(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】光増倍装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20220411BHJP
G01T 3/06 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
G01T1/20 E
G01T1/20 L
G01T1/20 G
G01T3/06
(21)【出願番号】P 2018001948
(22)【出願日】2018-01-10
【審査請求日】2020-11-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)「レーザー駆動中性子源の開発と高速ラジオグラフィへの応用」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】有川 安信
(72)【発明者】
【氏名】西村 博明
(72)【発明者】
【氏名】中井 光男
(72)【発明者】
【氏名】余語 覚文
(72)【発明者】
【氏名】安部 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】松原 秋登
(72)【発明者】
【氏名】岸本 秀隆
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-503091(JP,A)
【文献】特開平06-044929(JP,A)
【文献】特表2011-501415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0197025(US,A1)
【文献】特開2012-225680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
H01L 31/107
G01T 3/06
H01J 31/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子を発生する携帯型中性子源と、
前記携帯型中性子源により発生した中性子に励起されることにより微弱光を発するシンチレータと、
前記シンチレータにより発生した微弱光を電流に変換して増倍する複数個のアバランシェフォトダイオードが格子状に配列されたアバランシェパネルと、
前記
中性子に基づく
中性子画像を表示するために前記アバランシェフォトダイオードからの電流を可視光に変換する複数個の
発光ダイオードが格子状に配列された発光パネルと
、
前記発光パネルに表示された前記中性子画像を撮像するカメラとを備えたことを特徴とする光増倍装置。
【請求項2】
前記複数個の
発光ダイオードが前記複数個のアバランシェフォトダイオードと1対1に対応するように配列される請求項1に記載の光増倍装置。
【請求項3】
前記複数個の
発光ダイオードを前記複数個のアバランシェフォトダイオードと1対1で結合する複数本の配線と、
各アバランシェフォトダイオードと並列に結合されたフォトダイオード電圧源と、
各
発光ダイオードと並列に結合された発光素子電圧源とをさらに備える請求項1に記載の光増倍装置。
【請求項4】
前記フォトダイオード電圧源が、各アバランシェフォトダイオードに正電圧を供給する第1正極と、
グランドに接地された第1負極とを有し、
前記発光素子電圧源が、各
発光ダイオードに負電圧を供給する第2負極と、
前記グランドに接地された第2正極とを有する請求項3に記載の光増倍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンチレーション信号や蛍光などの微弱光を電流に変換して増倍し、微弱光に基づく画像を表示するための光増倍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シンチレーション信号や蛍光などの微弱光を電流に変換して増倍し、微弱光に基づく画像を表示するための装置として、従来はマイクロチャンネルプレート内蔵のイメージインテンシファイアという装置があった。
【0003】
この従来のイメージインテンシファイアは、放射線に励起されることにより微弱光を発するシンチレータと、シンチレータからの微弱光を電子に変換するフォトカソードと、フォトカソードにより変換された電子を増倍するマイクロチャンネルプレートと、マイクロチャンネルプレートにより増倍された電子を光信号に変換するフォスファーとを備える。
【0004】
このイメージインテンシファイアの空間分解能は20μm程度であった。従来のイメージインテンシファイアは、真空管を用いた精密機器であり、非常に高価で、価格は数百万円から1千万円程度であり、手軽に使える装置ではなかった。
【0005】
また、イメージインテンシファイアの口径として2インチ程度が最大である。従来のイメージインテンシファイアにおいて、フォトカソードからマイクロチャンネルプレートにかけての量子効率は典型的に10%程度が限界であり、フォトン数が少ない画像に対して画質の劣化が顕著であった。
【0006】
3ナノ秒程度の時間ゲート(1コマ撮影のみ)が可能なイメージインテンシファイアも存在するが、基本的に高速変化する画像信号を連続的に増倍する事は不可能であった。
【0007】
また、イメージインテンシファイアは構造上、フォトカソードの受光面の周りが、金属等の固定枠で覆われており、不感領域になっている。このため、このフォトカソードを多数並べても画像欠損のない大型のパネル状に組み上げることができず、10cm直径よりも大きな受光面を実現することができなかった。
【0008】
また、マイクロチャンネルプレートには-5000V程度の高電圧をかけて使用するため、特殊な電源装置が必要であった。加えて、マイクロチャンネルプレートは、過大光がフォトカソードに入力されると損傷し易く、暗室装置や暗箱装置を用意し慎重に運転する必要があった。
【0009】
近年マイクロチャンネルプレートなど真空管デバイスの代わりに半導体デバイスの発展が目覚ましい。シリコンフォトダイオードの量子効率は60%に達している。アバランシェフォトダイードは、量子効率が60%程度でありながら、106倍に微弱光を増倍することができる。
【0010】
アバランシェフォトダイオード単体では単一の出力電流がオンかオフの2値にしかならないが、アバランシェフォトダイオードのマイクロ素子を1000個程度に多数並べて、回路的に一つに結線して線形増幅を実現したマルチピクセルフォトンカウンター(MPPC)が知られている(特許文献1)。このデバイスは量子効率が60%、増倍率が106、ダイナミックレンジが1000以上の線形増幅性能を実現している。このMPPCを1mm程度の画素サイズで多数並べたMPPCアレーはマイクロチャンネルプレートと同様の機能を果たすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2011-211070号公報(2011年10月20日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年、原子炉や加速器やレーザーなどで発生したX線や中性子を用いて、高速道路やコンクリート橋げたなどのメートルサイズの物体の内部の欠陥を、ラジオグラフによって非破壊で探知することができる様になりつつある。特に中性子は、発生手法と検出手法とが難しいが、メートルサイズのコンクリートでも透視できるので、発生手法と検出手法との技術開発が進められている。
【0013】
中性子の検出手法には、一般に中性子により励起されたシンチレータから発光されるシンチレーション光の画像をCCDカメラで撮影する手法が用いられる。微弱なシンチレーション光の画像を撮影するためには、光増倍装置が必須である。
【0014】
中性子の画像化のためのシンチレータには、1mm直径程度のファイバー状プラスチックシンチレータを多数束ねた、シンチレータアレイが用いられる。また、このようなプラスチックシンチレータファイバーバンドル(シンチレータアレイ)の代わりに、液体シンチレータをアルミハニカムパネルに充填してガラス窓で封じ込める事で、同様の性能を持つメートルサイズのシンチレータアレイパネルを安価に作ることができる。
【0015】
メートルサイズのシンチレーション発光画像を従来の小口径のイメージインテンシファイアカメラ(CCDカメラ)で撮影するためには画像の縮小が必要である。典型的にはシンチレータアレイパネルから1メートルの位置に、口径3cm・焦点距離3cm程度の低ノイズ冷却型のCCDカメラのレンズを設置する必要があるが、この場合シンチレータアレイパネルからのごく一部の光しかレンズに集めることができない。この悪い効率をカバーできるだけの中性子を発生させられる装置は超大型の加速器(J-PARCなど)を除いて世の中に存在しないため、従来技術では中性子画像装置はなかなか汎用化ができなかった。
【0016】
本発明の一態様は、メートルサイズの物体からの放射線に対応する微弱光に基づく画像を表示することができる汎用的な光増倍装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光増倍装置は、微弱光を電流に変換して増倍する複数個のアバランシェフォトダイオードが格子状に配列されたアバランシェパネルと、前記微弱光に基づく画像を表示するために前記アバランシェフォトダイオードからの電流を可視光に変換する複数個の発光素子が格子状に配列された発光パネルとを備えたことを特徴とする。
【0018】
この特徴によれば、格子状に配列されたアバランシェフォトダイオードにより微弱光から変換して増倍された電流が、格子状に配列された発光素子により可視光に変換される。アバランシェフォトダイオードが格子状に配列されるので、イメージインテンシファイアのように不感領域が発生せず、大型のパネル状に組み上げることができる。この結果、メートルサイズの物体の微弱光に基づく画像を表示することができる汎用的な光増倍装置を実現することができる。
【0019】
本発明の一態様に係る光増倍装置は、前記複数個の発光素子が前記複数個のアバランシェフォトダイオードと1対1に対応するように配列されてもよい。
【0020】
上記構成によれば、アバランシェフォトダイオードを画素とする画像を表示することができる。
【0021】
本発明の一態様に係る光増倍装置は、前記複数個の発光素子を前記複数個のアバランシェフォトダイオードと1対1で結合する複数本の配線と、各アバランシェフォトダイオードと並列に結合されたフォトダイオード電圧源と、各発光素子と並列に結合された発光素子電圧源とをさらに備えてもよい。
【0022】
上記構成によれば、各アバランシェフォトダイオードと各発光素子とを簡素な構成で動作させることができる。
【0023】
本発明の一態様に係る光増倍装置は、前記フォトダイオード電圧源が、各アバランシェフォトダイオードに正電圧を供給する第1正極と、グランドに接地された第1負極とを有し、前記発光素子電圧源が、各発光素子に負電圧を供給する第2負極と、前記グランドに接地された第2正極とを有してもよい。
【0024】
上記構成によれば、各アバランシェフォトダイオードと各発光素子とを簡素な構成で動作させることができる。
【0025】
本発明の一態様に係る光増倍装置は、放射線に励起されることにより前記微弱光を発するシンチレータをさらに備え、前記アバランシェフォトダイオードが前記シンチレータにより発せられた光を前記電流に変換して増倍してもよい。
【0026】
上記構成によれば、放射線により励起された微弱光に基づく画像を表示することができる。
【0027】
本発明の一態様に係る光増倍装置は、前記発光パネルに表示された前記画像を撮像するカメラをさらに備えてもよい。
【0028】
上記構成によれば、微弱光に基づく画像を撮像することができる。
【0029】
本発明の一態様に係る光増倍装置は、前記発光素子が発光ダイオードであってもよい。
【0030】
上記構成によれば、アバランシェフォトダイオードからの電流を効率良く可視光に変換することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様によれば、メートルサイズの物体からの放射線に対応する微弱光に基づく画像を表示することができる汎用的な光増倍装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】上記光増倍装置に設けられた光増倍パネルの構成を示すブロック図である。
【
図3】(a)は上記光増倍パネルをアバランシェパネル側から見た斜視画像であり、(b)は上記光増倍パネルを発光パネル側から見た斜視画像である。
【
図4】(a)は上記光増倍パネルの要部をアバランシェパネル側から見た斜視画像であり、(b)は発光パネル側から見た斜視画像である。
【
図5】上記光増倍装置に設けられたシンチレータからのシンチレーション信号の撮像画像である。
【
図6】上記光増倍パネルにパルス光を入力した時に出力される光信号の時間応答を示す波形図である。
【
図7】上記光増倍装置による中性子画像計測実験のセットアップを示す模式図である。
【
図8】上記中性子画像計測実験のセットアップを示す画像である。
【
図9】上記中性子画像計測実験の結果を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0034】
(光増倍装置1の構成)
図1は実施形態に係る光増倍装置1の模式図である。
図2は光増倍装置1に設けられた光増倍パネル16の構成を示すブロック図である。
【0035】
光増倍装置1は、光増倍パネル16を備える。光増倍パネル16は、微弱光17を電流18に変換して増倍するために設けられたアバランシェパネル2と、アバランシェパネル2からの電流18を可視光19に変換するために設けられた発光パネル3とを有する。
【0036】
図3(a)は増倍パネル16をアバランシェパネル2側から見た斜視画像であり、(b)は光増倍パネル16を発光パネル3側から見た斜視画像である。
図3(a)は光増倍パネル16の要部をアバランシェパネル2側から見た斜視画像であり、(b)は発光パネル3側から見た斜視画像である。
【0037】
アバランシェパネル2には、微弱光17を電流18に変換して増倍する複数個のアバランシェフォトダイオード4が格子状に配列される。発光パネル3には、微弱光17に基づく画像を表示するためにアバランシェフォトダイオード4からの電流18を可視光19に変換する複数個の発光ダイオード(LED、Light Emitting Diode)5(発光素子)が格子状に配列される。複数個の発光ダイオード5は、複数個のアバランシェフォトダイオード4と1対1に対応するように配列される。
【0038】
光増倍装置1には、複数個の発光ダイオード5を複数個のアバランシェフォトダイオード4と1対1で結合する複数本の配線6と、各アバランシェフォトダイオード4と並列に結合されたフォトダイオード電圧源7と、各発光ダイオード5と並列に結合された発光素子電圧源8とが設けられる。フォトダイオード電圧源7は、各アバランシェフォトダイオード4に+55V程度の正電圧を供給する正極9(第1正極)と、グランドGに接地された負極10(第1負極)とを有する。発光素子電圧源8は、各発光ダイオード5に-2V程度の負電圧を供給する負極12(第2負極)と、グランドGに接地された正極11(第2正極)とを有する。発光素子電圧源8は、発光ダイオード5を高速パルス駆動することが可能である。
【0039】
光増倍装置1は、放射線15に励起されることにより微弱光17を発するシンチレータ13をさらに備える。アバランシェフォトダイオード4はシンチレータ13により発せられた微弱光17を電流18に変換して増倍する。
【0040】
光増倍装置1には、発光パネル3に表示された画像を撮像するCCDカメラ14(カメラ)が設けられる。
【0041】
本実施形態に係る光増倍装置1は、従来のマイクロチャンネルプレート式のイメージインテンシファイアの欠点を解決する。この光増倍装置1は、アバランシェフォトダイオード4が格子状に配列されたMPPCアレーからなるアバランシェパネル2を用いて微弱光17を電流18(電子)に変換し、増倍してから、複数個の発光ダイオード5が格子状に配列された発光LEDアレーからなる発光パネル3で可視光19による画像信号に変換する。
【0042】
MPPCアレーの量子効率は典型的に60%で、電子の像倍率は106、電子からLED(発光ダイオード5)のフォトン効率は10%程度であるので、光増倍パネル16の全体の光増倍率はおよそ105倍である。
【0043】
この光増倍パネル16をシンチレータ13と組み合わせれば、微弱光17によるシンチレーション信号を肉眼で観測することができるため、放射線15を放射する放射性物質を肉眼で観測することができる。
【0044】
(光増倍装置1の動作)
図5は光増倍装置1に設けられたシンチレータ13からのシンチレーション信号の撮像画像である。
【0045】
これは、NaI:Tlシンチレータからなるシンチレータ13に密封放射線源を接着させ、シンチレータ13から発生したシンチレーション信号(微弱光17)を光増倍パネル16で増倍し、デジタルカメラからなるCCDカメラ14で撮影した画像である。光増倍装置1によれば、シンチレーション信号のような微弱な光信号を通常のデジタルカメラで撮影できるほど高感度に増倍できていることを示す。
【0046】
図6は光増倍パネル16にパルス光を入力した時の出力される光信号の時間応答を示す波形図である。
【0047】
応答速度は、アバランシェフォトダイオード4の種類と発光ダイオード5の種類とを適切に選択することによって、最小3ns程度までは高速にすることができる。
【0048】
図6には、実際に製作された光増倍パネル16のアバランシェパネル2の入力面にインパルス光(微弱光17)を入力し、発光パネル3の発光ダイオード5の発光を高速フォトディテクタで測定したインパルス応答が示されている。この光増倍パネル16では応答速度が100ns程度であるが、MPPCの種類の選択と回路設計次第では10ns程度まで高速化が可能である。高速撮影カメラと組み合わせることで、高速に時間変化する微弱光17の信号を増倍しながら連続的に撮影することも可能である。また、発光ダイオード5を駆動するためのLED回路にゲート回路を備えており、瞬間的な画像信号のみを切り出して増倍することができ、通常のCCDカメラやデジタルカメラで撮影することで高速ゲートカメラとして機能させることもできる。
【0049】
アバランシェフォトダイオード4の画素サイズが現状2mmであるMPPCをアバランシェパネル2に用いているが、アバランシェフォトダイオード4の既製品を用いた場合でも画素サイズが1mmであるMPPCまで製造可能であり、原理的には0.1mm程度まで画素サイズを小さくすることも可能である。
【0050】
このアバランシェフォトダイオード4は、全て半導体素子から構成されているため、55V程度と低い電圧で駆動し、DC-DCコンバーターによる昇圧を介して電池で駆動することも可能である。このため、光増倍装置1のアバランシェパネル2が、高圧電源を必要とせず、マイクロチャンネルプレート内蔵の従来のイメージインテンシファイアに比べてはるかにコンパクトになる。
【0051】
フォトダイオード素子であるアバランシェフォトダイオード4は、過大光が入射されても出力が飽和するだけで、損傷する可能性は低い。従って、アバランシェフォトダイオード4は、従来のマイクロチャンネルプレートと比べて過大光に対する耐性が圧倒的に強く、特別な暗室や暗箱装置がなくても使用することができる。
【0052】
また、アバランシェフォトダイオード4は、従来のイメージインテンシファイアのように受光面の周りに不感領域(デッドスペース)がないため、アバランシェフォトダイオード4を多数配列した大型化も容易であり、
図3(a)に示すように20cm程度の大きさのアバランシェパネル2も実現している。アバランシェフォトダイオード4は安価であるため、1メートルサイズのアバランシェパネル2の実現も可能である。
【0053】
本実施形態に係る光増倍装置1は2mm程度の分解能を有する。アバランシェパネル2のパネルサイズは数cmサイズからメートルサイズまで大型化が可能である。光増倍パネル16は、光画像信号を表す微弱光17を光-光増倍率105で増倍し、時間応答が100ns秒以下で連続的に微弱光17を増倍することができる。光増倍パネル16は、小型の電源で駆動し、過大光入力に対しても損傷は起こりにくい。そして、光増倍パネル16は、量子効率が60%程度であり、非常に高効率な感度を有している。
【0054】
図7は光増倍装置1による中性子画像計測実験のセットアップを示す模式図である。
図8は中性子画像計測実験のセットアップを示す画像である。
図9は中性子画像計測実験の結果を示す画像である。
【0055】
アルミハニカムに液体シンチレータを充填してガラス窓付き容器で封入したシンチレータアレープレート(シンチレータ13)の発光面に、本実施形態の光増倍パネル16を貼り付け、この光増倍パネル16の発光パネル3に形成されるLED発光面をCCDカメラ14で撮像する。この光増倍装置1をX線カメラや中性子カメラとして用いることができる。
【0056】
図7に示すようなセットアップで、大阪大学レーザー科学研究所の激光12号レーザーを用いて、重水素-重水素核融合反応による2.45MeVの中性子からなる放射線15を発生させ、これを中性子源として用いて、鉛ブロック21とパラフィンブロック22のシャドウグラフを行った画像が
図9に示される。鉛の影とパラフィンの影が写っている。中性子は、鉛ではほとんど減衰しないが、パラフィンでは減衰するため、パラフィンの所に濃い影が写っている。
【0057】
この画像は、X線と中性子を飛行時間弁別法によって弁別し、中性子時刻に時間ゲートをかけて撮影した画像である。鉛よりもパラフィンの方が中性子信号の減衰が大きいことからも、この画像が中性子信号に基づく画像であることがわかる。
【0058】
本実施形態に係る光増倍装置1は、携帯型放射線源と組み合わせることにより、例えば、トンネルの中に配置されたコンクリートの内部欠陥を可視化する非破壊検査に使用するためのハンディタイプの放射線画像検出装置に適用することができる。また、光増倍装置1は、放射線源と組み合わせることにより、トモグラフィ(tomography、断層映像法)を用いた医療機器に適用することができる。
【0059】
以上のように本実施形態に係る光増倍装置1では、メートルサイズの光増倍パネルを製作することも可能である。メートルサイズのシンチレータパネルの表面に同サイズの光増倍パネルを設置して、増倍された光をCCDカメラで撮影することによって、大型の中性子画像計測も可能になった。
【0060】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 光増倍装置
2 アバランシェパネル
3 発光パネル
4 アバランシェフォトダイオード
5 発光ダイオード(発光素子)
6 配線
7 フォトダイオード電圧源
8 発光素子電圧源
9 正極(第1正極)
10 負極(第1負極)
11 正極(第2正極)
12 負極(第2負極)
13 シンチレータ
14 CCDカメラ(カメラ)
15 放射線
16 光増倍パネル
17 微弱光
18 電流
19 可視光