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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】可撓性研磨物品
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/28 20060101AFI20220412BHJP
   B24D 11/00 20060101ALI20220412BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B24D3/28
B24D11/00 C
B24D3/00 330Z
B24D3/00 340
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019530447
(86)(22)【出願日】2017-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 IB2017057691
(87)【国際公開番号】W WO2018104883
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】62/431,200
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,キャスリーン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ジャング,チャイニカ
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン,イアン アール.
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,サイラス エー.
(72)【発明者】
【氏名】マーラー,トーマス エー.
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-503811(JP,A)
【文献】特開平05-247234(JP,A)
【文献】国際公開第2008/079934(WO,A2)
【文献】特開2013-006256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/28
B24D 11/00
B24D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、
(a)25℃及び1Hzの周波数での複素粘度が少なくとも約4500Pa-sである重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物と、
(b)前記重合性エポキシ-アクリレート樹脂成分中に部分的に又は完全に埋め込まれた研磨粒子と、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記重合性エポキシ-アクリレート樹脂成分が、テトラヒドロフルフリル(THF)(メタ)アクリレートコポリマー成分と、1又は複数のエポキシ樹脂と、1又は複数のヒドロキシ官能性ポリエーテルと、を含む、請求項1に記載の硬化性組成物
【請求項3】
1又は複数の光重合開始剤を更に含む、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記THF(メタ)アクリレートコポリマー成分が、1又は複数のTHF(メタ)アクリレートモノマーと、1又は複数のC~C(メタ)アクリレートエステルモノマーと、1又は複数の任意選択のカチオン反応性官能性(メタ)アクリレートモノマーと、を含む、請求項2又は3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記THF(メタ)アクリレートコポリマー成分が、(A)40~60重量%のテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートと、(B)40~60重量%のC~Cアルキル(メタ)アクリレートエステルモノマーと、(C)0~10重量%のカチオン反応性官能性モノマーとの、重合モノマー単位を含み、(A)~(C)の和がTHFAコポリマーの100重量%である、請求項2~のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記硬化性組成物が、i)約15~約50重量部の前記THF(メタ)アクリレートコポリマー成分と、ii)約25~約50重量部の前記1又は複数のエポキシ樹脂と、iii)約5~約15重量部の前記1又は複数のヒドロキシ官能性ポリエーテルと、iv)約10~約25重量部の範囲の1又は複数のヒドロキシル含有フィルム形成ポリマーと、を含み、i)~iv)の和が100重量部であり、v)i)~iv)の100部に対して約0.1~約5重量部の光重合開始剤を含む、請求項2~のいずれか一項に記載の硬化性組成物
【請求項7】
前記研磨粒子が、前記硬化組成物中に部分的に又は完全に埋め込まれている、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化性組成物から形成された硬化組成物
【請求項8】
請求項に記載の硬化組成物を研磨層として含む、研磨物品
【請求項9】
請求項に記載の研磨物品を作製する方法であって、
第1のライナ主面及び第1のライナ第2主面を有する第1のライナと、第2のライナ第1主面及び第2のライナ第2主面を有する第2のライナとの間に、硬化性組成物第1主面及び硬化性組成物第2主面を有する硬化性組成物をコーティングすることであって、ここで、前記第1のライナ第2主面が実質的に全体の硬化性組成物第1主面と直接接触し、かつ前記第2のライナ第1主面が実質的に全体の硬化性組成物第2主面と直接接触している、前記コーティングすることと、
前記第1のライナを剥がして前記硬化性組成物第1主面を露出させることと
研磨粒子を、前記硬化性組成物第1主面上に堆積させることであって、ここで、前記研磨粒子が前記硬化性組成物第1主面中に部分的又は完全に埋め込まれている、前記堆積させることと、
前記硬化性組成物を硬化させて、前記研磨粒子を含む研磨層第1主面、及び研磨層第2主面を有する研磨層を形成することであって、ここで、前記研磨層第2主面が、実質的に全体の第2のライナ第1主面と直接接触している、前記硬化させることと、
を含む、方法
【請求項10】
請求項に記載の研磨物品を作製する方法であって、
硬化性組成物第1主面及び硬化性組成物第2主面を有する硬化性組成物を、ライナ主面及びライナ第2主面を有するライナ上にコーティングすることであって、ここで、前記ライナ第2主面が、実質的に全体の硬化性組成物第1主面と直接接触している、前記コーティングすることと、
研磨粒子を、前記硬化性組成物第1主面上に堆積させることであって、ここで、前記研磨粒子が、前記硬化性組成物第1主面中に部分的に又は完全に埋め込まれている、前記堆積させることと、
前記硬化性組成物を硬化させて、前記研磨粒子を含む研磨層第1主面、及び研磨層第2主面を有する研磨層を形成することであって、ここで、前記研磨層第2主面が、実質的に全体のライナ第1主面と直接接触している、前記硬化させることと、
を含む、方法
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
可撓性研磨剤は、輪郭領域の効率的かつ均一なサンディングを可能にする。既存の可撓性コーティング研磨製品は、バッキングパッドに取り付けられる前に紙又はポリマーバッキング上に支持されるか、又は手によるサンディングに使用される。更に、既存の製品を扱うにはいくつかの課題がある。例えば、紙バッキングを有する湿式又は乾式研磨剤は、水に浸したときに可撓性であるが、洗浄には時間がかかる。したがって、性能要件を満たしてはいるが既存の製品の欠点を克服していない、可撓性研磨剤についての満たされていない必要性が存在する。
【発明の概要】
【0002】
実施形態1は、硬化性組成物であって、25℃及び1Hzの周波数での複素粘度が少なくとも約4500Pa-sである重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物と、重合性エポキシ-アクリレート樹脂成分中に部分的に又は完全に埋め込まれた研磨粒子と、を含む、組成物に関する。
【0003】
実施形態2は、重合性エポキシ-アクリレート樹脂成分が、テトラヒドロフルフリル(tetrahydrofurfuryl、THF)(メタ)アクリレートコポリマー成分と、1又は複数のエポキシ樹脂と、1又は複数のヒドロキシ官能性ポリエーテルと、を含む、実施形態1の硬化性組成物に関する。
【0004】
実施形態3は、重合性エポキシ-アクリレート樹脂成分が、1又は複数のヒドロキシル含有フィルム形成ポリマーを更に含む、実施形態1又は2に記載の硬化性組成物に関する。
【0005】
実施形態4は、1又は複数の光重合開始剤を更に含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の硬化性組成物に関する。
【0006】
実施形態5は、THF(メタ)アクリレートコポリマー成分が、1又は複数のTHF(メタ)アクリレートモノマーと、1又は複数のC~C(メタ)アクリレートエステルモノマーと、1又は複数の任意選択のカチオン反応性官能性(メタ)アクリレートモノマーと、を含む、実施形態2~4のいずれか1つに記載の硬化性組成物に関する。
【0007】
実施形態6は、THF(メタ)アクリレートコポリマー成分が、(A)40~60重量%のテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートと、(B)40~60重量%のC~Cアルキル(メタ)アクリレートエステルモノマーと、(c)0~10重量%のカチオン反応性官能性モノマーとの、重合モノマー単位を含み、(A)~(C)の和がTHFAコポリマーの100重量%である、実施形態2~5のいずれか1つに記載の硬化性組成物に関する。
【0008】
実施形態7は、硬化性組成物が、i)約15~約50重量部のTHF(メタ)アクリレートコポリマー成分と、ii)約25~約50重量部の1又は複数のエポキシ樹脂と、iii)約5~約15重量部の1又は複数のヒドロキシ官能性ポリエーテルと、iv)約10~約25重量部の範囲の1又は複数のヒドロキシル含有フィルム形成ポリマーと、を含み、i)~iv)の和が100重量部であり、v)i)~iv)の100部に対して約0.1~約5重量部の光重合開始剤を含む、実施形態2~6のいずれか1つに記載の硬化性組成物に関する。
【0009】
実施形態8は、1又は複数のヒドロキシ官能性ポリエーテルが、1又は複数の液状ヒドロキシ官能性ポリエーテルである、実施形態2~7のいずれか1つに記載の硬化性組成物に関する。
【0010】
実施形態9は、光重合開始剤が、カチオン性光重合開始剤である、実施形態4~8のいずれか1つに記載の硬化性組成物に関する。
【0011】
実施形態10は、研磨粒子が、形成研磨粒子を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の硬化性組成物に関する。
【0012】
実施形態11は、研磨粒子が、硬化組成物中に部分的に又は完全に埋め込まれている、実施形態1~10のいずれか1つに記載の硬化性組成物から形成された硬化組成物に関する。
【0013】
実施形態12は、硬化組成物が、約0.01~約0.5N-mmの剛性を有する、実施形態11に記載の硬化組成物に関する。
【0014】
実施形態13は、実施形態11の硬化組成物を研磨層として含む、研磨物品に関する。
【0015】
実施形態14は、サイズコート、スーパーサイズコート、及びバッキングのうちの少なくとも1つを更に含む、実施形態13に記載の研磨物品に関する。
【0016】
実施形態15は、サイズコート第1主面及びサイズコート第2主面を有するサイズコートを更に含み、研磨層が、研磨層第1主面及び研磨層第2主面を有し、研磨層第1主面がサイズコート第2主面と直接接触している、実施形態13に記載の研磨物品に関する。
【0017】
実施形態16は、実質的に全体の研磨層第1主面が、実質的に全体のサイズコート第2主面と直接接触している、実施形態15に記載の研磨物品に関する。
【0018】
実施形態17は、バッキング第1主面及びバッキング第2主面を有するバッキングを更に含み、バッキング第1主面が研磨層第2主面と直接接触している、実施形態13、15及び16のいずれか1つに記載の研磨物品に関する。
【0019】
実施形態18は、実質的に全体のバッキング第1主面が、実質的に全体の研磨層第2主面と直接接触している、実施形態17に記載の研磨物品に関する。
【0020】
実施形態19は、スーパーサイズコート第1主面及びスーパーサイズコート第2主面を有するスーパーサイズコートを更に含み、スーパーサイズコート第2主面がサイズコート第1主面と直接接触している、実施形態13及び15~18のいずれか1つに記載の研磨物品に関する。
【0021】
実施形態20は、実質的に全体のスーパーサイズコート第2主面が、実質的に全体のサイズコート第1主面と直接接触している、実施形態19に記載の研磨物品に関する。
【0022】
実施形態21は、バッキング第1主面及びバッキング第2主面を有するバッキングを更に含み、バッキング第1主面が研磨層第2主面と直接接触している、実施形態13及び15~20のいずれか1つに記載の研磨物品に関する。
【0023】
実施形態22は、実質的に全体のバッキング第1主面が、実質的に全体の研磨層第2主面と直接接触している、実施形態21に記載の研磨物品に関する。
【0024】
実施形態23は、実施形態13に記載の研磨物品を作製する方法であって、第1のライナ主面及び第1のライナ第2主面を有する第1のライナと、第2のライナ第1主面及び第2のライナ第2主面を有する第2のライナとの間に、硬化性組成物第1主面及び硬化性組成物第2主面を有する硬化性組成物をコーティングすることであって、ここで、第1のライナ第2主面が実質的に全体の硬化性組成物第1主面と直接接触し、かつ第2のライナ第1主面が、実質的に全体の硬化性組成物第2主面と直接接触している、コーティングすることと;第1のライナを剥がして硬化性組成物第1主面を露出させることと;研磨粒子を、硬化性組成物第1主面上に堆積させることであって、ここで、研磨粒子が、硬化性組成物第1主面中に部分的に又は完全に埋め込まれている、堆積させることと;硬化性組成物を硬化させて、研磨粒子を含む研磨層第1主面、及び研磨層第2主面を有する研磨層を形成することであって、ここで、研磨層第2主面が、実質的に全体の第2のライナ第1主面と直接接触している、硬化させることと、を含む、方法に関する。
【0025】
実施形態24は、研磨粒子を含む研磨層第1主面を、硬化性サイズコート組成物でコーティングすることと、硬化性サイズコート組成物を硬化させて、硬化サイズコート第1主面及び硬化サイズコート第2主面を有する硬化サイズコートを得ることとを更に含み、硬化サイズコート第2主面が、実質的に全体の研磨層第1主面と直接接触している、実施形態23に記載の方法に関する。
【0026】
実施形態25は、硬化サイズコート第1主面を、硬化性スーパーサイズコート組成物でコーティングすることと、スーパーサイズコート組成物を硬化させて、硬化スーパーサイズコート第1主面及び硬化スーパーサイズコート第2主面を有する硬化スーパーサイズコートを得ることとを更に含み、硬化スーパーサイズコート第2主面が、実質的に全体の硬化サイズコート第1主面と直接接触している、実施形態24に記載の方法に関する。
【0027】
実施形態26は、第1のライナ及び第2のライナのうちの少なくとも1つが、剥離性ライナである、実施形態21~25のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0028】
実施形態27は、第2のライナが、バッキングである、実施形態21~25のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0029】
実施形態28は、第2のライナを剥がすことを更に含む、実施形態21~25のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0030】
実施形態29は、実施形態13に記載の研磨物品を作製する方法であって、硬化性組成物第1主面及び硬化性組成物第2主面を有する硬化性組成物を、ライナ主面及びライナ第2主面を有するライナ上にコーティングすることであって、ここで、ライナ第2主面が実質的に全体の硬化性組成物第1主面と直接接触している、コーティングすることと;研磨粒子を、硬化性組成物第1主面上に堆積させることであって、ここで、研磨粒子が、硬化性組成物第1主面中に部分的に又は完全に埋め込まれている、堆積させることと;硬化性組成物を硬化させて、研磨粒子を含む研磨層第1主面、及び研磨層第2主面を有する研磨層を形成することであって、ここで、研磨層第2主面が、実質的に全体のライナ第1主面と直接接触している、硬化させることと、を含む、方法に関する。
【0031】
実施形態30は、研磨粒子を含む研磨層第1主面を、硬化性サイズコート組成物でコーティングすることと、硬化性サイズコート組成物を硬化させて、硬化サイズコート第1主面及び硬化サイズコート第2主面を有する硬化サイズコートを得ることとを更に含み、硬化サイズコート第2主面が、実質的に全体の研磨層第1主面と直接接触している、請求項29に記載の方法に関する。
【0032】
実施形態31は、硬化サイズコート第1主面を、硬化性スーパーサイズコート組成物でコーティングすることと、スーパーサイズコート組成物を硬化させて、硬化スーパーサイズコート第1主面及び硬化スーパーサイズコート第2主面を有する硬化スーパーサイズコートを得ることとを更に含み、硬化スーパーサイズコート第2主面が、実質的に全体の硬化サイズコート第1主面と直接接触している、実施形態30に記載の方法に関する。
【0033】
実施形態32は、ライナが剥離性ライナである、実施形態29~31のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0034】
実施形態33は、ライナがバッキングである、実施形態29~31のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0035】
実施形態34は、ライナを剥がすことを更に含む、実施形態29~31のいずれか1つに記載の方法に関する。
【0036】
実施形態35は、少なくとも約400MPaのG’を有する、重合エポキシ-アクリレート樹脂に関する。
【0037】
実施形態36は、実施形態35の重合エポキシ-アクリレート樹脂を含む、研磨物品に関する。
【0038】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下の発明を実施するための形態から明らかになろう。しかしながら、上記の概要は、いかなる場合であっても、特許請求される主題に対する限定として解釈されるべきではなく、その主題は、添付の「特許請求の範囲」によってのみ定義されるものであるが、手続きの過程で補正される場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図面は、例示的ではあるが限定的ではなく、本明細書で論じられる様々な実施形態を一般的に示す。
【0040】
図1】様々な例による研磨物品の側面断面図である。
図2】様々な例による研磨物品の側面断面図である。
図3】様々な例による研磨物品の側面断面図である。
図4】様々な例による研磨物品の側面断面図である。
【0041】
明細書及び図面中の参照文字が繰り返して使用されている場合、本開示の同じ又は類似の特徴又は要素を表すことを意図している。多くの他の変更形態及び例を当業者であれば考案することができ、それらは本開示の原理の趣旨及び範囲に入ることは理解されるべきである。図面は、縮尺どおりに描かれていない場合がある。
【0042】
説明
研磨製品は、柔らかく、塗装された表面などの仕上げにくい材料を含む、広範な基材をサンディングするのに使用される。衝突修復市場用のコーティングされた研磨剤の用途は非常に広く、洗浄、コーティング除去、充填剤成形、金属造形、金属への塗装ストリップ、プライマーサンディング、塗料調製、塗料仕上げなどが挙げられる。
【0043】
研磨物品は、一般に、複数の研磨粒子及びバインダーを含む。研磨物品の例としては、いくつか挙げると、接着研磨物品(研削ホイールなど)、コーティングされた研磨物品、不織布研磨物品が挙げられる。コーティングされた研磨製品は、一般に、バッキング基材、研磨粒子、及び研磨粒子をバッキングに保持するように作用するバインダー系を有する。例えば、典型的なコーティングされた研磨製品において、バッキングはまず、一般に「メイク」コートと呼ばれるバインダーの層でコーティングされ、次いで、研磨粒子がバインダーコーティングに塗布される。そのように塗布されると、研磨粒子は、最適には、メイクコート中に少なくとも部分的に埋め込まれる。次いで、得られたバインダー/研磨剤粒子層は、一般に、バッキングへの研磨粒子の接着を保持するのに十分に固化又は固定される(例えば一連の乾燥又は硬化オーブンによる)。メイクコートを予備硬化又は固定した後、一般に「サイズコート」と称されるバインダーの第2の層が、メイクコート及び研磨粒子の表面上に適用され、かつ固定時に、それは粒子を更に支持し、バッキングへの粒子の固着を強化する。任意選択的に、研削助剤を含有し得る「スーパーサイズ」コートを、予備硬化サイズコート上に適用することができる。いずれの場合も、サイズコート及びスーパーサイズコート(使用される場合)が硬化されると、得られたコーティングされた研磨製品は、他の用途の中でも、ゲート除去などの金属作業ベルト用途のために、シート、ロール、ベルト、及びディスクなどの様々な便利な形態へと変換され得る。
【0044】
現在製造されており使用されているいくつかの研磨剤は、エポキシ-アクリレートハイブリッド化学を用いてメイクコートを調製して、コーティングされた研磨剤を製造する。しかし、既存のコーティングされた研磨剤には、いくつかの課題がある。例えば、現在の、紙及びフィルムバッキング上のメイク樹脂コーティングは、非常に脆い。加えて、樹脂の粘度が低いため、それは、多孔質布バッキングの繊維を充填して、構造を脆くし、柔軟ではなく、コーティングされた研磨剤についていくつかの制限を有する。更に、既存のメイクコートは、未処理のバッキングとの接着性が乏しい。したがって、メイク樹脂との接着性を高めるためにバッキングの加工が必要とされ、これは、製造におけるコスト及び複雑性を増加させる。
【0045】
本明細書では、次世代のコーティングされた研磨剤のための強化されたメイク組成物として、重合性(例えば、光重合性)エポキシ-アクリレート樹脂組成物を含む、研磨物品が記載される。本明細書に明示されるように、これらの新規なメイク樹脂組成物は、研磨物品のメイク層とバッキング層との両方として役立ち得る自立性研磨層を形成する。これは、コーティングされた研磨剤中で現在使用されている高価なバッキングを回避することができ、特に可撓性研磨物品の領域において、新たな、コストが有利な構造体のための機会を開くことができることを意味する。
【0046】
図1は、参照番号100で参照される研磨物品の一例を示す。図示のように、研磨物品100は複数の層を含む。これらの層は、研磨面が上を向いた状態で、底部から頂部に向かって、研磨層112及びスーパーサイズコート122を含む。ここで、研磨層112は、それ自体が多層構造であり、研磨層116、研磨粒子114、及びサイズコート118を含む。図1に示す研磨物品から明らかなように、図2図4に示す研磨物品とは対照的に、研磨物品にはバッキングがない。しかし、図1に示す研磨物品にバッキングを加えて、例えば、図2図4に示すものなどの研磨物品とすることができる。別の例では、研磨物品100は、フックアンドループ取り付け機構の一部である取り付け層(図示せず)を含むことができる。
【0047】
図2は、参照番号200で参照される研磨物品の一例を示す。図示のように、研磨物品200は、複数の層を含む。これらの層は、研磨面が上を向いた状態で、底部から頂部に向かって、任意選択のバッキング210、研磨層212、及びスーパーサイズコート222を含む。ここで、研磨層212は、それ自体が多層構造であり、研磨層216、研磨粒子214、及びサイズコート218を含む。別の例では、研磨物品200は、フックアンドループ取り付け機構の一部である取り付け層(図示せず)を含むことができる。
【0048】
図3は、図2と同様に、任意選択のバッキング310、研磨層312、及びスーパーサイズコート322を有する研磨物品300を示す。研磨物品300は、更に、バッキング310の、研磨層312とは反対側の主面にわたって延びて、その主面に直接接触する連続取り付け層330を有する。一例では、取り付け層330は、除去可能な感圧接着剤である。別の例では、取り付け層330は、フックアンドループ取り付け機構の一部である。いくつかの実施形態では、バッキング310は存在しない。この例では、取り付け層330は、研磨層312の主面を横切って延び、研磨層312の主面と直接接触し、研磨層の主面はスーパーサイズコート322から離れる方向に向いている。
【0049】
図4は、図2及び図3と同様に、任意選択のバッキング410、研磨層412、及びスーパーサイズコート422を有する研磨物品400を示す。図3の研磨物品300と同様に、研磨物品400は、取り付け層430を有する。この例では、取り付け層430は、フックアンドループ取り付け機構の一部である。ポリマー圧縮性発泡体430は、バッキング410と取り付け層430との間に配置され得る。任意選択的であり図示していないが、上記層のうちのいずれかの層の間に1又は複数の付加的な層を配置して、層同士の接着を助けたり、印刷された画像を提供したり、バリア層として作用させたり、当該技術分野で公知の他の用途に役立てたり、することができる。研磨物品400に圧縮性を与えることによって、圧縮性発泡体440は、研磨対象の加工物とのより均一な接触が可能となり、特に加工物が非平面の輪郭を有する場合にそうである。更なる選択肢として、バッキング410及び圧縮性発泡体440は、両者の機能を果たす単一層に統合することができる。
【0050】
上記の層構成は網羅的ではなく、図1図4に示す例のいずれに対しても、層の追加又は除去が可能であると理解すべきである。
【0051】
本明細書に記載の様々な実施形態の研磨物品の研磨層は、硬化性組成物から作製される。したがって、いくつかの事例において、本明細書は硬化又は未硬化の組成物に言及し、ここで硬化組成物は研磨層と同義である。いくつかの例では、硬化性組成物は、25℃及び1Hzの周波数での複素粘度が少なくとも約4500Pa-sである重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物と、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物中に部分的に又は完全に埋め込まれた研磨粒子と、を含む。いくつかの特定の例では、硬化組成物/研磨層は、硬化性組成物の光重合生成物である。いくつかの例では、硬化重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、25℃及び1Hzの周波数での貯蔵弾性率(G’)が、少なくとも約300MPaである。
【0052】
いくつかの例では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、25℃及び1Hzの周波数での複素粘度が、少なくとも約600Pa-s、少なくとも約1200Pa-s、少なくとも約4000Pa-s、少なくとも約4500Pa-s、少なくとも約8000Pa-s、少なくとも約10,000Pa-s、又は少なくとも12,000Pa-sである。いくつかの例では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、25℃及び1Hzの周波数での複素粘度が、最大で約8000Pa-s、最大で約10,000Pa-s、最大で約12,000Pa-s、又は最大で約15,000Pa-sである。なおも他の例では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、25℃及び1Hzの周波数での複素粘度が、約600Pa-s~約3000Pa-s、約3000Pa-s~約8000Pa-s、6000Pa-s~約15,000Pa-s、約8000Pa-s~約10,000Pa-s、約8000Pa-s~約12,000Pa-s、又は約10,000Pa-s~約15,000Pa-sである。
【0053】
いくつかの例では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、25℃及び1Hzの周波数での貯蔵弾性率(G’)が、少なくとも約5,000Pa、少なくとも約20,000Pa、少なくとも約30,000Pa、又は少なくとも40,000Paである。いくつかの例では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、25℃及び1Hzの周波数でのG’が、最大で約20,000Pa、最大で約30,000Pa、最大で約40,000Pa、又は最大で約50,000Paである。なおも他の例では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、25℃及び1Hzの周波数でのG’が、約5,000Pa~約10,000Pa、10,000Pa~約50,000Pa、約20,000Pa~約40,000Pa、約25,000Pa~約40,000Pa、又は約25,000Pa~約35,000Paである。
【0054】
いくつかの例では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、25℃及び1Hzの周波数での損失弾性率(G’’)が、少なくとも約5,000Pa、少なくとも約20,000Pa、少なくとも約30,000Pa、又は少なくとも40,000Paである。いくつかの実施例では、硬化性組成物は、25℃及び1Hzの周波数でのG’’が、最大で約20,000Pa、最大で約30,000Pa、最大で約40,000Pa、又は最大で約50,000Paである。なおも他の例では、硬化性組成物は、25℃及び1Hzの周波数でのG’’が、約5000Pa~約10,000Pa、10,000Pa~約50,000Pa、約20,000Pa~約40,000Pa、約25,000Pa~約40,000Pa、又は約25,000Pa~約35,000Paである。
【0055】
いくつかの例では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物を硬化させることから形成される10cm×5cm×0.07mmのフィルム(但し、フィルムは任意の好適な寸法のものとすることができる)は、G’が、25℃及び1Hzの周波数で少なくとも約300MPa、少なくとも約400MPa、少なくとも約600MPa、又は少なくとも約800MPaである。いくつかの例では、硬化重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、G’が、最大で約400MPa、最大で約500MPa、又は最大で約950MPaである。いくつかの例では、硬化重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物から形成される10cm×5cm×0.07mmのフィルム(但し、フィルムは任意の好適な寸法のものとすることができる)は、G’が、約300MPa~約950MPa、約400MPa~約800MPa、又は約300MPa~約600MPaである。
【0056】
いくつかの例では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物を硬化させることから形成される10cm×5cm×0.07mmのフィルム(但し、フィルムは任意の好適な寸法のものとすることができる)は、25℃及び1Hzの周波数でのG’’が、少なくとも約100MPa、少なくとも約200MPa、少なくとも約250MPa、又は少なくとも約350MPaである。いくつかの例では、硬化重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、G’’が、最大で約200MPa、最大で約300MPa、又は最大で約400MPaである。いくつかの例では、硬化重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物から形成される10cm×5cm×0.07mmのフィルム(但し、フィルムは任意の好適な寸法のものとすることができる)は、G’’が、約100MPa~約300MPa、約100MPa~約200MPa、又は約150MPa~約250MPaである。
【0057】
複素粘度、G’及びG’’の測定値は、コポリマーの粘弾性特性を直接探り、時間-温度-重畳(time-temperature-superposition、TTS)曲線を生成する、使い捨ての8mm直径のアルミニウム平行板形状を備えたTA Instruments Discovery HR-2レオメータを使用して得ることができる。測定は、線形粘弾性レジーム内の一定の公称ひずみ値で実施し、1Hzでひずみ掃引(0.004~2.0%の振動ひずみ)で求めることができる。試料を、10℃/工程で、温度工程、周波数掃引実験に供した。時間-温度重畳方法を利用して、広い周波数範囲にわたる周波数依存性を調査することができる。各ポリマーの得られたG’及びG’’は、TA Instruments TRIOSソフトウェアパッケージ及び水平シフト因子(aT)を使用してシフトさせることができる。マスター曲線は、G’とG’’との両方のシフト及び重複に基づいて、水平シフト係数を生成し、これは、TRIOSを使用してWLF方程式に適合させることができる。次いで、G’及びG’’並びに複素粘度値を、25℃で1Hzの周波数で抽出することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物を硬化させることから形成されるフィルム(但し、フィルムは、任意の好適な寸法のものとすることができる)は、剛性が、約0.01~約0.5N-mm(例えば、約0.01~約0.1N-mm、約0.05~約0.1N-mm、又は約0.05~約0.09N-mm)である。
【0059】
いくつかの例では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物を硬化させることから形成されるフィルム(例えば38×50mmのフィルム、但しフィルムは任意の好適な寸法のものとすることができる)は、本明細書に記載の方法を使用して求めた剛性が、約0.5N-mm以下、約0.3N-mm以下、約0.2N-mm以下、約0.1N-mm以下、又は約0.9N-mm以下である。いくつかの例では、硬化重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、剛性が、少なくとも約0.01N-mm、少なくとも約0.05N-mm、少なくとも約0.09N-mm、少なくとも約0.1N-mm、又は少なくとも約0.2N-mmである。いくつかの例では、硬化重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、剛性が、約0.01~約0.5N-mm(例えば、約0.01~約0.1N-mm、約0.05~約0.1N-mm、又は約0.05~約0.09N-mm)である。
【0060】
いくつかの例では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物を硬化させることから形成されるフィルム(例えば、38×50mmのフィルム、但しフィルムは任意の好適な寸法のものとすることができる)は、本明細書に記載の方法を使用して求めた曲げ力が、約1.5N以下、約0.7N以下、約0.5N以下、約0.3N以下、又は約0.1N以下である。いくつかの例では、硬化重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、曲げ力が、少なくとも約0.2N、少なくとも約0.5N、少なくとも約0.7N、少なくとも約0.9N、又は少なくとも約1.0Nである。いくつかの例では、硬化重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、曲げ力が、約0.1~約1.5N(例えば、約0.2~約0.9N、約0.3~約0.5N、又は約0.4~約0.9N)である。
【0061】
いくつかの例では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物を硬化させることから形成されるフィルム(例えば、38×50mmのフィルム、但しフィルムは任意の好適な寸法のものとすることができる)は、本明細書に記載の方法を使用して測定した保持時間後の力が、約1.5N以下、約0.7N以下、約0.5N以下、約0.3N以下、又は約0.1N以下である。いくつかの例では、硬化重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、保持時間後の力が、少なくとも約0.2N、少なくとも約0.5N、少なくとも約0.7N、少なくとも約0.9N、又は少なくとも約1.0Nである。いくつかの例では、硬化重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、保持時間後の力が、約0.1~約1.5N(例えば、約0.2~約0.9N、約0.3~約0.5N、又は約0.4~約0.9N)である。
【0062】
いくつかの例では、重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物を硬化させることから形成されるフィルム(例えば、38×50mmのフィルム、但しフィルムは任意の好適な寸法のものとすることができる)は、本明細書に記載の方法を使用して求めた最大力が、約1.5N以下、約0.7N以下、約0.5N以下、約0.3N以下、又は約0.1N以下である。いくつかの例では、硬化重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、最大力が、少なくとも約0.2N、少なくとも約0.5N、少なくとも約0.7N、少なくとも約0.9N、又は少なくとも約1.0Nである。いくつかの例では、硬化重合性エポキシ-アクリレート樹脂組成物は、最大力が、約0.1~約1.5N(例えば、約0.2~約0.9N、約0.3~約0.5N、又は約0.4~約0.9N)である。
【0063】
いくつかの例では、本明細書に記載の様々な実施形態の硬化性組成物は、硬化のために熱を必要としないが、熱は、硬化プロセスを加速させるために使用され得る。更に、いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、ホットメルトプロセスを使用して調製され、これにより、揮発性溶媒の必要性を回避し、その理由は、溶媒が、調達、取り扱い、及び廃棄に関連するコストのために望ましくないことが多いからである。
【0064】
研磨層中で使用される硬化性組成物中で有用な成分は、本明細書において列挙され、より詳細に記載される。
【0065】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物中に含まれる重合性エポキシ-アクリレート樹脂成分は、テトラヒドロフルフリル(THF)(メタ)アクリレートコポリマー成分と、1又は複数のエポキシ樹脂と、1又は複数のヒドロキシ官能性ポリエーテルと、を含む。
【0066】
テトラヒドロフルフリル(THF)(メタ)アクリレートコポリマー成分は、重合性混合物から形成される。特に指定がない限り、THFアクリレート及びメタクリレートは、THFAと略す。より具体的には、硬化性組成物は、1又は複数のテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートモノマーと、1又は複数のC~C(メタ)アクリレートエステルモノマーと、1又は複数の任意選択のカチオン反応性官能性(メタ)アクリレートモノマーと、1又は複数の連鎖移動剤と、1又は複数の光重合開始剤と、を含む、重合性組成物から形成されるTHFAコポリマー成分を含む。
【0067】
THFAコポリマー成分は、C~Cアルキル(メタ)アクリレートエステルモノマーを含む。有用なモノマーとしては、全ての異性体を含む、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチルアルコールのアクリレート及びメタクリレート、並びにこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、アルコールは、C~Cアルカノールから選択され、一定の実施形態では、アルカノールのモル平均炭素数はC~Cである。この範囲内で、コポリマーが、本明細書に記載のエポキシ樹脂成分と十分な混和性を有することが見出された。
【0068】
加えて、THFAコポリマー成分は、カチオン反応性モノマー(例えば、カチオン反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマー)を含有してもよい。このようなモノマーの例としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、及びトリメトキシシリルプロピルアクリレート等のアルコキシシリルアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0069】
いくつかの実施形態では、コポリマーは、他のものの中でも、得られるTHFAコポリマー成分の分子量を制御するように機能する1又は複数の連鎖移動剤を含む重合性混合物から形成される。有用な連鎖移動剤の例としては、四臭化炭素、アルコール、イソオクチルチオグリコレートなどのメルカプタン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。使用される場合、重合性混合物は、硬化性材料の総重量に基づいて、最大で0.5重量の連鎖移動剤を含んでもよい。例えば、重合性混合物は、0.01~0.5重量%、0.05~0.5重量%、又は0.05~0.2重量%の連鎖移動剤を含有し得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、THFAコポリマー成分は、その存在が、硬化性組成物のUV硬化前にエポキシ樹脂の重合を開始してしまう、酸官能性モノマーを本質的に含有しない。いくつかの実施形態では、コポリマーはまた、任意のアミン官能性モノマーを含有しない。更に、いくつかの実施形態では、コポリマーが、硬化性組成物のカチオン性硬化を抑制してしまうため、十分に塩基性である部分を有するアクリルモノマーを一切含有しない。
【0071】
THFAコポリマーは、一般に、(A)40~60重量%(例えば、50~60重量%及び45~55重量%)のテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートと、(B)40~60重量%(例えば、40~50重量%及び45~55重量%のC~C(例えば、C~C)アルキル(メタ)アクリレートエステルモノマーと、(C)0~10重量%(例えば、1~5重量%、0~5重量%、及び0~2重量%)のカチオン反応性官能性モノマーとの、重合モノマー単位を含み、(A)~(C)の和は100重量%である。
【0072】
本明細書に記載の様々な実施形態の硬化性組成物は、研磨層(硬化及び/又は未硬化)の所望の特性に応じた様々な量で、1又は複数のTHFAコポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、1又は複数のTHFAコポリマーを、硬化性組成物中のモノマー/コポリマー100総重量部に基づいて、15~50重量部(例えば、25~35重量部)の量で含む。
【0073】
硬化性組成物は、1又は複数の熱可塑性ポリエステルを含んでいてもよい。好適なポリエステル成分は、半結晶性ポリエステル並びに非晶質及び分岐ポリエステルを含む。しかし、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の様々な実施形態の硬化性組成物は、熱可塑性ポリエステルを実質的に含まず、微量を超えない熱可塑性ポリエステルを含有し、又は硬化性組成物の特性に材料として影響を及ぼさない量を含有する。
【0074】
熱可塑性ポリエステルは、ポリカプロラクトン及びポリエステル(ヒドロキシル及びカルボキシル終端を有する)を含んでいてもよく、室温で非晶質又は半結晶性であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリエステルは、室温で半結晶性である、ヒドロキシル基を末端とするポリエステルである。「非晶質」である材料は、ガラス転移温度は有しているが、示差走査熱量計(「DSC」)上で決定される測定可能な結晶融点を示さない。いくつかの実施形態では、ガラス転移温度は、約100℃未満である。「半結晶性」である材料は、DSCによって求められた結晶融点を提示し、いくつかの実施形態では、最高融点は約120℃である。
【0075】
またポリマーにおける結晶化度は、それが冷却するときに、非晶質状態まで加熱されていたシートの混濁又は不透明さに反映される可能性がある。ポリエステルポリマーを加熱して溶融状態にし、ライナ上にナイフコーティングしてシートを形成すると、それは非晶質であり、シートは透明で光に対してかなり透過性があると見える。シート材料中のポリマーが冷却すると、結晶性ドメインが形成され、結晶化は、シートが混濁して半透明又は不透明な状態になることで特徴付けられる。種々の結晶化度を有する非晶質ポリマーと半結晶性ポリマーとの任意の適合する組み合わせで混合することによって、結晶化度をポリマー中で変えてもよい。非晶質状態まで加熱された材料は、使用又は応用する前に、その半結晶性状態に戻るまで十分な時間放置することが全般的に好ましい。シートの混濁によって、ポリマー中で結晶化がある程度起こったことを判定する好都合な非破壊の方法が得られる。
【0076】
ポリエステルは、所与の温度における結晶化速度を増加させる成核剤を含んでもよい。有用な成核剤には微結晶ワックスが含まれる。好適なワックスには、14炭素原子よりも長い長さの炭素鎖を含むアルコール(CAS#71770-71-5)、又はエチレンホモポリマー(CAS#9002-88-4)(Baker Hughes(ヒューストン、テキサス州)によって、UNILIN(商標)700として販売)を含めることができるであろう。
【0077】
いくつかの実施形態では、ポリエステルは、室温で固体である。ポリエステルは、約7,500g/モル~200,000g/モル(例えば、約10,000g/モル~50,000g/モル、及び約15,000g/モル~30,000g/モル)の数平均分子量を有することができる。
【0078】
本明細書に記載の様々な実施形態の硬化性組成物中での使用に有用なポリエステルは、ジカルボン酸(又はそれらのジエステル等価物)とジオールとの反応生成物を含む。二塩基酸(又はジエステル等価物)は、4~12の炭素原子を含む飽和脂肪酸(分岐、非分岐、又は環式材料(環内に5~6の炭素原子を有する)を含む)及び/又は8~15の炭素原子を含む芳香族酸とすることができる。好適な脂肪酸の例は以下の通りである。コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカンニ酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、2-メチルコハク酸、2-メチルペンタン二酸、3-メチルヘキサン二酸など。好適な芳香族酸としては以下が挙げられる。テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、及び4,4’-ジフェニルアミンジカルボン酸。いくつかの実施形態では、二塩基酸中の2つのカルボキシル基間の構造は、炭素原子及び水素原子のみを含有する。いくつかの特定の実施形態では、二塩基酸中の2つのカルボキシル基間の構造は、フェニレン基である。前述した二塩基酸のブレンドを用いてもよい。
【0079】
ジオールは、2~12の炭素原子を有する分岐、非分岐状、及び環式脂肪族ジオールを含む。好適なジオールの例としては以下が挙げられる。エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロブタン-1,3-ジ(2’-エタノール)、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、及びネオペンチルグリコール。アルキレン基が2~9個の炭素原子(例えば、2~4個の炭素原子)を含有するポリ(オキシアルキレン)グリコールを含む長鎖ジオールもまた使用され得る。前述したジオールのブレンドを用いてもよい。
【0080】
有用な市販のヒドロキシル基を末端とするポリエステル材料としては以下が挙げられる。Evonik Industries(エッセン、ノルトラインウェストファーレン、ドイツ)から入手可能な種々の飽和直鎖半結晶性コポリエステル、例えばDYNAPOL(商標)S1401、DYNAPOL(商標)S1402、DYNAPOL(商標)S1358、DYNAPOL(商標)S1359、DYNAPOL(商標)S1227、及びDYNAPOL(商標)S1229。Evonik Industriesから入手可能な有用な飽和直鎖非晶質コポリエステルとしては、DYNAPOL(商標)1313及びDYNAPOL(商標)S1430が挙げられる。
【0081】
硬化性組成物は、1又は複数の熱可塑性ポリエステルを、研磨層の所望の特性に応じて変化する量で含むことができる。いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、1又は複数の熱可塑性ポリエステルを、硬化性組成物中のモノマー/コポリマーの総重量に基づいて最大で50重量パーセントの量で含む。存在するならば、1又は複数の熱可塑性ポリエステルは、いくつかの実施形態では、組成物中のモノマー/コポリマーの総重量に基づいて、少なくとも5重量パーセント、少なくとも10重量パーセント、少なくとも12重量パーセント、少なくとも15重量パーセント、又は少なくとも20重量パーセントの量で存在する。存在するならば、1又は複数の熱可塑性ポリエステルは、いくつかの実施形態では、硬化性組成物中のモノマー/コポリマーの総重量に基づいて、最大で20重量パーセント、最大で25重量パーセント、最大で30重量パーセント、最大で40重量パーセント、又は最大で50重量パーセントの量で存在する。
【0082】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、少なくとも1つのエポキシド官能基を含むポリマーである1又は複数のエポキシ樹脂を含む。本開示の組成物中で有用なエポキシ樹脂又はエポキシドは、開環によって重合可能な少なくとも1つのオキシラン環を有する任意の有機化合物であってもよい。いくつかの例では、エポキシ樹脂中の平均エポキシ官能基は、1つよりも多く、いくつかの事例では、少なくとも2つである。エポキシドは、モノマー若しくはポリマーの、脂肪族、脂環式、複素環式、芳香族、水素化、又はこれらの混合物であり得る。いくつかの例では、エポキシドは、1分子当たり1.5よりも多いエポキシ基、いくつかの例では、1分子当たり少なくとも2つのエポキシ基を含有する。有用な材料は、典型的には150g/モル~10,000g/モル(例えば、180g/モル~1,000g/モル)の重量平均分子量を有する。エポキシ樹脂の分子量は、硬化性組成物又は硬化組成物の所望の特性を付与するように選択され得る。好適なエポキシ樹脂としては、末端エポキシ基を有する直鎖ポリマーエポキシド(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格にエポキシ基を有するポリマーエポキシド(例えば、ポリブタジエンポリエポキシ)、及びペンダントエポキシ基を有するポリマーエポキシド(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)、並びにこれらの混合物が挙げられる。エポキシド含有材料は、次の一般式を有する化合物を含む。
【0083】
【化1】
(式中、Rは、アルキル、アルコキシ又はアリールであり、nは、1~6の整数である。)
【0084】
エポキシ樹脂としては、芳香族グリシジルエーテル(例えば、多価フェノールを過度のエピクロロヒドリン、脂環式グリシジルエーテル、水素化グリシジルエーテル、及びこれらの混合物と反応させることによって調製したものなど)が挙げられる。このような多価フェノールとしては以下を挙げてもよい。レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、及び多核フェノール例えばp,p’-ジヒドロキシジベンジル、p,p’-ジヒドロキシジフェニル、p,p’-ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-1,1-ジナフチルメタン、及び2,2’、2,3’、2,4’、3,3’、3,4’、及び4,4’ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体、ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルメチルプロピルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルプロピルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルブチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルトリルエタン、ジヒドロキシジフェニルトリルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルジシクロヘキシルメタン、及びジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン。
【0085】
また、多価フェノールホルムアルデヒド縮合生成物、及び反応性基としてエポキシ基又はヒドロキシ基だけを含有するポリグリシジルエーテルも有用である。有用な硬化性エポキシ樹脂はまた、例えば、Lee and NevilによるHandbook of Epoxy Resins(McGraw-Hill Book Co.(1967))、及びEncyclopedia of Polymer Science and Technology(6,p.322(1986))を含む様々な刊行物にも記載されている。
【0086】
使用するエポキシ樹脂の選択は、その対象とする最終用途に依存することができる。例えば、より大きな延性量が必要な場合には、「可撓性骨格」を伴うエポキシドが望まれる。ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びビスフェノールFのジグリシジルエーテルなどの材料は、これらの材料が硬化によって達成する望ましい構造特性をもたらすことができ、一方、これらのエポキシの水素添加したバージョンは、油性表面を有する基材との適合性に有用であり得る。
【0087】
本開示において有用な市販のエポキシドの例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、Momentive Specialty Chemicals,Inc.(ウォーターフォード、ニューヨーク州)から商品名EPON(商標)828、EPON(商標)1001、EPON(商標)1004、EPON(商標)2004、EPON(商標)1510、及びEPON(商標)1310で入手可能なもの;Dow Chemical Co.(ミッドランド、ミシガン州)から商品名D.E.R.(商標)331、D.E.R.(商標)332、D.E.R.(商標)334、及びD.E.N.(商標)439で入手可能なもの;及びHexionから商品名EPONEX(商標)1510で入手可能なもの);ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(Huntsman Corporationから商品名ARALDITE(商標)GY 281で入手可能なもの);ジグリシジルエポキシ官能性を含有するシリコーン樹脂;難燃性エポキシ樹脂(例えば、Dow Chemical Co.から商品名D.E.R.(商標)560で入手可能な臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂);並びに1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0088】
少なくとも1つのグリシジルエーテル末端部分、いくつかの事例では飽和若しくは不飽和環状骨格を有するエポキシ含有化合物が、任意選択的に、反応性希釈剤として硬化性組成物に添加されてもよい。反応性希釈剤を、様々な目的で添加してもよく、例えば、加工を補助するため、例えば硬化性組成物の粘度を制御するため、並びに硬化中に硬化組成物をより可撓性にするため、及び/又は組成物中の材料を相溶化させるためである。
【0089】
このような希釈剤の例としては、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、トリメチロールエタンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、トリグリシジルp-アミノフェノール、N,N’-ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルメタ-キシリレンジアミン、及び植物油のポリグリシジルエーテルが挙げられる。反応性希釈剤は、Momentive Specialty Chemicals,Inc.からHELOXY(商標)107及びCARDURA(商標)N10として市販されている。組成物は、他の特徴の中でも、耐剥離性及び衝撃強さをもたらすことを助ける強化剤を含有してもよい。
【0090】
硬化性組成物は、エポキシ当量が100g/モル~1500g/モルである1又は複数のエポキシ樹脂を含有することができる。いくつかの例では、硬化性組成物は、エポキシ当量が300g/モル~1200g/モルである1又は複数のエポキシ樹脂を含有する。更に他の実施形態では、本明細書に記載の様々な実施形態の硬化性組成物は、2つ以上のエポキシ樹脂を含み、ここで、少なくとも1つのエポキシ樹脂は、エポキシ当量が150g/モル~250g/モルであり、少なくとも1つのエポキシ樹脂は、エポキシ当量が500g/モル~600g/モルである。
【0091】
硬化性組成物は、本明細書に記載の様々な実施形態の研磨物品の研磨層を構成する硬化性組成物の所望の特性に応じて変化する量で、1又は複数のエポキシ樹脂を含んでもよい。いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、1又は複数のエポキシ樹脂を、組成物100総重量部に基づいて、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも50重量部、又は少なくとも55重量部の量で含む。いくつかの実施形態では、1又は複数のエポキシ樹脂が、硬化性組成物中のモノマー/コポリマー100総重量部に基づいて、最大で45、最大で50重量部、最大で75重量部、又は最大で80重量部の量で存在する。
【0092】
ビニルエーテルは、エポキシ樹脂と同様にカチオン重合性である異なる種類のモノマーを表す。これらのモノマーは、本明細書で開示するエポキシ樹脂の代替案として、又はそれと組み合わせて用いることができる。
【0093】
特定の理論に一切拘泥するわけではないが、ビニルエーテルモノマーは高電子密度の二重接合を有して安定カルボカチオンを形成するため、このモノマーがカチオン重合において高反応性を有することができると考えられる。カチオン重合を抑止してしまうことを回避するために、ビニルエーテルモノマーを、窒素を含まないものに限定してもよい。その例としては以下が挙げられる。メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル。ビニルエーテルモノマーの好ましい例としては以下が挙げられる。トリエチレングリコールジビニルエーテル及びシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(両方とも、商品名RAPI-CUREでAshland,Inc.(コビントン、ケンタッキー州)から販売されている)。
【0094】
硬化性組成物は、1又は複数のヒドロキシ官能性ポリエーテルを更に含むことができる。いくつかの実施形態では、1又は複数のヒドロキシ官能性ポリエーテルは、25℃の温度及び1atm(101キロパスカル)の圧力で、液体である。いくつかの実施形態では、1又は複数のヒドロキシ官能性ポリエーテルとしては、ポリエーテルポリオールが挙げられる。ポリエーテルポリオールは、組成物中のモノマー/コポリマー100総重量部に対して、少なくとも5部、少なくとも10部、又は最大で15部の量で存在することができる。いくつかの実施形態では、ポリエーテルポリオールは、組成物中のモノマー/コポリマー100総重量部に対して、最大で15部、最大で20部、又は最大で30部の量で存在する。
【0095】
ヒドロキシ官能性ポリエーテルの例としては、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレントリオール、並びにポリテトラメチレンオキシドグリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
好適なヒドロキシ官能性ポリ(アルキレンオキシ)化合物としては、ポリテトラメチレンオキシドグリコールのPOLYMEG(商標)シリーズ(Lyondellbasell,Inc.(ジャクソン、テネシー州)製、ポリテトラメチレンオキシドグリコールのTERATHANE(商標)シリーズ(Invista(ニューアーク、デラウェア州)製);ポリテトラメチレンオキシドグリコールのPOLYTHF(商標)シリーズ(BASF SE(ルートヴィヒスハーフェン、ドイツ)製)、ポリオキシプロピレンポリオールのARCOL(商標)シリーズ(Bayer MaterialScience LLC(ピッツバーグ、ペンシルベニア州)製)、及びポリエーテルポリオールのVORANOL(商標)シリーズ(Dow Chemical Company(ミッドランド、ミシガン州)製)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
研磨層を形成するために使用される本明細書に記載の様々な実施形態の硬化性組成物は、少なくとも1つ、いくつかの事例では少なくとも2つのヒドロキシル基を有する1又は複数のヒドロキシル官能性フィルム形成ポリマーを更に含有することができる。本明細書で用いる場合、用語「ヒドロキシル官能性フィルム形成ポリマー」は、これもまたヒドロキシル基を含有しない本明細書に記載のポリエーテルポリオールを含まない。いくつかの実施形態では、フィルム形成ポリマーは、アミノ、及びメルカプト部分などの、その他の「活性水素」含有基を実質的に含まない。更に、フィルム形成ポリマーはまた、実質的に基がなくてよく、これは、熱的に不安定及び/又は光分解が不安定であるため、硬化の間、UV線に曝露しても、いくつかの事例では熱に曝露しても、化合物が分解しないことになる。
【0098】
ヒドロキシル含有フィルム形成ポリマーは、2つ以上の一級又は二級の脂肪族ヒドロキシル基(すなわち、ヒドロキシル基は非芳香族炭素原子に直接接合している)を含有する。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル官能性フィルム形成ポリマーは、ヒドロキシル価が少なくとも0.01である。特定の理論に一切拘泥するわけではないが、ヒドロキシル基は、エポキシ樹脂とのカチオン重合に関与すると考えられる。
【0099】
ヒドロキシル官能性フィルム形成ポリマーは、フェノキシ樹脂、エチレン酢酸ビニル(ethylene-vinyl acetate、EVA)コポリマー、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、及び周囲条件下で固体のポリビニルアセタール樹脂から選択してもよい。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル官能性フィルム形成ポリマーは、25℃の温度及び1atm(101キロパスカル)の圧力で、固体である。ヒドロキシル基は、末端に位置してよいし、ポリマー又はコポリマーから懸垂してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の様々な実施形態の硬化性組成物にフィルム形成ポリマーを添加することにより、動的な重なり剪断強度を改善することができ、及び/又は研磨層を作製するために使用される硬化性組成物のコールドフローを減少させることができる。
【0100】
ヒドロキシル含有フィルム形成ポリマーの1つの有用な分類は、ヒドロキシ含有フェノキシ樹脂である。望ましいフェノキシ樹脂としては、ジグリシジルビスフェノール化合物の重合から得られるものが挙げられる。典型的に、フェノキシ樹脂は、数平均分子量が60,000g/モル未満(例えば、20,000g/モル~30,000g/モルの範囲内)である。市販のフェノキシ樹脂としては以下が挙げられる(しかし、これらに限定されない)。PAPHEN(商標)PKHP-200(販売はInchem Corp.(ロックヒル、サウスカロライナ州))、ポリオキシアルキル化ビスフェノールAのSYNFAC(商標)シリーズ(Milliken Chemical、(スパータンバーグ、サウスカロライナ州))、例えばSYNFAC(商標)8009、8024、8027、8026、及び8031。
【0101】
別の有用な種類のヒドロキシル含有フィルム形成ポリマーは、EVAコポリマー樹脂のそれである。特定の理論に一切拘泥するわけではないが、これらの樹脂が少量の遊離ヒドロキシル基を含有すること、及びEVAコポリマーがカチオン重合中に更に脱アセチル化されることが考えられる。ヒドロキシル含有EVA樹脂を、例えば、前駆体EVAコポリマーを部分的に加水分解することによって得ることができる。
【0102】
好適なエチレン酢酸ビニルコポリマー樹脂としては、少なくとも28重量パーセントのビニルアセテートを含む熱可塑性EVAコポリマー樹脂が挙げられるが、これに限定されない。一実施形態では、EVAコポリマーは、コポリマーの、少なくとも28重量パーセントのビニルアセテート、望ましくは少なくとも40重量パーセントのビニルアセテート(例えば、少なくとも50重量パーセントのビニルアセテート、及び少なくとも60重量パーセントのビニルアセテート)を含有する熱可塑性コポリマーを含む。更なる実施形態では、EVAコポリマーは、28~99重量パーセントのビニルアセテート(例えば、40~90重量パーセントのビニルアセテート、50~90重量パーセントのビニルアセテート、及び60~80重量パーセントのビニルアセテート)の範囲内の量のビニルアセテートを、コポリマー中に含有する。
【0103】
市販のEVAコポリマーの例としては、E.I.Du Pont de Nemours and Co.(ウィルミントン、デラウェア州)からのELVAX(商標)150、210、250、260、及び265を含むELVAX(商標)シリーズ;Celanese,Inc.(アービング、テキサス州)からのATEVA(商標)シリーズ;Bayer Corp.(ピッツバーグ、ペンシルベニア州)からのLEVAPREN(商標)450、452、及び456(45重量パーセントのビニルアセテート)を含むLEVAPREN(商標)400シリーズ;それぞれがLanxess Corp.(ケルン、ドイツ)からのものである、LEVAPREN(商標)500 HV(50重量パーセントのビニルアセテート)、LEVAPREN(商標)600 HV(60重量パーセントのビニルアセテート)、LEVAPREN(商標)700 HV(70重量パーセントのビニルアセテート)、及びLEVAPREN(商標)KA 8479(80重量パーセントのビニルアセテート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
更なる有用なフィルム形成ポリマーとしては以下が挙げられる。ポリカプロラクトンポリオールシリーズのTONE(商標)シリーズ(販売は、ダウケミカル)、ポリカプロラクトンポリオールのCAPA(商標)シリーズ(Perstorp Inc.(Perstorp、スウェーデン))、及び飽和ポリエステルポリオールのDESMOPHEN(商標)シリーズ(Bayer Corporation(ピッツバーグ、ペンシルベニア州))、例えばDESMOPHEN(商標)631A 75。
【0105】
硬化性組成物は、硬化であっても未硬化であっても、1又は複数のヒドロキシル含有フィルム形成ポリマー樹脂を、硬化性組成物の望ましい特性に応じて変化し得る量で含む。硬化性組成物は、1又は複数のヒドロキシル含有フィルム形成ポリマー樹脂を、組成物中のモノマー/コポリマー100総重量部に基づいて、少なくとも10重量部、少なくとも15重量部、少なくとも20重量部、又は少なくとも25重量部の量で含むことができる。いくつかの実施形態では、1又は複数のヒドロキシル含有フィルム形成ポリマー樹脂は、組成物中のモノマー/コポリマーの100部総重量に基づいて、最大で20部、最大で25部、又は最大で50部の量で存在することができる。
【0106】
本明細書に記載の様々な実施形態の硬化性組成物中での使用に有用な光重合開始剤としては、i)前駆体ポリマー(例えば、いくつかの実施形態では、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートコポリマー)を重合させるために使用される光重合開始剤、及びii)硬化性組成物を最終的に重合させるために使用される光重合開始剤が挙げられる。
【0107】
前者の光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル;IRGACURE(商標)651(BASF SE)又はESACURE(商標)KB-1(Sartomer Co.(ウェストチェスター、ペンシルベニア州))として入手可能な2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、ジメトキシヒドロキシアセトフェノンなどの置換アセトフェノン;2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換α-ケトール;2-ナフタレン-スルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド;並びに1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシ-カルボニル)オキシムなどの光活性オキシムが挙げられる。いくつかの特定の実施形態では、光重合開始剤は置換アセトフェノンである。
【0108】
いくつかの実施形態では、光重合開始剤は、ノリッシュI開裂を起こしてアクリル二重結合への付加により開始可能なフリーラジカルを生成する光活性化合物である。いくつかの実施形態では、このような光重合開始剤は、前駆体ポリマー組成物100部当たり0.1~1.0pbwの量で存在する。このような光重合開始剤の例には、化学線に曝露されると酸を発生させることができる化合物であるイオン性光酸発生器が挙げられるが、これらに限定されない。これらはカチオン重合を開始させるために広範囲に渡って用いられる。この場合、それらはカチオン性光重合開始剤と言う。
【0109】
有用なイオン性光酸発生器としては以下が挙げられる。ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(Hampford Research Inc.(ストラトフォード、コネチカット州)からのFP5034(商標))、トリアリールスルホニウム塩(ジフェニル(4-フェニルチオ)フェニルスホニウムヘキサフルオロアンチモネートの混合物、Synasia Metuchen(ニュージャージー州)からSynaPI-6976(商標)として入手可能なビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドヘキサフルオロアンチモネート、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(4-ert-ブチルフェニル)ヨードニウムトシレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフレート、([4-(オクチルオキシ)フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート)、([4-(オクチルオキシ)フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート)、(4-イソプロピルフェニル)(4-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Rhodorsil 2074(商標)としてBluestar Silicones(イーストブランズウィック、ニュージャージー州)から入手可能)、ビス(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Omnicat 440(商標)としてIGM Resins Bartlett(イリノイ州)から入手可能)、4-[(2-ヒドロキシ-1-テトラデシクロオキシ)フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(CT-548(商標)としてChitec Technology Corp.(台北、台湾)から入手可能)、ジフェニル(4-フェニルチオ)フェニルスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドビス(ヘキサフルオロホスフェート)、ジフェニル(4-フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル)スルフィドヘキサフルオロアンチモネート、及びこれらのトリアリルスルホニウム塩のブレンド(Synasia(メタチェン、ニュージャージー州)から、それぞれPF6塩及びSbF6塩に対するSYNA(商標)PI-6992及びSYNA(商標)PI-6976として入手可能)。イオン性光酸発生器の同様のブレンドが、Aceto Pharma Corporation(ポートワシントン、ニューヨーク州)から、UVI-6992及びUVI-6976として入手可能である。
【0110】
光重合開始剤は、コポリマーの所望の架橋度を達成するのに十分な量で用いる。所望の架橋度は、(硬化若しくは未硬化にかかわらず)研磨層の所望の特性に応じて、又は(硬化若しくは未硬化にかかわらず)研磨層の厚さに応じて変化し得る。所望の架橋度を達成するのに必要な光重合開始剤の量は、光重合開始剤の量子収量(吸収された光子当たりの放出された酸の分子の数)、ポリマーマトリックスの透過率、照射の波長及び継続時間、並びに温度に依存する。全般的に、光重合開始剤は、組成物中の全モノマー/コポリマー100重量部に対して、少なくとも0.001重量部、少なくとも0.005重量部、少なくとも0.01重量部、少なくとも0.05重量部、少なくとも0.1重量部、又は少なくとも0.5重量部の量で使用される。光重合開始剤は、全般的に、組成物中の全モノマー/コポリマーの100重量部に対して、最大で5重量部、最大で3重量部、最大で1重量部、最大で0.5重量部、最大で0.3重量部、又は最大で0.1重量部の量で使用される。
【0111】
本明細書に記載の様々な実施形態の硬化性組成物は、任意の数の任意選択の添加剤を更に含有してもよい。このような添加剤は、組成物中の1又は複数の成分と同種又は異種であり得る。異種添加剤は特性が離散的(例えば、粒子)又は連続的であってもよい。
【0112】
前述の添加剤は、構造層組成物の重量及び/又はコストを減少させるために、粘度を調整するために、及び/又は更なる強化を付与するために、又は提供した方法で使用される組成物及び物品の熱伝導率を修正してより急速な若しくは均一な硬化が実現され得るようにするために、例えば、充填剤、安定剤、可塑剤、粘着付与剤、流れ調整剤、硬化速度遅延化剤、接着促進剤(例えば、シラン、例えば(3-グリシドオキシプロピル)トリメトキシシラン(glycidoxypropyl trimethoxysilane、GPTMS)、及びチタン酸塩)、補助剤、衝撃改質剤、膨張性ミクロスフェア、熱伝導性粒子、導電性粒子など、例えばシリカ、ガラス、粘土、タルク、顔料、着色剤、ガラスビーズ、又は泡、及び酸化防止剤を含むことができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、1又は複数の繊維強化材料を含有することができる。繊維強化材料の使用は、改善されたコールドフロー特性、限定された伸縮性、及び高められた強度を有する研磨層を付与することができる。好ましくは、1又は複数の繊維強化材料は一定の多孔度を有し、このことは、全体にわたって分散され得る光重合開始剤が、UV光により活性化して、熱を用いる必要なく適切に硬化されることを可能にする。
【0114】
1又は複数の繊維強化材は1又は複数の繊維含有織物を含んでいてもよい。例えば、限定することなく、織布、不織布、編地、及び一方向配列の繊維である。1又は複数の繊維強化材は不織布(例えばスクリム)を含むことができる。
【0115】
1又は複数の繊維強化材を作るための材料は、前述した織物の1つに形成することができる任意の繊維形成材料を含んでいてもよい。好適な繊維形成材料として、ポリエステル、ポリオレフィン、及びアラミドなどのポリマー材料;木材パルプ及び木綿などの有機材料;ガラス、炭素、及びセラミックなどの無機材料;コア成分(例えば、上記繊維のいずれか)及びコーティングを有するコーティングされた繊維;並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
繊維強化材料の更なるオプション及び優位点が米国特許出願公開第2002/0182955号(Weglewskiら)に説明されている。
【0117】
本明細書で論じられるように、THFAコポリマー成分を形成するために使用される重合性組成物、研磨層を形成するために使用される硬化性組成物、及び/又はサイズコートを作製するために使用される組成物は、1又は複数の成分を重合する(例えば、光重合する)ために様々な活性化UV光源を使用して照射され得る。
【0118】
発光ダイオードに基づく光源は、多くの利点を可能にすることができる。これらの光源は単色とすることができ、単色は、本開示の目的上、分光分布が非常に狭い波長分布(すなわち、50nm範囲以下内に制限される)によって特徴付けられるという意味を含む。単色の紫外線であれば、照射されているコーティング及び基材に対する熱損傷又は有害な深UV効果を減らすことができる。より大規模な用途では、UV-LED源の電力消費量を小さくすることによって、省エネルギー及び環境影響の低減を可能にすることもできる。
【0119】
いくつかの実施形態では、光重合開始剤の分光分布をUV光源の吸収スペクトルにマッチさせることが厳密すぎると、厚い研磨層の劣った硬化をもたらすおそれがある。特定の理論に一切拘泥するわけではないが、UV源のピーク出力を光重合開始剤の励起波長と位置を合わせることは望ましくない可能性があると考えられ、その理由は、それが、「スキン」層の形成へと導き、そのことがモノマー混合物の粘度を劇的に増加させ、利用できるモノマーが反応性ポリマー鎖末端にアクセスする能力を徐々に妨げるからである。このアクセス不足の結果、もたらされるのは、スキン層の下の、未硬化の研磨層、又は部分的にしか硬化されていない研磨層の層であり、その後の、例えば研磨粒子を保持するための研磨層の破壊である。
【0120】
この技術的な問題は、UV光源として、分光分布が光重合開始剤が活性化される主要な励起波長からずれているものを用いることによって軽減することができる。本明細書で用いる場合、分光分布と所定の波長との間で「ずれる」ということは、所定の波長が、UV光源の出力の強度が著しい波長と重ならないことを意味する。一実施形態では、上記のずれは、正のずれである(例えば、分光分布が、光重合開始剤の主要な励起波長よりも高い波長に及ぶ)。
【0121】
本開示では、主要な励起波長を、光重合開始剤のUV吸収曲線における最高波長吸収ピーク(例えば、最も高い波長に位置する極大吸収ピーク)において規定することができ、これは、アセトニトリル溶液中0.03重量%の光重合開始剤濃度における分光計測によって求められる。
【0122】
いくつかの実施形態では、最高波長吸収ピークは最大で395nm、最大で375nm、又は最大で360nmの波長に位置している。
【0123】
いくつかの実施形態では、光重合開始剤の最高波長吸収ピークとUV光源のピーク強度との間の波長の差は、30nm~110nm、好ましくは40nm~90nm、より好ましくは60nm~80nmの範囲内である。
【0124】
光重合開始剤の十分な活性化を得るのに必要なUV線曝露時間は特に限定されない。いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、少なくとも0.25秒、少なくとも0.35秒、少なくとも0.5秒、又は少なくとも1秒間の曝露期間にわたり紫外線に曝露される。硬化性組成物を紫外線に、最大で10分間、最大で5分間、最大で2分間、最大で1分間、又は最大で20秒間の曝露期間にわたり曝露され得る。
【0125】
使用する照射時間に基づいて、UV線は、機能的硬化を得るのに十分なエネルギー密度をもたらすであろう。いくつかの実施形態では、UV線は、エネルギー密度として、少なくとも0.5J/cm、少なくとも0.75J/cm、又は少なくとも1J/cmを送出することができる。同じ又は代替的な実施形態において、UV線は、エネルギー密度として、最大で15J/cm、最大で12J/cm、又は最大で10J/cmを送出することができる。
【0126】
本明細書に記載の様々な実施形態の研磨物品は、研磨層112、212、及び312のいずれかなどの研磨層を含む。研磨層は、加工物を研磨する役割を果たす硬質鉱物を含有する層である。図1図3において、研磨層は、本明細書に記載の様々な実施形態の研磨層に固着した複数の研磨粒子114を含むコーティング研磨フィルムである。研磨粒子114は、研磨層116及びサイズコート118を包含する一連のコーティング動作を実施することによって、任意選択のバッキングに接着結合される。本明細書で言及されるように、研磨層は、硬化性組成物を硬化することから生じる。
【0127】
図1図3に示す構成では、研磨粒子114は、研磨物品100の表面に近接して、少なくとも研磨層116中に部分的に又は完全に埋め込まれている。これにより、工作物に対して研磨物品100を擦るときに、研磨粒子114が工作物に摩擦接触しやすくなる。
【0128】
広範な研磨粒子が、本明細書に記載の様々な実施形態において利用され得る。研磨粒子の特定のタイプ(例えば、サイズ、形状、化学的組成)は、研磨粒子の少なくとも一部分が、企図された末端使用の用途に好適である限り、研磨物品にとって特に重要であるとは考えられない。好適な研磨粒子は、例えば、立方晶窒化ホウ素、ジルコニア、アルミナ、炭化ケイ素、及びダイヤモンドから形成され得る。
【0129】
研磨粒子は、例えば、ランダムな形状又は破砕した形状;四角形、星形、又は六角形などの定形の(例えば対称の)外形;及び不定形の(例えば非対称の)外形を含む、様々なサイズ、形状、及び外形で提供されてもよい。
【0130】
研磨物品は、バッキング上に傾斜している(すなわち、直立してバッキングから外向きに延びている)研磨粒子の混合物、並びにそれらの側面上に平坦に位置する研磨粒子(すなわち、直立しておらず、バッキングから外向きに延びていない)研磨粒子の混合物を含んでもよい。
【0131】
研磨物品は、異なるタイプの研磨粒子の混合物を含んでもよい。例えば、研磨物品としては、板状粒子と非板状粒子との混合物、破砕粒子と成形粒子との混合物(バインダーを含有しない個別研磨粒子であってもバインダーを含有する塊研磨粒子であってもよい)、従来の非成形粒子と非板状研磨粒子との混合物(例えば、充填剤材料)、及びサイズの異なる研磨粒子の混合物が挙げられる。
【0132】
好適な成形研磨粒子の例は、例えば、米国特許第5,201,916(Berg)及び同第8,142,531(Adefrisら)に見出すことができる。成形研磨粒子が形成され得る材料は、αアルミナを含む。αアルミナ成形研磨粒子は、酸化アルミニウム一水和物の分散体から作製することができ、これは、当該技術分野において公知の技術に従って、ゲル化され、成形され、乾燥されて形状を保持し、焼成され、かつ焼結される。
【0133】
米国特許第8,034,137号(Ericksonら)は、それらの元の形状特徴の一部を保持する破片を形成するために特定の形状に形成されてから破砕されたアルミナ破砕研磨粒子を記載している。いくつかの実施形態では、成形αアルミナ粒子は、精密成形されている(すなわち、粒子は、それを作製するのに使用される製造ツール内の空洞の形状によって少なくとも部分的に決定される形状を有する)。このような成形研磨粒子及びその調製方法に関する詳細は、例えば、米国特許第8,142,531号(Adefrisら)、同第8,142,891号(Cullerら)、及び同第8,142,532号(Ericksonら)、並びに米国特許出願公開第2012/0227333号(Adefrisら)、同第2013/0040537号(Schwabelら)、及び同第2013/0125477号(Adefris)に見ることができる。
【0134】
適切な破砕研磨粒子の例には、溶融酸化アルミニウム、熱処理酸化アルミニウム、白色溶融酸化アルミニウム、3M CERAMIC ABRASIVE GRAINとして3M Company,St.Paul,Minnesotaから市販されているものなどのセラミック酸化アルミニウム材料、褐色酸化アルミニウム、青色酸化アルミニウム、炭化ケイ素(緑色炭化ケイ素を含む)、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、ガーネット、炭化チタン、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、ガーネット、溶融アルミナジルコニア、酸化鉄、クロミア、ジルコニア、チタニア、酸化スズ、石英、長石、すい石、金剛砂、ゾルゲル由来セラミック(例えば、αアルミナ)、及びこれらの組合せを含む、破砕研磨粒子が挙げられる。更なる例には、米国特許第5,152,917号(Pieperら)に記載のものなどの、バインダーマトリックス中の研磨粒子(板状であってもなくてもよい)の破砕研磨複合体が挙げられる。
【0135】
破砕研磨粒子が単離され得るゾルゲル由来研磨粒子、及びそれらの調製方法の例は、米国特許第4,314,827号(Leitheiserら)、同第4,623,364号(Cottringerら)、同第4,744,802号(Schwabel)、同第4,770,671号(Monroeら)、及び同第4,881,951号(Monroeら)に見出すことができる。破砕研磨粒子が、例えば、米国特許第4,652,275号(Bloecherら)、又は同第4,799,939号(Bloecherら)に記載のものなどの研磨塊を含み得ることもまた想到される。
【0136】
破砕研磨粒子は、例えば、ゾルゲル由来多結晶質αアルミナ粒子などのセラミック破砕研磨粒子を含む。αアルミナ、マグネシウムアルミナスピネル、及び希土類の六方晶系アルミン酸塩の晶子から構成されるセラミック破砕研磨粒子は、例えば、米国特許第5,213,591号(Celikkayaら)、並びに米国特許出願公開第2009/0165394(A1)号(Cullerら)、及び同第2009/0169816(A1)号(Ericksonら)に記載される方法による、ゾルゲル前駆体αアルミナ粒子を使用して、調製され得る。
【0137】
ゾル-ゲル由来研磨粒子の作製方法に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第4,314,827号(Leitheiser)、同第5,152,917号(Pieperら)、同第5,435,816号(Spurgeonら)、同第5,672,097号(Hoopmanら)、同第5,946,991号(Hoopmanら)、同第5,975,987号(Hoopmanら)、及び同第6,129,540号(Hoopmanら)、並びに米国特許出願公開第2009/0165394(A1)号(Cullerら)に見出すことができる。好適な板状破砕研磨粒子の例は、例えば、米国特許第4,848,041号(Kruschke)に見出すことができる。
【0138】
バインダーに対する破砕研磨粒子の接着を強化するために、研磨粒子は、カップリング剤(例えば、オルガノシランカップリング剤)又はその他の物理的処理(例えば、酸化鉄又は酸化チタン)を用いて表面処理されてよい。
【0139】
研磨層は、いくつかの実施形態では、複数の形成研磨粒子(例えば、3M(セント・ポール、ミネソタ州)から入手可能な精密成形粒(precision shaped grain、PSG)の鉱物粒子であり、これらは本明細書でより詳細に記載され、図1図3には示していない)と、複数の研磨粒子114との微粒子混合物、又は研磨層に接着固着された形成研磨粒子のみが挙げられる。
【0140】
いくつかの例では、形成研磨粒子と研磨粒子114とは、静止時に、形成研磨粒子と研磨粒子114とが同時に、研磨物品で切削されることになる面に接触するように、実質的に同一の平面上にある。他の例では、形成研磨粒子と研磨粒子114とは、図1図3に示すように配置されてもよく、ここで、形成研磨粒子と研磨粒子114とは、静止時に、実質的に形成研磨粒子のみが、研磨物品で切削されることになる面に接触するように、異なる平面上にある。なおも他の例では、形成研磨粒子と研磨粒子114とは、静止時に、実質的に研磨粒子114のみが、研磨物品で切削されることになる面に接触するように、形成研磨粒子と研磨粒子114とが異なる平面上にあるように配置されてもよい。形成研磨粒子と研磨粒子114とが同一の平面上にあるか異なる平面上にあるかは、いくつかの例では、形成研磨粒子と研磨粒子114との相対的なサイズに依存する。更に、いくつかの例では、形成研磨粒子と研磨粒子114とが同一の平面上にある又は異なる平面上にある本明細書に記載の配置構成のいずれかを実現するために、形成研磨粒子と研磨粒子114との相対的なサイズが選択され得る。
【0141】
本明細書で使用するとき、用語「形成研磨粒子」は、一般に、少なくとも部分的に再現された形状を有する研磨粒子(例えば、形成されたセラミック研磨粒子)を指す。形成研磨粒子を作製するための非限定的なプロセスは、所定の形状を有する成形型内で前駆体研磨粒子を成形すること、所定の形状を有するオリフィスから前駆体研磨粒子を押し出すこと、所定の形状を有する印刷スクリーンの開口部から前駆体研磨粒子を印刷すること、又は前駆体研磨粒子を所定の形状若しくはパターンにエンボス加工すること、を含む。形成研磨粒子の非限定的な例は、参照によりその全体が本明細書に記載されるかのように本明細書に組み込まれる米国特許公開第2013/0344786号に記載されている。形成研磨粒子の非制限的な例としては、参照によりその全体が本明細書に記載されるかのように本明細書に組み込まれる米国再発行特許第35,570号、米国特許第5,201,916号、米国特許第5,984,998号に開示されている、三角板などの成形型内で形成された成形研磨粒子、又は参照によりその全体が本明細書に記載されるかのように本明細書に組み込まれる米国特許第5,372,620号にその一例が開示されている、Saint-Gobain Abrasivesにより製造されている、円形断面を有することが多い押し出された長尺状のセラミックロッド/フィラメントが挙げられる。本明細書で使用するとき、形成研磨粒子は、機械的な破砕作業によって得られるランダムな径の研磨粒子を包含しない。
【0142】
形成研磨粒子としては成形研磨粒子も挙げられる。本明細書で使用するとき、用語「成形研磨粒子」は、一般に、その研磨粒子の少なくとも一部が、成形前駆体研磨粒子の形成に使用される成形型キャビティから再現された所定の形状を有する、研磨粒子を指す。研磨破片の場合(例えば、米国特許公開第2009/0169816号に記載)を除き、成形研磨粒子は、一般に、成形研磨粒子の形成に用いられた成形型キャビティを実質的に再現する所定の幾何学形状を有することになる。本明細書で使用するとき、成形研磨粒子は、機械的な破砕作業によって得られるランダムな径の研磨粒子を包含しない。
【0143】
形成研磨粒子としてはまた、あたかもその全体が本明細書に記載されるかのように参照により本明細書に組み込まれる、公開されているPCT出願番号WO2016/160357号に開示のものなどの「板状破砕研磨粒子」も挙げられる。要約すると、「板状破砕研磨粒子」という用語は、一般に、幅及び長さより小さい厚さによって特徴付けられるプレートレット及び/又はフレークに似た破砕研磨粒子を指す。例えば、厚さは、長さ及び/又は幅の1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/8、1/9未満、又は更には1/10未満であってもよい。同様に幅は、長さの1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/8、1/9未満、又は更には1/10未満であってもよい。
【0144】
形成研磨粒子としては、参照によりその全体が本明細書に記載されるかのように本明細書に組み込まれる米国特許公開第2015/267097号に開示されているものなどの精密成形粒(PSG)も挙げられる。
【0145】
形成研磨材粒子と研磨粒子とは、同一又は異なる材料から作製することができる。例えば、形成研磨粒子と研磨粒子114とは限定されず、当該技術分野で公知の多様な硬質鉱物のうちのいずれかで構成することができる。好適な研磨粒子の例としては、例えば、溶融酸化アルミニウム、熱処理酸化アルミニウム、白色溶融酸化アルミニウム、黒色炭化ケイ素、緑色炭化ケイ素、二ホウ化チタン、炭化ホウ素、窒化ケイ素、炭化タングステン、炭化チタン、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、六方晶窒化ホウ素、ガーネット、溶融アルミナジルコニア、アルミナ系ゾルゲル由来研磨粒子、シリカ、酸化鉄、クロミア、セリア、ジルコニア、チタニア、酸化スズ、γアルミナ、及びこれらの混合物、が挙げられる。アルミナ研磨粒子は、金属酸化物改質剤を含有してもよい。ダイヤモンド及び立方晶窒化ホウ素研磨粒子は、単結晶又は多結晶とすることができる。
【0146】
形成研磨粒子は、あたかもその全体が本明細書に記載されるかのように参照により本明細書に組み込まれる、公開されている米国特許公開第2015/267097号及び同第2016/0311084号に記載されている方法を含む、当該技術分野で公知の方法に従い作製することができる。
【0147】
いくつかの実施例では、形成研磨粒子は、約1ミクロン~約15000ミクロン、約10ミクロン~約10000ミクロン、及び約150ミクロン~約2600ミクロンの範囲の長さを有するように選択することができるが、他の長さもまた使用されてもよい。形成研磨粒子はまた、約0.1ミクロン~約3500ミクロン、約100ミクロン~約3000ミクロン、及び約100ミクロン~約2600ミクロンの範囲の幅を有するように選択することもできるが、他の長さもまた使用されてもよい。本明細書において成形研磨粒子に言及して使用される用語「長さ」は、成形研磨粒子の最大寸法を指す。「幅」は、長さに垂直である成形研磨粒子の最大寸法を指す。用語「厚さ」又は「高さ」は、長さ及び幅に垂直である成形研磨粒子の寸法を指す。
【0148】
いくつかの例では、形成研磨粒子は、約80マイクロメートル~約150マイクロメートル(例えば、約75マイクロメートル~約150マイクロメートル、約90マイクロメートル~約110マイクロメートル、約90マイクロメートル~約100マイクロメートル、約85マイクロメートル~約110マイクロメートル、又は約95マイクロメートル~約120マイクロメートル)の実質的に単分散の粒径を有する。本明細書で使用するとき、用語「実質的に単分散の粒径」は、実質的に異ならない径を有する形成研磨粒子を説明するために使用する。このため、例えば、100マイクロメートルの粒径を有する形成研磨粒子(例えばPSG鉱物粒子)について述べる場合、形成研磨粒子の90%超、95%超、又は99%超は、その最大寸法が100マイクロメートルである粒子を有する。
【0149】
対照的に、研磨粒子114は、粒径の範囲又は分布を有することができる。かかる分布は、メジアン粒径によって特徴付けられ得る。例えば、研磨粒子のメジアン粒径は、少なくとも0.001マイクロメートル、少なくとも0.005マイクロメートル、少なくとも0.01マイクロメートル、少なくとも0.015マイクロメートル、又は少なくとも0.02マイクロメートルであってもよい。いくつかの例では、研磨粒子のメジアン粒径は、最大300マイクロメートル、最大275マイクロメートル、最大250マイクロメートル、最大150マイクロメートル、又は最大100マイクロメートルであってもよい。いくつかの例では、研磨粒子のメジアン粒径は、約50マイクロメートル~約2502000マイクロメートル(例えば、メジアン粒径は、約50マイクロメートル~約100マイクロメートル、約75マイクロメートル~約150マイクロメートル、約100マイクロメートル~約200マイクロメートル、又は約100マイクロメートル~約250マイクロメートル、約500マイクロメートル~約1000マイクロメートル、又は約1000マイクロメートル~約1700マイクロメートル)である。
【0150】
いくつかの例では、形成研磨粒子と研磨粒子とは、微粒子混合物の全体重量に基づいて、研磨層内に含まれる微粒子混合物中に互いに対して異なる重量パーセント量で存在する。いくつかの例では、微粒子混合物は、約0重量%~10重量%未満(例えば、約1重量%~10重量%未満、約1重量%~約5重量%、約1重量%~約3重量%、約3重量%~約10重量%未満、約3重量%~約5重量%、約5重量%~約10重量%未満、又は約3重量%~約8重量%)の形成研磨粒子を含む。
【0151】
いくつかの例では、微粒子混合物は、約90重量%超~約99重量%(例えば、約91重量%~約97重量%、約92重量%~約97重量%、約95重量%~約97重量%、又は約90重量%超~約97重量%)の研磨粒子を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の様々な実施形態の研磨物品は、サイズコート118を含む。いくつかの例では、サイズコートは、ビス-エポキシドの硬化した(例えば、光重合した)製品(例えば、株式会社ダイセル(東京、日本)から入手可能な3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート);三官能性アクリレート(例えば、Sartomer USA,LLC(エクストン、ペンシルベニア州)から商品名「SR351」で入手可能なトリメチロールプロパントリアクリレート);酸性ポリエステル分散剤(例えば、Byk-Chemie,GmbH(ヴェッセル、ドイツ)からの「BYK W-985」);充填剤(例えば、The Cary Company(アディソン、イリノイ州)から商品名「MINEX 10」で得られるナトリウム-カリウムアルミナシリケート充填剤);光重合開始剤(例えば、Dow Chemical Company(ミッドランド、ミシガン州)から商品名「CYRACURE CPI 6976」で得られるトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート/プロピレンカーボネート光重合開始剤;及びBASF Corporation(フローラムパーク、ニュージャージー州)から商品名「DAROCUR 1173」で得られるα-ヒドロキシケトン光重合開始剤を含む。
【0153】
本明細書に記載の様々な実施形態の研磨物品は、任意選択的に、バッキング110、210、及び310のうちのいずれかなどのバッキングを含む。バッキングは、コーティングされた研磨物品を作製するための当該技術分野で公知の多くの材料のうちのいずれかから構成することができる。必ずしも限定されていないが、バッキングは、少なくとも0.02ミリメートル、少なくとも0.03ミリメートル、0.05ミリメートル、0.07ミリメートル、又は0.1ミリメートルの厚さを有することができる。バッキングは、最大5ミリメートル、最大4ミリメートル、最大2.5ミリメートル、最大1.5ミリメートル、又は最大0.4ミリメートルの厚さを有することができる。
【0154】
いくつかの例では、バッキングは可撓性であり、中実(図1に示すように)又は多孔質のいずれかであってもよい。可撓性バッキングの材料としては、ポリオレフィンフィルムなどの(プライム化フィルムを含む)ポリマーフィルム(例えば、二軸配向ポリプロピレンを含むポリプロピレン、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、セルロースエステルフィルム)、ポリウレタンゴム、金属箔、メッシュ、ポリマー発泡体(例えば、天然スポンジ材又はポリウレタン発泡体)、布(例えば、ポリエステル、ナイロン、シルク、綿、及び/又はレーヨン、を含む繊維又は糸から作製された布)、スクリム、紙、コート紙、加硫紙、加硫繊維、不織布材料、それらの組み合わせ、及びそれらの処理されたもの、が挙げられる。バッキングはまた、2つの材料(例えば、紙/フィルム、布/紙、フィルム/布)の積層体であってもよい。布のバッキングは、編組み又はステッチボンディングとしてもよい。いくつかの例では、バッキングは、使用中に横方向(すなわち、平面内)に伸縮することができる薄く順応性があるポリマーフィルムである。
【0155】
いくつかの例では、幅5.1cm(2インチ)、長さ30.5cm(12インチ)、及び厚さ0.102mm(4mils)であるかかるバッキング材料のストリップは、22.2ニュートン(5重量ポンド)の静加重を受けると、ストリップの元の長さに対して、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1.0%、少なくとも1.5%、少なくとも2.0%、少なくとも2.5%、少なくとも3.0%、又は少なくとも5.0%長手方向に延びる。他の例では、このバッキングのストリップは、ストリップの元の長さに対して、最大20%、最大18%、最大16%、最大14%、最大13%、最大12%、最大11%、又は最大10%長手方向に延びる。バッキング材料の伸張は、弾性(完全なスプリングバックあり)、非弾性(スプリングバックなし)、又は弾性伸張と非弾性伸張との組み合わせであり得る。この特性は、研磨粒子とその下にある加工物との間の接触を促進させることを助けることができ、かつ加工物が隆起領域及び/又は凹領域を含む場合に特に有益であり得る。
【0156】
有用なバッキングは非常に順応性が高いものであり得る。バッキングで使用することができる順応性の高いポリマーとしては、特定のポリオレフィンコポリマー、ポリウレタン、及びポリビニルクロライドが挙げられる。ポリオレフィンコポリマーの一例は、エチレンアクリル酸樹脂(Dow Chemical Company(ミッドランド、ミシガン州)から商品名「PRIMACOR 3440」で入手可能)である。任意選択的に、エチレンアクリル酸樹脂は2層フィルムのうちの一方の層であり、他方の層がポリエチレンテレフタレート(「PET」)キャリアフィルムである。この例では、PETフィルムは、バッキング自体の一部ではなく、研磨物品100を使用する前に剥離される。エチレンアクリル酸樹脂表面からPETを剥離することができるが、これら2つの層が研磨物品の使用中にともに滞留するように、エチレンアクリル酸樹脂とPETとを結合することもできる。
【0157】
いくつかの例では、バッキングは、少なくとも10、少なくとも12、又は少なくとも15重量キログラム/cm(kgf/cm)の弾性率を有する。いくつかの例では、バッキングは、最大200、最大100、又は最大30kgf/cmの弾性率を有する。バッキングは、100%伸長時(その元の長さの2倍)の引張強度が、少なくとも200kgf/cm、少なくとも300kgf/cm、又は少なくとも350kgf/cmである。バッキングの引張強度は、最大で900kgf/cm、最大で700kgf/cm、又は最大で550kgf/cmであり得る。これらの特性を備えたバッキングは様々な選択肢及び利点を提供することができ、そのいくつかは、参照により全体が記載されるかのように本明細書に組み込まれる米国特許第6,183,677号(Usuiら)に記載されている。
【0158】
任意選択的に、バッキングは、飽和剤、プレサイズ層、又はバックサイズ層のうちの少なくとも1つを有してもよい。これらの材料を使用して、バッキングを密閉するか、又はバッキング内にある糸若しくは繊維を保護することができる。バッキングが布材である場合、典型的には、これらの材料のうちの少なくとも1つが使用される。有利には、プレサイズ層又はバックサイズ層を追加すると、バッキングの前面及び/又は背面のいずれかの上に平滑な表面を付与することができる。参照により全体が記載されるかのように本明細書に組み込まれる米国特許第5,700,302号(Stoetzelら)に記載されているように、当該技術分野で公知の他の任意選択の層を用いることもできる。
【0159】
記載される様々な実施形態の研磨物品は、スーパーサイズコート122、222、及び322のうちのいずれかなどのスーパーサイズコートを含む。一般に、スーパーサイズコートは、研磨物品の最外側のコーティングであり、研磨作業中に加工物に直接接触する。スーパーサイズコートは、いくつかの例では、実質的に透明である。
【0160】
本明細書で使用するとき、用語「実質的に透明」は、少なくとも約30%、40%、50%、60%、若しくは少なくとも約70%以上のように大部分又はほとんどが透明であることを指す。いくつかの例では、本明細書に記載の任意のコート(例えば、スーパーサイズコート)の透明度の尺度はコートの透過率である。いくつかの例では、約98%の透過率を有する、6×12インチ×約1~2mil(15.24×30.48cm×25.4~50.8μm)の透明ポリエステルフィルムの試料を透過する500nmの光の透過率を測定する透過率試験によれば、スーパーサイズコートは、少なくとも5パーセント、少なくとも20パーセント、少なくとも40パーセント、少なくとも50パーセント、又は少なくとも60パーセントの透過率(例えば、約40パーセント~約80パーセント、約50パーセント~約70パーセント、約40パーセント~約70パーセント、又は約50パーセント~約70パーセントの透過率)を示す。
【0161】
スーパーサイズコートの1つの成分は、研削助剤とすることができる。研削助剤は、微粒子材料であり、それを研磨物品へ添加することは、研磨の化学的及び物理的プロセスに対して著しい効果を有し、そのため改善された性能をもたらすと定義される。一般に、研削助剤の添加は、コーティングされた研磨物品の耐用年数を増加させる。研削助剤は、多様な異なる材料を包含し、無機であっても有機であってもよい。研削助剤の例としては、ワックス、有機ハライド化合物、ハライド塩、及び金属、並びにこれらの合金が挙げられる。有機ハライド化合物は、典型的には、研磨中に分解し、ハロゲン酸又はガス状のハライド化合物を放出する。こうした材料の例としては、塩素化ワックス、例えばテトラクロロナフタレン、ペンタクロロナフタレン、及びポリ塩化ビニルが挙げられる。ハライド塩の例としては、フッ化アルミニウムナトリウム、塩化ナトリウム、カリウムクリオライト、ナトリウムクリオライト、アンモニウムクリオライト、テトラフルオロホウ酸カリウム(例えば、KBF4)、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、フッ化ケイ素、塩化カリウム、及び塩化マグネシウムが挙げられる。金属の例としては、スズ、鉛、ビスマス、コバルト、アンチモン、カドミウム、鉄及びチタンが挙げられる。他の研削助剤としては、硫黄、有機硫黄化合物、黒鉛及び金属硫化物が挙げられる。異なる研削助剤の組み合わせを使用することもまた、本発明の範囲内にあり、いくつかの事例において、これは、相乗的効果をもたらすことができる。研削助剤の上述の例は、研削助剤の代表的なものであることを意味し、全ての研削助剤を包含することを意味するものではない。研削助剤の更なる例としては、メタリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、及びポリ塩化ビニルとテトラフルオロホウ酸カリウムとのブレンドが挙げられる。
【0162】
スーパーサイズコートの1つの成分は、長鎖脂肪酸の金属塩(例えば、C12~C22脂肪酸、C14~C18脂肪酸、及びC16~C20脂肪酸)であり得る。いくつかの例では、長鎖脂肪酸の金属塩はステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸の塩)である。ステアリン酸の共役塩基は、ステアリン酸アニオン(ステアレートアニオン)としても知られているC1735COOである。有用なステアレートとしては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0163】
長鎖脂肪酸の金属塩は、スーパーサイズコートの正規化した重量(すなわち、研磨物品の単位表面積当たりの平均重量)に基づいて、少なくとも10重量パーセント、少なくとも50重量パーセント、少なくとも70重量パーセント、少なくとも80重量パーセント、又は少なくとも90重量パーセントの量で存在し得る。長鎖脂肪酸の金属塩は、スーパーサイズコートの正規化した重量に基づいて、最大100重量パーセント、最大99重量パーセント、最大98重量パーセント、最大97重量パーセント、最大95重量パーセント、最大90重量パーセント、最大80重量パーセント、又は最大60重量パーセント(例えば、約10重量%~約100重量%、約30重量%~約70重量%、約50重量%~約90重量%、又は約50重量%~約100重量%)の量で存在し得る。
【0164】
スーパーサイズ組成物の別の成分はポリマーバインダーであり、ポリマーバインダーは、いくつかの例では、スーパーサイズコートの形成に使用される組成物が研磨層上に平滑で連続したフィルムを形成することを可能にする。一例では、ポリマーバインダーはスチレンアクリルポリマーバインダーである。いくつかの例では、スチレンアクリルポリマーバインダーは、JONCRYL(登録商標)LMV7051などの変性スチレンアクリルポリマーのアンモニウム塩であるが、これに限定されない。スチレンアクリルポリマーのアンモニウム塩は、例えば、重量平均分子量(M)が、少なくとも100,000g/モル、少なくとも150,000g/モル、少なくとも200,000g/モル、又は少なくとも250,000g/モル(例えば、約100,000g/モル~約2.5×10g/モル、約100,000g/モル~約500,000g/モル、又は約250,000~約2.5×10g/モル)であり得る。
【0165】
MFFTとも呼ばれる最低フィルム形成温度は、ポリマーが半乾燥状態で自己融着して連続したポリマーフィルムを形成する最低温度である。本開示の文脈では、このポリマーフィルムは、その後、スーパーサイズコート内に存在する残りの固形物のバインダーとして機能することができる。いくつかの例では、スチレンアクリルポリマーバインダー(例えば、スチレンアクリルポリマーのアンモニウム塩)は、最大90℃、最大80℃、最大70℃、最大65℃、又は最大60℃のMFFTを有する。
【0166】
いくつかの例では、バインダーは比較的低温(例えば70℃以下)で乾燥される。乾燥温度は、いくつかの例では、スーパーサイズコートの長鎖脂肪酸成分の金属塩の融解温度を下回る。過度に高い温度(例えば、80℃を上回る温度)を使用したスーパーサイズコートの乾燥は、バッキングの脆化及び割れを引き起こし、ウェブの取り扱いが複雑になり、製造コストが増大する可能性があるため望ましくない。低MFFTによって、例えばスチレンアクリルポリマーのアンモニウム塩を含むバインダーにより、DOWANOL(登録商標)DPnPなどの界面活性剤の添加を必要とせず、より低いバインダーレベルかつより低温でのより良好なフィルム形成の実現が可能となる。
【0167】
ポリマーバインダーは、スーパーサイズコートの正規化した重量に基づいて、少なくとも0.1重量パーセント、少なくとも1重量パーセント、又は少なくとも3重量パーセントの量で存在し得る。更に、ポリマーバインダーは、スーパーサイズコートの正規化した重量に基づいて、最大20重量パーセント、最大12重量パーセント、最大10重量パーセント、又は最大8重量パーセントの量で存在し得る。有利には、変性スチレンアクリルコポリマーのアンモニウム塩をバインダーとして用いる場合、ステアレートコーティングに通常伴う曇りが大幅に低減される。本明細書に記載のエポキシ樹脂をバインダーとして使用することもできる。
【0168】
本開示のスーパーサイズコートは、スーパーサイズコート中に分散された粘土粒子を任意選択的に含有する。粘土粒子は、存在する場合、長鎖脂肪酸の金属塩、ポリマーバインダー、及びスーパーサイズ組成物の他の成分と均一に混合することができる。粘土は、光学的透明度の向上及び切削性能の向上などの、研磨物品に特有の有利な特性を与えることができる。粘土粒子を含有すれば、粘土添加剤が存在しないスーパーサイズコートと比較して、切削性能がより長期間持続することも可能になる。
【0169】
粘土粒子は、存在する場合、スーパーサイズコートの正規化した重量に基づいて、少なくとも0.01重量パーセント、少なくとも0.05重量パーセント、少なくとも0.1重量パーセント、少なくとも0.15重量パーセント、又は少なくとも0.2重量パーセントの量で存在し得る。更に、粘土粒子は、スーパーサイズコートの正規化した重量に基づいて、最大99重量パーセント、最大50重量パーセント、最大25重量パーセント、最大10重量パーセント、又は最大5重量パーセントの量で存在し得る。
【0170】
粘土粒子は、任意の公知の粘土材料の粒子を含んでもよい。かかる粘土材料としては、スメクタイト類、カオリン類、イライト類、クロライト類、蛇紋石類、アタパルジャイト類、パリゴルスカイト類、バーミキュライト類、海緑石類、セピオライト類、及び混合層状粘土、の地質学的分類のものが挙げられる。具体的なスメクタイト類としては、特に、モンモリロナイト(例えば、ナトリウムモンモリロナイト又はカルシウムモンモリロナイト)、ベントナイト、パイロフィライト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ノントロナイト、タルク、バイデライト、及びボルコンスコイトが挙げられる。具体的なカオリン類としては、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、アンチゴライト、アナウキサイト、ハロイサイト、インデライト、及びクリソタイルが挙げられる。イライト類としては、ブラバイ石、白雲母、パラゴナイト、金雲母及び黒雲母が挙げられる。クロライト類としては、例えば、コレンス石、ペンニンサイト、ドンバサイト、須藤石、苦土緑泥石、及びクリノクロアが挙げられる。混合層状粘土としては、アレバルダイト及びバーミキュライトバイオタイトを挙げることができる。これらの層状粘土の変種及び同形置換体もまた使用され得る。
【0171】
研磨性能は、任意選択の添加剤として、スーパーサイズコート(例えば粘土粒子)中に相互分散されたナノ粒子(すなわち、ナノスケール粒子)によって更に向上され得る。有用なナノ粒子としては、例えば、ジルコニア、チタニア、シリカ、セリア、アルミナ、酸化鉄、バナジア、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ、及びアルミナシリカなどの金属酸化物のナノ粒子が挙げられる。ナノ粒子は、少なくとも1ナノメートル、少なくとも1.5ナノメートル、又は少なくとも2ナノメートルのメジアン粒径を有し得る。メジアン粒径は、最大200ナノメートル、最大150ナノメートル、最大100ナノメートル、最大50ナノメートル、又は最大30ナノメートルとすることができる。
【0172】
スーパーサイズ組成物の他の任意選択の成分としては、硬化剤、界面活性剤、消泡剤、殺生物剤、及びスーパーサイズ組成物での使用が知られる当該技術で公知の他の粒子状添加剤が挙げられる。
【0173】
いくつかの例では、スーパーサイズコートは、成分を一般的な溶媒に溶解又は分散させたスーパーサイズ組成物を提供することによって、形成することができる。いくつかの例では、溶媒は水である。好適に混合した後、スーパーサイズ分散体を下にある層の上にコーティングし、乾燥させて、仕上げたスーパーサイズコートを得ることができる。硬化剤が存在する場合、スーパーサイズ組成物は、熱又は化学線への曝露のいずれかにより硬化剤を活性化させることによって、硬化(cured)(例えば、硬化(hardened))することができる。
【0174】
例えば研磨層上へのスーパーサイズ組成物のコーティングは、任意の公知のプロセスを使用して実施することができる。いくつかの例では、スーパーサイズ組成物は、所定のコーティング重量を達成するために一定圧力でスプレーコーティングすることによって適用される。あるいは、ナイフコーターの間隙高さによってコーティング厚さを制御する、ナイフコーティング法を使用することができる。
【0175】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、1~40個の炭素原子(C~C40)、1~約20個の炭素原子(C~C20)、1~12個の炭素原子(C~C12)、1~8個の炭素原子(C~C)、又はいくつかの実施形態では、3~6個の炭素原子(C~C)を有する直鎖及び分岐状アルキル基を指す。直鎖状アルキル基の例としては、1~8個の炭素原子を有するもの、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、及びn-オクチル基が挙げられる。分枝状アルキル基の例としては、イソプロピル基、イソ-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、及び2,2-ジメチルプロピル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0176】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、-O-アルキル基を指し、ここで、「アルキル」は、本明細書で定義されている。
【0177】
本明細書で使用される用語「アリール」は、環内にヘテロ原子を含有しない環状芳香族炭化水素を指す。したがってアリール基としては、フェニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニル基、インダセニル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ナフタセニル基、クリセニル基、ビフェニレニル基、アントラセニル基及びナフチル基が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、アリール基は、基の環部分に、約6~約14個の炭素(C~C14)、又は6~10個の炭素原子(C~C10)を含有する。
【0178】
本明細書で使用される用語「約」は、値又は範囲におけるある程度の変動性、例えば、記述されている値の又は記述されている範囲の限界の、10%以内、5%以内、又は1%以内を許容することができる。
【0179】
本明細書で別段の指定がない限り、本明細書で使用される用語「実質的に」は、その大部分又はほとんどを指し、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、又は少なくとも約99.999%、又はそれ以上を指す。
【0180】
本明細書で別段の指定がない限り、本明細書で使用される用語「実質的にない」は、その少数又はほとんどないことを指し、約10%未満、5%、2%、1%、0.5%、0.01%、0.001%未満、又は約0.0001%以下を指す。
【0181】
範囲の形式で表される値は、その範囲の限界として明示的に記載されている数値を含むだけでなく、その範囲内に含まれる全ての個々の数値又は部分範囲も、あたかも各数値範囲及び部分範囲が明示的に記載されているかのように含むと、柔軟に解釈すべきである。例えば、「約0.1%~約5%」又は「約0.1%~5%」という範囲は、約0.1%~約5%だけでなく、示された範囲内の各値(例えば、1%、2%、3%、及び4%)及び部分範囲(例えば、0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むと解釈すべきである。「約X~Y」という記述は、特に断りのない限り、「約Y~約X」と同じ意味を有する。同様に、「約X、Y、又は約Z」という記述は、特に断りのない限り、「約X、約Y、又は約Z」と同じ意味を有する。
【0182】
本文書において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、又は「その(the)」という用語は、文脈上明確な別段の指示がない限り、1又は複数を含めるために使用される。「又は」という用語は、特に断りのない限り非排他的な(nonexclusive)「又は」を指すために使用される。加えて、本明細書で使用され、かつ別の定義がなされていない表現又は用語は、説明のみを目的としたものであり、限定するものではないことが理解されるべきである。セクション見出しの任意の使用は、文書の読み取りを支援することを意図しており、限定するものとして解釈されるべきではない。更に、セクション見出しに関連する情報は、その特定のセクション内又はセクション外で生じ得る。更に、この文書内で参照されている全ての出版物、特許、及び特許文献は、あたかも参照により個別に組み込まれるかのようにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書と、参照することによってそのように組み込まれたこれらの文献との間に一致しない語法がある場合、組み込まれた参照文献の語法は、本明細書の語法の補足と解釈されるべきである。すなわち、相いれない不一致については本明細書の語法が優先する。
【0183】
本明細書に記載の方法において、工程は、時間的又は操作上の順序が明示的に記載されている場合を除いて、本発明の原理を逸脱することなく任意の順序で実施され得る。更に、明示的な特許請求の範囲の文言が、それらが別個に実施されると記載していない限り、特定の工程は同時に行われ得る。例えば、Xをすると特許請求されている工程、及びYをすると特許請求されている工程は、単一の操作内で同時に行うことができ、結果として生じるプロセスは、特許請求されているプロセスの文言上の範囲内に入ることになる。
【実施例
【0184】
本明細書に記載の実施例は、予測的なものではなく、単に例示的であることを意図するものであり、製造及び試験手順におけるバリエーションは、異なる結果をもたらすことができる。実施例セクション中の全ての定量値は、用いられた手順に含まれる公知の許容誤差を考慮した近似的なものと理解される。上記の詳細な説明及び実施例は、理解しやすいように示したものにすぎない。これによって不必要な限定がなされるものではない。
【0185】
実施例の記載にあたり以下の略語を用いる。
【0186】
【表1】
【0187】
別段の記載がない限り、全ての試薬は、Sigma-Aldrich Company(St.Louis,Missouri)などの化学ベンダから得られたか、入手可能であるか、公知の方法で合成することができる。別段の記載がない限り、全ての比は乾燥重量による。
【0188】
本実施例で使用される材料及び試薬に関する略語は以下のとおりである。
ACR:トリアクリル酸トリメチロールプロパン、Allnex Inc.(ブリュッセル、ベルギー)から商品名「TMPTA」で得た
ARCOL:ポリエーテルポリオール、Bayer Material Science,LLC(ピッツバーグ、ペンシルベニア州)から商品名「ARCOL LHT 240」で得た
BA:アクリル酸ブチル、BASF Corp.(フローラムパーク、ニュージャージー州)から得た
CHDM:1,4-シクロヘキサンジメタノール、Sigma-Aldrich Companyから得た
CPI-6976:4-チオフェニルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートと、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビス(ヘキサフルオロアンチモネート)との炭酸プロピレン中混合物、Aceto Corporation(ポートワシントン、ニューヨーク州)から商品名「CPI 6976」で得た
D-1173:α-ヒドロキシケトン光重合開始剤、BASF Corporationから商品名「DAROCUR 1173」で得た
E-828:ビスフェノール-Aエポキシ樹脂のジグリシチルエーテル、Momentive Specialty Chemicals,Inc.(コロンバス、オハイオ州)から商品名「EPON 828」で得た
E-1001F:ビスフェノール-Aエポキシ樹脂のジグリシチルエーテル、Momentive Specialty Chemicals,Inc.から商品名「EPON 1001F」で得た
E-1510:210~220g/当量のエポキシ当量を有するビスフェノール-Aエポキシ樹脂、Momentive Specialty Chemicals,Inc.から商品名「EPONEX 1510」で得た
EC-1511:50重量%のステアリン酸カルシウム水性サスペンション、セッケン分散体、eChem Ltd.(リーズ、イギリス)から商品名「EC-1511」で得た
GMA:メタクリル酸グリシジル、Dow Chemical Company(ミッドランド、ミシガン州)から得た
GPTMS:3-(グリシドオキシプロピル)トリメトキシシラン、United Chemical Technologies,Inc.(ブリストル、ペンシルベニア州)から得た
I-651:ベンジルジメチルケタール光重合開始剤、BASF Corporationから商品名「IRGACURE 651」で得た
IOTG:イソオクチルチオグリコレート、Evans Chemetics,LP(ティーネック、ニュージャージー州)から得た
IRG:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン-1-オン、BASF Corporationから商品名「IRGACURE 1173」で得た
JCRYL:80℃を超えるMFFT、98℃のTを有する、48.0重量%の水性非フィルム形成性スチレンアクリルエマルション、BASF Companyから商品名「JONCRYL J89」で得た
MX-10:ナトリウム-カリウムアルミナシリケート充填剤、Unimin Corporation(ニューカナーン、コネチカット州)から商品名「MINEX 10」で得た
LVPREN:エチレン-ビニルアセテートコポリマー、Lanxess Corporation(ピッツバーグ、ペンシルベニア州)から商品名「LEVAPREN 700HV」で得た
P180 FSX:P180グレードのアルミナオキシド研磨鉱物、Imerys Fused Minerals GmbH(フィラハ、オーストリア)から商品名「ALODUR BFRPL」で得た
PKHA:フェノキシ樹脂、InChem Corporation(ロックヒル、サウスカロライナ州)から商品名「PHENOXY PKHA」で得た
PP:紫色の顔料、Penn Color(ドイレスタウン、ペンシルベニア州)から商品名「9S93」で市販
SAP:成形研磨粒子、米国特許第8,142,531号(Adefrisら)の開示に従って調製した。成形研磨粒子は、正三角形のポリプロピレン金型キャビティ内でアルミナのゾルゲルを成形することによって調製した。乾燥及び焼成後、得られた成形研磨粒子は、約0.20mm(辺長)×0.05mm厚であり、抜け勾配は約98°であった。
SR-351:トリアクリル酸トリメチロールプロパン、Sartomer USA,LLC(エクストン、ペンシルベニア州)から商品名「SR351」で入手可能
SU-2.5:芳香族高含有量の多官能性エポキシ樹脂、Momentive Specialty Chemicals,Inc.から商品名「EPON SU-2.5」で得た
SU-8:ポリマー固体エポキシノボラック樹脂、Momentive Specialty Chemicals,Inc.から商品名「EPON Resin SU-8」又は「EPIKOTE 157」で得た
THFA:アクリル酸テトラヒドロフルフリル、V-150、San Esters Corporation(ニューヨーク、ニューヨーク州)から得た
UVI-6976:炭酸プロピレン中50重量%トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、Aceto Pharma Corporation(ポートワシントン、ニューヨーク州)から商品名「UVI-6976」で得た
UVR-6110:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、株式会社ダイセル(東京、日本)から得た
W-985:酸性ポリエステル界面活性剤、Altana AG(ヴェッセル、ドイツ)から商品名「BYK W-985」で得た
【0189】
アクリルコポリマーは、米国特許第5804610号(Hamerら)の方法によって調製した。アクリルモノマーとラジカル光重合開始剤(I-651)と連鎖移動剤(IOTG)とを、アンバーガラスジャー内で合わせ、手動でかき混ぜて混合することにより、溶液を調製した。この溶液を、熱融着したエチレンビニルアセテート系フィルムのコンパートメント内に、25グラムのアリコートとして分配し、16℃の水浴に浸し、UV光(UVA=4.7mW/cm、片面当たり8分)を使用して重合させた。
【0190】
(実施例1)
ホットメルト配合及びコーティング組成物を、50又は250グラム容量の加熱された混合ヘッド及び混練要素が搭載されたBRABENDERミキサー(C.W.Brabender Instruments,Inc.(ハッケンサック、ニュージャージー州)を用いて調製した。ミキサーを望ましい混合温度、120~150℃で稼動させ、混練要素を100rpmで動作させた。最初にアクリルコポリマーを添加し、数分間混合した。固体エポキシ樹脂及びヒドロキシ官能性フィルム形成ポリマーを添加し、混合物全体が均一な分布となるまで混合した。液体エポキシ樹脂、ポリオール、及びシラン材料を、均一な分布となるまで、徐々に添加した。得られた混合物を数分間攪拌し、次に光酸発生剤を滴加した。混合物を数分間攪拌し、次に、アルミニウムパンへ移し、冷却した。材料の塊を2つの剥離ライナの間に置き、液圧プレス(Carver Inc.(ウォバシュ、インディアナ州))を用いて、95℃まで加熱しながら押圧し、0.6mm厚のフィルムにした。
【0191】
P180 FSX鉱物約105g/mを、Spellman High Voltage Electronics Corporation(ホーポージ、ニューヨーク州)製のモデル「SL 150」静電コーターを用いて、21℃で25ボルトの電荷で、メイク樹脂フィルムの4×6インチ(10.16×15.24cm)のシート上に静電塗装した。研磨コーティングフィルムを、最初に、Fusion Systems Inc.(ゲイザースバーグ、メリーランド州)製の2つの「D」型電球を有するUVプロセッサを、600W/インチ(236W/cm)、50フィート/分)(15.24m/分)のライン速度で通過させることによって硬化させ、次いで140℃で5分間オーブン内で熱硬化させた。
【0192】
サイズ樹脂を次のとおり調製した。UVR-6110 387.8グラムを、黒色プラスチック容器中に21℃で装入し、SR-351 166.2グラムを、高速ミキサーを用いて樹脂中に分散させた。W-985 5.9グラムを添加し、続いてM-10 400グラムを添加し、約10分間混合した。この混合物に、CPI-6976 30グラム及びD-1173 10グラムを添加し、均質になるまで分散させた。次いで、得られたサイズ樹脂を、2ロールコーターを用いて21℃で、公称乾燥コーティング重量105g/mを用いて研磨メイク樹脂フィルム上にコーティングし、その後、それを、上記研磨メイク樹脂と同じ条件下で硬化させた。
【0193】
スーパーサイズ組成物を次のとおり調製した。EC-1511 90pbwを、21℃で高速ミキサーを用いて分散させ、その後、JCRYL 10pbwを添加し、混合物が均質になるまで混合を継続した。次いで、得られたスーパーサイズ組成物を、3ロールミルを用いて、乾燥コーティング重量14g/mで、硬化サイズコーティング研磨樹脂上に塗布し、21℃で16時間、次いで90℃で5分間乾燥させた。
【0194】
乾燥後、3M Company(セント・ポール、ミネソタ州)から得たタイプ「Super 77 MULTIPURPOSE ADHESIVE」を、スーパーサイズ層の反対側に、及びポリエステルループ材料の同様のサイズの試料に、噴霧した。2つの接着剤側を一緒に押圧し、手動ローラを用いて気泡を除去した。得られたループバッキング研磨コーティング樹脂を、21℃で約16時間乾燥させ、その後、6インチ(15.24cm)のディスクをその後のサンディング試験のためにダイカットした。
【0195】
(実施例2)
ループバッキング研磨コーティング樹脂を、実施例1に全般的に記載しているように調製し、ここで、P180 FSX鉱物を、P180 FSXとSAP研磨鉱物との90:10(重量による)ブレンドに置き換えた。
【0196】
(実施例3~6)
ループバッキング研磨コーティング樹脂を、表1に列挙する組成に従って、実施例1に全般的に記載しているように調製した。
【0197】
【表2】
【0198】
比較例A及びB
3M Companyから商品名「P180 270J」及び「P180 734U」で得た6インチ(15.24cm)ループバッキング研磨ディスクを、それぞれ比較例A及びBとして使用した。
【0199】
サンディング試験
研磨性能試験を、ACT Laboratories,Inc.(ヒルスデール、ミシガン州)から得たNEXA OEM型クリアコートを伴う18インチ×24インチ(45.7cm×61cm)の黒色塗装冷間圧延鋼試験板上で評価した。試験の目的で、研磨ディスクを、3M Companyから商品名「HOOKIT BACKUP PAD、部品番号05865」で市販されている6インチ(15.2cm)バックアップパッドに取り付けた。X-Yテーブル上に配置され、6000rpm及び3/16インチ(4.76mm)ストロークで作動するサーボ制御モータの二作用軸を用いてサンディングを実施し、研磨物品を15ポンド(6.80Kg)の荷重で、パネルに対して2.5°の角度で押し付けた。次いで、ツールを、長さに沿って3.5インチ/分(8.89cm/分)の速度で横断させ、次いでパネルの幅を合計1分間横断させた。このような、パネルの長さ及び幅に沿った4つのサイクルが完了し、合計4分間のサンディング時間が完了した。パネルの質量を各サイクルの前後で測定して、各サイクルのグラム単位の合計質量損失量、並びに4サイクルの終わりの累積質量損失量(合計切削量)を求めた。第3のパス重量を第1のパス重量で除算して切削寿命を計算し、試験中の性能低下を示した。平均表面仕上げ(Ra)を、Mahr Federal Inc.(プロビデンス、ロードアイランド州)製の接触粗面計モデル「PERTHOMETER M2」を用いて5箇所で測定した。
【0200】
表2に列挙する結果は、1試料当たり3枚のディスクの平均を表す。
【0201】
【表3】
【0202】
可撓性試験
実施例1及び2並びに比較例Bの38×50mmの断片を、Frank-PTI GmbH(ビルケナウ、ドイツ)から得た実験室フレックス試験機を用いて曲げモードにおいて試験した。試料を、0.005Nの予力及び10秒の保持時間でクランプした。曲げ試験を1秒当たり3°から最大で60°の角度で実施し、試験距離は20mmとした。表3に列挙した結果は、1試料当たり3つの測定値の平均を表す。
【0203】
【表4】
【0204】
本明細書に開示されている特定の構造、特徴、詳細、構成等が、多くの実施形態において変更され得る及び/又は組み合わされ得る単純な実施例であることが、当業者には明らかとなる。このようなバリエーション及び組み合わせは全て、本開示の境界内にあるものとして、本発明者により想到される。したがって、本開示の範囲は、本明細書に記載の特定の例示的な構造に限定されるべきではなく、少なくとも特許請求の範囲の文言によって説明される構造、及びこれらの構造の等価物にまで拡大する。記載されたとおりの本明細書と、参照によって本明細書に援用されるいずれかの文書の開示内容との間に矛盾又は食い違いが存在する場合、記載されたとおりの本明細書が優先するものとする。更に、この文書内で参照されている全ての出版物、特許、特許文献は、あたかもそれらの全体が本明細書に記載されるかのようにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4