(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】冷却装置および冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 19/00 20060101AFI20220331BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20220331BHJP
F25D 21/08 20060101ALI20220331BHJP
F25B 47/02 20060101ALI20220331BHJP
F28D 1/047 20060101ALI20220331BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
F25D19/00 522B
F25B39/02 F
F25D21/08 D
F25B47/02 E
F28D1/047 B
F28F1/32 W
(21)【出願番号】P 2018104363
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(74)【代理人】
【識別番号】100194467
【氏名又は名称】杉浦 健文
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄太
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-002653(JP,A)
【文献】特開2000-337751(JP,A)
【文献】特開2012-112578(JP,A)
【文献】特開平10-197101(JP,A)
【文献】特開2014-202447(JP,A)
【文献】実公昭48-009721(JP,Y1)
【文献】特開昭59-007868(JP,A)
【文献】特開昭62-280567(JP,A)
【文献】実開昭51-035760(JP,U)
【文献】実開昭61-071884(JP,U)
【文献】国際公開第2016/189686(WO,A1)
【文献】特開昭60-191169(JP,A)
【文献】特開昭61-272594(JP,A)
【文献】米国特許第04549405(US,A)
【文献】米国特許第05157941(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 19/00
F25D 21/08
F25B 39/02
F28D 1/047
F28F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトと、そのダクトの内部に配置される熱交換器とを備え、前記ダクトに一端側から導入されたエアーが前記熱交換器をその高さ方向に沿って通過することにより冷却されて前記ダクトの他端側から放出されるようにした冷却装置であって、
前記熱交換器は、幅方向に並列状に配置される多数のプレートフィンと、前記多数のプレートフィンを貫通するように蛇行状に配置される冷媒管とを備え、前記冷媒管における前記プレートフィンに対し貫通する部分である各貫通管部が、前後方向および高さ方向に並んで配置されるとともに、高さ方向に並ぶ各貫通管部が直線上に配置される一方、
前記熱交換器の高さ方向が前記ダクトの軸心方向に対し前方に傾斜するように配置され
、
前記熱交換器の多数のプレートフィンは、高さ方向に複数段積み重ねるように配置され、
前記多数のプレートフィンのうち、下側に配置される下側プレートフィンが前方に延長するように形成されて、その前方延長部の前端が、前記ダクトにおける前記熱交換器の前面に対向する壁部に対して近傍にまたは接触状態に配置されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記熱交換器の後部上側と、前記ダクトにおける前記熱交換器の後面に対向する壁部との間にエアー抜けスペースが設けられている請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記多数のプレートフィンのうち、上側に配置される上側プレートフィンが後方に延長するように形成されて、その後方延長部の後端が、前記ダクトにおける前記熱交換器の後面に対向する壁部に対して近傍にまたは接触状態に配置されている請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記上側プレートフィンの後方延長部に、前記冷媒管の前記貫通管部が配置されている請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記下側プレートフィンの前方延長部に、前記冷媒管の前記貫通管部が配置されている請求項
1~4のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記熱交換器の前面側に除霜用ヒータ管が設置されている請求項
1~5のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記ダクトの軸心方向に対する前記熱交換器の高さ方向の傾き角度を「θ」、前記貫通管部の高さ方向のピッチを「Tp」、前記冷媒管の直径を「Td」としたとき、
Td≧Tp・sinθ≧Td/3の関係が成立するように構成されている請求項1~
6のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記熱交換器の後面下側が閉塞部材によって閉塞されている
請求項1~
7のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の冷却装置を備えることを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダクト内に配置されたエバポレータ等の熱交換器によってダクト内を通過するエアーを冷却するようにした冷却装置および冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように冷凍室が下部に設けられた一般的な冷蔵庫においては、冷蔵庫100の後部下側に上下方向に延びるダクト101が設置されるとともに、そのダクト101内に熱交換器としてのエバポレータ110が配置されている。ダクト101の上方には送風ファン102が配置されており、送風ファン102の駆動によって、冷凍室内等のエアーがダクト101の下方から吸い込まれてエバポレータ110を通って冷却されて、ダクト101の上方から冷凍室/冷蔵室内に導入されるように構成されている。
【0003】
図9に示すように一般的な冷蔵庫用のエバポレータ110は、多数のプレートフィン111が幅方向(左右方向)に並列状に配置されるとともに、これらの多数のプレートフィン111を貫通するように冷媒管112が蛇行状に配置されている。このエバポレータ110において、冷媒管112のうち、両側端部の曲成部の除く中間の直管部は、プレートフィン111に対し貫通しており、その貫通管部(直管部)113は、前後方向(
図9の左右方向)および高さ方向(
図9の上下方向)に沿ってそれぞれ直線上に並んで配置されている。
【0004】
このエバポレータ110がダクト101内に配置されて、冷蔵庫用の冷却装置が構成されている。この冷却装置においては、ダクト101の下側から取り込まれたエアーAがエバポレータ110をその下側から上側に向けて通過することによって、冷媒管112内の冷媒との間で熱交換されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記
図9に示すような従来の冷却装置においては、冷媒管112の貫通管部113が高さ方向であるエアーAの流れ方向に沿って直線上に並んで配置されているため、エアーAの流れ方向に対し、下流側に位置する貫通管部113と、上流側に位置する貫通管部113とが重なり合うように配置される。このため後述するコンピュータシュミレーションによる解析結果からも明らかなように、上流側の貫通管部113によってエアーAが遮られて、下流側の貫通管部113にはエアーAが十分に当たらず、熱交換効率が低下して、良好な冷却性能が得られないという課題があった。
【0007】
一方、上記特許文献1に示す冷蔵庫用のエバポレータは、いわゆるドッグボーン形式と称されるものであり、冷媒管の各貫通管部のうち、前後に隣合う貫通管部が上下方向に位置をずらせるように配置されて千鳥状に配置されている。このエバポレータにおいては、エアーAの流れを分散させるように制御することができ、熱交換効率の向上を期待することができる。
【0008】
しかしながらこのエバポレータにおいても、冷媒管の各貫通管部は、高さ方向に直線上に配置されているため、上記と同様、上流側の貫通管部によってエアーが遮られてしまい、下流側の貫通管部にエアーが十分に当たらず、未だ十分な冷却性能が得られない等、改善の余地は残されているという課題があった。
【0009】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、熱交換効率を向上できて、良好な冷却性能を得ることができる冷却装置および冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0011】
[1]ダクトと、そのダクトの内部に配置される熱交換器とを備え、前記ダクトに一端側から導入されたエアーが前記熱交換器をその高さ方向に沿って通過することにより冷却されて前記ダクトの他端側から放出されるようにした冷却装置であって、
前記熱交換器は、幅方向に並列状に配置される多数のプレートフィンと、前記多数のプレートフィンを貫通するように蛇行状に配置される冷媒管とを備え、前記冷媒管における前記プレートフィンに対し貫通する部分である各貫通管部が、前後方向および高さ方向に並んで配置されるとともに、高さ方向に並ぶ各貫通管部が直線上に配置される一方、
前記熱交換器の高さ方向が前記ダクトの軸心方向に対し前方に傾斜するように配置されていることを特徴とする冷却装置。
【0012】
[2]前記熱交換器の後部上側と、前記ダクトにおける前記熱交換器の後面に対向する壁部との間にエアー抜けスペースが設けられている前項1に記載の冷却装置。
【0013】
[3]前記熱交換器の多数のプレートフィンは、高さ方向に複数段積み重ねるように配置され、
前記多数のプレートフィンのうち、上側に配置される上側プレートフィンが後方に延長するように形成されて、その後方延長部の後端が、前記ダクトにおける前記熱交換器の後面に対向する壁部に対して近傍にまたは接触状態に配置されている前項1に記載の冷却装置。
【0014】
[4]前記上側プレートフィンの後方延長部に、前記冷媒管の前記貫通管部が配置されている前項3に記載の冷却装置。
【0015】
[5]前記熱交換器の前部下側と、前記ダクトにおける前記熱交換器の前面に対向する壁部との間にエアー入りスペースが設けられている前項1~4のいずれか1項に記載の冷却装置。
【0016】
[6]前記熱交換器の多数のプレートフィンは、高さ方向に複数段積み重ねるように配置され、
前記多数のプレートフィンのうち、下側に配置される下側プレートフィンが前方に延長するように形成されて、その前方延長部の前端が、前記ダクトにおける前記熱交換器の前面に対向する壁部に対して近傍にまたは接触状態に配置されている前項1~4のいずれか1項に記載の冷却装置。
【0017】
[7]前記下側プレートフィンの前方延長部に、前記冷媒管の前記貫通管部が配置されている前項6に記載の冷却装置。
【0018】
[8]前記熱交換器の前面側に除霜用ヒータ管が設置されている前項5に記載の冷却装置。
【0019】
[9]前記ダクトの軸心方向に対する前記熱交換器の高さ方向の傾き角度を「θ」、前記貫通管部の高さ方向のピッチを「Tp」、前記冷媒管の直径を「Td」としたとき、
Td≧Tp・sinθ≧Td/3の関係が成立するように構成されている前項1~8のいずれか1項に記載の冷却装置。
【0020】
[10]前記熱交換器の後面下側が閉塞部材によって閉塞されている1~9のいずれか1項に記載の冷却装置。
【0021】
[11]前項1~10のいずれか1項に記載の冷却装置を備えることを特徴とする冷蔵庫。
【発明の効果】
【0022】
発明[1]の冷却装置によれば、熱交換器をダクトにその軸心方向に対し前方に傾斜させるように配置しているため、熱交換器の高さ方向に並ぶ貫通管部が、ダクトの軸心を基準にして前後に位置ずれして配置される。このため上流側の貫通管部のみならず、下流側の貫通管部にもエアーが十分に当たるようになり、熱交換効率および冷却性能を向上させることができる。
【0023】
発明[2]の冷却装置によれば、熱交換器の後部上側にエアー抜けスペースを設けているため、熱交換器内を通過するエアーがエアー抜けスペースにも抜け出すようになり、熱交換器内にエアーが不用意に滞留するのを防止でき、熱交換効率および冷却性能を一層向上させることができる。
【0024】
発明[3]の冷却装置によれば、上側プレートフィンを後方に延長させてその後方延長部をダクトの対向壁部に近接させるようにしているため、プレートフィンにおけるエアーとの接触面積を増大できて、熱交換効率および冷却性能をより向上させることができる。
【0025】
発明[4]の冷却装置によれば、上側プレートフィンの後方延長部に貫通管部を設けているため、プレートフィンにおけるエアーとの接触面積を増大しつつ、エアーとの間で効果的に熱交換でき、熱交換効率および冷却性能をより一層向上させることができる。
【0026】
発明[5]の冷却装置によれば、熱交換器の前部下側にエアー入りスペースを設けているため、エアー入りスペースを介して熱交換器の前面からもエアーを取り込むことができ、熱交換器内を全体的にバランス良くエアーが通過するようになり、熱交換効率および冷却性能を一層向上させることができる。
【0027】
発明[6]の冷却装置によれば、下側プレートフィンを前方に延長させてその前方延長部をダクトの対向壁部に近接させるようにしているため、プレートフィンにおけるエアーとの接触面積を増大できて、熱交換効率および冷却性能をより向上させることができる。
【0028】
発明[7]の冷却装置によれば、下側プレートフィンの前方延長部に貫通管部を設けているため、プレートフィンにおけるエアーとの接触面積を増大しつつ、エアーとの間で効果的に熱交換でき、熱交換効率および冷却性能をより一層向上させることができる。
【0029】
発明[8]の冷却装置によれば、エアーが取り込まれる熱交換器の前面側に除霜用ヒータ管が設置されているため、ヒータ管の熱を熱交換器内の全域に効率良くスムーズに伝達できて、短時間で除霜することができる。
【0030】
発明[9]の冷却装置によれば、熱交換器のダクトに対する傾き角度を特定値に設定しているため、熱交換効率および冷却性能をより確実に向上させることができる。
【0031】
発明[10]の冷却装置によれば、熱交換器の後面下側を閉塞部材によって閉塞するようにしているため、熱交換器内に取り込まれたエアーが、後側に直ぐに抜け出すような不具合を防止でき、エアーを熱交換器内全域に偏りなく通過させることができ、熱交換効率および冷却性能をより一層確実に向上させることができる。
【0032】
発明[11]の冷蔵庫によれば、上記本発明の冷却装置備えているため上記と同様に、熱交換効率および冷却性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1はこの発明の第1実施形態である冷蔵庫用の冷却装置を示す側面断面図である。
【
図2】
図2は第1実施形態の冷却装置における熱交換器を示す斜視図である。
【
図3】
図3は第1実施形態の冷却装置におけるエアーの流れの解析結果を説明するための側面断面図である。
【
図4】
図4はこの発明の第2実施形態である冷蔵庫用の冷却装置を示す側面断面図である。
【
図5】
図5は第2実施形態の冷却装置における熱交換器を示す斜視図である。
【
図6】
図6はこの発明の第3実施形態である冷蔵庫用の冷却装置を示す側面断面図である。
【
図7】
図7は第3実施形態の冷却装置における熱交換器を示す斜視図である。
【
図8】
図8は従来の冷蔵庫を模式的に示すブロック図である。
【
図9】
図9は従来の冷蔵庫用の冷却装置を示す側面断面図である。
【
図10】
図10は従来の冷却装置におけるエアーの流れの解析結果を説明するための側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態である冷蔵庫用の冷却装置を示す側面断面図、
図2は第1実施形態の冷却装置における熱交換器としてのエバポレータ5を示す斜視図である。
【0035】
両図に示すように、この第1実施形態の冷却装置は、冷蔵庫内に組み付けられ、かつ軸心方向H1を上下方向(垂直方向)に一致させるように配置されるダクト1と、そのダクト1内に組み付けられる熱交換器としてのエバポレータ5とを基本的な構成要素として備えている。
【0036】
ここで、本発明において、ダクト1の軸心方向H1とは、ダクト中心軸に平行な方向であり、ダクト1の延びる方向やダクト1の長さ方向に相当するものである。
【0037】
エバポレータ5は、多数のプレートフィン51を備えている。各プレートフィン51は、矩形状(長方形状)に形成されており、プレートフィン51はその長さ方向を前後方向にして、幅方向(左右方向)に等間隔おきに多数並列に配置され、かつ高さ方向に複数段積み重ねるように配置されている。
【0038】
さらに冷媒管55が、各プレートフィン51の前後2箇所を貫通するようにして、多数のプレート51に蛇行状に取り付けられている。
【0039】
このエバポレータ5においては、冷媒管55の両側端部の曲成部を除く、中間の直管部がフィン群に対し貫通しており、その貫通管部(直管部)56が前後方向および高さ方向にそれぞれ並んで配置されている。さらに前後方向に並ぶ貫通管部56は、前後方向に沿って直線上に配置されるとともに、高さ方向に並ぶ貫通管部56は、高さ方向に沿って直線上に配置されている。
【0040】
なお本実施形態において、エバポレータ5の高さ方向、幅方向、前後方向は、エバポレータ5を基準に設定された方向であり、重力を基準とする方向とは無関係である。例えばエバポレータ5の高さ方向が、重力を基準とする上下方向(垂直方向)に一致しても良いが、一致しなくても良い。極端な場合には、エバポレータ5の前後方向が重力を基準とする垂直方向(上下方向)に一致することもあり、その場合にはエバポレータ5の高さ方向および幅方向は、重力を基準とする水平方向に一致することになる。
【0041】
以上の構成のエバポレータ5がダクト1内に収容されるように組み付けられる。この場合、エバポレータ5が前傾姿勢に配置される。具体的には、エバポレータ5をその高さ方向H5をダクト1の軸心方向H1に対し前方に傾斜するように配置する。本実施形態において、ダクト軸心方向H1に対するエバポレータ5の高さ方向H5の傾き角度θを9°に設定している。
【0042】
なお本実施形態においては、
図1の紙面に向かって「左側」を前方、「右側」を後方としているが、エバポレータ5は前後に対称形状となっているため、本発明において前後方向は入れ替えることが可能であり、本発明においては、
図1の紙面に向かって「右側」を前方とし、「左側」を後方としても良い。このため例えば本実施形態においては
図1の紙面に向かって、エバポレータ5の上端側を下端側に対し左側(反時計方向)に傾けた状態を前傾姿勢と称しているが、それだけに限られず、本発明においては、
図1の紙面に向かって、エバポレータ5の上端側を下端側に対し右側(時計方向)に傾けた状態も前傾姿勢としても良い。つまり本件発明においては、エバポレータ5の高さ方向H5が、ダクト軸心方向H1に対し前後方向のいずれかの方向に傾いていれば、前方に傾斜した状態(前傾姿勢)となる。
【0043】
本実施形態では、軸心方向H1が垂直に配置されるダクト1に対し、エバポレータ5を前傾姿勢に配置しているため、エバポレータ5の後部上側とダクト1の後壁3との間にエアー抜けスペース35が形成されている。このエアー抜けスペース35は上方に向かうに従って次第に前後方向の寸法が広くなるように構成されている。
【0044】
さらにエバポレータ5の前部下側とダクト1の前壁2との間にエアー入りスペース25が形成されている。このエアー入りスペース25は上方に向かうに従って次第に前後方向の寸法が狭くなるように構成されている。
【0045】
ここで本実施形態においては、ダクト1の前壁2によって、ダクト1におけるエバポレータ(熱交換器)5の前面に対向する壁部が構成されるとともに、ダクト1の後壁3によって、ダクト1におけるエバポレータ(熱交換器)5の後面に対向する壁部が構成されている。
【0046】
また本実施形態において、ダクト1の後壁3におけるエバポレータ5の後面下側に対応する領域は、前方(内方)に突出するように形成されて、後壁内方突出領域31として形成されている。この後壁内方突出領域31の前面は、前傾姿勢のエバポレータ5の後面下側に対応して傾斜面に形成されており、その傾斜面によってエバポレータ5の後面下側が閉塞されるように構成されている。ここで本実施形態においては、後壁内方突出領域31によって閉塞部材が構成されるものである。なお本実施形態においては、ダクト1の後壁3の一部である後壁内容突出領域31によって、閉塞部材を構成しているが、それだけに限られず、本発明においては、ダクト1とは別の独立部材によって閉塞部材を構成するようにしても良い。
【0047】
さらに本実施形態において、ダクト1の前壁2におけるエバポレータ5の前面上側に対応する領域は、後方(内方)に突出するように形成されて、前壁内方突出領域21として形成されている。この前壁内方突出領域21の後面は、前傾姿勢のエバポレータ5の前面上側に対応して傾斜面に形成されており、その傾斜面によってエバポレータ5の前面上側が閉塞されるように構成されている。ここで本実施形態においては、前壁内方突出領域21によって閉塞部材が構成されるものである。
【0048】
なおエバポレータ5の前面における上記エアー入りスペース25に対応する位置には、幅方向に沿って連続し、かつ高さ方向に所定の間隔おきに除霜用ヒータ管(ヒータパイプ)6が設置されている。
【0049】
以上の構成の冷却装置は既述した通り、冷蔵庫の後部下側に組み込まれており、ダクト1の上方には送風ファン(図示省略)が配置されている。
【0050】
この冷却装置が組み込まれた冷蔵庫において、送風ファンが回転駆動すると、冷凍室内のエアーAがダクト1内にその下側から導入されてダクト1内を通過し、その際に、エアーAがエバポレータ5内を略高さ方向に沿って下側から上側に向けて通過する。そしてエアーAがエバポレータ5を通過する際に、エバポレータ5内を循環する冷媒との間で熱交換されることにより冷却され、その冷却されたエアーAがダクト1の上側から放出されて冷蔵庫内の冷凍室/冷蔵室内に導入されるようになっている。
【0051】
以上のように構成された本実施形態の冷却装置によれば、エバポレータ5の高さ方向をダクト1の軸心方向H1に対し前方に傾斜するように配置しているため、エバポレータ5の高さ方向H5に沿って直線上に配置される各列の各貫通管部56において、高さ方向H5に隣合う2つの貫通管部5のうち下流側の貫通管部56は上流側の貫通管部56に対し、ダクト1の軸心(垂直軸)を基準にして前方に少し位置ずれして配置される。このため下流側の貫通管部56に対し、上流側の貫通管部56によってエアーAが遮られてしまうのを抑制でき、下流側の貫通管部56にも十分にエアーAが当たるようになる。従って貫通管部56の位置にかかわらず、全ての貫通管部56において偏りなく十分にエアーAが当たるため、全体として十分に熱交換できて、冷却性能を向上させることができる。
【0052】
参考までに、
図1に示す本第1実施形態の冷却装置と、上記
図9に示す従来の冷却装置とに対し、コンピュータシミュレーションによりエアーの流れをそれぞれ解析した。
図3は第1実施形態の冷却装置におけるエアーの流れの解析結果を示し、
図10は従来の冷却装置の解析結果を示す。両図に示す解析結果を比較すると、
図3に示す実施形態の冷却装置は、装置全域において各貫通管部56にエアーAが強く当たっているのに対し、
図10に示す従来の冷却装置は、上流側に位置する貫通管部113にのみ局部的にエアーAが当たっているのが判る。この解析結果からも明らかなように、本実施形態の冷却装置は、エバポレータ5の全域において偏りなく均等に熱交換できて、高い冷却性能を得ることができる。
【0053】
ここで本実施形態においては既述した通り、エバポレータ5における高さ方向に隣合う2つの貫通管部56を前後に位置ずれさせるものであるが、高さ方向に隣合う2つの貫通管部56のうち、下流側に位置する貫通管部56を、上流側に位置する貫通管部56に対し、管径(直径)の1/3から管径に相当する分だけ位置をずらせるのが好ましい。
【0054】
具体的には、ダクト1の軸心方向H1に対するエバポレータ5の高さ方向H5の傾き角度を「θ」とし、高さ方向に並ぶ貫通管部56の高さ方向のピッチを「Tp」とし、冷媒管5(貫通管部56)の直径(管径)を「Td」としたとき、以下の関係式を成立するように調整するのが好ましい。
【0055】
Td≧Tp・sinθ≧Td/3(Tp・sinθ=Td/3~Td)
すなわち高さ方向に隣合う貫通管部56の前後方向のずれ量(Tp・sinθ)が小さ過ぎる場合には、上流側の貫通管部56によってエアーAが遮られて、下流側の貫通管部56にエアーAが十分に当たらず、熱交換効率が低下するおそれがあり、好ましくない。一方、ずれ量(Tp・sinθ)が大き過ぎる場合には、エバポレータ5の傾きが大きくなるため、エバポレータ5による前後方向の占有スペースが大きくなり、冷蔵庫の庫内容積を減少させてしまうおそれがあり、好ましくない。従って本発明においては、上記の関係式を成立させることが好ましい。
【0056】
また本実施形態においては、エバポレータ5の後部上側と、ダクト1の後壁3との間にエアー抜けスペース35を設定しているため、エバポレータ5内を通過するエアーAがエバポレータ5の後面上側からもエアー抜けスペース35に抜け出すようになる。このためエバポレータ5内にエアーAが不用意に滞留するような不具合を確実に防止でき、熱交換効率および冷却性能を一層向上させることができる。
【0057】
さらに本実施形態においては、エバポレータ5の前部下側と、ダクト1の前壁2との間にエアー入りスペース25を設定しているため、エアー入りスペース25を介してエバポレータ5の前面からもエアーAをエバポレータ5内に導入させることができる。このためエバポレータ5の前面におけるエアーAの取込面積(前面面積)を大きくできて、エバポレータ5内を全体的にバランス良く均等にエアーAが通過するようになり、熱交換効率および冷却性能をより一層向上させることができる。
【0058】
特にエバポレータ5の前面面積を大きくできることによって、エバポレータ5内での圧力損失を低減できて、冷媒管55の貫通管部56のピッチ(パイプピッチ)や、プレートフィン51のピッチ(フィンピッチ)を小さくできる。例えばフィンピッチを小さくすることによって、フィン数を増加させることができる。従って一般的な冷蔵庫用のエバポレータ5はフィンピッチの最小が5mm程度であるが、それよりも小さくすることも可能となり、熱交換効率を向上させることができる。またパイプピッチを小さくすることによって、パイプ数(貫通管部数)を増加させることができ、この点からも、熱交換効率を向上させることができる。さらに一般的な冷蔵庫用のエバポレータ5におけるパイプ(冷媒管)はR15であるが、R10~R15でも圧力損失の問題なしに採用することができる。
【0059】
またエバポレータ5の前面面積を大きくできるため、着霜までの時間を稼ぐことができ、いわゆる着霜耐力を向上させることができる。さらに着霜耐力を向上できるため、この点からもフィンピッチをさらに小さくすることができ、熱交換効率をさらに向上させることができる。
【0060】
また本実施形態においては、ダクト1の後壁2におけるエバポレータ5の下側に対応する領域を前方(内方)に突出させて後壁内方突出領域31を形成するとともに、その後壁内方突出領域31によってエバポレータ5の後面下側を閉塞するようにしているため、エバポレータ5内に取り込まれたエアーAが、エバポレータ5の後面下側から直ぐに抜け出すような不具合を防止でき、エアーAをエバポレータ5内の全域に偏りなく通過させることができ、この点においても、熱交換効率および冷却性能をより一層確実に向上させることができる。
【0061】
また本実施形態においては、エアー入りスペース25を介してエバポレータ5の前面側からエアーAを取り込むようにしているため、除霜用のヒータ管6をエバポレータ5の前面に配置することによって、ヒータ管6から発生する熱をエバポレータ5内の全域に効率良くスムーズに伝達できて、短時間で除霜することができる。もっとも本発明においては、エバポレータ5の前面側以外の位置、例えばエバポレータ5の後面側にヒータ管6を設置するようにしても良い。
【0062】
<第2実施形態>
図4はこの発明の第2実施形態である冷蔵庫用の冷却装置を示す側面断面図、
図5は第2実施形態の冷却装置における熱交換器としてのエバポレータ5を示す斜視図である。
【0063】
両図に示すようにこの第2実施形態の冷却装置においては、エバポレータ5のプレートフィン51のうち、上側に配置されるプレートフィン(上側プレートフィン)が後方に延長されて、後方延長部53が形成されている。そしてその後方延長部53が、エバポレータ5の後部上側およびダクト1の後壁3間に形成されるスペース(
図1のエアー抜けスペース35に対応するスペース)を埋めるように配置されるとともに、後方延長部53の後端縁がダクト1の後壁3に接触するように配置されている。
【0064】
本第2実施形態の冷却装置において他の構成は、上記第1実施形態の冷却装置と実質的に同一であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0065】
またこの第2実施形態の冷却装置においても、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
その上さらにこの第2実施形態の冷却装置においては、上側プレートフィン51を後方に延長しているため、プレートフィン51におけるエアーAとの接触面積を増大させることができ、一層熱交換効率および冷却性能をより確実に向上させることができる。
【0067】
なおこの第2実施形態の冷却装置において、上側プレートフィン51の後方延長部53には、冷媒管55の貫通管部56が設けられていないが、それだけに限られず、本発明においては以下の第3実施形態に示すように後方延長部53に貫通管部56を設けるようにしても良い。
【0068】
<第3実施形態>
図6はこの発明の第3実施形態である冷蔵庫用の冷却装置を示す側面断面図、
図7は第2実施形態の冷却装置における熱交換器としてのエバポレータ5を示す斜視図である。
【0069】
両図に示すようにこの第3実施形態の冷却装置においては、エバポレータ5のプレートフィン51のうち、上側に配置されるプレートフィン(上側プレートフィン)が後方に延長されて、後方延長部53が形成されている。そしてその後方延長部53が、エバポレータ5の後部上側およびダクト1の後壁3間に形成されるスペース(
図1のエアー抜けスペース35に対応するスペース)を埋めるように配置されるとともに、後方延長部53の後端縁がダクト1の後壁3に対し、近傍にまたは接触状態に配置されている。さらにその後方延長部53にも冷媒管55が貫通配置されて、貫通管部56が設けられている。
【0070】
またエバポレータ5のプレートフィン51のうち、下側に配置されるプレートフィン(下側プレートフィン)が前方に延長されて、前方延長部52が形成されている。そしてその前方延長部52が、エバポレータ5の前部下側およびダクト1の前壁2間に形成されるスペース(
図1のエアー入りスペース25に対応するスペース)を埋めるように配置されるとともに、その前方延長部52の前端縁がダクト1の前壁2に対し、近傍にまたは接触状態に配置されている。さらにその前方延長部52にも冷媒管55が貫通配置されて、貫通管部56が設けられている。
【0071】
本第3実施形態において他の構成は、上記第1実施形態の冷却装置と実質的に同一であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0072】
またこの第3実施形態の冷却装置においても、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0073】
その上さらにこの第3実施形態の冷却装置においては、所定のプレートフィン51を前方または後方に延長させるとともに、各延長部52,53に貫通管部56を設けているため、プレートフィン51におけるエアーAとの接触面積を増大させつつ、エアーAとの間でより効果的に熱交換することができ、冷却性能をさらに向上させることができる。
【0074】
なおこの第3実施形態においては、エバポレータ5のプレートフィン51の前方延長部52および後方延長部53に、それぞれ冷媒管55の貫通管部56を設けるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、前方延長部52および後方延長部53共に貫通管部56を設けないようにしても良いし、いずれか一方のみに貫通管部56を設けるようにしても良い。
【0075】
<変形例>
なお上記各実施形態においては、ダクト1の軸心方向H1が垂直方向(上下方向)に沿って配置される冷却装置を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は、ダクト1の軸心方向H1が垂直方向以外の向きに配置される冷却装置にも適用することができる。例えばダクト1がその軸心方向H1を水平方向に沿って配置される冷却装置にも採用することができる。その場合には、エバポレータ5の高さ方向H5が水平軸(ダクト軸心方向H1)に対し前方(上方または下方)に傾斜するように配置されることとなる。
【0076】
また上記実施形態においては、本発明の冷却装置を冷蔵庫に適用する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明の冷却装置は冷蔵庫以外の冷却機器にも適用することができる。例えば本発明の冷却装置は、冷凍/冷蔵ショーケース、自動販売機、業務用冷凍冷蔵機器等にも適用することができる。
【0077】
また上記実施形態においては、熱交換器として、プレートフィンが高さ方向に分割されるタイプのエバポレータを用いる場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明は、高さ方向に連続するプレートフィンが幅方向に並列に配置されたエバポレータ、例えばドッグボーン形式のエバポレータを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明の冷却装置は、一般家庭用の冷蔵庫、冷凍/冷蔵ショーケース、自動販売機、業務用の冷凍/冷蔵機器等の冷却装置として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1:ダクト
2:前壁(熱交換器の前面に対向する壁部)
25:エアー入りスペース
3:後壁(熱交換器の後面に対向する壁部)
31:後壁内方突出領域(閉塞部材)
35:エアー抜けスペース
5:エバポレータ(熱交換器)
51:プレートフィン
52:前方延長部
53:後方延長部
55:冷媒管
56:貫通管部
6:ヒータ管
A:エアー
H1:ダクトの軸心方向
H5:エバポレータの高さ方向
Td:冷媒管の直径
Tp:冷媒管(貫通管部)の高さ方向のピッチ
θ:傾き角度