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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】免震建物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20220405BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
E04H9/02 331Z
E04H9/02 301
E04H9/02 331A
E04H9/02 331E
E04H9/02 331D
F16F15/04 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018132236
(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公開番号】P2020007869
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】浅井 勇太
(72)【発明者】
【氏名】平井 慶一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓祐
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-080444(JP,A)
【文献】特開2015-158086(JP,A)
【文献】特開昭54-084330(JP,A)
【文献】特開2006-299710(JP,A)
【文献】特開平07-269010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00-9/16
F16F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体上に設けられた下部構造体と、
免震装置を介して前記下部構造体に支持された上部構造体と、
前記上部構造体から外側へ張り出した屋根と、
前記下部構造体に隣接して配置され、前記屋根の下方に形成されたアトリウムと、
前記屋根を水平移動可能に支持する支柱と、
を有する免震建物。
【請求項2】
前記屋根の周縁部には、外壁架構が吊り下げられている請求項1に記載の免震建物。
【請求項3】
前記外壁架構の下方かつ前記支持構造体の上には、外壁下部架構が設けられており、
前記外壁架構と前記外壁下部架構との隙間が塞がれている請求項2に記載の免震建物。
【請求項4】
前記支柱の上端部は、前記屋根に回転可能に連結されており、前記支柱の下端部は、前記支持構造体に回転可能に連結されている請求項1~3の何れか1項に記載の免震建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震建物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、免震装置を介して柱で支持された屋根の先端から下方へ壁状のプレートが張り出した構造が開示されており、プレートは、屋根に対して回転可能に取り付けられている。また、プレートと柱とがブレースに回転可能に連結されている。これにより、屋根と柱との間に相対的な変位が生じても、プレートを追随させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-158086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アトリウム等の大空間を形成する屋根等の構造体から大きく張り出す屋根を免震化させることについては考慮されておらず、このような屋根に作用する地震力を低減する観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、屋根に作用する地震力を低減することができる免震建物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る免震建物は、支持構造体上に設けられた下部構造体と、免震装置を介して前記下部構造体に支持された上部構造体と、前記上部構造体から外側へ張り出した屋根と、前記下部構造体に隣接して配置され、前記屋根の下方に形成されたアトリウムと、前記屋根を水平移動可能に支持する支柱と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る免震建物によれば、支持構造体上に下部構造体が設けられており、免震装置を介して下部構造体に上部構造体が支持されている。また、上部構造体から外側へ屋根が張り出している。このように、屋根が免震装置に支持された上部構造体から張り出しているため、下部構造体へ入力された地震力が屋根に伝達されるのを抑制することができる。
【0008】
また、屋根は支柱によって水平移動可能に支持されている。これにより、地震時に屋根が上部構造体と共に水平移動した場合であっても、支柱の損傷を抑制することができ、屋根を良好に支持することができる。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係る免震建物は、請求項1に記載の免震建物であって、前記屋根の周縁部には、外壁架構が吊り下げられている。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係る免震建物によれば、屋根の周縁部に外壁架構が吊り下げられているため、屋根と共に外壁架構を免震支持することができる。この結果、地震時において、外壁架構及び外壁架構に支持される外壁仕上げの損傷を抑制することができる。
請求項3に記載の本発明に係る免震建物は、請求項2に記載の免震建物であって、前記外壁架構の下方かつ前記支持構造体の上には、外壁下部架構が設けられており、前記外壁架構と前記外壁下部架構との隙間が塞がれている。
【0011】
請求項に記載の本発明に係る免震建物は、請求項1~3の何れか1項に記載の免震建物であって、前記支柱の上端部は、前記屋根に回転可能に連結されており、前記支柱の下端部は、前記支持構造体に回転可能に連結されている。
【0012】
請求項に記載の本発明に係る免震建物によれば、支柱の上端部及び下端部の両方が回転可能に連結されているため、地震時における支持構造体と屋根との水平方向の相対移動に追随して支柱が傾倒され、支柱の損傷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る免震建物によれば、大空間の屋根に作用する地震力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る免震建物の概略立面図である。
図2】地震時における、図1に対応する概略立面図である。
図3】屋根及び外壁架構を示す斜視図である。
図4】外壁架構を示す斜視図である。
図5】支柱の下端部を拡大して示す拡大図である。
図6】(A)は、屋根架構と上部構造体との接合部分を拡大した拡大図であり、(B)は、図6(A)の6B-6B線で切断した状態を示す断面図である。
図7】実施形態に係る免震建物の変形例を示す概略立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る免震建物について説明する。なお、各図において適宜示される矢印Zは、垂直方向(上下方向)を示しており、各図において適宜示される矢印X、Yは、互いに直交する水平二方向を示している。
【0016】
図1に示されるように、本実施形態に係る免震建物10は、下部構造体12と上部構造体14とアトリウム16とを含んで構成されている。また、上部構造体14は、免震装置18を介して下部構造体12に支持されており、これによって免震建物10は、中間層免震建物を構成している。
【0017】
下部構造体12と上部構造体14とは、一例として鉄筋コンクリート造とされており、地盤20に設けられた支持構造体としての基礎21の上に構築されている。また、下部構造体12の上面には複数の免震装置18が設けられている(図1では2つの免震装置18が図示されている)。本実施形態では一例として、免震装置18を鉛入り積層ゴム支承と弾性すべり支承とによって構成している。なお、下部構造体12及び上部構造体14としては、鉄筋コンクリート造に限らず、鉄骨造、鉄骨鉄筋コンクリート造、CFT(Concrete-Filled Steel Tube:充填形鋼管コンクリート)造などの他の構造であってもよい。
【0018】
下部構造体12と上部構造体14との間に免震装置18を設けているため、地震時には、図2に示されるように、免震装置18がせん断変形することで、上部構造体14と下部構造体12とが水平方向に相対変位する。これにより、上部構造体14へ地震力が作用するのを抑制している。
【0019】
図1に示されるように、アトリウム16は、上部構造体14から張り出した屋根17に覆われるようにして屋根17の下方に形成され、下部構造体12の隣に配置されている。
【0020】
屋根17は、上部構造体14からY方向(図1の右方向)に張り出しており、この屋根17のY方向の一端部が上部構造体14に接合されている。また、屋根17は、上弦材22Aと、下弦材22Bと、上弦材22Aと下弦材22Bとを連結する斜材22Cとで構成された立体屋根トラス22を備えている。
【0021】
図3に示されるように、本実施形態では一例として、X方向に間隔をあけて10本の立体屋根トラス22が配置されており、これらの立体屋根トラス22同士が小梁材24によって連結されることで屋根17が構成されている。なお、図3では、説明の便宜上、立体屋根トラス22を簡略化して図示しており、斜材22Cなどの図示を省略している。
【0022】
図1に示されるように、屋根17の張り出し方向(図1の右方向)の端部には支柱連結部26が形成されており、この支柱連結部26の先端(下端)には支柱28が取り付けられている。図3に示されるように、支柱28は、一例として、屋根17の張り出し方向の端部に沿って10本設けられている。また、屋根17のX方向の一端にも支柱28が1本設けられている。それぞれの支柱28は、本体部28Aと、この本体部28Aの上端部及び下端部にそれぞれ設けられたボールジョイント28Bとを含んで構成されている。
【0023】
本体部28Aは、略筒状の鋼管によって形成されており、通常状態で上下方向(Z方向)に直線状に延びている。そして、この本体部28Aの上端部は、ボールジョイント28Bを介して支柱連結部26に接続されている。また、本体部28Aの下端部は、ボールジョイント28Bを介して基礎21に連結されている。ここで、本体部28Aの上端側のボールジョイント28Bと下端側のボールジョイント28Bとは同様の構造であり、一般的なボールジョイントであるため、下端側のボールジョイント28Bについてのみ図示して簡単に説明する。
【0024】
図5に示されるように、ボールジョイント28Bは、接続部30と球状部32とを含んで構成されている。接続部30は、略円錐状に形成されており、この接続部30の上端部が支柱28の本体部28Aに固定されている。
【0025】
球状部32は、接続部30の下端部に接続部30と一体に形成されており、この球状部32が基礎21側に固定された受け部材34に対して回転可能に連結されている。受け部材34は、ボルトなどによって基礎21に固定されており、この受け部材34の上面には球状の凹部34Aが形成されている。そして、この凹部34Aに球状部32が嵌め込まれている。なお、受け部材34は、上下に分割できるように構成されており、分割した状態で下側の部材に球状部32を取り付けた後、下側の部材と上側の部材とを結合することで球状部32の抜けを防止する構造である。
【0026】
このように、支柱28の下端部がボールジョイント28Bによって基礎21に回転可能に連結されており、支柱28の上端部は、ボールジョイント28Bによって屋根17に回転可能に連結されている。このため、屋根17は、支柱28によって水平移動可能に支持されている。
【0027】
図3に示されるように、屋根17の周縁部には、外壁架構36が吊り下げられている。図4に示されるように、外壁架構36は、鉛直方向に延びている鉛直トラス40と、水平方向に延びている水平トラス38とを含んで構成されている。なお、図3では、説明の便宜上、外壁架構36を簡略化して描いており、斜材などの部材の一部を省略している。
【0028】
水平トラス38は、外壁架構36の上下方向の中間部分と、外壁架構36の下端部との二カ所に設けられている。また、それぞれの水平トラス38は、屋根17の外周部に沿って外壁架構36の水平方向の一端部から他端部に亘って連続して形成されている。そして、この水平トラス38によって5面の鉛直トラス40が水平方向に繋がれている。
【0029】
鉛直トラス40は、屋根17から下方へ延びており、外壁架構36において屋根17の張り出し方向の端部の下方の領域に設けられている。また、本実施形態では5面の鉛直トラス40が設けられており、5面の鉛直トラス40はそれぞれ、2つの水平トラス38に連結されている。そして、これらの5面の鉛直トラス40が上端部でX方向に連結されて鉛直トラスフレーム41を構成している。
【0030】
また、外壁架構36における下部構造体12側の端部には、水平トラス38と連結された端部トラス42が設けられている。端部トラス42は、外壁架構36の一端部と他端部にそれぞれ設けられており、それぞれ立体トラス架構とされている。
【0031】
図1に示されるように、外壁架構36の下方には、外壁下部架構43が設けられている。外壁下部架構43は、外壁架構36と対応する形状であり、基礎21の上に構築されている。また、外壁下部架構43の上面には、止水ゴム46が設けられており、外壁架構36の外面に設けられた仕上げパネル(不図示)と外壁下部架構43との隙間が止水ゴム46によって塞がれて止水された状態となっている。
【0032】
なお、本実施形態では一例として、外壁下部架構43の高さを歩行者よりも高い、外壁下部架構43の風除室の高さとしている。換言すれば、外壁架構36の下端部は、歩行者よりも上方に位置しており、4.5m程度の高さとしている。
【0033】
外壁架構36と下部構造体12とは、エキスパンションジョイント44によって連結されている。このため、図2に示されるように、地震時に、外壁架構36と外壁下部架構43とが相対移動したときに、エキスパンションジョイント44によって外壁架構36と下部構造体12との水平方向の相対変位を吸収できるように構成されている。また、止水ゴム46が変形することで、外壁下部架構43の上面と外壁架構36の下面との間の止水状態が維持されている。
【0034】
次に、図6(A)及び図6(B)を参照して屋根17と上部構造体14との接続部分について説明する。図6(A)及び図6(B)に示されるように、上部構造体14を構成する大梁48の上には、束材50が設けられている。束材50は、閉断面(ボックス断面)とされており、上方へ向かうにつれて幅(X方向の長さ)が短くなるように形成されている。そして、この束材50の上に屋根17の上弦材22Aが接合されている。また、大梁48における束材50と対応する位置には、上下のフランジを繋ぐ一対のスチフナ51が設けられている。
【0035】
一方、大梁48の下には、束材52が設けられている。束材52は、上側の束材50を挟んで両側に配置されており、それぞれ閉断面(ボックス断面)とされている。そして、この束材52の下に屋根17の下弦材22Bが接合されている。また、大梁48における束材52と対応する位置には、上下のフランジを繋ぐ一対のスチフナ53が設けられている。
【0036】
また、束材52には、ブレース54の一端部(下端部)が接合されている。ブレース54の他端部(上端部)は、上部構造体14の床スラブ56に接合されており、このブレース54によって下弦材22Bの応力をスムーズに上部構造体14へ伝達させることができるように構成されている。
【0037】
さらに、屋根17の基端部には、上弦材22Aと下弦材22Bとを鉛直に繋ぐ補強材55が接合されている。
【0038】
(作用)
次に、本実施形態に係る免震建物の作用について説明する。
【0039】
本実施形態に係る免震建物10では、図1に示されるように、免震装置18を介して下部構造体12に上部構造体14が免震支持されており、この上部構造体14から屋根17が張り出している。このように、屋根17が免震装置18に支持された上部構造体14から張り出しているため、地震時には、屋根17が上部構造体14と一体に免震支持される。この結果、下部構造体12へ入力された地震力が屋根17に伝達されるのを抑制することができる。
【0040】
また、屋根17は、複数の支柱28によって水平移動可能に支持されている。そして、この支柱28は、上端部及び下端部の両方がボールジョイント28Bによって回転可能に連結されている。これにより、図2に示されるように、地震時に屋根17が上部構造体14と共に水平移動した場合であっても、屋根17の水平方向の移動に追随して支柱28が傾倒されるため、支柱28の損傷を抑制することができ、屋根17を良好に支持することができる。これにより、アトリウム等の大空間を形成する大規模の屋根に作用する地震力を低減することができる。
【0041】
さらに、屋根17の周縁部には外壁架構36が吊り下げられているため、屋根17と共に外壁架構36を免震支持することができる。この結果、地震時において、外壁架構36及び外壁仕上げの損傷を抑制することができる。このとき、図2において、外壁架構36の下端部が歩行者よりも上方に位置している。これにより、地震時に外壁架構36と屋根17とが相対移動した場合であっても、アトリウム16周辺の歩行者等に外壁架構36が接触するのを防いでいる。
【0042】
さらにまた、本実施形態では、図3及び図4に示されるように、外壁架構36は、鉛直方向に延びた鉛直トラス40と、鉛直トラスを繋ぐ水平トラス38とを含んで構成されている。これにより、強風等によって外壁架構36へ水平力が作用した際に、水平トラス38から鉛直トラス40へ水平力が伝達され、さらに鉛直トラス40から屋根17を介して上部構造体14へ水平力を伝達させることができる。
【0043】
特に、本実施形態では、水平トラス38が屋根17の外周部に沿って連続して形成されているため、外壁架構36に作用する水平力を鉛直トラス40を介して確実に屋根17から上部構造体14へ伝達させることができる。
【0044】
また、外壁架構36における免震建物10との接続部分には端部トラス42が設けられており、この端部トラス42は、外壁架構36の一端部と他端部にそれぞれ設けられている。これにより、水平トラス38へ入力された水平力を端部トラス42から構造体へ伝達させることができる。この結果、強風等によって外壁架構36へ作用した水平力を屋根17から上部構造体14へ伝達させるルートと、端部トラス42から上部構造体14へ伝達させるルートとに分散させることができる。
【0045】
特に、図4に示されるように、屋根17の張り出し方向(Y方向)に作用する水平力は、水平トラス38から端部トラス42へ伝達され、この端部トラス42から上部構造体14へ伝達される。一方、屋根17の張り出し方向と交差する方向(X方向)に作用する水平力のうち、鉛直トラス40側に作用する力は、水平トラス38から鉛直トラス40へ伝達され、この鉛直トラス40から屋根17を介して上部構造体14へ伝達される。また、屋根17の張り出し方向と交差する方向(X方向)に作用する水平力のうち、端部トラス42側に作用する力は、端部トラス42から上部構造体14へ伝達される。このようにして、外壁架構36が強風等で揺れるのを低減することができる。
【0046】
(変形例)
次に、図7を参照して免震建物の変形例について説明する。
【0047】
図7に示されるように、本変形例では、上部構造体14を免震支持する構造物60の下部が地盤20中に埋設されて地下構造体61を構成しており、構造物60の上部分が下部構造体12となっている。また、地下構造体61が支持構造体となっている。下部構造体12には、免震装置18を介して上部構造体14が支持されている。
【0048】
上部構造体14からY方向に屋根17が張り出しており、この屋根17の張り出し方向(図1の右方向)の端部には支柱28が取り付けられている。支柱28は、本体部28Aと、この本体部28Aの上端部及び下端部にそれぞれ設けられたボールジョイント28Bとを含んで構成されている。
【0049】
本体部28Aは、略筒状に形成されており、通常状態で上下方向(Z方向)に直線状に延びている。そして、この本体部28Aの上端部は、ボールジョイント28Bを介して支柱連結部26に接続されている。また、本体部28Aの下端部は、ボールジョイント28Bを介して地下構造体61の天井部上面62に連結されている。
【0050】
変形例では、実施形態と同様に大空間を形成する大規模な屋根に作用する地震力を低減することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明はこうした実施形態及び変形例に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、本実施形態では、図3に示されるように、アトリウム16の屋根17を支持する支柱28を11本設けたが、これに限定されず、屋根17の大きさ等によって適宜変更してもよい。また、支柱28の配置についても適宜変更してもよい。
【0052】
さらに、本実施形態では、支柱28の上端部及び下端部にボールジョイント28Bを設けたが、これに限定されず、屋根17を水平方向に移動可能に支持できれば、他の構造を採用してもよい。例えば、支柱28の上端部及び下端部に滑り機構等を設けて屋根17を支持する構造としてもよく、ボールジョイント28Bと滑り機構とを組み合わせてもよい。
【0053】
さらにまた、本実施形態では、図4に示されるように、鉛直トラス40と水平トラス38と端部トラス42とを含んで外壁架構36を構成したが、これに限定されず、鉛直トラス40や水平トラス38を備えていない外壁架構としてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、支持構造体を基礎21とし、変形例では支持構造体を地下構造体60としたが、これに限定されない。すなわち、下部構造体12を支持し得る構造体であれは、他の構造体を支持構造体として採用してもよい。
【0055】
さらに、図1において、下部構造体12を支持する基礎21と、支柱28の下端が連結された基礎21とが別体とされた構造としてもよい。例えば、下部構造体12が基礎21に支持されており、支柱28の下端が地下構造体の天井部に連結された構造としてもよい。
【0056】
さらにまた、図7において、下部構造体12を支持する地下構造体61とは別の地下構造体に支柱28の下端が連結された構造としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 免震建物
12 下部構造体
14 上部構造体
17 屋根
18 免震装置
21 基礎(支持構造体)
28 支柱
36 外壁架構
60 地下構造体(支持構造体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7