(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】撮像装置、及び、その像ぶれ量算出方法
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20220413BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20220413BHJP
G03B 17/14 20210101ALI20220413BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B5/00 G
H04N5/232 480
G03B17/14
(21)【出願番号】P 2017012554
(22)【出願日】2017-01-26
【審査請求日】2020-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】321001056
【氏名又は名称】OMデジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 仁司
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-003719(JP,A)
【文献】特開2011-039436(JP,A)
【文献】特開2010-286651(JP,A)
【文献】特開2000-227613(JP,A)
【文献】特開2010-015107(JP,A)
【文献】特開2013-148717(JP,A)
【文献】特開2014-016451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
H04N 5/232
G03B 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を結像する撮影光学系を有する撮像装置であって、
前記撮影光学系の光軸と直交する第1平面上における異なる位置に配置される、第1方向と第2方向の加速度を検出する第1加速度センサ及び前記第1方向と前記第2方向の加速度を検出する第2加速度センサと、
前記光軸と前記第1加速度センサとの間の前記第2方向の距離
と前記光軸と前記第2加速度センサとの間の前記第2方向の距離と
の距離の比率と、前記第1加速度センサの前記第1方向の加速度検出値と、前記第2加速度センサの前記第1方向の加速度検出値とに基づいて、前記光軸上の第1位置における前記第1方向の加速度推定値を算出する第1加速度推定部と、
前記光軸と前記第1加速度センサとの間の前記第1方向の距離
と前記光軸と前記第2加速度センサとの間の前記第1方向の距離と
の距離の比率と、前記第1加速度センサの前記第2方向の加速度検出値と、前記第2加速度センサの前記第2方向の加速度検出値とに基づいて、前記第1位置における前記第2方向の加速度推定値を算出する第2加速度推定部と、
前記第1方向の加速度推定値と前記第2方向の加速度推定値を用いて、前記撮像装置における前記第1方向の並進方向の像ぶれ量と、前記第2方向の並進方向の像ぶれ量を算出するぶれ量算出部と、
を備えることを特徴とする。
【請求項2】
請求項1記載の撮像装置であって、
前記第1加速度センサと前記第2加速度センサとの間の中央に前記光軸が位置するように、前記第1加速度センサと前記第2加速度センサが配置され、
前記第1加速度推定部は、前記第1加速度センサの前記第1方向の加速度検出値と前記第2加速度センサの前記第1方向の加速度検出値の加算平均値を、前記第1方向の加速度推定値とし、
前記第2加速度推定部は、前記第1加速度センサの前記第2方向の加速度検出値と前記第2加速度センサの前記第2方向の加速度検出値の加算平均値を、前記第2方向の加速度推定値とする、
ことを特徴とする。
【請求項3】
請求項1又は2記載の撮像装置であって、
前記光軸と直交する第2平面上における異なる位置に配置される、前記第1方向と前記第2方向の加速度を検出する第3加速度センサ及び前記第1方向と前記第2方向の加速度を検出する第4加速度センサと、
前記光軸と前記第3加速度センサとの間の前記第2方向の距離と、前記光軸と前記第4加速度センサとの間の前記第2方向の距離と、前記第3加速度センサの前記第1方向の加速度検出値と、前記第4加速度センサの前記第1方向の加速度検出値とに基づいて、前記光軸上の第2位置における前記第1方向の加速度推定値を算出する第3加速度推定部と、
前記光軸と前記第3加速度センサとの間の前記第1方向の距離と、前記光軸と前記第4加速度センサとの間の前記第1方向の距離と、前記第3加速度センサの前記第2方向の加速度検出値と、前記第4加速度センサの前記第2方向の加速度検出値とに基づいて、前記第2位置における前記第2方向の加速度推定値を算出する第4加速度推定部と、
前記第1加速度推定部により算出された前記第1位置における前記第1方向の加速度推定値と、前記第3加速度推定部により算出された前記第2位置における前記第1方向の加速度推定値と、前記撮影光学系の前記光軸上の主点位置と前記第1位置との間の距離と、前記主点位置と前記第2位置との間の距離とに基づいて、前記主点位置における前記第1方向の加速度推定値を算出する第5加速度推定部と、
前記第2加速度推定部により算出された前記第1位置における前記第2方向の加速度推定値と、前記第4加速度推定部により算出された前記第2位置における前記第2方向の加速度推定値と、前記主点位置と前記第1位置との間の距離と、前記主点位置と前記第2位置との間の距離とに基づいて、前記主点位置における前記第2方向の加速度推定値を算出する第6加速度推定部と、
を更に備え、
前記ぶれ量算出部は、更に、前記主点位置における前記第1方向の加速度推定値と前記主点位置における前記第2方向の加速度推定値を用いて、前記撮像装置における像ぶれ量を算出する、
ことを特徴とする。
【請求項4】
請求項3記載の撮像装置であって、
前記撮像装置は、撮像素子を有するカメラ本体と、前記撮影光学系を有する交換式レンズとにより構成されるカメラシステムであって、
前記交換式レンズは、前記カメラ本体に対して着脱可能であり、
前記第1位置は、前記撮像素子の撮像面の撮像中心位置であり、
前記第2位置は、前記交換式レンズ内部の前記光軸上の任意の位置である、
ことを特徴とする。
【請求項5】
請求項4記載の撮像装置であって、
前記交換式レンズは、
前記カメラ本体との間でデータの送受信を行う第1レンズ通信部と、
前記カメラ本体との間で前記第1レンズ通信部よりも高速にデータの送受信を行う第2レンズ通信部と、
を備え、
前記カメラ本体は、
前記交換式レンズとの間でデータの送受信を行う第1カメラ通信部と、
前記交換式レンズとの間で前記第1カメラ通信部よりも高速にデータの送受信を行う第2カメラ通信部と、
を備え、
前記第2カメラ通信部は、前記カメラ本体が有する前記第1加速度センサ及び前記第2加速度センサの各々の加速度検出値に基づいて算出された前記第1位置における推定加速度検出値を前記第2レンズ通信部へ送信する、
ことを特徴とする。
【請求項6】
請求項1記載の撮像装置であって、
撮像素子と、
フォーカス調整機構により調整された前記撮影光学系の状態における前記撮像素子の撮像面上の合焦位置を検出する合焦位置検出部と、
を更に備え、
前記第1加速度推定部は、更に、前記合焦位置と前記第1加速度センサとの間の前記第2方向の距離と、前記合焦位置と前記第2加速度センサとの間の前記第2方向の距離と、前記第1加速度センサの前記第1方向の加速度検出値と、前記第2加速度センサの前記第1方向の加速度検出値とに基づいて、前記合焦位置における前記第1方向の加速度推定値を算出し、
前記第2加速度推定部は、更に、前記合焦位置と前記第1加速度センサとの間の前記第1方向の距離と、前記合焦位置と前記第2加速度センサとの間の前記第1方向の距離と、前記第1加速度センサの前記第2方向の加速度検出値と、前記第2加速度センサの前記第2方向の加速度検出値とに基づいて、前記合焦位置における前記第2方向の加速度推定値を算出し、
前記ぶれ量算出部は、更に、前記合焦位置における前記第1方向の加速度推定値と前記合焦位置における前記第2方向の加速度推定値を用いて、前記撮像装置における像ぶれ量を算出する、
ことを特徴とする。
【請求項7】
被写体を結像する撮影光学系と、前記撮影光学系の光軸と直交する平面上の異なる位置に配置される第1加速度センサ及び第2加速度センサとを有する撮像装置の像ぶれ量算出方法であって、
前記第1加速度センサによって、第1方向及び第2方向の加速度を検出することと、
前記第2加速度センサによって、前記第1方向及び前記第2方向の加速度を検出することと、
前記光軸と前記第1加速度センサとの間の前記第2方向の距離
と前記光軸と前記第2加速度センサとの間の前記第2方向の距離と
の距離の比率と、前記第1加速度センサの前記第1方向の加速度検出値と、前記第2加速度センサの前記第1方向の加速度検出値とに基づいて、前記光軸上の第1位置における前記第1方向の加速度推定値を算出することと、
前記光軸と前記第1加速度センサとの間の前記第1方向の距離
と前記光軸と前記第2加速度センサとの間の前記第1方向の距離と
の距離の比率と、前記第1加速度センサの前記第2方向の加速度検出値と、前記第2加速度センサの前記第2方向の加速度検出値とに基づいて、前記第1位置における前記第2方向の加速度推定値を算出することと、
前記第1方向の加速度推定値と前記第2方向の加速度推定値を用いて、前記撮像装置における前記第1方向の並進方向の像ぶれ量と、前記第2方向の並進方向の像ぶれ量を算出することと、
を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像ぶれを補正する機能を備えた撮像装置、及び、その像ぶれ量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ(以下単に「カメラ」という)の手ぶれ補正機能の進歩によって、カメラに生じる回転運動により撮影画像に生じるぶれ(像ぶれ)、所謂角度ぶれに関しては高い精度で補正することができる。
【0003】
しかしながら、被写体像を大きく写しこむマクロ撮影においては、カメラの平行移動により生じるぶれ(像ぶれ)、所謂シフトぶれ(平行ぶれ、並進ぶれ)の影響が大きくなる為、角度ぶれの補正だけでは不十分で、手ぶれによる画質劣化を生じるケースがある。
【0004】
こうしたことから、交換レンズに加わるぶれ(振れ)の加速度を検出する加速度センサと、ぶれの角速度を検出する角速度センサと、加速度センサ及び角速度センサによる加速度及び角速度の検出結果に基づいて角度ぶれの回転中心を演算し、ブレ補正レンズの目標位置を演算する目標位置変換部とを備え、この目標位置変換部により得られた演算結果に基づいてブレ補正レンズを駆動して像のぶれを補正するようにしたブレ補正装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加速度センサを使ったぶれ検出には様々な問題がある。
例えば、カメラの移動が完全な平行移動(即ち並進移動)の場合には、カメラ内の位置に関係なく、検出される加速度は一定であるが、回転運動を伴う場合には、カメラ内の位置により、検出される加速度が異なる。
【0007】
シフトぶれを正しく補正するためには、撮影光学系の光軸上の前側主点位置付近の加速度、移動速度、又は移動量を正確に検出する必要がある。しかしながら、カメラの構成上の制約から、撮影光学系の光軸上の前側主点位置付近に加速度センサを配置することはできない。
【0008】
本発明は、上記問題に着眼し為されたものであり、撮影光学系の前側主点位置における加速度又は移動速度を高精度に検出することができ、これにより平行移動による像ぶれを高精度に補正することができる撮像装置、及び、その像ぶれ量算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、被写体を結像する撮影光学系を有する撮像装置であって、前記撮影光学系の光軸と直交する第1平面上における異なる位置に配置される、第1方向と第2方向の加速度を検出する第1加速度センサ及び前記第1方向と前記第2方向の加速度を検出する第2加速度センサと、前記光軸と前記第1加速度センサとの間の前記第2方向の距離と前記光軸と前記第2加速度センサとの間の前記第2方向の距離との距離の比率と、前記第1加速度センサの前記第1方向の加速度検出値と、前記第2加速度センサの前記第1方向の加速度検出値とに基づいて、前記光軸上の第1位置における前記第1方向の加速度推定値を算出する第1加速度推定部と、前記光軸と前記第1加速度センサとの間の前記第1方向の距離と前記光軸と前記第2加速度センサとの間の前記第1方向の距離との距離の比率と、前記第1加速度センサの前記第2方向の加速度検出値と、前記第2加速度センサの前記第2方向の加速度検出値とに基づいて、前記第1位置における前記第2方向の加速度推定値を算出する第2加速度推定部と、前記第1方向の加速度推定値と前記第2方向の加速度推定値を用いて、前記撮像装置における前記第1方向の並進方向の像ぶれ量と、前記第2方向の並進方向の像ぶれ量を算出するぶれ量算出部と、を備える撮像装置を提供する。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記第1加速度センサと前記第2加速度センサとの間の中央に前記光軸が位置するように、前記第1加速度センサと前記第2加速度センサが配置され、前記第1加速度推定部は、前記第1加速度センサの前記第1方向の加速度検出値と前記第2加速度センサの前記第1方向の加速度検出値の加算平均値を、前記第1方向の加速度推定値とし、前記第2加速度推定部は、前記第1加速度センサの前記第2方向の加速度検出値と前記第2加速度センサの前記第2方向の加速度検出値の加算平均値を、前記第2方向の加速度推定値とする、撮像装置を提供する。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記光軸と直交する第2平面上における異なる位置に配置される、前記第1方向と前記第2方向の加速度を検出する第3加速度センサ及び前記第1方向と前記第2方向の加速度を検出する第4加速度センサと、前記光軸と前記第3加速度センサとの間の前記第2方向の距離と、前記光軸と前記第4加速度センサとの間の前記第2方向の距離と、前記第3加速度センサの前記第1方向の加速度検出値と、前記第4加速度センサの前記第1方向の加速度検出値とに基づいて、前記光軸上の第2位置における前記第1方向の加速度推定値を算出する第3加速度推定部と、前記光軸と前記第3加速度センサとの間の前記第1方向の距離と、前記光軸と前記第4加速度センサとの間の前記第1方向の距離と、前記第3加速度センサの前記第2方向の加速度検出値と、前記第4加速度センサの前記第2方向の加速度検出値とに基づいて、前記第2位置における前記第2方向の加速度推定値を算出する第4加速度推定部と、前記第1加速度推定部により算出された前記第1位置における前記第1方向の加速度推定値と、前記第3加速度推定部により算出された前記第2位置における前記第1方向の加速度推定値と、前記撮影光学系の前記光軸上の主点位置と前記第1位置との間の距離と、前記主点位置と前記第2位置との間の距離とに基づいて、前記主点位置における前記第1方向の加速度推定値を算出する第5加速度推定部と、前記第2加速度推定部により算出された前記第1位置における前記第2方向の加速度推定値と、前記第4加速度推定部により算出された前記第2位置における前記第2方向の加速度推定値と、前記主点位置と前記第1位置との間の距離と、前記主点位置と前記第2位置との間の距離とに基づいて、前記主点位置における前記第2方向の加速度推定値を算出する第6加速度推定部と、を更に備え、前記ぶれ量算出部は、更に、前記主点位置における前記第1方向の加速度推定値と前記主点位置における前記第2方向の加速度推定値を用いて、前記撮像装置における像ぶれ量を算出する、撮像装置を提供する。
【0012】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記撮像装置は、撮像素子を有するカメラ本体と、前記撮影光学系を有する交換式レンズとにより構成されるカメラシステムであって、前記交換式レンズは、前記カメラ本体に対して着脱可能であり、前記第1位置は、前記撮像素子の撮像面の撮像中心位置であり、前記第2位置は、前記交換式レンズ内部の前記光軸上の任意の位置である、撮像装置を提供する。
【0013】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記交換式レンズは、前記カメラ本体との間でデータの送受信を行う第1レンズ通信部と、前記カメラ本体との間で前記第1レンズ通信部よりも高速にデータの送受信を行う第2レンズ通信部と、を備え、前記カメラ本体は、前記交換式レンズとの間でデータの送受信を行う第1カメラ通信部と、前記交換式レンズとの間で前記第1カメラ通信部よりも高速にデータの送受信を行う第2カメラ通信部と、を備え、前記第2カメラ通信部は、前記カメラ本体が有する前記第1加速度センサ及び前記第2加速度センサの各々の加速度検出値に基づいて算出された前記第1位置における推定加速度検出値を前記第2レンズ通信部へ送信する、撮像装置を提供する。
【0014】
本発明の第6の態様は、第1の態様において、撮像素子と、フォーカス調整機構により調整された前記撮影光学系の状態における前記撮像素子の撮像面上の合焦位置を検出する合焦位置検出部と、を更に備え、前記第1加速度推定部は、更に、前記合焦位置と前記第1加速度センサとの間の前記第2方向の距離と、前記合焦位置と前記第2加速度センサとの間の前記第2方向の距離と、前記第1加速度センサの前記第1方向の加速度検出値と、前記第2加速度センサの前記第1方向の加速度検出値とに基づいて、前記合焦位置における前記第1方向の加速度推定値を算出し、前記第2加速度推定部は、更に、前記合焦位置と前記第1加速度センサとの間の前記第1方向の距離と、前記合焦位置と前記第2加速度センサとの間の前記第1方向の距離と、前記第1加速度センサの前記第2方向の加速度検出値と、前記第2加速度センサの前記第2方向の加速度検出値とに基づいて、前記合焦位置における前記第2方向の加速度推定値を算出し、前記ぶれ量算出部は、更に、前記合焦位置における前記第1方向の加速度推定値と前記合焦位置における前記第2方向の加速度推定値を用いて、前記撮像装置における像ぶれ量を算出する、撮像装置を提供する。
【0015】
本発明の第7の態様は、被写体を結像する撮影光学系と、前記撮影光学系の光軸と直交する平面上の異なる位置に配置される第1加速度センサ及び第2加速度センサとを有する撮像装置の像ぶれ量算出方法であって、前記第1加速度センサによって、第1方向及び第2方向の加速度を検出することと、前記第2加速度センサによって、前記第1方向及び前記第2方向の加速度を検出することと、前記光軸と前記第1加速度センサとの間の前記第2方向の距離と前記光軸と前記第2加速度センサとの間の前記第2方向の距離との距離の比率と、前記第1加速度センサの前記第1方向の加速度検出値と、前記第2加速度センサの前記第1方向の加速度検出値とに基づいて、前記光軸上の第1位置における前記第1方向の加速度推定値を算出することと、前記光軸と前記第1加速度センサとの間の前記第1方向の距離と前記光軸と前記第2加速度センサとの間の前記第1方向の距離との距離の比率と、前記第1加速度センサの前記第2方向の加速度検出値と、前記第2加速度センサの前記第2方向の加速度検出値とに基づいて、前記第1位置における前記第2方向の加速度推定値を算出することと、前記第1方向の加速度推定値と前記第2方向の加速度推定値を用いて、前記撮像装置における前記第1方向の並進方向の像ぶれ量と、前記第2方向の並進方向の像ぶれ量を算出することと、を有する像ぶれ算出方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撮影光学系の前側主点位置における加速度又は移動速度を高精度に検出することができ、これにより平行移動による像ぶれを高精度に補正することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係る撮像装置であるカメラを示す図である。
【
図2】Z方向の軸を光軸とした場合に、それと直交する平面上の異なる位置に2つの加速度センサが配置されたケースを示す図である。
【
図3】Z方向の軸を光軸とした場合に、その光軸上の異なる位置に2つの加速度センサが配置されたケースを示す図である。
【
図4】第1の実施形態に係る撮像装置であるカメラの構成例を示す図である。
【
図5】第1の実施形態に係る、撮影光学系と2つの加速度センサを光軸方向(カメラ正面側)から見た図である。
【
図6】第1の実施形態に係るぶれ補正マイコンの内部構成例を示す図である。
【
図7】第1の実施形態に係るシフトぶれ量算出部の内部構成例を示す図である。
【
図8】第1の実施形態に係る推定値算出部の内部構成例を示す図である。
【
図9】第1の実施形態の変形例に係るぶれ補正マイコンの内部構成例を示す図である。
【
図10】第1の実施形態の変形例に係るシフトぶれ量算出部の内部構成例を示す図である。
【
図11】第1の実施形態の変形例に係る、2つの加速度センサと撮像素子の撮像面を光軸方向(カメラ正面側)から見た図である。
【
図12】第2の実施形態に係る撮像装置であるカメラシステムの構成例を示す図である。
【
図13】第2の実施形態に係るカメラシステムにおいて、撮影光学系の光軸上の各位置における移動量の関係を示す図である。
【
図14】第2の実施形態に係るLCUの内部構成例を示す図である。
【
図15】第2の実施形態に係るLCU内のシフトぶれ量算出部の内部構成例を示す図である。
【
図16】第2の実施形態に係る速度補正部の内部構成例を示す図である。
【
図17】第2の実施形態に係るぶれ補正マイコンの内部構成例を示す図である。
【
図18】第2の実施形態に係るぶれ補正マイコン内のシフトぶれ量算出部の内部構成例を示す図である。
【
図19】第2の実施形態の変形例に係るカメラシステムの構成例を示す図である。
【
図20】送信データのフォーマット例を示す図である。
【
図21】送信データのタイミングチャートを示す図である。
【
図22】第2の実施形態の変形例に係るぶれ補正マイコンの内部構成例を示す図である。
【
図23】第2の実施形態の変形例に係るぶれ補正マイコン内のシフトぶれ量算出部の内部構成例を示す図である。
【
図24】第2の実施形態の変形例に係るLCUの内部構成例を示す図である。
【
図25】第2の実施形態の変形例に係るLCU内のシフトぶれ量算出部の内部構成例を示す図である。
【
図26】第2の実施形態の変形例に係るLCU内の推定値算出部の内部構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
はじめに、
図1を用いて、本発明の実施形態に係る撮像装置に対して定義される方向について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置であるカメラを示す図である。
図1に示したように、カメラに対して、X方向、Y方向、Z方向、Yaw方向、Pitch方向、Roll方向を、次のように定義する。
【0020】
カメラの左右方向(水平方向)をX方向とする。また、そのX方向において、カメラを正面から見たときの右方向を+方向とし、その左方向を-方向とする。なお、X方向は、後述する撮像素子の撮像面の左右方向にも対応する。
【0021】
カメラの上下方向(垂直方向)をY方向とする。また、そのY方向において、上方向を+方向とし、下方向を-方向とする。なお、Y方向は、撮像素子の撮像面の上下方向にも対応する。
【0022】
カメラの後述する撮影光学系の光軸方向をZ方向とする。また、そのZ方向において、カメラの背面側から正面側への方向を+方向とし、カメラの正面側から背面側への方向を-方向とする。
【0023】
X方向の軸を回転軸とする回転方向をPitch方向とする。また、そのPitch方向において、+X方向へ向かって左回転を+方向とし、+X方向に向かって右回転を-方向とする。
【0024】
Y方向の軸を回転軸とする回転方向をYaw方向とする。また、そのYaw方向において、+Y方向へ向かって右回転を+方向とし、+Y方向に向かって左回転を-方向とする。
【0025】
Z方向の軸を回転軸とする回転方向をRoll方向とする。また、そのRoll方向において、+Z方向に向かって左回転を+方向とし、+Z方向に向かって右回転を-方向とする。
【0026】
なお、このように定義された方向の正負(+,-)は、後述する角速度センサや加速度センサの実装方向に依存するため、上記に限定されるものでない。
次に、
図2及び
図3を用いて、本発明の実施形態に係る撮像装置で行われる加速度推定値算出の考え方について説明する。
【0027】
図2は、Z方向の軸を光軸とした場合に、それと直交する平面上の異なる位置に2つの加速度センサが配置されたケースを示す図である。
図2において、点Cを通る軸を回転軸として回転運動が生じた場合(この場合、点Cは回転中心でもある)、2つの加速度センサS1及びS2の各々には、平行移動が生じる。
【0028】
この場合、加速度センサS1に対して生じるX方向、Y方向の平行移動量D1x、D1yは、下記式(1)、(2)により求められ、加速度センサS2に対して生じるX方向、Y方向の平行移動量D2x、D2yは、下記式(3)、(4)により求められる。
【0029】
但し、Yaw、Pitch、Roll方向の各角速度をωyaw、ωpitch、ωrollとし、半径R1(回転中心Cと加速度センサS1とを結ぶ線分)のX、Y、Z方向の各軸への投影をR1x、R1y、R1zとし、半径R2(回転中心Cと加速度センサS2とを結ぶ線分)のX、Y、Z方向の各軸への投影をR2x、R2y、R2zとする。なお、
図2に示したケースでは、R2x=0、R2y=0である。
【0030】
D1x=ωyaw×R1z+ωroll×R1y 式(1)
D1y=ωpitch×R1z+ωroll×R1x 式(2)
D2x=ωyaw×R2z+ωroll×R2y=ωyaw×R2z 式(3)
D2y=ωpitch×R2z+ωroll×R2x=ωpitch×R2z 式(4)
【0031】
図2に示したケースでは、加速度センサS1、S2の実装位置の関係から、R1z=R2z、が成り立つ。
従って、Roll方向の回転運動が無ければ、加速度センサS1、S2に生じる加速度は等しいが、Roll方向の回転運動が発生した場合には、加速度センサS1、S2の検出結果に差が生じる。このときの検出誤差(検出結果の差)は、X方向に対してはR1yとR2yの比率により生じ、Y方向に対してはR1xとR2xとの比率により生じる。
【0032】
このことから、加速度センサS1、S2が配置された平面(光軸に直交する平面でもある)と光軸との交点における加速度の検出結果(検出値)は、その交点からの各加速度センサの実装距離と、加速度センサS1、S2の検出結果とに基づいて、求める(推定する)ことができる。
【0033】
図3は、Z方向の軸を光軸とした場合に、その光軸上の異なる位置に2つの加速度センサが配置されたケースを示す図である。
図3において、点Cを通る軸を回転軸として回転運動が生じた場合(この場合、点Cは回転中心でもある)、2つの加速度センサS1及びS2の各々には平行移動が生じ、その各々に生じる平行移動量は、
図2に示したケースと同様に、上記式(1)、(2)、(3)、(4)により求められる。
【0034】
但し、
図3に示したケースでは、加速度センサS1、S2の実装位置の関係から、R1x=R2x、R1y=R2y、が成り立つ。
従って、Roll方向の回転運動が発生した場合には、加速度センサS1、S2の検出結果に差は生じないが、Yaw方向、Pitch方向の回転運動が発生した場合には、加速度センサS1、S2の検出結果に差が生じる。このときの検出誤差(検出結果の差)は、回転中心Cと各加速度センサの実装位置との間のZ方向の距離の比率により生じる。
【0035】
このことから、光軸上の位置における加速度の検出結果(検出値)は、その位置からの各加速度センサの実装距離と、加速度センサS1、S2の検出結果とに基づいて、求める(推定する)ことができる。
【0036】
以上のことから、加速度センサが同一平面上の異なる位置に2つ以上配置されている場合、各加速度センサの検出結果と、その同一平面上における任意の点と各加速度センサとの間の距離の比率とに基づいて、その任意の点における加速度の検出結果(検出値)を推定することができる。
【0037】
また、加速度センサが同一直線上に2つ以上配置された場合、各加速度センサの検出結果と、その同一直線上の任意の点と各加速度センサとの間の距離の比率とに基づいて、その任意の点における加速度の検出結果(検出値)を推定することができる。
【0038】
このような関係を用いることで、撮影光学系の前側主点位置における加速度の検出結果(検出値)を推定することができる。
以上を踏まえ、以下、本発明の実施形態に係る撮像装置について詳細に説明する。
【0039】
<第1の実施形態>
図4は、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置であるカメラの構成例を示す図である。
図4に示したように、本実施形態に係るカメラ1は、撮影光学系2、撮像素子3、駆動部4、システムコントローラ5、ぶれ補正マイコン6、2つの加速度センサ7(7a、7b)、及び角速度センサ8を含む。
【0040】
撮影光学系2は、被写体からの光束を撮像素子3に結像する。
撮像素子3は、例えばCCDやCMOS等のイメージセンサであって、撮影光学系2により結像された被写体光束(被写体光学像)を電気信号に変換する。
【0041】
システムコントローラ5は、撮像素子3により変換された電気信号を映像信号として読み出す。読み出された映像信号は、例えば、図示しない記録媒体(メモリカード等)に撮影画像として記録されたり、映像として記録されたりする。なお、カメラ1の各種動作は、システムコントローラ5の制御の下に行われる。
【0042】
ぶれ補正マイコン6は、加速度センサ7a、7bと角速度センサ8の検出結果に基づいて補正量を算出し、駆動部4に指示して、撮像素子3の撮像面上に生じる像ぶれを打ち消すように撮像素子3を移動させる。
【0043】
なお、システムコントローラ5及びぶれ補正マイコン6の各々は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ、電子回路等を含んで構成される。そして、その各々による各種動作は、例えば、メモリに格納されているプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。
【0044】
駆動部4は、ぶれ補正マイコン6からの指示に基づいて、撮像素子3を、撮影光学系2の光軸と直交する平面上で移動させる駆動機構である。
角速度センサ8は、カメラ1に生じる3軸の回転運動(Yaw方向、Pitch方向、及びRoll方向の回転運動)を検出する。
【0045】
2つの加速度センサ7(7a、7b)は、撮影光学系2の前側主点位置を含む平面上であって且つ撮影光学系2の光軸に直交する平面上に、光軸を中心(中央)にして対向して配置(実装)される。各加速度センサ7は、X方向及びY方向の加速度を検出する。
【0046】
なお、各加速度センサ7の実装位置に関する情報は、光軸上の点を原点とするX方向及びY方向の座標情報として、ぶれ補正マイコン6の内部ROMに予め記録されており、後述する加速度推定値の算出に用いられる。但し、本実施形態の場合は、2つの加速度センサ7が光軸を中心にして対向して配置されるので、詳細は後述するように、各加速度センサ7の実装位置に関する情報を用いずとも加速度推定値を算出することができる。従って、本実施形態では、各加速度センサ7の実装位置に関する情報を保持しない構成としてもよい。
【0047】
図5は、撮影光学系2と2つの加速度センサ7(7a、7b)を光軸方向(カメラ正面側)から見た図である。
図5に示したように、2つの加速度センサ7(7a、7b)は、光軸から等距離に配置されている。すなわち、光軸から加速度センサ7aまでの距離raと光軸から加速度センサ7bまでの距離rbは等しい(ra=rb)。なお、距離raは、撮影光学系2の前側主点位置(光学中心C)から加速度センサ7aまでの距離でもあり、距離rbは、撮影光学系2の前側主点位置(光学中心C)から加速度センサ7bまでの距離でもある。
【0048】
このため、2つの加速度センサ7(7a、7b)の各々の検出結果の平均値を求めることで、撮影光学系2の前側主点位置におけるX方向、Y方向の加速度の検出結果を算出(推定)することができる。
【0049】
なお、ra_x、ra_yは、距離raのX成分、Y成分である。rb_x、rb_yは、距離rbのX成分、Y成分である。
図6は、ぶれ補正マイコン6の内部構成例を示す図である。
【0050】
図6に示したように、ぶれ補正マイコン6は、角度ぶれ量算出部61、シフトぶれ量算出部62、加算部63、及び駆動制御部64を含む。
角度ぶれ量算出部61は、角速度センサ8からの角速度検出結果に基づいて、カメラ1の回転運動により撮像素子3の撮像面上に生じる像ぶれのX、Yの各方向の像ぶれ量を算出し、その像ぶれ量を打ち消すためのX、Yの各方向の補正量(回転ぶれ補正量)を算出する。
【0051】
シフトぶれ量算出部62は、加速度センサ7aの検出結果(加速度a)と加速度センサ7bの検出結果(加速度b)に基づいて、カメラ1の平行移動により撮像素子3の撮像面上に生じる像ぶれのX、Yの各方向の像ぶれ量を算出し、その像ぶれ量を打ち消すためのX、Yの各方向の補正量(シフトぶれ補正量)を算出する。なお、シフトぶれ量算出部62の内部構成については、
図7を用いて後述する。
【0052】
加算部63は、角度ぶれ量算出部61及びシフトぶれ量算出部62の各々で算出された補正量をX、Yの方向毎に合算する。
駆動制御部64は、加算部63により合算されたX、Yの各方向の補正量を、駆動部4を駆動するための駆動パルスに変換し、駆動部4へ出力する。駆動部4は、その駆動パルスに従って駆動し、撮像素子3を移動させる。これにより、撮像素子3の撮像面上に生じる像ぶれが打ち消されるように、撮像素子3が移動する。
【0053】
図7は、シフトぶれ量算出部62の内部構成例を示す図である。
図7に示したように、シフトぶれ量算出部62は、2つの信号処理部621(621a、621b)、推定値算出部622、積分部623、乗算部624、積分部625、及び補正量算出部626を含む。
【0054】
各信号処理部621は、入力されたX、Yの各方向の加速度に対し、重力成分を除去する処理やフィルタ処理(低周波成分を除去する処理)等を行う。これにより、入力されたX、Yの各方向の加速度は、カメラ静止時では0、それ以外では絶対値が加速度の大きさを示し且つ符号が加速度の向きを示すデジタル値に変換される。本実施形態では、加速度センサ7aにより検出されたX、Yの各方向の加速度aが信号処理部621aに入力され、加速度センサ7bにより検出されたX、Yの各方向の加速度bが信号処理部621bに入力されて処理が行われる。
【0055】
推定値算出部622は、前側主点位置(光軸)から各加速度センサ7の実装位置までの距離の比率から、下記式(5)、(6)を用いて、前側主点位置におけるX方向、Y方向の加速度推定値Xc、Ycを算出する。
【数1】
【0056】
ここで、Xa、Yaは、信号処理部621aによる処理後のX方向、Y方向の加速度a(信号処理部621aのX方向、Y方向の処理結果)である。Xb、Ybは、信号処理部621bによる処理後のX方向、Y方向の加速度b(信号処理部621bのX方向、Y方向の処理結果)である。ra_x、ra_yは、
図5に示したように、raのX方向成分、Y方向成分である。rb_x、rb_yは、
図5に示したように、rbのX方向成分、Y方向成分である。すなわち、ra_x、ra_yは、加速度センサ7aの実装位置の座標情報であり、rb_x、rb_yは、加速度センサ7bの実装位置の座標情報である。
【0057】
本実施形態では、raとrbが等しく、ra_xとrb_xが等しく、ra_yとrb_yが等しいため、上記式(5)、(6)は下記式(7)、(8)のように表される。すなわち、この場合は、加算平均により加速度推定値Xc、Ycを算出することができる。
【数2】
【0058】
なお、推定値算出部622の内部構成については、
図8を用いて後述する。
積分部623は、推定値算出部622により算出されたX、Yの各方向の加速度推定値を時間積分し、前側主点位置におけるX、Yの各方向の移動速度を算出する。
【0059】
乗算部624は、積分部623により算出されたX、Yの各方向の移動速度に、撮影光学系2の像倍率を乗算し、撮像素子3の撮像面上でのX、Yの各方向の像移動速度に変換する。
【0060】
積分部625は、乗算部624の乗算結果である、撮像面上でのX、Yの各方向の像移動速度を時間積分し、撮像面上でのX、Yの各方向の像移動量(像ぶれ量)を算出する。
補正量算出部626は、積分部625により算出されたX、Yの各方向の像ぶれ量を打ち消すためのX、Yの各方向の補正量(シフトぶれ補正量)を算出する。
【0061】
なお、本実施形態では、上述の推定値算出部622及び積分部623のように、前側主点位置における加速度を算出(推定)した後に、それに基づいて、前側主点位置における移動速度を算出しているが、この移動速度の算出は、これに限定されるものではない。例えば、各加速度センサ7の実装位置における移動速度を算出した後に、それに基づいて、前側主点位置における移動速度を算出(推定)するようにしてもよい。但し、各加速度センサ7の検出結果に含まれるノイズ成分除去の観点から、上述の推定値算出部622及び積分部623のように処理する方が望ましい。
【0062】
図8は、推定値算出部622の内部構成例を示す図である。
図8に示したように、推定値算出部622は、係数算出部6221、2つの乗算部6222(6222a、6222b)、及び加算部6223を含む。
【0063】
係数算出部6221は、各加速度センサ7の実装位置に関する情報に基づいて、演算係数K1、K2、K3、K4を算出する。演算係数K1、K2は、X方向の加速度推定値の算出に使用される係数であり、K1=rb_y/(ra_y+rb_y)、K2=ra_y/(ra_y+rb_y)により算出される。演算係数K3、K4は、Y方向の加速度推定値の算出に使用される係数であり、K3=rb_x/(ra_x+rb_x)、K4=ra_x/(ra_x+rb_x)により算出される。
【0064】
なお、本実施形態では、加速度センサ7a、7bの実装位置及び光軸までの距離が変化しないので、演算係数K1、K2、K3、K4を固定値として保持する構成としてもよい。
乗算部6222aは、信号処理部621aによる処理後のX、Yの各方向の加速度a(Xa、Ya)が入力され、X方向の加速度Xaに対して演算係数K1を乗算し、Y方向の加速度Yaに対して演算係数K3を乗算する。
【0065】
乗算部6222bは、信号処理部621bによる処理後のX、Yの各方向の加速度b(Xb、Yb)が入力され、X方向の加速度Xbに対して演算係数K2を乗算し、Y方向の加速度Ybに対して演算係数K4を乗算する。
【0066】
加算部6223は、乗算部6222aの乗算結果であるK1×Xaと乗算部6222bの乗算結果であるK2×Xbとを加算してX方向の加速度推定値Xcを算出し、乗算部6222aの乗算結果であるK3×Yaと乗算部6222bの乗算結果であるK4×Ybとを加算してY方向の加速度推定値Ycを算出する。
【0067】
以上述べてきたように、本実施形態によれば、撮影光学系2の前側主点位置を含む平面上(撮影光学系2の光軸に直交する平面上でもある)に2つの加速度センサ7を配置することで、光軸から各加速度センサ7の実装位置までの距離の比率と各加速度センサの検出結果とに基づいて、前側主点位置における加速度を算出(推定)することができる。従って、その加速度に基づいてぶれ補正を行うことによって、シフトぶれを高精度に補正することができる。
【0068】
次に、本実施形態に係る変形例について、
図9乃至
図11を用いて説明する。
本変形例では、2つの加速度センサ7が、例えば後述の
図12に示す2つの加速度センサ15(15a、15b)のように、撮像素子3の撮像面を含む平面上の異なる位置に配置され、撮像面上のフォーカスエリアの位置における加速度が推定されて処理が行われる。
【0069】
図9は、本変形例に係るぶれ補正マイコン6の内部構成例を示す図である。
図9に示したように、本変形例に係るぶれ補正マイコン6は、通信部65を更に含み、その通信部65を介してシステムコントローラ5からフォーカス位置情報がシフトぶれ量算出部62へ入力される点が、
図6に示したぶれ補正マイコン6と異なる。なお、フォーカス位置情報は、図示しないフォーカス調整機構により調整された撮影光学系2の状態における撮像素子3の撮像面上の合焦位置を示す情報であり、その合焦位置はシステムコントローラ5により取得される。
【0070】
図10は、本変形例に係るシフトぶれ量算出部62の内部構成例を示す図である。
図10に示したように、本変形例に係るシフトぶれ量算出部62は、更にフォーカス位置情報が推定値算出部622に入力され、そこでフォーカス位置における加速度推定値が算出される点が、
図7に示したシフトぶれ量算出部62と異なっている。
【0071】
本変形例に係る推定値算出部622で行われる加速度推定値算出について、
図11を用いて説明する。
図11は、本変形例に係る、2つの加速度センサ7(7a、7b)と撮像素子3の撮像面を光軸方向(カメラ正面側)から見た図である。
【0072】
図11において、IPは撮像面を示し、OCは光軸を示し、FAはフォーカスエリアを示し、FPはフォーカスポイント(フォーカスエリアFAの中心)を示している。なお、本変形例でも、2つの加速度センサ7は、光軸を中心(中央)にして対向して配置(実装)されるとする。
【0073】
加速度センサ7aからフォーカスポイントFPまでのX方向、Y方向の距離をFPXa、FPYaとし、加速度センサ7bからフォーカスポイントFPまでのX方向、Y方向の距離をFPXb、FPYbとする。また、加速度センサ7aにより検出されたX方向、Y方向の加速度をAax、Aayとし、加速度センサ7bにより検出されたX方向、Y方向の加速度をAbx、Abyとする。
【0074】
このとき、フォーカスポイントFPにおけるX方向、Y方向の加速度A
FPX、A
FPYは、上記式(5)、(6)に基づいて、下記式(9)、(10)により求められる。
【数3】
【0075】
つまり、このときは、本変形例に係る推定値算出部622内の係数算出部6221(
図8参照)には更にフォーカス位置情報(フォーカスエリアFAとフォーカスポイントFPに関する情報を含む)が入力され、そこで係数K1がFPYb/(FPYa+FPYb)、係数K2がFPYa/(FPYa+FPYb)、係数K3がFPXb/(FPXa+FPXb)、係数K4がFPXa/(FPXa+FPXb)として算出されて処理が行われる。
【0076】
本変形例によれば、ピントが合う位置(フォーカスポイントFAの位置)の像ぶれを高精度に抑制することができる。
【0077】
<第2の実施形態>
図12は、本発明の第2の実施形態に係る撮像装置であるカメラシステムの構成例を示す図である。
図12に示したように、本実施形態に係るカメラシステム100は、カメラ本体10と交換式レンズ20を備え、交換式レンズ20がカメラ本体10に対して着脱自在に構成されている。このカメラシステム100では、カメラ本体10と交換式レンズ20の双方が、手ぶれ(回転ぶれ)補正機能及びシフトぶれ補正機能を搭載しているものとする。
【0078】
カメラ本体10は、撮像素子11、駆動部12、システムコントローラ13、ぶれ補正マイコン14、2つの加速度センサ15(15a、15b)、及び角速度センサ16を含む。交換式レンズ20は、撮影光学系21、LCU(Lens Control Unit)22、駆動部23、2つの加速度センサ24(24a、24b)、及び角速度センサ25を含む。
【0079】
撮影光学系21は、被写体からの光束を撮像素子11に結像する。
撮像素子11は、例えばCCDやCMOS等のイメージセンサであって、撮影光学系21により結像された被写体光束(被写体光学像)を電気信号に変換する。
【0080】
システムコントローラ13は、撮像素子11により変換された電気信号を映像信号として読み出す。読み出された映像信号は、例えば、図示しない記録媒体(メモリカード等)に撮影画像として記録されたり、映像として記録されたりする。
【0081】
また、システムコントローラ13は、図示しない通信部を備え、この通信部により、図示しないマウントを介してLCU22と通信し、交換式レンズ20の情報を取得する。そして、交換式レンズ20の情報に基づいて、交換式レンズ20がぶれ補正機能を有するか否かを判定する。ここで、交換式レンズ20がぶれ補正機能を有する場合、カメラ本体10と交換式レンズ20の双方のぶれ補正機能が同時に動作してしまうと、過補正により逆に像ぶれが生じてしまう。そこで、システムコントローラ13は、交換式レンズ20がぶれ補正機能を有する場合は、カメラ本体10と交換式レンズ20のいずれか一方のぶれ補正機能を停止させるか、或いは、双方で所定の比率で分担してぶれ補正を行うか、といったぶれ補正方法を決定し、決定したぶれ補正方法に従ってぶれ補正を行うように制御する。
【0082】
また、システムコントローラ13は、カメラ本体10と交換式レンズ20の動作を同期するための同期信号を生成し、通信部により、LCU22及びぶれ補正マイコン14に通知する。これにより、例えば、同期信号とされるパルス信号の立ち上がりを検出した場合に、カメラ本体10と交換式レンズ20の双方で予め決められた動作を開始することで、双方の動作に同期がとられる。
【0083】
2つの加速度センサ24(24a、24b)は、撮影光学系2の光軸と直交する平面上に、光軸を中心(中央)にして対向して配置(実装)される。各加速度センサ24は、X方向及びY方向の加速度を検出する。なお、各加速度センサ24の実装位置に関する情報は、光軸上の点を原点とするX方向、Y方向、及びZ方向の座標情報として、LCU22の内部ROMに予め記録されており、後述する加速度推定値や移動速度の算出に用いられる。但し、本実施形態の場合も、2つの加速度センサ24が光軸を中心にして対向して配置されるので、各加速度センサ7の実装位置に関する情報として、X方向及びY方向の座標情報を保持しない構成としてもよい。
【0084】
角速度センサ25は、カメラシステム100に生じる3軸の回転運動(Yaw方向、Pitch方向、及びRoll方向の回転運動)を検出する。
LCU22は、加速度センサ24a、24bと角速度センサ25の検出結果に基づいて補正量を算出し、駆動部23に指示して、撮像素子11の撮像面上に生じる像ぶれを打ち消すように撮影光学系21に含まれる図示しない補正レンズを移動させる。なお、LCU22の内部構成については、
図14を用いて後述する。
【0085】
駆動部23は、LCU22からの指示に基づいて、撮影光学系21に含まれる補正レンズを、撮影光学系2の光軸と直交する平面上で移動させる駆動機構である。
2つの加速度センサ15(15a、15b)は、撮像素子11の撮像面を含む平面上に配置され、且つ、初期位置における撮像素子11の撮像中心を中心(中央)にして対向して配置(実装)される。ここで、撮像素子11の撮像面は、撮影光学系21の光軸に直交する。また、初期位置における撮像素子11の撮像中心は光軸に一致する。各加速度センサ15は、X方向及びY方向の加速度を検出する。なお、各加速度センサ15の実装位置に関する情報は、光軸上の点を原点とするX方向、Y方向、及びZ方向の座標情報として、ぶれ補正マイコン14の内部ROMに予め記録されており、後述する加速度推定値や移動速度の算出に用いられる。但し、本実施形態の場合も、2つの加速度センサ24が光軸を中心にして対向して配置されるので、各加速度センサ7の実装位置に関する情報として、X方向及びY方向の座標情報を保持しない構成としてもよい。
【0086】
角速度センサ16は、カメラシステム100に生じる3軸の回転運動(Yaw方向、Pitch方向、及びRoll方向の回転運動)を検出する。
ぶれ補正マイコン14は、加速度センサ15a、15bと角速度センサ16の検出結果に基づいて補正量を算出し、駆動部12に指示して、撮像素子11の撮像面上に生じる像ぶれを打ち消すように撮像素子11を移動させる。なお、ぶれ補正マイコン14の内部構成については、
図17を用いて後述する。
【0087】
駆動部12は、ぶれ補正マイコン14からの指示に基づいて、撮像素子11を、撮影光学系2の光軸と直交する平面上で移動させる駆動機構である。
なお、カメラシステム100において、システムコントローラ13は、カメラシステム100の各種動作を制御する。LCU22は、システムコントローラ13の制御の下、交換式レンズ20の各種動作を制御する。システムコントローラ13、ぶれ補正マイコン14、及びLCU22の各々は、例えば、プロセッサ(CPU等)、メモリ、電子回路等を含んで構成される。そして、その各々による各種動作は、例えば、メモリに格納されているプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。
【0088】
図13は、カメラシステム100において、撮影光学系21の光軸上の各位置における移動量の関係を示す図である。
図13において、P1は、カメラ本体10側の2つの加速度センサ15の実装面であり、撮像素子11の撮像面を含む平面でもある。P2は、交換式レンズ20側の2つの加速度センサ24の実装面であり、撮影光学系21の光軸に直交する平面でもある。P3は、撮影光学系21の前側主点位置を含む平面であり、撮影光学系21の光軸に直交する平面でもある。
【0089】
前側主点位置から実装面P1までの距離をLb、前側主点位置から実装面P2までの距離をLaとし、実装面P1と光軸との交点における移動量をD1、実装面P2と光軸との交点における移動量をD2とすると、前側主点位置における移動量D3は、下記式(11)により求められる。
【数4】
【0090】
なお、前側主点位置における加速度や移動速度も同様にして求めることができる。例えば、前側主点位置における加速度は、距離La及びLbと、実装面P1と光軸との交点における加速度と、実装面P2と光軸との交点における加速度とに基づいて同様にして求めることができる。また、前側主点位置における移動速度は、距離La及びLbと、実装面P1と光軸との交点における移動速度と、実装面P2と光軸との交点における移動速度とに基づいて同様にして求めることができる。
【0091】
図14は、LCU22の内部構成例を示す図である。
図14に示したように、LCU22は、通信部221、レンズ制御部222、角度ぶれ量算出部223、シフトぶれ量算出部224、加算部225、及び駆動制御部226を含む。
【0092】
通信部221は、マウントを介してカメラ本体10のシステムコントローラ13と通信を行う。例えば、通信部221は、レンズ制御に係る指示をシステムコントローラ13から取得し、レンズ制御部222へ出力する。また、通信部221は、カメラ本体10で算出された移動速度をシステムコントローラ13から取得し、シフトぶれ量算出部224へ出力する。この移動速度は、光軸と実装面P1との交点におけるX、Yの各方向の移動速度である。また、通信部221は、カメラ本体10から通知される同期信号をシフトぶれ量算出部224へ出力する。
【0093】
レンズ制御部222は、通信部221から出力されたレンズ制御に係る指示に基づいて、フォーカスや絞り等の制御を行う。
角度ぶれ量算出部223は、角速度センサ25からの角速度検出結果に基づいて、カメラシステム100の回転運動により撮像素子11の撮像面上に生じる像ぶれのX、Yの各方向の像ぶれ量を算出し、その像ぶれ量を打ち消すためのX、Yの各方向の補正量(回転ぶれ補正量)を算出する。
【0094】
シフトぶれ量算出部224は、加速度センサ24aの検出結果(加速度a)と、加速度センサ24bの検出結果(加速度b)と、カメラ本体10で算出された移動速度とに基づいて、カメラシステム100の平行移動により撮像素子11の撮像面上に生じる像ぶれのX、Yの各方向の像ぶれ量を算出し、その像ぶれ量を打ち消すためのX、Yの各方向の補正量(シフトぶれ補正量)を算出する。なお、シフトぶれ量算出部224の内部構成については、
図15を用いて後述する。
【0095】
加算部225は、角度ぶれ量算出部223及びシフトぶれ量算出部224の各々で算出された補正量をX、Yの方向毎に合算する。
駆動制御部226は、加算部225により合算されたX、Yの各方向の補正量を、駆動部23を駆動するための駆動パルスに変換し、駆動部23へ出力する。駆動部23は、その駆動パルスに従って駆動し、撮影光学系21に含まれる補正レンズを移動させる。これにより、撮像素子3の撮像面上に生じる像ぶれが打ち消されるように、補正レンズが移動する。
【0096】
図15は、シフトぶれ量算出部224の内部構成例を示す図である。
図15に示したように、シフトぶれ量算出部224は、2つの信号処理部2241(2241a、2241b)、推定値算出部2242、積分部2243、速度補正部2244、乗算部2245、積分部2246、及び補正量算出部2247を含む。
【0097】
各信号処理部2241は、入力されたX、Yの各方向の加速度に対し、重力成分を除去する処理やフィルタ処理等を行う。これにより、入力されたX、Yの各方向の加速度は、静止時では0、それ以外では絶対値が加速度の大きさを示し且つ符号が加速度の向きを示すデジタル値に変換される。本実施形態では、加速度センサ24aにより検出されたX、Yの各方向の加速度aが信号処理部2241aに入力され、加速度センサ24bにより検出されたX、Yの各方向の加速度bが信号処理部2241bに入力されて処理が行われる。
【0098】
推定値算出部2242は、光軸から各加速度センサ24の実装位置までの距離の比率から、上記式(5)、(6)(又は(7)、(8))に基づいて、光軸と実装面P2との交点におけるX、Yの各方向の加速度推定値を算出する。
【0099】
積分部2243は、推定値算出部2242により算出されたX、Yの各方向の加速度推定値を時間積分し、光軸と実装面P2との交点におけるX、Yの各方向の移動速度を算出する。
【0100】
速度補正部2244は、積分部2243により算出された、光軸と実装面P2との交点におけるX、Yの各方向の移動速度と、カメラ本体10で算出された、光軸と実装面P1との交点におけるX、Yの各方向の移動速度とに基づいて、上記式(11)に基づいて、前側主点位置におけるX、Yの各方向の移動速度を算出する。なお、この場合は、前側主点位置におけるX方向の移動速度は、上記式(11)におけるD2、D1を、光軸と実装面P2との交点におけるX方向の移動速度、光軸と実装面P1との交点におけるX方向の移動速度とに置き換えることにより算出することができる。前側主点位置におけるY方向の移動速度も同様にして算出することができる。なお、速度補正部2244の内部構成については、
図16を用いて後述する。
【0101】
乗算部2245は、速度補正部2244により算出された、前側主点位置におけるX、Yの各方向の移動速度に、撮影光学系21の像倍率を乗算し、撮像素子11の撮像面上でのX、Yの各方向の像移動速度に変換する。
【0102】
積分部2246は、乗算部2245の乗算結果である、撮像面上でのX、Yの各方向の像移動速度を時間積分し、撮像面上でのX、Yの各方向の像移動量(像ぶれ量)を算出する。
【0103】
補正量算出部2247は、積分部2246により算出された、X、Yの各方向の像ぶれ量を打ち消すためのX、Yの各方向の補正量(シフトぶれ補正量)を算出する。
図16は、速度補正部2244の内部構成例を示す図である。
【0104】
図16に示したように、速度補正部2244は、速度保持部22441、比率算出部22442、係数算出部22443、乗算部22444、乗算部22445、乗算部22446、及び加算部22447を含む。
【0105】
速度保持部22441は、積分部2243により算出された、光軸と実装面P2との交点におけるX、Yの各方向の移動速度を、カメラ本体10から通知される同期信号の同期タイミングに同期して保持する。
【0106】
比率算出部22442は、光軸と実装面P1との交点におけるX、Yの各方向の移動速度が、カメラ本体10から通信部221を介して通知される。この移動速度は、システムコントローラ13から通知される同期信号の同期タイミングに同期してぶれ補正マイコン14により算出され、周期的に通知される。比率算出部22442は、カメラ本体10から通知される、光軸と実装面P1との交点における移動速度と、その移動速度と同じ同期タイミングに速度保持部22441に保持された、光軸と実装面P2との交点における移動速度との比率を、X、Yの方向毎に算出する。
【0107】
乗算部22444は、積分部2243により算出された、光軸と実装面P2との交点における移動速度に対して、比率算出部22442により算出された比率をX、Yの方向毎に乗算して、光軸と実装面P1との交点におけるX、Yの各方向の移動速度を算出する。
【0108】
係数算出部22443は、撮影光学系21の前側主点位置に関する情報(主点位置情報)と、上記式(11)に基づいて、前側主点位置におけるX、Yの各方向の移動速度を算出するための係数K5、K6を算出する。より詳しくは、係数K5は、K5=Lb/(Lb-La)により算出され、係数K6は、K6=-La/(Lb-La)により算出される。なお、前側主点位置は、撮影光学系21の変倍率やフォーカスの設定により変化することから、係数算出部22443では、その設定が変更される毎に係数の再算出が行われる。この前側主点位置に関する情報は、例えば、レンズ制御部222により取得され、通信部221を介してシフトぶれ量算出部224の速度補正部2244に入力される。また、距離La、Lbは、前側主点位置に関する情報、各加速度センサ15の実装位置に関する情報、及び各加速度センサ24の実装位置に関する情報に基づいて算出される。各加速度センサ15の実装位置に関する情報は、ぶれ補正マイコン14からシステムコントローラ13、通信部221を介して、シフトぶれ量算出部224の速度補正部2244に入力される。
【0109】
乗算部22446は、積分部2243により算出された、光軸と実装面P2との交点におけるX、Yの各方向の移動速度に対し、係数算出部22443により算出された係数K5を乗算する。
【0110】
乗算部22445は、乗算部22444により算出された、光軸と実装面P1との交点におけるX、Yの各方向の移動速度に対し、係数算出部22443により算出された係数K6を乗算する。
【0111】
加算部22447は、乗算部22445の乗算結果と乗算部22446の乗算結果とをX、Yの方向毎に加算し、前側主点位置におけるX、Yの各方向の移動速度を算出(推定)する。
【0112】
図17は、ぶれ補正マイコン14の内部構成例を示す図である。
図17に示したように、ぶれ補正マイコン14は、角度ぶれ量算出部141、シフトぶれ量算出部142、加算部143、駆動制御部144、スイッチ145、及び通信部146を含む。
【0113】
角度ぶれ量算出部141は、角速度センサ16からの角速度検出結果に基づいて、カメラシステム100の回転運動により撮像素子11の撮像面上に生じる像ぶれのX、Yの各方向の像ぶれ量を算出し、その像ぶれ量を打ち消すためのX、Yの各方向の補正量(回転ぶれ補正量)を算出する。
【0114】
シフトぶれ量算出部142は、加速度センサ15aの検出結果(加速度a)と加速度センサ15bの検出結果(加速度b)に基づいて、カメラシステム100の平行移動により撮像素子11の撮像面上に生じる像ぶれのX、Yの各方向の像ぶれ量を算出し、その像ぶれ量を打ち消すためのX、Yの各方向の補正量(シフトぶれ補正量)を算出する。また、シフトぶれ量算出部142は、その像ぶれ量算出の過程で算出した、光軸と実装面P1との交点におけるX、Yの各方向の移動速度を保持する。なお、シフトぶれ量算出部142の内部構成については、
図18を用いて後述する。
【0115】
加算部143は、角度ぶれ量算出部141及びシフトぶれ量算出部142の各々で算出された補正量をX、Yの方向毎に合算する。
駆動制御部144は、加算部143により合算されたX、Yの各方向の補正量を、駆動部12を駆動するための駆動パルスに変換し、駆動部12へ出力する。駆動部12は、その駆動パルスに従って駆動し、撮像素子11を移動させる。これにより、撮像素子11の撮像面上に生じる像ぶれが打ち消されるように、撮像素子11が移動する。
【0116】
スイッチ145は、交換式レンズ20が並進ぶれ補正機能を有する場合に、システムコントローラ13の指示に応じてオフされる。スイッチ145がオフした場合は、加算部143による合算は行われず、駆動制御部144は、角度ぶれ量算出部141により算出されたX、Yの各方向の補正量を、駆動部12を駆動するための駆動パルスに変換し、駆動部12へ出力する。従って、この場合は、撮像素子11の移動による並進ぶれ補正は行われない。
【0117】
通信部146は、システムコントローラ13の制御の下に、シフトぶれ量算出部142に保持されている、光軸と実装面P1との交点におけるX、Yの各方向の移動速度を、システムコントローラ13へ出力する。そして、システムコントローラ13は、その移動速度を、マウントを介してLCU22に通知する。
【0118】
図18は、シフトぶれ量算出部142の内部構成例を示す図である。
図18に示したように、シフトぶれ量算出部142は、2つの信号処理部1421(1421a、1421b)、推定値算出部1422、積分部1423、乗算部1424、積分部1425、補正量算出部1426、及び速度保持部1427を含む。
【0119】
各信号処理部1421は、入力されたX、Yの各方向の加速度に対し、重力成分を除去する処理やフィルタ処理等を行う。これにより、入力されたX、Yの各方向の加速度は、静止時では0、それ以外では絶対値が加速度の大きさを示し且つ符号が加速度の向きを示すデジタル値に変換される。本実施形態では、加速度センサ15aにより検出されたX、Yの各方向の加速度aが信号処理部1421aに入力され、加速度センサ15bにより検出されたX、Yの各方向の加速度bが信号処理部1421bに入力されて処理が行われる。
【0120】
推定値算出部1422は、光軸から各加速度センサ15の実装位置までの距離の比率から、上記式(5)、(6)(又は(7)、(8))に基づいて、光軸と実装面P1との交点におけるX、Yの各方向の加速度推定値を算出する。
【0121】
積分部1423は、推定値算出部1422により算出されたX、Yの各方向の加速度推定値を時間積分し、光軸と実装面P1との交点におけるX、Yの各方向の移動速度を算出する。
【0122】
乗算部1424は、積分部1423により算出されたX、Yの各方向の移動速度に、撮影光学系21の像倍率を乗算し、撮像素子11の撮像面上でのX、Yの各方向の像移動速度に変換する。
【0123】
積分部1425は、乗算部1424の乗算結果である、撮像面上でのX、Yの各方向の像移動速度を時間積分し、撮像面上でのX、Yの各方向の像移動量(像ぶれ量)を算出する。
【0124】
補正量算出部1426は、積分部1425により算出されたX、Yの各方向の像ぶれ量を打ち消すためのX、Yの各方向の補正量(シフトぶれ補正量)を算出する。
速度保持部1427は、システムコントローラ13から通知される同期信号の同期タイミングに同期して、積分部1423により算出された、光軸と実装面P1との交点におけるX、Yの各方向の移動速度を保持する。保持された移動速度は、通信部146を介してシステムコントローラ13により定期的に読み出される。
【0125】
以上述べてきたように、本実施形態によれば、交換式レンズ20の構成上の制約から、撮影光学系21の前側主点位置付近に加速度センサを配置することができない場合であっても、前側主点位置における加速度を算出(推定)することができる。従って、その加速度に基づいてぶれ補正を行うことにより、シフトぶれを高精度に補正することができる。
【0126】
次に、本実施形態の変形例について、
図19乃至
図26を用いて説明する。
図19は、本変形例に係るカメラシステム100の構成例を示す図である。
図20は、送信データのフォーマット例を示す図である。
図21は、送信データのタイミングチャートを示す図である。
【0127】
本変形例に係るカメラシステム100では、
図19に示したように、ぶれ補正マイコン14とLCU22との間で直接且つ高速に通信ができるように、ぶれ補正マイコン14とLCU22との間にマウントを介した通信路17が更に設けられる。この通信路17では、例えばLDVS(Low Voltage Differential Signaling)の通信方式を利用して通信が行われる。これにより、ぶれ補正マイコン14とLCU22との間では、システムコントローラ13とLCU22との間よりも高速に通信が行われるようになる。そして、本変形例では、この通信路17を介して、角速度センサ16により検出されたYaw、Pitch、Rollの各方向の角速度とぶれ補正マイコン14内で算出されたX、Yの各方向の加速度推定値とが、ぶれ補正マイコン14からLCU22へリアルタイムに送信される。この場合、そのYaw、Pitch、Rollの各方向の角速度とX、Yの各方向の加速度推定値は、例えば、
図20に示すフォーマットで且つ
図21に示すタイミングで1ms毎に送信される。この場合、1ms周期で80ビット(16ビット×5)のデータが送信されることになるので、80000bps以上の通信速度が確保されればよい。
【0128】
図22は、本変形例に係るぶれ補正マイコン14の内部構成例を示す図である。
図22に示したように、本変形例に係るぶれ補正マイコン14は、高速通信部147を更に含む点が、
図17に示したぶれ補正マイコン14と異なる。また、これに伴い、本変形例に係るぶれ補正マイコン14では、
図17に示した通信部146が除かれている。
【0129】
高速通信部147は、角速度センサ16により検出されたYaw、Pitch、Rollの各方向の角速度とシフトぶれ量算出部142において算出されたX、Yの各方向の加速度推定値とを、マウントを介した通信路17を介してLCU22へ送信する。この送信は、例えば、
図20に示すフォーマットで且つ
図21に示すタイミングで1ms毎に行われる。
【0130】
図23は、本変形例に係るシフトぶれ量算出部142の内部構成例を示す図である。
図23に示したように、本変形例に係るシフトぶれ量算出部142は、推定値算出部1422により算出(推定)されたX、Yの各方向の加速度推定値が高速通信部147へも出力される点が、
図18に示したシフトぶれ量算出部142と異なる。また、これに伴い、本変形例に係るシフトぶれ量算出部142では、積分部1423で算出されたX、Yの各方向の移動速度の保持は行われず、
図18に示した速度保持部1427が除かれている。
【0131】
図24は、本変形例に係るLCU22の内部構成例を示す図である。
図24に示したように、本変形例に係るLCU22は、高速通信部227を更に含む点が、
図14に示したLCU22と異なる。高速通信部227は、ぶれ補正マイコン14から1ms毎に送信されるYaw、Pitch、Rollの各方向の角速度とX、Yの各方向の推定加速度値を受信し、その中のX、Yの各方向の推定加速度値をシフトぶれ量算出部224へ通知する。
【0132】
図25は、本変形例に係るシフトぶれ量算出部224の内部構成例を示す図である。
図25に示したように、本変形例に係るシフトぶれ量算出部224は、
図15に示したシフトぶれ量算出部224における推定値算出部2242が、内部構成が異なると共に高速通信部227から通知されるX、Yの各方向の推定加速度値が更に入力される推定値算出部2248に置き換えられた点が、その
図15に示したシフトぶれ量算出部224と異なる。
【0133】
図26は、本変形例に係る推定値算出部2248の内部構成例を示す図である。
図26に示したように、本変形例に係る推定値算出部2248は、係数算出部22481、係数算出部22482、乗算部22483a、乗算部22483b、加算部22484、乗算部22485a、乗算部22485b、及び加算部22486を含む。
【0134】
係数算出部22481、乗算部22483a、乗算部22483b、及び加算部22484は、光軸から各加速度センサ24の実装位置までの距離の比率から、上記式(5)、(6)(又は(7)、(8))に基づいて、光軸と実装面P2との交点におけるX、Yの各方向の加速度推定値を算出する。
【0135】
より詳しくは、係数算出部22481は、上述の係数K1、K2、K3、K4に対応する4つの係数を算出する。なお、これらの4つの係数は、2つの加速度センサ24の実装位置で決まるものであり、固定値である。本変形例でも、2つの加速度センサ24が光軸を中心に対向して配置されているので、いずれの係数も1/2となる。乗算部22483aは、信号処理部2241aによる処理後のX方向、Y方向の加速度aに対して、K1に対応する係数、K3に対応する係数を乗算する。乗算部22483bは、信号処理部2241bによる処理後のX方向、Y方向の加速度bに対して、K2に対応する係数、K4に対応する係数を乗算する。加算部22484は、乗算部22483aの乗算結果と乗算部22483bの乗算結果とを、X、Yの方向毎に加算して、X、Yの各方向の加速度推定値を算出する。
【0136】
係数算出部22482、乗算部22485a、乗算部22485b、及び加算部22486は、高速通信部227から通知された、光軸と実装面P1との交点におけるX、Yの各方向の加速度推定値と、加算部22484の算出結果である、光軸と実装面P2との交点におけるX、Yの各方向の加速度推定値と、前側主点位置に関する情報とから、上記式(11)に基づいて、前側主点位置におけるX、Yの各方向の加速度推定値を算出する。
【0137】
より詳しくは、係数算出部22482は、上述の係数算出部22443と同様に、係数K5、K6を算出する。乗算部22485aは、高速通信部227から通知された、光軸と実装面P1との交点におけるX、Yの各方向の加速度推定値に対して係数K6を乗算する。乗算部22485bは、加算部22484の算出結果である、光軸と実装面P2との交点におけるX、Yの各方向の加速度推定値に対して係数K5を乗算する。加算部22486は、乗算部22485aの乗算結果と乗算部22485bの乗算結果とを、X、Yの方向毎に加算して、前側主点位置におけるX、Yの各方向の加速度推定値を算出する。
【0138】
なお、カメラ本体10から通知される加速度推定値は、1ms周期で検出(算出)されてリアルタイムに送信されるので、加算部22486により算出される加速度推定値の検出(算出)タイミングとの差は1ms以下となる。
【0139】
本変形例によれば、LCU22とぶれ補正マイコン14との間に通信路17を設けることで、前側主点位置における加速度をリアルタイムに算出(推定)することができるので、その加速度の推定精度をより向上させることができる。なお、本実施形態では、上述の推定値算出部2242または2248、及び積分部2243のように、加速度を算出(推定)した後に、それに基づいて移動速度を算出しているが、この移動速度の算出は、これに限定されるものではない。例えば、各加速度センサの実装位置における移動速度を算出した後に、それに基づいて、各加速度センサの実装面と光軸との交点における移動速度を算出(推定)するようにしてもよい。
【0140】
以上、本発明は、上記実施形態にそのまま限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、様々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素のいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0141】
1 カメラ
2 撮影光学系
3 撮像素子
4 駆動部
5 システムコントローラ
6 ぶれ補正マイコン
7、7a、7b 加速度センサ
8 角速度センサ
10 カメラ本体
11 撮像素子
12 駆動部
13 システムコントローラ
14 ぶれ補正マイコン
15、15a、15b 加速度センサ
16 角速度センサ
17 通信路
20 交換式レンズ
21 撮影光学系
22 LCU
23 駆動部
24、24a、24b 加速度センサ
25 角速度センサ
61 角度ぶれ量算出部
62 シフトぶれ量算出部
63 加算部
64 駆動制御部
65 通信部
100 カメラシステム
141 角度ぶれ量算出部
142 シフトぶれ量算出部
143 加算部
144 駆動制御部
145 スイッチ
146 通信部
147 高速通信部
221 通信部
222 レンズ制御部
223 角度ぶれ量算出部
224 シフトぶれ量算出部
225 加算部
226 駆動制御部
227 高速通信部
621、621a、621b 信号処理部
622 推定値算出部
623 積分部
624 乗算部
625 積分部
626 補正量算出部
1421、1421a、1421b 信号処理部
1422 推定値算出部
1423 積分部
1424 乗算部
1425 積分部
1426 補正量算出部
1427 速度保持部
2241、2241a、2241b 信号処理部
2242 推定値算出部
2243 積分部
2244 速度補正部
2245 乗算部
2246 積分部
2247 補正量算出部
2248 推定値算出部
6221 係数算出部
6222、6222a、6222b 乗算部
6223 加算部
22441 速度保持部
22442 比率算出部
22443 係数算出部
22444 乗算部
22445 乗算部
22446 乗算部
22447 加算部
22481、22482 係数算出部
22483a、22483b 乗算部
22484 加算部
22485a、22485b 乗算部
22486 加算部