(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
B32B 15/095 20060101AFI20220405BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20220405BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20220405BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20220405BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20220405BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220405BHJP
【FI】
B32B15/095
H01M50/129
H01M50/105
H01M50/121
C09J175/06
H01G11/78
(21)【出願番号】P 2021109351
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2022-01-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣嶋 努
(72)【発明者】
【氏名】秋山 崇文
(72)【発明者】
【氏名】花木 寛
(72)【発明者】
【氏名】白石 功貴
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/179610(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/097887(WO,A1)
【文献】特開2017-152349(JP,A)
【文献】特開2017-025287(JP,A)
【文献】国際公開第2014/068986(WO,A1)
【文献】特開2015-160912(JP,A)
【文献】特開2021-099915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
H01G 9/00;11/00-11/86
H01M 50/00-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、外層側樹脂フィルム層(1)、外層側接着剤層(2)、金属箔層(3)、内層側接着剤層(4)及びヒートシール層(5)が、この順に外側から積層されている構成を備えた蓄電デバイス用包装材であって、
前記外層側接着剤層(2)が、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)を含む主剤(A)と、ポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤から形成されたものであり、
前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)は、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとの反応生成物であり、エステル結合濃度が9.20~10.50mmol/gであることを特徴とする蓄電デバイス用包装材。
【請求項2】
前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)は、ウレタン結合濃度が0.10~0.90mmol/gである、請求項1に記載の蓄電デバイス用包装材。
【請求項3】
前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)は、水酸基価が0.5~20mgKOH/gである、請求項
1又は2に記載の蓄電デバイス用包装材。
【請求項4】
前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)は、重量平均分子量が5,000~30,000のポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとの反応生成物である、請求項1~3いずれか1項に記載の蓄電デバイス用包装材。
【請求項5】
前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)は、重量平均分子量が40,000~70,000である、請求項1~4いずれか1項に記載の蓄電デバイス用包装材。
【請求項6】
前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)は、ガラス転移温度が-10℃~20℃である、請求項1~5いずれか1項に記載の蓄電デバイス用包装材。
【請求項7】
請求項1~
6いずれか1項に記載の蓄電デバイス用包装材から形成されてなる蓄電デバイス用容器であって、外層側樹脂フィルム層(1)が凸面を構成し、ヒートシール層(5)が凹面を構成している、蓄電デバイス用容器。
【請求項8】
請求項
7に記載の蓄電デバイス用容器を備えてなる蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池等の蓄電デバイス用容器を形成するための蓄電デバイス用包装材に関し、外観が良好であり、且つ優れた接着強度と成型性とを有する蓄電デバイス用包装材、該包装材を用いてなる蓄電デバイス用容器、及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯型パソコン等の電子機器の急速な成長により、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の二次電池や電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタ等の蓄電デバイスの需要が増大してきた。これらの中でも、エネルギー密度の高さや軽量さから、小型のリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池の外装体としては、従来、金属製缶が用いられてきたが、軽量化や生産性の観点よりプラスチックフィルムや金属箔等を積層した包装材が主流となりつつある。
【0003】
特許文献1には、耐熱性延伸樹脂層、接着剤層、アルミニウム層及び熱可塑性無延伸樹脂層が順次積層された構造を有し、接着剤層が、-20~45℃のガラス転移温度を示すポリエステル樹脂と、ポリエステル樹脂100質量部に対し10~70質量部のトルエンジイソシアネート系硬化剤とを含有する接着剤組成物の硬化処理物から構成されていることを特徴とする電池ケース用包材が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、外層側樹脂フィルム層、外層側接着剤層、金属箔層、内層側接着剤層及びヒートシール層が順次積層されてなり、前記外層側接着剤層が、特定のガラス転移温度を有する2種のポリエステルポリオールとポリイソシアネートとシランカップリング剤とを含む接着剤により形成されてなることを特徴とする電池用包装材が開示されている。
【0005】
また特許文献3には、ポリエステルポリオールをポリイソシアネートで鎖伸長して得られるポリオール組成物とポリイソシアネート組成物とを含む接着剤を用いて、乾燥後の塗布量が4g/m2となる量で外層側基材層と金属箔層とを貼り合わせた電池用包装材が記載されております。
【0006】
特許文献4には、加工性の向上や複合フィルムの成形性、耐湿熱性及び外観の向上を目的としたウレタン結合及びイソシアネート基の含有率を限定したラミネート接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-149562号公報
【文献】特開2014-091770号公報
【文献】国際公開第2018/117080号
【文献】特開2016-196580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、車載や家庭蓄電等用途が拡大すると共に、二次電池の大容量化が求められており、蓄電デバイス用包装材は良好な成型性が求められている。また、車載用途では、更なる軽量化が求められており、接着剤を薄膜にしても包装材の各プラスチックフィルムや金属箔等の層間の接着強度が成型加工、長期耐久試験後においても維持され、さらに外観に異常が無いことが求められている。
【0009】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された包装材は、接着剤層にイソシアネート成分が過剰に配合されたウレタン系接着剤を用いているため、過剰のイソシアネート基と水との反応によりウレア結合を有する樹脂が生成し、該ウレア結合含有樹脂はウレタン系接着剤との相溶性が劣るため、包装材とした際に外観不良や深い成型が困難であるという課題がある。
【0010】
特許文献3に記載された包装材は、特定の構成成分及びウレタン結合濃度を有するポリウレタン樹脂を用いていないため、接着剤の薄膜化と、成型性、高温高湿・長期耐久性試験後の層間の接着強度との両立が困難であるという課題がある。また、酢酸エチル等の溶剤への溶解性が悪く、長期保存時に主剤が固化し安定に塗工ができないという課題がある。
【0011】
特許文献4には、ウレタン結合及びイソシアネート含有率を限定したポリウレタン樹脂を用いたラミネート接着剤が記載されているが、貯蔵弾性率が低く、接着剤の薄膜化が困難であるという課題がある。
【0012】
したがって本発明は、接着剤が薄膜でも高温高湿・長期耐久性試験後において層間の接着強度が低下せず、優れた成型性を有し、且つ層間の浮き等の外観不良が発生しない蓄電デバイス用包装材、該包装材を用いてなる蓄電デバイス用容器、及び信頼性に優れた蓄電デバイスを提供することをすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の一実施形態は、少なくとも、外層側樹脂フィルム層(1)、外層側接着剤層(2)、金属箔層(3)、内層側接着剤層(4)及びヒートシール層(5)が、この順に外側から積層されている構成を備えた蓄電デバイス用包装材であって、前記外層側接着剤層(2)が、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)を含む主剤(A)と、ポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤から形成されたものであり、前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)は、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとの反応生成物であり、エステル結合濃度が9.20~10.50mmol/gであることを特徴とする蓄電デバイス用包装材に関する。
【0015】
本発明の他の実施形態は、前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)は、ウレタン結合濃度が0.10~0.90mmol/g以下である、上記蓄電デバイス用包装材に関する。
【0016】
本発明の他の実施形態は、前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)の水酸基価が0.5~20mgKOH/gである、上記蓄電デバイス用包装材に関する。
【0017】
本発明の他の実施形態は、前記水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)は、重量平均分子量が5,000~30,000のポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとの反応生成物である、上記蓄電デバイス用包装材に関する。
【0018】
本発明の他の実施形態は、上記蓄電デバイス用包装材から形成されてなる蓄電デバイス用包装材から形成されてなる蓄電デバイス用容器であって、外層側樹脂フィルム層(1)が凸面を構成し、ヒートシール層(5)が凹面を構成している、蓄電デバイス用容器に関する。
【0019】
本発明の他の実施形態は、上記蓄電デバイス用容器を備えてなる蓄電デバイスに関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、所定のエステル結合濃度を有し保存安定性に優れる主剤を用いるため、塗工欠陥の少ない接着剤層が得られ、接着剤が薄膜でも高温高湿・長期耐久性試験後においても層間の接着強度が低下せず、優れた成型性を有し、且つ層間の浮き等の外観不良が発生しない蓄電デバイス用包装材、該包装材を用いてなる蓄電デバイス用容器、及び信頼性に優れた蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の蓄電デバイス用包装材の模式的断面図である。
【
図2】本発明の蓄電デバイス用容器の一態様(トレイ状)の模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<蓄電デバイス用包装材>
本発明の蓄電デバイス用包装材は、少なくとも、外層側樹脂フィルム層(1)、外層側接着剤層(2)、金属箔層(3)、内層側接着剤層(4)及びヒートシール層(5)が、この順に外側から積層されている構成を備えた蓄電デバイス用包装材であって、外層側接着剤層(2)が、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)を含む主剤(A)と、ポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤から形成されたものであり、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)は、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとの反応生成物であり、エステル結合濃度が9.20~10.50mmol/gであることを特徴とする。
以下、本発明について、好ましい形態を例に挙げて詳細に説明する。
【0023】
<外層側接着剤層(2)>
本発明における外層側接着剤層(2)は、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)を含む主剤(A)と、ポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤から形成される。
まず主剤に関して説明する。主剤及び硬化剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の添加剤を含んでもよい。
【0024】
<水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)>、
水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)は、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物であり、エステル結合濃度が9.20~10.50mmol/gであることを特徴とする。水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)は、後述のポリエステルポリオールを含むポリオール中の水酸基と、ポリイソシアネート中のイソシアネート基とを、水酸基を過剰にした条件でウレタン化反応させることで得ることができる。
【0025】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールは、以下に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸成分と水酸基成分とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
上記カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸等の芳香環を有する二塩基酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の脂肪族の二塩基酸;若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物が挙げられる。
上記水酸基成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類;若しくはそれらの混合物が挙げられる。
上記カルボン酸成分及び水酸基成分は、各々1種を単独で用いてもよいが、2種以上を併用することが好ましい。
【0026】
上記カルボン酸成分は、全カルボン酸成分を基準として、脂肪族の二塩基酸を5~50モル%含むことが好ましい。脂肪族の二塩基酸の配合量が5モル%以上であると、溶剤溶解性が高まり、得られるポリエステルポリオール溶液が低粘度化する。これにより、ポリウレタン接着剤の塗工性が向上し、より外観に優れる包装材が得られる。50モル%以下であると、ポリエステルポリオールのガラス転移温度の調整が容易になり、接着力が一層向上する。同様の観点から、脂肪族の二塩基酸の配合量は、全カルボン酸成分を基準として、より好ましくは、25~50モル%である。
【0027】
ポリエステルポリオールのエステル結合濃度は、好ましくは9.40mmol/g~10.80mmol/g、より好ましくは9.40~10.3mmol/g、さらに好ましくは9.40~9.80mmol/gである。
ポリエステルポリオールのエステル結合濃度が9.40mmol/g以上であると、酢酸エチル等のエステル系溶剤への溶解性に優れ、ウレタン化に用いるイソシアネート量が限定されないため、良好な接着性を発揮でき好ましい。10.80mmol/g以下であると、エステル結合による分子間相互作用による高粘度化や溶剤溶解性の低下が抑制されるため好ましい。
【0028】
ポリエステルポリオールのエステル結合濃度は、以下の計算式で計算することができる。
式:ポリエステル結合濃度(mmol/g)=カルボン酸成分の仕込みモル量×カルボン酸官能基数の総和/(全仕込み量×固形収率)×1000
合成例1のポリエステルを例に挙げると、
イソフタル酸(官能基数2):148g=0.892mol、
テレフタル酸(官能基数2):296g=1.783mol、
アジピン酸(官能基数2):260g=1.780mol、
全仕込み量1000.05g、収率83.9%
となり、ポリエステル1のエステル結合濃度は、
(0.892×2+1.783×2+1.780×2)/(1000.5*0.839)×1000=10.63
と計算することができる。
【0029】
ポリエステルポリオールの重量平均分子量は、好ましくは5,000~30,000であり、より好ましくは10,000~30,000であり、さらに好ましくは15,000から25,000である。重量平均分子量が5,000以上であると、基材との接着性がより向上し加工性に優れる。重量平均分子量が30,000以下であると、ポリエステルポリオール末端の水酸基濃度が過度に低くなることを容易に防ぐことができ、後述するポリイソシアネートと反応させて水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)を得る際に、反応の時間の長期化を容易に防ぐことができる。
【0030】
水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)を構成するポリオールとしては、上記のポリエステルポリオールに加えて、従来公知のポリオールを併用することができる。併用可能なポリオールとしては、例えば、上述するポリエステルポリオール合成に使用可能な水酸基成分が挙げられ、ネオベンチルグリコールや1,4-ブタンジオールが好適に使用できる。
【0031】
(ポリイソシアネート)
水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)を構成するポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、3官能以上のポリイソシアネートの単量体、前記ジイソシアネートから誘導される各種誘導体が挙げられる。
【0032】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-プチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートが挙げられる。
【0033】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0034】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートが挙げられる。
【0035】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω、ω’-ジイソシアネート-1,4- ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物が挙げられる。
【0036】
3官能以上のポリイソシアネート単量体としては、例えば、トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエン等のトリイソシアネート;4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’-5,5’-テトライソシアネ-ト等のテトライソシアネートが挙げられる。
【0037】
前記ジイソシアネートから誘導される各種誘導体としては、前記ジイソシアネートと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロ-ル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子ポリオール若しくはひまし油等との付加体(アダクト体);前記ジイソシアネートの三量体(トリマー、ヌレート体ともいう);ビウレット体;アロファネート体;の他、炭酸ガスと前記ジイソシアネートとから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート;等を用いることができる。
【0038】
水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)を構成するポリイソシアネートとして好ましくは、芳香族イソシアネート、脂環式ジイソシアネートであり、成型性や高温高湿試験後の接着性の観点から、より好ましくは、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートである。
【0039】
水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)を得る際の、ポリオールとポリイソシアネートとの反応温度は、好ましくは50℃~200℃、より好ましくは80~150℃の温度範囲である。ウレタン化反応におけるポリオール中の水酸基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基のモル比(イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数)は、0.1~0.9で反応させることが好ましく、より好ましくは0.3~0.8である。
【0040】
本発明においては、外層側接着剤層を構成する水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)のエステル結合濃度が9.20mmol/g~10.50mmol/gの範囲であることが重要であり、エステル結合濃度を所定範囲内に制御することで、接着剤の溶液の安定性とエステル結合による基材への親和性を制御し、優れた塗工性を発揮する。これにより、得られる包装材は、高温高湿・長期耐久性試験後においても層間の接着強度が低下せず、優れた成型性を有し、且つ層間の浮き等の外観不良が発生しない。そして、上記効果は、接着剤が低塗布量である、即ち外層側接着剤層の厚みが小さい場合でも顕著に発現する。
エステル結合濃度が9.20mmol/g未満であると、酢酸エチル等のエステル系溶剤への溶解性が低下し、塗工性が低下する。又は、エステル結合による基材への親和性が低下し接着強度が低下する。10.50mmol/gを超えると、エステル結合による分子間相互作用が高まり、高粘度化や溶剤溶解性が低下し、塗工欠陥によるエージング後の外観が低下する。
水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)のエステル結合濃度は、好ましくは9.20~10.1mmol/g、より好ましくは9.20~9.60mmol/gである。
【0041】
水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)のエステル結合濃度は、以下の計算式で計算することができる。
計算式: ポリエステル結合濃度(mmol/g)=ポリエステルポリオールのポリエステル結合濃度×ウレタン樹脂を構成するポリオールとポリイソシアネートとの合計質量に対するポリエステルポリオールの割合(質量%)
例えば、合成例(a)-1に示した水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)のエステル結合濃度は、
ポリエステル結合濃度=10.63×(100/102)=10.42 mmol/g
となる。
【0042】
水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)のウレタン結合濃度は、0.10~0.90mmol/gの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.15~0.60mmol/g、さらに好ましくは0.20~0.40mmol/gである。0.10mmol/g以上であると、優れた相溶性向上効果を得ることができ外観や接着性が向上するため好ましい。0.90mmol/g以下であるとウレタン結合濃度が過度になりすぎず適正な粘度となるため、塗工性や外観に優れるため好ましい。
水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)のウレタン結合濃度を制御することで、硬化剤であるポリイソシアネート成分(B)との相溶性を向上させることができ、架橋密度が高く、耐久性と外観とに優れる接着剤層を形成することができる。
【0043】
ウレタン結合濃度は、下記式1を用いて算出することができる。
式1:
ウレタン結合濃度(mmol/g)=[(ポリイソシアネートのNCO含有量(質量%)÷100)×(ウレタン樹脂を構成するポリオールとポリイソシアネートとの合計(質量%)に対するポリイソシアネート(質量%)の配合割合)÷42×1000]+[(ポリイソシアネート内部のウレタン結合数÷ポリイソシアネート分子量)×(ウレタン樹脂を構成するポリオールとポリイソシアネートとの合計(質量%)に対するポリイソシアネート(質量%)の配合割合)×1000]
【0044】
例えば、合成例(a)-1に示した水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)のウレタン結合濃度は、トリレンジイソシアネートのNCO含有量が48.2質量%、ポリオールに対するポリイソシアネートの添加量は1質量%、内部のウレタン結合数はゼロであることから、
ウレタン結合濃度=0.482×(2/102)/42×1000
=0.23mmol/gとなる。
【0045】
水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)の重量平均分子量は、好ましくは20,000~100,000、より好ましくは40,000~70,000である。
重量平均分子量が20,000以上であると、樹脂の伸長性がより高まり加工性が一層向上する。重量平均分子量が100,000以下であると、接着剤溶液の粘度が過度に高くなることを容易に防ぐことができ、外観不良が一層発生しにくくなる。また、重量平均分子量を40,000~70,000に制御することで、樹脂の伸長性と接着剤溶液の粘度の両立が一層しやすくなり、より好適に使用することができる。
【0046】
水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)の水酸基価は、好ましくは0.5~20mgKOH/g、より好ましくは3~10mgKOH/gである。水酸基は後述するポリイソシアネート成分(B)との架橋反応に用いられ、架橋反応が進行することで、接着剤が高分子量化し、包装材としての耐熱性を高めることができる。上記水酸基価は、例えばJIS K 1557-1に準拠した方法で求めることができる。
【0047】
水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)のガラス転移温度は、好ましくは-20℃~40℃であり、より好ましくは-10~20℃である。ガラス転移温度が-20℃以上であると、樹脂の凝集力がより高まり、接着性が一層向上する。ガラス転移温度が40℃以下であると、ラミネート時の基材への親和性がより高まり、エージング後の接着力が一層向上する。
【0048】
ポリウレタン接着剤を含む主剤(A)は、上記水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)を含んでいればよく、さらにその他の成分として、以下のような成分を含有してもよい。その他の成分は、主剤(A)又はポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤のいずれに配合してもよいし、主剤(A)とポリイソシアネート(B)を含む硬化剤とを配合する際に添加してもよいが、主剤(A)に配合するのがより好ましい。
【0049】
(溶剤)
ポリウレタン接着剤は、ポリウレタン接着剤を基材に塗工する際、塗液を適度な粘度に調整するために、乾燥工程において基材への影響がない範囲内で溶剤が含まれてもよい。溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族化合物、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール等のアルコール類、水等が挙げられる。これら溶剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも酢酸エチルが好適に用いられる。
【0050】
(反応促進剤)
ポリウレタン接着剤は、ウレタン化反応を促進するため、さらに反応促進剤を含有することができる。反応促進剤としては、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられ、これらの群から選ばれた1種又は2種以上の反応促進剤を使用できる。
【0051】
(シランカップリング剤)
ポリウレタン接着剤は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させるため、さらにシランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0052】
シランカップリング剤の含有量は、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)の固形分100質量部に対し、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部である。上記範囲のシランカップリング剤を添加することによって金属箔に対する接着強度を一層向上できる。
【0053】
(エポキシ樹脂)
ポリウレタン接着剤は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させるため、さらにエポキシ樹脂を添加することができる。特にポリエステル骨格を含むポリウレタン樹脂(a)にエポキシ樹脂を添加した場合、耐湿熱時の加水分解で生じた酸と反応させることで耐湿熱性を一層向上させることができる。
【0054】
エポキシ樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。
これらエポキシ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0055】
中でも、接着力及び耐湿熱性の観点から、重量平均分子量400~10,000のエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の配合量は、接着力及び耐湿熱性の観点から、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)100質量部に対して、好ましくは5~50質量部であり、より好ましくは、10~20質量部である。5質量部以上とすることにより耐湿熱性をより効果的に向上でき、50質量部以下とすることにより、接着剤層の硬さを適度に軟らかくし、十分な接着性を容易に発現できる。
【0056】
(リンの酸又はその誘導体)
ポリウレタン接着剤は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させるため、リン酸又はリン酸誘導体を含有することができる。リン酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。また、リン酸の誘導体としては、上記のリン酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リン酸又はその誘導体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。リン酸又はその誘導体の添加量は、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.05~5質量部、さらに好ましくは0.05~1質量部である。
【0057】
ポリウレタン接着剤は、包装材のラミネート外観を向上させるため、さらにレベリング剤又は消泡剤を含有することができる。レベリング剤としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチン等が挙げられる。
【0058】
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物等の公知のものが挙げられる。
【0059】
ポリウレタン接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述以外の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒等が挙げられる。
【0060】
主剤(A)は、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)に上述の添加剤を配合後の溶液においては、低温や高温においても外観での濁りや粘度変化が起きない保存安定性が求められる。外観での濁りの非相溶部位は成型時のクラックの起点になる場合がある。また粘度が変化した際は、塗工工程の調整が困難になってしまう場合がある。
【0061】
<ポリイソシアネート成分(B)>
ポリイソシアネート成分(B)は、水酸基を有するポリウレタン樹脂(A)中の水酸基と架橋反応し、接着剤層の分子量を高め、エネルギー弾性を発現する内部凝集力を向上させる役割を担う。また、イソシアネート基は水と反応し凝集力の高いウレア結合を形成可能であることから、養生中に自己架橋反応させることで接着剤層の凝集力を高めることができる。
通常、架橋反応により生成するウレタン結合やウレア結合は、水素結合があり極性が高いため、樹脂との相溶性に劣り、外観不良や成型加工時に欠陥となる場合があるが、本願発明では、本願所定の水酸基とを有するポリウレタン樹脂(a)とポリイソシアネート成分(B)とを組み合わせて用いることで、相溶性に優れ、良好な外観且つ強靭な接着剤層を形成することができ、蓄電デバイス用包装材として良好な物性を得ることができる。
【0062】
また、ポリイソシアネート成分(B)は、後述する基材表面との相互作用を向上させる働きがあり、特に、コロナ放電処理等の物理処理や酸改質等の化学処理がなされた基材を用いた場合、ポリイソシアネート成分(B)中の反応性官能基と基材表面の水酸基とが、化学反応することで、外層側接着剤層と基材との間に強固な相互作用を発現させることができる。
このように、ポリイソシアネート成分(B)を用いることにより、強固な外層側接着剤層を形成することが可能となり、急激な環境変化に伴う基材の伸縮運動を接着剤層が抑制し、接着強度を高レベルで維持することが可能となる。
【0063】
ポリイソシアネート化合物(B)としては、上述の水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)を構成する(ポリイソシアネート)の項で挙げたものを用いることができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
中でも、ポリイソシアネート化合物(B)として好ましくは、ジイソシアネートのヌレート体、ジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体、ビウレット型、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)、イソシアネート残基を有するウレトジオン体、アロファネート体、若しくはこれらの複合体である。
電子デバイス用途においては、優れた耐熱性、及び高い凝集力と加工性、を両立できる観点から、好ましくは芳香族イソシアネート、又はその誘導体である。
【0065】
また、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)を構成するポリイソシアネートと、ポリイソシアネート成分(B)とが同一であると、より相溶性が高まるため好ましい。すなわち、ポリイソシアネート成分(B)としてより好ましくは、トリレンジイソシアネート、又はトリレンジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体を含むものである。
【0066】
ポリイソシアネート成分(B)の含有量は、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)の固形分質量を基準として、好ましくは10~40質量%、より好ましくは20~30質量%である。ポリイソシアネート成分(B)が10質量%以上であると、接着剤層の分子量を効率的に高めることができる。これにより、内部凝集力が向上し、高い接着強度が容易に得られる。40質量%以下であると、架橋反応により生成する極性の高いウレタン結合やウレア結合の量が適切に制御され、外観悪化や加工による変形時の欠陥の発生を容易に抑えることができる。
【0067】
<蓄電デバイス用包装材の製造>
本発明の蓄電デバイス用包装材の製造方法は特に制限されず、公知の方法により製造することができる。
例えば、外層側樹脂フィルム層(1)と金属箔層(3)とを、上述の外層側接着剤層(2)を形成するポリウレタン接着剤を用いて積層して、外層側樹脂フィルム層(1)/外層側接着剤層(2)/金属箔層(3)の構成を備える中間積層体を得た後、内層側接着剤を用いて中間積層体の金属箔層(3)面にヒートシール層(5)を積層して製造することができる(以下、製造方法1と称する)。
あるいは、内層側接着剤を用いて金属箔層(3)とヒートシール層(5)とを積層して、金属箔層(3)/内層側接着剤層(4)/ヒートシール層(5)の構成を備える中間積層体を得た後、上述のポリウレタン接着剤を用いて、中間積層体の金属箔層(3)と外層側樹脂フィルム層(1)とを積層して製造することができる(以下、製造方法2と称する)。
【0068】
製造方法1の場合、上述のポリウレタン接着剤を、外層側樹脂フィルム層(1)又は金属箔層(3)のいずれか一方の基材の片面に塗布し、溶剤を揮散させた後、未硬化の外層側接着剤層に他方の基材を加熱加圧下に重ね合わせ、次いで常温(例えば、25℃)~100℃未満でエージングし、外層側接着剤層を硬化するのが好ましい。エージング温度が100℃未満であると、外層側樹脂フィルム層(1)の熱収縮が起こらないため、成型に影響を及ぼす破断伸度や破断応力の低下や、フィルムカールによる成型生産性の低下を容易に防ぐことができる。
外層側接着剤の乾燥後塗布量は1~15g/m2程度であることが好ましい。
【0069】
また、本発明の蓄電デバイス用包装材は、接着剤が薄膜であっても、高温高湿・長期耐久性試験後の接着強度、及び成型性に優れ、且つ層間の浮き等の外観不良を生じない。具体的には、本発明の蓄電デバイス用包装材は、接着剤の乾燥後塗布量が3g/m2以下、より塗布量を低減し2g/m2以下であっても、高温高湿・長期耐久性試験後の接着強度、成型性、層間の浮き抑制に優れており、接着剤の薄膜化と、成型性、高温高湿・長期耐久性試験後の層間の接着強度と、を両立可能とする優れた効果を発揮する。
【0070】
製造方法2の場合も同様に、上述のポリウレタン接着剤は、外層側樹脂フィルム層(1)若しくは中間積層体の金属箔層(3)面のいずれかに塗布すればよい。
【0071】
外層側接着剤層の形成方法としては、コンマコーター、ドライラミネーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター等を用いる方法が挙げられる。
【0072】
<外層側樹脂フィルム層(1)>
外層側樹脂フィルム層(1)は特に制限されないが、ポリアミド又はポリエステルからなる延伸フィルムを用いるのが好ましい。また、カーボンブラックや酸化チタン等の顔料により着色されていてもよい。また、外層側樹脂フィルム層(1)の非ラミネート面は、傷つき防止や耐電解液性を目的としてコート剤やスリップ剤がコーティングされていてもよく、意匠性を目的として印刷インキがコーティングされていてもよい。また、外層側樹脂フィルム層(1)は、2層以上のフィルムがあらかじめ積層されていてもよい。外層側樹脂フィルム層(1)の厚みは特に制限されないが、好ましくは12~100μmである。
【0073】
<金属箔層(3)>
金属箔層(3)は特に制限されないが、好ましくはアルミニウム箔層である。金属箔層(3)の厚みは特に制限されないが、好ましくは20~80μmである。また、金属箔層(3)表面は、リン酸クロメート処理、クロム酸クロメート処理、3価クロム処理、リン酸亜鉛処理、リン酸ジルコニウム処理、酸価ジルコニウム処理、リン酸チタン処理、フッ酸処理、セリウム処理、ハイドロタルサイト処理等による公知の防腐処理が施されていることが好ましい。防腐処理されていることによって、電池の電解液による金属箔表面の腐食劣化を抑制することができる。更に防腐処理表面上に、フェノール樹脂、アミド樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、カップリング剤等の公知の有機プライマーを200℃ほどの高温で金属に焼付けて処理することが好ましい。有機プライマー処理を施すことによって、金属箔と接着剤をより強固に接着させ、金属箔と接着剤間の浮きを更に抑制することができる。
【0074】
<ヒートシール層(5)>
ヒートシール層(5)は特に制限されないが、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変成物及びアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムである。ヒートシール層の厚みは特に制限されないが、好ましくは20~150μmである。
【0075】
<内層側接着剤層(4)>
内層側接着剤層(4)を形成する接着剤は特に制限されないが、蓄電デバイスの電解液によって金属箔層(3)とヒートシール層(5)との接着強度が低下しないものが好ましく、公知の接着剤を使用することができる。
内層側接着剤層(4)は、例えば、ポリオレフィン樹脂とポリイソシアネートの組み合わせた接着剤や、ポリオールとポリイソシアネートとを組み合わせた接着剤を、グラビアコーター等を用いて金属箔層(3)に塗布して溶剤を乾燥させ、接着剤層にヒートシール層(5)を加熱加圧下に重ね合わせ、次いで常温若しくは加温下でエージングすることで、形成することができる。
あるいは、酸変性ポリプロピレン等の接着剤をTダイ押出し機で金属箔層(3)上に溶融押出しして接着剤層を形成し、前記接着剤層上にヒートシール層(5)を重ね、金属箔層(3)とヒートシール層(5)とを貼り合せることで内層側接着剤層(4)を形成することができる。
外層側接着剤層(2)及び内層側接着剤層(4)の両方がエージングを必要とする場合には、外層側樹脂フィルム層(1)、未硬化の外層側接着剤層、金属箔層(3)、未硬化の内層側接着剤層及びヒートシール層(5)が、この順に外側から積層されている構成を備えた積層体を得た後に、まとめてエージングを行ってもよい。
【0076】
<蓄電デバイス用容器>
本発明の蓄電デバイス用容器は、本発明の蓄電デバイス用包装材を用い、外層側樹脂フィルム層(1)が凸面を構成し、ヒートシール層(5)が凹面を構成するように成型して得ることができる。なお、本発明でいう「凹面」とは、平たい状態の蓄電デバイス用包装材を成型加工して
図2に示すようなトレイ状とした場合に、電解液を内部に収容し得る窪みを有する面という意であり、本発明でいう「凸面」とは、前記窪みを有する面の自背面の意である。
【0077】
<蓄電デバイス>
本発明の蓄電デバイスは、前記蓄電デバイス用容器を使用してなるものであり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが挙げられる。
一般的な蓄電デバイスは、電極を含む電池要素と該電極から延在するリードと収容する容器とを備え、本発明の蓄電デバイスでは、前記蓄電デバイス用容器が前記収納する容器に用いられる。前記収納する容器は、蓄電デバイス用包装材から、ヒートシール層(5)が内側となるように形成され、2つの包装材のヒートシール層(5)同士を対向させて重ね合わせ、重ねられた包装材の周縁部を熱融着して得られてもよいし、1つの包装材を折り返して重ね合わせ、同様に包装材の周縁部を熱融着してもよい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0079】
<酸価(AV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオール溶液)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式により酸価(mgKOH/g)を求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0080】
<水酸基価(OHV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオールや水酸基含有ウレタン樹脂(a)等)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式により水酸基価(mgKOH/g)を求めた。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.05}/S]+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0081】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定>
平均分子量、分子量分布は、ショウデックス(登録商標)(昭和電工(株)製)、カラム:KF-805L、KF-803L、及びKF-802(いずれも商品名、昭和電工(株)製)を用いて、カラムの温度を40℃、溶離液としてTHF、流速を0.2ml/分、検出をRI、試料濃度を0.02質量%として測定した標準ポリスチレン換算の値を用いた。
【0082】
<ガラス転移温度(Tg)>
ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量計)により測定した。具体的には、測定対象化合物を約2mg、アルミニウムパン上で秤量し、該アルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて得られるチャートの吸熱ピークを読み取り、この時のピーク温度をガラス転移温度とした。
【0083】
<ポリエステルポリオールの合成>
(ポリエステル1)
イソフタル酸148部、テレフタル酸296部、アジピン酸260部、エチレングリコール250部、ネオペンチルグリコール46部を仕込み、170~230℃で10時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.05部を添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で3時間エステル交換反応を行い、数平均分子量(Mn)9,200、重量平均分子量(Mw)19,000、分子量分布(Mw/Mn)2.07、水酸基価14.0mgKOH/g、酸価0.2mgKOH/g、ガラス転移温度2℃のポリエステルポリオールであるポリエステル1を、収率83.9%で得た。ポリエステル1のエステル結合濃度は10.63mmol/gであった。
過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、カルボン酸成分と水酸基成分との合計を200モル%とすると、得られたポリエステル1の組成は、イソフタル酸:テレフタル酸:アジピン酸:エチレングリコール:ネオペンチルグリコール=20:40:40:90:10(モル%)となる。
【0084】
(ポリエステル2~13)
得られるポリエステルポリオールの、カルボン酸成分と水酸基成分の仕込み量を表1に示すような配合比になるように、ポリエステル1と同様にしてカルボン酸成分と水酸基成分とを反応させ、ポリエステル2~13を得た。
【0085】
【0086】
表1中の略号は以下の通りである。
PA:オルトフタル酸
IPA:イソフタル酸
TPA:テレフタル酸
AdA:アジピン酸
EG:エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
1,6-HD:1,6-ヘキサンジオール
MPO:2-メチル-1,3-プロパンジオール
DEG:ジエチレングリコール
【0087】
<水酸基含有ポリウレタン樹脂(a)の合成>
(ウレタン(a)-1)
得られたポリエステル1を100部と酢酸エチル40部とを1リットル4口フラスコに仕込み、80℃に昇温し、溶液が均一になるまで撹拌した。これにトリレンジイソシアネートを2.0部、ジブチル錫ジラウレート0.15部を添加し、4時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル113部を添加し、エステル結合濃度10.42mmol/g、ウレタン結合濃度0.23mmol/g、Mn23,500、Mw56,100、Tg4℃、水酸基価7.9mgKOH/g、不揮発分40%の水酸基を有するポリウレタン樹脂であるウレタン(a)-1溶液を得た。
【0088】
(ウレタン(a)-2~(a)-15、比較(a)-1~(a)-4)
表2に示す配合量に変更した以外は、ウレタン(a)-1と同様にして、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)であるウレタン(a)-2~(a)-15、比較(a)-1~(a)-4を得た。
【0089】
【0090】
表2中の略号は以下の通りである。
NPG:ネオペンチルグリコール
TDI:トリレンジイソシアネート(コロネートT-80(商品名)、東ソー株式会社製、NCO含有量48.2%)
MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMT(商品名)、東ソー株式会社製、NCO含有量33.5%)
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(デスモジュール(登録商標)H(商品名)、コベストロ社製、NCO含有量49.9%)
IPDI:イソホロンジイソシアネート(デスモジュールI(商品名)、コベストロ社製、NCO含有量37.7%)
H6XDI:1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(タケネート600(商品名)三井化学株式会社製、NCO含有量43.2%)
【0091】
<蓄電デバイス用包装材の製造>
[実施例1]
ウレタン(a)-1溶液を250部(固形換算で100部)、添加剤としてグリシドプロピルトリメトキシシラン1.0部を仕込み、30分撹拌した後に、酢酸エチルで希釈して固形分濃度40%の主剤(A)を得た。そこに、ポリイソシアネート成分(B)としてコロネートL(商品名、東ソー株式会社製、固形分濃度75%、NCO含有量13.2%)を40部(固形換算で30部)仕込み、酢酸エチルで希釈して、固形分濃度30%の接着剤溶液を調製した。
ドライラミネーターを用いて、厚み40μmのアルミニウム箔の一方の面に、外層側接着剤層(2)用として上記接着剤溶液を塗布し、溶剤を揮散させた後、厚み30μmの延伸ポリアミドフィルムを積層し中間積層体を得た。接着剤の乾燥後塗布量は2g/m2及び4g/m2とした。
次いで、ドライラミネーターを用いて、得られた中間積層体のアルミニウム箔の他方の面に、後述の内層側接着剤層用接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、厚み30μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層し積層体を得た。接着剤の乾燥後塗布量は4g/m2とした。
次いで、60℃30%RH(相対湿度)及び60℃90%RHの条件で各々7日間のエージングを行い、外層側及び内層側の接着剤層を硬化させて、外層側樹脂フィルム層(1)/外層側接着剤層(2)/金属箔層(3)/内層側接着剤層(4)/ヒートシール層(5)の構成を備える電池用包装材を得た。
【0092】
(内層側接着剤層用接着剤)
主剤としてAD-502(商品名、東洋モートン(株)製、ポリエステルポリオール)、硬化剤としてCAT-10L(商品名、東洋モートン(株)製、イソシアネート系硬化剤)を用いて、主剤/硬化剤=100/10(質量比)となるように配合し酢酸エチルで固形分濃度30%に調整したものを、内層側接着剤層用接着剤として用いた。
【0093】
[実施例2~17、比較例1~5]
表3の配合量(部)に変更した以外は実施例1と同様の所作を行い、電池用包装材を得た。
【0094】
<蓄電デバイス用包装材の評価>
得られた蓄電デバイス用包装材について、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0095】
[主剤Aの保存安定性の評価]
固形分濃度40%の主剤(A)を5℃4週間保存し、さらに23℃に4時間静置後の外観及び粘度変化に関して以下の基準で評価した。粘度は25℃の条件にてB型粘度計を用いて測定した。
A:5℃保存前後で外観や粘度変化が見られない(良好)
B:5℃保存前後で外観に濁りが見られるが60℃2時間加熱することで元の外観に回復する。且つ、粘度の上昇は20%未満(使用可能)
C:5℃保存前後で外観に濁りが発生し、60℃2時間加熱しても元の状態に戻らない。又は、5℃保存前後で20%以上粘度が上昇する(使用不可)
【0096】
[包装材の外観評価]
外層側接着剤の乾燥後塗布量が4g/m2であり、エージング条件が60℃30%RH7日間及び60℃90%RH7日間の電池用包装材について、各々外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
A:白化や発泡が見られない(良好)
B:若干の白化はあるが、発泡は見られない(使用可能)
C:白化又は発泡が見られる(使用不可)
【0097】
[ラミネート強度(湿熱試験前)]
外層側接着剤の乾燥後塗布量が2g/m2及び4g/m2であり、エージング条件が60℃30%RH7日間の電池用包装材を、各々200mm×15mmの大きさに切断し、引張り試験機を用いてT型剥離試験を行い、延伸ポリアミドフィルムとアルミニウム箔との間の剥離強度(N/15mm巾)を測定した。測定は、20℃65%RHの環境下にて、荷重速度300mm/分で行い、5個の試験片の平均値により、以下の基準で評価した。
S:剥離強度の平均値が7N以上(非常に良好)
A:剥離強度の平均値が4N以上、7N未満(良好)
B:剥離強度の平均値が2N以上、4N未満(使用可能)
C:剥離強度の平均値が2N未満(使用不可)
【0098】
[ラミネート強度(湿熱試験後)]
外層側接着剤の乾燥後塗布量が2g/m2及び4g/m2であり、エージング条件が60℃30%RH7日間の電池用包装材を、各々85℃85%RH雰囲気の恒温恒湿槽に入れ168時間静置した後、恒温恒湿槽から取り出し、20℃65%RHの環境下にて2時間静置した後、湿熱試験前と同様の所作を行い、同基準でラミネート強度を評価した。
【0099】
[成型性評価]
外層側接着剤の乾燥後塗布量が2g/m2であり、エージング条件が60℃30%RH7日間の電池用包装材を80×80mmの大きさに切断し、ブランクとした。前記ブランクに対し、延伸ポリアミドフィルムが外側になるようにして、成型高さフリーのストレート金型にて張り出し1段成型を行い、アルミニウム箔の破断や各層間の浮きが発生しない、最大の成型高さにより、以下の基準で成型性を評価した。
使用した金型のポンチ形状は、一辺30mmの正方形、コーナーRが2mm、ポンチ肩Rが1mmであり、使用した金型のダイス孔形状は、一片34mmの正方形、ダイス孔コーナーRが2mm、ダイス孔肩Rが1mmであり、ポンチとダイス孔とのクリアランスは片側2mmであり、前記クリアランスにより成型高さに応じた傾斜が発生する。
S:最大の成型高さが6mm以上である(非常に良好)
A:最大の成型高さが4mm以上、6mm未満である(良好)
B:最大の成型高さが2mm以上、4mm未満である(使用可能)
C:最大の成型高さが2mm未満である(使用不可)
【0100】
[成型物の耐湿熱性]
外層側接着剤の乾燥後塗布量が2g/m2であり、エージング条件が60℃30%RH7日間の電池用包装材を80×80mmの大きさに切断し、ブランクとした。前記ブランクに対し、延伸ポリアミドフィルムが外側になるようにして、成型高さフリーのストレート金型にて成型高さ3mmにて張り出し1段成型を行い、成型物を得た。
次いで、成型物を85℃85%RH雰囲気下の恒温恒湿槽に入れ168時間静置した後、恒温恒湿槽から取り出し、浮きが発生していないかを目視で確認し、以下の基準で評価した。
使用した金型のポンチ形状は、一辺30mmの正方形、コーナーRが2mm、ポンチ肩Rが1mmであり、使用した金型のダイス孔形状は、一片34mmの正方形、ダイス孔コーナーRが2mm、ダイス孔肩Rが1mmである。
A:浮きの発生なし(良好)
B:4辺のうち1辺で浮きが発生(使用可能)
C:4辺のうち2辺以上で浮きが発生(使用不可)
【0101】
[成型物の耐熱性]
静置の条件を、85℃85%RHで168時間から120℃168時間に変更した以外は、成型物の耐湿熱性評価と同様にして、浮きが発生していないかを目視で確認し、以下の基準で評価した。
A:浮きの発生なし(良好)
B:4辺のうち1辺で浮きが発生(使用可能)
C:4辺のうち2辺以上で浮きが発生(使用不可)
【0102】
【0103】
表3中の略号は以下の通りである。
SC-1:グリシドプロピルトリメトキシシラン
EP-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:JER834、三菱ケミカル社製、エポキシ当量250、分子量約470)
EP-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:JER1002、三菱ケミカル社製、エポキシ当量650、分子量約1,200)
DBTDL:ジラウリン酸ジブチルすず
NCO-1:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(商品名:コロネートL、東ソー株式会社製、不揮発分濃度75%、NCO含有量13.2%)
【0104】
表3の結果から、外層側接着剤層を形成する主剤として、所定のエステル結合濃度を有する水酸基含有ポリウレタン樹脂(a)を主剤に用いた包装材は、主剤の保存安定性が良好で、高い接着性と成型性を示した。特に、外層側接着剤層の塗布量が2g/m2といった薄膜であっても、包装材のラミネート強度及び成型性に優れていた。さらに、ウレタン結合濃度が所定範囲内であると、硬化剤であるポリイソシアネートとの相溶性に優れ、60℃90%RHといった高湿度条件で養生した場合でも、発泡や白濁等の外観不良が抑制された。
特に、実施例10は、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)のエステル結合濃度、ウレタン結合濃度、重量平均分子量、ガラス転移温度が適切であるため、主剤(A)の保存安定性、外層側背着材層のラミネート強度及び加工性に優れていた。
【0105】
一方、比較例1は、国際公開第2018/117080号の実施例に相当するが、エステル結合濃度が低く主剤としての保存安定性が低く、塗布するのが困難であるだけでなく、ラミネート強度が低下した。
比較例2は、特開2016-196580号公報の実施例に相当するが、エステル結合濃度が低く、凝集力が不足しており、塗布量が2g/m2の薄膜時に成型性の不良が発生した。
【0106】
比較例3、4は、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)のエステル結合濃度が低い例であるが、60℃90%RHといった高湿度条件で養生した場合に外観不良が発生した。その影響から、湿熱試験後のラミネート強度や成型性が低下した。
【0107】
比較例5は、ウレタン化していないポリエステルポリオールを主剤の樹脂として用いた例であるが、ポリイソシアネート(B)との相溶性が低下し、60℃90%RHといった高湿度条件で養生した場合の外観不良やラミネート強度の低下が発生した。
【符号の説明】
【0108】
(1):外層側樹脂フィルム層
(2):外層側接着剤層
(3):金属箔層
(4):内層側接着剤層
(5):ヒートシール層
【要約】 (修正有)
【課題】接着剤が薄膜でも高温高湿・長期耐久性試験後において層間の接着強度が低下せず、優れた成型性を有し、且つ層間の浮き等の外観不良が発生しない蓄電デバイス用包装材、蓄電デバイス用容器及び信頼性に優れた蓄電デバイスの提供。
【解決手段】外層側樹脂フィルム層(1)、外層側接着剤層(2)、金属箔層(3)、内層側接着剤層(4)及びヒートシール層(5)が、この順に外側から積層されている構成を備え、外層側接着剤層(2)が、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)を含む主剤(A)と、ポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤から形成されたものであり、水酸基を有するポリウレタン樹脂(a)は、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートとの反応生成物であり、エステル結合濃度が9.20~10.50mmol/gである蓄電デバイス用包装材とする。
【選択図】
図1