(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】車載通信装置及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20220411BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20220411BHJP
H04W 72/08 20090101ALI20220411BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20220411BHJP
H04W 4/46 20180101ALI20220411BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
G08G1/09 H
H04W72/04 132
H04W72/08 110
H04W4/44
H04W4/46
G01C21/26 A
G08G1/09 F
(21)【出願番号】P 2018069403
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 伸
(72)【発明者】
【氏名】中村 順一
(72)【発明者】
【氏名】村上 康
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-120081(JP,A)
【文献】特開2017-194915(JP,A)
【文献】特開2008-205817(JP,A)
【文献】特開2004-246687(JP,A)
【文献】特開2016-131320(JP,A)
【文献】特開2009-218676(JP,A)
【文献】特開2004-282591(JP,A)
【文献】特開2008-258851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G08G 1/00-99/00
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を示す位置情報を取得する情報取得部と、
第1の周波数帯、及び前記第1の周波数帯と異なる第2の周波数帯の一方から選択した周波数帯で他の車載通信装置と通信し、前記第1及び第2の周波数帯の一方から選択した周波数帯で基地局と通信しダイナミックマップを受信し、前記第2の周波数帯
でETC通信装置と通信する無線通信部と、
前記ダイナミックマップから道路マップ上のETC通信装置の位置を検出し、前記道路マップ上のETC通信装置の位置から前記ETC通信装置の通信エリアを推定し、前記第2の周波数帯の通信チャンネルで前記他の車載通信装置と通信中において、前記現在位置及び前記通信エリアに基づき前記通信チャンネルの切り替えを判定し、前記第2の周波数帯の前記通信チャンネルを前記第1の周波数帯の空きチャンネルから選択される選択チャンネルへ切り替えて前記他の車載通信装置との通信を継続する制御部と、
を備える車載通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、自由空間における前記ETC通信装置については前記ETC通信装置の位置から第1の通信距離を含む第1の通信エリアを推定し、閉空間における前記ETC通信装置については前記ETC通信装置の位置から前記第1の通信距離より長い第2の通信距離を含む第2の通信エリアを推定する請求項1の車載通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記現在位置から前記通信エリアまでの距離が近接判定閾値以下の場合に、前記第2の周波数帯の前記通信チャンネルを前記第1の周波数帯の空きチャンネルから選択される選択チャンネルへ切り替えて前記他の車載通信装置との通信を継続する請求項1又は2の車載通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ダイナミックマップから前記通信エリアの電波強度レベルを示す電波強度情報を検出し、前記電波強度情報に応じて前記近接判定閾値を変更する請求項3の車載通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ダイナミックマップから前記通信エリアの電波遮蔽レベルを示す電波遮蔽情報を検出し、前記電波遮蔽情報に応じて前記近接判定閾値を変更する請求項3の車載通信装置。
【請求項6】
前記情報取得部は、車両の現在位置と車両の進行方向を含む道路マップを取得し、
前記制御部は、走行中の道路と前記通信エリアが存在する道路が同一の場合と異なる場合とで前記近接判定閾値を変更する請求項3の車載通信装置。
【請求項7】
前記情報取得部は、車両の現在位置と車両の進行方向を含む道路マップを取得し、
前記制御部は、走行中の道路と前記通信エリアが存在する道路が垂直方向で異なる場合と水平方向で異なる場合とで前記近接判定閾値を変更する請求項3の車載通信装置。
【請求項8】
前記無線通信部は、前記第2の周波数帯に含まれるETCチャンネルで前記ETC通信装置と通信し、
前記制御部は、前記ETCチャンネルで前記他の車載通信装置と通信中、且つ前記距離が近接判定閾値以下の場合に、前記ETCチャンネルを前記選択チャンネルへ切り替えて前記他の車載通信装置との通信を継続する請求項3乃至5の何れか1つの車載通信装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1の周波数帯に空きチャンネルが無い場合に、前記ETCチャンネルを前記第2の周波数帯の前記ETCチャンネル以外の空きチャンネルから選択される前記選択チャンネルへ切り替えて前記他の車載通信装置との通信を継続する請求項8の車載通信装置。
【請求項10】
移動局の前記車載通信装置と基地局の前記ETC通信装置は、前記移動局から前記基地局へのアップリンクチャンネル及び前記基地局から前記移動局へのダウンリンクチャンネルにより通信し、
前記制御部は、前記第1の周波数帯に空きチャンネルが無い場合に、前記ETCチャンネルを前記第2の周波数帯の前記ETCチャンネル以外の前記アップリンクチャンネルのうちの空きチャンネルから選択される前記選択チャンネルへ切り替えて前記他の車載通信装置との通信を継続する請求項8の車載通信装置。
【請求項11】
前記無線通信部は、前記選択チャンネルの情報を前記他の車載通信装置が読み取るように、前記他の車載通信装置に対して前記選択チャンネルによる切り替えを通知してから、前記選択チャンネルで通信する請求項1乃至10の何れか1つの車載通信装置。
【請求項12】
現在位置を示す位置情報を取得し、
第1の周波数帯、及び前記第1の周波数帯と異なる第2の周波数帯の一方から選択した周波数帯で基地局と通信しダイナミックマップを受信し、
前記ダイナミックマップから道路マップ上のETC通信装置の位置を検出し、前記道路マップ上のETC通信装置の位置から前記ETC通信装置の通信エリアを推定し、前記第2の周波数帯の通信チャンネルで他の車載通信装置と通信中において、前記現在位置及び前記通信エリアに基づき前記通信チャンネルの切り替えを判定し、前記第2の周波数帯の前記通信チャンネルを前記第1の周波数帯の空きチャンネルから選択される選択チャンネルへ切り替えて前記他の車載通信装置との通信を継続する無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車載通信装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの車両は車載通信装置を備え、車載通信装置は、駐車場又は有料道路の入出場口、及び路側等に設置された路側通信装置と通信し、料金収受のための情報又は道路状況等の情報を送受信することができる。車載通信装置と路側通信装置の通信により料金収受するシステムとして、ETC(Electronic Toll Collection System)がよく知られている。
【0003】
政府は2020年までに世界最先端の安全・安心・快適なコネクテッドカー社会を実現するため、高度な周波数利用の実現を目指している。具体的には、以下の通り。
・700MHz帯のITSコネクトの高度化(ITS:Intelligent Transport Systems)
・DSRCシステムの高度化(DSRC:Dedicated Short Range Communications)
・高度化ITS通信(V2X)システムの実現(V2X:Vehicle-to-everything)
そのうち、高度化ITS通信については、IEEE 802ベースあるいは携帯第5世代(5G)を用いたシステムの検討がなされている。しかしながら、700MHz帯は見通し外の車々間通信、路車間通信が可能となりITSに有効な周波数帯であるが、帯域が10MHzしかなく、V2Xを行うには帯域が狭すぎる。一方、5GHz帯は無線LAN等の近年の動向の通り、周波数帯域がひっ迫している。そのため高度化ITS通信を実現する周波数としては、現在DSRCに割り当てられている5,770-5,850MHzが有望である。
【0004】
ところが、現在この周波数帯は、ETC、ITSスポット、あるいは駐車場などの民間応用に使われている。そのため、2020年以降、ETC等の既存システムと高度化された高度化ITS通信システムが共用されることが想定される。そのため、既存システムの運用に影響を与えないように、干渉回避が重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-191946号公報
【文献】特開2017-41749号公報
【文献】特開2010-233007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、ETCにおいて、料金所近傍で高度化ITS通信システムが同じチャンネルあるいは近接するチャンネルで通信を行った場合、高度化ITS通信システムからの干渉により、ゲートの開閉及び適正課金等へ影響が及ぶ可能性がある。このような通信の干渉を回避し、ゲートの開閉及び適正課金等を実現するための技術が要望されている。
【0007】
欧州においては、DSRCシステムと高度化ITS通信システムとの共用化に関する規格が存在する。この規格は、高度化ITS通信を行う場合、DSRCへの干渉が想定される場合、高度化ITS通信の出力電力を低下させるとともに、通信間隔を長くすることで、干渉を回避している。これは高度化ITS通信で使用する周波数帯とETCで使用する周波数帯が異なるために、干渉回避技術として成立する。
【0008】
しかしながら、同一周波数帯(5,770-5,850MHz)においては、高度化ITS通信の出力電力を低下させるとともに、通信間隔を長くすることによってもDSRCへの干渉を回避することは難しい。
【0009】
本発明の目的は、移動局及び基地局などの異なる相手と通信する場合における干渉回避に優れた車載通信装置及び無線通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係る車載通信装置は、情報取得部と、無線通信部と、制御部とを備える。前記情報取得部は、現在位置を示す位置情報を取得する。前記無線通信部は、第1及び第2の周波数帯の一方から選択した周波数帯で他の車載通信装置と通信し、また、基地局と通信しダイナミックマップを受信し、前記第2の周波数帯で前記ETC通信装置と通信する。前記制御部は、前記ダイナミックマップから道路マップ上のETC通信装置の位置を検出し、前記道路マップ上のETC通信装置の位置から前記ETC通信装置の通信エリアを推定し、前記第2の周波数帯の通信チャンネルで前記他の車載通信装置と通信中において、前記現在位置及び前記通信エリアに基づき前記通信チャンネルの切り替えを判定し、前記通信チャンネルを前記第1の周波数帯の空きチャンネルから選択される選択チャンネルへ切り替えて前記他の車載通信装置との通信を継続する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る無線通信システムの一例を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る無線通信システムに適用される車載通信装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る無線通信システムに適用される基地局の一例を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る無線通信システムに適用されるETC通信装置の一例を示すブロック図である。
【
図5】5.8GHz帯のチャンネルの使用例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る無線通信システムによる無線通信処理の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る無線通信システムの一例を示す概略図である。
図1に示すように、無線通信システムは、各車両に搭載される車載通信装置(移動局)1、DSRC基地局2、及びETC通信装置4を備える。車載通信装置1は車載アンテナAT1を備え、DSRC基地局2はアンテナAT2を備え、ETC通信装置4はETCアンテナAT4を備える。また、
図1の破線で囲まれたエリアは、ETCアンテナAT4のETC通信エリアEを示す。
【0013】
ETCアンテナAT4は、有料道路の入口及び出口の手前に設けられるDSRC用のアンテナであり、DSRC基地局2のアンテナAT2の通信エリアは広域であるのに対して、ETCアンテナAT4のETC通信エリアEは狭域である。
【0014】
図1に示すように、ETC通信エリアEの外において、車載通信装置1は、5.8GHz帯及び700MHz帯から選択される周波数帯の電波を用いてDSRC基地局2のアンテナAT2と通信し、情報を送受信する。車載通信装置1は、アンテナAT2から送信されるダイナミックマップを定期的に受信する。このような車載通信装置1とDSRC基地局2のアンテナAT2との通信を路車間通信と呼ぶ。なお、700MHz帯を第1の周波数帯、5.8GHz帯を第2の周波数帯と呼ぶ。
【0015】
また、ETC通信エリアEの外において、ある車両(以下、第1の車両)の車載通信装置1は、5.8GHz帯及び700MHz帯の一方から選択される周波数帯の電波を用いて、他の車両(以下、第2の車両)の車載通信装置1と通信し、情報を送受信する。このような異なる車両間の通信(複数の車載通信装置1の間の通信)を車々間通信と呼ぶ。車々間通信により、第1の車両と第2の車両の間で、車両の挙動に関する情報を交換し、衝突回避を含め自動運転制御が実現される。
【0016】
また、ETC通信エリアEの内側において、車載通信装置1は、5.8GHz帯の電波を用いてETC通信装置4のETCアンテナAT4と通信し、情報を送受信する。上記と同様に、このような車載通信装置1とETC通信装置4のETCアンテナAT4との通信も路車間通信と呼ぶ。なお、ETC通信エリアEの内側における車々間通信(通信の切り替え処理等)については後に詳しく説明する。
【0017】
図2は、実施形態に係る無線通信システムに適用される車載通信装置の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、車載通信装置1は、車載アンテナAT1、制御部11、記憶部12、無線通信部14、情報入力部15、情報出力部16、リーダライタ17、及び情報取得部18を備える。
【0018】
車載アンテナAT1は、5.8GHz帯及び700MHz帯から選択される周波数帯の電波により、DSRC基地局2のアンテナAT2と通信し情報を送受信する。車載アンテナAT1は、アンテナAT2から送信されるダイナミックマップを受信する。また、第1の車両の車載通信装置1の車載アンテナAT1は、5.8GHz帯及び700MHz帯から選択される周波数帯の電波により、第2の車両の車載通信装置1の車載アンテナAT1と通信し情報を送受信する。また、車載アンテナAT1は、5.8GHz帯の電波により、ETC通信装置4のETCアンテナAT4と通信し情報を送受信する。
【0019】
制御部11は、1以上のプロセッサ及びメモリを備え、例えば、プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサは、車載通信装置1の各部にバスを介して接続する。プロセッサは、メモリ及び記憶部12の少なくとも一方に記憶されるプログラムを実行することにより、各部の動作を制御する。
【0020】
記憶部12は、読み出し専用メモリ及び書換え可能な不揮発性のメモリを備える。記憶部12は、プログラム、制御データ、送受信データ、及び車載通信装置1に固有の識別情報等を記憶する。
【0021】
無線通信部14は、車載アンテナAT1で受信された受信RF(Radio Frequency)信号から変調信号を取り出し復調して生成される受信データを制御部11へ出力する。また、無線通信部14は、制御部11からの送信データを変調して生成される変調信号から送信RF信号を生成し車載アンテナAT1へ出力する。
【0022】
情報入力部15は、入力キー等を備え、ユーザからの入力を受付けて入力された情報を制御部11へ出力する。例えば、情報入力部15は、車載通信装置1の各種設定に関する入力を受付ける。
【0023】
情報出力部16は、ディスプレイ及びスピーカ等を備え、動作状態、処理結果、及び判定結果等の情報を表示する。例えば、情報出力部16は、ETCアンテナAT4から送信される入口情報、出口情報、又は通行料金(課金情報)等を表示する。入口情報は、有料道路等の入口の識別情報、入口名称、及び入口通過日時等の情報を含む。出口情報は、有料道路等の出口の識別情報、出口名称、及び出口通過日時等の情報を含む。
【0024】
リーダライタ17は、車載通信装置1に装填されるETCカード1aと通信し、ETCカード1aに情報(入口情報又は出口情報)を書き込んだり、ETCカード1aに書き込まれた情報(識別情報)を読み取ったりする。
【0025】
情報取得部18は、定期的に現在の位置情報を取得する。例えば、情報取得部18は、定期的にGPS(Global Positioning System)の複数の衛星からの電波を受信し、受信データをGPSサーバへ送信し、GPSサーバで求められる位置情報を受信する。なお、情報取得部18は、車載通信装置1の車両に搭載された外部機器(例えばナビゲーションシステム及び車両の走行制御システム)と接続するインタフェースを備え、ナビゲーションシステムから提供される車両の現在位置と車両の進行方向を含む高精度な3次元の道路マップ、また、走行制御システムから提供される車速情報を取得してもよい。3次元の道路マップは、平地の道路、地下道、及び高架橋の道路などの情報を含む。さらに、道路マップは、上下階で併設された一般道と有料道路及び立体交差点などの情報も含む。
【0026】
図3は、実施形態に係る無線通信システムに適用される基地局の一例を示すブロック図である。
DSRC基地局2は、エッジコンピュータ21、信号処理部22、無線通信部23、及びアンテナAT2を備える。
【0027】
エッジコンピュータ21は、1以上のプロセッサ及びメモリにより構成される制御部であり、上位サーバS2と通信し、ダイナミックマップを受信する。また、エッジコンピュータ21は、上位サーバS2と通信し、アプリケーションを実行する。高度化ITS通信においては、安心・安全に関わるアプリケーションなど低遅延での通信が必須となるものがある。この場合、上位サーバS2とのデータ通信を行っていては間に合わないこともあるため、DSRC基地局2内にエッジコンピュータ21を備え、エッジコンピュータ21が、低遅延アプリケーションを実現する。特に、ダイナミックマップのうち、渋滞や周辺車両の進行状況といった刻一刻と変化する情報については、このエッジコンピュータ21が処理を行う。
【0028】
ダイナミックマップは、静的で高精度な3次元の道路マップと、渋滞情報や交通規制などの動的な位置情報を組み合わせた情報である。このダイナミックマップは、自動運転を行うために使用される。3次元の道路マップは、ビルなどの建物情報を含み、平地の道路及び高架橋の道路など自由空間の道路に関する情報、また、トンネル及び地下道などの閉空間の道路に関する情報を含む。さらに、3次元の道路マップは、上下階で併設された一般道と有料道路及び立体交差点などの情報も含む。また、ダイナミックマップは、各ETC通信装置4に関するETC関連情報を含む。ETC関連情報は、3次元の道路マップに対応付けられた、各ETC通信装置4の位置情報を含む。つまり、ETC情報は、自由空間の道路に設けられたETC通信装置4であるか、又は閉空間の道路に設けられたETC通信装置4であるかを示す情報を含む。また、ETC関連情報は、各ETC通信装置4のETC通信エリアEを示す情報を含む。さらに、ETC関連情報は、ETC通信エリアEの属性情報を含む。属性情報は、ETC通信エリアEが属する道路情報、ETC通信エリアEで使用されている周波数チャンネルに関する情報、ETCアンテナAT4の向きに関する情報、電波強度レベルを示す電波強度情報、及び電波遮蔽レベルを示す電波遮蔽情報を含む。
【0029】
例えば、属性情報に含まれる道路情報は、ETC通信エリアEがどの道路に存在しているかを示す情報である。この情報を参照することにより、水平方向(左右方向)に併設された複数の道路のどの道路に存在する通信エリアなのか、また、垂直方向(上下方向)に併設された複数の道路のどの道路に存在する通信エリアなのかを知ることができる。例えば、ある道路に設けられたETC通信エリアEで放射される電波の影響は、ある道路の左右方向に位置する道路よりも、ある道路の上下方向に位置する道路に対して比較的高くなるものとする。ETCの料金所には、防音防磁対策として遮蔽壁が設けられることがあり、その遮蔽の影響により左右方向への電波の影響は小さくなる。また、上下方向だけで見ると、ある道路の上に位置する道路よりも、ある道路の下に位置する道路に対して比較的高くなるものとする。また、ETCの料金所には、料金所の周辺環境に応じて様々な遮蔽壁が設けられる。例えば、料金所の周辺環境が住宅地である場合には高く長い遮蔽壁が設置され、郊外である場合には簡易な遮蔽壁が設置されることがある。このように、ETCの料金所には、料金所の周辺環境に応じて遮蔽レベルの異なる遮蔽壁が設置され、電波遮蔽情報からこの遮蔽壁の遮蔽レベルを知ることができる。
【0030】
信号処理部22は、信号送信時には、エッジコンピュータ21からの送信データを変調し変調信号を無線通信部23へ出力する。また、信号処理部22は、信号受信時には、無線通信部23からの変調信号を復調し受信データをエッジコンピュータ21へ出力する。
【0031】
無線通信部23は、信号送信時には、信号処理部22からの変調信号から送信RF信号を生成しアンテナAT2へ出力する。また、無線通信部23は、信号受信時には、アンテナAT2で受信された受信RF信号から変調信号を取り出し出力する。
【0032】
アンテナAT2は、信号送信時には、無線通信部23からの送信RF信号を入力し送信RF信号を空間へ放射する。また、アンテナAT2は、信号受信時には、空間からRF信号を受信し受信RF信号を無線通信部23へ出力する。例えば、アンテナAT2は、5.8GHz帯及び700MHz帯の一方から選択される周波数帯を使って情報を送受信する。アンテナAT2は、上記したダイナミックマップを送信する。
【0033】
図4は、実施形態に係る無線通信システムに適用されるETC通信装置の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、ETC通信装置4は、ETCアンテナAT4、制御部41、信号処理部42、DSRC用通信部44を備える。
【0034】
制御部41は、1以上のプロセッサ及びメモリを備え、例えば、プロセッサは、CPUである。プロセッサは、ETC通信装置4の各部にバスを介して接続する。プロセッサは、メモリに記憶されるプログラムを実行することにより、各部の動作を制御する。また、制御部41は、車線サーバS4と通信し、車線サーバS4からの情報を信号処理部42へ受け渡す。
【0035】
信号処理部42は、車線サーバS4からの入口情報、出口情報、及び通行料金等の送信データが反映された変調信号を生成しDSRC用通信部44へ出力し、また、DSRC用通信部44からの変調信号を復調し受信データとして制御部41へ出力する。
【0036】
DSRC用通信部44は、変調信号から送信RF信号を生成しETCアンテナAT4へ出力し、ETCアンテナAT4で受信された受信RF信号から変調信号を取り出し信号処理部42へ出力する。
【0037】
ETCアンテナAT4は、DSRC用通信部44からの送信RF信号を入力し送信RF信号を空間へ放射する。また、ETCアンテナAT4は、空間からRF信号を受信し受信RF信号をDSRC用通信部44へ出力する。例えば、ETCアンテナAT4は、5.8GHz帯の一部のETCチャンネルを使って情報を送受信する。
【0038】
ETCアンテナAT4は、車載通信装置1と通信し、車載通信装置1の識別情報、及び車載通信装置1に装填されるETCカードの識別情報を受信する。また、有料道路の入口に設けられるETCアンテナAT4であれば、車載通信装置1と通信し、入口情報を送信する。有料道路の出口に設けられるETCアンテナAT4であれば、車載通信装置1と通信し、出口情報及び通行料金等を送信する。ETCアンテナAT4により他の通信の干渉を受けることなく正しく情報を送受信することは、正しい課金処理を実行する上で重要である。
【0039】
図5は、5.8GHz帯のチャンネルの使用例を示す図である。
図5に示すように、5,775MHz~5,805MHzに含まれる複数チャンネルはダウンリンクとして割り当てられ、また、5,815~5,845MHzに含まれる複数チャンネルはアップリンクとして割り当てられる。ETCで使用されるチャンネルは、ETC通信装置4(ETCアンテナAT4)から車載通信装置1(車載アンテナAT1)への通信(ダウンリンク)においては、5,795MHz又は5,805MHzが使用され、車載通信装置1(車載アンテナAT1)からETC通信装置4(ETCアンテナAT4)への通信(アップリンク)においては、5,835MHz又は5,845MHzが使用される。
【0040】
5,775~5,805MHzに含まれる各チャンネルをダウンリンクチャンネルと呼び、5,815~5,845MHzに含まれる各チャンネルをアップリンクチャンネルと呼ぶ。また、5,795MHz、5,805MHz、5,835MHz、及び5,845MHzのチャンネルをETCチャンネルと呼び、そのうちの5,795MHz及び5,805MHzのチャンネルをETCダウンリンクチャンネル、5,835MHz及び5,845MHzのチャンネルをETCアップリンクチャンネルと呼ぶ。また、
図5に示すチャンネルにおいて、ETCチャンネル以外のチャンネルをETC2.0チャンネルと便宜上呼ぶことにする。さらに、アップリンクチャンネルのうちの、5,815MHz、5,820MHz、5,825MHz、5,830MHzの各チャンネルを高度化情報チャンネルと呼ぶこととする。或いは、ETCアップリンクチャンネルの周波数(5,835HzMHz及び5,845HzMHz)から離れた5,815MHz、5,820MHz、5,825MHzの各チャンネルを高度化情報チャンネルと呼んでもよい。
【0041】
例えば、料金所間隔が短く、ETC通信エリアEとETC2.0(ITS通信エリア)との距離が近い道路環境においては、両者の通信干渉を回避するため、ETCチャンネルとETC2.0チャンネルとを使い分けて運用する。逆に、料金所間隔が長く、ETC通信エリアEとETC2.0との距離が遠い道路環境においては、両者の通信干渉は生じ難いため、5,775~5,845MHzに含まれる各チャンネルをETC2.0チャンネルとして使用する運用も可能である。
【0042】
図6は、実施形態に係る無線通信システムによる無線通信処理の一例を示すフローチャート図である。
図1及び
図6を参照しながら、実施形態に係る無線通信処理について説明する。
【0043】
車載通信装置1の情報取得部18は、ナビゲーションシステム等から、定期的に車両の現在位置と車両の進行方向を含む3次元の道路マップを取得する(ステップST101)。
図1に示すように、ETC通信エリアEの外において、第1の車両の車載通信装置1と第2の車両の車載通信装置1と通信する車々間通信の実行状態を想定する。第1の車両の車載通信装置1の制御部11及び無線通信部14は、予め定められた周波数帯、例えば700MHz帯及び5.8GHz帯の一方を選択し、選択した周波数帯の空きチャンネルを検索し、空きチャンネルにて、第2の車両の車載通信装置1と通信する。例えば、700MHz帯を優先的に選択し700MHz帯に空きチャンネルがなければ、5.8GHz帯を選択し5.8GHz帯の空きチャンネルを検索する。
【0044】
第1の車両の走行に伴い、第1の車両の車載通信装置1が、アンテナAT2の通信エリアに進入すると、車載アンテナAT1及び無線通信部14は、アンテナAT2から定期的に送信されているダイナミックマップを受信し(ステップST102)、記憶部12はダイナミックマップを記憶する(ステップST103)。制御部11は、ダイナミックマップの受信に応じて、記憶部12に記憶されるダイナミックマップを最新のダイナミックマップへ更新する。これにより、ダイナミックマップが受信できないエリア(トンネル内など)を走行中の場合でも、直前に受信しているダイナミックマップの利用が可能となる。
【0045】
制御部11は、ダイナミックマップから道路マップ上のETC通信装置4の位置を検出し、道路マップ上のETC通信装置4の位置からETC通信装置4のETC通信エリアE’を推定する。つまり、制御部11は、道路マップを参照し、ETC通信装置4の設置条件に基づき、ETC通信エリアE’を推定する。
図1に示すETC通信エリアEは理論上の通信エリアであり、ETC通信装置4の設置条件によっては、制御部11が推定するETC通信エリアE’がETC通信エリアEと実質的に同一になることもある。
【0046】
例えば、制御部11は、道路マップを参照し、周辺に大型の建物が無く平地又は高架橋の道路(自由空間)に設置されたETC通信装置4であると判定した場合、このETC通信装置4の位置から第1の通信距離を含む第1のETC通信エリアE’を推定する。
【0047】
また、制御部11は、道路マップを参照し、トンネルや地下道(閉空間)に設置されたETC通信装置4であると判定した場合、このETC通信装置4の位置から第2の通信距離を含む第2のETC通信エリアE’を推定する。なお、第2の通信距離は、第1の通信距離より長い。つまり、自由空間に設置されたETC通信装置4の通信距離より閉空間に設置されたETC通信装置4の通信距離を長く設定する。
【0048】
また、制御部11は、道路マップを参照し、ETC通信装置4の周辺に大型の建物が設置されている場合、このETC通信装置4が平地又は高架橋の道路(自由空間)に設置されていても、準閉空間に設置されたETC通信装置4と判定し、ETC通信装置4の位置から第3の通信距離を含む第3のETC通信エリアE’を推定する。なお、第3の通信処理は、第1の通信距離より長く、第2の通信距離より短い。つまり、自由空間に設置されたETC通信装置4の通信距離より準閉空間に設置されたETC通信装置4の通信距離を長くし、閉空間に設置されたETC通信装置4の通信距離より準閉空間に設置されたETC通信装置4の通信距離を短く設定する。
【0049】
制御部11は、ナビゲーションシステム等からの道路マップと基地局2からのダイナミックマップとを照合し、ナビゲーションシステム等からの道路マップに含まれる現在位置及び推定されたETC通信エリアE’に基づき通信チャンネルの切り替え要否を判定する。制御部11は、ナビゲーションシステム等からの道路マップに含まれる現在位置からETC通信エリアE’(ETC通信エリアE’の外縁)までの距離と近接判定閾値(例えば100m)とを比較し、その距離が近接判定閾値以下になると、ETC通信エリアE’への近接状態と判定する(ステップST104)。また、制御部11は、現在位置からETC通信エリアE’(ETC通信エリアE’の中心)までの距離と進入判定閾値とを比較し、その距離が進入判定閾値以下になると、ETC通信エリアE’への進入状態と判定してもよい。
【0050】
また、以下のように、近接判定閾値又は進入判定閾値を変更して近接状態又は進入状態を判定するようにしてもよい。
【0051】
(1)電波強度情報に基づく近接判定閾値又は進入判定閾値の変更
上記したように、ダイナミックマップは、ETC通信エリアEの電波強度レベルを示す電波強度情報を含む。制御部11は、ダイナミックマップからETC通信エリアEの電波強度レベルを示す電波強度情報を検出し、電波強度情報に応じて近接判定閾値又は進入判定閾値を変更する。制御部11は、電波強度レベルが高い場合に近接判定閾値又は進入判定閾値を基準値(例えば100m)より大きい値に変更し、現在位置からETC通信エリアE’(ETC通信エリアE’の外縁又は中心)までの距離が遠いうちに、近接状態又は進入状態を判定する。逆に、制御部11は、電波強度レベルが低い場合に近接判定閾値又は進入判定閾値を基準値より小さい値に変更し、近接状態又は進入状態を判定する。
【0052】
(2)電波遮蔽情報に基づく近接判定閾値又は進入判定閾値の変更
上記したように、ダイナミックマップは、ETC通信エリアEの電波遮蔽レベルを示す電波遮蔽情報を含む。制御部11は、ダイナミックマップからETC通信エリアEの電波遮蔽レベルを示す電波遮蔽情報を検出し、電波遮蔽情報に応じて近接判定閾値又は進入判定閾値を変更する。制御部11は、電波遮蔽レベルが低い場合に近接判定閾値又は進入判定閾値を基準値より高い値に変更し、現在位置からETC通信エリアE’(ETC通信エリアE’の外縁又は中心)までの距離が遠いうちに、近接状態又は進入状態を判定する。逆に、制御部11は、電波遮蔽レベルが高い場合に近接判定閾値又は進入判定閾値を基準値より小さい値に変更し、近接状態又は進入状態を判定する。電波遮蔽レベルが高い場合に、ETC通信エリアEの道路と異なる道路を走行するケースなどでは、その遮蔽により電波の干渉の影響は低くなる。
【0053】
(3)道路の違いによる近接判定閾値又は進入判定閾値の変更
上記したように、情報取得部18は、車両の現在位置と車両の進行方向を含む道路マップを取得する。制御部11は、ナビゲーションシステム等からの道路マップと基地局2からのダイナミックマップとを照合し、走行中の道路とETC通信エリアE’が存在する道路が同一か否かを判定し、同一の場合と異なる場合とで近接判定閾値又は進入判定閾値を変更する。制御部11は、走行中の道路とETC通信エリアE’が存在する道路が同一の場合には、近接判定閾値又は進入判定閾値を基準値より高い値に変更し、現在位置からETC通信エリアE’(ETC通信エリアE’の外縁又は中心)までの距離が遠いうちに、やがて到達するETC通信エリアE’に備えて近接状態又は進入状態を判定する。また、制御部11は、走行中の道路とETC通信エリアE’が存在する道路が異なる場合には、近接判定閾値を基準値より小さい値に変更し、近接状態又は進入状態を判定する。
【0054】
(4)道路(上下方向又は左右方向)の違いによる近接判定閾値又は進入判定閾値の変更
上記したように、情報取得部18は、車両の現在位置と車両の進行方向を含む道路マップを取得する。制御部11は、ナビゲーションシステム等からの道路マップと基地局2からのダイナミックマップとを照合し、走行中の道路とETC通信エリアE’が存在する道路が垂直方向で異なるか否か判定し、また水平方向で異なるか否か判定し、垂直方向で異なる場合と水平方向で異なる場合とで近接判定閾値又は進入判定閾値を変更する。制御部11は、走行中の道路とETC通信エリアE’が存在する道路が垂直方向で異なる場合には、近接判定閾値又は進入判定閾値を基準値より高い値に変更し、現在位置からETC通信エリアE’(ETC通信エリアE’の外縁又は中心)までの距離が遠いうちに、近接状態又は進入状態を判定する。上下方向の位置の違いによる電波の影響は比較的大きいため、早めに近接状態又は進入状態を判定する。また、制御部11は、走行中の道路とETC通信エリアE’が存在する道路が水平方向で異なる場合には、近接判定閾値又は進入判定閾値を基準値より小さい値に変更し、近接状態又は進入状態を判定する。水平方向の位置の違いによる電波の影響は比較的小さいため(料金所の遮蔽壁の効果もあり影響は比較的小さい)、遅めに近接状態又は進入状態を判定する。
【0055】
(5)閉空間又は準閉空間における近接判定閾値又は進入判定閾値の変更
上記したように、情報取得部18は、車両の現在位置と車両の進行方向を含む道路マップを取得する。制御部11は、ナビゲーションシステム等からの道路マップと基地局2からのダイナミックマップとを照合し、ETC通信エリアE’がトンネル又は地下道などの閉空間に存在するか否か判定し閉空間に存在する場合には、近接判定閾値又は進入判定閾値を変更する。制御部11は、ETC通信エリアE’がトンネル又は地下道などの閉空間に存在する場合には、近接判定閾値又は進入判定閾値を基準値より高い値に変更し、現在位置からETC通信エリアE’(ETC通信エリアE’の外縁又は中心)までの距離が遠いうちに、近接状態又は進入状態を判定する。閉空間では電波が飛びやすく、広い範囲で電波の影響が生じるため、早めに近接状態又は進入状態を判定する。また、制御部11は、ETC通信エリアE’が閉空間ではなく自由空間に存在する場合には、近接判定閾値又は進入判定閾値を変更せずに、近接状態又は進入状態を判定する。同様に、制御部11は、ETC通信エリアE’が準閉空間に存在する場合には、近接判定閾値又は進入判定閾値を基準値より高く、閉空間で与えられる閾値より低い閾値に変更する。
【0056】
なお、制御部11は、位置情報、ETC通信エリアE’、及び車速情報に基づき、近接状態を判定するようにしてもよい。例えば、制御部11が、車速情報から第1の速度を検出する場合には、制御部11は、第1の近接判定閾値と比較して近接状態を判定し、車速情報から第1の速度より早い第2の速度を検出する場合には、第1の近接判定閾値より大きい値の第2の近接判定閾値と比較して近接状態を判定するようにしてもよい。つまり、制御部11は、車両の速度が早いほど、ETC通信エリアE’のより手前で近接状態を判定する。
【0057】
制御部11は、車々間通信の状況を検出し、車々間通信の状況に応じて車々間通信を制御する。上記説明したように、ETCアンテナAT4は、5.8GHz帯の一部のETCチャンネルを使って情報を送受信する(
図5参照)。制御部11が、車々間通信中においてETC通信エリアE’への近接状態又は進入状態の判定を下さなければ(ステップST104、NO)、現状が維持される(ステップST105)。このケースでは、車々間通信が継続される。
【0058】
制御部11が、車々間通信中においてETC通信エリアE’への近接状態又は進入状態の判定を下し(ステップST104、YES)、5.8GHz帯の一部のETCチャンネルが使用されていないと判定されても(ステップST106、NO)、現状が維持される(ステップST105)。
【0059】
制御部11が、5.8GHz帯の一部のETCチャンネルが使用されていると判定すると(ステップST106、YES)、制御部11及び無線通信部14は、第2の車両の車載通信装置に対して、チャンネル変更を宣言する(ステップST107)。制御部11及び無線通信部14は、チャンネル変更後の情報を第2の車両の車載通信装置1が正しく読み取るように、第2の車両の車載通信装置1に対して変更チャンネルによる切り替えを通知してから、変更チャンネルで通信する。制御部11及び無線通信部14が、緊急情報を受信しなければ(ステップST108、NO)、通信の切り替え処理へ移行する。制御部及び無線通信部14が、第2の車両の車載通信装置等からの緊急情報を受信した場合には(ステップST108、YES)、現在の車々間通信を継続する(ステップST109)。緊急情報とは、衝突などの警告情報、或いは衝突などを回避するための車両制御信号である。緊急情報を受信した後、制御部11及び無線通信部14は、通信の切り替え処理へ移行する。
【0060】
通信切り替え処理において、制御部11及び無線通信部14は、空きチャンネルを検索し、700MHz帯から空きチャンネルを検出した場合には(ステップST110、YES)、空きチャンネルから所定チャンネル(変更チャンネル)を選択し、選択した変更チャンネルを第2の車両の車載通信装置1に通知し、第2の車両の車載通信装置1からの承認応答を受信し、車々間通信を選択した変更チャンネルへ変更する(ステップST113)。
【0061】
制御部11及び無線通信部14が、700MHz帯から空きチャンネルを検出できず(ステップST110、NO)、5.8GHz帯の一部のETC2.0チャンネル(ETCチャンネル以外)から空きチャンネルを検出した場合には(ステップST111、YES)、空きチャンネルから所定チャンネル(変更チャンネル)を選択し、選択した変更チャンネルを第2の車両の車載通信装置1に通知し、第2の車両の車載通信装置1からの承認応答を受信し、車々間通信を選択した変更チャンネルへ変更する(ステップST113)。このように、ETC通信エリアE’へ近接した場合に、車々間通信をETC2.0チャンネルに変更することにより、ETC通信エリアE’内でのETCチャンネルによる通信への干渉を回避することができる。
【0062】
或いは、制御部11及び無線通信部14が、700MHz帯から空きチャンネルを検出できない場合に、5.8GHz帯の一部のETC2.0チャンネルのうちのアップリンクチャンネルを対象として、空きチャンネルを検出するようにしてもよい。制御部11及び無線通信部14は、アップリンクチャンネルから空きチャンネルを検出した場合には、空きチャンネルから所定チャンネル(変更チャンネル)を選択し、選択した変更チャンネルを第2の車両の車載通信装置1に通知し、第2の車両の車載通信装置1からの承認応答を受信し、車々間通信を選択した変更チャンネルへ変更する。これにより、チャンネル変更後の情報は第2の車両の車載通信装置1により正しく読み取られる。このように、ETC通信エリアE’へ近接した場合に、車々間通信をアップリンクチャンネルに変更することにより、ETC通信エリアE’内でのETCチャンネルによる通信への干渉を回避することができる。加えて、アップリンクチャンネルを使用することにより、ETCダウンリンクチャンネルへの干渉をより確実に回避することができる。
【0063】
或いは、制御部11及び無線通信部14が、700MHz帯から空きチャンネルを検出できない場合に、5.8GHz帯の一部の高度化情報チャンネルを対象として、空きチャンネルを検出するようにしてもよい。制御部11及び無線通信部14は、高度化情報チャンネルから空きチャンネルを検出した場合には、空きチャンネルから所定チャンネル(変更チャンネル)を選択し、選択した変更チャンネルを第2の車両の車載通信装置1に通知し、第2の車両の車載通信装置1からの承認応答を受信し、車々間通信を選択した変更チャンネルへ変更する。これにより、チャンネル変更後の情報は第2の車両の車載通信装置1により正しく読み取られる。このように、ETC通信エリアE’へ近接した場合に、車々間通信を高度化情報チャンネルに変更することにより、ETC通信エリアE’内でのETCチャンネルによる通信への干渉を回避することができる。加えて、高度化情報チャンネルを使用することにより、ETCダウンリンクチャンネルへの干渉をより確実に回避することができ、且つETCアップリンクチャンネルへの干渉もより確実に回避することができる。
【0064】
制御部11及び無線通信部14が、700MHz帯及び5.8GHz帯(ETCチャンネルを除く)の何れからも空きチャンネルを検出できない場合(ステップST111、NO)、車々間通信を中断する(ステップST112)。例えば、この中断を一時中断として、制御部11及び無線通信部14が、定期的に、空きチャンネルを検索する。制御部11及び無線通信部14が、700MHz帯から空きチャンネルを検出した場合には(ステップST110、YES)、空きチャンネルから所定チャンネル(変更チャンネル)を選択し、選択した変更チャンネルへ車々間通信のチャンネルを変更し(ステップST113)、700MHz帯から空きチャンネルを検出できず(ステップST110、NO)、5.8GHz帯(ETCチャンネルを除く)から空きチャンネルを検出した場合には(ステップST111、YES)、空きチャンネルから所定チャンネル(変更チャンネル)を選択し、選択した変更チャンネルへ車々間通信のチャンネルを変更する(ステップST113)。
【0065】
なお、上記説明では、5.8GHz帯の一部のETCチャンネルが使用されている場合に、通信の切り替え処理へ移行するケースについて説明したが、5.8GHz帯の一部に限らず、5.8GHz帯が使用されている場合に、通信の切り替え処理へ移行するようにしてもよい。この場合、車々間通信が5.8GHz帯から700MHz帯への積極的に変更されることになり、700MHz帯の車々間通信と5.8GHz帯のETC通信とで周波数が大きく異なり、両者の通信の干渉をより確実に回避することができる。
【0066】
なお、緊急情報を検知しない場合には車々間通信を中断し、予告通信装置3のETCアンテナAT4のETC通信エリアE’における通信を優先するようにしてもよい。これにより、車々間通信の干渉を受けることなく、車載通信装置1とETCアンテナAT4とが通信することができ、正しく料金収受を行うことができる。
【0067】
なお、進入状態の判定を下した場合には車々間通信を中断し、予告通信装置3のETCアンテナAT4のETC通信エリアE’における通信を優先するようにしてもよい。これにより、車々間通信の干渉を受けることなく、車載通信装置1とETCアンテナAT4とが通信することができ、正しく料金収受を行うことができる。
【0068】
なお、上記説明では、ここでは、高度化ITS通信の実行状態の一例として、車々間通信の実行状態を挙げて車々間通信の切り替えのケースについて説明したが、車々間通信以外の高度化ITS通信の切り替えにも適用することができる。また、ETC通信エリアE’を対象とした通信の切り替えのケースについて説明したが、ETC通信エリアE’に限らず、DSRCシステムの通信エリアを対象とした通信の切り替にも適用することができる。
【0069】
以上説明した実施形態によれば、ETCやITSスポット等のDSRCシステムへの干渉を与えない高度化ITS通信システムを提供することができる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1…車載通信装置
1a…ETCカード
2…DSRC基地局
3…予告通信装置(基地局)
4…ETC通信装置
5…ETC及び予告通信装置(DSRC基地局)
11…制御部
12…記憶部
14…無線通信部
15…情報入力部
16…情報出力部
17…リーダライタ
18…情報取得部
21…エッジコンピュータ
22…信号処理部
23…無線通信部
41…制御部
42…信号処理部
44…DSRC通信部