(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】作動媒体漏洩検知装置及び熱エネルギー回収装置
(51)【国際特許分類】
F01K 25/10 20060101AFI20220404BHJP
F02B 29/04 20060101ALI20220404BHJP
G01M 3/04 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
F01K25/10 Z
F02B29/04 L
G01M3/04 U
(21)【出願番号】P 2018054218
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】足立 成人
(72)【発明者】
【氏名】西村 和真
(72)【発明者】
【氏名】荒平 一也
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-152613(JP,A)
【文献】特開2014-190277(JP,A)
【文献】国際公開第2008/126723(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 25/10
F01D 25/00
F02G 5/02
F02B 29/04
G01M 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動媒体を検知可能なセンサによって構成された第1センサと、
作動媒体を検知可能なセンサによって構成された第2センサと、
前記第1センサが作動媒体を検知する一方で前記第2センサが作動媒体を検知しないときに、作動媒体の漏洩を示す出力を行う制御部と、を備え、
前記第1センサは、過給機からエンジンに供給される空気が流れる吸気ラインと作動媒体が流れる循環流路とに接続された加熱器における空気流路中の作動媒体を検知するか、又は前記吸気ラインにおける前記加熱器の下流側の部位中の作動媒体を検知するように配置され、
前記第2センサは、前記吸気ラインにおける前記加熱器よりも上流側で
、又は前記吸気ラインにおける前記加熱器よりも上流側の部位の周囲で作動媒体を検知するように配置される、作動媒体漏洩検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作動媒体漏洩検知装置において、
前記加熱器の前記空気流路、又は前記吸気ラインにおける前記加熱器と前記エンジンとの間の部位から一部の空気を抜き出す抜出流路と、
前記抜出流路に設けられ、空気中に含まれる水分を除去する水分除去機構と、を備え、
前記第1センサは、前記抜出流路に配置されている、作動媒体漏洩検知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の作動媒体漏洩検知装置において、
前記水分除去機構は、液体の通過を許容しかつ気体の通過を禁止するドレントラップを含み、
前記第1センサは、前記抜出流路における前記ドレントラップよりも上方に配置されている、作動媒体漏洩検知装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の作動媒体漏洩検知装置において、
前記抜出流路は、
前記水分除去機構が設けられた主流路と、
前記主流路から分岐した分岐流路と、を有し、
前記第1センサは、前記分岐流路に配置されている、作動媒体漏洩検知装置。
【請求項5】
請求項4に記載の作動媒体漏洩検知装置において、
前記水分除去機構は、前記主流路と前記分岐流路との接続部に設けられており前記空気に含まれる水分を除去するドライヤをさらに有する、作動媒体漏洩検知装置。
【請求項6】
請求項2に記載の作動媒体漏洩検知装置において、
前記水分除去機構は、前記空気に含まれる水分を除去するドライヤを有する、作動媒体漏洩検知装置。
【請求項7】
請求項6に記載の作動媒体漏洩検知装置において、
前記ドライヤで除去された水分を排出する排出流路と、
前記排出流路に設けられており、液体の通過を許容しかつ気体の通過を禁止するドレントラップと、をさらに備えている、作動媒体漏洩検知装置。
【請求項8】
請求項2から7のいずれか1項に記載の作動媒体漏洩検知装置において、
前記第1センサ及び第2センサの少なくとも一方は、
水分、前記作動媒体、一酸化炭素、硫化水素及びアンモニアを検知可能な半導体センサと、
水分、前記作動媒体、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄及び窒素酸化物を検知可能な赤外線センサと、を含む、作動媒体漏洩検知装置。
【請求項9】
請求項8に記載の作動媒体漏洩検知装置において、
一酸化炭素を除去可能な一酸化炭素除去部をさらに備えている、作動媒体漏洩検知装置。
【請求項10】
請求項2に記載の作動媒体漏洩検知装置において、
前記抜出流路は、当該抜出流路の上流側の端部から前記第1センサへ向かう空気の流れを形成するための穴を有する、作動媒体漏洩検知装置。
【請求項11】
過給機からエンジンに供給される空気が流れる吸気ラインと作動媒体が流れる循環流路とに接続された加熱器と、
前記循環流路における前記加熱器の下流側の作動媒体によって駆動される膨張機に接続された動力回収機と、
請求項1から10のいずれか1項に記載の作動媒体漏洩検知装置と、を備えた熱エネルギー回収装置。
【請求項12】
請求項11に記載の熱エネルギー回収装置において、
前記循環流路における前記加熱器よりも上流側に設けられた凝縮器と、
前記循環流路における前記加熱器よりも下流側に設けられた膨張機と、
前記循環流路のうち前記凝縮器と前記加熱器との間の部位に設けられた第1開閉弁と、
前記循環流路のうち前記加熱器と前記膨張機との間の部位に設けられた第2開閉弁と、をさらに備え、
前記制御部は、前記作動媒体の漏洩を示す出力を行うときに前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁を閉じる、熱エネルギー回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動媒体漏洩検知装置及び熱エネルギー回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過給機からエンジンへ供給される過給空気の熱を回収する熱エネルギー回収システムが知られている。例えば、特許文献1には、エンジンと、タービン及びコンプレッサーを有する過給機と、過給機からエンジンに供給される過給空気の熱を回収する排熱回収装置と、を備える排熱回収システム(熱エネルギー回収システム)が開示されている。タービンは、エンジンから排出された排ガスによって駆動される。コンプレッサーは、タービンに接続されており、前記過給空気を吐出する。排熱回収装置は、作動媒体を蒸発させる蒸発器と、膨張機と、動力回収機と、凝縮器と、ポンプと、を備えている。蒸発器は、過給機のコンプレッサーとエンジンとを接続する吸気ラインに設けられている。つまり、排熱回収装置では、蒸発器において、エンジンに供給される前の過給空気から作動媒体が熱を受け取り、この熱エネルギーが膨張機を介して動力回収機によって回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような熱エネルギー回収システムでは、蒸発器としていわゆるフィンチューブ形式のものが用いられた場合において、蒸発器において作動媒体が伝熱管(チューブ)から漏出すると、その作動媒体がエンジンに流入する。作動媒体の漏出を検出するために、蒸発器における作動媒体の漏出を検出可能なセンサを設けることが考えられる。しかしながら、蒸発器ではドレンが生じ、このドレンには、作動媒体以外の成分(コンプレッサーに吸い込まれた排ガスに含まれる硫黄成分等)が含まれるため、センサがドレンに接触することにより、センサの誤検知が懸念される。
【0005】
本発明の目的は、作動媒体を検知可能なセンサの誤検知を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、作動媒体を検知可能なセンサによって構成された第1センサと、作動媒体を検知可能なセンサによって構成された第2センサと、前記第1センサが作動媒体を検知する一方で前記第2センサが作動媒体を検知しないときに、作動媒体の漏洩を示す出力を行う制御部と、を備える作動媒体漏洩検知装置である。前記第1センサは、過給機からエンジンに供給される空気が流れる吸気ラインと作動媒体が流れる循環流路とに接続された加熱器における空気流路中の作動媒体を検知するか、又は前記吸気ラインにおける前記加熱器の下流側の部位中の作動媒体を検知するように配置される。前記第2センサは、前記吸気ラインにおける前記加熱器よりも上流側で、又は前記吸気ラインにおける前記加熱器よりも上流側の部位の周囲で作動媒体を検知するように配置される。
【0007】
本発明では、第1センサが、加熱器における空気流路中の作動媒体を検知するように配置されるか、又は加熱器の下流側における吸気ライン中の作動媒体を検知するように配置される。一方、第2センサは、吸気ラインにおける加熱器よりも上流側で、又は吸気ラインにおける加熱器よりも上流側の部位の周囲で作動媒体を検知するように配置される。このため、第1センサが作動媒体を検知する一方で第2センサが作動媒体を検知しないときには、加熱器において、循環流路の作動媒体が空気流路内又は吸気ライン内に漏れたこととなる。したがって、制御部が、第1センサが作動媒体を検知する一方で第2センサが作動媒体を検知しないときに、作動媒体の漏洩を示す出力を行うことにより、第1センサの誤検知の可能性を排除しつつ、空気流路又は吸気ラインへの作動媒体の漏洩を検知することができる。
【0008】
前記作動媒体漏洩検知装置は、前記加熱器の前記空気流路、又は前記吸気ラインにおける前記加熱器と前記エンジンとの間の部位から一部の空気を抜き出す抜出流路と、前記抜出流路に設けられ、空気中に含まれる水分を除去する水分除去機構と、を備えてもよい。この場合、前記第1センサは、前記抜出流路に配置されていてもよい。
【0009】
この態様では、抜出流路において、加熱器内の空気流路、又は吸気ラインにおける加熱器とエンジンとの間の部位から抜き出された空気から、水分除去機構によって水分が除去される。このため、抜出流路に配置された第1センサは、水分が除去された空気中の作動媒体の有無を検知する。すなわち、第1センサに作動媒体以外の成分を含む液体(水等)が接触することが抑制される。したがって、第1センサが作動媒体以外の水分を作動媒体として誤検知する可能性を低減することができる。また、第1センサの腐食の発生も抑制することができる。
【0010】
前記水分除去機構は、液体の通過を許容しかつ気体の通過を禁止するドレントラップを含んでいてもよく、この場合、前記第1センサは、前記抜出流路における前記ドレントラップよりも上方に配置されていてもよい。
【0011】
この態様では、抜出流路のうちドレントラップと第1センサとの間の部位に一定量(濃度)の作動媒体が蓄積したときに第1センサにより液成分が検知されるので、誤検知がより確実に抑制される。
【0012】
前記抜出流路は、前記水分除去機構が設けられた主流路と、前記主流路から分岐した分岐流路と、を有してもよい。この場合、前記第1センサは、前記分岐流路に配置されていてもよい。
【0013】
この態様では、分岐流路は水分除去機構が配置された主流路から分岐しているので、分岐流路には水分が除去された空気が流入し易くなる。この結果、分岐流路に配置された第1センサの誤検知や腐食の発生がより抑制され得る。
【0014】
前記水分除去機構は、前記主流路と前記分岐流路との接続部に設けられており前記空気に含まれる水分を除去するドライヤをさらに有してもよい。この態様では、水分が第1センサに接触することをより抑制することができる。
【0015】
前記水分除去機構は、前記空気に含まれる水分を除去するドライヤを有してもよい。この態様では、水分が第1センサに接触することをより抑制することができる。
【0016】
前記作動媒体漏洩検知装置は、前記ドライヤで除去された水分を排出する排出流路と、前記排出流路に設けられており、液体の通過を許容しかつ気体の通過を禁止するドレントラップと、をさらに備えていてもよい。
【0017】
この態様では、ドライヤで除去された水分が排出流路を通じて排出される一方で、気体についてはドレントラップから排出されない。ドライヤで除去された水分が確実に排出されることにより、その水分によるディタクタ誤検知を防止することができる。
【0018】
前記第1センサ及び第2センサの少なくとも一方は、水分、前記作動媒体、一酸化炭素、硫化水素及びアンモニアを検知可能な半導体センサと、水分、前記作動媒体、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄及び窒素酸化物を検知可能な赤外線センサと、を含んでいてもよい。
【0019】
この態様では、作動媒体の検知精度が高まる。具体的に、半導体センサ及び赤外線センサはともに水分を検知するものの、この水分は水分除去機構により実質的に除去されている。このため、半導体センサ及び赤外線センサの双方から検出信号が出力された場合、これらのセンサで検知されたガスは作動媒体であると判断することができる。
【0020】
前記作動媒体漏洩検知装置は、一酸化炭素を除去可能な一酸化炭素除去部をさらに備えていてもよい。
【0021】
半導体センサ及び赤外線センサは、ともに一酸化炭素を検知することが可能であるが、一酸化炭素除去部が設けられることにより、センサによる作動媒体の検知精度をより高めることができる。
【0022】
前記抜出流路は、当該抜出流路の上流側の端部から前記第1センサへ向かう空気の流れを形成するための穴を有してもよい。この態様では、抜出流路の上流側の端部から第1センサへ向かう過給空気の流れが形成されるので、第1センサによる検知精度を高めることができる。
【0023】
本発明は、過給機からエンジンに供給される空気が流れる吸気ラインと作動媒体が流れる循環流路とに接続された加熱器と、前記循環流路における前記加熱器の下流側の作動媒体によって駆動される膨張機に接続された動力回収機と、前記作動媒体漏洩検知装置と、を備えた熱エネルギー回収装置である。
【0024】
本発明では、熱エネルギー回収装置の循環流路を流れる作動媒体が吸気ラインに漏洩したことを検知することができる。したがって、エンジンに作動媒体が吸入されることを抑制することができる。
【0025】
前記熱エネルギー回収装置は、前記循環流路における前記加熱器よりも上流側に設けられた凝縮器と、前記循環流路における前記加熱器よりも下流側に設けられた膨張機と、前記循環流路のうち前記凝縮器と前記加熱器との間の部位に設けられた第1開閉弁と、前記循環流路のうち前記加熱器と前記膨張機との間の部位に設けられた第2開閉弁と、をさらに備えてもよい。この場合、前記制御部は、前記作動媒体の漏洩を示す出力を行うときに前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁を閉じてもよい。
【0026】
この態様では、循環流路から加熱器が切り離されるので、加熱器からの作動媒体の漏出を抑制され得る。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、作動媒体を検知可能なセンサの誤検知を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態の熱エネルギー回収装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】前記熱エネルギー回収装置に設けられた制御部の制御動作を説明するためのフロー図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の熱エネルギー回収装置の構成を概略的に示す図である。
【
図4】本発明の第3実施形態の熱エネルギー回収システム回収装置の構成を概略的に示す図である。
【
図5】本発明の第4実施形態の熱エネルギー回収装置の構成を概略的に示す図である。
【
図6】本発明の第4実施形態の熱エネルギー回収装置の変形例を概略的に示す図である。
【
図7】本発明の第5実施形態の熱エネルギー回収装置の構成を概略的に示す図である。
【
図8】第5実施形態の熱エネルギー回収装置に設けられた制御部の制御動作を説明するためのフロー図である。
【
図9】本発明の第6実施形態の熱エネルギー回収装置の構成を概略的に示す図である。
【
図10】本発明の第6実施形態の熱エネルギー回収装置の変形例を概略的に示す図である。
【
図11】本発明の第7実施形態の熱エネルギー回収装置の構成を概略的に示す図である。
【
図12】本発明の第8実施形態の熱エネルギー回収装置の構成を概略的に示す図である。
【
図13】水分除去機構の変形例を概略的に示す図である。
【
図14】水分除去機構の変形例を概略的に示す図である。
【
図15】作動媒体漏洩検知装置の連結位置の変形例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施形態について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0030】
(第1実施形態)
第1実施形態の熱エネルギー回収装置について、
図1を参照しながら説明する。この熱エネルギー回収装置は、エンジン10から過給機20に向けて流れる空気の熱エネルギーを回収する熱エネルギー回収ユニット30と、回収ユニット30で用いられている作動媒体の漏洩を検知するための作動媒体漏洩検知装置40と、を備えている。
【0031】
過給機20は、エンジン10から排出された排ガスによって駆動されるタービン21と、タービン21に接続されておりエンジン10に供給するための過給空気を吐出するコンプレッサー22と、を有する。コンプレッサー22から吐出された過給空気は、コンプレッサー22とエンジンとを接続する吸気ライン11を通じてエンジンに供給される。エンジン10から排出された排ガスは、エンジン10とタービン21とを接続する排気ライン12を通じてタービン21に供給される。
【0032】
本実施形態では、吸気ライン11にエアクーラ15が設けられている。エアクーラ15は、エンジン10に供給される過給空気を冷却媒体(海水等)によって冷却する。本実施形態では、エアクーラ15として、いわゆるフィンチューブ形式のものが用いられている。なお、エアクーラ15を省略することが可能である。
【0033】
熱エネルギー回収ユニット30は、蒸発器31と、膨張機32と、動力回収機33と、凝縮器34と、ポンプ35と、循環流路36と、第1開閉弁V1と、第2開閉弁V2と、制御部38と、を備えている。循環流路36は、蒸発器31、膨張機32、凝縮器34及びポンプ35をこの順に接続している。
【0034】
蒸発器31は、吸気ライン11のうちコンプレッサー22とエアクーラ15との間の部位に設けられている。したがって、蒸発器31は、吸気ライン11と循環流路36とに接続されている。つまり、蒸発器31は、吸気ライン11と循環流路36とに接続された加熱器として機能する。蒸発器31は、コンプレッサー22から吐出された(エンジン10に供給される)過給空気と、空気の沸点よりも低い沸点を有しかつ空気の比重よりも大きな比重を有する作動媒体(例えばR245fa)と、を熱交換させることによって作動媒体を蒸発させる。本実施形態では、蒸発器31として、いわゆるフィンチューブ形式のものが用いられている。すなわち、蒸発器31は、作動媒体が流れる伝熱管31aと、伝熱管31aを収容するケーシング31bと、を有している。この蒸発器31では、コンプレッサー22から吐出された過給空気がケーシング31b内を通過する過程で伝熱管31a内の作動媒体を蒸発させる。したがって、ケーシング31bが、過給空気が流れる流路としての空気流路として機能する。
【0035】
膨張機32は、循環流路36のうち蒸発器31の下流側の部位に設けられている。膨張機32は、蒸発器31から流出した気相の作動媒体を膨張させる。本実施形態では、膨張機32として、気相の作動媒体の膨張エネルギーにより回転駆動されるロータを有する容積式のスクリュ膨張機が用いられている。
【0036】
動力回収機33は、膨張機32のロータ(図示省略)に接続されている。動力回収機33は、膨張機32の差動に伴って回転する。これにより動力回収機33において、作動媒体のエネルギーを動力として回収することができる。本実施形態では、動力回収機33として発電機が用いられている。なお、動力回収機33として、圧縮機等が用いられてもよい。
【0037】
凝縮器34は、循環流路36のうち膨張機32の下流側の部位に設けられている。凝縮器34は、膨張機32から流出した作動媒体と冷却媒体(海水等)とを熱交換させることによって作動媒体を凝縮させる。
【0038】
ポンプ35は、循環流路36のうち凝縮器34の下流側の部位(凝縮器34と蒸発器31との間の部位)に設けられている。ポンプ35は、凝縮器34から流出した液相の作動媒体を蒸発器31に送るように、作動媒体を加圧する。
【0039】
第1開閉弁V1は、循環流路36のうち凝縮器34と蒸発器31との間の部位に設けられている。より具体的には、第1開閉弁V1は、循環流路36のうち凝縮器34とポンプ35との間の部位に設けられている。第2開閉弁V2は、循環流路36のうち蒸発器31と膨張機32との間の部位に設けられている。各開閉弁V1,V2は、循環流路36を開閉可能に構成されている。
【0040】
作動媒体漏洩検知装置40は、蒸発器31内で作動媒体が漏れたことを検知可能なユニットである。作動媒体漏洩検知装置40は、第1センサ45と、第2センサ55と、制御部38と、を有する。
【0041】
第1センサ45は、蒸発器31のケーシング31に設けられている。第1センサ45は、作動媒体(例えばR245fa)を検知可能なセンサによって構成されており、ケーシング31b内の空気に作動媒体が含まれているかどうかを検知するために設けられている。第1センサ45は、作動媒体の濃度に応じた信号を出力する。第1センサ45から出力された信号は、制御部38に入力される。
【0042】
第2センサ55は、吸気ライン11における蒸発器31よりも上流側の部位に配置されている。第2センサ55は、第1センサと同様に、作動媒体(例えばR245fa)を検知可能なセンサによって構成されており、蒸発器31よりも上流側において、吸気ライン11内を流れる空気に作動媒体が含まれているかどうかを検知するために設けられている。第2センサ55は、作動媒体の濃度に応じた信号を出力する。第2センサ55から出力された信号は、制御部38に入力される。
【0043】
制御部38は、第1センサ45から出力された信号及び第2センサ55から出力された信号に基づいて、作動媒体の漏洩を示す出力を行う。具体的に、
図2に示すように、制御部38は、第1センサ45からの信号(第1信号)を受信するとともに、第2センサ55からの信号(第2信号)を受信する(ステップST1,ST2)。制御部38は、第1信号及び第2信号から、蒸発器31における作動媒体の漏洩の有無を判定する(ステップST3)。具体的に、第1信号が示す作動媒体の濃度が、空気中に作動媒体が含まれていることを示す濃度以上であることを表しており、かつ、第2信号が示す作動媒体の濃度が、空気中に作動媒体が含まれていることを示す濃度未満であることを表している場合には(ステップST3においてYES)、制御部38は、蒸発器31からの作動媒体の漏洩を示す出力を行う(ステップST4)。この場合、第2センサ55では作動媒体が検知されていないことから、第1センサ45によって検知された作動媒体は、蒸発器31から漏洩したものと判断できるからである。
【0044】
一方、(1)第1信号が示す作動媒体の濃度が、空気中に作動媒体が含まれていることを示す濃度以上であり、かつ、第2信号が示す作動媒体の濃度が、空気中に作動媒体が含まれていることを示す濃度以上である場合、又は(2)第1信号が示す作動媒体の濃度が、空気中に作動媒体が含まれていることを示す濃度未満である場合には(ステップST3においてNO)、蒸発器31からの作動媒体の漏洩を示す出力を行わない(ステップST5)。この場合、第1センサ45によって作動媒体が検知されたとしても、その作動媒体は、蒸発器31から漏洩したものではなく、蒸発器31よりも上流側から吸気ライン11を流れてきたものであると判断できるからである。
【0045】
ここで、蒸発器31からの作動媒体の漏洩を示す出力は、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉じるための制御信号として用いられる。したがって、作動媒体の漏洩が検知されたときには、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2が閉じられる。なお、作動媒体の漏洩を示す出力には、各開閉弁V1,V2を閉じるための制御信号の出力に加え、ポンプ35を停止するための制御信号の出力が含まれていてもよい。この場合、各開閉弁V1,V2が閉じられるとともに、ポンプ35が停止する。したがって、作動媒体の漏洩が検知されたときには、蒸発器31に作動媒体が流入することが抑制される。なお、蒸発器31からの作動媒体の漏洩を示す出力は、警報のための制御信号として用いられてもよい。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態の作動媒体漏洩検知装置40では、第1センサ45が、蒸発器31におけるケーシング31b中の作動媒体を検知するように配置される。一方、第2センサ55が、蒸発器31及び吸気ライン11における蒸発器31の下流側の部位の何れでもないところの作動媒体を検知するように配置される。このため、第1センサ45が作動媒体を検知する一方で第2センサ55が作動媒体を検知しないときには、蒸発器31において、伝熱管31a内の作動媒体がケーシング31b内に漏れたこととなる。したがって、制御部38が、第1センサ45が作動媒体を検知する一方で第2センサ55が作動媒体を検知しないときに、作動媒体の漏洩を示す出力を行うことにより、第1センサ45の誤検知の可能性を排除しつつ、ケーシング31b又は吸気ライン11への作動媒体の漏洩を検知することができる。
【0047】
また本実施形態では、熱エネルギー回収装置の循環流路36を流れる作動媒体が吸気ライン11に漏洩したことを検知することができる。したがって、エンジン10に作動媒体が吸入されることを抑制することができる。
【0048】
また、制御部38は、作動媒体の漏洩が検出されたときに第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉じる。これにより、循環流路36から蒸発器31が切り離されるので、蒸発器31からの作動媒体の漏出が抑制される。
【0049】
(第2実施形態)
図3を参照しながら、第2実施形態の熱エネルギー回収装置について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0050】
第1実施形態では、第2センサ55が、吸気ライン11において、蒸発器31に向かって流れる過給空気に含まれる作動媒体を検知する構成である。これに対し、第2実施形態では、
図3に示すように、第2センサ55は、大気中に含まれる作動媒体を検知する構成である。すなわち、第2センサ55は、吸気ライン11における蒸発器31の上流側に配置される構成に限られず、熱エネルギー回収装置の周辺に設置される。言い換えると、第2センサ55は、蒸発器31等の加熱器における空気流路及び吸気ライン11における前記加熱器の下流側の部位の何れでもないところの作動媒体を検知するように配置されていればよい。この場合でも、第2センサ55からの信号を参照することにより、第1センサ45によって検出された作動媒体が蒸発器31からの漏洩によるものかどうかの判定をすることができる。したがって、制御部38が
図2に示す制御動作と同じ制御動作を行うことにより、第1センサ45の誤検知の可能性を排除しつつ、蒸発器31からの作動媒体の漏洩の有無を判定することができる。
【0051】
なお、第2センサ55が大気中に含まれる作動媒体を検知するように構成される態様は、以下の第3~第8実施形態においても採用できる。
【0052】
(第3実施形態)
次に、
図4を参照しながら、本発明の第3実施形態の熱エネルギー回収装置について説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0053】
第3実施形態では、蒸発器31からエンジン10に亘る領域において過給空気の一部を抜き出す流路である抜出流路(第1抜出流路)41が設けられており、第1センサ45は、抜出流路41に配置されている。本実施形態では、抜出流路41の一端部は、蒸発器31のケーシング31bの下部に連結されている。このため、抜出流路41には、蒸発器31のケーシング31b内の過給空気の一部が流入する。
【0054】
抜出流路41は、一端(上流側の端部)がケーシング31bに接続された主流路(第1主流路)42と、主流路42の中間部から分岐した分岐流路(第1分岐流路)43と、を有している。主流路42の下流側の端部(他端)は、主流路42の上流側の端部よりも下方に位置している。分岐流路43の下流側の端部は、主流路42の下流側の端部よりも上方に位置している。分岐流路43には、主流路42から分岐流路43の下流側の端部へ向かう過給空気の流れを形成するための穴43hが設けられている。なお、抜出流路41は、吸気ライン11のうち蒸発器31よりも下流側の部位に接続されていてもよい。
【0055】
抜出流路41には、空気中に含まれる液成分を除去する水分除去機構が設けられている。具体的には、水分除去機構は、液体の通過を許容しかつ気体の通過を禁止するドレントラップ44を含む。ドレントラップ44は、主流路42のうち当該主流路42と分岐流路43との接続部よりも下流側の部位に設けられている。
【0056】
第1センサ45は、抜出流路41のうちドレントラップ44よりも上流側から分岐したところに設けられている。具体的に、第1センサ45は、分岐流路43の下流側の端部に設けられている。そして、第1センサ45は、ドレントラップ44よりも上方に位置している。
【0057】
第3実施形態では、吸気ライン11における蒸発器31よりも上流側の部位において過給空気の一部を抜き出す流路である第2抜出流路51が設けられている。第2センサ55は、第2抜出流路51に配置されている。
【0058】
第2抜出流路51は、一端(上流側の端部)が吸気ライン11に接続された第2主流路52と、第2主流路52の中間部から分岐した第2分岐流路53と、を有している。第2主流路52の下流側の端部(他端)は、第2主流路52の上流側の端部よりも下方に位置している。第2分岐流路53の下流側の端部は、第2主流路52の上流側の端部よりも上方に位置している。第2センサ55は、第2分岐流路53の下流側端部に配置されている。第2分岐流路53には、第2主流路52から第2分岐流路53の下流側の端部へ向かう過給空気の流れを形成するための穴53hが設けられている。
【0059】
第2抜出流路51に第2ドレントラップ54が設けられている。具体的には、第2ドレントラップ54は、第2主流路52のうち当該第2主流路52と第2分岐流路53との接続部よりも下流側の部位に設けられている。第2ドレントラップ54は、液体の通過を許容しかつ気体の通過を禁止する。
【0060】
第3実施形態の熱エネルギー回収装置では、第1センサ45が設けられた抜出流路41にドレントラップ44が設けられている。このため、第1センサ45に作動媒体以外の成分を含む液体(水等)が接触することが抑制される。よって、第1センサ45の誤検知や腐食の発生が抑制され得る。
【0061】
また、第1センサ45は、ドレントラップ44よりも上方に配置されているので、抜出流路41のうちドレントラップ44と第1センサ45との間の部位に一定量(濃度)の作動媒体が蓄積したときに第1センサ45により液成分が検知される。よって、誤検知がより確実に抑制される。
【0062】
また、分岐流路43が穴43hを有するので、主流路42から第1センサ45へ向かう過給空気の流れが形成される。よって、第1センサ45による検知精度が高まる。
【0063】
また、第2センサ55が設けられた第2抜出流路51に第2ドレントラップ54が設けられている。このため、第2センサ55に作動媒体以外の成分を含む液体(水等)が接触することが抑制される。よって、第2センサ55の誤検知や腐食の発生が抑制され得る。なお、第2ドレントラップ54を省略することも可能である。
【0064】
また、第2センサ55は、第2ドレントラップ54よりも上方に配置されているので、第2抜出流路51のうち第2ドレントラップ54と第2センサ55との間の部位に一定量(濃度)の作動媒体が蓄積したときに第2センサ55により液成分が検知される。よって、誤検知がより確実に抑制される。
【0065】
また、第2分岐流路53が穴53hを有するので、第2主流路52から第2センサ55へ向かう過給空気の流れが形成される。よって、第2センサ55による検知精度が高まる。
【0066】
(第4実施形態)
次に、
図5を参照しながら、第4実施形態の熱エネルギー回収装置について説明する。なお、第4実施形態では、第3実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第3実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0067】
第4実施形態では、作動媒体漏洩検知装置40の構成が第1実施形態のそれと異なる。具体的に、第4実施形態では、水分除去機構が、ドライヤ46を有している。
【0068】
抜出流路41は、吸気ライン11のうち蒸発器31とエアクーラ15との間の部位に連結されている。なお、抜出流路41は、第1実施形態と同様に、蒸発器31のケーシング31bに接続されていてもよい。
【0069】
ドライヤ46は、抜出流路41の中間部分に設けられている。ドライヤ46は、抜出流路41を流れる過給空気に含まれる水分を除去する。ドライヤ46としては、いわゆるエアドライヤ、メンブレンドライヤ、吸着式ドライヤ等が挙げられる。エアドライヤは、過給空気を冷却することによって生じた水分を除去した後、過給空気を常温程度に戻す装置である。メンブレンドライヤは、高分子からなる中空糸膜を有する装置である。中空糸膜は、当該中空糸膜内に流入した過給空気に含まれる水分を当該中空糸膜外へ透過させるとともに、過給空気の通過を許容する。吸着式ドライヤは、シリカゲル等の多孔質媒体中に過給空気を通すことにより、過給空気に含まれる水分を除去する装置である。
【0070】
第1センサ45は、抜出流路41のうちドライヤ46よりも下流側の部位に設けられている。
【0071】
第2センサ55は、吸気ライン11において、蒸発器31よりも上流側の部位に接続された第2抜出流路51に設けられている。第2抜出流路51の中間部には、ドライヤ46と同じ構成の第2ドライヤ56が設けられている。なお、第2ドライヤ56を省略することも可能である。
【0072】
第4実施形態の熱エネルギー回収装置では、抜出流路41のうちドライヤ46よりも下流側の部位に第1センサ45が設けられているので、当該第1センサ45に作動媒体以外の成分を含む液体(水等)が接触することが抑制される。また、第2センサ55についても同様である。
【0073】
また、作動媒体漏洩検知装置40は、
図6に示されるように、ドライヤ46で除去された水分を排出する排出流路47と、排出流路47に設けられたドレントラップ48と、をさらに有していてもよい。また、作動媒体漏洩検知装置40は、
図6に示されるように、第2ドライヤ56で除去された水分を排出する第2排出流路57と、第2排出流路57に設けられた第2ドレントラップ58と、をさらに有していてもよい。
図6に示す形態において、第2排出流路57及び第2ドレントラップ58が省略されていてもよい。
【0074】
排出流路47が設けられた形態では、ドライヤ46で除去された水分が排出流路47を通じて排出されるので、ドライヤ46内に水分が蓄積されず、熱エネルギー回収装置の継続運転が可能となる。第2排出流路57についても同様である。
【0075】
(第5実施形態)
次に、
図7を参照しながら、本発明の第5実施形態の熱エネルギー回収装置について説明する。なお、第5実施形態では、第3実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第3実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0076】
第5実施形態では、第1センサ45は、半導体センサ45aと、赤外線センサ45bと、を含んでいる。半導体センサ45a及び赤外線センサ45bは、分岐流路43のうち穴43hよりも上流側の部位に設けられている。半導体センサ45aは、金属酸化物半導体がガスと接触したときに生じる抵抗値の変化をガスの濃度として検知する。この半導体センサ45aは、作動媒体に加え、水分、一酸化炭素、硫化水素及びアンモニアを検知する。半導体センサ45aは、検知したガス濃度に応じた信号を出力する。赤外線センサ45bは、発光部(光源)から受光部に向けて照射された赤外線が発光部及び受光部間に存在するガスによって吸収される量に基づいてガスの濃度を検知する。この赤外線センサ45bは、作動媒体に加え、水分、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄及び窒素酸化物を検知する。赤外線センサ45bは、検知したガス濃度に応じた信号を出力する。
【0077】
半導体センサ45a及び赤外線センサ45bは、ともに水分を検知するものの、本実施形態では、ドレントラップ44により水分は実質的に除去されている。このため、半導体センサ45a及び赤外線センサ45bの双方から検出信号が出力された場合、これらのセンサ45a,45bで検知されたガスは作動媒体であると判断することができる。よって、本実施形態では、作動媒体の検知精度が高まる。なお、半導体センサ45a及び赤外線センサ45bは、ともに一酸化炭素を検知するものの、過給空気中の一酸化炭素の濃度は非常に低いため、誤検知のおそれは無視可能である。
【0078】
第2センサ55は、第1センサ45と同様の構成であり、半導体センサ55aと赤外線センサ55bとを含んでいる。なお、第2センサ55は、第1センサ45と同様の構成でなくてもよい。
【0079】
半導体センサ55a及び赤外線センサ55bはともに水分を検知するものの、この水分は第2ドレントラップ54により実質的に除去されている。このため、半導体センサ55a及び赤外線センサ55bの双方から検出信号が出力された場合、これらのセンサで検知されたガスは作動媒体であると判断することができる。
【0080】
制御部38は、第1センサ45の半導体センサ45aからの信号(第1半導体信号)及び赤外線センサ45bからの信号(第1赤外線信号)と、第2センサ55の半導体センサ55aからの信号(第2半導体信号)及び赤外線センサ55bからの信号(第2赤外線信号)とに基づいて、作動媒体の漏洩を示す出力を行う。具体的に、
図8に示すように、制御部38は、第1センサ45からの信号(第1半導体信号及び第1赤外線信号)を受信するとともに、第2センサ55からの信号(第2半導体信号及び第2赤外線信号)を受信する(ステップST11,ST12)。制御部38は、第1センサ45からの信号及び第2センサ55からの信号から、蒸発器31における作動媒体の漏洩の有無を判定する(ステップST13)。ここで、制御部38が、空気中に作動媒体が含まれていると判定するのは以下の条件が満たされた場合である。この条件が満たされる場合とは、(1)第1半導体信号が示すガス濃度が、空気中に作動媒体等が含まれていることを示す濃度以上であり、かつ、(2)第1赤外線信号が示すガス濃度が、空気中に作動媒体等が含まれていることを示す濃度以上であり、かつ、(3)第2半導体信号が示すガス濃度が、空気中に作動媒体等が含まれていることを示す濃度未満であり、かつ、(4)第2赤外線信号が示すガス濃度が、空気中に作動媒体等が含まれていることを示す濃度未満である場合である。空気中に作動媒体が含まれていると判定される条件が満たされたときには(ステップST13においてYES)、制御部38は、蒸発器31からの作動媒体の漏洩を示す出力を行う(ステップST14)。この場合、第1センサ45によって検知された作動媒体は、蒸発器31から漏洩したものと判断できるからである。一方、上記条件が満たされないときには(ステップST13においてNO)、制御部38は、蒸発器31からの作動媒体の漏洩を示す出力を行なわない(ステップST15)。
【0081】
蒸発器31からの作動媒体の漏洩を示す出力は、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉じるための制御信号として用いられる。したがって、作動媒体の漏洩が検知されたときには、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2が閉じられる。なお、作動媒体の漏洩を示す出力には、各開閉弁V1,V2を閉じるための制御信号の出力に加え、ポンプ35を停止するための制御信号の出力が含まれていてもよい。この場合、各開閉弁V1,V2が閉じられるとともに、ポンプ35が停止する。したがって、作動媒体の漏洩が検知されたときには、蒸発器31に作動媒体が流入することが抑制される。
【0082】
なお、第1センサ45が半導体センサ45aと赤外線センサ45bとを含む構成は、第1センサ45が蒸発器31に配置される場合に限られるものではなく、吸気ライン11における蒸発器31よりも下流側に配置されてもよい。
【0083】
また、第2センサ55が半導体センサ55aと赤外線センサ55bとを含む構成は、吸気ライン11における蒸発器31よりも上流側に配置される場合に限られるものではなく、例えば
図3に示す構成のように、大気中のガスを検出する場合でもよい。
【0084】
(第6実施形態)
次に、
図9を参照しながら、本発明の第6実施形態の熱エネルギー回収装置について説明する。なお、第6実施形態では、第4実施形態の変形例(
図6)と異なる部分についてのみ説明を行い、第4実施形態の変形例と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0085】
本実施形態においても、第1センサ45は、半導体センサ45aと、赤外線センサ45bと、を含んでいる。半導体センサ45a及び赤外線センサ45bは、分岐流路43のうち穴43hよりも上流側の部位に設けられている。このため、本実施形態では、第4実施形態に比べて作動媒体の検知精度が高まる。また、第2センサ55も、半導体センサ55aと赤外線センサ55bとを含んでいる。なお、第2センサ55は、これに限られるものではない。
【0086】
本実施形態においても、第5実施形態と同様に、制御部38は、作動媒体が含まれていると判定する条件が満たされた場合に、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を閉じる。
【0087】
なお、
図9には、排出流路47、第2排出流路57、ドレントラップ48及び第2ドレントラップ58が示されているが、これらを省略することも可能である。
【0088】
また、
図10に示されるように、作動媒体漏洩検知装置40は、抜出流路41のうちドライヤ46と第1センサ45との間の部位に設けられており一酸化炭素を除去可能な一酸化炭素除去部49をさらに有していてもよい。この態様では、第1センサ45による作動媒体の検知精度が一層高まる。なお、第2抜き出し流路51のうち第2ドライヤ56と第2センサ55との間に第2一酸化炭素除去部59が設けられていてもよい。一酸化炭素除去部49は、第5実施形態において、分岐流路43のうち各センサ45a,45bよりも上流側の部位に設けられてもよい。一酸化炭素除去部49には、ドレン水が含まれている場合にそれを回収する目的でドレントラップ(図示省略)が取り付けられてもよい。
【0089】
(第7実施形態)
次に、
図11を参照しながら、本発明の第7実施形態の熱エネルギー回収装置について説明する。なお、第7実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0090】
第1実施形態~第6実施形態では、蒸発器31からの作動媒体の漏洩を検出することを目的とするものである。これに対し、第7実施形態では、蒸発器31で気化した作動媒体を過熱させる過熱器61からの作動媒体の漏洩を検出する構成である。具体的には、作動媒体の循環流路36における蒸発器31の下流側に過熱器61が設けられている。過熱器61は、作動媒体が流れる伝熱管61aと、伝熱管61aを収容するケーシング61bと、を有している。ケーシング61b内には過給空気が流入する。過熱器61は、ケーシング61b内の過給空気と伝熱管61a内の作動媒体との間で熱交換を行わせる。これにより、作動媒体は過熱状態となる。すなわち、過熱器61は、過給機20からエンジン10に供給される空気が流れる吸気ライン11と作動媒体が流れる循環流路36とに接続された加熱器として機能する。ケーシング61bは、過給空気が流れる流路としての空気流路として機能する。なお、過熱器61は、フィンアンドチューブ式の熱交換器に限られない。
【0091】
第1センサ45は、吸気ライン11における過熱器61よりも下流側に配置されている。これにより、過熱器61において作動媒体との熱交換に供せられた過給空気に作動媒体が含まれているかどうかを検知することができる。なお、第1センサ45は、過熱器61のケーシング61bに配置されていてもよい。
【0092】
第7実施形態においても、第1~第6実施形態で説明した態様に変更可能である。
【0093】
(第8実施形態)
次に、
図12を参照しながら、本発明の第8実施形態の熱エネルギー回収装置について説明する。なお、第7実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明を行い、第1実施形態と同じ構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0094】
第8実施形態では、蒸発器31に流入する前の作動媒体を予熱する予熱器63からの作動媒体の漏洩を検出する構成である。具体的には、作動媒体の循環流路36における蒸発器31の上流側には、予熱器63が設けられている。予熱器63は、作動媒体が流れる伝熱管63aと、伝熱管63aを収容するケーシング63bと、を有している。ケーシング63b内には過給空気が流入する。予熱器63は、ケーシング63b内の過給空気と伝熱管63a内の作動媒体との間で熱交換を行わせる。このとき、液状の作動媒体は液相のまま加熱されて伝熱管63aから流出する。予熱器63から流出した作動媒体は蒸発器31に流入する。予熱器63は、過給機20からエンジン10に供給される空気が流れる吸気ライン11と作動媒体が流れる循環流路36とに接続された加熱器として機能する。ケーシング63bは、過給空気が流れる流路としての空気流路として機能する。なお、予熱器63は、フィンアンドチューブ式の熱交換器に限られない。
【0095】
第1センサ45は、吸気ライン11における予熱器63よりも下流側に配置されている。これにより、予熱器63において作動媒体との熱交換に供せられた過給空気に作動媒体が含まれているかどうかを検知することができる。なお、第1センサ45は、予熱器63のケーシング63bに配置されていてもよい。
【0096】
第8実施形態においても、第1~第6実施形態で説明した態様に変更可能である。
【0097】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0098】
例えば、第1実施形態において、
図13に示されるように、抜出流路41の主流路42と分岐流路43との接続部にドライヤ46が設けられてもよい。また、第2抜出流路51の第2主流路52と第2分岐流路53との接続部に第2ドライヤ56が設けられてもよい。
【0099】
また、第6実施形態において、
図14に示されるように、水分除去機構は、抜出流路41から下方に向かって延びるように分岐しており抜出流路41から下向きに水分(液体)を排出可能な液抜き流路65であってもよい。同様に、第2抜出流路51に水分除去機構としての液抜き流路66が設けられてもよい。液抜き流路66は、第2抜出流路51から下方に向かって延びる。なお、
図5に示される形態において、ドライヤ46及び第2ドライヤ56の代わりに、水分除去機構としての液抜き流路が設けられていてもよい。また、
図7に示される形態において、ドレントラップ44及び第2ドレントラップ54の代わりに、水分除去機構としての液抜き流路が設けられていてもよい。
【0100】
また、
図15に示されるように、抜出流路41の上流側の端部は、吸気ライン11のうちエアクーラ15とエンジン10との間の部位に連結されてもよい。あるいは、抜出流路41の上流側の端部は、エアクーラ15のケーシングの下部や、吸気ライン11のうち蒸発器31とエアクーラ15との間の部位に連結されてもよい。
【0101】
また、第1開閉弁V1は、循環流路36のうちポンプ35と蒸発器31との間の部位に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0102】
30 熱エネルギー回収ユニット
31 蒸発器(加熱器)
31b ケーシング(空気流路)
32 膨張機
33 動力回収機
34 凝縮器
35 ポンプ
36 循環流路
38 制御部
40 作動媒体漏洩検知装置
41 抜出流路
42 主流路
43 分岐流路
43h 穴
44 ドレントラップ
45 第1センサ
45a 半導体センサ
45b 赤外線センサ
46 ドライヤ
47 排出流路
48 ドレントラップ
49 一酸化炭素除去部
55 第2センサ
55a 半導体センサ
55b 赤外線センサ
61 過熱器(加熱器)
61b ケーシング(空気流路)
63 予熱器(加熱器)
63b ケーシング(空気流路)
V1 第1開閉弁
V2 第2開閉弁