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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-30
(45)【発行日】2022-04-07
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20220331BHJP
   A61F 13/493 20060101ALI20220331BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220331BHJP
【FI】
A61F13/49 100
A61F13/49 315A
A61F13/493
A61F13/53 200
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019101807
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020195428
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】小澤特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】市原 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】坂口 智
(72)【発明者】
【氏名】山中 康弘
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-213425(JP,A)
【文献】特開2012-075639(JP,A)
【文献】特開2016-123642(JP,A)
【文献】特開2018-068717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する前後方向及び幅方向と、
前胴周り域、後胴周り域、及び前記前胴周り域及び前記後胴周り域との間に配置された股下域と、
少なくとも前記股下域に配置された吸収コアと、
前記吸収コアよりも前記幅方向の外側に配置され、前記前後方向に伸縮する脚周り伸縮部と、
前記吸収コアの変形の基点となる変形基点部と、を有する使い捨ておむつであって、
前記吸収コアよりも前側において前記使い捨ておむつの前記幅方向の中心を跨いで配置され、前記幅方向に伸縮する腰周り伸縮部を備え、
前記変形基点部は、前記脚周り伸縮部よりも前側において、前記幅方向に延びており、
前記前後方向に伸縮し、着用者側に起立する収縮部と、前記収縮部よりも前記前後方向の両外側において前記収縮部の起立支点となる前後基端部と、を有する一対の防漏ギャザーを備え、
前記一対の防漏ギャザーは、前記幅方向に間隔を空けて配置されており、
前記前後基端部の少なくとも一部は、前記前後方向における前記腰周り伸縮部と前記変形基点部の間に配置されている、使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記変形基点部の少なくとも一部は、前記幅方向において前記一対の防漏ギャザーの前記前後基端部間に配置されている、請求項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記前後基端部の少なくとも一部は、前記吸収コアと重なる領域に配置されている、請求項1又は請求項2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記変形基点部の前端縁は、前記収縮部の前端縁よりも前側に位置する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記変形基点部の外側縁は、前記前後基端部の内側縁よりも前記幅方向の外側に位置する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
互いに直交する前後方向及び幅方向と、
前胴周り域、後胴周り域、及び前記前胴周り域及び前記後胴周り域との間に配置された股下域と、
少なくとも前記股下域に配置された吸収コアと、
前記吸収コアよりも前記幅方向の外側に配置され、前記前後方向に伸縮する脚周り伸縮部と、
前記吸収コアの変形の基点となる変形基点部と、を有する使い捨ておむつであって、
前記吸収コアよりも前側において前記使い捨ておむつの前記幅方向の中心を跨いで配置され、前記幅方向に伸縮する腰周り伸縮部を備え、
前記変形基点部は、前記脚周り伸縮部よりも前側において、前記幅方向に延びており、
前記腰周り伸縮部の後端縁における前記幅方向の中心は、前記腰周り伸縮部の後端縁における前記幅方向の側縁よりも前側に配置されている、使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記使い捨ておむつの前記幅方向の中心において、前記腰周り伸縮部は、前記吸収コアと前記前後方向に離間している、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項8】
前記変形基点部は、前記吸収コアの前記幅方向の中心に向かって後側に延びる、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項9】
前記変形基点部の外側縁から前記変形基点部に沿って前記幅方向の外側に延びる延長線は、前記吸収コアの外側縁と交差する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項10】
前記変形基点部は、前記吸収コアの前記幅方向の中心を跨いでいる、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項11】
前記吸収コアの前端縁には、切り欠き部が形成されている、請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項12】
前記切り欠き部は、前記幅方向に間隔を空けて複数設けられている、請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項13】
前記変形基点部は、前記切り欠き部から前記前後方向に延びる延長線上に配置されている、請求項11又は請求項12に記載の使い捨ておむつ。
【請求項14】
前記腰周り伸縮部の収縮力は、前記脚周り伸縮部の収縮力よりも高い、請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚周り伸縮部を有する使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、脚周り伸縮部を有する使い捨ておむつが提供されている。特許文献1の使い捨ておむつは、着用状態において脚周り伸縮部の収縮によって着用者の脚周りにフィットする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の使い捨ておむつは、以下の問題があった。
使い捨ておむつが着用された状態において、脚周り伸縮部は、脚周りにフィットするが、脚周り伸縮部よりも前側の領域は、身体にフィットさせる手段がなく、当該領域の変形をコントロールできないことがあった。そのため、脚周り伸縮部よりも前側の領域の変形については、改善の余地があった。
【0005】
よって、脚周り伸縮部よりも前側の領域の変形をコントロールし易い使い捨ておむつが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様に係る使い捨ておむつは、互いに直交する前後方向及び幅方向と、前胴周り域、後胴周り域、及び前記前胴周り域及び前記後胴周り域との間に配置された股下域と、少なくとも前記股下域に配置された吸収コアと、前記吸収コアよりも前記幅方向の外側に配置され、前記前後方向に伸縮する脚周り伸縮部と、記吸収コアの変形の基点となる変形基点部と、を有する使い捨ておむつであって、前記吸収コアよりも前側において前記使い捨ておむつの幅方向の中心を跨いで配置され、前記幅方向に伸縮する腰周り伸縮部を備え、前記変形基点部は、前記脚周り伸縮部よりも前側において、前記幅方向に延びている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る使い捨ておむつの肌面側から見た平面図である。
図2図2は、実施形態に係る吸収コアの平面図である。
図3図3は、伸長状態の使い捨ておむつのA-A断面に沿った模式断面図である。
図4図4は、伸長状態の使い捨ておむつのB-B断面に沿った模式断面図である。
図5図5は、自然状態の使い捨ておむつのB-B断面に沿った模式断面図である。
図6図6は、伸長状態の使い捨ておむつのC-C断面に沿った模式断面図である。
図7図7は、自然状態の使い捨ておむつのC-C断面に沿った模式断面図である。
図8図8は、自然状態の使い捨ておむつの前胴周り域を肌面側から見た図である。
図9図9は、自然状態の使い捨ておむつの前胴周り域を非肌面側から見た図である。
図10図10は、比較例に係る使い捨ておむつ及び実施の形態に係る使い捨ておむつのパッケージから取り出した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
一態様に係る使い捨ておむつは、互いに直交する前後方向及び幅方向と、前胴周り域、後胴周り域、及び前記前胴周り域及び前記後胴周り域との間に配置された股下域と、少なくとも前記股下域に配置された吸収コアと、前記吸収コアよりも前記幅方向の外側に配置され、前記前後方向に伸縮する脚周り伸縮部と、記吸収コアの変形の基点となる変形基点部と、を有する使い捨ておむつであって、前記吸収コアよりも前側において前記使い捨ておむつの幅方向の中心を跨いで配置され、前記幅方向に伸縮する腰周り伸縮部を備え、前記変形基点部は、前記脚周り伸縮部よりも前側において、前記幅方向に延びている。
【0009】
本態様によれば、腰周り伸縮部によって吸収コアよりも前側の領域が幅方向に収縮する。腰周り伸縮部による幅方向の収縮する変形は、後側に向かって延び、変形基点部に伝わり、変形基点部よりも前側の領域が変形基点部よりも後側の領域に対して厚さ方向に変形する。変形基点部は、幅方向に延びており、吸収コアの厚さ方向の変形基点を幅方向に延びるように形成できる。よって、腰周り伸縮部と変形基点部によって脚周り伸縮部よりも前側の領域における吸収コアの変形をコントロールできる。
【0010】
好ましい一態様によれば、前記前後方向に伸縮し、着用者側に起立する収縮部と、前記収縮部よりも前記前後方向の両外側において前記収縮部の起立支点となる前後基端部と、を有する一対の防漏ギャザーを備え、前記一対の防漏ギャザーは、前記幅方向に間隔を空けて配置されており、前記前後基端部の少なくとも一部は、前記前後方向における前記腰周り伸縮部と前記変形基点部の間に配置されてよい。
【0011】
本態様によれば、腰周り伸縮部と変形基点部の間に配置された前後基端部は、収縮部によって後側に引っ張れる。腰周り伸縮部の収縮に起因した幅方向の内側に引き寄せられる変形を、前後基端部が変形基点部に向かって後側に伝達し、変形基点部による厚さ方向の折れ線をより形成し易い。
【0012】
好ましい一態様によれば、前記変形基点部の少なくとも一部は、前記幅方向において前記一対の防漏ギャザーの前記前後基端部間に配置されてよい。
【0013】
本態様によれば、幅方向において前後基端部によって挟まれ、かつ前後方向において腰周り伸縮部と変形基点部によって挟まれた領域は、変形基点部を基点として着用者側に向かって変形し、身体の膨らみを覆うような曲線状のカップ形状を実現できる。
【0014】
好ましい一態様によれば、前記前後基端部の少なくとも一部は、前記吸収コアと重なる領域に配置されてよい。
【0015】
本態様によれば、前後基端部と重なっている領域の吸収コアは、防漏ギャザーの起立性によって、左右の前後基端部間の領域の吸収コアよりも着用者側に近づくように変形する。吸収コアは、前後基端部が変形基点となり、幅方向に沿った断面において曲線状のカップ形状に変形し易い。よって、吸収コアが、腹部の膨らみを覆うような形状となり易い。
【0016】
好ましい一態様によれば、前記変形基点部の前端縁は、前記収縮部の前端縁よりも前側に位置してよい。
【0017】
防漏ギャザーの収縮部よりも前側の領域は、当該防漏ギャザーの収縮力が作用し難い領域であり、意図しない形状で変形するおそれがある。本態様によれば、当該領域の変形を変形基点部によってコントロールできる。
【0018】
好ましい一態様によれば、前記変形基点部の外側縁は、前記前後基端部の内側縁よりも前記幅方向の外側に位置してよい。
【0019】
本態様によれば、左右の前後基端部によって挟まれた領域の全域にわたって、吸収コアの変形をコントロールし易い。
【0020】
好ましい一態様によれば、前記使い捨ておむつの前記幅方向の中心において、前記腰周り伸縮部は、前記吸収コアと前記前後方向に離間してよい。
【0021】
本態様によれば、腰周り伸縮部と吸収コアと重ならない領域では、腰周り伸縮部の収縮力がより作用し易くなり、腰周り伸縮部によっておむつの前端縁を幅方向の内側に引き寄せる変形をより実現し易くなる。
【0022】
好ましい一態様によれば、前記腰周り伸縮部の後端縁における前記幅方向の中心は、前記腰周り伸縮部の後端縁における前記幅方向の側縁よりも前側に配置されてよい。
【0023】
本態様によれば、腰周り伸縮部の幅方向の中心における収縮量よりも、腰周り伸縮部の幅方向の側部の収縮量が多くなり、吸収コアよりも前側の領域では、吸収コアの幅方向の中心側かつ前後方向の前側(斜め上向き)に向かって引き寄せられる。吸収コアよりも前側の領域では、使い捨ておむつの前端縁に向かって先細り形状により変形し易い。そのため、使い捨ておむつの前端縁から変形基点部までの間の領域では、使い捨ておむつの前端縁から後側に向かって幅方向に広がるカップ形状を形成できる。
【0024】
好ましい一態様によれば、前記変形基点部は、前記吸収コアの前記幅方向の中心に向かって後側に延びてよい。
【0025】
本態様によれば、腰周り伸縮部の収縮によっておむつの前端縁が幅方向の中心に向かって収縮するため、吸収コアよりも前側の領域では、前端縁に向かって先細り形状に変形し、吸収コアにおいて幅方向に延びる折れ線は、吸収コアの幅方向の中央に向かって後側に延びる形状になりやすい。変形基点部の形状は、腰周り伸縮部の収縮によって形成される折れ線に沿う形状となるため、吸収コアの変形基点として変形基点部がより機能し易くなる。
【0026】
好ましい一態様によれば、前記変形基点部の外側縁から前記変形基点部に沿って前記幅方向の外側に延びる延長線は、前記吸収コアの外側縁と交差してよい。
【0027】
本態様によれば、変形基点部を基点とした変形を吸収コアの外側縁まで導き易く、吸収コアの幅方向の全域にわたって厚さ方向に変形させ易くなる。
【0028】
好ましい一態様によれば、前記変形基点部は、前記吸収コアの前記幅方向の中心を跨いでよい。
【0029】
本態様によれば、吸収コアの幅方向の中心を挟んで両側に配置された構成と比較して、変形基点部間において力が分断されず、吸収コアを厚さ方向に変形させ易くなる。
【0030】
好ましい一態様によれば、前記吸収コアの前端縁には、切り欠き部が形成されてよい。
【0031】
本態様によれば、切り欠き部において吸収コアが変形し易くなり、おむつの前端縁側から変形基点部まで延びる皺が切り欠き部から延びる。前後方向に延びる皺の位置をコントロールでき、より意図した形状のおむつの変形を実現できる。
【0032】
好ましい一態様によれば、前記切り欠き部は、前記幅方向に間隔を空けて複数設けられてよい。
【0033】
本態様によれば、使い捨ておむつの前端縁側から変形基点部まで延びる皺が幅方向に間隔を空けて複数形成される。幅方向に一定の間隔を空けて当該皺が形成されるため、幅方向に沿った断面において、おむつの変形基点が複数形成され、より身体の丸みに沿うような形状を実現できる。
【0034】
好ましい一態様によれば、前記変形基点部は、前記切り欠き部から前記前後方向に延びる延長線上に配置されてよい。
【0035】
本態様によれば、切り欠き部から後側に延びる皺を変形基点部において受け、吸収コアが厚さ方向に変形し易くなる。また、おむつの前端縁側から後側に延びる皺を変形基点部において分断でき、変形基点部の前側の領域と後側の領域とで異なる形状を実現できる。
【0036】
好ましい一態様によれば、前記腰周り伸縮部の収縮力は、前記脚周り伸縮部の収縮力よりも高くてよい。
【0037】
本態様によれば、腰周り伸縮部の収縮力が比較的高いため、左右の脚周り伸縮部間が身体から離れるような変形よりも、変形基点部を基点に厚さ方向に折れる変形を実現し易くなる。
【0038】
(2)使い捨ておむつの全体概略構成
以下、図面を参照して、実施形態に係る使い捨ておむつについて説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0039】
実施の形態に係る使い捨ておむつは、テープ型の使い捨ておむつである。しかし、本発明の使い捨ておむつは、テープ型の使い捨ておむつに限定されず、パンツ型の使い捨ておむつであってもよい。図1は、本実施形態に係る使い捨ておむつ10の肌面側から見た平面図であり、図2は、実施形態に係る吸収コアを肌面側から見た平面図である。図1及び図2に示す平面図は、伸長状態の使い捨ておむつを示している。図3は、伸長状態の使い捨ておむつのA-A断面に沿った模式断面図である。図4は、伸長状態の使い捨ておむつのB-B断面に沿った模式断面図である。図5は、自然状態の使い捨ておむつのB-B断面に沿った模式断面図である。図6は、伸長状態の使い捨ておむつのC-C断面に沿った模式断面図である。図7は、自然状態の使い捨ておむつのC-C断面に沿った模式断面図である。
【0040】
なお、本発明における伸長状態とは、使い捨ておむつ10を皺が形成されない状態まで伸長させた状態である。また、本発明における自然状態とは、パッケージに収容されている使い捨ておむつ10にあっては、パッケージから使い捨ておむつ10を取り出し、20℃±2℃、相対湿度60%±5%RHの雰囲気下において24時間放置した状態である。自然状態は、後述する腰周り伸縮部45、脚周り伸縮部42、及び防漏ギャザーの収縮部63が収縮した状態である。
【0041】
使い捨ておむつ10は、互いに直交する前後方向L及び幅方向Wを有する。前後方向Lは、身体前側と身体後側とに延びる方向によって規定される。言い換えると、前後方向Lは、展開された使い捨ておむつ10において前後に延びる方向である。また、使い捨ておむつ10は、前後方向Lと幅方向Wの両方の直交する厚さ方向Tを有する。厚さ方向Tは、着用者側に向かう肌面側T1と、肌面側と反対側の非肌面側T2と、に延びる。
【0042】
使い捨ておむつ10は、前胴周り域S1と、後胴周り域S2と、股下域S3と、を有する。前胴周り域S1は、着用者の前胴周り(腹部)に対向する領域である。後胴周り域S2は、着用者の後胴周り(背部)に対向する領域であり、装着時に身体(臀部)が載せられる領域を含む。股下域S3は、着用者の股下に位置し、前胴周り域S1と後胴周り域S2との間に配置された領域である。股下域S3は、着用者の脚周りに配置される脚周り開口部65が設けられた領域である。脚周り開口部65は、使い捨ておむつ10の外側縁から幅方向の内側に凹む部分である。
【0043】
ここで、本発明における外側部とは、幅方向Wにおける外側の縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、外側縁とは、幅方向Wにおける外側の縁である。また、内側部とは、幅方向Wにおける内側の縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、内側縁とは、幅方向Wにおける内側の縁である。また、外端縁は、前後方向における外縁であり、内端縁は、前後方向における内縁である。また、本発明において重なっている状態とは、平面視にて一方の部材と他方の部材が重なっている状態であり、一方の部材の肌面側又は非肌面側に他方の部材が配置されている状態である。重なっている状態では、一方の部材と他方の部材が互いに接している状態のみならず、一方の部材と他方の部材の間に他の部材が介在している構成も含む。
【0044】
使い捨ておむつ10は、吸収材料を含む吸収コア31を含む。吸収コア31は、少なくとも股下域S3に配置されてよく、前胴周り域S1にも配置されていてよいし、後胴周り域S2にも配置されていてよい。吸収コア31は、粉砕パルプもしくは高吸収性ポリマー(SAP)、又はこれらの混合物等の吸収材料を含む。吸収コア31は、コアラップ32によって覆われてよい。吸収コア31とコアラップ32によって吸収体30が構成されてよい。コアラップ32は、テッシュによって構成され、吸収コア31の肌面側T1と吸収コア31の非肌面側T2に配置されてよい。
【0045】
使い捨ておむつ10は、吸収コア31を厚さ方向Tに変形させるための変形基点部80を有する。変形基点部80は、吸収コア31の変形基点となればよく、吸収コア31を厚さ方向に圧縮したエンボス部、吸収材料の坪量が周囲よりも低い低坪量部、吸収材料が配置されていないスリット、及び吸収コア31を厚さ方向Tに切断した切断部の少なくともいずれかによって構成されてよい。変形基点部80は、変形基点の縁となる基点縁80Gを有する。基点縁80Gは、吸収コア31の厚さの折れ線が形成される縁である。本実施の形態の基点縁80Gは、変形基点部80において幅方向Wに延びる縁である。吸収コア31は、基点縁80Gを基点に曲がってよい。
【0046】
図1及び図3に示すように、吸収コア31を含む吸収体30の肌面側T1には、表面シート21及びサイドシート22が設けられてよい。表面シート21は、吸収体30の幅方向Wの中心を跨いで配置されてよい。サイドシート22は、表面シート21の外側部を覆うように配置されてよい。表面シート21及びサイドシート22は、例えば不織布や開孔プラスチックフィルムのような透液性シートによって構成されていてよい。サイドシート22の内側部は、折り返されて重なってよい。重なったサイドシート22間には、前後方向Lに伸縮する防漏弾性部材61が設けられてよい。防漏弾性部材61は、前後方向Lに伸縮する糸ゴムによって構成されてよい。サイドシート22と防漏弾性部材61は、糸ゴムの収縮によって起立し、自然状態において着用者側に起立する防漏ギャザー60を構成する。防漏ギャザー60は、使い捨ておむつ10の幅方向Wの中心に対する幅方向Wの両側にそれぞれ配置されている。一対の防漏ギャザー60は、幅方向Wに間隔を空けて配置されている。
【0047】
防漏ギャザー60は、着用者側に起立する収縮部63と、収縮部63よりも前後方向Lの両外側において収縮部63の起立支点となる前後基端部64と、収縮部63よりも幅方向Wの外側において収縮部63の起立支点となる幅基端部62と、を有してよい。前後基端部64は、収縮部63よりも前後方向Lの両外側においてサイドシート22と表面シート21が接合された領域である。幅基端部62は、収縮部63よりも幅方向Wの外側においてサイドシート22と表面シート21が接合された領域である。収縮部63は、サイドシート22が表面シート21に接合されてなく、防漏弾性部材61によって収縮可能な部分であり、非伸長状態の防漏弾性部材61が配置された部分を含まない。
【0048】
吸収体30の非肌面側T2には、裏面シート23及び外装シート24が設けられてよい。外装シート24は、裏面シート23の非肌面側T2に設けられてよい。裏面シート23の幅方向Wの長さは、外装シート24の幅方向Wの長さよりも短く、裏面シート23の前後方向Lの長さは、外装シート24の前後方向Lの長さよりも短い。裏面シート23は、液不透過性のフィルムによって構成されてよい。外装シート24は、液透過性の不織布によって構成されてよい。
【0049】
後胴周り域S2には、ファスニングテープ91が設けられている。ファスニングテープ91は、後胴周り域S2に配置され、かつ前胴周り域S1に止着可能に構成されている。ファスニングテープ91は、ベース部92と係止部93を有する。ベース部92は、厚さ方向Tにおいて外装シート24及びサイドシート22の間に配置され、幅方向Wにおいて外装シート24及びサイドシート22から外側に延出している。係止部93は、ベース部92上に配置されており、ターゲット部(図示せず)に係合してよい。ターゲット部(図示せず)は、前胴周り域S1において幅方向Wに間隔を空けて配置されており、ファスニングテープ91がそれぞれ止着するように構成されている。また、変形例において、使い捨ておむつ10がターゲット部を備えてなく、前胴周り域の外装シートに係止部93が止着するように構成されていてもよい。
【0050】
使い捨ておむつ10は、吸収コア31よりも幅方向Wの外側において前後方向Lに伸縮する脚周り伸縮部42を有してよい。脚周り伸縮部42は、サイドシート22と裏面シート23の間、及びサイドシート22と外装シート24の間に設けられてよい。脚周り伸縮部42は、前後方向Lに伸縮する糸状の弾性部材によって構成されている。糸状の弾性部材は、使い捨ておむつ10の左右それぞれに複数本ずつ配置されてきる。なお、変形例に係る脚周り伸縮部42は、帯状の伸縮シートによって構成されてよい。脚周り伸縮部42の収縮によって、着用時に使い捨ておむつ10の脚周り開口部65が脚周りにフィットする。
【0051】
使い捨ておむつ10は、使い捨ておむつ10の後端部において幅方向Wに延びる腰周り伸縮部45を有してよい。腰周り伸縮部45は、裏面シート23と外装シート24の間、表面シート21と外装シート24の間、及びサイドシート22と外装シート24の間に設けられてよい。腰周り伸縮部45の少なくとも一部は、吸収コア31よりも前側に位置してよい。腰周り伸縮部45の後端縁45Rは、吸収コア31の前端縁31Fよりも前側に位置してよい。腰周り伸縮部45は、使い捨ておむつ10の幅方向Wの中心を跨いで配置されている。腰周り伸縮部45は、吸収コア31よりも幅方向Wの外側に延出してよい。腰周り伸縮部45は、幅方向Wに伸縮する帯状の伸縮シートによって構成されている。なお、変形例に係る腰周り伸縮部45は、前後方向Lに間隔を空けて複数配置された糸状の弾性部材によって構成されてよい。
【0052】
(3)使い捨ておむつの前側領域の変形態様
次いで、このように構成された使い捨ておむつ10の前側領域FRの変形態様について詳細に説明する。本発明に係る使い捨ておむつ10は、前側領域FRの変形をコントロールし易く構成されている。従来技術では、使い捨ておむつをパッケージから取り出した使用前の状態において、脚周り伸縮部の前端縁よりも後側の領域は、脚周り伸縮部の収縮によって厚さ方向に膨らむように変形し、脚周り伸縮部の前端縁よりも前側の領域も、脚周り伸縮部の前端縁よりも後側の領域の変形に伴って膨らむように変形する。脚周り伸縮部よりも前側の領域が厚さ方向に膨らむように変形すると、ウエスト開口近傍が身体から離れるような変形等、意図しない変形が発生するおそれがある。このように、脚周り伸縮部よりも前側の領域の変形をコントロールできないことにより、装着時において脚周り伸縮部よりも前側の領域が意図しない形状となり、装着者は、使い捨ておむつの使用前にフィット性及び漏れに対する安心感を得られないことがあった。また、従来技術では、着用時においても、脚周り伸縮部よりも前側の領域が、身体から離れるような変形等、意図しない変形が発生し、身体に対するフィット性を確保できないことがある。脚周り伸縮部よりも前側の領域の意図しない変形に起因して、おむつのフィット性が低下したり、吸収コアと身体との隙間が発生したりして、装着感が悪化することがあった。
【0053】
本実施の形態の使い捨ておむつは、使用前にフィット性及び漏れに対する安心感を付与したり、装着感が悪化を抑制したりするように構成されている。前側領域FRは、図1に示すように、脚周り伸縮部42よりも前側の領域である。前側領域FRの前端縁は、使い捨ておむつ10の前端縁10Fであり、前側領域FRの後端縁は、脚周り伸縮部42の前端縁42Fである。
【0054】
前側領域FRには、腰周り伸縮部45と変形基点部80が設けられており、腰周り伸縮部45と変形基点部80によって前側領域FRの変形をコントロールできる。図8及び図9は、使い捨ておむつの前胴周り域の部分拡大平面図である。図8は、肌面側からみた状態であり、図9は、非肌面側からみた状態である。図8(a)及び図9(a)は、伸長状態を示しており、図8(b)及び図9(b)は、前側領域FRが腰周り伸縮部45及び変形基点部80によって変形した変形状態を示した図である。
【0055】
変形基点部80は、前側領域FRにおいて幅方向Wに延びている。腰周り伸縮部45は、吸収コア31よりも前側に位置し、吸収コア31よりも前側の領域を幅方向Wに収縮させる。腰周り伸縮部45が吸収コア31よりも前側に位置し、かつ吸収コア31が配置された領域が吸収コア31の剛性によって幅方向Wに収縮し難いため、吸収コア31よりも前側の領域が、吸収コア31が配置された領域よりも幅方向Wに収縮する。この腰周り伸縮部45による幅方向Wに収縮する変形は、後側に向かって延び、変形基点部80まで到達する。また、腰周り伸縮部45がおむつ10の幅方向Wの中心を跨いでいるため、吸収コア31よりも前側の領域は、幅方向Wの中心側に向かって収縮する。腰周り伸縮部45の収縮に起因しておむつ10の前端縁10Fから後側に向かって延びる皺が形成される。この皺は、おむつ10の幅方向Wの中心では、後側に向かって前後方向Lに沿って延び、おむつ10の幅方向Wの側部では、前側から後側に向かって幅方向Wの外側に延びる。よって、吸収コア31よりも前側の領域では、使い捨ておむつの前端縁10Fに向かって先細り形状に変形する。
【0056】
腰周り伸縮部45による幅方向Wに収縮する変形は、前後方向Lに連続せずに、変形基点部80によって分断される。そのため、使い捨ておむつ10の前端縁10Fから変形基点部80までの間の領域では、防漏ギャザー60の収縮部63の収縮によって使い捨ておむつ10の前端縁10Fが肌面側に引き寄せられることにより、使い捨ておむつ10の前端縁10Fから後側に向かって幅方向Wに広がるカップ形状が形成される。よって、使用前において、腹部の膨らみに沿うような形状を実現できる。
【0057】
吸収コア31の前端縁31Fが幅方向Wの内側に引き寄せられることによって吸収コア31の前端縁31Fから後側に伝達される力が変形基点部80に伝わり、変形基点部80よりも前側の領域が変形基点部80よりも後側の領域に対して厚さ方向Tに変形する(図7参照)。変形基点部80は、幅方向Wに延びており、吸収コア31の厚さ方向の変形基点を幅方向Wに延びるように形成できる。当該変形基点部80による吸収コア31の折れ線が下腹部のくびれ付近に形成されることにより、着用者の下腹部の凹みにフィットできる。なお、図10に示すように、使用前に使い捨ておむつの前後方向の中央に設けられた折り目を基点に二つに折り畳まれたおむつにあっては、図7に示す自然状態においては、折り目の近傍では、折り目を挟んだ前後方向の両側が折り癖によって対向している。
【0058】
腰周り伸縮部45と変形基点部80によって脚周り伸縮部42よりも前側の領域における吸収コア31の変形をコントロールできるため、使用前におむつ10が身体に沿うような形状を実現できる。図10は、パッケージから使い捨ておむつを取り出した状態を示しており、使用前の状態を示している。図10(a)は、比較例に係る使い捨ておむつ100であり、(b)は、実施の形態に係る使い捨ておむつ10である。パッケージから取り出した状態で、使い捨ておむつは、使い捨ておむつ10の幅方向Wの側部が肌面側に折り畳まれた状態で、前後方向Lに2つに折り畳まれている。そのため、図10に示す使い捨ておむつは、非肌面側が外側であって、前胴周り域S1が上側に向かって配置されている。
【0059】
比較例に係る使い捨ておむつ100の脚周り伸縮部よりも前側の領域は、使用前の状態で、脚周り伸縮部の前後方向Lに収縮によって後側に引っ張られ、非肌面側に向かって浮き上がっている。一般的に、着用者には、下腹部の凹みが形成されており、おむつの前端部が全体的に非肌面側に膨らんでいると、使用者は、着用者の下腹部にフィットしない印象となり、フィット性に対する安心感を得にくいことがある。
【0060】
これに対して、実施形態に係る使い捨ておむつ10の脚周り伸縮部42よりも前側の領域は、上述のように、腰周り伸縮部45によって幅方向Wに収縮するとともに、変形基点部80によって厚さ方向Tに変形する。そのため、おむつの前端部が全体的に非肌面側に膨らまず、変形基点部80に沿った幅方向Wに延びる折り線が形成されている。よって、使用者は、着用者の下腹部に折り線部分がフィットする印象となり、フィット性に対する安心感を得ることができる。
【0061】
実施形態に係る使い捨ておむつ10は、着用中においては、吸収コア31によって身体を覆い続け、漏れの発生を抑制できる。また、吸収コア31の変形基点部80による折れ線によって幅方向Wに対する突っ張りが働き、吸収コア31の幅方向Wに折れ難くなる。吸収コア31の幅方向Wの長さを確保し易くなり、吸収コア31によって身体を覆う面積を確保し、漏れを抑制できる。
【0062】
なお、腰周り伸縮部45の少なくとも一部が、前側領域FRに配置されていればよく、腰周り伸縮部45は、前側領域FRよりも後側にも配置されていてもよい。同様に、変形基点部80の少なくとも一部が、前側領域FRに配置されていればよく、腰周り伸縮部45は、前側領域FRよりも後側にも配置されてもよい。また、変形基点部80が幅方向Wに延びる構成は、幅方向Wに対して平行に延びる構成のみならず、幅方向Wに対する角度が45度以下の角度で幅方向Wに対して傾斜する構成も含む概念である。
【0063】
変形基点部80による吸収コア31の厚さ方向Tの変形は、肌面側T1に向かって凸状となる変形であってもよいし、非肌面側T2側に向かって凸状となる変形であってもよい。より好適には、変形基点部80による吸収コア31の厚さ方向Tの変形は、図7に示すように、肌面側T1に向かって凸状となる変形であってよい。変形基点部80は、吸収コア31の非肌面側同士が近づくように変形させるように構成されてよい。具体的には、変形基点部は、非肌面側T2から肌面側T1側に向かって吸収コア31を圧縮した圧搾部、非肌面側から肌面側に向かって凹む形状の低坪量部によって構成されてよい。
【0064】
防漏ギャザー60の前後基端部64の少なくとも一部は、前後方向Lにおける腰周り伸縮部45と変形基点部80の間に配置されてよい。腰周り伸縮部45と変形基点部80の間に配置された前後基端部64は、収縮部63によって後側に引っ張れる。よって、腰周り伸縮部45の収縮に起因した幅方向Wの内側に引き寄せられる変形を、前後基端部64が変形基点部80に向かって後側に伝達することができ、変形基点部80による厚さ方向Tの折れ線がより形成され易くなる。
【0065】
また、変形基点部80は、幅方向Wにおいて左右の防漏ギャザーの前後基端部64間に配置されている。よって、左右の前後基端部64のそれぞれを介して変形基点部80に力を伝達できる。防漏ギャザー60の収縮部63は、着用者側に起立するように収縮している。図5に示すように、左右の防漏ギャザー60のそれぞれが、左右の防漏ギャザー60間の領域に対して着用者側に近づく方向に変形することで、おむつ10の幅方向Wに沿った断面において、幅方向Wの中心側よりも幅方向Wの側部側から身体側に近づくような曲線形状を実現できる。使用前におむつ10が身体に沿うような形状を実現できるとともに、吸収コア31によって身体を覆い続け、漏れの発生を抑制できる。
【0066】
変形基点部80の少なくとも一部は、幅方向Wにおいて一対の防漏ギャザー60の前後基端部64間に配置されてよい。防漏ギャザー60の収縮による幅方向Wに沿った断面の曲線状のカップ形状を、変形基点部80よりも前側の領域で形成でき、変形基点部80によって当該曲線状のカップ形状を前後方向Lにおいて分断できる。幅方向Wにおいて前後基端部64によって挟まれ、かつ前後方向Lにおいて腰周り伸縮部45と変形基点部80によって挟まれた領域は、変形基点部80を基点として厚さ方向に変形し、身体の膨らみを覆うような曲線状のカップ形状を実現できる。変形基点部80よりも後側の領域では、腰周り伸縮部による皺を抑制できる。
【0067】
前後基端部64の少なくとも一部は、吸収コア31と重なる領域に配置されてよい。図5に示すように、前後基端部64と重なっている領域の吸収コア31は、左右の前後基端部64間の領域の吸収コア31よりも着用者側に近づくように変形する。そのため、吸収コア31は、前後基端部64が変形基点となって、幅方向Wに沿った断面において曲線状のカップ形状に変形し易い。よって、吸収コア31が、腹部の膨らみを覆うような形状となり易い。
【0068】
変形基点部80の前端縁80Fは、防漏ギャザー60の収縮部63の前端縁63Fよりも前側に位置してよい。防漏ギャザー60の収縮部63の前端縁63Fよりも前側の領域は、当該防漏ギャザー60の収縮力が作用し難い領域であり、意図しない形状で変形するおそれがある。本態様によれば、当該領域の変形を変形基点部80によってコントロールできる。より好適には、変形基点部80の後端縁80Rは、防漏ギャザー60の収縮部63の前端縁63Fよりも前側に位置してよい。収縮部63よりも前側の領域に、変形基点部80の前端縁80F(80G)と変形基点部80の後端縁80R(80G)による2つの変形基点を少なくとも設けることができる。当該2つの変形基点によって前側領域FRの変形をコントロールすることにより、前側領域の意図しない変形をより抑制できる。
【0069】
使い捨ておむつ10の幅方向Wの中心において、腰周り伸縮部45は、吸収コア31と前後方向Lに離間してよい。なお、腰周り伸縮部45は、少なくとも使い捨ておむつ10の幅方向Wの中心において吸収コア31と前後方向Lに離間していればよく、腰周り伸縮部45の幅方向Wの全域にわたって吸収コア31と前後方向Lに離間していてもよい。腰周り伸縮部45と吸収コア31と重ならない領域では、腰周り伸縮部45の収縮力がより作用し易くなり、腰周り伸縮部45によっておむつ10の前端縁10Fを幅方向Wの内側に引き寄せる変形をより実現し易くなる。また、吸収コア31よりも前側の領域には、腰周り伸縮部45の有無による剛性差が形成される。吸収コア31よりも前側の領域は、当該剛性差を基点としても変形する。身体の上下方向において複数の変形基点が形成され、使用前に身体に沿う形状をより実現し易く、また着用時に腹部の膨らみにより沿い易くなる。
【0070】
腰周り伸縮部45の後端縁における幅方向Wの中心は、腰周り伸縮部45の後端縁における幅方向Wの側縁よりも前後方向Lの内側に配置されているよい。本実施の形態の腰周り伸縮部45は、伸縮性シートによって構成されており、伸長前の状態で矩形であり、幅方向Wに伸長した状態で、伸縮性シートの幅方向Wの中心が伸縮性シートの側縁よりも幅方向Wの内側に凹んでいる(所謂、ネックインしている)。使い捨ておむつ10の製造時には、使い捨ておむつ10が前後方向Lに連続した状態で製造し、使い捨ておむつ10の前端縁10F側に配置された腰周り伸縮部45と、使い捨ておむつ10の後端縁側に配置された第2腰周り伸縮部44(図1参照)と、が一体化した状態で設けられる。そのため、腰周り伸縮部45の後端縁45Rにおいて、腰周り伸縮部45の幅方向Wの中心は、腰周り伸縮部45の幅方向Wの側縁よりも前後方向Lの内側に配置されている。腰周り伸縮部45の後端縁45Rは、前側に向かって膨らむ湾曲形状である。
【0071】
腰周り伸縮部45の幅方向Wの側縁を含む側部は、腰周り伸縮部45の幅方向Wの中心よりも前後方向Lに伸長している。腰周り伸縮部45の収縮時に、腰周り伸縮部45の側部は、腰周り伸縮部45の幅方向Wの中心よりも前後方向Lに収縮する。そのため、腰周り伸縮部45の幅方向Wの中心における収縮量よりも、腰周り伸縮部45の幅方向Wの側部の収縮量が多くなり、吸収コア31よりも前側の領域では、吸収コア31の幅方向Wの中心側かつ前後方向Lの前側(斜め上向き)に向かって引き寄せられる 。吸収コア31よりも前側の領域では、前端縁に向かって先細り形状により変形し易い。そのため、おむつ10の前端縁10Fから変形基点部80までの間の領域では、前端縁から後側に向かって幅方向Wに広がるカップ形状を形成できる。
【0072】
腰周り伸縮部45による吸収コア31の収縮を実現するために、腰周り伸縮部45の幅方向Wの長さは、吸収コア31の幅方向Wの長さに対する50%以上であってよい。より好適には、腰周り伸縮部45は、吸収コア31よりも幅方向Wの外側に延出してよい。本実施の形態の腰周り伸縮部45は、吸収コア31よりも幅方向Wの外側に延出し、前後基端部64よりも幅方向Wの外側に延出し、脚周り伸縮部42よりも幅方向Wの外側に延出している。
【0073】
図2に示すように、変形基点部80は、吸収コア31の幅方向Wの中心に向かって後側に延びてよい。換言すると、吸収コア31の幅方向Wの中心側に位置する変形基点部80は、吸収コア31の幅方向Wの側縁側に位置する変形基点部80よりも後側に配置されている。変形基点部80は、直線状に傾斜した形状であってもよいし、本実施の形態のように、後側に膨らむ湾曲形状であってもよい。腰周り伸縮部45の収縮によっておむつ10の前端縁10Fが幅方向Wの中心に向かって収縮するため、吸収コア31よりも前側の領域では、前端縁に向かって先細り形状に変形し、吸収コア31において幅方向Wに延びる折れ線(図10(b)参照)は、吸収コア31の幅方向Wの中央に向かって後側に延びる形状になりやすい。腰周り伸縮部45の収縮によって形成される折れ線に、変形基点部80が沿う形状であるため、吸収コア31の変形基点として、変形基点部80がより機能し易くなる。
【0074】
変形基点部80の外側縁80Eから変形基点部80に沿って幅方向Wの外側に延びる延長線FL80は、吸収コア31の外側縁31Eと交差してよい。変形基点部80を基点とした変形を吸収コア31の外側縁まで導き易く、吸収コア31の幅方向Wの全域にわたって厚さ方向に変形させ易くなる。変形基点部80の外側縁は、吸収コア31の外側縁よりも幅方向Wの内側に位置してよい。好適には、変形基点部80によって吸収コア31の厚さ方向の変形を実現するために、変形基点部80の幅方向Wの長さは、吸収コア31の幅方向Wの長さに対する50%以上であってよい。また、変形基点部80の外側縁は、前後基端部64の内側縁よりも幅方向Wの外側に位置してよい。当該構成によれば、左右の前後基端部64によって挟まれた領域の全域にわたって、変形基点部80によっておむつ10の変形をコントロールできる。好適には、幅方向Wにおいて、変形基点部80は、左右の前後基端部64の内側縁間に挟まれた領域の全体に亘って連続してよい。左右の前後基端部64によって挟まれた領域の全域にわたって、おむつ10の変形をよりコントロールしやすくなる。
【0075】
変形基点部80は、吸収コア31の幅方向Wの中心を跨いでよい。吸収コア31の幅方向Wの中心を挟んで両側に配置された構成と比較して、変形基点部80間において力が分断されず、吸収コア31を厚さ方向に変形させ易くなる。好適には、変形基点部80は、吸収コア31の幅方向Wの中心を通り、前後方向Lに延びるコア中心線31WLに対する幅方向Wの両側にそれぞれ配置され、両側の変形基点部80は、コア中心線31WLに対して線対称であってよい。コア中心線31WLに対する両側において同じような形状で変形させることができる。また、変形例において、変形基点部80は、幅方向Wに離間して複数配置され、吸収コア31の幅方向Wの中心を挟んで一対で設けられてよい。具体的には、変形基点部80は、コア中心線31WLに配置されず、コア中心線31WLよりも幅方向Wの一方側に位置する変形基点部80と、コア中心線31WLよりも幅方向Wの他方側に位置する変形基点部80と、を有していてもよい。当該変形例によっても、吸収コア31のコア中心線31WLを含んだ幅方向Wの一定範囲にわたって、吸収コア31を厚さ方向に変形させることができる。
【0076】
吸収コア31の前端縁31Fには、切り欠き部35が形成されてよい。切り欠き部35は、前端縁から後側に向かって延びてよく、前後方向Lに平行であってもよいし、前後方向Lに対して傾斜しつつ後側に向かって延びてもよい。また、切り欠き部35は、前後方向Lに延びる切り込みであってもよいし、幅方向Wに延びる一定の範囲にわたって吸収材料が配置されていない領域であってもよい。切り欠き部35において吸収コア31が変形し易くなり、おむつ10の前端縁10F側から変形基点部80まで延びる皺が切り欠き部35に形成される。前後方向Lに延びる皺の位置をコントロールでき、より意図した形状の変形を実現できる。また、腰周り伸縮部45の収縮によって吸収コア31の前端縁31Fが幅方向Wに収縮し易くなり、おむつ10の前端縁10Fに向かう先細り形状をより実現し易くなる。
【0077】
切り欠き部35は、幅方向Wに間隔を空けて複数設けられてよい。当該構成によれば、吸収コア31の前端縁31Fに幅方向に間隔を空けて複数の変形基点が形成される。幅方向Wに一定の間隔を空けて当該皺が形成されるため、幅方向Wに沿った断面において、吸収コア31の前端縁31Fに変形基点が複数形成され、より身体の丸みに沿うような形状を実現できる。本実施の形態では、コア中心線31WL上に配置された切り欠き部35と、コア中心線31WLに対する幅方向Wの一方側に配置された切り欠き部35と、コア中心線31WLに対する幅方向Wの他方側に配置された切り欠き部35と、が設けられている。切り欠き部35の後端縁は、収縮部の前端縁よりも前側であってよい。切り欠き部35の前後方向の長さを長く形成することにより、吸収コアの変形基点及び変形による皺をよりコントロールできる。また、変形基点部80よりも前側であってよい。切り欠き部35の前後方向の長さを短く形成することにより、吸収コアの吸収面積を確保できる。また、切り欠き部35は、吸収コア31の幅方向Wの長さを3等分した領域のうち、幅方向Wの中央に位置する領域に配置されてよく、より好適には、幅方向Wの中央に位置する領域のみに配置されてよい。腰周り伸縮部45により幅方向Wの中央側に引き寄せられる吸収コア31の変形をより実現し易くなる。
【0078】
切り欠き部35から前後方向Lに延びる延長線35FL上には、変形基点部80が配置されてよい。おむつ10の前端縁10F側から後側に延びる皺を変形基点部80において受け、吸収コア31が厚さ方向に変形し易くなる。また、おむつ10の前端縁10F側から後側に延びる皺を変形基点部80において分断でき、変形基点部80の前側の領域と後側の領域とで異なる形状を実現できる。
【0079】
腰周り伸縮部45の収縮力は、脚周り伸縮部42の収縮力よりも高くてよい。腰周り伸縮部45の収縮力が高いほど、腰周り伸縮部45の収縮に伴って変形基点部80を基点に厚さ方向に変形し易くなる。また、脚周り伸縮部42の収縮力が高いほど、吸収コア31よりも幅方向Wの外側において脚周り伸縮部42が着用者側に近づき、左右の脚周り伸縮部42間が身体から離れるように変形し易い。腰周り伸縮部45の収縮力が比較的高いため、左右の脚周り伸縮部42間が身体から離れるような変形よりも、変形基点部80を基点に厚さ方向に折れる変形を実現し易くなる。
【0080】
本実施形態において、「腰周り伸縮部の収縮力」及び「脚回り伸縮部の収縮力」は、以下の方法によって測定される。まず、測定対象となる試験片を作成する。吸収性物品10を伸長させた伸長状態において、腰周り伸縮部が配置された領域及び脚回り伸縮部が配置された領域を囲むように線を引く。次いで、線に沿って試験片を切り出す。次に、切り出した試験片の両端部を引張試験器のチャック(挟持具)によって挟持する。このとき、チャック間の距離を50mmとする。次に、チャックの一方を固定した状態で、チャック間の距離を変えるようにチャックのもう一方を移動させる。このときのチャックの移動スピードは、300mm/minとする。なお、チャックの移動方向を変えるタイミングは、最大伸長時の95%の地点とする。チャックの移動中に、チャックに係る応力を測定し、伸長状態から60%(一定幅)の状態で得られた応力(N)を「収縮力」と定義する。このようにして、収縮力を得ることができる。
【0081】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0082】
上記実施形態では、吸収性物品10は、テープ型の吸収性物品である。この代わりに、前胴回り域と後胴回り域を接合するサイド接合部を有するいわゆるパンツ型の吸収性物品であってもよい。パンツ型の吸収性物品における脚周り伸縮部は、伸縮性部材のうち脚回りに沿って配置される伸縮性部材であり、サイド接合部よりも前後方向Lの内側に位置する伸縮性部材である。脚回りに沿って配置される伸縮性部材がサイド接合部の股下側の端縁を跨ぐ構成にあっては、脚回り伸縮部の前端縁は、サイド接合部の股下側の端縁に一致する。
【産業上の利用可能性】
【0083】
脚周り伸縮部よりも前側の領域の変形をコントロールし易い使い捨ておむつを提供することができる。
【符号の説明】
【0084】
10 :使い捨ておむつ
22 :サイドシート
31 :吸収コア
35 :切り欠き部
42 :脚周り伸縮部
45 :腰周り伸縮部
60 :防漏ギャザー
61 :防漏弾性部材
62 :幅基端部
63 :収縮部
64 :前後基端部
80 :変形基点部
L :前後方向
S1 :前胴周り域
S2 :後胴周り域
S3 :股下域
T :厚さ方向
W :幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10