IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オリンパス株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】処置具及び処置システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020530796
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2018026988
(87)【国際公開番号】W WO2020016974
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】銅 庸高
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/076100(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/167197(WO,A1)
【文献】特開2007-050181(JP,A)
【文献】国際公開第2011/089769(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/137139(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61B 17/29
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電極として用いられる処置面を有し、高周波エネルギとともに、又は、前記高周波エネルギとは別に、前記高周波エネルギとは異なる他のエネルギが前記処置面に入力され得る第1の処置体と、
前記処置面と協働して処置対象を処置可能な第2の処置体であって、
長手軸に沿って延び電気絶縁性を有する当接部と、
第1の高周波電極として用いられる第1の面と
を有し、前記当接部に対して前記第1の面が前記長手軸に直交する第1の幅方向に隣接し、
前記当接部は、前記第1の処置体の前記処置面に対向し、前記処置面に対して開閉方向に沿って離隔する開状態及び近接する閉状態に相対的に移動可能であり、前記閉状態で前記処置面に当接可能であり、
前記第1の面は、前記開状態及び前記閉状態で前記処置面から離されており、
前記第1の面のうち前記当接部に近接する第1の近接縁と、
前記長手軸から前記第1の幅方向の処置部の第1の側面に向かって、前記当接部に対して離間した第1の外縁と
を有し、
前記第1の面に対し、前記閉状態で、前記開閉方向に直交し前記第1の面の前記第1の近接縁を通る仮想平面を規定したとき、前記仮想平面と前記第1の面との間の距離は、前記第1の近接縁と前記仮想平面との間の距離よりも前記第1の外縁と前記仮想平面との間の距離の方が大きい、
第2の処置体と
を具備する処置具。
【請求項2】
前記第1の面と前記仮想平面との間の距離は、前記第1の近接縁から前記第1の外縁までの間で連続的又は断続的に大きくなる、請求項1に記載の処置具。
【請求項3】
前記第1の面は、平面または曲面により形成されている、請求項1に記載の処置具。
【請求項4】
前記第1の面は、複数の平面により形成されている、請求項1に記載の処置具。
【請求項5】
前記第1の面は、1つ以上の平面及び1つ以上の曲面により形成されている、請求項1に記載の処置具。
【請求項6】
前記第1の近接縁を含む第1の領域と前記第1の外縁を含む第2の領域とが、前記仮想平面との間に形成する傾斜角度は、互いに異なる、請求項1に記載の処置具。
【請求項7】
前記第1の面は、前記第1の近接縁と前記第1の外縁との間に、前記仮想平面と前記第1の面との距離が一定である領域を有する、請求項1に記載の処置具。
【請求項8】
前記当接部は、前記閉状態で、前記第1の面と同等、もしくはそれよりも前記処置面に向かって突出している、請求項1に記載の処置具。
【請求項9】
前記第1の面の前記第1の外縁は、前記閉状態で、前記第1の処置体の前記処置面のうち前記長手軸から離された前記処置部の前記第1の側面に近接する外縁よりも、前記長手軸に対して離されている、請求項1に記載の処置具。
【請求項10】
前記第1の面は、前記第1の近接縁と前記第1の外縁との間の少なくとも一部の断面が線形状態に形成されている、請求項1に記載の処置具。
【請求項11】
前記第1の面は、前記第1の近接縁と前記第1の外縁との間の少なくとも一部の断面が非線形状態に形成されている、請求項1に記載の処置具。
【請求項12】
前記第2の処置体は、前記第1の高周波電極と同電位の第2の高周波電極として用いられる第2の面を有し、
前記当接部に対して前記第2の面は、前記第1の幅方向とは反対方向の第2の幅方向に隣接し、
前記第2の面は、前記開状態及び前記閉状態で前記処置面から離されており、
前記第2の面のうち前記当接部に近接する第2の近接縁と、
前記長手軸から前記第2の幅方向の前記処置部の第2の側面に向かって、前記当接部に対して離間した第2の外縁と
を有し、
前記仮想平面は、前記第2の面の前記第2の近接縁を通り、
前記仮想平面と前記第2の面との間の距離は、前記第2の近接縁と前記仮想平面との間の距離よりも前記第2の外縁と前記仮想平面との間の距離の方が大きい、
請求項1に記載の処置具。
【請求項13】
前記第2の面は、前記第2の近接縁と前記第2の外縁との間に、前記仮想平面と前記第2の面との距離が一定である領域を有する、請求項12に記載の処置具。
【請求項14】
前記当接部は、前記第1の面の前記第1の近接縁に隣接する第1の縁部と、前記第1の近接縁に離隔する第2の縁部と、前記第1の縁部及び前記第2の縁部の間に設けられ前記処置面に向かう方向とは反対方向に窪む窪みを有し、
前記第2の処置体は、前記窪みに、前記第1の面と同電位の高周波電極として用いられる第3の面を有する、請求項1に記載の処置具。
【請求項15】
前記第1の処置体の前記処置面はロッドの一部であり、
前記高周波エネルギとは異なる他のエネルギとして、超音波振動が前記ロッドに入力されたときに、前記第1の処置体の前記処置面には、前記超音波振動を伝達可能であり、
前記ロッドを挿通させるシャフトを具備し、
前記第1の処置体は、前記シャフトに対して固定され、
前記第2の処置体は、前記シャフトに対して移動可能である、請求項1に記載の処置具。
【請求項16】
前記第1の処置体は、前記高周波エネルギとは異なる他のエネルギとして、前記処置面に熱を入力する発熱部を具備する、請求項1に記載の処置具。
【請求項17】
前記第1の処置体が設けられ、前記第2の処置体に対して前記処置面とともに相対的に前記開状態及び前記閉状態に移動可能で、前記閉状態で前記第2の処置体の前記当接部及び前記第1の面に離間する第1のジョーを具備する、請求項1に記載の処置具。
【請求項18】
前記第2の処置体が設けられ、前記第1の処置体に対して前記当接部及び前記第1の面とともに相対的に前記開状態及び前記閉状態に移動可能で、前記閉状態で前記第1の処置体の前記処置面に離間する第2のジョーを具備する、請求項1に記載の処置具。
【請求項19】
請求項1に記載の処置具と、
前記処置具に電気エネルギを出力するエネルギ源と
を有する、処置システム。
【請求項20】
長手軸を有し、高周波電極として用いられる第1の処置面を有し、高周波エネルギとともに、トランスデューサで発生した超音波振動が前記第1の処置面に入力され得る第1の処置体と、
前記第1の処置体に対して回動可能に設けられ、前記第1の処置面と協働して処置対象を処置可能な第2の処置体であって、
前記長手軸に沿って延び電気絶縁性、耐摩擦性、および耐熱性を有する当接部と、
導電性を有し、前記高周波エネルギが入力され得る第2の処置面と
を有し、前記当接部に対して前記第2の処置面が前記長手軸に直交する幅方向に隣接し、
前記当接部は、前記第1の処置体の前記第1の処置面に対向し、前記第1の処置面に対して開閉方向に沿って離隔する開状態及び近接する閉状態に相対的に移動可能であり、前記閉状態で前記第1の処置面に当接可能であり、
前記第2の処置面は、前記開状態及び前記閉状態で前記第1の処置面から離されており、
前記第2の処置面のうち前記当接部に近接する近接縁と、
前記長手軸から前記幅方向の処置部の側面に向かって、前記当接部に対して離間した外縁と
を有し、
前記第2の処置面に対し、前記閉状態で、前記開閉方向に直交し前記第1の処置体の前記長手軸を通る仮想平面を規定したとき、前記仮想平面と前記第2の処置面との間の距離は、前記外縁から前記近接縁側に向かうにつれて小さくなる
第2の処置体と
を具備する処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処置対象に適宜の処置を行うことが可能な処置具、及び、その処置具を有する処置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特開2017-225882号公報には、ヒータと1対の高周波電極とを有する処置部を有する処置具について開示されている。処置部は一対の把持片を有し、一方の第1の把持片には、第1の電極とともにヒータが配設されている。他方の第2の把持片には、第2の電極が配設されている。処置部で処置対象を把持している状態において、第2の把持片は、第1の把持片と協働して、幅方向について、第2の電極の中央から外縁にわたって処置対象に把持圧力を負荷している。
第1の電極と第2の電極との間の処置対象に高周波電流を流すと、処置対象が凝固される。第1の把持片のヒータを発熱させ、その熱を処置対象に伝熱させると、処置対象が切開される。後者の処置を行う場合、第1の電極と第2の電極との間の処置対象に高周波電流を流しても良い。
【0003】
処置具を用いて処置を行う場合、より少ないエネルギで効率的に処置を行うことが求められる。
【発明の概要】
【0004】
この発明は、処置対象を効率的に処置可能な処置具、及び、その処置具を有する処置システムを提供することを目的とする。
【0005】
この発明の一態様に係る処置具は、高周波電極として用いられる処置面を有し、高周波エネルギとともに、又は、前記高周波エネルギとは別に、前記高周波エネルギとは異なる他のエネルギが前記処置面に入力され得る第1の処置体と、前記処置面と協働して処置対象を処置可能な第2の処置体とを備える。第2の処置体は、長手軸に沿って延び電気絶縁性を有する当接部と、第1の高周波電極として用いられる第1の面とを有し、前記当接部に対して前記第1の面が前記長手軸に直交する第1の幅方向に隣接する。前記当接部は、前記第1の処置体の前記処置面に対向し、前記処置面に対して開閉方向に沿って離隔する開状態及び近接する閉状態に相対的に移動可能であり、前記閉状態で前記処置面に当接可能である。前記第1の面は、前記開状態及び前記閉状態で前記処置面から離されており、前記第1の面のうち前記当接部に近接する第1の近接縁と、前記長手軸から前記第1の幅方向の処置部の第1の側面に向かって、前記当接部に対して離間した第1の外縁とを有する。前記第1の面に対し、前記閉状態で、前記開閉方向に直交し前記第1の面の前記第1の近接縁を通る仮想平面を規定したとき、前記仮想平面と前記第1の面との間の距離は、前記第1の近接縁と前記仮想平面との間の距離よりも前記第1の外縁と前記仮想平面との間の距離の方が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る処置具が用いられる処置システムを示す概略図である。
図2図2は、第1実施形態に係る処置具の処置部を閉じた状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図3A図3Aは、第1実施形態に係る処置具の処置部を開いた状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図3B図3Bは、図3A中の符号3Bで示す位置の概略的な拡大図である。
図4図4は、第1実施形態に係る処置具の処置部の第1の把持片と第2の把持片との間で処置対象を把持した状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図5A図5Aは、第1実施形態の第1変形例に係る処置具の処置部の第1の把持片と第2の把持片との間で処置対象を把持した状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図5B図5Bは、図5A中の符号5Bで示す位置の概略的な拡大図である。
図6A図6Aは、第1実施形態の第2変形例に係る処置具の処置部の第1の把持片と第2の把持片との間で処置対象を把持した状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図6B図6Bは、第1実施形態の第3変形例に係る処置具の処置部の第1の把持片と第2の把持片との間で処置対象を把持した状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図7図7は、第1実施形態の第4変形例に係る処置具の処置部の第1の把持片と第2の把持片との間で処置対象を把持した状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図8図8は、第1実施形態の第5変形例に係る処置具の処置部の第1の把持片と第2の把持片との間で処置対象を把持した状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図9図9は、第1実施形態の第6変形例に係る処置具の処置部の第1の把持片と第2の把持片との間で処置対象を把持した状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図10図10は、第2実施形態に係る処置具が用いられる処置システムを示す概略図である。
図11図11は、第2実施形態に係る処置具のシャフトの先端部及び処置部の構成を、処置部の幅方向の一方側から視た状態で示し、一部を処置部の幅方向に垂直又は略垂直な断面で示す概略図である。
図12図12は、第2実施形態に係る処置具のシャフトの先端部及び処置部の構成を、処置部の回動軸に平行又は略平行な方向の一方側から視た状態で示し、シャフトの内部構成を併せて示す概略図である。
図13図13は、第2実施形態に係る処置具の処置部を閉じた状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面(図12中のXIII-XIII線に沿う断面)で概略的に示す断面図である。
図14図14は、第2実施形態に係る処置具の処置部を開いた状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図15図15は、第2実施形態に係る処置具の処置部の第1の把持片と第2の把持片との間で処置対象を把持した状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図16図16は、第2実施形態の第1変形例に係る処置具の処置部の第1の把持片と第2の把持片との間で処置対象を把持した状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
図17図17は、第2実施形態の第2変形例に係る処置具の処置部の第1の把持片と第2の把持片との間で処置対象を把持した状態を、処置部の延設方向に対して略垂直な断面で概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態について説明する。
【0008】
[第1実施形態]
第1実施形態について、図1から図4を用いて説明する。ここでは、超音波振動及び高周波電流を用いて生体組織に処置を行う処置具12について説明する。本実施形態では、後述する処置部26のブレード44に対し、高周波エネルギ(高周波電力)が流されるとともに、または、高周波エネルギが流されるのとは別に、高周波エネルギとは異なる他のエネルギ(第2のエネルギ)として、超音波振動が入力される。
【0009】
処置システム10は、処置具12と、超音波振動を発生させるトランスデューサユニット14と、エネルギ源16とを有する。
【0010】
処置具12は、ハウジング22と、シャフト24と、処置部(エンドエフェクタ)26とを有する。シャフト24の内側には、処置部26の一部として用いられるロッド28が挿通されている。本実施形態では、シャフト24及びロッド28に対し、真っ直ぐの中心軸として長手軸Cを規定する。
【0011】
処置部26は、互いに対して相対的に近接及び離隔可能な、第1の把持片26a及び第2の把持片26bを有する。第1の把持片26aは中心軸となる長手軸Cに沿ってシャフト24の先端から先端側に延出されている。第2の把持片26bは、シャフト24の先端部に対して回動可能に支持されている。処置部26では、第1の把持片26aに対して第2の把持片26bが回動されることで、互いに対して相対的に近接及び離隔する開閉方向が規定される。開閉方向はシャフト24の先端に対する処置部26の延設方向に略直交するなど、長手軸Cに沿う長手方向に対して交差する。
【0012】
処置部26の延設方向が長手軸Cに対して略平行な実施形態では、図2から図3Bの断面は、長手軸Cに沿う長手方向に対して略垂直な断面となる。図2は、第1の把持片26aと第2の把持片26bとの間に処置対象が配置されず、かつ、第2の把持片26bが第1の把持片26aに対して閉じた閉状態を示す。図3Aは、第1の把持片26aと第2の把持片26bとの間に処置対象が配置されず、かつ、第2の把持片26bが第1の把持片26aに対して開いた開状態を示す。ここで、処置部26の延設方向に対して交差し(略垂直で)、かつ、第2の把持片26bの開閉方向に対して交差する(略垂直な)方向を、処置部26の幅方向(矢印W1で示す方向及び矢印W2で示す方向)とする。第1の幅方向W1に対して第2の幅方向W2は反対方向である。
【0013】
第1の把持片26aに長手軸L1を規定する。第2の把持片26bに長手軸L2を規定する。長手軸L1は、第1の把持片26aの幅方向についての中央位置Mを通過する。長手軸L2は、第2の把持片26bの幅方向についての中央位置Mを通過する。第1の把持片26aに対して第2の把持片26bが開状態では、長手軸L1,L2はズレが生じている。長手軸L2は、シャフト24に対して第2の把持片26bが回動するのに伴って、長手軸Cに対して移動する。図2に示す第1の把持片26aに対して第2の把持片26bが閉状態では、長手軸L1,L2は一致する。
【0014】
長手軸L1は仮想的であり、ブレード44の対向面52の中央面52b上にあっても良く、対向面52と非対向面54との間にあっても良い。又は、長手軸L1は、ブレード44の外側にあっても良い。
長手軸L2は仮想的であり、後述するブレード102のパッド部材114の当接部162上にあっても良く、パッド部材114の当接部162の外側にあっても良い。又は、長手軸L2は、パッド部材114の当接部162の内側にあっても良い。
【0015】
第1の把持片26a及び第2の把持片26bの開閉方向は、第1の把持片26aと第2の把持片26bとによって規定される仮想的な運動面Tに沿う。運動面Tは平面であることが好適である。運動面Tは、処置部26の延設方向に略平行で、かつ、第2の把持片26bの開閉方向に対して略平行である。
なお、本実施形態では、処置部26の第1の把持片26a及び第2の把持片26bは、運動面Tに対して対称である。このとき、長手軸L1,L2は、運動面T上にある。
【0016】
処置部26の幅方向は、運動面Tに対して交差する(略垂直である)。本実施形態では、運動面Tは、例えば、第2の把持片26bの基端から先端までの範囲の全体にわたって第2の把持片26bの幅方向についての中央位置Mを通過する。このため、運動面Tは、第2の把持片26bの中央面である。前述のように運動面Tが規定されるため、運動面Tは、処置部26を通過する。
【0017】
シャフト24は導電性を有する材料で形成されている。シャフト24の外周面は、例えばPTFEなど、電気絶縁性を有する素材でコーティングされている。ロッド28は、例えばチタン合金材など、振動伝達性が良好で、かつ、導電性を有する材料で形成されている。シャフト24の内周面とロッド28の外周面との間には例えば電気絶縁性を有するスペーサ(図示せず)などが配設されている。このため、シャフト24とロッド28との間は電気的に絶縁され、シャフト24とロッド28との間に意図せず電流が流されるのが防止されている。
【0018】
シャフト24は、長手軸Cに直交する横断面の外形が円形であるものとする。シャフト24は、パイプ32と、パイプ32に対して長手軸Cに沿って移動する可動部材34とを有する。
【0019】
ロッド28は、ロッド本体42と、ロッド本体42の先端部に設けられたブレード(第1の処置体)44とを有する。ブレード44は、第1の把持片26aとして用いられる。ブレード44はシャフト24の先端から先端側に、長手軸L1に沿って突出している。
【0020】
第1の把持片26aのブレード44の長手軸L1は、一例として、シャフト24の長手軸Cに対して平行又は略平行である。この場合、ブレード44がシャフト24の先端側に略真っ直ぐに延出されている。ブレード44の先端部の長手軸L1は、シャフト24の長手軸Cに対して曲げられていても良い。
【0021】
ブレード44の長手軸L1に直交する断面は、多角形又は略多角形として形成されている。本実施形態では、ブレード44の長手軸L1に直交する断面が、略八角形に形成されている例について説明する。
【0022】
ブレード44は、第2の把持片26bの後述するブレード(第2の処置体)102に対向する対向面(処置面)52を有する。ブレード44は、高周波電極として用いられ、対向面52は電極の処置面(電極面)として用いられる。対向面52は、平面であっても、曲面であっても良い。対向面52は複数の曲面及び/又は平面の組み合わせであっても良い。本実施形態では、対向面52は、3つの面52a,52b,52cを有する。面(第1の近接面)52aは処置部26の後述する第1の側面84aに近接する。面52bは対向面52の幅方向の中央の中央面として形成されている。面(第2の近接面)52cは処置部26の後述する第2の側面84bに近接する。
第1の把持片26aのブレード44は、第2の把持片26bのブレード102に対向しない非対向面54を有する。非対向面54は、平面であっても、曲面であっても良い。非対向面54は複数の曲面及び/又は平面の組み合わせであっても良い。本実施形態では、非対向面54は、5つの平面54a,54b,54c,54d,54eを有する。非対向面54のうちの面54aは、処置部26の第1の側面84aに近接し、対向面52のうちの第1の近接面52aに隣接する。非対向面54のうちの面54eは、処置部26の第2の側面84bに近接し、対向面52のうちの第2の近接面52cに隣接する。非対向面54の平面54cは、非対向面54の幅方向の中央の中央面として形成されているとともに、対向面52の中央面52bの背面として形成されている。非対向面54の平面54cは、第1の把持片26aの背面86aとして形成されている。
非対向面54の5つの面54a,54b,54c,54d,54eは、電気絶縁性及び耐熱性を有する樹脂でコーティングされていることが好適である。
【0023】
第1の把持片26aのブレード44は、第1の外縁56aと第2の外縁56bとを有する。本実施形態では、ブレード44の第1の外縁56aは、対向面52の面52aと、非対向面54の面54aとの境界である。ブレード44の第2の外縁56bは、対向面52の面52cと、非対向面54の面54eとの境界である。
第1の外縁56aは、処置部26の第2の側面84bよりも処置部26の第1の側面84aに近接している。このため、ブレード44の第1の外縁56aは、ブレード44のうち長手軸L1から、運動面Tに沿う開閉方向に直交する第1の幅方向W1に離された処置部26の第1の側面84aに近接する。
第2の外縁56bは、処置部26の第1の側面84aよりも処置部26の第2の側面84bに近接している。このため、ブレード44の第2の外縁56bは、ブレード44のうち長手軸L1から開閉方向に直交する第2の幅方向W2に離された処置部26の第2の側面84bに近接する。
【0024】
本実施形態では、ブレード44の第1の外縁56aと第2の外縁56bとの間の対向面52の中央面52bは、面52a,52cのうち、中央面52bに隣接する領域と協働して、第2の把持片26bのブレード102の後述する当接部162に当接される突部として用いられる。
【0025】
ブレード44の対向面52の第1の近接面52aにおける法線ベクトルN1aを考慮する。第1の近接面52aの法線ベクトルN1aのうち、後述する仮想平面VPに平行な成分は、第1の近接面52aのいずれの位置においても、第1の近接面52aから処置部26の第1の側面84aに向かう。ブレード44の対向面52の第2の近接面52cにおける法線ベクトルN1bを考慮する。第2の近接面52cの法線ベクトルN1bのうち、仮想平面VPに平行な成分は、第2の近接面52cから第2の近接面52cのいずれの位置においても、処置部26の第2の側面84bに向かう。
【0026】
ハウジング22は、中心軸Cに対して交差する方向に延出されるグリップ62を有する。ハウジング22には、可動ハンドル64がグリップ62の先端側に支持されている。可動ハンドル64は、長手軸Cに対してグリップ62が延出された側にある。
【0027】
ハウジング22に対して可動ハンドル64が回動することにより、可動ハンドル64はグリップ62に対して開状態及び閉状態との間を移動する。可動ハンドル64の開動作及び閉動作のそれぞれにおける移動方向は、長手軸Cに沿う長手方向に対して略平行である。
【0028】
可動ハンドル64は、グリップ62の基端側に配置されても良い。可動ハンドル64は長手軸Cに対してグリップ62が位置する側とは反対側にあっても良い。この場合、可動ハンドル64の開動作及び閉動作のそれぞれにおける移動方向は、長手方向に対して交差する。
【0029】
シャフト24の可動部材34の先端部は、第2の把持片26bの基端部を支持している。図示しないが、可動部材34の基端部は、ハウジング22の内部で可動ハンドル64に連結されている。
可動部材34は、可動ハンドル64がグリップ62に対して離隔又は近接するのに応じてパイプ32に対して長手軸Cに沿って移動する。第2の把持片26bは可動部材34の移動に応じて第1の把持片26aに対して回動する。可動ハンドル64がグリップ62に対して離隔すると、第2の把持片26bが第1の把持片26aに対して開く開状態となる。可動ハンドル64がグリップ62に対して近接すると、第2の把持片26bが第1の把持片26aに対して閉じる閉状態となる。
【0030】
ハウジング22の先端側には回転ノブ66が取り付けられている。回転ノブ66はハウジング22に対して長手軸Cの軸回りに回転可能である。シャフト24の基端は、ハウジング22の先端側から回転ノブ66の内側を通してハウジング22の内部に挿入されている。
【0031】
ロッド28の先端部は、ハウジング22の内部からパイプ32の内部を通してパイプ32の先端よりも先端側に向かって延出されている。
【0032】
処置具12のハウジング22の基端側には、超音波振動を発生させるトランスデューサユニット14が着脱可能に連結される。トランスデューサユニット14は、ケース72と、長手軸Cに沿う縦振動の超音波振動を発生させるトランスデューサ74とを有する。
【0033】
ハウジング22の内部では、ロッド28の基端側にトランスデューサ74が接続される。ケース72には、ケーブル76の一端が接続されている。ケーブル76の他端は、エネルギ源16に接続される。
【0034】
本実施形態のエネルギ源16は、トランスデューサ74にエネルギを出力し、トランスデューサ74に超音波振動を発生させる。このとき、トランスデューサ74には、縦振動の超音波振動が発生する。トランスデューサ74で発生した縦振動の超音波振動は、ロッド28の基端に入力され、ロッド28の基端から先端に向かって長手軸Cに沿って伝達される。エネルギ源16がトランスデューサ74に超音波振動を発生させるエネルギを出力すると、第1の把持片26aのブレード44には、処置対象を切開するための振動が伝達される。また、本実施形態のエネルギ源16は、シャフト24及びロッド28を通して、処置部26の第1の把持片26a及び第2の把持片26bの間に把持される処置対象に電気エネルギ(高周波エネルギ)を供給可能である。
エネルギ源16は、例えばハウジング22に設けられた第1のスイッチ16aの押圧に応じて、シャフト24及びロッド28を通して、処置部26の第1の把持片26a及び第2の把持片26bの間に把持される処置対象に電気エネルギ(高周波エネルギ)を供給する。
エネルギ源16は、例えばハウジング22に設けられた第2のスイッチ16bの押圧に応じて、エネルギ源16から、トランスデューサ74に超音波振動を発生させるエネルギを出力する。
ある実施例では、エネルギ源16は、例えばハウジング22に設けられた第2のスイッチ16bの押圧に応じて、エネルギ源16から、シャフト24及びロッド28を通して、処置部26の第1の把持片26a及び第2の把持片26bの間に把持される処置対象に電気エネルギ(高周波エネルギ)を供給するとともに、トランスデューサ74に超音波振動を発生させるエネルギを出力する。
【0035】
本実施形態の処置部26では、処置部26の長手方向についての寸法が、処置部26の開閉方向についての寸法及び処置部26の幅方向の寸法のそれぞれに比べて大きい。処置部26は、第1の把持片26aと第2の把持片26bとが協働して、先端部82a、基端部82b、第1の側面(側部)84a、第2の側面(側部)84b、第1の背面86a及び第2の背面86bを有する。特に、第1の背面86aは第1の把持片26aに形成され、第2の背面86bは第2の把持片26bに形成されている。
【0036】
第1の側面84aは、長手軸L1,L2から、第1の幅方向W1に離されている。第2の側面84bは、長手軸L1,L2から、第1の幅方向W1とは反対方向の第2の幅方向W2に離されている。
【0037】
第2の把持片26bは、ブレード(第2の処置体)102と、ブレード102が設けられたジョー(支持体)104とを有する。ここでは、第2の把持片26bは、ブレード102がジョー104に対して揺動可能なシーソージョー又はワイパージョーであるものとして説明する。ある実施例では、ブレード102がジョー104に対して固定されている。
【0038】
ブレード102は、ブレード44の対向面52に対向している。ブレード102は、電極部材112と、パッド部材114とを備えている。
電極部材112は、導電性を有する材料から形成される。電極部材112は、例えば、アルミニウム合金又はアルミニウムを含む金属から形成される。パッド部材114は、電気的絶縁性を有する材料から形成される。パッド部材114は、縦振動の超音波振動が伝達されるブレード44との間に摩擦が生じ得るため、耐摩擦性及び耐熱性を有する素材が用いられることが好ましい。パッド部材114は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等で形成される。
【0039】
ジョー104は、例えば、シャフト24のパイプ32及び可動部材34にそれぞれ支持される。ジョー104は、第1の把持片26aのブレード44に対して、第2の把持片26bとともに相対的に開状態及び閉状態に移動可能で、開状態及び閉状態のいずれにおいても、第1の把持片26aのブレード44に対して離間する。
【0040】
ジョー104は、シャフト24のパイプ32の先端部への取り付け位置を支点として回動可能である。ジョー104は、金属等の導電性を有する材料から形成される支持部材122と、支持部材122の外表面に取り付けられるカバー124と、を備える。カバー124は、例えば樹脂材等の電気的絶縁性を有する材料から形成される。シャフト24の可動部材34の先端部は、支持部材122に接続される。前述のように可動部材34がパイプ32に対して長手軸Cに沿って移動することにより、ジョー104、及び、ジョー104に設けられたブレード102がシャフト24への取り付け位置を中心として回動し、第2の把持片26bが第1の把持片26aに対して開く又は閉じる。なお、支持部材122において第2の把持片26bの外部への露出部分には、電気絶縁性を有するコーティング等が施される。
【0041】
ジョー104は、背壁132、側壁134a,134b、端縁136a,136b、及び、先端壁137を備える。
背壁132は、処置部26の第2の背面86bを形成する。側壁134aは処置部26の第1の側面84aのうち、第2の把持片26b側の部分を形成する。側壁134bは処置部26の第2の側面84bのうち、第2の把持片26b側の部分を形成する。先端壁137は処置部26の先端部82aの一部を形成する。先端壁137は、第2の把持片26bの先端を形成し、第2の把持片26bの外表面において先端側を向く部位を形成する。
【0042】
背壁132及び側壁134a,134bのそれぞれは、先端壁137から基端側に向かって延設される。背壁132及び側壁134a,134bを通り、かつ、第2の把持片26bの延設方向に略垂直な断面では、ジョー104は、略U字状に形成される。このため、側壁134a,134bは、幅方向について互いに対して離れて配置される。背壁132は、第2の把持片26bにおいて第2の把持片26bが開く側(矢印Y1側)の端、すなわち、第1のブレード44が位置する側とは反対側の端を形成する。そして、背壁132は、第2の把持片26bの外表面において第2の把持片26bが開く側を向く部位、すなわち、第2の把持片26bの背面86bを形成する。
【0043】
側壁(第1の側壁)134aは、幅方向について第2の把持片26bの一端を形成する。側壁(第2の側壁)134bは、幅方向について第2の把持片26bの他端を形成する。側壁134aは、第2の把持片26bの外表面において幅方向の一方側を向く部位、すなわち、第2の把持片26bの一方の側面を形成する。側壁(第1の側壁)134aは、処置部26の第1の側面84aを形成する。
側壁134bは、第2の把持片26bの外表面において幅方向の他方側を向く部位、すなわち、第2の把持片26bの他方の側面を形成する。側壁(第2の側壁)134bは、処置部26の第2の側面84bを形成する。
【0044】
端縁136a,136bは、第2の把持片26bの外表面において、第1の把持片26aを向く部位を形成する。端縁136aは側壁134aに隣接する。端縁136bは側壁134bに隣接する。
【0045】
先端壁137では、支持部材122に先端側からカバー124が取り付けられる。また、背壁132では、支持部材122に第2の把持片26bが開く側からカバー124が取り付けられる。そして、側壁134a,134bのそれぞれでは、支持部材122に対し、幅方向について外側からカバー124が取り付けられる。
【0046】
第2の把持片26bでは、電極部材112が接続ピン126を介してジョー104に取り付けられる。電極部材112及び接続ピン126は、金属等の導電性を有する材料から形成される。電極部材112は、ジョー104の背壁132に対して第1の把持片26aが位置する側、すなわち、第2の把持片26bが閉じる側(矢印Y2側)に設けられる。電極部材112は、ジョー104の側壁134a,134bに対して幅方向の内側に設けられている。電極部材112は、幅方向について、側壁134a,134bの間に配置される。
【0047】
電極部材112は、基台142及び側板144a,144bを備える。ジョー104の背壁132は、電極部材112の基台142に対して第2の把持片26bが開く側に隣接している。第2の把持片26bの開閉方向について基台142と背壁132との間には隙間が形成される。側板144a,144bのそれぞれは、基台142から第2の把持片26bが閉じる側に向かって延設される。第2の把持片26bの延設方向に略垂直な断面では、電極部材112は、基台142及び側板144a,144bによって略U字状に形成される。このため、側板144a,144bは、幅方向について互いに対して離れて配置される。ジョー104の側壁134aは、幅方向について電極部材112の側板144aに対して外側に隣接している。ジョー104の側壁134bは、幅方向について電極部材112の側板144bに対して外側に隣接している。幅方向について側板144aと側壁134aとの間には隙間が形成され、幅方向について側板144bと側壁134bとの間には隙間が形成される。
【0048】
電極部材112の基台142には、基台142を幅方向に貫通する孔146が形成される。ジョー104の側壁134aには、幅方向に沿って孔138aが形成される。ジョー104の側壁134bには、幅方向に沿って孔138bが形成される。ジョー104(支持部材122)と電極部材112との間を接続する接続ピン126は、孔146に挿通され、孔138a,138bのそれぞれに挿入される。接続ピン126は、孔146及び孔138a,138bにおいて幅方向に沿って延設される。電極部材112は、接続ピン126の中心軸を揺動軸Xとして、ジョー104に対して揺動可能(回動可能)である。すなわち、電極部材112は、幅方向に略平行な揺動軸Xを中心として揺動する。
【0049】
揺動軸Xの軸回りについて一方側へ電極部材112が揺動することにより、電極部材112において揺動軸Xに対して先端側の部位は、第1の把持片26aに近づくとともに、ジョー104の背壁132から離れる。この際、電極部材112において揺動軸Xに対して基端側の部位は、第1の把持片26aから離れるとともに、背壁132に近づく。そして、揺動軸Xに対して基端側の部位において電極部材112が背壁132に当接することにより、揺動軸Xの軸回りについて一方側への電極部材112の揺動が規制される。一方、揺動軸Xの軸回りについて他方側へ電極部材112が揺動することにより、電極部材112において揺動軸Xに対して先端側の部位は、第1の把持片26aから離れるとともに、ジョー104の背壁132に近づく。この際、電極部材112において揺動軸Xに対して基端側の部位は、第1の把持片26aに近づくとともに、背壁132から離れる。そして、揺動軸Xに対して先端側の部位において電極部材112が背壁132に当接することにより、揺動軸Xの軸回りについて他方側への電極部材112の揺動が規制される。
【0050】
電極部材112の外表面には、互いに離間した1対の電極面(傾斜面)152,154が形成されている。電極面152,154は、第1の把持片26aが位置する側、すなわち、第2の把持片26bが閉じる側を向く。第1の電極面152及び第2の電極面154は、例えば後述する当接部162の長手軸L2に平行に延出されている。
【0051】
第1の電極面152は、幅方向についてジョー104の側壁134a及び端縁136aに対して隙間を挟んで内側に隣接する。そして、電極部材112が揺動可能な範囲内のいずれの状態においても、第1の電極面152の一部又は全体は、端縁136aに対して、第1の把持片26aが位置する側、すなわち、第2の把持片26bが閉じる側へ突出する。そして、第1の電極面152は、第1の近接面52aに対向する。
【0052】
同様に、第2の電極面154は、幅方向についてジョー104の側壁134b及び端縁136bに対して隙間を挟んで内側に隣接する。そして、電極部材112が揺動可能な範囲内のいずれの状態においても、第2の電極面154の一部又は全体は、端縁136bに対して、第1の把持片26aが位置する側、すなわち、第2の把持片26bが閉じる側へ突出する。そして、第2の電極面154は、第2の近接面52cに対向する。
【0053】
第1の電極面152は高周波電極(第1の高周波電極)の処置面として用いられる。第2の電極面154は高周波電極(第2の高周波電極)の処置面として用いられる。第1の電極面152及び第2の電極面154は電気的に接続され、同電位である。
【0054】
第1の電極面(第1の面)152は、開状態及び閉状態のいずれにおいてもブレード44の対向面52から離されている。第2の電極面(第2の面)154は、開状態及び閉状態のいずれにおいてもブレード44の対向面52から離されている。
【0055】
ここで、第2の把持片26bでは、電極部材112にパッド部材114が固定されている。パッド部材114は、特に、幅方向について電極部材112の外表面の電極面152,154の間に固定されている。パッド部材114は、電極部材112と一緒に、ジョー104に対して揺動可能である。
【0056】
パッド部材114は、電極部材112の基台142に対して第1の把持片26aが位置する側、すなわち、第2の把持片26bが閉じる側に設けられる。また、パッド部材114は、電極部材112の側板144a,144bに対して幅方向の内側に設けられ、幅方向について側板144a,144bの間に配置される。
【0057】
パッド部材114は、電極面152,154の間に、ブレード(第1の処置体)44の対向面52に対向する当接部162を有する。このため、第2の把持片26bのブレード102は、第1の把持片26aの対向面52に対向する面として、当接部162、第1の電極面(第1の面)152及び第2の電極面(第2の面)154を有する。
【0058】
当接部162は電気絶縁性を有する。当接部162は、ブレード44の対向面(処置面)52に対向している。当接部162は、ブレード44の対向面52に対して開閉方向に沿って離隔する開状態及び近接する閉状態に相対的に移動可能である。当接部162は特に、閉状態でブレード44の対向面52に当接可能である。すなわち、閉状態において、第1の把持片26aのブレード44の対向面52の中央面(突部)52bも、幅方向について電極面152,154の間に位置する。したがって、第2の把持片26bの幅方向についての中央位置Mは、パッド部材114の当接部162、及び、ブレード44の対向面52の中央面52bを通過する。
【0059】
当接部162は、中央位置Mから第1の幅方向W1に離れた第1の縁部172aと、中央位置Mから第2の幅方向W2に離れた第2の縁部172bと、中央位置Mが通る中央部174とを有する。第1の縁部172aは、処置部26の第2の側面84bよりも処置部26の第1の側面84aに近接している。このため、当接部162の第1の縁部172aは、当接部162のうち長手軸L2から開閉方向に直交する第1の幅方向W1に離された処置部26の第1の側面84aに近接する。第2の縁部172bは、処置部26の第1の側面84aよりも処置部26の第2の側面84bに近接している。このため、当接部162の第2の縁部172bは、当接部162のうち長手軸L2から開閉方向に直交する第2の幅方向W2に離された処置部26の第2の側面84bに近接する。
【0060】
中央部174は、第1の縁部172aと第2の縁部172bとの間に形成されている。ここでは、中央部174は、第1の把持片26aのブレード44の対向面52の中央部近傍が嵌合される凹状に形成されている。このため、本実施形態では、当接部162の中央部174には、対向面52の3つの面52a,52b,52cが当接される。もちろん、当接部162の中央部174に対し、中央面52bのみが当接される構造であっても良い。
【0061】
第1の電極面152は、長手軸L2に近接する第1の近接縁182aと、第1の近接縁182aよりも長手軸L2に離間し、処置部26の第1の側面84aに近接する第1の外縁182bとを有する。
【0062】
当接部162の第1の縁部172aと第1の電極面152の近接縁182aとの間は、隙間がないことが好ましいが、僅かな隙間はあっても良い。また、当接部162の第1の縁部172aと第1の電極面152の近接縁182aとの間は、段差がないことが好ましいが、僅かな段差はあっても良い。ここでは、当接部162は、第1の把持片26aに対して第2の把持片26bが閉状態で、第1の電極面152と同等、もしくはそれよりも処置面52に向かって突出している。
第1の電極面152は、当接部162の第1の縁部172a又は第1の電極面152の近接縁182aから、処置部26の第1の側面84aに向かって設けられている。本実施形態では、第1の電極面(第1の面)152は、当接部162の第1の縁部172a又は第1の電極面152の近接縁182aと第1の電極面152の外縁182bとの間が平面状に形成されている。このため、ある断面では、電極面152の近接縁182aと第1の電極面152の外縁182bとの間が線形状態に形成されている。
【0063】
第1の電極面152は、幅方向について、処置部26の外側の第1の側面84aに向かうにつれて第1の把持片26aが位置する側から離される状態に、傾斜する。すなわち、電極面152は、幅方向について中央位置Mから離れるにつれて第2の把持片26bが開く側に向かう。
【0064】
ここで、第2の把持片26bのブレード102のパッド部材114の当接部162は、閉状態で、第1の把持片26aのブレード44の対向面52に当接可能である。電極部材112の第1の電極面152に対し、閉状態で、開閉方向に直交し第1の電極面152の第1の近接縁182aを通る仮想平面VPを規定する。仮想平面VPは、閉状態で、長手軸L1,L2上にあることが好適である。すなわち、本実施形態では、仮想平面VPは、運動面Tに直交し、長手軸L1,L2に沿い、第1の電極面152のうち近接縁182aを通る面として規定される。電極部材112の第2電極面154に対し、閉状態で、開閉方向に直交し第2の電極面154の第2の近接縁184aを通る仮想平面は、上述した仮想平面VPに一致する。
仮想平面VP上に仮想点があるものとする。第1の電極面152は、当接部162の第1の縁部172a又は第1の電極面152の近接縁182aと、第1の電極面152の外縁182bとの間にわたって、仮想点が長手軸L2から離され処置部26の第1の側面84aに向かうにつれて仮想平面VPとの距離が大きくなる(離されていく)。図3B中の第1の近接縁182aに近接する位置での仮想平面VPと第1の電極面152との距離Lpよりも、第1の近接縁182aに離隔する位置での仮想平面VPと第1の電極面152との距離Ldの方が大きくなる。第1の近接縁182aと仮想平面VPとの間の距離よりも第1の外縁182bと仮想平面VPとの間の距離の方が大きい。第1の電極面152と仮想平面VPとの間の距離は、第1の近接縁182aから第1の外縁182bまでの間で連続的に大きくなる。
【0065】
第1の電極面(第1の面)152における法線ベクトルN2aを考慮する。第1の電極面152の法線ベクトルN2aのうち、仮想平面VPに平行な成分は、第1の電極面152のいずれの位置においても、第1の電極面152から処置部26の第1の側面84aに向かう。このため、第1の電極面152の法線ベクトルN2aのうち、仮想平面VPに平行な成分が処置部26の中央位置M及び第2の側面84bに向かうことがない。
【0066】
本実施形態では、ブレード44の対向面52の第1の近接面52aにおける法線ベクトルN1a、及び、ブレード102の第1の電極面152における法線ベクトルN2aのうち、仮想平面VPに平行な成分は、処置部26の第1の側面84aに向かう。
【0067】
第2の電極面154は、当接部162の第2の縁部172bから、処置部26の第2の側面84bに向かって設けられている。
【0068】
第2の電極面154は、長手軸L2に近接する第2の近接縁184aと、第2の近接縁184aよりも長手軸L2に離間し、処置部26の第2の側面84bに近接する第2の外縁184bとを有する。
【0069】
当接部162の第2の縁部172bと第2の電極面154の近接縁184aとの間は、隙間がないことが好ましいが、僅かな隙間はあっても良い。また、当接部162の第2の縁部172bと第2の電極面154の近接縁184aとの間は、段差がないことが好ましいが、僅かな段差はあっても良い。第2の電極面154は、当接部162の第2の縁部172b又は第2の電極面154の近接縁184aから、処置部26の第1の側面84aに向かって設けられている。本実施形態では、第2の電極面(第2の面)154は、当接部162の第2の縁部172b又は第2の電極面154の近接縁184aと第2の電極面154の外縁184bとの間が平面状に形成されている。このため、ある断面では、電極面154の近接縁184aと第2の電極面154の外縁184bとの間が線形状態に形成されている。
【0070】
第2の電極面154は、幅方向について、処置部26の外側の第2の側面84bに向かうにつれて第1の把持片26aが位置する側から離される状態に、傾斜する。すなわち、電極面154は、幅方向について中央位置Mから離れるにつれて第2の把持片26bが開く側に向かう。
【0071】
第2の電極面154は、当接部162の第2の縁部172b又は第2の電極面154の近接縁184a)と第2の電極面154の外縁184bとの間にわたって、仮想点が長手軸L2から離され処置部26の第2の側面84bに向かうにつれて仮想平面VPとの距離が大きくなる(離されていく)。第2の近接縁184aと仮想平面VPとの間の距離よりも第2の外縁184bと仮想平面VPとの間の距離の方が大きい。第2の電極面154と仮想平面VPとの間の距離は、第2の近接縁184aから第2の外縁184bまでの間で連続的に大きくなる。
第2の電極面(第2の面)154における法線ベクトルN2bを考慮する。第2の電極面154の法線ベクトルN2bのうち、仮想平面VPに平行な成分は、第2の電極面154のいずれの位置においても、第2の電極面154から処置部26の第2の側面84bに向かう。このため、第2の電極面154の法線ベクトルN2bのうち、仮想平面VPに平行な成分が処置部26の中央位置M及び第1の側面84aに向かうことがない。
【0072】
本実施形態では、ブレード44の対向面52の第2の近接面52cにおける法線ベクトルN1b、及び、ブレード102の第2の電極面154における法線ベクトルN2bのうち、仮想平面VPに平行な成分は、処置部26の第2の側面84bに向かう。
【0073】
閉状態で、第1の電極面152の外縁182bと、ブレード44のうち処置部26の第1の側面84aに向かう第1の外縁56aとを比較する。第1の電極面152の外縁182bは、ブレード44の第1の外縁56aよりも、長手軸L1,L2に対して遠位の位置にある。すなわち、第1の電極面(第1の面)152の外縁182bは、閉状態で、対向面52の第1の外縁56aよりも、長手軸L1,L2に対して離されている。
【0074】
同様に、閉状態で、第2の電極面154の外縁184bと、ブレード44のうち処置部26の第2の側面84bに向かう第2の外縁56bとを比較する。第2の電極面154の外縁184bは、ブレード44の第2の外縁56bよりも、長手軸L1,L2に対して遠位の位置にある。すなわち、第2の電極面(第2の面)154の外縁184bは、閉状態で、対向面52の第2の外縁56bよりも、長手軸L1,L2に対して離されている。
【0075】
第2の把持片26bのブレード102として、電極面152、当接部162及び電極面154が全体として鋭角に形成されていても、直角に形成されていても、鈍角に形成されていても良い。当接部162の第1の縁部172aと第2の縁部172bとの間の幅は、極力小さく形成されることが好ましい。このため、第2の把持片26bのブレード102として、極力鋭利に形成されていることが好ましい。
中央面52b及び当接部162の両者が鋭利であっても、閉状態で中央面52b及び当接部162の両者が当接された状態を維持できるのであれば、そのような形状が許容される。
【0076】
(作用)
処置具12を用いて処置を行う際には、術者は、処置部26を腹腔等の体腔に挿入する。そして、第1の把持片26aと第2の把持片26bとの間に生体組織(例えば血管)等の処置対象を配置し、ハンドル64をグリップ62に対して閉じる。これにより、第2の把持片26bが第1の把持片26aに対して閉じ、第1の把持片26aと第2の把持片26bとの間で処置対象Sが把持される(図4参照)。
【0077】
第1の把持片26aのブレード44の対向面52と、第2の把持片26bのブレード102のパッド部材114の当接部162との間に適度な把持圧力を付与する。第1の把持片26a及び第2の把持片26bが閉状態では、運動面T上で把持圧力により処置対象Sを薄肉化する。このため、本実施形態に係る処置具12を用いる場合、処置対象Sに対して、電極同士でなくても、第1の把持片26aのブレード44と第2の把持片26bのパッド部材114の当接部162との間で適度な把持圧力を付与する。また、第1の把持片26aのブレード44の対向面52に処置対象Sを接触させるとともに、第2の把持片26bの電極部材112の第1の電極面152及び第2の電極面154に処置対象Sを接触させている。
【0078】
この状態で、処置対象に高周波電流を流して処置対象を凝固させる場合、術者は、第1のスイッチ16aを押圧する。システム10は、第1のスイッチ16aの押圧に応じて、エネルギ源16から処置具12に電気エネルギを出力させる。
【0079】
第1の把持片26aのブレード44及び第2の把持片26bの電極部材112は、互いに対して電位の異なる電極として機能する。第1の把持片26aのブレード44と第2の把持片26bの電極部材112との間で把持される処置対象Sを通して高周波電流が流され、高周波電流が処置エネルギとして処置対象Sに付与される。高周波電流に起因して処置対象Sで発生する熱によって、処置対象Sが変性され、処置対象Sの凝固が促進される。すなわち、高周波電流に起因して処置対象Sで発生する熱によって、処置対象Sである血管等が糊化及び接合され、封止される。このため、処置具12は、処置対象を凝固/封止可能(処置可能)である。
このとき、当接部162と対向面(突部)52との間の領域では、処置対象Sである血管は、薄い紙状に乾燥させられる。また、当接部162の第1の縁部172aと対向面52の第1の近接面52aとの間の領域の近傍、及び、当接部162の第2の縁部172bと対向面52の第2の近接面52cとの間の領域の近傍で、血管の内周面同士が密着した状態が維持される。
【0080】
一般に、高周波電流を用いて処置を行う処置具を用いて処置対象となる生体組織を凝固させたり、同様に処置対象となる血管をシールしたりする場合、対向する電極同士が平行な部分又は略平行な部分を有することが必要であると考えられてきた。すなわち、高周波電流を用いる処置具で適宜の処置を行う場合、電極同士の間で処置対象に対して平行又は略平行に圧力を負荷することが必要である、と考えられてきた。
【0081】
ここで、本実施形態に係る処置具12の処置部26、及び、従来の処置具の処置部に対し、同じ条件で、処置対象Sに高周波電流を流し、生体組織を封止する実験を行った。従来の処置具の処置部の第1の処置体は、例えば、本実施形態で説明したブレード44と同様に、高周波電流を流すとともに、超音波振動を伝達可能であるロッド状である。説明の簡略化のため、従来の処置具の処置部の第1の処置体は、例えば、本実施形態で説明したブレード44と同じ外形及び素材のものとした。従来の処置具の処置部の第2の処置体は、例えば、本実施形態で説明したブレード102と同様に、高周波電流を流すことが可能である。
【0082】
本実施形態の処置具12の処置部26は、ブレード102の電極面152,154が上述したような方向に向けられている。このため、第2の把持片26bによって処置対象Sに圧力を加える領域は、主に当接部162に限定されている。そして、本実施形態に係る処置具12の処置部26は、処置対象Sの組織が開閉方向に直交する方向に逃げるため、圧力を加えた領域で処置対象Sが圧力により薄肉になり易い。
【0083】
これに対し、従来の処置具の処置部は、対向する電極同士が平行な部分又は略平行な部分を有する。このため、処置対象に対し、第2の処置体は、当接部だけでなく、電極同士の間でも圧力を加えている。そして、従来の処置具の処置部では、処置対象が当接部近傍に集まり易い。したがって、従来の処置具の処置部では、本実施形態に係る処置具12の処置部26よりも、圧力を加えた領域で処置対象が圧力により薄肉になり難くなる可能性がある。
【0084】
本実施形態に係る処置具12、及び、従来の処置具に対し、同じエネルギ出力条件で高周波電流のみを流して処置対象Sの血管を封止する実験を行った。実験直後の本実施形態に係る処置具12の処置部26のロッド状のブレード44、及び、従来の処置具の処置部のロッド状の第1の処置体の温度、並びに、処置された血管の温度を計測した。
【0085】
処置の終了直後の本実施形態に係るブレード44の温度は、従来の第1の処置体の温度に比べて低くなった。一方、本実施形態に係る処置具12の処置部26で処置したときの処置対象Sの温度は、従来技術に係る処置具の処置部で処置したときの処置対象の温度に比べて高くなった。
【0086】
そして、それぞれ封止した血管に対し、血液を流す実験を行った。血管の封止性能は、血管に血液等の流体を流していったときに流体が流れ始めたときの圧力(流体圧力)を測定することで行われる。本実施形態に係る処置具12を用いたときの血管の封止性能は、従来技術の処置具を用いたときの血管の封止性能よりも高いことが認識された。一例として、実験値では、本実施形態に係る処置具12を用いたときの血管の封止性能の値が1600mmHgであり、従来技術に係る処置具を用いたときの血管の封止性能の値が900mmHgであった。
【0087】
したがって、本実施形態に係る処置具12の処置部26の特に、第2の把持片26bのブレード102を上述したように形成することで、処置対象Sを効率的に温度上昇させることができ、かつ、第1の把持片26aのブレード44の温度上昇を抑制することができる。また、本実施形態に係る処置具12を用いる場合、第1の把持片26aのブレード44の温度上昇を抑制することができるため、効率的に血管の処置対象Sにエネルギが付与される。このため、本実施形態に係る処置具12を用いる場合、従来の処置具を用いる場合に比べて封止に至る速度を速めることができる。さらに、第1の把持片26aのブレード44の温度上昇を抑制することができるため、ブレード44の非対向面54(処置部26の第1の背面86a)の温度上昇を抑制することができる。したがって、本実施形態に係る処置具12を用いる場合、処置中又は処置直後において、ブレード44の非対向面54が周辺組織に接触することによる、周辺組織の侵襲が抑制される。
【0088】
次に、術者が第2のスイッチ16bを押圧したときの例について説明する。
第1の把持片26aのブレード44に超音波振動を伝達して、処置対象を切開する場合、術者は、第2のスイッチ16bを押圧する。システム10は、エネルギ源16から超音波トランスデューサ74に電気エネルギを供給して超音波振動を発生させる。発生した超音波振動は、ロッド28において基端側から先端側に伝達され、第1の把持片26aのブレード44に伝達される。このとき、ロッド28は、所定の周波数範囲のいずれかの周波数で振動する。
【0089】
第1の把持片26aのブレード44に伝達された超音波振動は、処置エネルギとして把持される処置対象Sに付与される。この際、振動する第1の把持片26aと処置対象Sとの間に摩擦熱が発生し、摩擦熱によって処置対象Sは凝固されるとともに、ブレード44の対向面(突起)52とブレード102の当接部162との間で切開される。すなわち、第2の把持片26bのブレード102は、第1の把持片26aのブレード44の対向面(処置面)52と協働して処置対象を切開可能(処置可能)である。
【0090】
上述したように、処置対象Sは、第1の把持片26aのブレード44の対向面52と、第2の把持片26bのブレード102の当接部162とによって、薄肉にされる。このとき、本実施形態に係る処置具12の処置部26は、切開される部分における処置対象の体積を減らしている。このため、ブレード44が超音波振動することによる切開速度が向上するとともに、ブレード44に負荷がかかり難く、ブレード44の温度上昇が抑制される。
【0091】
このため、本実施形態に係る処置具12のブレード44に超音波振動を伝達させて処置対象を切開する場合、同一周波数であっても、超音波振動の振幅を下げることができる。また、液体中で処置を行う場合、ブレード44の長手軸L1に沿う縦振動の超音波振動の振幅を下げ、すなわち、振動速度を下げることで、ミストの発生を抑制することができる。
【0092】
本実施形態に係る処置具12の処置部26は、従来の処置具の処置部よりも、処置対象Sを切開し易くなる。このため、処置対象Sを処置部26に適宜に挟んだ状態で処置具12のブレード44に超音波振動を伝達させたとき、本実施形態に係る処置具12の処置部26は、従来技術の処置具の処置部よりも少ないエネルギで、処置対象Sを切開することができる。このため、処置対象とブレード44との摩擦によっても、従来の第1の処置体よりも、ブレード44の温度上昇が抑制される。
【0093】
なお、第2のスイッチ16bを押圧したとき、システム10は、超音波振動を発生させるとともに、処置対象に高周波電流を流しても良い。このような処置を行う場合、処置対象が電極面152,154に触れている。
上述したように、高周波電流により、ブレード44の温度上昇が抑制されながら、処置対象Sが効率的に温度上昇する。このため、処置対象Sの乾燥が進み易く、ブレード44が超音波振動することによる切開速度がさらに向上する。このとき、処置対象Sの封止性能が良好に維持される。
【0094】
したがって、本実施形態に係る処置具12の処置部26は、従来の処置具の処置部よりも、処置対象Sを切開し易くなる。このため、例えば高周波電流に加えて超音波振動を伝達させたとき、本実施形態に係る処置具12の処置部26は、従来技術の処置具の処置部よりも少ないエネルギで、処置対象Sを切開し易い。このため、処置対象とブレード44との摩擦によっても、従来の第1の処置体よりも、ブレード44の温度上昇が抑制される。
【0095】
本実施形態によれば、高周波エネルギとは異なる超音波振動によるエネルギにより切開処置を行う場合、第1の把持片26aのブレード44の対向面(処置面)52の温度上昇を抑制し、かつ、第2の把持片26bのブレード102の形状を適宜に形成することにより、処置対象Sに効率的にエネルギを負荷可能な処置具12を提供することができる。このため、本実施形態による処置具12を用いることで、少ないエネルギ(量)で、効率的に処置対象に対して切開処置を行うことができる。また、高周波エネルギを用いて処置対象Sを凝固させる場合、処置対象Sに高周波電流を流したときの電極(ブレード44)の温度上昇を抑制し、処置対象Sに効率的にエネルギを負荷可能な処置具12を提供することができる。
【0096】
(第1変形例)
第1変形例について、図5A及び図5Bを参照しながら説明する。第1変形例は第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。本変形例の処置具12の一部と先行する実施形態の処置具12の一部とは、適宜に組み合わせられ得る。これは、以下の変形例についても同様である。
【0097】
上述した第1実施形態では、第1の電極面(第1の面)152の全体が、長手軸L2から処置部26の第1の側面84aに向かうにつれて、仮想平面VPから離され続ける例について説明した。同様に、第2の電極面(第2の面)154の全体が、長手軸L2から処置部26の第2の側面84bに向かうにつれて、仮想平面VPから離され続ける例について説明した。
【0098】
本変形例では、第1の電極面(第1の面)152は、幅方向に沿って、近接縁182aを含む第1の領域186a、外縁182bを含む第2の領域186b、及び、第1の領域186aと第2の領域186bとの間に形成された第3領域186cを有する。
【0099】
第3領域186cは、仮想平面VPに平行である。すなわち、第1の電極面(第1の面)152の一部に、仮想平面VPに平行な領域186cが存在している。このため、図5B中の第3の領域186cについて、第1の近接縁182aに近接する位置と仮想平面VPとの間の距離Lpと、第1の近接縁182aに離隔する位置と仮想平面VPとの間の距離Ldとは、同じである。すなわち、第1の電極面(第1の面)152は、閉状態で、長手軸L2から離され処置部26の第1の側面84aに向かうにつれて、当接部162の第1の縁部172aと第1の電極面(第1の面)152の外縁182bとの間の少なくとも一部の位置で、仮想平面VPとの距離が一定である領域186cを有する。このため、第1の電極面152と仮想平面VPとの間の距離は、第1の近接縁182aから第1の外縁182bまでの間で断続的に大きくなる。
【0100】
仮想平面VPに対する第1の領域186a及び第2の領域186bの傾斜角度は同じであっても良く、異なっていても良い。
【0101】
第1の電極面152をミクロ的に見ると、長手軸L2から処置部26の第1の側面84aに向かうにつれて、仮想平面VPからの距離が一定の領域が存在している。第1の電極面152をマクロ的に見ると、長手軸L2から処置部26の第1の側面84aに向かうにつれて、仮想平面VPから離される状態に形成されている。第1の電極面152の各領域186a,186b,186cの法線ベクトルNp,Nm,Ndのうち、仮想平面VPに平行な成分は、第1の電極面152のいずれの位置においても、存在しない(0である)か、処置部26の第1の側面84aに向かう。このため、第1の電極面152の法線ベクトルNp,Nm,Ndのうち、仮想平面VPに平行な成分が長手軸L2に向かうことがない。
【0102】
同様に、第2の電極面(第2の面)154は、近接縁184aを含む第1の領域188a、外縁184bを含む第2の領域188b、及び、第1の領域188aと第2の領域188bとの間に形成された第3の領域188cを有する。このため、第2の電極面154と仮想平面VPとの間の距離は、第2の近接縁184aから第2の外縁184bまでの間で断続的に大きくなる。
【0103】
第2の電極面154をミクロ的に見ると、長手軸L2から処置部26の第2の側面84bに向かうにつれて、仮想平面VPからの距離が一定の領域が存在している。第2の電極面154をマクロ的に見ると、長手軸L2から処置部26の第2の側面84bに向かうにつれて、仮想平面VPから離される状態に形成されている。第2の電極面154の各領域188a,188b,188cの法線ベクトルN2bのうち、仮想平面VPに平行な成分は、第2の電極面154のいずれの位置においても、存在しない(0である)か、処置部26の第2の側面84bに向かう。このため、第2の電極面154の法線ベクトルN2bのうち、仮想平面VPに平行な成分が長手軸L2に向かうことがない。
【0104】
この変形例の処置具12を用いて処置対象に凝固処置を行う場合、第1のスイッチ16aを押圧すると、第1実施形態で説明した処置具12と同様に、凝固処置を行うことができる。また、この変形例の処置具12を用いて処置対象に切開処置を行う場合、第2のスイッチ16bを押圧すると、第1実施形態で説明した処置具12と同様に、切開処置を行うことができる。
【0105】
なお、第1の電極面152は、第1の近接縁182aから第1の外縁182bに向かって3つの平面186a,186c,186bで形成されている。このため、ある断面では、電極面152の近接縁182aと第1の電極面152の外縁182bとの間が全体として、非線形状態に形成されている。第2の電極面154も同様に、ある断面では、電極面154の近接縁184aと第2の電極面154の外縁184bとの間が全体として、非線形状態に形成されている。
【0106】
(第2変形例)
第2変形例について、図6Aを参照しながら説明する。
第1変形例では、第1の電極面(第1の面)152の一部に、仮想平面VPに平行な領域186cが存在している例について説明した。
【0107】
図6Aに示すように、本変形例では、第1の電極面(第1の面)152は、幅方向に沿って、近接縁182aを含む第1の領域186a、及び、外縁182bを含む第2の領域186bを有する。すなわち、第1の電極面(第1の面)152は、複数の平面状の領域186a,186bを有する。
平面状の領域186a,186bは、仮想平面VPに対する傾斜角度がそれぞれ異なっている。すなわち、第1の近接縁182aを含む第1の領域186aと第1の外縁182bを含む第2の領域186bとが仮想平面VPとの間に形成する傾斜角度は、互いに異なっている。ここでの平面状の領域186a,186b間の境界位置182cの角度は、90°よりも大きく、180°よりも小さい鈍角である。第1の電極面152は、長手軸L2から処置部26の第1の側面84aに向かうにつれて、仮想平面VPから離される状態に形成されている。このため、第1の電極面152と仮想平面VPとの間の距離は、第1の近接縁182aから第1の外縁182bまでの間で連続的に大きくなる。
【0108】
同様に、第2の電極面(第2の面)154は、幅方向に沿って、近接縁184aを含む第1の領域188a、及び、外縁184bを含む第2の領域188bを有する。すなわち、第2の電極面(第2の面)154は、複数の平面状の領域188a,188bを有する。
平面状の領域188a,188bは、仮想平面VPに対する傾斜角度がそれぞれ異なっている。すなわち、第2の近接縁184aを含む第1の領域188aと第2の外縁184bを含む第2の領域188bとが仮想平面VPとの間に形成する傾斜角度は、互いに異なっている。ここでの平面状の領域188a,188b間の境界位置184cの角度は、90°よりも大きく、180°よりも小さい鈍角である。第2の電極面154は、長手軸L2から処置部26の第2の側面84bに向かうにつれて、仮想平面VPから離される状態に形成されている。このため、第2の電極面154と仮想平面VPとの間の距離は、第2の近接縁184aから第2の外縁184bまでの間で連続的に大きくなる。
【0109】
第1の電極面152及び第2の電極面154がこのように形成されていても、第1実施形態で説明した処置具12と同様に、適宜の処置を行うことができる。
【0110】
なお、第1の電極面152は、ここでは2つの領域186a,186bを有する例について説明した。第1の電極面152が3つの平面状の領域を有する場合、第1の電極面152には、符号182cで示される位置とは別に、1つの境界が形成される。このため、第1の電極面152には、2つの境界(2つの角度)が形成される。第1の電極面152は、いずれにしても、長手軸L2から処置部26の第1の側面84aに向かうにつれて、仮想平面VPから離される状態に形成されている。これは、第2の電極面154に2つの境界(2つの角度)が形成される場合も同様である。
【0111】
(第3変形例)
第3変形例について、図6Bを参照しながら説明する。この変形例は第2変形例の更なる変形例である。
【0112】
図6Bに示すように、本変形例では、第1の電極面(第1の面)152は、幅方向に沿って、近接縁182aを含む第1の領域186a、及び、外縁182bを含む第2の領域186bを有する。すなわち、第1の電極面(第1の面)152は、複数の平面状の領域186a,186bを有する。
平面状の領域186a,186bは、仮想平面VPに対する傾斜角度がそれぞれ異なっている。ここでの平面状の領域186a,186b間の境界位置182cの角度は、180°よりも大きく、270°よりも小さい優角である。すなわち、本変形例の第1の電極面152は、第2変形例の第1の電極面152に対して、境界位置182cの角度が異なっている。第1の電極面152は、長手軸L2から処置部26の第1の側面84aに向かうにつれて、仮想平面VPから離される状態に形成されている。このため、第1の電極面152と仮想平面VPとの間の距離は、第1の近接縁182aから第1の外縁182bまでの間で連続的に大きくなる。
【0113】
同様に、第2の電極面(第2の面)154は、幅方向に沿って、近接縁184aを含む第1の領域188a、及び、外縁184bを含む第2の領域188bを有する。すなわち、第2の電極面(第2の面)154は、複数の平面状の領域188a,188bを有する。
平面状の領域188a,188bは、仮想平面VPに対する傾斜角度がそれぞれ異なっている。ここでの平面状の領域188a,188b間の境界位置184cの角度は、180°よりも大きく、270°よりも小さい優角である。すなわち、本変形例の第2の電極面154は、第2変形例の第2の電極面154に対して、境界位置182cの角度が異なっている。第2の電極面154は、長手軸L2から処置部26の第2の側面84bに向かうにつれて、仮想平面VPから離される状態に形成されている。このため、第2の電極面154と仮想平面VPとの間の距離は、第2の近接縁184aから第2の外縁184bまでの間で連続的に大きくなる。
【0114】
第1の電極面152及び第2の電極面154がこのように形成されていても、第1実施形態で説明した処置具12と同様に、適宜の処置を行うことができる。
【0115】
(第4変形例)
第4変形例について、図7を参照しながら説明する。
【0116】
上述した第1実施形態では、第1の電極面(第1の面)152の全体が、長手軸L2から処置部26の第1の側面84aに向かうにつれて、仮想平面VPから平面状に離される例について説明した。同様に、第2の電極面(第2の面)154の全体が、長手軸L2から処置部26の第2の側面84bに向かうにつれて、仮想平面VPから平面状に離される例について説明した。
【0117】
ここでは、第1の電極面(第1の面)152の全体が、長手軸L2から処置部26の第1の側面84aに向かうにつれて、仮想平面VPから曲面状(断面では非線形的)に離されている。すなわち、本変形例では、第1の電極面(第1の面)152は、当接部162の第1の縁部172a又は第1の電極面152の近接縁182aと第1の電極面152の外縁182bとの間が曲面状に形成されている。このため、ある断面では、電極面152の近接縁182aと第1の電極面152の外縁182bとの間が非線形状態に形成されている。
【0118】
第1の電極面(第1の面)152における法線ベクトルN2a(図2及び図3A参照)を考慮する。第1の電極面152の法線ベクトルN2aのうち、仮想平面VPに平行な成分は、第1の電極面152のいずれの位置においても、処置部26の第1の側面84aに向かう。
【0119】
第2の電極面(第2の面)154は、幅方向について、運動面T(中央位置M)に対して第1の電極面(第1の面)152に対して対称に形成されている。第2の電極面(第2の面)154における法線ベクトルN2b(図2及び図3A参照)を考慮する。第2の電極面154の法線ベクトルN2bのうち、仮想平面VPに平行な成分は、第2の電極面154のいずれの位置においても、処置部26の第2の側面84bに向かう。
【0120】
この場合であっても、処置を行う際、第1実施形態及び第1変形例で説明したのと同様に、従来の処置具に比べて良好な処置性能を発揮させることができる。
【0121】
第1の電極面152及び第2の電極面154は、凹状の曲面とした例について説明した。図示しないが、第1の電極面152及び第2の電極面154は凸状の曲面であっても良い。
図示しないが、第1の電極面152は、長手軸L2から処置部26の第1の側面84aに向かうにつれて、仮想平面VPから平面状に離されている部位と、曲面状に離されている部分とが組み合わせられても良い。すなわち、第1の電極面152は、1つ以上の平面及び1つ以上の曲面により形成されていることが好適である。
同様に、第2の電極面154は、長手軸L2から処置部26の第2の側面84bに向かうにつれて、仮想平面VPから平面状に離されている部位と、曲面状に離されている部分とが組み合わせられても良い。すなわち、第2の電極面154は、1つ以上の平面及び1つ以上の曲面により形成されていることが好適である。
【0122】
(第5変形例)
第5変形例について、図8を参照しながら説明する。
【0123】
図8に示すように、パッド部材114の当接部162は、第1実施形態で説明したように、中央位置Mから第1の幅方向W1に離れた第1の縁部172aと、中央位置Mから第2の幅方向W2に離れた第2の縁部172bと、中央位置Mが通る中央部174とを有する。
【0124】
中央部174は、第1の縁部172aと第2の縁部172bとの間に形成されている。本変形例では、中央部174は、凹状でなく、第1の縁部172a及び第2の縁部172bと面一の平面状に形成されている。このため、本変形例では、当接部162の中央部174には、対向面52の中央面52bが当接され得る。
【0125】
図8中の第1の電極面152及び第2の電極面154は、図7に示す例と同様の形状に図示しているが、図2図4図5A図5B図6A図6Bに示す形状であっても良いことはもちろんである。
【0126】
(第6変形例)
第6変形例について、図9を参照しながら説明する。
【0127】
上述した例では、第2の把持片26bの当接部162の第1の縁部172aが、電極部材112の第1の電極面152の近接縁182aよりも、開閉方向に沿って処置部26の第2の背面86bに対して遠位にある例について説明した。
【0128】
図9に示すように、当接部162の第1の縁部172aが電極部材112の第1の電極面152の近接縁182aよりも、開閉方向に沿って処置部26の第2の背面86bに対して等距離にあっても、近位にあっても良い。同様に、当接部162の第2の縁部172bが電極部材112の第2の電極面154の近接縁184aよりも、開閉方向に沿って処置部26の第2の背面86bに対して等距離にあっても、近位にあっても良い。このため、本変形例では、電極面152の近接縁182aと電極面154の近接縁184aとを通る仮想平面VPは、当接部162を含むパッド部材114に対して交差していなくても良い。
【0129】
図9に示す第2の把持片26bのパッド部材114の中央部174には、窪み(凹み)176が形成されている。すなわち、当接部162は、第1の縁部172aと第2の縁部172bとの間に、第1の把持片26aのブレード44の対向面52に向かう方向とは反対方向に窪む窪み176を有する。
【0130】
第2の把持片26bのブレード102は、窪み176に、第1の電極面152及び第2の電極面154と同電位の高周波電極として用いられる電極面(第3の面)156を有する。
【0131】
処置対象Sが第1の把持片26aと第2の把持片26bとの間に把持された状態で、高周波電流が流される前、又は、高周波電流が流されている間に、処置対象Sが窪み176にある電極面156に接触することがある。処置対象Sが電極面156に接触すると、第1の電極面152と対向面52との間、第2の電極面154と対向面52との間だけでなく、電極面156と対向面52との間にも電流が流される。
【0132】
この場合であっても、処置を行う際、第1実施形態、第1から第5変形例で説明したのと同様に、従来の処置具に比べて良好な処置性能を発揮させることができる。
【0133】
なお、第1の電極面152の第1の近接縁182a及び第2の電極面154の第2の近接縁184aと、当接部162の第1の縁部172a及び第2の縁部172bとの位置関係は、第1から第5変形例で説明した処置具12に対しても用いられ得る。
【0134】
電極面156は、第1実施形態、第1から第5変形例で説明したブレード102についても同様に用いられ得る。
【0135】
[第2実施形態]
第2実施形態について、図10から図15を用いて説明する。第2実施形態は、各変形例を含む第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。本実施形態の処置具312の一部と先行する実施形態の処置具12の一部とは、適宜に組み合わせられ得る。これは、以下の変形例についても同様である。
【0136】
ここでは、熱及び高周波電流を用いて生体組織に処置を行う処置具312について説明する。本実施形態では、後述する処置部326のブレード(第1の処置体)344に対し、高周波エネルギが流されるとともに、または、高周波エネルギが流されるのとは別に、高周波エネルギとは異なる他のエネルギ(第2のエネルギ)として、発熱部(ヒータ)344cからの熱が入力される。
【0137】
処置システム10は、処置具312と、エネルギ源16とを有する。
処置具312は、ケーブル376を介してエネルギ源16に、取り外し可能に接続される。処置具312は、ハウジング22と、筒状のシャフト(シース)24と、処置部(エンドエフェクタ)326とを有する。本実施形態では、処置部326の後述する中継部328に対し、真っ直ぐの中心軸として長手軸Cを規定する。
【0138】
エネルギ源16には、フットスイッチ等の操作装置318が電気的に接続される。操作装置318は複数のペダルを有することが好適である。操作装置318では、エネルギ源16から処置具312に電気エネルギを出力させる操作が、入力される。なお、ある実施例では、処置具312とは別体で操作装置318を設ける代わりに、又は、処置具312とは別体の操作装置318に加えて、処置具312のハウジング22等に取り付けられる操作スイッチ(図示せず)等が、操作装置として設けられる。そして、処置具312に取り付けられる操作装置で、エネルギ源16から処置具312に電気エネルギを出力させる操作が、入力される。
【0139】
本実施形態では、グリップ62には、ケーブル376の一端が接続される。ケーブル376の他端は、エネルギ源16に取り外し可能に接続される。
【0140】
図11及び図12は、シャフト24の先端部及び処置部326の構成の一例を示す図である。図11及び図12に示すように、処置部326は、基端及び先端を有し、基端から先端まで長手方向(矢印E1及び矢印E2で示す方向)に沿って延設される。処置部326は、シャフト24の先端部に連結される。処置部326は、シャフト24との連結位置を中心として、すなわち、回動軸Rの軸回りに、シャフト24に対して回動可能である。処置部326が回動軸Rの軸回りにシャフト24に対して回動することにより、処置部326がシャフト24及び長手軸Cに対して屈曲する。なお、処置部326がシャフト24に対して屈曲していない状態では、処置部326の長手方向は、シャフト24の軸方向に対して平行又は略平行になり、長手軸Cに対して平行又は略平行になる。
【0141】
ここで、回動軸Rは、処置部326の長手方向に対して交差する(垂直又は略垂直な)方向に沿って、延設される。また、処置部326の屈曲方向(矢印W1及び矢印W2で示す幅方向と同じ方向)は、処置部326の長手方向に対して交差し(垂直又は略垂直で)、かつ、回動軸Rに対して交差する(垂直又は略垂直である)。そして、本実施形態では、処置部326の屈曲方向は、処置部326の幅方向に対して、平行又は略平行である。なお、図11は、処置部326の幅方向の一方側から視た状態を示し、一部を処置部326の幅方向に垂直又は略垂直な断面で示す。図12は、処置部326の回動軸Rに平行又は略平行な方向の一方側から視た状態を示し、シャフト24の内部構造も併せて示す。
【0142】
本実施形態では、ハウジング22に、操作部材として操作ダイヤル368が取り付けられる。1対の長尺部材332a,332bが、長手軸Cに沿って、すなわち、シャフト24の軸方向に沿って延設される。長尺部材332a,332bのそれぞれの先端は、処置部326に接続される。操作ダイヤル368に操作が入力されることにより、ハウジング22の内部の駆動力伝達機構(図示しない)等を介して駆動力が長尺部材332a,332bに伝達され、長尺部材332a,332bのそれぞれがシャフト24に対して長手軸Cに沿って移動する。これにより、処置部326は、回動軸Rを中心として回動し、処置部326がシャフト24に対して屈曲動作を行う。
【0143】
処置部326は、筒状の中継部328及び1対の把持片26a,26bを備える。中継部328は、シャフト24の先端部に、回動軸Rの軸回りに回動可能に取り付けられる。1対の把持片26a,26bは、互いに対して開閉可能である。把持片26a,26bの一方は、中継部328に回動可能に取り付けられる。ある実施例では、把持片26a,26bの他方は、中継部328と一体に形成される、又は、中継部328に固定される。別のある実施例では、把持片26a,26bの他方も、中継部328に回動可能に取り付けられる。別のある実施例では、中継部328の先端から先端側へ突出するロッド部材(図示しない)が設けられる。そして、ロッド部材において中継部328からの突出部分が、把持片26a,26bの他方を形成する。
【0144】
本実施形態では、把持片26a,26bの開閉方向(矢印Y1及び矢印Y2で示す方向)、すなわち、処置部326の開動作及び閉動作での把持片26a,26bの移動方向は、処置部326の長手方向に対して交差し(垂直又は略垂直で)、かつ、処置部326の屈曲方向に対して交差する(垂直又は略垂直である)。そして、把持片26a,26bの開閉方向(処置部326の開閉方向)は、回動軸Rと平行又は略平行である。
【0145】
シャフト24の内部又は外部には、可動部材334aが、シャフト24の軸方向に沿って延設される。可動部材334aの基端部は、ハウジング22の内部においてハンドル64に連結される。可動部材334aの先端は、リンク機構334bを介して、処置部326に接続される。したがって、リンク機構334bは、処置部326と可動部材334aとの間を接続する。リンク機構334bが設けられるため、シャフト24に対して処置部326が屈曲すると、処置部326は、可動部材334aに対しても屈曲する。
【0146】
ハンドル64がグリップ62に対して開く又は閉じることにより、シャフト24の軸方向に沿って可動部材334aが移動する。これにより、可動部材334aからの駆動力がリンク機構334bを介して処置部326に伝達され、1対の把持片26a,26bが互いに対して開く又は閉じる。把持片26a,26bが互いに対して閉じることにより、把持片26a,26bの間で、組織等を挟むことが可能になる。
【0147】
シャフト24の軸方向について可動部材334aがいずれの位置に位置する状態でも、シャフト24は、リンク機構334bが延設される範囲において、処置部326に連結される。すなわち、シャフト24の軸方向に沿う方向について可動部材334aがいずれの位置に位置する状態でも、リンク機構334bが延設される範囲に、シャフト24への処置部326の連結位置が、位置する。
【0148】
なお、ある実施例では、処置部326がシャフト24に対して屈曲不可能である。この場合、リンク機構334bが設けられず、シャフト24の先端は、直接的に処置部326に接続される。このときは、中継部328の長手軸Cは、シャフト24の長手軸に一致する。
この場合、操作ダイヤル368及び長尺部材332a,332bが設けられず、処置部326の長手方向は、常時、シャフト24の軸方向に対して平行又は略平行になる。本実施例では、把持片26a,26bの一方は、シャフト24の先端部に回動可能に取り付けられる。把持片26a,26bの他方は、シャフト24と一体に形成されてもよく、シャフト24に固定されてもよい。また、把持片26a,26bの他方も、シャフト24に回動可能に取り付けられてもよい。
【0149】
本実施形態の処置部326では、処置部326の長手方向についての寸法が、処置部326の開閉方向についての寸法及び処置部326の幅方向の寸法のそれぞれに比べて大きい。処置部326の長手方向について、第1の把持片26a及び第2の把持片26bのそれぞれの寸法は、同一又は略同一である。処置部326の幅方向について、第1実施形態の処置部26とは異なり、第1の把持片26a及び第2の把持片26bのそれぞれの寸法は、同一又は略同一である。
【0150】
処置部326は、第1の把持片26aと第2の把持片26bとが協働して、先端部382a、基端部382b、第1の側面(側部)384a、第2の側面(側部)384b、第1の背面386a及び第2の背面386bを有する。特に、第1の背面386aは第1の把持片26aに形成され、第2の背面386bは第2の把持片26bに形成されている。
本実施形態では、第1の把持片26a及び第2の把持片26bの幅は略同一である。このため、第1の側面384aは、第1の把持片26aのジョー346及び/又はブレード344の基台344dのうち、運動面Tから第1の幅方向W1の方向に最も離された位置と、第2の把持片26bのジョー404及び/又はブレード402の基台414のうち、運動面Tから第1の幅方向W1の方向に最も離された位置とを結ぶ仮想線により規定される。同様に、第2の側面384bは、第1の把持片26aのジョー346及び/又はブレード344の基台344dのうち、運動面Tから第2の幅方向W2の方向に最も離された位置と、第2の把持片26bのジョー404及び/又はブレード402の基台414のうち、運動面Tから第2の幅方向W2の方向に最も離された位置とを結ぶ仮想線により規定される。
【0151】
図13及び図14は、処置部326の長手方向に対して垂直又は略垂直な断面を示す。処置部326の第1の把持片26a及び第2の把持片26bは、相対的に開閉可能である。
【0152】
第1の把持片26aは、ブレード(第1の処置体)344と、ブレード344が設けられたジョー(支持体)346とを有する。ジョー346には、第2の把持片26bが位置する側から、ブレード344が取り付けられる。第1の把持片26aでは、ブレード344は、ジョー346と一緒に、第2の把持片26bに対して相対的に開閉可能である。
【0153】
第2の把持片26bは、ブレード(第2の処置体)402と、ブレード402が設けられたジョー(支持体)404とを有する。ジョー404には、第1の把持片26aが位置する側から、ブレード402が取り付けられる。第2の把持片26bでは、ブレード402は、ジョー404と一緒に、第1の把持片26aに対して相対的に開閉可能である。
【0154】
処置部326は、第1の把持片26aに対して第2の把持片26bが回動されることで、互いに対して相対的に近接及び離隔する開閉方向が規定される。開閉方向は中継部328の先端に対する処置部326の延設方向に略直交するなど、長手軸Cに沿う長手方向に対して交差する。
【0155】
なお、第1実施形態で説明したのと同様に、第1の把持片26aに対して第2の把持片26bが開状態(図14参照)では、長手軸L1,L2はズレが生じている。長手軸L2は、中継部328に対して第2の把持片26bが回動するのに伴って、長手軸Cに対して移動する。図13に示す第1の把持片26aに対して第2の把持片26bが閉状態では、長手軸L1,L2は一致する。
【0156】
ブレード(第1の処置体)344は、電極部材344aと、電極部材344aの背面に設けられた電気絶縁性を有する接着層344bと、接着層344bの背面に設けられた発熱部344cと、電極部材344a及び発熱部344cとジョー(第1のジョー)346の間に設けられた基台344dと、基台344dとジョー346との間に設けられたヒートシンク344eとを有する。
【0157】
電極部材344aは、処置部326の長手方向について第1の把持片26aの基端部から先端部までの範囲にわたって、連続して延設される。電極部材344aは、導電性を有するとともに、熱伝導率が高い。電極部材344aは、例えば、アルミニウム合金又はアルミニウムを含む金属から形成される。
【0158】
基台344d、ヒートシンク344e及びジョー346のそれぞれは、処置部326の長手方向について第1の把持片26aの基端部から先端部までの範囲にわたって、連続して延設される。ブレード344では、ヒートシンク344eは、ジョー346が開く側(ジョー346の背面側)から基台344dに取り付けられる。そして、ジョー346は、ジョー346が開く側から基台344d及びヒートシンク344eに取り付けられる。ジョー346は、ジョー346の外表面においてジョー346が開く側を向く背面386aを形成する。基台344dには、ジョー346が閉じる側、すなわち、ブレード402が位置する側から、電極部材344aが取り付けられる。
【0159】
基台344dは、電気的絶縁性を有し、電極部材344aに比べて熱伝導率が低い。基台344dは、例えば、液晶ポリマー(LCP)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の樹脂から形成される。ヒートシンク344eは、基台344dに比べると熱伝導率が高く、基台344dを介して伝達された熱をジョー346の基端側へ熱伝達する。ヒートシンク344eは、例えば、アルミニウム又は銅等の熱伝導率が高い金属等によって形成される。また、ジョー346は、金属から形成される。なお、第1の把持片26aの第1の背面386aを含むジョー346の露出部分には、電気的絶縁性を有するコーティングが施されたり、又は、電気的絶縁性を有する材料がオーバーモールドされたりしていることが好ましい。
【0160】
電極部材344aは、第2の把持片26bのブレード402に向かって突出する突起(対向面)352を備える。突起352は、ジョー(第1のジョー)346が閉じる側Y2に向かって突出する。また、突起352は、処置部326の長手方向についてジョー346の基端部から先端部までの範囲にわたって、連続して延設される。また、電極部材344aは、突起352が突出する側Y2とは反対側Y1を向く電極背面354を備える。電極背面354は、ジョー346が開く側を向き、外部に露出しない。また、基台344dは、電極部材344aの電極背面354に取り付けられ、基台344dと電極部材344aの電極背面354との間には、空洞355が形成される。電極背面354及び空洞355のそれぞれは、処置部326の長手方向についてジョー346の基端部から先端部までの範囲にわたって、連続して延設される。
【0161】
空洞355には、ヒータ等の発熱部344cが配置される。発熱部344cは、ヒータ線(図示しない)を有し、ヒータ線は、例えば、ステンレス鋼材、プラチナ及びタングステン等の導電性を有する材料から形成される。発熱部344cは、接着層344bを介して、電極部材344aの電極背面354に取り付けられる。接着層344bによって、発熱部344cは、電極部材344aに対して電気的に絶縁される。発熱部344c及び接着層344bのそれぞれは、処置部326の長手方向についてジョー346の基端部から先端部までの範囲にわたって、連続して延設される。
【0162】
第1の把持片26aは、運動面T(中央位置M)を中心として、幅方向について、対称又は略対称になる。本実施形態では、運動面Tは、突起352及び発熱部344cを通過する。電極部材344aも、中央位置Mを中心として、対称又は略対称になる。
【0163】
突起352は、平面であっても、曲面であっても良い。突起352は複数の曲面及び/又は平面の組み合わせであっても良い。本実施形態では、突起352は、3つの面352a,352b,352cを有する。面(第1の近接面)352aは処置部326の後述する第1の側面384aに近接する。面352bは突起352の幅方向の中央の中央面として形成されている。面(第2の近接面)352cは処置部326の後述する第2の側面384bに近接する。
【0164】
なお、基台344dは、互いに離間した1対の対向面(絶縁面)348a,348bを備える。図13から図15中、対向面348aと第1の近接面352aとが面一に形成され、対向面348bと第2の近接面352cとが面一に形成されている。
第1の把持片26aのブレード344の電極部材344aは、第1の外縁356aと第2の外縁356bとを有する。本実施形態では、第1の外縁356aは、突起352の第1の近接面352aと、基台344dの対向面348aとの境界である。第1の把持片26aのブレード344の電極部材344aの第2の外縁356bは、突起352の面352cと、基台344dの対向面348bとの境界である。
第1の外縁356aは、処置部326の第2の側面384bよりも処置部326の第1の側面384aに近接している。このため、ブレード344の第1の外縁356aは、ブレード344のうち長手軸L1から、運動面Tに沿う開閉方向に直交する第1の幅方向W1に離された処置部326の第1の側面384aに近接する。
第2の外縁356bは、処置部326の第1の側面384aよりも処置部326の第2の側面384bに近接している。このため、ブレード344の第2の外縁356bは、ブレード344のうち長手軸L1から開閉方向に直交する第2の幅方向W2に離された処置部326の第2の側面384bに近接する。
【0165】
本実施形態では、ブレード344の第1の外縁356aと第2の外縁356bとの間の突起352の中央面352bは、面352a,352cのうち、中央面352bに隣接する領域と協働して、第2の把持片26bのブレード402の後述する当接部(当接面)462に当接される突部として用いられる。
【0166】
ブレード402は、電極部材412と、基台414とを備えている。
基台414及びジョー(第2のジョー)404のそれぞれは、処置部326の長手方向についてジョー404の基端部から先端部までの範囲にわたって、連続して延設される。ジョー404は、ジョー404が開く側から基台414に取り付けられる。ジョー404は、ジョー404の外表面においてジョー404が開く側を向く第2の背面386bを形成する。また、基台414には、例えば、ジョー404が閉じる側、すなわち、ブレード344が位置する側から、電極部材412が取り付けられる。電極部材412は、処置部326の長手方向について第2の把持片26bの基端部から先端部までの範囲にわたって、連続して延設される。電極部材412は、導電性を有する材料から形成される。
【0167】
基台414は、電気的絶縁性を有し、電極部材412に比べて熱伝導率が低い。基台414は、例えば樹脂から形成される。ジョー404は、金属から形成される。なお、第2の背面386bを含むジョー404の露出部分には、電気的絶縁性を有するコーティングが施されたり、又は、電気的絶縁性を有する材料がオーバーモールドされたりしていることが好ましい。
【0168】
基台(第2の台)414は、電極部材(第1の電極)344aの突起352が当接可能な当接部462を備える。当接部462は、突起352と対向する。本実施形態では、当接部462は、ジョー404の開閉方向に対して交差する(垂直又は略垂直である)。
【0169】
基台414は、互いに離間した1対の傾斜面(絶縁面)464a,464bを有する。傾斜面464aは、後述する電極面452よりも、第1の幅方向W1に沿って、処置部326の第1の側面384aに近接する位置にある。傾斜面464a及び電極面452は互いに平行であっても良く、傾斜していても良い。傾斜面464bは、後述する電極面454よりも、第2の幅方向W2に沿って、処置部326の第2の側面384bに近接する位置にある。傾斜面464b及び電極面454は互いに平行であっても良く、傾斜していても良い。
電極部材(第2の電極)412は、互いに離間した1対の電極面(傾斜面)452,454を備える。電極面452,454は、第1の把持片26aが位置する側、すなわち、第2の把持片26bが閉じる側を向く。電極面452,454は電気的に接続され、同電位である。
電極部材412の第1の電極面452に対し、閉状態で、開閉方向に直交し第1の電極面452の第1の近接縁482aを通る仮想平面VPを規定する。仮想平面VPは、閉状態で、長手軸L1,L2上にあることが好適である。すなわち、本実施形態では、仮想平面VPは、運動面Tに直交し、長手軸L1,L2に沿い、第1の電極面452のうち近接縁482aを通る面として規定される。電極部材412の第2電極面454に対し、閉状態で、開閉方向に直交し第2の電極面454の第2の近接縁484aを通る仮想平面は、上述した仮想平面VPに一致する。
【0170】
基台414は、電極面452,454の背面、すなわち、電極面452,454においてブレード344が位置する側とは反対側の端面に、取り付けられる。電極面452,454は、当接部462を間に挟んで配置され、ジョー404の幅方向について互いに対して離れて配置される。このため、電極面452は、ジョー404の幅方向について当接部462の一方側に隣接する。そして、電極面454は、ジョー404の幅方向について当接部462の他方側に隣接する。当接部462及び電極面452,454のそれぞれは、処置部326の長手方向についてジョー404の基端部から先端部までの範囲にわたって、連続して延設される。そして、第1の把持片26a及び第2の把持片26bの間に組織が存在しない状態で第1の把持片26a及び第2の把持片26bを互いに対して閉じた場合、処置部326の基端部から先端部までの範囲にわたって、突起352が当接部462に当接する。
【0171】
第1の電極面452は、処置部326の第1の側面384aに対して幅方向の内側にある。第1の電極面452は、第1の把持片26aが位置する側、すなわち、第2の把持片26bが閉じる側へ突出する。同様に、第2の電極面454は、処置部326の第2の側面384bに対して幅方向の内側にある。第2の電極面454は、第1の把持片26aが位置する側、すなわち、第2の把持片26bが閉じる側へ突出する。
【0172】
第1の電極面(第1の面)452は、開状態及び閉状態のいずれにおいてもブレード344の突起(対向面)352から離されている。第2の電極面(第2の面)454は、開状態及び閉状態のいずれにおいてもブレード344の対向面352から離されている。
第1の電極面(第1の面)452の第1の近接縁482aと仮想平面VPとの間の距離よりも第1の外縁482bと仮想平面VPとの間の距離の方が大きい。図13から図15に示す例では、第1の電極面452と仮想平面VPとの間の距離は、第1の近接縁482aから第1の外縁482bまでの間で連続的に大きくなる。
同様に、第2の電極面(第2の面)454の第1の近接縁484aと仮想平面VPとの間の距離よりも第2の外縁484bと仮想平面VPとの間の距離の方が大きい。図13から図15に示す例では、第2の電極面452と仮想平面VPとの間の距離は、第2の近接縁484aから第2の外縁484bまでの間で連続的に大きくなる。
【0173】
第2の把持片26bの基台414は、電極面452,454の間に、ブレード344の突起352に対向する当接部462を有する。このため、第2の把持片26bのブレード402は、第1の把持片26aの突起352及び1対の対向面348a,348bに対向する面として、当接部462、第1の電極面(第1の面)452、第2の電極面(第2の面)454、及び、1対の傾斜面464a,464bを有する。
【0174】
当接部462は電気絶縁性を有する。当接部462は、ブレード344の突起(処置面)352に対向している。当接部462は、ブレード344の突起352に対して開閉方向に沿って離隔する開状態及び近接する閉状態に相対的に移動可能である。当接部462は特に、閉状態でブレード344の突起352に当接可能である。すなわち、閉状態において、第1の把持片26aのブレード344の突起352の中央面(突部)352bも、幅方向について電極面452,454の間に位置する。したがって、第2の把持片26bの幅方向についての運動面T(中央位置M)は、当接部462、及び、ブレード344の突起352の中央面352bを通過する。
【0175】
当接部462は、中央位置Mから第1の幅方向W1に離れた第1の縁部472aと、中央位置Mから第2の幅方向W2に離れた第2の縁部472bと、運動面Tが通る中央部474とを有する。第1の縁部472aは、処置部326の第2の側面384bよりも処置部326の第1の側面384aに近接している。このため、当接部462の第1の縁部472aは、当接部462のうち長手軸L2から開閉方向に直交する第1の幅方向W1に離された処置部326の第1の側面384aに近接する。第2の縁部472bは、処置部326の第1の側面384aよりも処置部326の第2の側面384bに近接している。このため、当接部462の第2の縁部472bは、当接部462のうち長手軸L2から開閉方向に直交する第2の幅方向W2に離された処置部326の第2の側面384bに近接する。
【0176】
中央部474は、第1の縁部472aと第2の縁部472bとの間に形成されている。ここでは、中央部474は、第1の把持片26aのブレード344の突起352の中央部近傍が当接される平面状に形成されている。このため、本実施形態では、当接部462の中央部474には、突起352の3つの面352a,352b,352cが当接される。もちろん、当接部462の中央部474に対し、中央面352bのみが当接される構造であっても良い。
【0177】
第1の電極面452は、長手軸L2に近接する第1の近接縁482aと、第1の近接縁482aよりも長手軸L2に離間し、処置部326の第1の側面384aに近接する第1の外縁482bとを有する。
【0178】
当接部462の第1の縁部472aと第1の電極面452の近接縁482aとの間は、隙間がないことが好ましいが、僅かな隙間はあっても良い。また、当接部462の第1の縁部472aと第1の電極面452の近接縁482aとの間は、段差がないことが好ましいが、僅かな段差はあっても良い。第1の電極面452は、当接部462の第1の縁部472a又は第1の電極面452の近接縁482aから、処置部26の第1の側面384aに向かって設けられている。本実施形態では、第1の電極面(第1の面)452は、当接部462の第1の縁部472a又は第1の電極面452の近接縁482aと第1の電極面452の外縁482bとの間が平面状に形成されている。
ある実施例では、第1の電極面452の近接縁482aと第1の電極面452の外縁482bとの間は、図5Aから図7で説明した電極面152の例と同様に、平面状でない、曲面/平面の組み合わせであっても良い。すなわち、第1の電極面452は、平面または曲面により形成されていても良い。また、第1の電極面452は、1つ以上の平面及び1つ以上の曲面により形成されていても良い。また、第1の電極面152と仮想平面VPとの間の距離は、第1の近接縁182aから第1の外縁182bまでの間で連続的又は断続的に大きくなっていても良い。
【0179】
傾斜面464aは、電極面452の第1の外縁482bと処置部326の第1の側面384aとの間に形成されている。傾斜面464bは、電極面454の第2の外縁484bと処置部326の第2の側面384bとの間に形成されている。図13から図15中、電極面452の第1の外縁482bが傾斜面464aよりも第1の把持片26aに向かって突出した位置にあるが、電極面452の第1の外縁482b及び傾斜面464aの長手軸L2に近接する端部465aが面一であっても良い。電極面454の第2の外縁484bが傾斜面464bよりも第1の把持片26aに向かって突出した位置にあるが、電極面454の第2の外縁484b及び傾斜面464bの長手軸L2に近接する端部465bが面一であっても良い。
【0180】
第1の電極面452は、幅方向について、処置部326の第1の側面384aに向かうにつれて第1の把持片26aが位置する側から離される状態に、傾斜する。すなわち、電極面452は、中央位置Mから第1の幅方向W1に向かって離れるにつれて第1の把持片26aとの距離が開く側に向かう。
【0181】
ここで、第2の把持片26bのブレード402の基台414の当接部462は、閉状態で、第1の把持片26aのブレード344の突起352に当接可能である。電極部材412の第1の電極面452に対し、閉状態で、開閉方向に直交し第1の電極面452の第1の近接縁482aを通る仮想平面VPを規定する。仮想平面VPは、閉状態で、長手軸L1,L2上にあることが好適である。すなわち、本実施形態では、仮想平面VPは、運動面Tに直交し、長手軸L1,L2に沿い、第1の電極面452のうち近接縁482aを通る面として規定される。突起352と第2の電極面454のうち長手軸L1,L2から開閉方向に直交する第2の幅方向W2に離された処置部326の第2の側面384b側の第2の近接縁484aとの間に規定する第2の電極面454の第2の近接縁484aを通る仮想平面は、上述した仮想平面VPに一致する。
【0182】
第1の電極面452は、当接部462の第1の縁部472a又は第1の電極面452の近接縁482aと、第1の電極面452の外縁482bとの間にわたって、仮想点が長手軸L2から離され処置部326の第1の側面384aに向かうにつれて仮想平面VPとの距離が離されていく(大きくなる)。図13中の第1の近接縁482aに近接する位置での仮想平面VPと第1の電極面452との距離Lpよりも、第1の近接縁482aに離隔する位置での距離Ldの方が大きくなる。
【0183】
第1の電極面(第1の面)452における法線ベクトルN2aを考慮する。第1の電極面452の法線ベクトルN2aのうち、仮想平面VPに平行な成分は、第1の電極面452のいずれの位置においても、処置部326の第1の側面384aに向かう。
【0184】
第2の電極面454は、当接部462の第2の縁部472bから、処置部326の第2の側面384bに向かって設けられている。
【0185】
第2の電極面454は、長手軸L2に近接する第2の近接縁484aと、第2の近接縁484aよりも長手軸L2に離間し、処置部326の第2の側面384bに近接する第2の外縁484bとを有する。
【0186】
本実施形態では、第1の電極面452及び第2の電極面454は、運動面T(中央位置M)に対して対称である。
【0187】
第2の電極面(第2の面)454における法線ベクトルN2bを考慮する。第2の電極面454の法線ベクトルN2bのうち、仮想平面VPに平行な成分は、第2の電極面454のいずれの位置においても、処置部326の第2の側面384bに向かう。
【0188】
ブレード344の対向面352の第1の近接面352aにおける法線ベクトルN1aを考慮する。第1の近接面352aの法線ベクトルN1aのうち、仮想平面VPに平行な成分は、第1の近接面352aのいずれの位置においても、処置部326の第1の側面384aに向かう。ブレード344の対向面352の第2の近接面352cにおける法線ベクトルN1bを考慮する。第2の近接面352cの法線ベクトルN1bのうち、仮想平面VPに平行な成分は、第2の近接面352cのいずれの位置においても、処置部326の第2の側面384bに向かう。
【0189】
第2の把持片26bのブレード402として、電極面452、当接部462及び電極面454が全体として鋭角に形成されていても、直角に形成されていても、鈍角に形成されていても良い。当接部462の第1の縁部472aと第2の縁部472bとの間の幅は、極力小さく形成されることが好ましい。このため、第2の把持片26bのブレード402として、極力鋭利に形成されていることが好ましい。
【0190】
(作用)
次に、本実施形態に係る処置具312の作用について説明する。第1実施形態で説明した内容と共通する内容については適宜に説明を省略する。
【0191】
処置具312を用いて処置を行う際には、術者は、処置部326を腹腔等の体腔に挿入する。そして、第1の把持片26aと第2の把持片26bとの間に生体組織(例えば血管)等の処置対象Sを配置し、第1の把持片26aと第2の把持片26bとの間で処置対象Sが把持される(図15参照)。
【0192】
第1の把持片26aのブレード344の電極部材344aの突起352と、第2の把持片26bのブレード402の当接部462との間に適度な把持圧力を付与する。第1の把持片26a及び第2の把持片26bが閉状態では、運動面T上で把持圧力により処置対象を薄肉化する。このため、本実施形態に係る処置具312を用いる場合、処置対象に対して、電極同士でなくても、第1の把持片26aのブレード344と第2の把持片26bの当接部462との間で適度な把持圧力を付与する。また、第1の把持片26aのブレード344の電極部材344aの突起352に処置対象を接触させるとともに、第2の把持片26bの電極部材412の第1の電極面452及び第2の電極面454に処置対象を接触させている。
【0193】
この状態で、術者は、例えば、第1実施形態で説明した第1のスイッチ16aと同様に機能する操作装置318の第1のペダルを押圧する。操作装置318の第1のペダルでの操作入力に基づいて、エネルギ源16は、電気エネルギを出力する。
【0194】
第1の把持片26aのブレード344の電極部材344a及び第2の把持片26bの電極部材412は、互いに対して電位の異なる電極として機能する。第1の把持片26aのブレード344の電極部材344aと第2の把持片26bの電極部材412との間で把持される処置対象を通して高周波電流が流され、高周波電流が処置エネルギとして処置対象Sに付与される。高周波電流に起因して発生する熱によって、処置対象が変性され、処置対象の凝固が促進される。すなわち、高周波電流に起因して発生する熱によって、処置対象である血管等が糊化及び接合され、封止される。このため、処置具312は、処置対象を封止可能(処置可能)である。
【0195】
本実施形態に係る処置具312の処置部326の特に、第2の把持片26bのブレード402を上述したように形成することで、第1実施形態で説明したのと同様に、処置対象を効率的に温度上昇させることができ、かつ、第1の把持片26aのブレード344の温度上昇を抑制することができる。また、第1実施形態で説明したのと同様に、本実施形態に係る処置具312を用いる場合、第1の把持片26aのブレード344の温度上昇を抑制することができるため、効率的に血管の処置対象Sにエネルギが付与される。このため、本実施形態に係る処置具312を用いる場合、従来の処置具を用いる場合に比べて封止に至る速度を速めることができる。
【0196】
次に、術者が、第1実施形態で説明した第2のスイッチ16bと同様に機能する操作装置318の第2のペダルを押圧したときの例について説明する。操作装置318の第2のペダルでの操作入力に基づいて、エネルギ源16は、処置具312に電気エネルギを出力する。
エネルギ源16から発熱部344cに電気エネルギが供給されると、発熱部344cが発熱する。発熱部344cで発生した熱は、接着層344bを介して電極部材344aにおいて背面側から突起352に伝達される。突起352に伝達される熱の温度は、高周波電流により上昇させることが可能な処置対象の温度よりも高く設定されている。そして、第1の把持片26aのブレード44の突起352に伝達された熱(熱エネルギ)は、処置対象に付与される。このとき、処置対象は凝固されるとともに、ブレード344の突起(対向面)352とブレード402の当接部462との間で切開される。
【0197】
上述したように、処置対象は、第1の把持片26aのブレード344の突起352と、第2の把持片26bのブレード402の当接部462とによって、薄肉にされる。このため、処置対象Sが効率的に温度上昇する。このため、処置対象Sの乾燥が進み易く、処置対象Sの切開速度が向上する。なお、処置対象が切開される際、処置対象の切開位置よりも処置部326の第1の側面384aに近接する部分、及び、第2の側面384bに近接する部分において、凝固されている。
【0198】
したがって、本実施形態に係る処置具312の処置部326は、従来の処置具の処置部よりも、処置対象を切開し易くなる。このため、熱を処置対象に伝達させたとき、本実施形態に係る処置具312の処置部326は、従来技術の処置具の処置部よりも少ないエネルギで、処置対象が切開され易い。
【0199】
なお、操作装置318の第2のペダルを押圧したとき、システム10は、発熱部344cの温度を上昇させるのと同時期に、操作装置318の第1のペダルを押圧したときと同様に、処置対象に高周波電流を流して、処置対象Sを凝固させながら切開しても良い。
【0200】
本実施形態によれば、第1の把持片26aの発熱部344cにより発生する熱による、高周波エネルギとは異なるエネルギにより切開処置を行う場合、第2の把持片26bのブレード402の形状を適宜に形成することにより、処置対象Sに効率的にエネルギを負荷可能な処置具312を提供することができる。このため、本実施形態による処置具312を用いることで、より少ないエネルギ(量)で、効率的に処置対象に対して切開処置を行うことができる。すなわち、第2の把持片26bのブレード402は、第1の把持片26aのブレード344の突起(処置面)352と協働して処置対象を切開可能(処置可能)である。
【0201】
また、高周波エネルギを用いて処置対象Sを凝固させる場合、高周波電流を流したときの電極(ブレード344の電極部材344a)の温度上昇を抑制し、処置対象Sに効率的にエネルギを負荷可能な処置具312を提供することができる。このため、処置具312は、処置対象を凝固可能(処置可能)である。
【0202】
なお、本実施形態では、中継部328の先端に固定された第1の把持片26aに対して第2の把持片26bが移動可能である例について説明した。中継部328の先端に対して、第1の把持片26a及び第2の把持片26bの両方が移動可能であることも好ましい。
【0203】
(第1変形例)
次に、第2実施形態の第1変形例について、図16を用いて説明する。この変形例は各変形例を含む第1実施形態、及び/又は、第2実施形態の変形例であって、これらで説明したのと同一の部材又は同一の機能を有する部材には極力同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0204】
図13から図15に示す、第2の把持片26bの当接部462は一例として平面である。図16に示す当接部462は第1の把持片26aの突部352に向かって突出している曲面状である。このため、当接部462は、閉状態で、第1の電極面452と同等、もしくはそれよりも処置面352に向かって突出している。突部352が曲面状であっても、第2実施形態で説明したのと同様に、処置が行われる。
第2の把持片26bの当接部462は、第2実施形態で図示したように平坦であっても、第1実施形態で図示したように凹んでいても良い。
【0205】
第1の把持片26aの対向面348a,348bは仮想平面VPに対して平行な領域及び傾斜している領域が組み合わせられている。対向面348a,348bは仮想平面VPに対して平行な面のみで形成されていても良い。
【0206】
ブレード344の対向面352における法線ベクトルN1を考慮する。法線ベクトルN1のうち、仮想平面VPに平行な成分は、対向面352のいずれの位置においても、第1の側面384aに向かう成分及び第2の側面384bに向かう成分が存在しない。また、図16中の例では、基台344dの対向面348a,348bはブレード344の対向面352に面一に連続している。対向面348a,348bのうちブレード344の対向面352に近接する位置が仮想平面VPに平行である。対向面348a,348bのうちブレード344の対向面352に離間した位置は仮想平面VPに傾斜している。基台344dの対向面348aのいずれの位置においても、法線ベクトルN1のうち、第1の側面384aに向かう成分は存在し得るが、第2の側面384bに向かう成分は存在しない。基台344dの対向面348bのいずれの位置においても、法線ベクトルN1のうち、第2の側面384bに向かう成分は存在し得るが、第1の側面384aに向かう成分は存在しない。
【0207】
第1の電極面452は、幅方向について、処置部326の第1の側面384aに向かうにつれて第1の把持片26aが位置する側から離される状態に、傾斜する。すなわち、電極面452は、中央位置Mから第1の幅方向W1に向かって離れるにつれて第1の把持片26aとの距離が開く側に向かう。ここでは、第1の電極面(第1の面)452は、幅方向に沿って、近接縁482aを含む第1の領域452a、外縁482bを含む第2の領域452bを有する。第1の領域452a及び第2の領域452bはそれぞれ平面として形成されている。このため、第1の電極面452は、複数の平面により形成されている。これら領域452a,452bは、第1実施形態の第2変形例(図6A参照)又は第3変形例(図6B参照)で説明した領域186a,186bと同様に傾斜している。すなわち、第1の近接縁482aを含む第1の領域452aと第1の外縁482bを含む第2の領域452bとが仮想平面VPとの間に形成する傾斜角度は、互いに異なっている。
第2の電極面454は、幅方向について、処置部326の第2の側面384bに向かうにつれて第1の把持片26aが位置する側から離される状態に、傾斜する。すなわち、電極面454は、中央位置Mから第2の幅方向W2に向かって離れるにつれて第1の把持片26aとの距離が開く側に向かう。ここでは、第2の電極面(第2の面)454は、幅方向に沿って、近接縁484aを含む第1の領域454a、外縁482bを含む第2の領域454bを有する。第1の領域454a及び第2の領域454bはそれぞれ平面として形成されている。このため、第2の電極面454は、複数の平面により形成されている。これら領域454a,454bは、第1実施形態の第2変形例(図6A参照)又は第3変形例(図6B参照)で説明した領域188a,188bと同様に傾斜している。すなわち、第2の近接縁484aを含む第1の領域454aと第2の外縁484bを含む第2の領域454bとが仮想平面VPとの間に形成する傾斜角度は、互いに異なっている。
第1の電極面452及び第2の電極面454は、平面または曲面により形成されていても良い。第1の電極面452及び第2の電極面454は、1つ以上の平面及び1つ以上の曲面により形成されていても良い。
【0208】
図16中、ブレード344の対向面352の第1の外縁356aは、ブレード402の第1の電極面452の第1の近接縁482aよりも運動面Tに近い位置にある。ブレード344の対向面352及びブレード402の第1の電極面452が接触しない状態に形成されていれば、ブレード344の対向面352の第1の外縁356aは、ブレード402の第1の電極面452の第1の近接縁482aよりも運動面Tに遠い位置にあっても良い。
【0209】
(第2変形例)
次に、第2実施形態の第2変形例について、図17を用いて説明する。この変形例は各変形例を含む第1実施形態、及び/又は、第1変形例を含む第2実施形態の更なる変形例であって、これらで説明したのと同一の部材又は同一の機能を有する部材には極力同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0210】
図17に示すように、当接部462の第1の縁部472aが電極部材412の第1の電極面452の近接縁482aよりも、開閉方向に沿って処置部326の第2の背面386bに対して等距離にあっても、近位にあっても良い。
【0211】
図17に示す第2の把持片26bの基台414の中央部474には、窪み(凹み)476が形成されている。すなわち、当接部462は、第1の縁部472aと第2の縁部472bとの間に、第1の把持片26aの電極部材344aの突起352に向かう方向とは反対方向に窪む窪み476を有する。
【0212】
第2の把持片26bのブレード402は、窪み476に、第1の電極面452及び第2の電極面454と同電位の高周波電極として用いられる電極面(第3の面)456を有する。
【0213】
処置対象が第1の把持片26aと第2の把持片26bとの間に把持された状態で、高周波電流が流される前、又は、高周波電流が流されている間に、処置対象が窪み476にある電極面456に接触することがある。処置対象が電極面456に接触すると、第1の電極面452と突起352との間、第2の電極面454と突起352との間だけでなく、電極面456と突起352との間にも電流が流される。
【0214】
これまで、いくつかの実施形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17