(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】使用済み吸収性物品のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20220408BHJP
C10L 5/46 20060101ALI20220408BHJP
C12P 7/06 20060101ALN20220408BHJP
C12P 7/56 20060101ALN20220408BHJP
【FI】
B09B5/00 Z ZAB
C10L5/46
C12P7/06
C12P7/56
(21)【出願番号】P 2020079223
(22)【出願日】2020-04-28
(62)【分割の表示】P 2016235415の分割
【原出願日】2016-12-02
【審査請求日】2020-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100201112
【氏名又は名称】上野 美紀
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝義
(72)【発明者】
【氏名】八巻 孝一
(72)【発明者】
【氏名】平岡 利夫
(72)【発明者】
【氏名】亀田 範朋
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-132600(JP,A)
【文献】特開2013-198862(JP,A)
【文献】特開2013-202021(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103985(WO,A1)
【文献】特開2018-089579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00-5/00
B29B 17/00
D21B 1/00
C10L 5/46
C02F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屎尿を含む使用済み吸収性物品のリサイクル方法であって、該方法は、
屎尿を含む使用済み吸収性物品をパルプ繊維、高吸水性ポリマー、水溶液及び屎尿を含む第二の画分とプラスチックを含む第一の画分とに分離する分離工程と、
前記第一の画分からプラスチックを分離回収するプラスチック分離回収工程と、
前記第二の画分からパルプ繊維を分離回収するパルプ繊維分離回収工程と、
前記第二の画分から高吸水性ポリマーを分離回収し再生高吸水性ポリマーを得る高吸水性ポリマー分離回収工程と、
前記第二の画分の少なくとも一部であって、有機物を含む排水であるものを、微生物燃料電池に供給して電力を得る、排水再利用工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記分離回収したパルプ繊維から、上質パルプ、除塵低質パルプ、低質パルプ、エタノール、乳酸の少なくとも一つを得る、パルプ再利用工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パルプ再利用工程において、オゾン処理を行い、上質パルプを得る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記上質パルプを衛材用途に使用する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パルプ再利用工程において、前記除塵低質パルプから、猫砂、建材、おむつ回収内袋の少なくとも一つを製造する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記パルプ再利用工程において、前記低質パルプから段ボールを製造する、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記パルプ再利用工程において、前記エタノールから薬液又は消毒剤を製造する、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記分離回収したプラスチックからフィルム及び不織布の少なくとも一つを得る、プラスチック再利用工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プラスチック再利用工程において、前記フィルムからおむつ回収外袋を製造する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記再生高吸水性ポリマーからペット用吸収材を製造する、高吸水性ポリマー再利用工程をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み吸収性物品のリサイクル方法に関する。より詳しくは、屎尿を含む使用済みの紙おむつ等の吸収性物品のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済み紙おむつを再資源化する試みがなされている。たとえば、特許文献1は、汚れた衛生用品から、衛生的な素材を回収する方法を開示している。その方法は、汚れが付着している衛生用品を帯状に切断し、帯状に切断された吸水紙および汚れが付着するプラスチック材料を、吸水性材料と分離し、この分離された吸水紙および汚れが付着するプラスチック材料を粉砕し、この粉砕物を空気流中で分級することにより、前記吸水紙および汚れが付着するプラスチック材料粉砕物に夾雑する吸水性材料を前記吸水紙および汚れが付着するプラスチック材料と分離し、前記吸水性材料を分離して得られたプラスチック材料分級産物を回収し、また、前記分離されたプラスチック材料に夾雑する吸水性材料を、前記衛生用品から分離された吸水性材料の空気流中での分級により分離された湿っていない吸水性材料の分級産物に混合し、この吸水性材料混合物を空気流中で分級して、前記吸水性材料混合物中の湿っていない綿状パルプに富む分級産物を回収するというものである。
【0003】
また、特許文献2は、使用済み吸収性物品からパルプ成分および吸水性ポリマーを高収率、高純度で分離回収し、再利用可能とする方法を開示している。その方法は、使用済み吸収性物品に含有される、パルプ成分と吸水性ポリマーとのゲル状混合物に、遷移金属塩単独または遷移金属塩とアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩との混合物を添加して、吸水性ポリマーに含まれる水分を脱水し、吸水性ポリマーを収縮・固化するとともに、遷移金属塩により吸水性ポリマーを着色した後、パルプ成分および吸水性ポリマーをそれぞれ分離回収するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-200147号公報
【文献】特開2003-225645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に代表される従来のリサイクル方法は、あくまでマテリアルリサイクルであって、如何に付加価値の高いものが回収できるかに主眼が置かれ、処理率が充分ではなかった。
本発明は、マテリアルリサイクルだけではなく、一部をエネルギーとして回収することにより、処理率が高い、使用済み紙おむつ等のトータルリサイクルシステムを提供することを課題する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、屎尿を含む使用済み紙おむつ等のリサイクルについて鋭意検討した結果、使用済み紙おむつ等に含まれる屎尿をもリサイクルの対象とし、マテリアルリサイクルにエネルギー回収を組み合わせることにより、処理率を90質量%以上にすることができることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、屎尿を含む使用済み吸収性物品のリサイクル方法であって、該方法は、
屎尿を含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を分離し、再生パルプ繊維を得る第一の工程、
パルプ繊維を分離した残りの吸収性物品の構成素材を、固形燃料化して、固形燃料を得る第二の工程、および
第一の工程において発生した有機物を含む排水を微生物燃料電池に供給して、電力を得るとともに前記排水を浄化する第三の工程
を含み、
屎尿を含む使用済み吸収性物品の処理率が90質量%以上であることを特徴とする。
【0007】
本発明は、次の態様を含む。
[1]屎尿を含む使用済み吸収性物品のリサイクル方法であって、該方法は、
屎尿を含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を分離し、再生パルプ繊維を得る第一の工程、
パルプ繊維を分離した残りの吸収性物品の構成素材を、固形燃料化して、固形燃料を得る第二の工程、および
第一の工程において発生した有機物を含む排水を微生物燃料電池に供給して、電力を得るとともに前記排水を浄化する第三の工程
を含み、
屎尿を含む使用済み吸収性物品の処理率が90質量%以上である、方法。
[2]屎尿に由来する栄養塩を回収する第四の工程をさらに含む、[1]に記載の方法。
[3]第一の工程においてパルプ繊維を分離した後の、分離しきれなかったパルプ繊維を含む排水を糖化槽に供給し、グルコースを得る第五の工程をさらに含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]第五の工程で得られたグルコースを発酵させてエタノールまたは乳酸を得る第六の工程をさらに含む、[3]に記載の方法。
[5]高吸水性ポリマーを回収する第七の工程をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]第一の工程に先立ち、使用済み吸収性物品を洗浄する前処理洗浄工程をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]微生物燃料電池から排出される水を前処理洗浄工程に戻す、[6]に記載の方法。
[8]第三の工程で得られた電力を、第一の工程、第二の工程、第四の工程、第五の工程、第六の工程、第七の工程および前処理洗浄工程の少なくとも1つの工程に供給する、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]第二の工程で得られた固形燃料を、第一の工程、第三の工程、第四の工程、第五の工程、第六の工程、第六の工程および前処理洗浄工程の少なくとも1つの工程を運転するための燃料として使用する、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]前記方法によって発生する廃棄物質の量が、処理された使用済み吸収性物品の量の10質量%未満である、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11]再利用用途の需要に応じて、第一の工程、第二の工程および第三の工程の処理量の比率を変更する、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屎尿を含む使用済み吸収性物品を高い処理率で再資源化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の方法の1つの実施形態のフローチャートである。
【
図2】
図2は、本発明の方法の別の実施形態のフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の方法のさらに別の実施形態のフローチャートである。
【
図4】
図4は、リサイクル素材と活用用途の例を示す。
【
図5】
図5は、微生物燃料電池の構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、屎尿を含む使用済み吸収性物品のリサイクル方法である。
吸収性物品としては、パルプ繊維を含むものであれば、特に限定されるものではなく、紙おむつ、尿取りパッド、ベッドシーツ、生理用ナプキン、ペットシート等を例示することができる。
吸収性物品は、通常、パルプ繊維、高吸水性ポリマー、不織布、熱可塑性樹脂フィルム、ゴム糸、ホットメルト接着剤等の構成素材からなる。
パルプ繊維としては、特に限定するものではないが、フラッフ状パルプ繊維、化学パルプ繊維等を例示することができる。
高吸水性ポリマーとは、SAPとも呼ばれ、水溶性高分子が適度に架橋された三次元網目構造を有するもので、数百倍~千倍の水を吸収するが本質的に水不溶性であり、一旦吸収された水は多少の圧力を加えても離水しないものであり、たとえば、デンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状または繊維状のポリマーを例示することができる。
【0011】
本発明の方法は、次の工程を含む。
(1)屎尿を含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を分離し、再生パルプ繊維を得る第一の工程
(2)パルプ繊維を分離した残りの吸収性物品の構成素材を、固形燃料化して、固形燃料を得る第二の工程
(3)第一の工程において発生した有機物を含む排水を微生物燃料電池に供給して、電力を得るとともに前記排水を浄化する第三の工程
【0012】
本発明の方法は、さらに、次の工程を含むことができる。
(4)屎尿に由来する栄養塩を回収する第四の工程
(5)第一の工程においてパルプ繊維を分離した後の、分離しきれなかったパルプ繊維を含む排水を糖化槽に供給し、グルコースを得る第五の工程
(6)第五の工程で得られたグルコースを発酵させてエタノールまたは乳酸を得る第六の工程
(7)高吸水性ポリマーを回収する第七の工程
【0013】
本発明の方法は、さらに、第一の工程に先立ち、使用済み吸収性物品を洗浄する前処理洗浄工程を含むことができる。
【0014】
第一の工程は、屎尿を含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を分離し、再生パルプ繊維を得る工程である。第一の工程を、以下、「パルプ繊維再生工程」ともいう。
第一の工程は、屎尿を含む使用済み吸収性物品からパルプ繊維を分離し、再生パルプ繊維を得ることができる限り、その方法は限定されないが、たとえば、次の方法が挙げられる。
屎尿を含む使用済み吸収性物品を、高吸水性ポリマーを不活化可能な不活化剤を含む水溶液の中に入れて攪拌することにより、使用済み吸収性物品をその構成素材に分解するとともに、高吸水性ポリマーを不活化し、かつ屎尿を水溶液に溶解または分散させる。攪拌終了後の固液混合物をふるいにかけ、不織布、熱可塑性樹脂フィルム、ゴム糸等を含む第一の画分と、水溶液、パルプ繊維、不活化した高吸水性ポリマー、屎尿等を含む第二の画分に分離する。
なお、屎尿を含む使用済み吸収性物品を、その構成素材に分解する前に、前処理洗浄を行い、使用済み吸収性物品の外表面に付着している屎尿を取り除いてもよい。外表面に付着している屎尿を取り除いた使用済み吸収性物品を、高吸水性ポリマーを不活化可能な不活化剤を含む水溶液の中に入れて攪拌することにより、使用済み吸収性物品をその構成素材に分解するとともに、高吸水性ポリマーを不活化する。攪拌終了後の固液混合物をふるいにかけ、不織布、熱可塑性樹脂フィルム、ゴム糸等を含む第一の画分と、水溶液、パルプ繊維、不活化した高吸水性ポリマー、尿成分等を含む第二の画分に分離する。前処理洗浄を行った場合は、前処理洗浄に用いた水は排水として処理するが、使用済み吸収性物品の外表面に付着していた屎尿のうちの固形分の多くは排水側に移り、吸収体に吸収されていた尿の成分の多くは第二の画分に移行する。
次いで、第二の画分からパルプ繊維を分離回収する。第二の画分からパルプ繊維を分離回収する方法は、限定されないが、比重差を利用して水中で沈降分離する方法、所定の目開きを有するふるいを通して分離する方法、サイクロン式遠心分離機で分離する方法を例示することができる。たとえば、第二の画分を適度に攪拌すると、パルプ繊維は水溶液中に浮遊するので、浮遊するパルプ繊維をふるい等ですくい取ることにより、パルプ繊維を分離回収することができる。ここまでの工程で低品質再生パルプ繊維が得られる。
分離回収したパルプ繊維を、さらに、消毒、水洗、脱水、乾燥することにより、高品質再生パルプ繊維を得ることができる。
【0015】
高吸水性ポリマーを不活化可能な不活化剤は、限定するものではないが、有機酸、カルシウム化合物(消石灰、生石灰、塩化カルシウムなど)、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等が挙げられ、なかでも有機酸、カルシウム化合物が好ましい。
【0016】
有機酸は、パルプ繊維に損傷を与えることが少ないので、有機酸を用いることにより、損傷の少ないパルプ繊維、すなわち、吸水倍率および保水倍率が高いパルプ繊維を回収することができる。不活化剤として有機酸を用いる場合は、有機酸水溶液のpHは2.5以下にする。すなわち、高吸水性ポリマーを不活化可能な不活化剤を含む水溶液は、好ましくは、pH2.5以下の有機酸水溶液である。
【0017】
有機酸としては、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、コハク酸、酢酸、アスコルビン酸などが挙げられるが、クエン酸が特に好ましい。クエン酸のキレート効果により、屎尿中の金属イオン等がトラップされ除去可能であり、かつクエン酸の洗浄効果で、高い汚れ成分除去効果が期待できる。
【0018】
有機酸水溶液のpHは2.5以下であり、好ましくは1.3~2.4であり、より好ましくは1.5~2.1である。pHが高すぎると、高吸水性ポリマーの吸水能力を充分に低下させることができない。pHが低すぎると、設備の腐食懸念が高まり耐用年数が低下したり、排水処理時の中和処理に多くのアルカリ薬品が必要となる虞がある。
なお、pHは水温により変化するため、本発明におけるpHは、水溶液温度20℃で測定したpHをいうものとする。
【0019】
有機酸水溶液の有機酸濃度は、有機酸水溶液のpHが2.5以下である限り限定されないが、有機酸がクエン酸の場合は、クエン酸の濃度は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2.0~4.0質量%であり、さらに好ましくは2.0~3.0質量%である。殺菌までする場合は、2質量%以上が好ましい。
【0020】
分離回収したパルプ繊維を消毒する方法は、限定されないが、次亜塩素酸ナトリウム、二酸化塩素等の消毒薬を溶かした水溶液や、オゾン水、電解水(酸性電解水)等にパルプ繊維を浸漬することにより行うことができる。なかでも経済性・汎用性の観点から、オゾン水、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いる方法が好ましい。
【0021】
パルプ繊維を水洗する方法は、限定されないが、回分式で行う場合、パルプ繊維100質量部(乾燥質量)に500~5000質量部の水を用い、3~60分洗浄する。
【0022】
パルプ繊維を脱水する方法は、限定されないが、たとえば脱水機を用いて1~10分脱水する。
【0023】
パルプ繊維を乾燥する方法は、限定されないが、たとえば熱風乾燥機等の乾燥機を用いて行うことができる。
乾燥の条件は、パルプ繊維が充分に乾燥される限り、特に限定されないが、たとえば、乾燥温度は100~200℃、乾燥時間は10~120分である。
乾燥後のパルプ繊維の水分率は、好ましくは5~13質量%である。水分率が低すぎると、水素結合が強くなり、硬くなりすぎる場合があり、逆に、水分率が多すぎるとカビ等が発生する場合がある。
【0024】
第一の工程は、次の方法によっても実施することができる。
屎尿を含む使用済み吸収性物品を、前処理洗浄を行い、次いで洗浄した吸収性物品の表面シートまたは裏面シートに開孔部または切れ目を付与し、ロールプレス等を用いて吸収性物品の内容物(パルプ繊維および高吸水性ポリマー)を排出させ、排出した水を含むパルプ繊維および高吸水性ポリマーに対して不活化処理を行い、高吸水性ポリマーを不活化した後、パルプ繊維を分離する。
【0025】
前処理洗浄は、限定するものではないが、たとえば、50℃以上100℃未満の水に浸漬し、1分以上攪拌する。前処理洗浄により発生した屎尿を含む排水は、第三の工程に供給する。
【0026】
使用済み吸収性物品に含まれる屎尿の量および再生パルプ繊維の需要に応じて、低品質再生パルプ繊維、中品質再生パルプ繊維および高品質再生パルプ繊維の生産量を変更することができる。また、それらの生産量を変更することにより、最終的な廃棄物質の量を最小限に削減することができ、リサイクル率を高めることができる。
【0027】
パルプは木材資源なので、CO2の排出量を減らす。固定化されたCO2はそのまま回収し、再利用することにより、CO2削減に寄与し得る。
【0028】
第二の工程は、パルプ繊維を分離した残りの吸収性物品の構成素材を、固形燃料化して、固形燃料を得る工程である。第二の工程を、以下、「固形燃料化工程」ともいう。
「パルプ繊維を分離した残りの吸収性物品の構成素材」を、以下、「不織布・フィルム等」ともいう。不織布・フィルム等は、たとえば、第一の工程の第一の画分や、第一の工程においてロールプレス等を用いて吸収性物品の内容物を排出させた後の残渣である。不織布・フィルム等には、不織布、熱可塑性樹脂フィルム、ゴム糸などが含まれるが、不活化した高吸水性ポリマーも含まれていてもよい。
固形燃料化は、いわゆるRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)化をいい、慣用の方法を用いることができる。
得られた固形燃料は、本発明の方法の他の工程を運転するための燃料として使用することができる。
【0029】
第三の工程は、第一の工程において発生した有機物を含む排水を微生物燃料電池に供給して、電力を得るとともに前記排水を浄化する工程である。第三の工程を、以下、「微生物燃料電池工程」ともいう。
ここで、微生物燃料電池とは、微生物を利用して、燃料としての有機物を電気エネルギーに変換する装置をいう。微生物燃料電池は、燃料である有機物の溶液に負極と正極を浸し、負極では有機物が微生物により酸化分解されるときに発生する電子を回収し、その電子は外部回路を経由して正極に移動し、正極では電子が酸化剤の還元反応により消費される。負極で起こる化学反応と正極で起こる化学反応の酸化還元電位の差により電子が流れ、両極の電位差と外部回路を流れる電流の積に相当するエネルギーが外部回路において得られる。
【0030】
第三の工程では、有機物を含む排水を微生物燃料電池に投入して排水中のTOC濃度を低減するとともに発電による電力を回収する。微生物燃料電池内では、微生物が排水に含まれる屎尿、微細パルプ等の有機物を酸化分解することにより、排水中のTOC濃度が低減され、かつ発電が行われる。
【0031】
微生物燃料電池に使用される微生物としては、有機物を酸化分解するとともに電気エネルギーを発生するのに寄与し得る限り、特に限定されないが、主に水素産生微生物が用いられ、その中でも偏性嫌気性菌、通性嫌気性菌が好ましく用いられる。
【0032】
本発明に使用する微生物燃料電池の構成の一例を
図5に示す。図中、1は排水槽、2はポンプ、3は負極反応槽、4は負極、5はプロトン交換膜、6は正極槽、7は正極、8はテスター、9はパソコン、10は汚泥沈降槽、11はポンプ、12は浄化水槽である。
【0033】
微生物燃料電池からの排水のpHは8.0未満であることが好ましい。微生物燃料電池からの排水のpHが高すぎると、微生物燃料電池の発電効率が低下する。
【0034】
微生物燃料電池に投入する排水は、TOC濃度10,000mg/L以下が好ましい。微生物燃料電池からの排水は、TOC濃度160mg/L以下が好ましい。各自治体の条例にもよるが、香川県の条例では、TOC濃度160mg/L以下であれば、直接河川等に排水が可能である。より好ましくは、TOC濃度30mg/L以下にすることで、リサイクル処理用水として再利用が可能である。また、TOC濃度30mg/L以下まで下がると微生物燃料電池の微生物が消費可能な有機物量が少なくなり過ぎ、発電効率が低下する虞がある。
【0035】
微生物燃料電池からの排水のTOC濃度を30mg/L以下にすることにより、その排水を、第一の工程に先立つ、使用済み吸収性物品を洗浄する前処理洗浄工程に使用することができる。
【0036】
微生物燃料電池工程においては、有機物の未分解物や微生物の死骸が堆積することにより、固形汚泥が発生する。固形汚泥は、本発明の方法において再資源化されずに廃棄される廃棄物質である。すなわち、本発明の方法によれば、屎尿を含む使用済み吸収性物品から発生する廃棄物質は、実質的に、微生物燃料電池工程において発生する固形汚泥だけである。
【0037】
高吸水性ポリマーの不活化にカルシウム化合物を用いた場合には、微生物燃料電池に供給する排水の中にカルシウムイオンが含まれている。そのカルシウムイオンは微生物燃料電池の発電効率を高めることができる。
【0038】
通常、排水は浄化槽で微生物処理されるが、そのような排水処理をすると、電気を使い、コストがかかる。本発明によれば、エネルギーとして回収するので、好ましい。好気処理の浄化槽では汚泥が大量に発生するため、汚泥処理にもコストがかかるとともに、リサイクル率が悪化する。
【0039】
第三の工程を実施することにより、従来リサイクルされず、浄化処理負担増の基になっていた屎尿を含んだリサイクル処理排水から、水質浄化と同時に発電による電力回収が可能となり、使用済み吸収性物品の完全リサイクルシステムが可能となる。排水中の有機物(屎尿・薬品・分解SAP・微小パルプ繊維等)を微生物が効率的に活動可能な環境で餌として与えることにより、微生物の活性を高めることが可能であり、その増殖した微生物から電力回収することにより、これまで、リサイクル残渣として処分されていた残留有機物も電力としてリサイクル可能となる。従来の微生物処理は、好気処理中心で曝気によるエアー供給が必須であったが、微生物燃料電池は嫌気処理のため、曝気が必要なく、ランニングエネルギーコストも安い。
【0040】
本発明の方法によれば、屎尿を含む使用済み吸収性物品の処理率を90質量%以上にすることができる。ここで、処理率とは(屎尿を含む使い捨て紙おむつ投入量-最終の廃棄固形物処分量)÷屎尿を含む使い捨て紙おむつ投入量×100をいう。
【0041】
第四の工程は、屎尿に由来する栄養塩を回収する工程である。第四の工程を、以下、「栄養塩回収工程」ともいう。
栄養塩とは、肥料として利用可能な窒素、リンまたはカリウムを含む塩をいい、より具体的には、アンモニウム塩、リン酸塩等が挙げられる。
第一の工程または第三の工程からの排水には、屎尿に由来する栄養塩が含まれている場合がある。その栄養塩を含む排水を第四の工程に供給する。
【0042】
栄養塩を回収する方法は、限定するものではないが、栄養塩を含む排水中のリンをヒドロキシアパタイトとして晶析することによりリンを含む栄養塩を回収する方法(以下、「HAP法」ともいう。)、排水中のリンおよび/または窒素をリン酸マグネシウムアンモニウムとして晶析することによりリンおよび/または窒素を含む栄養塩を回収する方法(以下、「MAP法」ともいう。)を例示することができる。
【0043】
HAP法は、液中のPO4
3-とCa2+およびOH-の反応によって生成するヒドロキシアパタイト(Ca10(OH)2(PO4)6)の晶析現象を利用した方法である。反応式は次式のとおりである。
10Ca2++2OH-+6PO4
3- → Ca10(OH)2(PO4)6
HAP法は、リンを含む水溶液にCa2+およびOH-を添加し、過飽和状態(準安定域)で種晶と接触させることで、種晶表面にヒドロキシアパタイトを晶析させ液中のリンを回収するものである。種晶には、リン鉱石、骨炭、珪酸カルシウム水和物などを用いることができる。
HAP法ではリンを含む水溶液にCa2+およびOH-を添加するが、第一の工程において高吸水性ポリマーの不活化にカルシウム化合物を用いた場合には、第一の工程の排水にCa2+がすでに含まれているので、必ずしも新たにCa2+を添加する必要はない。
この方法においてCa2+濃度は5ミリモル/リットル以上、pHは8以上、より好ましくはCa2+濃度は10ミリモル/リットル以上、pHは9以上が必要である。
【0044】
MAP法は、液中のPO4
3-とNH4
+、Mg2+の反応によって生成するリン酸マグネシウムアンモニウム(MgNH4PO4・6H2O)の晶析現象を利用した方法である。反応式は次式のとおりである。
Mg2++NH4
++PO4
3-+6H2O → MgNH4PO4・6H2O
この方法において、Mg2+濃度は30~60ミリモル/リットルが好ましく、pHは6.8~7.7が好ましい。
【0045】
第四の工程は、微生物燃料電池工程(第三の工程)の前が好ましい。具体的には、パルプ繊維を分離後の排水から、栄養塩を回収し、その後微生物燃料電池に排水を投入する。パルプ分離後の排水が最もリン濃度が高く回収効率がよく、また、微生物燃料電池にリンが入ると正極にリンが付着し、発電効率が低下するので、それを防止するために、リン回収を先に行うことにより回収率が高まる。
【0046】
第四の工程において、回収された栄養塩は、肥料として利用することができる。
【0047】
なお、第四の工程を設ける場合は、栄養塩を含む排水を使用済みおむつ等の構成素材から分離する工程の前に、高吸水性ポリマーを崩壊する酸化剤を添加しないことが好ましい。使用済みおむつのリサイクルでは、殺菌や漂白を目的として、次亜塩素酸ナトリウムのような酸化剤を添加することがあるが、酸化剤の影響で高吸収性ポリマーは骨格構造が崩壊し、微細化され、除去が困難となってしまい、HAP法やMAP法により得られる沈殿物の中に微細化された高吸水性ポリマーが混入し、沈殿物の中のヒドロキシアパタイトやリン酸マグネシウムアンモニウムの濃度を低下させる。栄養塩を含む排水を使用済みおむつ等の構成素材から分離する工程の前に酸化剤を加えないことで、栄養塩を含む排水を使用済みおむつ等の構成素材から分離する工程で、不活化した高吸水性ポリマーを除去できる可能性が高くなる。
【0048】
第五の工程は、第一の工程においてパルプ繊維を分離した後の、分離しきれなかったパルプ繊維を含む排水を糖化槽に供給し、グルコースを得る工程である。第五の工程を、以下、「糖化工程」ともいう。
第五の工程を実施する場合には、第一の工程に先立ち、使用済み吸収性物品を洗浄する前処理洗浄工程を設け、使用済み吸収性物品の外表面に付着している屎尿をあらかじめ取り除いておき、第五の工程に供給する排水に屎尿成分ができるだけ含まれないようにすることが好ましい。
第五の工程では、分離しきれなかった微細なパルプ繊維を含む排水を、糖化槽において、酵素と共存させて、パルプ繊維を酵素により糖化し、グルコースを含む糖化液を得る。
【0049】
酵素としては少なくともセルラーゼを含むものを使用する。セルラーゼは特に限定されないが、たとえば、トリコデルマ属、アスペルギルス属、アクレモニウム属等の微生物が生産する加水分解能の高いセルラーゼを用いることが好ましい。なかでも、アクレモニウム属由来のセルラーゼには、リグニン存在下であっても非常に高い加水分解能を有するものが見出されていることから、これを用いることが特に好ましい。また、セルラーゼには、セルロース鎖をランダムに切断していくエンドグルカナーゼと、セルロース鎖の末端からセロビオースを遊離するエキソグルカナーゼ(セロビオヒドロラーゼ)と、セロビオースをグルコースに分解するβ-グルコシダーゼとがあるが、これらの分解様式の異なるセルラーゼを組み合わせて用いてもよい。
【0050】
糖化の際のセルラーゼの使用量は、特に限定されるものではなく、糖化槽の容量や処理対象物の量、使用するセルラーゼの活性等に応じて適宜設定することができる。より具体的には、パルプ繊維の量に対するセルラーゼの使用量は、0.1~30重量%が好ましい。パルプ繊維の量に対するセルラーゼの添加量が少なすぎると、酵素処理に長時間を要し、能力的に問題がある。逆に多すぎると、酵素の使用量が多くなる割には糖化率がそれほど向上しないので、費用の観点から不利である。
【0051】
糖化工程におけるパルプ繊維と不活化した高吸水性ポリマーと水の混合物中の固形分濃度は、糖化反応が進行する限り限定されないが、好ましくは1~50重量%であり、より好ましくは5~20重量%である。
糖化工程におけるパルプ繊維と不活化した高吸水性ポリマーと水の混合物中のパルプ繊維の含有量は、使用するセルラーゼの活性等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、好ましくは0.5~25重量%であり、より好ましくは2.5~10重量%である。
【0052】
糖化工程における温度やpHについても、使用するセルラーゼの種類等に応じて適宜設定すればよいが、セルラーゼが充分に機能し、かつ失活しない範囲で設定する必要がある。たとえば、温度については10~70℃の範囲内で設定することが好ましく、pHについては3.0~8.0が好ましい。処理時間は5~72時間程度が好ましい。
【0053】
第六の工程は、第五の工程で得られたグルコースを発酵させてエタノールまたは乳酸を得る工程である。第六の工程を、以下、「発酵工程」ともいう。
エタノールを生産するには、グルコースを酵母により発酵させる。より具体的には、グルコースを含む糖化液に酵母を添加し発酵させてもよいし、グルコースを含む糖化液からグルコースを分離した後に、分離したグルコースを酵母により発酵させてもよい。エタノール発酵のために用いられる酵母は特に限定されず、天然酵母、遺伝子組み換え酵母を問わず用いることができる。代表的なものとしては、たとえばサッカロミセス属の酵母等が挙げられる。エタノール発酵の際の酵母の使用量は特に制限されるものではなく、発酵槽の容量や糖液の量、使用する酵母の活性等に応じて適宜設定することができる。発酵工程における温度やpHについては特に限定されるものではなく、発酵に供する糖の量や酵母の種類に応じて適宜設定することができる。
また、酵母に代えて、乳酸産生菌などを用いることで、乳酸などの化成品を得ることが可能となる。
【0054】
糖化と発酵を1つの工程で同時に行なってもよい。すなわち、糖化・発酵工程において、セルラーゼおよび酵母を、パルプ繊維を含む排水に添加して、セルラーゼによりパルプ繊維を糖化してグルコースを生成させた後に、酵母によりグルコースを発酵させてエタノールを生成させてもよい。この方法によれば、同じ処理槽で、パルプ繊維を含む排水からエタノールを生産することができる。酵素糖化法を利用したエタノール生産は、たとえば、パルプ繊維を含む排水に、緩衝液等の溶媒にセルラーゼ粉末を溶解させて調製されたセルラーゼ溶液を加えて糖化処理をした後、酵母を加えてエタノール発酵させることによって行うことができる。
【0055】
第七の工程は、高吸水性ポリマーを回収する工程である。第七の工程を、以下、「SAP回収工程」ともいう。
第一の工程の第二の画分からパルプ繊維を分離した残りの固液混合物には、不活化した高吸水性ポリマーが含まれているので、その固液混合物から、不活化した高吸水性ポリマーは通さないがその他の成分を通す目開きのふるいを用いて、不活化した高吸水性ポリマーを分離回収することができる。分離回収した不活化した高吸水性ポリマーは、水分吸収能力を回復させるために再生処理を行う。再生処理の方法は、限定するものではないが、たとえば、不活化した高吸水性ポリマーをアルカリ金属塩水溶液で処理することによって行うことができる。
【0056】
アルカリ金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムの水溶性の塩が使用できる。好ましいアルカリ金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等が挙げられ、なかでも塩化ナトリウムおよび塩化カリウムが好ましい。
【0057】
アルカリ金属塩の量は、高吸水性ポリマー1g(乾燥質量)あたり、好ましくは20ミリモル以上、より好ましくは30~150ミリモル、さらに好ましくは40~120ミリモルである。アルカリ金属塩の量が少なすぎると、高吸水性ポリマーの水分吸収能力の回復が不十分となる。アルカリ金属塩の量が多すぎると、余分のアルカリ金属イオンが高吸水性ポリマーに取り込まれないまま処理液中に残るので、アルカリ金属塩の浪費につながり、処理費用を増加させる。
【0058】
アルカリ金属塩水溶液中のアルカリ金属塩の濃度は、高吸水性ポリマーから多価金属イオンを脱離させうる濃度であれば特に限定されないが、好ましくは20ミリモル/リットル以上、より好ましくは30~150ミリモル/リットル、さらに好ましくは40~120ミリモル/リットルである。濃度が低すぎると、高吸水性ポリマーの水分吸収能力の回復が不十分となる。濃度が高すぎると、余分のアルカリ金属イオンが高吸水性ポリマーに取り込まれないまま処理液中に残るので、アルカリ金属塩の浪費につながり、処理費用を増加させる。
【0059】
アルカリ金属塩水溶液処理の時間は、高吸水性ポリマーから多価金属イオンを脱離させるのに十分な時間であれば特に限定されないが、好ましくは1時間以上、より好ましくは2~10時間、さらに好ましくは4~8時間である。処理時間が短すぎると、高吸水性ポリマーの水分吸収能力の回復が不十分となる。処理時間がある値を超えると、高吸水性ポリマーの水分吸収量は増加しないので、その値を超える処理時間は無意味である。
【0060】
アルカリ金属塩水溶液の温度は、高吸水性ポリマーから多価金属イオンを脱離させうる温度であれば特に限定されないが、通常、0℃より高く、100℃より低い温度である。室温でも十分であるが、反応速度を速めるために加熱してもよい。加熱する場合は、室温~60℃が好ましく、室温~40℃がより好ましく、室温~30℃がさらに好ましい。
【0061】
第七の工程を実施する場合には、第七の工程を実施する前に、高吸水性ポリマーを崩壊する酸化剤を添加しないことが好ましい。使用済みおむつのリサイクルでは、殺菌や漂白を目的として、次亜塩素酸ナトリウムのような酸化剤を添加することがあるが、酸化剤の影響で高吸収性ポリマーは骨格構造が崩壊し、微細化され、高吸収性ポリマーの回収が困難となってしまう。
【0062】
第七の工程は、第一の工程においてパルプを分離した後、栄養塩回収工程(第四の工程)の前に行うことを好ましい。具体的には、パルプ分離後の処理水から高級水性ポリマーを分離回収し、その後、栄養塩を分離回収する。固形物の大きさとしてパルプ繊維が最も大きく(繊維長1.5~3mm程度)、次いで不活化SAPが100μm程度であり、栄養塩が10μm程度のため、大きいものから順番にスクリーンで分離回収を行うためである。
【0063】
本発明の方法は、第一の工程に先立ち、使用済み吸収性物品を洗浄する前処理洗浄工程をさらに含むことができる。洗浄することにより、洗浄中の物理ダメージでおむつを部分的に破壊し、パルプを分離するとともに、付着している排泄物を洗浄除去することにより、不織布・フィルム回収時の衛生性を確保するできる。前処理洗浄工程で発生した屎尿を含む排水は、第三の工程に供給することができる。
【0064】
微生物燃料電池から排出される水は、前処理洗浄工程に戻し、洗浄用に使用することができる。
【0065】
第三の工程で得られた電力は、第一の工程、第二の工程、第四の工程、第五の工程、第六の工程、第七の工程および前処理洗浄工程の少なくとも1つの工程に供給することができる。
【0066】
第二の工程で得られた固形燃料は、第一の工程、第三の工程、第四の工程、第五の工程、第六の工程、第七の工程および前処理洗浄工程の少なくとも1つの工程を運転するための燃料として使用することができる。
【0067】
再利用用途の需要に応じて、第一の工程、第二の工程および第三の工程の処理量の比率を変更することが好ましい。本発明の方法が、第四ないし第七の工程の少なくとも一つの工程を含む場合には、再利用用途の需要に応じて、第一の工程、第二の工程、第三の工程および第四ないし第七の工程の少なくとも一つの工程の処理量の比率を変更することが好ましい。たとえば、パルプ繊維よりもエタノールや乳酸の需要が大きい場合は、第一の工程で分離するパルプ量を減らし、第五の工程で処理するパルプ量を増やす等が好ましい。
各工程の処理量の比率を変更することにより、純度の高い上質パルプを得る工程が可能となる。用途需要に応じて生産品の出来高をコントロールすることで、需要が変動しても高い処理率を維持した操業が可能となる。
【0068】
本発明の方法は、使用済み吸収性物品に含まれる屎尿の量に応じて、第一の工程、第二の工程および第三の工程の処理量の比率を変更することにより、前記方法によって発生する廃棄物質の量を、処理された使用済み吸収性物品の量の10質量%未満に抑えることができる。ここで、前記廃棄物質の量とは、微生物燃料電池から発生する固形汚泥の量をいう。微生物燃料電池から発生する固形汚泥は、有機物の残留量も少なく、固形燃料として再利用することに適していないものである。
なお、本発明の方法が、第四ないし第七の工程の少なくとも一つの工程を含む場合には、使用済み吸収性物品に含まれる屎尿の量に応じて、第一の工程、第二の工程、第三の工程および前記少なくとも一つの工程の処理量の比率を変更することにより、さらに廃棄物質の量を減らすことできる。
【0069】
本発明の方法の1つの実施形態のフローチャートを
図1に示す。
本発明の方法の別の実施形態のフローチャートを
図2に示す。
本発明の方法のさらに別の実施形態のフローチャートを
図3に示す。
【0070】
本発明の方法を用いることにより、使用済み紙おむつから活用用途に合わせた純度・形態のリサイクル素材を製造することが可能となり、ニーズ・条件に合わせた活用用途が可能になる。リサイクル素材と活用用途の例を
図4に示す。
【実施例】
【0071】
屎尿を含む使い捨ておむつ300kgを、洗濯機のような攪拌機付きの処理槽内で攪拌することにより、少量のパルプ繊維、少量の高吸水性ポリマー、屎尿由来の残留固形物、不織布・フィルム等のプラスチック等を含む画分Aと、パルプ繊維、高吸収性ポリマー、屎尿成分等を含む排水aに分離した。画分Aの質量は129kgであった。排水aの量は1.11トンであったが、その中には、パルプ繊維、高吸収性ポリマー、屎尿を含む使い捨て紙おむつに含まれていた水分と屎尿由来の有機物が(300kg-129kg=)171kg含まれていたことになる。
排水aから、固液分離することにより、再生パルプ繊維を回収した。回収された再生パルプ繊維は48kgであった。少量のパルプ繊維、少量の高吸水性ポリマー、屎尿由来の残留固形物、不織布・フィルム等のプラスチック等を含む画分Aをさらに洗濯機のような攪拌機付きの処理槽内で攪拌することにより、少量のパルプ繊維、少量の高吸水性ポリマー等をさらに分離して残ったものを乾燥、圧縮成型して、固形燃料を得た。得られた固形燃料の質量は36kgであった。少量のパルプ繊維、少量の高吸水性ポリマー等を分離して得た排水bの質量は30kgであった。
排水aと排水bを混合し、1.14トンの排水cを得た。排水cの中には、屎尿を含む使い捨て紙おむつに含まれていた水分と屎尿由来の有機物が(171kg+30kg=)201kg含まれていたことになる。1.14トンの排水cを微生物燃料電池に導入し、1日あたり95.7kWの発電を行い、結果、4kgの固形汚泥が発生した。つまり、微生物燃料電池での処理量は、201kg-4kg=197kgであったことになる。
したがって、屎尿を含む使い捨て紙おむつ300kgのうち、処理できた量は、48kg+36kg+197kg=281kgとなり、処理率は281kg÷300kg×100≒94質量%であった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の方法は、屎尿を含む使用済み吸収性物品を効率的に再資源化するのに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 排水槽
2 ポンプ
3 負極反応槽
4 負極
5 プロトン交換膜
6 正極槽
7 正極
8 テスター
9 パソコン
10 汚泥沈降槽
11 ポンプ
12 浄化水槽