き角αを求める処理(ステップS6)において、コントローラ15は、ターゲット体91,92の離間距離Δdに代えて走行距離Δd’を用いる。
【0065】
以上に説明した通り、本変形例に係る基板搬送ロボット1Aは、基板Wを保持するハンド13、ハンド13を変位させるアーム12、及び、ハンド13の先端部に設けられた透過型光電センサ4を有するロボット本体10Aと、ターゲット体90と、コントローラ15とを備える。ハンド13には、理想光軸44が規定されている。このコントローラ15は、ロボット制御部151及び光軸傾き検出部153を含む。ロボット制御部151は、前述の実施形態と同様に、基準旋回位置を取得し、第1探索を行い、第2探索を行うように、ロボット本体10を動作させる。但し、第1旋回位置及び第2旋回位置がいずれも基準旋回位置であり、ロボット制御部151は、第1探索のあとでハンド13を第1方向Xへシフトさせてから第2探索を行うように、ロボット本体10を動作させる。
【0066】
また、本変形例に係る基板搬送ロボット1Aによる基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法は、前述の実施形態と同様に、基準旋回位置を取得すること、一連の第1探索処理を行うこと、一連の第2探索処理を行うこと、及び、光軸43の理想光軸44からの傾きを検出することを含む。但し、第1旋回位置及び第2旋回位置がいずれも基準旋回位置であり、第1探索処理中のハンド13の軌跡と第2探索処理中のハンド13の軌跡とが第1方向Yに離間している。
【0067】
〔変形例2〕
上記実施形態の変形例2を説明する。
図12は、変形例2に係る基板搬送ロボット1Bの平面図である。変形例2の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0068】
図12に示すように、変形例2に係る基板搬送ロボット1Bでは、ロボット本体10の構成は前述の実施形態に係るロボット本体10と同一であり、光軸43の傾きの検出に使用する較正治具9Aの構成が前述の実施形態に係る較正治具9と相違する。変形例2に係る基板搬送ロボット1Bの較正治具9Aは、変形例1で使用した較正治具9Aと実質的に同一の構成を有する。
【0069】
変形例2に係る基板搬送ロボット1Bで行われる光軸43の位置ずれの検出処理は前述の実施形態と実質的に同じである。変形例2に係る基板搬送ロボット1Bで行われる光軸43の傾きの検出処理は、前述の実施形態と若干異なる。
図13は、変形例2に係る基板搬送ロボット1Bによる光軸43の傾きの検出処理を説明する図である。
【0070】
コントローラ15による光軸43の傾きの検出処理では、前述のステップS1からステップS7(
図5、参照)の処理が行われる。但し、ステップS2の第1探索処理の具体的な処理の内容と、ステップS4の第2探索処理の具体的な処理の内容と、ステップS6の光軸43の傾き角αを求める具体的な処理の内容とが、前述の実施形態から異なる。
【0071】
図13に示すように、ハンド13の旋回軸Rとそれと平行に延びるターゲット体90とを含む垂直な平面を基準垂直面A3と規定する。そして、ハンド軸A1が基準垂直面A3内に存在する(即ち、平面視においてハンド軸A1と基準垂直面A3とが重複する)ハンド13の位置を基準旋回位置とする。基準旋回位置にあるハンド13では、理想光軸44は基準垂直面A3と直交する。
【0072】
第1探索処理(ステップS2)において、コントローラ15は、先ず、アーム12を旋回軸Rを中心として基準旋回位置から微小角度(-β)だけ旋回させる(
図14、参照)。このようにハンド13を基準垂直面A3と理想光軸44とが交わる第1旋回位置(-β)としたうえで、アーム12を伸縮させることによりハンド13を旋回軸Rを中心とする放射方向へ移動させながら、光電センサ4でターゲット体90の探索を行う。なお、ハンド13が第1検出位置にあるとき、ターゲット体90から旋回軸Rまでの距離、旋回位置、及び、旋回軸Rから理想光軸44までの距離を用いて、平面視におけるハンド軸A1とターゲット体90との距離d5を求めることができる。
【0073】
第2探索処理(ステップS4)において、コントローラ15は、先ず、アーム12を所定の微小角度(+2β)だけ旋回軸Rを中心として旋回させる(
図15、参照)。このようにして、ハンド13を第1旋回位置(-β)と基準垂直面A3に対して面対称な第2旋回位置(+β)としたうえで、アーム12を伸縮させることによりハンド13を旋回軸Rを中心とする放射方向へ移動させながら、光電センサ4でターゲット体90の探索を行う。なお、ハンド13が第2検出位置にあるとき、ターゲット体90から旋回軸Rまでの距離、旋回位置、及び、旋回軸Rから理想光軸44までの距離を用いて、平面視におけるハンド軸A1とターゲット体90との距離d6を求めることができる。距離d5と距離d6とは理想的には同一となる。
【0074】
光軸43の傾き角αを求める処理(ステップS6)において、コントローラ15は、距離d5及び距離d6の和と、第1検出位置と第2検出位置との差とに基づいて、光軸43の理想光軸44からの傾き角αを求める。
【0075】
以上に説明した通り、本変形例に係る基板搬送ロボット1Bは、基板Wを保持するハンド13、ハンド13を変位させるアーム12、及び、ハンド13の先端部に設けられた透過型光電センサ4を有するロボット本体10と、ターゲット体90と、コントローラ15とを備える。コントローラ15は、ロボット制御部151と、光軸傾き検出部153とを含む。ロボット制御部151は、前述の実施形態と同様に、基準旋回位置を取得し、第1探索を行い、第2探索を行うように、ロボット本体10を動作させる。但し、第1旋回位置が基準旋回位置から旋回方向の一方へ所定角度だけ旋回させた位置であり、第2旋回位置が基準旋回位置から旋回方向の他方へ所定角度だけ旋回させた位置である。
【0076】
また、本変形例に係る基板搬送ロボット1Bによる基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法は、前述の実施形態と同様に、基準旋回位置を取得すること、一連の第1探索処理を行うこと、一連の第2探索処理を行うこと、及び、光軸43の理想光軸44からの傾きを検出することを含む。但し、第1旋回位置が基準旋回位置から旋回方向の一方へ所定角度だけ旋回させた位置であり、第2旋回位置が基準旋回位置から旋回方向の他方へ所定角度だけ旋回させた位置である。
【0077】
〔変形例3〕
上記実施形態の変形例3を説明する。上記の実施形態に係る基板搬送ロボット1では、予め記憶された又は教示された基準旋回位置が利用されるが、基準旋回位置が基板搬送ロボット1に自動教示されてもよい。そこで、本変形例に係る基板搬送ロボット1Cでは、基準旋回位置を位置決めするための位置決め用冶具としての機能を併せ備えた較正治具9Cを用いて、基準旋回位置が自動教示される。変形例3の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0078】
図16は、較正治具9Cの構成を示す側面図である。
図16に示す較正治具9Cは、上下の支持板98u,98bと、上支持板98uに垂設されたピン状のターゲット体90と、第1及び第2の物体検出センサ95,96とを含む。上下の支持板98u,98bの間は、図示されない支柱で結合されている。
【0079】
第1及び第2の物体検出センサ95,96は、上支持板98uと下支持板98bとの間に進入した物体を検出する非接触式のセンサである。第1及び第2の物体検出センサ95,96はコントローラ15と接続されており、これらの物体検出センサ95,96で物体が検出されると、その検出信号がコントローラ15へ送信される。第1及び第2の物体検出センサ95,96は、例えば、回帰反射型の光電センサであってよい。この場合、第1及び第2の物体検出センサ95,96として投受光器が上支持板98uに設けられ、投受光器から出射した光を反射するリフレクタが下支持板98bに設けられる。
【0080】
第1物体検出センサ95の第1センサ軸95cと第2物体検出センサ96の第2センサ軸96cとの間にターゲット体90が配置されている。平面視において、第1物体検出センサ95の第1センサ軸95c、ターゲット体90、及び第2物体検出センサ96の第2センサ軸96cが1本の直線A6上に位置する(
図18、参照)。第1物体検出センサ95の第1センサ軸95cとターゲット体90との距離と、第2物体検出センサ96の第2センサ軸96cとターゲット体90との距離とは等しい。また、第1物体検出センサ95の第1センサ軸95cと第2物体検出センサ96の第2センサ軸96cの離間距離はハンド13のハンド軸A1と直交する方向の寸法(つまり、ハンド13の幅方向の寸法)より若干大きい。
【0081】
続いて、上記構成の較正治具9Cを用いて、基板搬送ロボット1Cに基準旋回位置を自動教示する方法について説明する。なお、基準旋回位置の自動教示処理は、主にコントローラ15の基準旋回位置取得部156によって行われる。
図17は、変形例3に係る基板搬送ロボット1Cの基準旋回位置の自動教示処理のフローチャートである。
図18~20は、変形例3に係る基板搬送ロボット1Cによる基準旋回位置の自動教示処理を説明する図である。
【0082】
先ず、コントローラ15は、
図18に示すように、第1物体検出センサ95の第1センサ軸95cと第2物体検出センサ96の第2センサ軸96cとの間にハンド13の先端部を進入させる(ステップS31)。ここで、説明の便宜を図って、ハンド13の2股に分かれた先端部の一方を第1先端部と称し、他方を第2先端部と称する。ハンド13には、第1先端部と第2先端部とを繋ぐように理想光軸44が規定され、ハンド13の基板載置面と平行な面内において理想光軸44と直交するハンド軸A1とが規定されている。
【0083】
次に、コントローラ15は、
図19に示すように、第1物体検出センサ95でハンド13の第1先端部が検出されるまでハンド13が移動するように、ロボット本体10を動作させる(ステップS32)。コントローラ15は、第1物体検出センサ95でハンド13の第1先端部が検出されたときの第1先端部の平面座標を、第1センサ座標として求め、それを記憶する(ステップS33)。なお、コントローラ15は、ハンド13の位置と、既知のハンド13の形状とから、ロボット座標系におけるハンド13の第1先端部の平面座標を求めることができる。
【0084】
続いて、コントローラ15は、
図20に示すように、第2物体検出センサ96でハンド13の第2先端部が検出されるまでハンド13が移動するように、ロボット本体10を動作させる(ステップS34)。コントローラ15は、第2物体検出センサ96でハンド13の第2先端部が検出されたときの第2先端部の平面座標を、第2センサ座標として求め、それを記憶する(ステップS35)。コントローラ15は、ハンド13の位置と、既知のハンド13の形状とから、ロボット座標系におけるハンド13の第2先端部の平面座標を求めることができる。
【0085】
コントローラ15は、第1センサ座標と第2センサ座標との中間位置をターゲット座標として求める(ステップS36)。ターゲット座標と旋回軸Rの平面座標を結ぶ直線を含む垂直面は、基準垂直面A3と規定される。コントローラ15は、ハンド軸A1が基準垂直面A3内にある位置までハンド13が旋回するように、ロボット本体10を動作させる(ステップS37)。そして、コントローラ15は、ハンド軸A1が基準垂直面A3内にあるときのハンド13の旋回位置を基準旋回位置として取得する(ステップS38)。
【0086】
上記のように、基板搬送ロボット1Cに基準旋回位置が教示されたあと、前述の実施形態(又は、変形例1,2)の通り、光軸ずれ検出処理が行われる。この光軸ずれ検出処理では、較正治具9Cの第1物体検出センサ95及び第2物体検出センサ96はオフとされる。
【0087】
以上に説明した通り、本変形例に係る基板保持ハンドの光軸ずれ検出方法において、基準旋回位置を取得することが、第1センサ軸95cと第2センサ軸96cとの間にハンド13の第1先端部及び第2先端部を進入させること、第1先端部が第1物体検出センサ95で検出されるまでハンド13を移動させて、第1先端部が第1物体検出センサ95で検出されたときの第1先端部の平面座標を第1センサ座標として求めること、第2先端部が第2物体検出センサ96で検出されるまでハンドを移動させて、第2先端部が第2物体検出センサで検出されたときの第2先端部の平面座標を第2センサ座標として求めること、第1センサ座標と第2センサ座標の中間座標と旋回軸Rの平面座標とを結ぶ直線とハンド軸A1とが同一の垂直面A3内に入るまでハンド13を移動させること、及び、ハンド13の旋回位置を基準旋回位置として取得すること、を含む。
【0088】
同様に、本変形例に係る基板搬送ロボット1Cは、基板Wを保持するハンド13、ハンド13を変位させるアーム12、及び、ハンド13の先端部に設けられた透過型光電センサ4を有するロボット本体10と、較正治具9Cと、コントローラ15とを備える。較正治具9Cは、第1物体検出センサ95及び第2物体検出センサ96を有し、第1物体検出センサ95の第1センサ軸95cと、ターゲット体90(第1ターゲット体91又は第2ターゲット体92)と、第2物体検出センサ96の第2センサ軸96cとが、平面視において同一直線上にこの順番で等間隔に並んでいる。コントローラ15は、ロボット制御部151と基準旋回位置取得部156とを含む。ロボット制御部151は、第1センサ軸95cと第2センサ軸96cとの間にハンド13の第1先端部及び第2先端部を進入させ、第1先端部が第1物体検出センサ95で検出されるまでハンド13を移動させ、第2先端部が第2物体検出センサ96で検出されるまでハンド13を移動させ、第1ターゲット体又は第2ターゲット体の平面座標であるターゲット座標と旋回軸Rの平面座標とを結ぶ直線とハンド軸A1とが同一の基準垂直面A3内に入るまでハンド13を移動させるように、ロボット本体10を動作させる。基準旋回位置取得部156は、ハンド13の第1先端部が第1物体検出センサ95で検出されたときの第1先端部の平面座標を第1センサ座標として求め、ハンド13の第2先端部が第2物体検出センサで検出されたときの第2先端部の平面座標を第2センサ座標として求め、第1センサ座標と第2センサ座標の中間座標をターゲット座標として求め、ハンド軸A1が基準垂直面A3内にあるときのハンド13の旋回位置を基準旋回位置として取得する。
【0089】
以上に本発明の好適な実施の形態(及び変形例)を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。
【符号の説明】
【0090】
1,1A,1B,1C :基板搬送ロボット
4 :光電センサ
9,9A,9C :較正治具
10 :ロボット本体
11 :基台
11A :台車
12 :アーム
13 :ハンド(基板保持ハンド)
15 :コントローラ
18 :レール
21 :第1リンク
22 :第2リンク
23 :昇降軸
31 :ベース部
32 :ブレード
33 :支持パッド
34 :プッシャ
41 :投光器
42 :受光器
43 :光軸
44 :理想光軸
61 :昇降装置
62 :旋回装置
63 :並進装置
64 :走行装置
90,91,92 :ターゲット体
93,94 :ターゲット移動装置
95,96 :物体検出センサ
98u,98b :支持板
151 :ロボット制御部
152 :治具制御部
153 :光軸傾き検出部
154 :光軸位置ずれ検出部
155 :光軸ずれ記憶部
156 :基準旋回位置取得部