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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-31
(45)【発行日】2022-04-08
(54)【発明の名称】クリーム系ソース
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/00 20160101AFI20220401BHJP
【FI】
A23L23/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018565571
(86)(22)【出願日】2018-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2018003014
(87)【国際公開番号】W WO2018143213
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2017016029
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田 可南子
(72)【発明者】
【氏名】山下 勇
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-205966(JP,A)
【文献】特開2007-259834(JP,A)
【文献】特開2004-215539(JP,A)
【文献】特開2008-125394(JP,A)
【文献】特開2012-039897(JP,A)
【文献】特開2005-027563(JP,A)
【文献】日本食品標準成分表2015年版(七訂)アミノ酸成分表編, [online],2015年,pp.186-191, 212-213,URL:https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365473.htm,[Retrieved on] 2021.7.28
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉と非熟成チーズ0.5~10質量%とを含有し、生クリームの含有量が質量%未満であるクリーム系ソース。
【請求項2】
前記非熟成チーズが、クリームチーズ、マスカルポーネ、モツァレラ、フロマージュ・ブラン、カッテージ、リコッタ、フェタ、ブルマン、バノン、ブロッチュ及びクワルクからなる群から選択される1種以上である請求項1に記載のクリーム系ソース。
【請求項3】
前記小麦粉の含有量が10~40質量%である請求項1又は2に記載のクリーム系ソース。
【請求項4】
前記小麦粉の全質量に占める熱処理小麦粉の割合が0.1質量%以上である請求項1~3のいずれか1項に記載のクリーム系ソース。
【請求項5】
さらに、グリシン及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上を0.03質量%以上含有する請求項1~4のいずれか1項に記載のクリーム系ソース。
【請求項6】
さらに、加工澱粉から選択される1種以上を前記クリーム系ソースの全質量に対して0.5~20質量%含有する請求項1~5のいずれか1項に記載のクリーム系ソース。
【請求項7】
さらに、増粘多糖類から選択される1種以上を前記クリーム系ソースの全質量に対して0.005~1質量%含有する請求項1~6のいずれか1項に記載のクリーム系ソース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チーズをはじめとする乳原料を用いて製造される乳化状の液状食品であるクリーム系ソースに関する。
【背景技術】
【0002】
クリームソースは、他の食材にかけて食されるソースの一種であり、一般に、牛乳などの乳原料を含む原料を適度に加熱しながら製造される。クリームソースの典型的なものは、ベシャメルソースに生クリームを加えたものであり、生クリームに味付けして煮詰めたものなどもある。ベシャメルソースは、小麦粉、バター及び牛乳をベースとしたソースであり、ホワイトソースとも呼ばれる。また従来、クリームソースにチーズを配合することも行われており、特許文献1には、クリームチーズを14質量%含むカルボナーラ用パスタソースが記載され、特許文献2には、クリームチーズとナチュラルチーズの一種であるパルミジャーノレジャーノとを合計で約10質量%含む冷凍カルボナーラソースが記載されている。
【0003】
クリームソースは濃厚なコクと乳風味が特徴の1つであり、そのような特徴あるクリームソースを得るために、従来は原料に生クリームを加えて製造されている。しかし、生クリームは乳脂肪を多量に含むため、生クリーム入りのクリームソースはカロリーが高く、食生活や個人の嗜好の面において健康志向が強まっている現状では支持され難いという問題がある。また、生クリーム入りのクリームソースは、冷凍保存した場合に脂肪分と他の成分とに分離しやすく、冷凍したものを解凍すると離水したり、食感が悪化するという問題もある。また、生クリームは比較的高価であり、長期保存も難しいことから、これを原料として用いると、製造コストなどの点で不利になり得る。従って、生クリームを用いずとも、生クリームを用いて製造した場合と遜色ない風味を有するクリームソースが要望されている。特許文献3には、乳脂肪分を減じても、コク味などの味の持続性に優れたボディ感と、濃厚で滑らかなテクスチャーとを有するパスタ用クリームソースを得るために、牛乳などの原料の他に、イヌリン、アラビアガム、ガッティガムなどの特定の多糖類を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-215539号公報
【文献】特開2007-259834号公報
【文献】特開2011-205966号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の課題は、生クリームを含まずとも、濃厚なコクと乳風味を有するクリーム系ソースを提供することである。
【0006】
本発明は、小麦粉と非熟成チーズ0.5~10質量%とを含有するクリーム系ソースである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明においてクリーム系ソースとは、チーズ、バター、牛乳、クリーム、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダーなどの乳原料を用いて製造される乳化状の液状食品である。本発明のクリーム系ソースには、ベシャメルソースに生クリームを加えた狭義のクリームソースのみならず、狭義のクリームソースに類似する、いわゆるクリームソース風食品が包含される。このクリームソース風食品は、狭義のクリームソースをベースとして製造されるもので、厳密に言えば、狭義のクリームソースの範疇からは外れるものの、依然として、狭義のクリームソースのイメージを有している食品を意味し、例えば、生クリームを用いずに常法に従って製造されたクリームソースが該当する。
【0008】
本発明のクリーム系ソースは非熟成チーズを含有する。クリーム系ソースの原料として非熟成チーズを用いることで、生クリームを用いずとも、濃厚なコクと乳風味を有し、冷凍保存耐性のあるクリーム系ソースが得られるようになる。チーズは、カード(curd)から乳清を除去したものであり、カードの熟成工程を経て製造された熟成チーズ(ナチュラルチーズ)と、該熟成工程を経ないか又は該熟成工程がほとんど行われずに製造された非熟成チーズ(フレッシュチーズ)とに大別される。カードは、液状の乳原料から調製された液状乳に乳酸菌やレンネット等を加えて発酵・固化させたもので、凝乳などとも呼ばれる。熟成チーズは、乳原料由来の風味に、熟成工程によって付与される、乳酸菌等の微生物や各種酵素の作用(蛋白質や脂肪分の分解)による風味が加わり、特有の芳香や呈味を有する。このような熟成チーズとは対照的に、カードから乳清を除いた状態を維持したチーズが非熟成チーズであり、本発明ではこの非熟成チーズを用いる。
【0009】
本発明では、種類を問わず種々の非熟成チーズを用いることができ、例えば、クリームチーズ、マスカルポーネ、モツァレラ、フロマージュ・ラン、カッテージ、リコッタ、
フェタ、ブルマン、バノン、ブロッチュ、クワルクが挙げられ、これらの非熟成チーズの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明で用いる非熟成チーズの形態は特に限定されず、粘土状のような塊状でもよいが、ソース製造の際の分散性を考慮すると、粉末状が好ましい。粉末状の非熟成チーズは、例えば、水分含量が比較的多い塊状の非熟成チーズを乾燥後に粉砕することで得られる。
【0010】
本発明のクリーム系ソースにおいて非熟成チーズの含有量は、該ソースの全質量に対して0.5~10質量%であり、好ましくは0.8~9質量%、さらに好ましくは1.2~8質量%である。非熟成チーズの含有量が0.5質量%未満では、ソースに濃厚なコクと乳風味を付与できず、非熟成チーズの含有量が10質量%を超えると、酸味が強くなってクリームソースらしい風味が低下するおそれがある。
【0011】
本発明のクリーム系ソースは、非熟成チーズに加えてさらに、小麦粉を含有する。本発明で用いる小麦粉は、通常食用に用いられる小麦粉であればよく、例えば、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、デュラム粉を挙げられ、これらの小麦粉の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
本発明のクリーム系ソースにおいて、小麦粉として熱処理小麦粉を用いると、ソースの濃厚さにまろやかさが付与されるため好ましい。本発明では、クリーム系ソースに含有される小麦粉の一部が熱処理小麦粉であってもよく、全部が熱処理小麦粉であってもよい。クリーム系ソースに含有されている小麦粉の全質量に占める熱処理小麦粉の割合は、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。
【0013】
本発明で用いる熱処理小麦粉としては、未加熱の小麦粉に加熱処理を施して得られるもの、及び、未加熱の原料小麦に加熱処理を施した後に該原料小麦を製粉して得られるもののいずれも用いることができ、小麦粉又は原料小麦に施される加熱処理は、乾熱処理でも湿熱処理でもよい。乾熱処理は、処理対象たる小麦粉又は原料小麦を水分無添加の条件で加熱する処理であり、処理対象中の水分を積極的に蒸発させる処理である。乾熱処理は、例えば、オーブンでの加熱、焙焼窯での加熱、乾燥器を用いる加熱、熱風を吹き付ける熱風乾燥、高温低湿度環境での放置などによって実施することができる。湿熱処理は、処理対象たる小麦粉又は原料小麦の水分を維持しながら、又は処理対象に水分を加えながら、処理対象を加熱する処理である。湿熱処理において、処理対象に加える水分としては、水、水蒸気を用いることができ、水蒸気としては飽和水蒸気が好ましく用いられる。湿熱処理における加熱方法は特に制限されず、例えば、熱風などの熱媒体を処理対象に直接接触させる方法、処理対象を高湿度雰囲気下において間接的に加熱する方法が挙げられる。湿熱処理の実施装置は特に制限されず、例えば、オートクレーブ、スチームオーブン、一軸又は二軸型エクストルーダーが挙げられる。
【0014】
本発明のクリーム系ソースにおいて、熱処理小麦粉を含む小麦粉の含有量は、該ソースの全質量に対して、好ましくは0.1~40質量%、さらに好ましくは0.5~35質量%、より好ましくは1~30質量%である。小麦粉の含有量が0.1質量%未満であると、ソースにおいてコクや乳風味が物足りなくなるおそれがあり、小麦粉の含有量が40質量%を超えると、ソースが粉っぽくなってクリームソースらしい風味が低下するおそれがある。
【0015】
本発明のクリーム系ソースは、非熟成チーズ及び小麦粉に加えてさらに、グリシン及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される1種以上を含有していてもよい。クリーム系ソースにグリシン及び/又は酢酸ナトリウムを配合することで、ソースの濃厚な風味の持続性が一層向上し得る。本発明のクリーム系ソースにおいてグリシン及び酢酸ナトリウムの総含有量は、該ソースの全質量に対して、好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05~3質量%である。
【0016】
また、本発明のクリーム系ソースは、非熟成チーズ及び小麦粉に加えてさらに、加工澱粉及び増粘多糖類からなる群から選択される1種以上を含有していてもよい。クリーム系ソースに加工澱粉及び/又は増粘多糖類を配合することで、ソースの濃厚な口当たりが改善され得る。加工澱粉としては、例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉などの原料澱粉に、酸処理、酸化処理、架橋処理、エーテル化処理、エステル化処理、油脂加工処理、α化処理などの加工処理の1種又は2種以上を施したものが挙げられる。増粘多糖類としては、食用として一般的に用いているものを用いることができ、例えば、キサンタンガム、タマリンドシードガム、グアガム、ローカストビーンガム、タラガム、ジェランガム、カラヤガム、カラギーナン、プルラン、ファーセルラン、アルギン酸ナトリウムペクチンが挙げられる。
【0017】
本発明のクリーム系ソースにおいて加工澱粉の含有量は、該ソースの全質量に対して、好ましくは0.5~20質量%、さらに好ましくは1.5~15質量%である。
また、本発明のクリーム系ソースにおいて増粘多糖類の含有量は、該ソースの全質量に対して、好ましくは0.005~1質量%、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0018】
本発明のクリーム系ソースは、前記成分(非熟成チーズ、小麦粉、グリシン及び酢酸ナトリウム、加工澱粉及び増粘多糖類)以外の他の成分を含有していてもよく、例えば、小麦粉以外の穀粉類、未加工澱粉類、糖類、卵類、調味料、色素、乳化剤などが挙げられ、クリーム系ソースの種類などに応じて1種以上を適宜選択すればよい。本発明のクリーム系ソースにおいて前記成分以外の他の成分の含有量は通常、該ソースの全質量に対して5~70質量%程度である。また、本発明のクリーム系ソースは、固形具材を含有していてもよい。固形具材としては、例えば、肉類、魚介類、野菜類、キノコ類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
本発明のクリーム系ソースは、生クリームを含有していてもよいが、前述した組成を有することで、生クリームを含有せずとも、濃厚なコクと乳風味を有する。また、クリーム系ソースの原料に生クリームを用いないことで、前述した生クリームの使用に起因する不都合(高カロリー、冷凍時の脂肪分の分離と解凍後の品質劣化、製造コストの高騰など)の発生が回避される。本明細書でいう「生クリーム」には、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令において定義されているクリーム、即ち、「生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去したもの」が包含される。また、同省令の「乳製品の成分規格並びに製造及び保存の方法の基準」では、生クリームの成分規格として、「乳脂肪分18.0%以上、酸度(乳酸として) 0.20%以下、細菌数(標準平板培養法で1mL当たり)100,000以下、大腸菌群 陰性」と定められており、また生クリームには、製造方法の基準及び保存の方法の基準についても定めがある。さらに生クリームには、これらの定めのほかに、植物油脂や乳化剤などの添加物を一切加えることができないという条件がある。本明細書でいう「生クリーム」にはこれらの生クリームが包含される。本発明のクリーム系ソースにおいて、生クリームの含有量は、該ソースの全質量に対して、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。
【0020】
本発明のクリーム系ソースは、一般的なクリームソースの製造方法に準じて常法に従って製造することができる。具体的には例えば、小麦粉を牛乳や油脂と共にダマにならないように穏やかに撹拌加熱し、水でのばした後、その加熱混合物が品温50~98℃程度の状態で、非熟成チーズを加えて10~40分間程度加熱する工程を経て、本発明のクリーム系ソースが得られる。斯かる工程において、製造目的物たるクリーム系ソースの種類などによっては、非熟成チーズ添加後の加熱後に、グリシン、酢酸ナトリウム、加工澱粉、増粘多糖類、その他のソース原料及び固形具材の1種以上を加え、攪拌しながらソース全体に火が通るように加熱してもよい。
【0021】
より簡便には、本発明のクリーム系ソースは、前記で説明した成分、即ち非熟成チーズ及び小麦粉並びに必要に応じてグリシン、酢酸ナトリウム、加工澱粉及び増粘多糖類を水に加え、加熱混合することで製造することもできる。即ち本発明のクリーム系ソースは、固形具材を除く全原料を混合し、加熱するだけで製造することができ、濃厚なコクと乳風味を有し高品質でありながらも、比較的簡単に製造できるという利点を有する。この種のクリーム系ソースは一般に、小麦粉を含むルウを作製し、このルウに牛乳、チーズなどを加えて加熱する工程を経て製造されており、例えば特許文献3の実施例1のホワイトソースの製造方法は、クリームチーズを含む乳化液を作製し、該乳化液を、別途作製した小麦粉を含むルウに混合して加熱攪拌する工程を有する。本発明のクリーム系ソースは、前記成分を含んで構成されていることで、このような比較的煩雑な操作を要せずとも、簡単に製造できるものである。尚、本発明のクリーム系ソースにおける加水量は、水以外の成分100質量部に対して、好ましくは50~300質量部、さらに好ましくは55~200質量部、より好ましくは60~100質量部である。
【0022】
本発明のクリーム系ソースには、パスタソースやディップソースなどの、他の食材にかけて食される「ソース」と、それ自体の喫食が目的とされる「スープ」とが包含される。前者の「ソース」としてのクリーム系ソースの具体例としては、ホワイトルーをベースとしたホワイトクリームソースやカルボナーラソース、トマトソースをベースとしたトマトクリームソース、白ワインをベースとしたヴァンブランソースなどが挙げられる。また、後者の「スープ」としてのクリーム系ソースの具体例としては、ホワイトクリームスープ、ポタージュスープ、きのこクリームスープ、トマトクリームスープ、かにクリームスープ、ほたてクリームスープ、コーンクリームスープ、クラムチャウダーなどが挙げられる。本発明のクリーム系ソースは、例えば、シチュー、ハンバーグ、スパゲティ、グラタン等の食品に適用できる。本発明のクリーム系ソースは、製造後にそのまま喫食することもできるし、製造後に密封して殺菌するか又は冷蔵若しくは冷凍して低温状態とした上で保存することもできる。本発明のクリーム系ソースは、冷凍後に電子レンジ等の加熱調理器で再加熱しても、風味の良い状態で喫食することができる。
【実施例
【0023】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
〔実施例1~13及び比較例1~6〕
下記表1又は表2に示す配合で、クリーム系ソースを製造した。具体的には、表1又は表2の各原料を混合し、中火にかけて焦げないように攪拌しながら15分間加熱し、目的とするクリーム系ソースを製造した。使用した原料は下記の通り。
・小麦粉:薄力粉
・熱処理小麦粉:薄力粉を加熱蒸気で湿熱処理したもの
・油脂:サラダ油
・非熟成チーズ粉:クリームチーズ粉
・熟成チーズ粉:パルミジャーノ・レッジャーノチーズ粉
・澱粉:コーンスターチ
・水:清水
【0025】
〔試験例〕
各実施例及び比較例のクリーム系ソースを1食当たり80gずつトレイに分け、10名のパネラーに食してもらい、下記の評価基準に従って評価してもらった。また別に、各実施例及び比較例のクリーム系ソースを1食当たり80gずつトレイに分け、冷蔵庫(4℃)で24時間保管した後、電子レンジで500W、30秒再加熱後に、10名のパネラーに食してもらい、下記の評価基準に従って評価してもらった。結果を10名の評価点の平均値として下記表1~2に示す。
【0026】
<ソース風味の評価基準>
5点:濃厚なコクと乳風味が十分にあり、非常に良好。
4点:濃厚なコクと乳風味があり、良好。
3点:コク又は乳風味がやや物足りない。
2点:コク又は乳風味が物足りず、不良。
1点:コク又は乳風味が感じられず、非常に不良。
<ソース外観の評価基準>
5点:ソース全体が均一であり、非常に良好。
4点:ソース全体がほぼムラなく、良好。
3点:ソースが部分的にわずかに分離している。
2点:ソースが部分的に分離しており、不良。
1点:ソース全体に分離があり、非常に不良。
【0027】
【表1】
【0028】
表1に示す通り、実施例のクリーム系ソースは、生クリームを含んでいないにもかかわらず、製造直後及び再加熱後のいずれにおいても風味及び外観の点で、生クリームを含む比較例3のクリーム系ソースと同等以上のレベルであった。特に実施例7は、熱処理小麦粉を含むことに起因して、他の実施例よりも高評価であった。比較例1は小麦粉を含んでいないことが、また、比較例2は非熟成チーズ粉を含んでいないことが、それぞれ実施例よりも低評価となった原因と考えられる。また、熟成チーズ粉を含む比較例4が、非熟成チーズ粉を含む実施例に比して品質的に劣る結果となったことから、クリーム系ソースに含有させるべきチーズは、熟成よりも非熟成のものが有効であることがわかる。
【0029】
【表2】
【0030】
表2に示す結果から、クリーム系ソースにおける非熟成チーズの含有量は、実施例の範囲内である0.5~10質量%が好ましく、特に、実施例9~12の範囲内である1~9質量%程度、とりわけ、実施例10~11の範囲内である3~8質量%程度が好ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のクリーム系ソースは、生クリームを含まずとも、濃厚なコクと乳風味を有し、また、冷凍保存しても離水し難くソース全体が均一であり、解凍後の品質の劣化が生じ難い。