(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】積層材
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20220331BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20220331BHJP
B32B 15/088 20060101ALI20220331BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220331BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20220331BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20220331BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20220331BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20220331BHJP
【FI】
B32B15/08 P
B32B15/20
B32B15/088
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/653
H01M10/617
H01M10/6555
(21)【出願番号】P 2018131179
(22)【出願日】2018-07-11
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 克昌
(72)【発明者】
【氏名】古川 裕一
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/092923(WO,A1)
【文献】特開2004-095333(JP,A)
【文献】特開2017-088913(JP,A)
【文献】特開2016-066546(JP,A)
【文献】特開2017-220539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01L23/29
23/34-23/36
23/373-23/427
23/44
23/467-23/473
H01M10/52-10/667
50/00-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムマトリックス中にカーボン材粒子が分散した複合構造を有するアルミニウム-カーボン複合材層と、
前記複合材層の少なくとも片面側に配置された樹脂フィルム層と、を備えることを特徴とする積層材。
【請求項2】
アルミニウムマトリックス中にカーボン材粒子が分散した複合構造を有するアルミニウム-カーボン複合材層と、
前記複合材層の一方の面に接着剤層で接着された第1樹脂フィルム層と、
前記第1樹脂フィルム層の外面に接着剤層で接着された第3樹脂フィルム層と、を備えることを特徴とする積層材。
【請求項3】
アルミニウムマトリックス中にカーボン材粒子が分散した複合構造を有するアルミニウム-カーボン複合材層と、
前記複合材層の一方の面に接着剤層で接着された第1樹脂フィルム層と、
前記複合材層の他方の面に接着剤層で接着された第2樹脂フィルム層と、を備えることを特徴とする積層材。
【請求項4】
前記第1樹脂フィルム層の外面に接着剤層で接着された第3樹脂フィルム層と、
前記第2樹脂フィルム層の外面に接着剤層で接着された第4樹脂フィルム層と、をさらに備える請求項3に記載の積層材。
【請求項5】
前記接着剤層は、ウレタン系接着剤層である請求項
2~4のいずれか1項に記載の積層材。
【請求項6】
前記樹脂フィルム層は、いずれも、ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層体からなり、前記ナイロンフィルムが前記複合材層側に配置されている請求項1~
5のいずれか1項に記載の積層材。
【請求項7】
前記アルミニウム-カーボン複合材層を構成するカーボン材が、黒鉛、グラフェン、炭素繊維およびカーボンナノチューブからなる群より選ばれる1種または2種以上のカーボン材である請求項1~6のいずれか1項に記載の積層材。
【請求項8】
前記積層材は、電池用包装材、電池用冷却部材または電池用加熱部材として用いられるものである請求項1~
7のいずれか1項に記載の積層材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性、絶縁性、耐突き刺し性等に優れていて、電池用包装材、電池用冷却部材、電池用加熱部材等として好適に用いられる積層材に関する。
【0002】
なお、この明細書及び特許請求の範囲において、「アルミニウム」の語は、アルミニウム及びその合金を含む意味で用いる。
【背景技術】
【0003】
金属とカーボンの複合材料は、熱伝導性に優れていることから、放熱部品としての利用が提案されている。例えば、20~80体積%の鱗状黒鉛粉末と、銅、アルミニウムまたはそれらの合金からなる群から選択されるマトリクスとを含む金属-黒鉛複合材料であって、前記金属-黒鉛複合材料の熱伝導容易面の法線ベクトルに対して鱗状面の法線ベクトルが20°以上傾いた鱗状黒鉛粉末は、前記鱗状黒鉛粉末全体に対して12%以下であり、前記鱗状面の法線ベクトルの傾きが10°以下である鱗状黒鉛粉末は、前記鱗状黒鉛粉末全体に対して55%以上であり、前記金属-黒鉛複合材料は95%以上の相対密度を有する金属-黒鉛複合材料が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記金属-黒鉛複合材料は、熱伝導性に優れているものの、絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性等は十分ではないという問題があった。例えば、このような複合材料を、放熱機能を持たせた電池用包装材(外装材)として使用する場合には、絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性等が不十分であった。
【0006】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、熱伝導性に優れるとともに、絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性等に優れた積層材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]アルミニウム-カーボン複合材層と、
前記複合材層の少なくとも片面側に配置された樹脂フィルム層と、を備えることを特徴とする積層材。
【0009】
[2]アルミニウム-カーボン複合材層と、
前記複合材層の一方の面に接着剤層で接着された第1樹脂フィルム層と、
前記第1樹脂フィルム層の外面に接着剤層で接着された第3樹脂フィルム層と、を備えることを特徴とする積層材。
【0010】
[3]アルミニウム-カーボン複合材層と、
前記複合材層の一方の面に接着剤層で接着された第1樹脂フィルム層と、
前記複合材層の他方の面に接着剤層で接着された第2樹脂フィルム層と、を備えることを特徴とする積層材。
【0011】
[4]前記第1樹脂フィルム層の外面に接着剤層で接着された第3樹脂フィルム層と、
前記第2樹脂フィルム層の外面に接着剤層で接着された第4樹脂フィルム層と、をさらに備える前項3に記載の積層材。
【0012】
[5]前記樹脂フィルム層は、いずれも、ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層体からなり、前記ナイロンフィルムが前記複合材層側に配置されている前項1~4のいずれか1項に記載の積層材。
【0013】
[6]前記接着剤層は、ウレタン系接着剤層である前項1~5のいずれか1項に記載の積層材。
【0014】
[7]前記アルミニウム-カーボン複合材層を構成するカーボン材が、黒鉛、グラフェン、炭素繊維およびカーボンナノチューブからなる群より選ばれる1種または2種以上のカーボン材である前項1~6のいずれか1項に記載の積層材。
【0015】
[8]前記アルミニウム-カーボン複合材層は、アルミニウムマトリックス中にカーボン材粒子が分散した複合構造を有する前項1~7のいずれか1項に記載の積層材。
【0016】
[9]前記積層材は、電池用包装材、電池用冷却部材または電池用加熱部材として用いられるものである前項1~8のいずれか1項に記載の積層材。
【発明の効果】
【0017】
[1]の発明では、アルミニウム-カーボン複合材層を備えているので、高熱伝導性であると共に、該複合材層の少なくとも片面側に樹脂フィルム層が配置されているから、絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性、耐擦過性、耐水性、耐薬品性、発塵防止性に優れ、十分な曲げ強度及びバネ弾性も付与できる。
【0018】
[2]の発明では、アルミニウム-カーボン複合材層を備えているので、高熱伝導性であると共に、該複合材層の一方の面に第1樹脂フィルム層が積層されているから、この積層面側における絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性、耐擦過性、耐水性、耐薬品性、発塵防止性に優れており、また十分な曲げ強度及びバネ弾性も付与できる。更に、前記第1樹脂フィルム層の外面にさらに第3樹脂フィルム層が積層されているから、この積層面側における絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性、耐擦過性、耐水性、耐薬品性および発塵防止性をさらに向上させることができる。
【0019】
[3]の発明では、アルミニウム-カーボン複合材層を備えているので、高熱伝導性であると共に、該複合材層の一方の面に第1樹脂フィルム層および他方の面に第2樹脂フィルム層が積層されているから、積層材の両面において絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性、耐擦過性、耐水性、耐薬品性、発塵防止性に優れ、十分な曲げ強度及びバネ弾性も付与できる。
【0020】
[4]の発明では、第1樹脂フィルム層の外面にさらに第3樹脂フィルム層が積層されると共に第2樹脂フィルム層の外面にさらに第4樹脂フィルム層が積層されているから、積層材の両面において絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性、耐擦過性、耐水性、耐薬品性および発塵防止性をさらに向上させることができる。
【0021】
[5]の発明では、ナイロンフィルムを備えているから、耐突き刺し性をさらに向上させることができると共に、該ナイロンフィルムにポリエチレンテレフタレートフィルムを組み合わせているから、絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性、耐擦過性、耐水性、耐薬品性および発塵防止性にも優れ、また十分な曲げ強度及びバネ弾性も確保できる。
【0022】
[6]の発明では、接着剤層がウレタン系接着剤で形成されているから、樹脂フィルム層の樹脂種を問わず、十分な接着強度を確保できる。
【0023】
[7]の発明では、カーボン材として、黒鉛、グラフェン、炭素繊維およびカーボンナノチューブからなる群より選ばれる1種または2種以上のカーボン材が用いられているから、熱伝導性をより一層向上させることができる。例えば、冷却部材として使用した際に冷却性能をより高めることができるし、加熱部材として使用した際に加熱性能をより高めることができる。
【0024】
[8]の発明では、アルミニウム-カーボン複合材層は、アルミニウムマトリックス中にカーボン粒子が分散した複合構造であるので、熱伝導性をさらに向上させることができる。
【0025】
[9]の発明では、例えば、組電池の電池用冷却部材または電池用加熱部材として用いる場合には電池間の温度差を小さくできて電池を高性能化できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明に係る積層材の第1実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明に係る積層材の第2実施形態を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る積層材の第3実施形態を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る積層材の第4実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る積層材は、アルミニウム-カーボン複合材層と、前記複合材層の少なくとも片面側に積層された樹脂フィルム層と、を備える。
【0028】
本発明に係る積層材の第1実施形態を
図1に示す。この積層材1は、アルミニウム-カーボン複合材層2と、前記複合材層2の一方の面に第1接着剤層21で接着された第1樹脂フィルム層11と、を備えている。
【0029】
図1の積層材1では、アルミニウム-カーボン複合材層2を備えているので、高熱伝導性であると共に、該複合材層2の片面に樹脂フィルム層11が積層されているから、この積層面側において絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性、耐擦過性、耐水性、耐薬品性、発塵防止性に優れており、また十分な曲げ強度及びバネ弾性も付与できる。
【0030】
なお、
図1の積層材1の構成において、さらに前記樹脂フィルム層11の外面(上面)側の最表面に接着剤層が積層された構成および/または前記アルミニウム-カーボン複合材層2の外面(下面)側の最表面に接着剤層が積層された構成を採用してもよい。
【0031】
本発明に係る積層材の第2実施形態を
図2に示す。この積層材1は、アルミニウム-カーボン複合材層2と、前記複合材層2の一方の面に第1接着剤層21で接着された第1樹脂フィルム層11と、前記第1樹脂フィルム層11の外面(前記複合材層2側の面と反対側の表面)に第3接着剤層23で接着された第3樹脂フィルム層13とを備えている。
【0032】
図2の積層材1では、アルミニウム-カーボン複合材層2を備えているので、高熱伝導性であると共に、該複合材層の片面に樹脂フィルム層11が積層されているから、この積層面側において絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性、耐擦過性、耐水性、耐薬品性、発塵防止性に優れ、また十分な曲げ強度及びバネ弾性も付与できる。更に、前記第1樹脂フィルム層11の外面にさらに第3樹脂フィルム層13が積層されているから、この積層面側における絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性、耐擦過性、耐水性、耐薬品性および発塵防止性をさらに向上させることができる。前記第1樹脂フィルム層11および第3樹脂フィルム層13としては、同種の樹脂フィルムを使用してもよいし、異種の樹脂フィルムを使用してもよいが、異種の樹脂フィルムを使用するのが、耐突き刺し性及び耐摩耗性をより向上できる点で好ましい。前記異種の樹脂フィルムの組み合わせとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの組み合わせを例示できる(後述の実施例3、4参照)。
【0033】
なお、
図2の積層材1の構成において、さらに前記第3樹脂フィルム層13の外面(上面)側の最表面に接着剤層が積層された構成および/または前記アルミニウム-カーボン複合材層2の外面(下面)側の最表面に接着剤層が積層された構成を採用してもよい。
【0034】
上述した第1実施形態(
図1)および第2実施形態(
図2)の積層材1は、アルミニウム-カーボン複合材層2の片面側に樹脂フィルム層が積層された構成であり、例えば電池用包装材等として好適に使用できる。前記積層材1を電池用包装材として使用した場合には、積層材1が高熱伝導性であるから電池の発熱を外部に効率良く放熱することができる(電池用包装材が放熱部材としても機能する)。
【0035】
次に、本発明に係る積層材の第3実施形態を
図3に示す。この積層材1は、アルミニウム-カーボン複合材層2と、前記複合材層2の一方の面に第1接着剤層21で接着された第1樹脂フィルム層11と、前記複合材層2の他方の面に第2接着剤層22で接着された第2樹脂フィルム層12と、を備えている。
【0036】
図3の積層材1では、アルミニウム-カーボン複合材層2を備えているので、高熱伝導性であると共に、該複合材層2の一方の面に第1樹脂フィルム層11および他方の面に第2樹脂フィルム層12が積層されているから、積層材1の両面において絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性、耐擦過性、耐水性、耐薬品性、発塵防止性に優れ、十分な曲げ強度及びバネ弾性も付与できる。前記第1樹脂フィルム層11および第2樹脂フィルム層12としては、同種の樹脂フィルムを使用してもよいし、異種の樹脂フィルムを使用してもよい。
【0037】
なお、
図3の積層材1の構成において、さらに前記第1樹脂フィルム層11の外面(上面)側の最表面に接着剤層が積層された構成および/または前記第2樹脂フィルム層12の外面(下面)側の最表面に接着剤層が積層された構成を採用してもよい。
【0038】
本発明に係る積層材の第4実施形態を
図4に示す。この積層材1は、
図3の積層材の両面にさらに以下のような層が積層された構成になっている。即ち、
図3の積層材における前記第1樹脂フィルム層11の外面(前記複合材層2側の面と反対側の表面)に第3接着剤層23で第3樹脂フィルム層13が接着されると共に、前記第2樹脂フィルム層12の外面(前記複合材層2側の面と反対側の表面)に第4接着剤層24で第4樹脂フィルム層14が接着された構成である。
【0039】
図4の積層材1では、
図3の積層材での上記効果を享受した上で、更に次のような効果が得られる。即ち、第1樹脂フィルム層11の外面にさらに第3樹脂フィルム層13が積層されると共に第2樹脂フィルム層12の外面にさらに第4樹脂フィルム層14が積層されているから、積層材1の両面において絶縁性、耐突き刺し性、耐食性、耐摩耗性、耐擦過性、耐水性、耐薬品性および発塵防止性をさらに向上させることができる。前記第1樹脂フィルム層11および第3樹脂フィルム層13としては、同種の樹脂フィルムを使用してもよいし、異種の樹脂フィルムを使用してもよいが、異種の樹脂フィルムを使用するのが、耐突き刺し性及び耐摩耗性をより向上できる点で好ましい。前記異種の樹脂フィルムの組み合わせとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの組み合わせを例示できる(後述の実施例7、8参照)。同様に、前記第2樹脂フィルム層12および第4樹脂フィルム層14としては、同種の樹脂フィルムを使用してもよいし、異種の樹脂フィルムを使用してもよいが、異種の樹脂フィルムを使用するのが、耐突き刺し性及び耐摩耗性をより向上できる点で好ましい。前記異種の樹脂フィルムの組み合わせとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの組み合わせを例示できる(後述の実施例7、8参照)。
【0040】
なお、
図4の積層材1の構成において、さらに前記第3樹脂フィルム層13の外面(上面)側の最表面に接着剤層が積層された構成および/または前記第4樹脂フィルム層14の外面(下面)側の最表面に接着剤層が積層された構成を採用してもよい。
【0041】
上述した第3実施形態(
図3)および第4実施形態(
図4)の積層材1は、アルミニウム-カーボン複合材層2の両面側に樹脂フィルム層が積層された構成であり、例えば電池用冷却部材や電池用加熱部材として好適に使用できる。例えば、前記積層材1を電池用冷却部材として使用した場合には、積層材1が高熱伝導性であるから電池に対して十分な冷却機能を発揮する。例えば、前記積層材1を電池用セル間に挟み込んで使用する。
【0042】
本発明において、前記アルミニウム-カーボン複合材層2としては、アルミニウムマトリックス中にカーボン粒子が分散した複合構造を有するものであるのが好ましく、この場合には熱伝導性をさらに向上させることができる。前記アルミニウム-カーボン複合材層の厚さは、0.05mm~10mmの範囲であるのが好ましく、0.1mm~1mmの範囲であるのが特に好ましい。
【0043】
前記複合材層2を構成するカーボン材としては、黒鉛、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。中でも、前記複合材層2を構成するカーボン材としては、黒鉛、グラフェン、炭素繊維およびカーボンナノチューブからなる群より選ばれる1種または2種以上のカーボン材を用いるのが好ましい。
【0044】
前記黒鉛(グラファイト)としては、特に限定されるものではないが、例えば、天然黒鉛粉末(例えば鱗片状黒鉛粉末等)、人造黒鉛粉末、熱分解黒鉛粉末等が用いられる。中でも、高結晶であることから、鱗片状黒鉛粉末が好適である。また、前記黒鉛としては、粒径やアスペクト比が大きいものが好ましく、特に粒径が300μm以上でアスペクト比が30以上である黒鉛を用いるのが特に好ましい。前記炭素繊維(カーボンファイバー)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、気相成長炭素繊維(VFCG)等が挙げられる。前記カーボンナノチューブとしては、特に限定されるものではないが、例えば、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等が挙げられる。これらの中でも、ピッチ系炭素繊維が特に好適である。なお、前記黒鉛および前記炭素繊維としては、2000℃~3000℃の不活性雰囲気中で熱処理した材料も使用できる。
【0045】
前記アルミニウム-カーボン複合材層2は、例えば次のようにして製造できる。
1)樹脂を溶剤に溶解させて樹脂液を作製し、カーボン粉と樹脂液を混合して塗料を作製する工程と、
2)上記塗料をアルミニウム箔上に塗工する工程と、
3)上記塗工後、溶剤を乾燥させてカーボン塗工箔を作製する工程と、
4)上記カーボン塗工箔を切断し積層して積層体を作製する工程と、
5)上記積層体を加熱することにより、樹脂を除去し、アルミニウム箔同士を接合させる工程と、を含む製造方法により製造できる。この製造方法は、その一例を示したものに過ぎず、本発明におけるアルミニウム-カーボン複合材層2は、上記例示の製造方法で得られたものに特に限定されるものではない。
【0046】
本発明において、前記第1樹脂フィルム層11、第2樹脂フィルム層12、第3樹脂フィルム層13および第4樹脂フィルム層14としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ナイロンフィルム(中でも二軸延伸ナイロンフィルムが好ましい)、ポリスチレン(PS)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ポリイミド(PI)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、アクリル樹脂フィルム、エポキシ樹脂フィルム等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルム/二軸延伸ナイロンフィルムの積層体を用いるのが好ましい。
【0047】
前記第1樹脂フィルム層11、第2樹脂フィルム層12、第3樹脂フィルム層13および第4樹脂フィルム層14の厚さは、いずれも、5μm~200μmの範囲に設定されるのが好ましく、中でも、10μm~50μmが特に好ましい。
【0048】
前記第1接着剤層21、第2接着剤層22、第3接着剤層23および第4接着剤層24を形成する接着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、その他CPP(キャスティングポリプロピレン)を用いてもよい。中でも、ウレタン系樹脂を用いるのが好ましく、この場合には高い接着強度を確保できる。
【0049】
上記接着剤を用いて積層を行う際の積層手法としては、湿式の場合には、特に限定されるものではないが、例えば、ディップコート、スピンコート、グラビア印刷、ダイコーター、ナイフコーター、3本ロール(オフセットタイプ)、スリットコーター、ロールコーター(2本ロール)、スプレーコート、カーテンコート、リバースロールコーター、コンマコーター(カンマコーター)等の塗工方法が挙げられる。また、乾式の場合には、特に限定されるものではないが、例えば、ドライラミネート法、ヒートラミネート法、ホットプレス法等が挙げられる。
【実施例】
【0050】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0051】
<比較例1>
平均粒径が300μmでアスペクト比が30である鱗片状黒鉛粉末と樹脂液を混合した塗料を、厚さ20μmのアルミニウム箔(A1100材)の表面に塗工した後、溶剤を乾燥させることにより、黒鉛塗工箔を作製し、この黒鉛塗工箔を切断・積層して積層体を得た。次に、前記積層体を真空中において600℃で加熱することにより樹脂を除去して、前記アルミニウム箔同士を接合させることによって、厚さ0.1mmのアルミニウム-カーボン複合材を得た。得られたアルミニウム-カーボン複合材は、黒鉛/アルミニウム材=30体積部/70体積部であった。
【0052】
<実施例1>
比較例1と同一の厚さ0.1mmのアルミニウム-カーボン複合材(層)2を準備した。次に、得られたアルミニウム-カーボン複合材層2の一方の面に、スプレーコート法によりウレタン系接着剤(主剤:ポリエステルポリウレタン系樹脂、硬化剤:芳香族系イソシアネートであるトリレンジイソシアネート、希釈溶剤:酢酸エチル)を塗布した後、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム11を貼り合わせたものを一対のロール間で挟圧した後、60℃で乾燥させることによって積層一体化させ、
図1に示す構成の積層材1を得た。
【0053】
<実施例2>
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに代えて、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして、
図1に示す構成の積層材1を得た。
【0054】
<実施例3>
比較例1と同一の厚さ0.1mmのアルミニウム-カーボン複合材(層)2を準備した。次に、得られたアルミニウム-カーボン複合材層2の一方の面に、スプレーコート法により実施例1と同一のウレタン系接着剤を塗布した後、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム11を貼り合わせ、さらに該ポリエチレンテレフタレートフィルム11の表面(外面;露出面)に、上記ウレタン系接着剤を塗布し、この塗布面に厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム13を貼り合わせたものを一対のロール間で挟圧した後、60℃で乾燥させることによって積層一体化させ、
図2に示す構成の積層材1を得た。
【0055】
<実施例4>
比較例1と同一の厚さ0.1mmのアルミニウム-カーボン複合材(層)2を準備した。次に、得られたアルミニウム-カーボン複合材層2の一方の面に、スプレーコート法により実施例1と同一のウレタン系接着剤を塗布した後、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム11を貼り合わせ、さらに該2軸延伸ナイロンフィルム11の表面(外面;露出面)に、上記ウレタン系接着剤を塗布し、この塗布面に厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム13を貼り合わせたものを一対のロール間で挟圧した後、60℃で乾燥させることによって積層一体化させ、
図2に示す構成の積層材1を得た。
【0056】
<実施例5>
比較例1と同一の厚さ0.1mmのアルミニウム-カーボン複合材(層)2を準備した。このアルミニウム-カーボン複合材層2の一方の面に、スプレーコート法により実施例1と同一のウレタン系接着剤を塗布した後、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム11を貼り合わせると共に、前記アルミニウム-カーボン複合材層2の他方の面に、スプレーコート法により実施例1と同一のウレタン系接着剤を塗布した後、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム12を貼り合わせたものを一対のロール間で挟圧した後、60℃で乾燥させることによって積層一体化させ、
図3に示す構成の積層材1を得た。
【0057】
<実施例6>
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム11、12に代えて、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム11、12を用いた以外は、実施例5と同様にして、
図3に示す構成の積層材1を得た。
【0058】
<実施例7>
比較例1と同一の厚さ0.1mmのアルミニウム-カーボン複合材(層)2を準備した。次に、得られたアルミニウム-カーボン複合材層2の一方の面に、スプレーコート法により実施例1と同一のウレタン系接着剤を塗布した後、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム11を貼り合わせ、さらに該ポリエチレンテレフタレートフィルム11の表面(外面;露出面)に、上記ウレタン系接着剤を塗布し、この塗布面に厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム13を貼り合わせると共に、前記アルミニウム-カーボン複合材層2の他方の面に、スプレーコート法により実施例1と同一のウレタン系接着剤を塗布した後、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム12を貼り合わせ、さらに該ポリエチレンテレフタレートフィルム12の表面(外面;露出面)に、上記ウレタン系接着剤を塗布し、この塗布面に厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム14を貼り合わせたものを一対のロール間で挟圧した後、60℃で乾燥させることによって積層一体化させ、
図4に示す構成の積層材1を得た。
【0059】
<実施例8>
比較例1と同一の厚さ0.1mmのアルミニウム-カーボン複合材(層)2を準備した。次に、得られたアルミニウム-カーボン複合材層2の一方の面に、スプレーコート法により実施例1と同一のウレタン系接着剤を塗布した後、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム11を貼り合わせ、さらに該2軸延伸ナイロンフィルム11の表面(外面;露出面)に、上記ウレタン系接着剤を塗布し、この塗布面に厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム13を貼り合わせると共に、前記アルミニウム-カーボン複合材層2の他方の面に、スプレーコート法により実施例1と同一のウレタン系接着剤を塗布した後、厚さ15μmの2軸延伸ナイロンフィルム12を貼り合わせ、さらに該2軸延伸ナイロンフィルム12の表面(外面;露出面)に、上記ウレタン系接着剤を塗布し、この塗布面に厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム14を貼り合わせたものを一対のロール間で挟圧した後、60℃で乾燥させることによって積層一体化させ、
図4に示す構成の積層材1を得た。
【0060】
【0061】
上記のようにして得られた各積層材について下記評価法に基づいて性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0062】
<熱伝導性評価法>
レーザーフラッシュ法により、複合材の水平方向(厚さ方向と垂直な方向)の熱拡散率を測定し、この熱拡散率に複合材の密度と比熱を乗じることで、熱伝導率(W/m・K)を算出した。
【0063】
<耐突き刺し性評価法>
JIS Z1707-1997(食品包装用プラスチックフィルム通則)に準拠して、各積層材の突き刺し強度を評価した。針が積層材を貫通するまでの最大応力を測定し、下記判定基準に基づいて評価した。
(判定基準)
「◎」…最大応力が60N以上である
「○」…最大応力が30N以上60N未満である
「×」…最大応力が30N未満である。
【0064】
<耐摩耗性評価法>
JIS P8136-1994に準拠して、各積層材に対して30ストロークの条件で耐摩耗性試験を行い、目視で積層材の傷の有無を調べ、下記判定基準に基づいて評価した。なお、
図1、2に示す構造の積層材については、樹脂フィルム層が積層されている側の最表面に対して上記耐摩耗性試験を行い、
図3、4に示す構造の積層材については両側の最表面に対して上記耐摩耗性試験を行った。
(判定基準)
「◎」…積層材の最表面の樹脂フィルム層に傷が全く認められなかった
「○」…積層材の最表面の樹脂フィルム層に僅かな傷が少数認められた
「×」…積層材の最表面の樹脂フィルム層に顕著な傷が多く認められた。
【0065】
表1から明らかなように、本発明に係る実施例1~8の積層材は、熱伝導性に優れていると共に、耐突き刺し性および耐摩耗性にも優れていた。これに対し、本発明の規定範囲を逸脱する比較例1の積層材は、耐突き刺し性に劣っていたし、耐摩耗性も不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る積層材は、電池用包装材、電池用冷却部材または電池用加熱部材として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
1…積層材
2…アルミニウム-カーボン複合材層
11…第1樹脂フィルム層
12…第2樹脂フィルム層
13…第3樹脂フィルム層
14…第4樹脂フィルム層
21…第1接着剤層
22…第2接着剤層
23…第3接着剤層
24…第4接着剤層