IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローランドディー.ジー.株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-インクジェットプリンタ 図1
  • 特許-インクジェットプリンタ 図2
  • 特許-インクジェットプリンタ 図3
  • 特許-インクジェットプリンタ 図4
  • 特許-インクジェットプリンタ 図5
  • 特許-インクジェットプリンタ 図6
  • 特許-インクジェットプリンタ 図7
  • 特許-インクジェットプリンタ 図8A
  • 特許-インクジェットプリンタ 図8B
  • 特許-インクジェットプリンタ 図8C
  • 特許-インクジェットプリンタ 図8D
  • 特許-インクジェットプリンタ 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/165 305
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018133246
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020011398
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】山田 竜太
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-296563(JP,A)
【文献】特開2013-136221(JP,A)
【文献】特開2017-043052(JP,A)
【文献】特開2006-305772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0179961(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルが形成されたノズル面をそれぞれ有する複数のインクヘッドと、
ワイパーを備え、前記ワイパーによって前記複数のインクヘッドのノズル面に付着した前記インクを拭うワイピングを行うワイピング機構と、
前記ワイパーをクリーニングするクリーニング機構と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
第1時間を記憶する第1記憶部と、
前記複数のインクヘッドをそれぞれ個別にワイピングし、かつ、各インクヘッドのワイピングの間に前記ワイパーのクリーニングを行う第1方法によるワイピングを、前記第1時間ごとに行う第1ワイピング制御部と、
前記複数のインクヘッドを連続してワイピングする第2方法によるワイピングを、前記第1方法によるワイピング同士の間に行う第2ワイピング制御部と、
を備えている、
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記第1時間は、前記ノズル面に付着した前記インクが前記第1方法によるワイピングによって除去可能な粘度を維持する時間である、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記第1時間は、8時間以上24時間以下の時間である、
請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記複数のインクヘッドを制御してインクを吐出させ、印刷を行う印刷制御部を備え、
前記制御装置は、第1回数を記憶する第2記憶部を備え、
前記第2ワイピング制御部は、前記第1回数の印刷が行われるごとに前記第2方法によるワイピングを行う、
請求項1~3のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記クリーニング機構は、洗浄液を貯留する洗浄液槽を備え、前記洗浄液によって前記ワイパーをクリーニングする、
請求項1~4のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記ワイピング機構は、前記ワイパーを移動させて前記洗浄液槽に貯留された前記洗浄液に浸漬させるように構成されたワイパー移動機構を備えている、
請求項5に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクヘッドに付着するインク等を除去するワイピング機構を備えたインクジェットプリンタが知られている。例えば特許文献1には、複数の記録ヘッドの吐出口面に摺接してインク等を拭き取るワイピング部材(ブレード)を備えたインクジェット記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-125228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクジェットプリンタには、ワイピングにおいてインクヘッドに接触するワイパーをクリーニングする機構をさらに備えたものが見られる。特に大型のインクジェットプリンタにおいては、ワイパーをクリーニングしながらワイピングしなければ、インクヘッドのノズル面を清浄に保つのが難しく、従って、印刷品質を維持するのが難しいと考えられている。しかしながら、ワイパーをクリーニングしながら行うワイピングには時間が掛かることが多く、インクジェットプリンタの生産性を低下させる恐れがある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷品質を維持しつつ、ワイピングに要する時間を短縮できるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示するインクジェットプリンタは、複数のインクヘッドと、ワイピング機構と、クリーニング機構と、制御装置とを備えている。前記複数のインクヘッドは、インクを吐出する複数のノズルが形成されたノズル面をそれぞれ有する。前記ワイピング機構は、ワイパーを備え、前記ワイパーによって前記複数のインクヘッドのノズル面に付着した前記インクを拭うワイピングを行う。前記クリーニング機構は、前記ワイパーをクリーニングする。前記制御装置は、第1記憶部と、第1ワイピング制御部と、第2ワイピング制御部とを備えている。前記第1記憶部は、第1時間を記憶する。前記第1ワイピング制御部は、前記複数のインクヘッドをそれぞれ個別にワイピングし、かつ、各インクヘッドのワイピングの間に前記ワイパーのクリーニングを行う第1方法によるワイピングを、前記第1時間ごとに行う。前記第2ワイピング制御部は、前記複数のインクヘッドを連続してワイピングする第2方法によるワイピングを、前記第1方法によるワイピング同士の間に行う。
【0007】
上記インクジェットプリンタによれば、所要時間の短い第2方法によるワイピングによって全ワイピング時間を短縮しつつ、よりインクの除去能力の高い第1方法によるワイピングを定期的に行うことにより、印刷品質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るプリンタの正面図である。
図2】キャリッジ下面の構成を模式的に示す平面図である。
図3】プリンタの右端部付近の構成を模式的に示す正面図である。
図4】プリンタのブロック図である。
図5】従来の方法によるワイピングの流れの一例を示すフローチャートである。
図6】第1ワイピングの流れを示すフローチャートである。
図7】第2ワイピングの流れを示すフローチャートである。
図8A】第2ワイピング時のノズル面の状態を示す模式図であって、第1インクヘッドに対するワイピングが行われる前の状態を示す図である。
図8B】第2ワイピング時のノズル面の状態を示す模式図であって、第1インクヘッドに対するワイピングが完了し、第2インクヘッドに対するワイピング行われる前の状態を示す図である。
図8C】第2ワイピング時のノズル面の状態を示す模式図であって、第2インクヘッドに対するワイピングが完了し、第3インクヘッドに対するワイピング行われる前の状態を示す図である。
図8D】第2ワイピング時のノズル面の状態を示す模式図であって、第1インクヘッド~第4インクヘッドに対するワイピングが全て完了した状態を示す図である。
図9】本実施形態におけるワイピングの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
【0010】
図1は、一実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする。)10の正面図である。プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を前後方向に移動させるとともに、左右方向に移動するキャリッジ20に搭載された複数のインクヘッド51~54からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
【0011】
記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は特に限定されない。記録媒体5は、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよい。金属製やゴム製等のシートであってもよい。また、布帛であってもよい。
【0012】
図1に示すように、プリンタ10は、キャリッジ20と、キャリッジ移動機構30と、搬送機構40と、複数のインクヘッド51~54と、キャッピング機構60(図3参照)と、ワイピング機構70(図3参照)と、クリーニング機構80(図3参照)と、制御装置100とを備えている。
【0013】
キャリッジ移動機構30は、ガイドレール31と、ベルト32と、左右のプーリ33aおよび33bと、スキャンモータ34とを備えている。ガイドレール31には、キャリッジ20が摺動自在に係合している。ガイドレール31は、左右方向に延びている。ガイドレール31は、キャリッジ20の左右方向への移動をガイドする。ベルト32は、キャリッジ20に固定されている。ベルト32は、無端状のベルトである。ベルト32は、ガイドレール31の左側に設けられたプーリ33aおよび右側に設けられたプーリ33bに巻き掛けられている。右側のプーリ33bにはスキャンモータ34が取り付けられている。スキャンモータ34は、制御装置100と電気的に接続されている。スキャンモータ34は、制御装置100によって制御される。スキャンモータ34が駆動するとプーリ33bが回転し、ベルト32が走行する。それにより、キャリッジ20がガイドレール31に沿って左右方向に移動する。
【0014】
キャリッジ20の下方には、プラテン15が配置されている。プラテン15は、左右方向に延びている。プラテン15は、記録媒体5が載置される部材である。プラテン15上の記録媒体5は、搬送機構40によって前後方向に移動される。搬送機構40は、ピンチローラ41と、グリットローラ42と、フィードモータ43とを備えている。ピンチローラ41はプラテン15の上方に設けられ、記録媒体5を上から押下する。ピンチローラ41は、キャリッジ20より後方に配置されている。プラテン15には、グリットローラ42が設けられている。グリットローラ42は、ピンチローラ41の下方に配置されている。グリットローラ42は、ピンチローラ41と対向する位置に設けられている。グリットローラ42は、フィードモータ43に連結されている。グリットローラ42は、フィードモータ43の駆動力を受けて回転可能に形成されている。フィードモータ43は、制御装置100と電気的に接続されている。フィードモータ43は、制御装置100によって制御される。ピンチローラ41とグリットローラ42との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ42が回転すると、記録媒体5は前後方向に搬送される。
【0015】
図2は、キャリッジ20の下面の構成を模式的に示す平面図である。図2に示すように、キャリッジ20は、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54の4つのインクヘッドを下面に保持している。第1インクヘッド51~第4インクヘッド54は、キャリッジ20において左右方向に並んで配置されている。第1インクヘッド51は、インクを吐出するノズル51aが複数形成されたノズル面51bを有している。ノズル51aは、インクが吐出される微細な孔である。第1インクヘッド51のノズル面51bにおいて、複数のノズル51aは前後方向に並んでノズル列を形成している。ノズル面51bは、ここでは、第1インクヘッド51の下面である。第2インクヘッド52~第4インクヘッド54も、第1インクヘッド51と同様の構成を備えている。第2インクヘッド52は、インクを吐出するノズル52aが複数形成されたノズル面52bを有している。第3インクヘッド53は、インクを吐出するノズル53aが複数形成されたノズル面53bを有している。第4インクヘッド54は、インクを吐出するノズル54aが複数形成されたノズル面54bを有している。なお、ここでは、全てのインクヘッドが前後方向に関して揃った位置に配置されているが、一部のインクヘッドがずれて配置されていてもよい。また、インクヘッドの数は限定されない。
【0016】
第1インクヘッド51~第4インクヘッド54の内部には、それぞれ、図示しないアクチュエータが設けられている。アクチュエータは、それぞれ圧電素子を備えている。アクチュエータは、ノズルごとに設けられている。各アクチュエータが駆動することによって、各ノズルはインクを吐出する。各アクチュエータは、ノズルと連通しインクが貯留される圧力室と、圧力室に接する圧電素子とを備えている。圧電素子に印加される電圧を変化させると圧電素子は膨張・収縮し、その変位によって圧力室の体積が変化する。この圧力室の体積の変化によってインクがノズルから吐出される。複数のアクチュエータは、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
【0017】
第1インクヘッド51~第4インクヘッド54は、それぞれ、図示しないインク供給路によって、図示しないインクカートリッジと連通されている。第1インクヘッド51~第4インクヘッド54のノズルからは、それぞれに接続されたインクカートリッジに貯留されたインクが吐出される。なお、インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよい。あるいは、水性染料インクや、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。
【0018】
図3は、プリンタ10の右端部付近の構成を模式的に示した正面図である。図3に示すように、プリンタ10の右端部付近には、キャッピング機構60と、ワイピング機構70と、クリーニング機構80とが設けられている。キャリッジ移動機構30は、キャリッジ20をキャッピング機構60の上方に移動させることができるように構成されている。以下では、このキャッピング機構60の上方のキャリッジ20の位置をホームポジションHPと称することとする(図1も参照)。ホームポジションHPは、印刷待機時などにキャリッジ20が配置される位置である。ホームポジションHPは、ここでは、ガイドレール31に係合してキャリッジ20が移動する範囲の右端に設定されている。
【0019】
図3に示すように、キャッピング機構60は、複数のキャップ61と、キャップ移動機構62と、複数の吸引ポンプ63とを備えている。各キャップ61は、キャリッジ20がホームポジションHPに配置されている場合に、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54の各ノズル面51b~54bに装着可能に構成されている。キャップ61は、インクヘッド51~54の数と同数設けられている。複数のキャップ61は、それぞれ1つのインクヘッドに装着可能に対応している。各キャップ61は、上部が開口した有底の箱状の形状を有している。各キャップ61は、例えば、ゴム等によって形成されている。キャップ61の上部の開口は、装着時には、それぞれ第1インクヘッド51~第4インクヘッド54の外周部に嵌るように構成されている。なお、ここでは、キャップ61は、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54のそれぞれに対応するように設けられたが、そうでなくともよい。例えば、キャップ自体では1つであって、内部に仕切りが設けられていてもよい。
【0020】
キャップ移動機構62は、キャップ61を上下方向に移動可能に支持している。キャップ移動機構62は、キャップ61を上昇させることにより、キャップ61を第1インクヘッド51~第4インクヘッド54に装着する。また、キャップ61を下降させることにより、キャップ61を第1インクヘッド51~第4インクヘッド54から離間する。キャップ移動機構62は、例えば、図示しないボールねじ機構および駆動モータを備えている。複数のキャップ61は、ボールねじ機構によって上下方向に移動可能に支持されている。ボールねじ機構は、駆動モータに接続されている。ボールねじ機構は、駆動モータが駆動することにより、複数のキャップ61を上下方向に移動させる。
【0021】
複数の吸引ポンプ63は、複数のキャップ61にそれぞれ接続されている。吸引ポンプ63は、キャップ61の数と同数設けられている。複数の吸引ポンプ63は、それぞれ1つのキャップ61に接続されている。吸引ポンプ63は、キャップ61内のインク等を吸引する部材である。吸引ポンプ63は、例えば、チューブポンプである。複数の吸引ポンプ63は、それぞれ、チューブ等を介して、キャップ61の底部に接続されている。キャップ61が第1インクヘッド51~第4インクヘッド54に装着された状態で吸引ポンプ63が駆動されると、ノズル51a~54aからインクや空気が吸い出される。吸引ポンプ63に吸引されたインク等は、図示しないチューブを介して図示しない廃液タンクに廃棄される。
【0022】
ワイピング機構70は、プラテン15とホームポジションHPとの間に設けられている。また、キャリッジ20の下方に設けられている。ワイピング機構70は、ワイパー71を備え、ワイパー71によって第1インクヘッド51~第4インクヘッド54のノズル面51b~54bに付着したインクを拭う機構である。以下、上記インクを拭う作業をワイピングと称する。ワイピングは、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54のノズル面51b~54bに付着したインクを拭うことによってノズルの詰まりなどの不具合を予防する作業である。ワイピング機構70は、ワイパー71と、回転軸72aと、回転モータ72bとを備えている。回転軸72aと回転モータ72bとは、ワイパー71を移動させるワイパー移動機構72を構成している。ワイパー71は、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54のノズル面51b~54bを拭う部材である。ワイパー71は、前後方向に延びる平板状の部材である。ワイパー71の前後方向の長さは、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54の前後方向の長さよりも長く構成されている。ワイパー71は、例えば、ゴムで形成されている。ワイパー71の一端は回転軸72aに接続されている。ワイパー71は、回転軸72aを中心に回転可能に構成されている。回転軸72aは、前後方向に延びている。ワイパー71が、回転軸72aから遠い方の端部を上にするような回転位置(以下、ワイピング位置P1と呼ぶ。)に配置されるとき、当該端部は、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54のノズル面51b~54bよりもわずかに高い位置に位置する。そこで、ワイパー71をワイピング位置P1に配置しつつ、キャリッジ20を走行させると、ワイパー71により、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54のノズル面51b~54bを拭うことができる。ワイピング位置P1以外では、ワイパー71は、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54のノズル面51b~54bに接触しない。ワイパー71は、回転モータ72bによって回転されている。回転モータ72bは、制御装置100に電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。
【0023】
ワイピング機構70の下方には、クリーニング機構80が設けられている。クリーニング機構80は、ワイパー71をクリーニングする機構である。クリーニング機構80は、洗浄液槽81と、供給流路82と、オーバーフロー流路83と、排出流路84と、吸水パッド85とを備えている。洗浄液槽81は、ワイパー71をクリーニングする洗浄液を貯留している。洗浄液槽81は、上方が開口した容器状の部材である。供給流路82は、洗浄液槽81に洗浄液を供給する流路である。供給流路82の洗浄液槽81側と反対側の端部は、図示しない洗浄液タンクに接続されている。洗浄液は、この洗浄液タンクから供給流路82を通って洗浄液槽81に供給される。供給流路82には、供給バルブ82aが設けられている。供給バルブ82aは、制御装置100と電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。制御装置100が供給バルブ82aを開くことにより、洗浄液は洗浄液槽81に供給される。
【0024】
洗浄液槽81には、オーバーフロー流路83が接続されている。オーバーフロー流路83の一端は、洗浄液槽81の上部開口に近い位置において、洗浄液槽81の側面に接続されている。オーバーフロー流路83の他端は、図示しない廃液タンクに接続されている。洗浄液がオーバーフロー流路83の高さを越えて供給されると、超えた分の洗浄液は、オーバーフロー流路83から廃液タンクに排出される。オーバーフロー流路83によって、洗浄液槽81内の洗浄液の液面は、高さを一定に保っている。
【0025】
排出流路84の一端は、洗浄液槽81の底部に接続されている。排出流路84の他端は、廃液タンクに接続されている。排出流路84は、洗浄液槽81から洗浄液を排出する流路である。洗浄液は、洗浄液槽81から排出流路84を通って廃液タンクに排出される。排出流路84には、排出バルブ84aが設けられている。排出バルブ84aは、制御装置100と電気的に接続され、制御装置100によって制御されている。制御装置100が排出バルブ84aを開くことにより、洗浄液は廃液タンクに排出される。洗浄液は、例えば、予め定められた回数だけワイパー71が洗浄された後に排出される。
【0026】
吸水パッド85は、洗浄液槽81の上方に設けられている。吸水パッド85は、ワイピング機構70の回転軸72aと同じか、近い高さに配置されている。ここでは、吸水パッド85は、ワイピング機構70の回転軸72aの右方に設けられている。吸水パッド85は、例えばスポンジのような水分を吸収する素材で構成されている。吸水パッド85は、洗浄後のワイパー71に付着した洗浄液を吸収して、ワイパー71を乾燥させる部材である。
【0027】
ワイパー移動機構72は、ワイパー71を移動させて、洗浄液槽81に貯留された洗浄液に浸漬させるように構成されている。詳しくは、ワイパー移動機構72は、ワイパー71の回転軸72aから遠い方の端部を下にするような回転位置(以下、洗浄位置P2と呼ぶ。)にワイパー71を配置することにより、回転軸72aの下方に設置された洗浄液槽81内の洗浄液にワイパー71を浸漬する。
【0028】
また、ワイパー移動機構72は、ワイパー71を移動させて、吸水パッド85に接触させるように構成されている。詳しくは、ワイパー移動機構72は、ワイピング位置P1よりも吸水パッド85側であってワイパー71の側面が吸水パッド85に接触するような回転位置(以下、乾燥位置P3と呼ぶ。)にワイパー71を配置することにより、吸水パッド85に接触させる。
【0029】
図1に示すように、プリンタ10の右端部には、操作パネル110が設けられている。操作パネル110には、機器状態を表示する表示部と、ユーザーによって操作される入力キー等が設けられている。操作パネル110の内側には、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置100が収容されている。図4は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図4に示すように、制御装置100は、スキャンモータ34と、フィードモータ43と、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54と、キャップ移動機構62と、吸引ポンプ63と、ワイピング機構70の回転モータ72bと、クリーニング機構80の供給バルブ82aおよび排出バルブ84aと、操作パネル110とにそれぞれ電気的に接続されており、それらを制御可能に構成されている。制御装置100は、印刷制御部101と、キャッピング制御部102と、ワイピング制御部103と、給排液制御部104とを備えている。
【0030】
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。
【0031】
印刷制御部101は、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54を制御してインクを吐出させるとともに、キャリッジ移動機構30を制御して印刷を行う。印刷制御部101は、印刷中、搬送機構40を制御して、間欠的に記録媒体5を前方に送ることにより、前後方向の印刷位置を更新する。
【0032】
キャッピング制御部102は、印刷待機時には、キャップ移動機構62を制御して、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54に対してキャップ61を装着する。また、印刷開始前には、キャップ移動機構62を制御して、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54からキャップ61を離間する。キャッピング制御部102は、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54に対してキャップ61が装着された状態において、適宜吸引ポンプ63を制御して、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54のノズル51a~54a内のインクを吸引する。
【0033】
ワイピング制御部103は、ワイピング動作を制御する。ワイピング制御部103は、第1記憶部103aと、第2記憶部103bと、第1ワイピング制御部103cと、第2ワイピング制御部103dとを備えている。第1記憶部103aは、第1時間を記憶している。第2記憶部103bは、第1回数を記憶している。第1ワイピング制御部103cは、第1方法によるワイピングを上記第1時間ごとに行うように設定されている。第1方法は、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54をそれぞれ個別にワイピングし、かつ、各インクヘッドのワイピングの間にワイパー71のクリーニングを行うワイピング方法である。第2ワイピング制御部103dは、第2方法によるワイピングを、第1方法によるワイピング同士の間に、第1回数の印刷が行われるごとに行うように設定されている。第2方法は、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54を連続してワイピングするワイピング方法である。ワイピングに係る制御の詳細については後述する。なお、以下の説明では適宜、第1方法によるワイピングのことを「第1ワイピング」と、第2方法によるワイピングのことを「第2ワイピング」とも称する。
【0034】
給排液制御部104は、供給バルブ82aと排出バルブ84aとを制御して、洗浄液槽81内の洗浄液の供給および交換を行う。給排液制御部104は、ここでは、予め定められた回数のワイパー洗浄が行われるたびに、排出バルブ84aを開いて洗浄液槽81内の全ての洗浄液を排出する。その後、供給バルブ82aを開いて洗浄液槽81に洗浄液を供給することにより、洗浄液槽81内の洗浄液を交換する。また、交換と交換の間には、一定の周期で一定量ずつ洗浄液槽81に洗浄液を供給する。この周期的な供給により、使用によって減少した洗浄液槽81内の洗浄液が補充される。
【0035】
以下では、適宜に従来の方法と比較しながら、本実施形態における印刷、ワイピング、およびワイパー71のクリーニングについて説明する。ここでは、まず、ワイピングおよびワイパー71のクリーニングにおける各部の基本的な動作について説明する。
【0036】
ワイピングにおいては、回転モータ72bによってワイパー71がワイピング位置P1に配置される。ワイパー71がワイピング位置P1にあるときにキャリッジ20がワイピング機構70の上方を通過すると、インクヘッドのノズル面は、ワイパー71に接触しながら右方または左方に移動する。それにより、インクヘッドのノズル面がワイパー71によって拭われる。ここでは、上記ワイピングは、キャリッジ20がホームポジションHPから左方に向かって移動されるときに行われるものとする。
【0037】
ワイパー71は、インクヘッドのノズル面を拭った後、洗浄位置P2に移動され、洗浄液への浸漬によりクリーニングされる。このクリーニングの頻度については後述する。ワイパー71は、ここでは、洗浄効果を高めるため、回転モータ72bにより、洗浄位置P2を挟んで両側に揺動される。揺動後のワイパー71は、ワイピングしない間は洗浄位置P2に配置されている。ワイパー71は、洗浄位置P2では、洗浄液槽81内の洗浄液に浸漬されている。次のワイピングの前には、ワイパー71は、乾燥位置P3に移動され、吸水パッド85に押し当てられることにより、乾燥される。
【0038】
図5は、従来の方法によるワイピングの流れの一例を示すフローチャートである。図5に示すように、従来の方法では、例えば、ステップS10において印刷が実行される。続くステップS20では、印刷回数Nが予め定められた回数(N0とする)に達したかどうかが判定される。印刷回数NがN0未満の場合(ステップS20がNOの場合)、ステップはステップS10に戻る。印刷回数NがN0以上になった場合(ステップS20がYESの場合)、ステップはステップS30に進む。
【0039】
ステップS30では、第1ワイピングが実施される。ステップS30において第1ワイピングが終了した後、ステップはステップS10に戻る。このように、従来の印刷およびワイピングの方法では、印刷回数が予め定められた回数N0に達するたびに第1ワイピングが実施される。第2ワイピングは実施されない。
【0040】
図6は、第1ワイピングの流れを示すフローチャートである。第1ワイピングは、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54をそれぞれ個別にワイピングし、かつ、各インクヘッドのワイピングの間にワイパー71のクリーニングを行うワイピング方法である。図6に示すように、第1ワイピングでは、ワイパー71の乾燥、ワイピング、およびワイパー71のクリーニングのセットが、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54のそれぞれについて実施される。
【0041】
図6に示すように、第1ワイピングのステップS31では、第1インクヘッド51に対して、ワイパー71の乾燥、ワイピング、ワイパー71のクリーニングのセットが実施される。ステップS31の中のステップS31Aでは、ワイパー71が洗浄位置P2から乾燥位置P3に移動される。乾燥位置P3では、ワイパー71は、吸水パッド85に押し当てられ、乾燥される。続くステップS31Bでは、ワイパー71はワイピング位置P1に移動される。同時に、キャリッジ20は、ホームポジションHPから、ワイパー71が第1インクヘッド51のノズル面51bを拭うように左方に移動する。キャリッジ20は、ワイパー71が第1インクヘッド51のノズル面51bを拭った後、第2インクヘッド52のノズル面52bに達する前に停止する。そして、ステップS31Cにおいて、ワイパー71は、洗浄位置P2に移動され、洗浄液槽81の洗浄液に浸漬される。
【0042】
第2インクヘッド52~第4インクヘッド54に対しても同様に、ワイパー71の乾燥、ワイピング、およびワイパー71のクリーニングのセットが実行される。図6に示すように、ステップS32では、第2インクヘッド52に対して、ワイパー71の乾燥、ワイピング、およびワイパー71のクリーニングのセットが実行される。ステップS33では、第3インクヘッド53に対して、ワイパー71の乾燥、ワイピング、およびワイパー71のクリーニングのセットが実行される。ステップS34では、第4インクヘッド54に対して、ワイパー71の乾燥、ワイピング、およびワイパー71のクリーニングのセットが実行される。
【0043】
このように、従来の方法においては、予め定められた回数N0だけ印刷が行われるたびに、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54に対して第1ワイピングを実施していた。この第1ワイピングは、印刷以外の作業に係る時間として、一定の時間を消費する。例えば、仮に、図6の各ステップの必要時間がそれぞれ10秒ずつであるとすれば、第1ワイピングのステップ数は12なので、第1ワイピングに要する時間は120秒である。例えば、従来の方法において、印刷を1回行うたびにワイピングを行うとすれば、印刷1回につき120秒のワイピング時間が発生する。
【0044】
上記従来の方法に対して、本実施形態に係るワイピング方法においては、ワイピングは主に第2ワイピングによって実施される。第2ワイピングは、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54を連続してワイピングするワイピング方法である。図7は、第2ワイピングの流れを示すフローチャートである。図7に示すように、第2ワイピングでは、ステップS141において、ワイパー71の乾燥が実施される。ワイパー71の乾燥の方法は、第1ワイピングの場合と同じである。続くステップS142では、第1インクヘッド51に対してワイピングが実施される。ステップS142では、ワイパー71はワイピング位置P1に移動され、同時に、キャリッジ20は、ホームポジションHPから、ワイパー71が第1インクヘッド51のノズル面51bを拭うように左方に移動する。第2ワイピングでは、キャリッジ20は、ワイパー71が第1インクヘッド51のノズル面51bを拭った後も停止せず、そのまま連続して第2インクヘッド52のノズル面52bを拭う(ステップS143)。キャリッジ20は、この後、第4インクヘッド54のノズル面54bをワイパー71が拭うまで左方に移動を続ける。ステップS144では、第3インクヘッド53がワイパー71によってワイピングされる。ステップS145では、第4インクヘッド54がワイパー71によってワイピングされる。
【0045】
続くステップS146において、第1インクヘッド51のノズル面51b~第4インクヘッド54のノズル面54bを拭い終わったワイパー71がクリーニングされる。ワイパー71のクリーニング方法は、第1ワイピングの場合と同じである。
【0046】
このように、第2ワイピングでは、各インクヘッド51~54に対するワイピングの間にワイパー71のクリーニングを挟まず、4つのインクヘッド51~54が連続的にワイピングされる。第2ワイピングは、第1ワイピングと比べて簡易なワイピング方法である。
【0047】
図6図7から理解されるように、複数のインクヘッドに対してワイピングを開始してから完了するまでのステップ数は、第2ワイピングの方が第1ワイピングよりも少ない。そこで、複数のインクヘッドに対してワイピングを開始してから完了するまでの時間は、第2ワイピングの方が第1ワイピングよりも短い。例えば、仮に、図7においても各ステップの必要時間がそれぞれ10秒ずつであるとすれば、第2ワイピングのステップ数は6なので、第2ワイピングに要する時間は60秒である。第1ワイピングに要する時間は120秒である。そこで、本実施形態に係るプリンタ10では、従来の方法に係るプリンタに比べて、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54に対するワイピング1回につき60秒(120秒-60秒)だけワイピング時間が短い。
【0048】
しかしながら、第2ワイピングでは、各インクヘッドのワイピングの前に必ずしもワイパー71のクリーニングを行わないので、ノズル面にインクの拭き残しが発生しうる。図8A図8Dは、第2ワイピング時のノズル面の状態を示した模式図である。図8Aは、第1インクヘッド51に対するワイピングが行われる前の状態を表している。図8Bは、第1インクヘッド51に対するワイピングが完了し、第2インクヘッド52に対するワイピング行われる前の状態を表している。図8Cは、第2インクヘッド52に対するワイピングが完了し、第3インクヘッド53に対するワイピング行われる前の状態を表している。図8Dは、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54に対するワイピングが全て完了した状態を表している。
【0049】
図8Aに示すように、印刷後の第1インクヘッド51~第4インクヘッド54のノズル面51b~54bには、それぞれインクIが付着している。図8Bでは、ワイパー71によって第1インクヘッド51のノズル面51bに付着したインクIは拭われている。そこで、第1インクヘッド51のノズル面51bは、インクIがほとんど付着していない状態になっている。しかしながら、ワイパー71には、第1インクヘッド51のノズル面51bに付着していたインクIが付着している。第2ワイピングでは、ワイパー71は、このようにインクIが付着した状態で、第2インクヘッド52のノズル面52bをワイピングする。
【0050】
図8Cに示すように、第2インクヘッド52のワイピングが完了したとき、第2インクヘッド52のノズル面52bには、インクIの拭き残しI2が残っている。これは、インクIが付着したワイパー71で第2インクヘッド52のノズル面52bを拭ったためである。この拭き残しI2は、ノズル面52bの中で、例えば、ワイピング時のキャリッジ20の進行方向(ここでは、左方)の後方側の端部(ここでは、右端)に特に顕著に発生する。また、図8B図8Cに示すように、第2インクヘッド52のワイピング完了時には、第1インクヘッド51のワイピング完了時よりも、ワイパー71に付着したインクIが増加している。
【0051】
第2ワイピングでは、以下同様に、第3インクヘッド53および第4インクヘッド54に対するワイピングが、ワイパー71のクリーニングを挟むことなく実施される。図8Dに示されるように、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54に対するワイピングが全て完了したときには、第2インクヘッド52のノズル面52b、第3インクヘッド53のノズル面53b、第4インクヘッド54のノズル面54bには、それぞれ拭き残しI2、I3、I4が発生している。ワイパー71に付着するインクIの量が増加するほど拭き残し量も増加する傾向にあるため、一般に、拭き残しI3の量は、拭き残しI2の量よりも多い。拭き残しI4の量は、拭き残しI3の量よりも多い。また、拭き残しI2~I4の量は、印刷回数を重ねるごとに蓄積されて増加する。
【0052】
このように、第2ワイピングでは、インクヘッドのノズル面にインクの拭き残しが発生しうる。従来の方法では、インクの拭き残しを発生させないように、ワイピングは全て第1ワイピングによって実施されていた。第1ワイピングによれば、インクヘッドのノズル面にインクの拭き残しはほとんど発生しない。その代わりに、ワイピングに要する時間は長い。
【0053】
上記のような課題に対して、本願発明者は、定期的に第1ワイピングを実施する限り、第2ワイピングによるノズル面のインクの拭き残しは問題を発生させないことを見出した。詳しくは、ノズル面のインクの拭き残しは、それ自体では問題を発生させず、拭き残しが乾燥して固着する前に第1ワイピングによって除去すれば、問題は起こらないことを見出した。そこで、本実施形態に係るプリンタ10は、印刷回数に基づいて行うワイピングは第2ワイピングによるものとし、第1ワイピングは予め定められた時間ごとに行うように設定されている。予め定められた時間は、例えば、第1ワイピングによる拭き残しが乾燥して固着し始める時間未満に設定される。
【0054】
図9は、本実施形態におけるワイピングの流れを示すフローチャートである。図9に示すように、本実施形態では、ステップS110において、前回の第1ワイピング(ステップS150)からの経過時間Tが第1時間T1に達したかどうかが判定される。第1時間T1は、第1記憶部103aに記憶されている。前回の第1ワイピング(ステップS150)からの経過時間Tが第1時間T1未満の場合(ステップS110がNOの場合)、ステップはステップS120の印刷に進む。
【0055】
ここで、第1時間T1は、ノズル面52b~54bに付着したインクI2~I4が第1ワイピングによって除去可能な粘度を維持するような時間に設定される。拭き残しのインクI2~I4は、時間の経過に伴って乾燥し、増粘する。そして、さらに放置しておくと固化する。拭き残しのインクI2~I4は、一定以上に増粘すると、第1ワイピングによっても除去できなくなるが、それ以前ならば除去できる。第1時間T1は、ノズル面52b~54bに付着したインクI2~I4が第1ワイピングによって除去可能な時間である。第1時間T1は、好適には、例えば、8時間以上24時間以下の時間に設定される。この設定は、インクI2~I4は、8時間未満ではノズル面の第1ワイピングが不要であり、24時間以上ではインクの固化が問題になることを考慮した結果となっている。
【0056】
続くステップS130では、印刷回数Nが第1回数N1に達したかどうかが判定される。第1回数N1は、第2記憶部103bに記憶されている。第1回数N1の値は限定されないが、例えば、1回である。その場合、ステップS130は常にYESとなる。第1回数N1が2以上の場合には、ステップS130がNOとなる場合が発生する。ステップS130がNOの場合、ステップはステップS110に戻る。ステップS130がYESの場合、ステップはステップS140に進む。
【0057】
ステップS140では、第2ワイピングが実施される。ステップS140は、本実施形態では、所定回数の印刷が終了するたびに行われる通常のワイピングである。第2ワイピングの詳細は、図7の説明の通りである。ステップS140において第2ワイピングが終了した後、ステップはステップS110に戻る。
【0058】
上記のように、本実施形態では、ステップS110において前回の第1ワイピング(ステップS150)からの経過時間Tが第1時間T1に達し、判定がYESとなるまでは、ステップS120からステップS140が繰り返される。例えば、第1回数N1が1回に設定されている場合には、ステップS120で印刷が行われるたびに、ステップS140で第2ワイピングが行われる。この間は、第2ワイピングだけで特に問題は発生しないと考えられる。
【0059】
しかし、前回の第1ワイピングから時間が経過し、第2インクヘッド52~第4インクヘッド54の各ノズル面52b~54bにおいて拭き残したインクの粘度が高くなってくると、問題が発生する懸念が生じる。そこで、本実施形態では、前回の第1ワイピング(ステップS150)からの経過時間Tが第1時間T1に達すると、ステップS110における判定結果がYESとなるように設定されている。その場合、ステップはステップS150に進む。ステップS150では、第1ワイピングが行われる。
【0060】
ステップS150での第1ワイピングの詳細は、図6の説明の通りである。第1ワイピングでは、1つのインクヘッドのワイピングの前にはワイパー71のクリーニングを行うため、ノズル面52b~54bにインクの拭き残しはほとんど発生しない。ステップS150により、第1インクヘッド51~第4インクヘッド54は、清浄な状態に戻る。ステップS150の時点では、ノズル面52b~54bに付着したインクI2~I4の粘度は、まだ第1ワイピングによって除去可能な粘度である。ステップS150が完了すると、ステップはステップS110に戻る。以後、上記したステップが繰り返される。
【0061】
このように、本実施形態に係るプリンタ10は、第1記憶部103aと、第1ワイピング制御部103cと、第2ワイピング制御部103dとを備え、連続印刷動作においてワイピングに要する総ワイピング時間を短縮できるように構成されている。第1ワイピング制御部103cは、複数のインクヘッド51~54をそれぞれ個別にワイピングし、かつ、各インクヘッドのワイピングの間にワイパー71のクリーニングを行う第1方法によるワイピングを、第1記憶部103aに記憶された第1時間T1ごとに行うように設定されている。第2ワイピング制御部103dは、複数のインクヘッド51~54を連続してワイピングする第2方法によるワイピングを、第1方法によるワイピング同士の間に行うように設定されている。このようなプリンタ10によれば、所要時間の短い第2方法によるワイピングによって全ワイピング時間を短縮しつつ、よりインクの除去能力の高い第1方法によるワイピングを第1時間T1ごとに行うことにより、印刷品質を維持することができる。
【0062】
また、本実施形態に係るプリンタ10では、第1時間T1は、ノズル面52b~54bに付着したインクI2~I4が第1ワイピングによって除去可能な粘度を維持するような時間に設定されている。このようなプリンタ10によれば、第1クリーニングによって、各インクヘッド52~54のノズル面52b~54bのインクの拭き残しを除去することができる。第1時間T1は、1つの好適な例では、8時間以上24時間以下の時間である。
【0063】
また、本実施形態に係るプリンタ10は、第2記憶部103bに記憶された第1回数N1の印刷が行われるごとに第2方法によるワイピングを行うように設定されている。このようなプリンタ10によれば、第1方法によるワイピング同士の間、複数のインクヘッド51~54を問題のない状態に保つことができる。
【0064】
さらに、本実施形態に係るプリンタ10のクリーニング機構80は、洗浄液を貯留する洗浄液槽81を備え、洗浄液によってワイパー71をクリーニングするように構成されている。より詳しくは、ワイピング機構70のワイパー移動機構72は、ワイパー71を移動させて洗浄液槽81に貯留された洗浄液に浸漬させるように構成されている。本実施形態に係るワイピング方法によれば、インクヘッド51~54のクリーニングに対するワイパー71の洗浄の回数が少ないため、インクヘッド51~54のクリーニング1回につき消費される洗浄液の量が削減される。その結果、洗浄液の総消費量を削減することができる。本実施形態に係るワイピング方法は、洗浄液でワイパーをクリーニングするタイプのプリンタにおいて、洗浄液の消費量の低減という他の効果を奏しうる。
【0065】
以上、好適な一実施形態について説明した。しかし、上記の実施形態は例示に過ぎず、ここに開示する技術は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記実施形態では、ワイパーのクリーニングは洗浄液への浸漬によって行われたが、そうでなくともよい。例えば、ワイパーのクリーニングは洗浄液の噴射によって行われてもよい。また、必ずしも洗浄液によるものでなくともよく、例えば、振動による振るい落とし等でもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、第2方法によるワイピングは、制御装置に記憶された回数だけ印刷が行われるたびに実施された。しかし、第2方法によるワイピングの頻度は、他の基準によって定められてもよい。例えば、第2方法によるワイピングの頻度は、時間や吐出回数などを基準に定められてもよい。
【0067】
その他、インクジェットプリンタの構成については、特に言及がない限りにおいて限定されない。例えば、ここに開示する技術は、フラットベッドタイプのインクジェットプリンタなどに対しても利用できる。また、例えば、プリント・アンド・カット装置などのように、その一部にインクジェットプリンタが組み込まれた装置にも利用できる。
【符号の説明】
【0068】
10 インクジェットプリンタ
51 第1インクヘッド
52 第2インクヘッド
53 第3インクヘッド
54 第4インクヘッド
70 ワイピング機構
71 ワイパー
72 ワイパー移動機構
80 クリーニング機構
81 洗浄液槽
100 制御装置
101 印刷制御部
103a 第1記憶部
103b 第2記憶部
103c 第1ワイピング制御部
103d 第2ワイピング制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9