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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】揚げ物衣用ミックス
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20220401BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20220401BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20220401BHJP
   A23L 29/294 20160101ALI20220401BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 D
A23L29/256
A23L29/294
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018090901
(22)【出願日】2018-05-09
(65)【公開番号】P2019195292
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤村 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸司
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 総一郎
(72)【発明者】
【氏名】小舘 愛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 匡
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-319451(JP,A)
【文献】特開2007-181425(JP,A)
【文献】特開平06-153823(JP,A)
【文献】特開昭49-19054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/117-9/20
A23L 5/10
A23L 29/256
A23L 29/294
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状の衣材として使用される、揚げ物用衣ミックスであって、
前記ミックス中にアルギン酸1価金属塩0.1~質量%及び2価金属の塩0.1~1質量%を含有し、
前記アルギン酸1価金属塩は、アルギン酸ナトリウム及びアルギン酸カリウムから選択される1種以上であり、
前記2価金属の塩は、20℃の水に対する溶解度が0.1(g/100g水)以下であり、且つ炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム及び炭酸マグネシウムから選択される1種以上であり、
前記ミックス100質量部と20℃の水400質量部との混合液のpHが7.0~12.0である、揚げ物衣用ミックス。
【請求項2】
請求項1に記載の揚げ物衣用ミックス100質量部と液体50~500質量部とを含む液体状の衣材。
【請求項3】
請求項1に記載の揚げ物衣用ミックス100質量部と液体50~500質量部とを含む液体状の衣材を具材に付着させ、加熱調理する工程を有する揚げ物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物の製造時に衣の材料として使用される揚げ物衣用ミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
揚げ物は、各種の食材からなる具材を油中で加熱調理することで得られる食品である。揚げ物には、具材に衣材を付着させずにそのまま油ちょうして得られる素揚げ等もあるが、その多くは、表面に衣材が付着した具材を加熱調理することで得られ、具材の表面に衣材からなる衣が付着している。表面に衣材が付着した具材を高温の油中で加熱することより、衣材が油に直接触れて形成された衣は、サクミのある独特の食感と風味を有し、一方で中身の具材は、衣の内側で蒸されたように火が通っていて旨味が凝縮されたものとなる。揚げ物は数えきれないほどのバリエーションを有し、非常に人気がある食品である。
【0003】
揚げ物の製造に使用される衣材とは、通常、具材に下味をつける調味料のみを付着させる場合は別として、具材の表面に付着させる素材全般を指し、大きく分類すると粉末状のものと液体状のものがある。粉末状の衣材の典型例としては、打ち粉やブレダー、パン粉等が挙げられ、液体状の衣材の典型例としては、マリネーション液やバッター液が挙げられる。これらの衣材は、1種類を単独で用いることもあるし、複数種を併用し又は重層的に用いて、厚みのある衣を形成することもある。このように、揚げ物を製造するに当たっては、衣材のタイプの選択の他、衣の厚みや付着量、衣と具材とのバランス等、工夫すべき点が数多くある。
【0004】
アルギン酸はゲル化する性質が知られており、これを衣材に配合することで各種の効果を得ることが提案されている。例えば特許文献1には、アルギン酸を含み、pHが3.6~4.5である可食性皮膜用溶液に具材を接触させた後に、さらに多価金属塩溶液に接触させて、具材との結着性に優れる可食性皮膜を形成することが記載されている。また特許文献2には、アルカリ処理した固形食品にアルギン酸プロピレングリコールエステルを含む衣材を付着させ、油ちょう調理して衣に機能性を付与し、得られた揚げ物を冷凍することが記載され、この冷凍揚げ物は食感が良く、時間経過後も硬くなりにくく、取扱もしやすいとされている。
【0005】
また、特許文献3には、小麦粉加工食品の揚げ調理の際の吸油を抑制し、食感を改善するために、アルギン酸プロピレングリコールエステルとカルボキシメチルセルロースを小麦粉加工食品の品質改良剤とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-23861号公報
【文献】特開2015-23846号公報
【文献】特開2016-158518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
揚げ物には、調理直後から時間が経過すると、具材の水分が衣に移行することによって、具材のジューシーさが失われると共に衣が柔らかくなって、独特の食感が失われやすいという問題がある。同様に、具材に衣材を付着させ、あとは揚げ油に投入するだけという調理直前の状態で、未加熱のまま時間が経過すると、具材から染み出たドリップ液が衣材に移行してしまう。このような衣材付き具材を加熱調理すると、具材が小さくなりパサついてしまうとともに、衣材が焦げやすくなり、きれいな揚げ色が出しにくくなる。家庭では、具材に衣材を付けた後は直ちに調理されるし、大規模調理される揚げ物も、具材に衣材を付着させた状態で長時間保管することはほとんど行われなかったため、このような問題はあまり認知されていなかった。しかし近年は、冷蔵温度帯での流通が多く行われるようになってきており、工場で衣材付けまで行った状態で、冷蔵温度で店舗まで輸送され、店舗で調理販売される揚げ物が増えてきている。このような流通形態では、前述の問題があることを本発明者らは認識した。
【0008】
特許文献1~3の技術は、揚げ物の油ちょう後の品質を向上させ得るものであるが、衣材を付着させ、油ちょう調理するまでの間に品質が低下することを課題とするものではなかった。
【0009】
本発明の課題は、衣材付きの具材を加熱調理せずに冷蔵温度で保管した場合でも、衣に良好な揚げ色が付き、具材にパサつきが無い良好な食感を有する揚げ物を製造可能な揚げ物衣用ミックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ミックス中にアルギン酸1価金属塩0.1~5質量%及び2価金属の塩を含有し、該2価金属の塩は、20℃の水に対する溶解度が0.1質量%以下であることを特徴とする揚げ物衣用ミックスである。
また本発明は、前記揚げ物衣用ミックス100質量部と液体50~600質量部とを含む液体状の衣材である。
また本発明は、前記揚げ物衣用ミックス100質量部と液体50~600質量部とを含む液体状の衣材を具材に付着させ、加熱調理する工程を有する揚げ物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、衣材付きの具材を加熱調理せずに冷蔵温度で保管した場合でも、衣に良好な揚げ色が付き、具材にパサつきが無い良好な食感を有する揚げ物を製造することができ、また、これらの効果は、冷凍温度で保管した場合や、いわゆるフローズンチルド商品に適用した場合にも、同様に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の揚げ物衣用ミックスは、アルギン酸1価金属塩を含有する。アルギン酸1価金属塩は、アルギン酸と1価の金属との塩を指す。アルギン酸1価金属塩は、アルギン酸ナトリウム及びアルギン酸カリウムから選択される1種以上であることが好ましく、アルギン酸ナトリウムがより好ましい。アルギン酸類としては、アルギン酸1価金属塩のほかに、アルギン酸、アルギン酸多価金属塩やアルギン酸プロピレングリコールエステルが食用に用いることができるが、アルギン酸及びアルギン酸多価金属塩は、衣材とした場合にゲル化しやすい性質を有し、またアルギン酸プロピレングリコールエステルは逆にゲル化しにくい性質を有するため、本発明の揚げ物衣用ミックスに用いるには適さない。
【0013】
本発明の揚げ物衣用ミックス中におけるアルギン酸1価金属塩の含有量は、ミックス100質量%中、0.1~5質量%であり、0.5~3質量%が好ましい。0.1質量%未満では効果に乏しく、5質量%を超えると衣が硬い食感となる。
【0014】
本発明の揚げ物衣用ミックスは、さらに2価金属の塩を含有する。本発明においては、2価金属の塩として、水に難溶性のもの、より具体的には、20℃の水に対する溶解度が0.1(g/100g水)以下である2価金属の塩を使用する。ここで溶解度とは、100gの水に溶解するg数を表したものであり、具体的には以下の方法によって測定することができる。
(溶解度の測定方法)
フラスコに100gの水を入れ、ここに金属塩を正確に2g加え、密栓して20℃の恒温槽中で1時間振盪する。溶け残った金属塩をろ集して乾燥後に質量を測定する。2gから測定値(g)を差し引いた値が溶解度である。
【0015】
2価金属は、食用に供することを考慮すると、カルシウム及びマグネシウムから選択される1種以上であることが好ましく、カルシウムがより好ましい。上記溶解度の測定方法を用いて求めた代表的なカルシウム塩及びマグネシウム塩の溶解度を、表1に示す。
【0016】
【表1】
【0017】
本発明において、2価金属の塩としては、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムから選択される1種以上を用いることが好ましい。尚、表1から明らかな通り、水酸化カルシウム及びリン酸二水素カルシウムは、2価金属を含んでいるが、20℃の水に対する溶解度が0.1(g/100g水)を超えているため、本発明においては不適である。
【0018】
本発明の揚げ物衣用ミックス中における2価金属の塩の含有量は、ミックス100質量%中、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。0.1質量%未満では効果が弱いか、効果が衣の一部になる等、局限的になる。一方で含有量の上限は特に限定されないが、極端に多いと、金属塩特有の異味を感じるようになるほか、衣材の具材に対する結着性が低下したり、衣の食感が悪くなることがある。一般的には2価金属の塩の含有量は、ミックス100質量%中、30質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0019】
本発明の揚げ物衣用ミックスは、前述のアルギン酸1価金属塩及び2価金属の塩のほかに、主成分となる穀粉類及び/又は澱粉類を含有する。穀粉類及び澱粉類としてはそれぞれ、一般的に揚げ物の衣材に用いられるものを利用することができる。穀粉類としては、例えば、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉等)、ライ麦粉、大麦粉、米粉等が挙げられ、澱粉類としては、例えば、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉等の未加工澱粉、及びこれら未加工澱粉に油脂加工、α化、エーテル化、エステル化、架橋、酸化等の処理の1つ以上を施した加工澱粉が挙げられ、本発明の揚げ物衣用ミックスにおいては、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明の揚げ物衣用ミックスは、前述の穀粉類及び/又は澱粉類、アルギン酸1価金属塩並びに2価金属の塩に加えて、必要に応じて、揚げ物衣用ミックスの製造に通常用いられ得る他の原料を含んでいてもよい。そのような他の原料としては、例えば、糖類、食塩や粉末醤油等の調味料、油脂、増粘剤、蛋白質、膨張剤、不溶性食物繊維等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の揚げ物衣用ミックスにおけるこれらの他の原料の含有量は、ミックス100質量%中、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0021】
本発明者らは、本発明の効果が奏される機序について、以下のように推測している。
2価金属の塩はアルカリ域では水に不溶であるが、酸性域では溶解する。ここで、具材(とりわけ畜肉類)のドリップ液は酸性であるので、衣材中の2価金属の塩にドリップ液が接すると、該2価金属の塩が溶解する。その溶解物とアルギン酸1価金属塩とが接すると、それらからゲルが形成され、このゲルにより、具材の表面を被覆する被膜が形成される。この被膜により、ドリップ液の衣材への染み出しが防止される。
【0022】
以上の点を考慮すると、本発明の揚げ物衣用ミックスは、pHが中性~アルカリ性の範囲、より具体的には、ミックス100質量部と20℃の水400質量部との混合液のpHが7.0~12.0であることが好ましい。このようなpHであると、アルギン酸1価金属塩及び水に難溶性の2価金属の塩のゲル化を、具材のドリップが発生した部位で局所的に起こすことができるため、衣が硬くなったり、剥がれやすくなることなく、本発明の効果を発揮することができるようになる。ここでミックスのpHは、以下の方法で測定することができる。尚、ミックスのpHを酸性側に調整するには、クエン酸、酢酸、リン酸塩、酒石酸等の酸性剤をミックスに配合することで行い得る。逆にアルカリ側に調整するには、重曹、かんすい(かん粉)等のアルカリ剤をミックスに配合することで行い得る。但し、炭酸カルシウムのような、前述した水に難溶性の2価金属の塩に該当するものは適さない。
(ミックスのpHの測定方法)
ミックス100質量部と20℃の水400質量部との混合液を調製し、該混合液のpHをpHリトマス試験紙又はpHメーターを使用して測定する。
【0023】
本発明の揚げ物衣用ミックスは、粉末状の衣材である打ち粉やブレダー、パン粉の形態として使用することができ、或いは、液体状の衣材であるマリネーション液やバッター液の形態として使用することもできる。
より詳細には、粉末状の衣材として本発明の揚げ物衣用ミックスを用いて揚げ物を製造する際には、常法に準じて、該ミックスをその粉末状のまま具材の表面に直接付着させる等して、打ち粉として使用してもよく、溶き卵や牛乳に具材をくぐらせた後に該ミックスを付着させて、ブレダーとして使用してもよい。或いは、本発明の揚げ物衣用ミックスを造粒して顆粒状にして前記のように付着させてもよいし、本発明の揚げ物衣用ミックスをパン粉原料に混合してパン粉を製造し、この本発明の揚げ物衣用ミックスを含有するパン粉を具材に付着させてもよい。
【0024】
また、液体状の衣材として本発明の揚げ物衣用ミックスを用いて揚げ物を製造する際には、常法に準じて、該ミックスを水や油等の液体に懸濁してマリネーション液とし、該マリネーション液に具材を浸漬するマリネを行ってもよく、或いは、該ミックスを液体と混ぜる等して、本発明の揚げ物衣用ミックスを含有するバッター液を調製して使用してもよい。さらに、本発明の揚げ物衣用ミックスを含有するバッター液を付着させた後、本発明の揚げ物衣用ミックスを含有するパン粉を付着させる等、同種又は異種の衣材を重層的に付着させてもよい。
【0025】
本発明の揚げ物衣用ミックスを、マリネーション液やバッター液等の液体状の衣材の調製用として使用する場合、該ミックスと混合される液体としては、水が一般的であるが、水以外の液体、例えば、牛乳、溶き卵、出し汁、煮汁、液体油等を用いることもでき、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の揚げ物衣用ミックスを用いてマリネーション液やバッター液等の液体状の衣材を調製する場合、本発明の揚げ物衣用ミックスと混合する液体の使用量は、揚げ物の製造に使用する具材の種類等に応じて適宜調整すればよく特に限定されない。具体的には、揚げ物衣用ミックス100質量部に対して、好ましくは50~500質量部、さらに好ましくは80~400質量部、より好ましくは100~300質量部である。本発明には、前述した本発明の揚げ物衣用ミックス100質量部と液体50~500質量部とを含むマリネーション液やバッター液等の液体状の衣材、及び、該マリネーション液やバッター液等の液体状の衣材を具材に付着させ、加熱調理する工程を有する揚げ物の製造方法が包含される。
【0026】
本発明の揚げ物衣用ミックスを用いた揚げ物の製造方法においては、該ミックスを粉末状の衣材として用いて又は液体状の衣材の調製用として用いて、常法に準じて、具材の表面の少なくとも一部にこれを付着させ、油ちょうすることで、揚げ物を製造することができる。本発明は、種々の揚げ物の製造に適用することができるが、特に、フライ、天ぷら、フリッター、から揚げに好適であり、とりわけ、フライに好適である。揚げ物の具材としては、特に限定されず、例えば、鶏、豚、牛、羊、ヤギ等の畜肉類、イカ、エビ、アジ等の魚介類、野菜類等の種々のものを使用することができる。本発明の揚げ物衣用ミックスは、とりわけ、具材からのドリップが多い畜肉類及び魚介類への使用に好適であり、ドリップによる衣の着色が大きい畜肉類への使用に特に好適である。具材には、本発明の揚げ物衣用ミックスあるいは該ミックスから調製された衣材を付着させる前に、必要に応じて、下味を付けてもよい。
【0027】
本発明の揚げ物衣用ミックスは、衣材を付着させた具材を冷蔵温度で保管する場合に好適に用いることができ、特に、流通段階において、衣材を付着させた具材を冷蔵温度で保管、輸送する場合に適している。また、衣材を付着させた具材を冷凍温度で保管する場合や、いわゆるフローズンチルド商品(具材に衣材を付着させた後に一旦冷凍して冷凍状態で保管し、その後の流通段階で解凍して、冷蔵温度帯で引き続き保管されたり、流通下流の店舗、消費者等へ冷蔵温度帯で輸送・販売される商品)に適用した場合にも、本発明の揚げ物衣用ミックスは良好な効果を発揮することができる。
【実施例
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、実施例6、7、10、13、14は参考例である。
【0029】
〔実施例1~16及び比較例1~7〕
下記表の配合で各原料を混合し、揚げ物衣用ミックスを製造した。尚、ミックスのpHを前記(ミックスのpHの測定方法)で測定したところ、実施例1~12、15及び16比較例1~7ではいずれも、pH7.5~9.1の範囲であり、実施例13及び14のミックスのpHは、表に記載の通りであった。
【0030】
〔試験例〕
各揚げ物衣用ミックス100質量部に対して水160質量部を混合し、軽くかき混ぜてバッター液を製造した。厚さ14mmの豚ロース肉(160g/1枚)を筋切し、小麦粉を打ち粉して各バッター液をくぐらせて付着させた後、市販のパン粉をまぶして付着させ(1枚当たり10g)、とんかつ用の衣材付き具材を得た。これらの衣材付き具材を並べてラップをし、冷蔵庫(4℃)で24時間保管した。保管後の各具材を、170℃の油槽に投入して4分半油ちょうして、とんかつを製造した。揚げたての外観及び肉と衣の食感を、10名の訓練された専門パネラーにより下記評価基準で評価した。それらの結果を、10名の評価点の平均点として下記表に示す。
【0031】
(とんかつ外観の評価基準)
5点:全体が均一にキツネ色に揚がっており、極めて良好。
4点:やや色ムラがあるがほぼ均一にキツネ色に揚がっており、良好。
3点:色ムラがあるが、焦げ色の部分はない。
2点:色ムラがあり、焦げ色の部分があり、不良。
1点:全体に焦げ色がついており、極めて不良。
(とんかつ肉の食感の評価基準)
5点:肉は非常に柔らかくジューシーさに富み、極めて良好。
4点:肉は柔らかくジューシー感があり、良好。
3点:肉はややパサついている。
2点:肉はパサつきがあり、やや収縮が大きく、不良。
1点:肉はパサつきが強く、収縮が大きく、極めて不良。
(とんかつ衣の食感の評価基準)
3点:サクサクとした食感があり、良好。
2点:サクサクとした食感が物足りない。
1点:硬いか噛み切りにくく、不良。
【0032】
【表2】
【0033】
比較例1~3、5では、ゲル化が起こらないため、肉のドリップが衣材に浸出した部分で焦げが発生した。比較例4では、溶解度が本発明で規定する範囲内にある2価金属の塩を用いていないため、具材に衣材を付着させた後早期にゲル化が起こり、衣が硬くなった。
【0034】
【表3】
【0035】
【表4】
【0036】
【表5】
【0037】
【表6】