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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-12
(45)【発行日】2022-04-20
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
G01N35/04 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018148921
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020024145
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】山本 明広
(72)【発明者】
【氏名】本田 泰祐
(72)【発明者】
【氏名】志智 直人
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-109198(JP,A)
【文献】実開昭48-032322(JP,U)
【文献】実開昭49-026732(JP,U)
【文献】実開昭48-060828(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析用具に収容された検体の成分を分析する装置本体と、
前記装置本体から突出した突出位置と前記装置本体側へ退避した退避位置とを移動可能な移動部材と、
前記移動部材の移動方向と交差する交差方向で前記移動部材に対し相対移動可能に前記移動部材に取り付けられ、前記分析用具が載置される載置部を備えたトレイと、
前記移動の方向に沿って前記装置本体に設けられた収容部と、
前記トレイに設けられ前記収容部に収容され前記移動部材の前記移動に伴い前記収容部の内部を移動する被収容部と、
を有し、
前記収容部は、前記移動の方向に沿って延在され前記突出位置側に端壁を有する本体溝と、前記端壁から前記退避位置側へ所定距離隔てた位置で前記本体溝から分岐すると共に前記突出位置の方向に開放された開放溝と、を含み、
前記突出位置から突出方向への前記トレイの移動を前記端壁と前記被収容部とが互いに接触することで制限し、前記被収容部が前記端壁から前記退避位置側へ前記所定距離移動した位置で前記移動部材と前記トレイとが前記交差方向に相対移動されると前記被収容部が前記開放溝内へ移動することで、前記移動部材及び前記トレイが前記装置本体から離脱した離脱位置へ移動可能とされる分析装置。
【請求項2】
前記交差方向が鉛直方向の成分を含む請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記トレイが前記移動部材に対して接近することで前記被収容部が前記本体溝から前記開放溝に移動する請求項1又は請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記トレイを前記移動部材から離間する方向に付勢する付勢部材を有する請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記トレイを前記移動部材に対し平行状態を維持して接離可能に連結するリンク機構を有する請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記被収容部が、前記トレイから突出される突起である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中の成分を分析する分析装置の例として、たとえば、特許文献1に示されるように台箱内に、出し入れ自在に構成され取手を有する攪拌精製部が内蔵された蛋白質スクリーニング装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-139635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような分析装置では、検体を収容した分析用具が載置されるトレイを、装置本体に対しスライドにより出し入れできるように構成されることがある。トレイの点検や清掃等の作業を行う場合には、たとえば、装置本体のカバーを外して、装置本体内のトレイに対し上記作業を行うようにすることが考えられるが、カバーを外す作業も必要となり、作業性が悪い。したがって、トレイが装置本体から取り外しできるようにすれば、装置本体のカバーを外す必要がなく、作業は容易になる。しかし、分析装置において、通常の分析を行う状態では、トレイが装置本体から不用意 に脱離しないようにすることが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、装置本体からのトレイの不用意 な脱離を抑制すると共に、トレイを装置本体から容易に取り外しできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様では、分析用具に収容された検体の成分を分析する装置本体と、前記装置本体から突出した突出位置と前記装置本体側へ退避した退避位置とを移動可能な移動部材と、前記移動部材の移動方向と交差する交差方向で前記移動部材に対し相対移動可能に前記移動部材に取り付けられ、前記分析用具が載置される載置部を備えたトレイと、前記移動の方向に沿って前記装置本体に設けられた収容部と、前記トレイに設けられ前記収容部に収容され前記移動部材の前記移動に伴い前記収容部の内部を移動する被収容部と、を有し、前記収容部は、前記移動の方向に沿って延在され前記突出位置側に端壁を有する本体溝と、前記端壁から前記退避位置側へ離れた位置で前記本体溝から分岐すると共に前記突出位置の方向に開放された開放溝と、を含み、前記突出位置から突出方向への前記トレイの移動を前記端壁と前記被収容部とが互いに接触することで制限し、前記被収容部が前記端壁から前記退避位置側へ前記所定距離移動した位置で前記移動部材と前記トレイとが前記交差方向に相対移動されると前記被収容部が前記開放溝内へ移動することで、前記移動部材及び前記トレイが前記装置本体から離脱した離脱位置へ移動可能とされる。
【0007】
この分析装置では、移動部材にトレイが取り付けられており、移動部材が突出位置と退避位置との間を移動すると、トレイも移動部材と共に移動する。移動部材が突出位置にある状態では、トレイの載置部に分析用具を載置できる。移動部材を退避位置へ移動させることで、トレイの載置部に載置された分析用具を装置本体の内部の所定位置に配置することができる。
【0008】
装置本体には、移動部材の移動の方向に沿って収容部が設けられている。トレイには、この収容部に収容される被収容部が設けられており、移動部材の移動に伴ってトレイが移動すると、被収容部が収容部の内部を移動する。
【0009】
収容部は、本体溝と開放溝とを含んでいる。本体溝は移動部材の移動の方向に沿って延在されており、トレイの移動部材によって被収容部が移動する。本体溝は突出位置側に端壁を有しており、トレイが突出位置から突出方向へ移動すると、被収容部が端壁に接触することで、この移動が制限される。したがって、移動部材が、突出位置から不用意 に突出方向へ移動し装置本体から脱離することが抑制される。さらに、移動部材に取り付けられたトレイも、装置本体から脱離することが抑制される。
【0010】
トレイは、移動部材に対し、移動方向と交差する交差方向で移動部材に対し相対移動可能である。そして、被収容部が端壁から退避位置側へ所定距離移動した位置で移動部材とトレイとが交差方向に相対移動されると、被収容部が開放溝内へ移動する。開放溝は、突出位置の方向に開放されており、移動部材及び トレイは装置本体から離脱した離脱位置へ移動可能とされるので、トレイ及び 移動部材を装置本体から取り外すことが可能となる。トレイ及び移動部材が突出位置から突出方向への移動を制限されない状態は、被収容部が端壁から退避位置側へ離れた位置、すなわち、トレイが突出位置から退避位置側へ移動した位置で実現される。トレイが突出位置にあれば、トレイ及び移動部材が突出方向への移動を制限されている状態を確実に維持できる。
【0011】
このように、第一態様の分析装置では、装置本体からのトレイの不用意 な脱離を抑制できると共に、トレイを装置本体から容易に取り外しできる。
【0012】
開放溝は、端壁から退避位置側へ離れた位置で本体溝から分岐している。したがって、本体溝の端壁に被収容部が接触している状態では、被収容部が開放溝に入らない。これにより、トレイが装置本体から不用意 に脱離する事態をより効果的に抑制できる。
【0013】
加えて、収容部として、本体溝と開放溝とを有する簡単な構成で、装置本体からのトレイの不用意 な脱離を抑制できると共に、トレイを装置本体から容易に取り外しできる構造を実現できる。
【0014】
第二態様では、第一態様において、前記交差方向が鉛直方向の成分を含む。
【0015】
したがって、トレイと移動部材とを、鉛直方向の成分を含む方向に相対移動させることで、端壁と被収容部とが接触しない状態を実現できる。
【0016】
第三態様では、第一又は第二態様において、前記トレイが前記移動部材に対して接近することで前記被収容部が前記本体溝から前記開放溝に移動する。
【0017】
トレイを移動部材に対し接近させる簡易な操作で、被収容部が前記本体溝から前記開放溝に移動させることができる。
【0018】
第四態様では、第三態様において、前記トレイを前記移動部材から離間する方向に付勢する付勢部材を有する。
【0019】
トレイは、付勢部材によって、移動部材から離間する方向に付勢されており、トレイは移動部材に接近しづらいので、被収容部が本体溝に位置している状態を安定的に維持できる。そして、この付勢部材の付勢力に抗してトレイを移動部材に対し接近させることで、被収容部を本体溝から開放溝へ移動させることが可能である。
【0020】
第五態様では、第一~第四のいずれか1つの態様において、前記トレイを前記移動部材に対し平行状態を維持して接離可能に連結するリンク機構を有する。
【0021】
リンク機構により、トレイは移動部材に対し平行状態を維持して接近及び離間するので、トレイの姿勢が安定する。たとえば、トレイに分析用具を載置した状態で、分析用具の姿勢を一定に維持できる。
【0022】
第六態様では、第一~第五のいずれか1つの態様において、前記被収容部が、前記トレイから突出される突起である。
【0023】
突起をトレイから突出させる簡単な構造で、被収容部を構成できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、装置本体からのトレイの不用意 な脱離を抑制できると共に、トレイを装置本体から容易に取り外しできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は第一実施形態の分析装置の外観を示す斜視図である。
図2図2は分析装置での分析に用いられる分析用具を示す斜視図である。
図3図3図2に示す分析用具を示す平面図である。
図4図4図2に示す分析用具を示す側面図である。
図5図5は第一実施形態の分析装置の載置部材を装置本体の一部と共に示す斜視図である。
図6図6は第一実施形態の分析装置の載置部材を装置本体の一部と共に示す斜視図である。
図7図7は第一実施形態の分析装置における載置部材の動きを示す説明図である。
図8図8は第一実施形態の分析装置における載置部材の動きを示す説明図である。
図9図9は第一実施形態の分析装置における載置部材の動きを示す説明図である。
図10図10は第一実施形態の分析装置における載置部材の動きを示す説明図である。
図11図11は第一実施形態の分析装置における載置部材の動きを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第一実施形態]
第一実施形態の分析装置について、以下、図面を参照して説明する。本実施形態の分析装置は、たとえば、血液に含まれる糖化ヘモグロビンの量を分析する装置である。血液は、試料の一例であり、検体と称されることもある。糖化ヘモグロビンは、分析装置による分析対象 の一例である。
【0027】
<分析装置の外観構成>
図1に示すように、分析装置102は装置本体104を有する。本実施形態では、装置本体104は、略直方体の箱状に形成されている。以下では、分析装置102における上下方向、幅方向、及び奥行方向を、それぞれ矢印U、矢印W、矢印Dで示す。矢印W方向、矢印D方向、及び矢印W方向と矢印D方向を合成した方向は、いずれも水平方向である。また、分析装置102の奥行方向の奥側及び手前側をそれぞれ矢印DA、矢印DBで示す。以下、単に「奥側」及び 「手前側」というときは、分析装置102の奥側及び 手前側を意味する。
【0028】
装置本体104は、その外形を成すカバー106を有している。カバー106は通常状態では装置本体104の内部を覆っているが、所定の操作を行うことで取り外すことができる。カバー106を取り外した状態では、装置本体104の内部が露出する。
【0029】
装置本体104には、図示しないタッチパネルが設けられている。分析作業の作業者は、タッチパネルに表示された情報を参照しながら、タッチパネルに接触することで、分析装置102を操作することができる。
【0030】
また、装置本体104には、図示しないプリンターが設けられている。分析装置102は、試料を分析した結果をプリンターで印刷することが可能である。
【0031】
装置本体104の手前面108には、開閉蓋114が設けられている。開閉蓋114の奥側には、スライダ122が取り付けられ、さらに、スライダ122にトレイ126が取り付けられている。開閉蓋114及びスライダ122は、開閉機構116によって手前側にスライドした突出位置PB(二点鎖線で示す)と、奥側へスライドして開閉蓋114が手前面108と面一になった退避位置PA(実線で示す)との間をスライド可能である。退避位置PAでは、スライダ122及びトレイ126は装置本体104の内部に退避している。スライダ122が退避位置PAにある状態では、トレイ126の載置部120に載置された分析用具42の試料(検体)に対し、分析を行ったり所定の処理を施したりすることが可能である。これに対し、スライダ122が突出位置PBにある状態では、トレイ126の載置部120に試料(検体)を含む分析用具42を載置することができる。さらにスライダ122及びトレイ124は、後述する所定の操作を行うことで、図11に示す離脱位置、すなわち、装置本体104から離れた位置へとスライド可能である。スライダ122は、移動部材の一例であり、スライダ122のスライドは、移動部材の移動の一例である。移動部材の移動としては、スライダ122のスライド、すなわち直線状の移動に限定されない。たとえば、トレイ126に載置された分析用具42の水平姿勢を実質的に変化させない程度に回転しつつ、退避位置PAと突出位置PBとの間を移動する構造でもよい。より具体的には、回転軸が鉛直方向であれば、この回転軸回りに移動部材及びトレイ126が回転しても、分析用具42の姿勢を水平に維持したままの移動が可能である。
【0032】
<分析用具の構成>
図2に示すように、本実施形態の分析用具42は、一例として、直方体状の分析用具本体46を有している。分析用具本体46の長手方向の一端側(矢印D1方向側)にキャップ44が装着される。
【0033】
図3にも示すように、キャップ44は、分析用具本体46よりも幅広の部材であり、分析用具本体46への装着状態では、分析用具本体46よりも幅方向に出っ張る出張部44Aと、一端側(矢印D1方向側)に出っ張る出張部44Cが生じる。また、図4に示すように、分析用具本体46へのキャップ44の装着状態では、分析用具42の下側に出張部44Bが生じる。
【0034】
分析用具42は、キャップ44が奥側になり、且つ、出張部44Bが下側になる姿勢で、トレイ126の載置部120に載置される。分析用具42においても、便宜的に、トレイ126に載置された状態での上下方向、幅方向、及び奥行方向を、それぞれ矢印U、矢印W、矢印Dで示す。また、分析用具42の奥前側及び手前側をそれぞれ矢印D1、矢印D2で示す。
【0035】
<トレイ及び スライダの構成>
図5及び 図6に示すように、本実施形態では、スライダ122は2本であり、幅方向(矢印W方向)に所定の間隔 を開けて平行に配置されている。スライダ122のそれぞれは、後述するように、装置本体104の凹レール124(図6参照)に沿って、矢印D1方向及び矢印D2方向にスライドする。
【0036】
トレイ126は、スライダ122の上方に配置されている。スライダ122とトレイ126とは、リンク128A、128Bによって連結されている。本実施形態では、図7図10にも示すように、トレイ126を側面視して、奥側と手前側にそれぞれリンク128A、128Bが設けられている。このようにリンク128A、128Bでスライダ122とトレイ126とを連結しているので、トレイ126はスライダ122に対し平行な姿勢を維持したまま上下動し、スライダ122に対して接離する。トレイ126がスライダ122に接近した位置が図9図11に示す下降位置DPであり、スライダ122から離間した位置が、図7及び図8に示す上昇位置UPである。トレイ126が上下動する方向は、スライダ122のスライド方向に対し交差する方向(交差方向)でもある。本実施形態では、この交差方向は、鉛直方向の成分を含む方向である。
【0037】
リンク128Aにはバネ130が装着されている。バネ130は、トレイ126が下降位置DPから上昇位置UPへ、すなわちスライダ122から離間する方向へ移動するように、リンク128Aを矢印R1方向(図7及び図9参照)に付勢している。
【0038】
トレイ126には、突起132が設けられている。本実施形態では、突起132は、トレイ126の側面において、奥側の端部近傍から幅方向外側に向けて、左右一対 で突出されている。特に本実施形態では、奥側のリンク128Aにおけるトレイ126側の軸を兼ねている。突起132は、被収容部の一例である。
【0039】
図5に示すように、スライダ122のそれぞれには、ホイール136が設けられている。ホイール136は、スライダ122から幅方向外側に突出している。図7図11に示すように、スライダ122を側方から視ると、ホイール136は、スライダ122において奥側、中間位置及び手前側にそれぞれ設けられている。
【0040】
装置本体104には、スライダ122のホイール136を収容する凹レール124が設けられている。ホイール136が凹レール124の収容溝に収容された状態を維持することで、スライダ122は装置本体104に対しがたつき無く矢印D1方向及び矢印D2方向にスライドする。
【0041】
凹レール124の奥側には後壁124Wが設けられており、奥側のホイール136の奥側へのスライド範囲を制限している。これにより、スライダ122及びトレイ126も、奥側へのスライド範囲が所定範囲に制限される。
【0042】
これに対し、凹レール124の手前側は開放されており、ホイール136自体は凹レール124から手前側へ抜け出ることが可能である。
【0043】
図7図11に示すように、装置本体104には、凹レール124の上方に溝部138が設けられている。溝部138は、凹レール124と平行な本体溝138Aと、本体溝138Aから分岐する開放溝138Bとを備えている。
【0044】
本体溝138Aには、トレイ126の突起132が収容されており、溝部138は、収容部の一例である。本体溝138Aと凹レール124の収容溝の間隔 は、トレイ126が上昇位置UPにある状態(図7及び図8参照)における、突起132とホイール136の間隔 と等しい。これにより、トレイ126は上昇位置UPを維持しつつ、スライダ122と共に矢印D1方向及び矢印D2方向にスライド可能である。
【0045】
本体溝138Aの手前側には端壁142が設けられている。図7に示すように、トレイ126が手前側にスライドすると、突起132が端壁142に当たる。これにより、スライダ122及びトレイ126が、それ以上矢印D2方向へスライドすることは阻止されるようになっている。そして、トレイ126及びスライダ122が手前側に過度にスライドして装置本体104から脱離することが抑制されている。たとえば、トレイ126及びスライダ122が、図11に示す離脱位置に至ることは阻止される。
【0046】
本体溝138Aの奥側には、凹レール124と連通する連通溝140が設けられている。図8に示すように、トレイ126が奥側にスライドすると、突起132が連通溝140の奥壁140W(本体溝138Aの奥壁)に当たる。しかし、この状態で、最も奥側にあるホイール136は凹レール124の後壁124Wには達していない。したがって、スライダ122をさらに奥側にスライドさせることが可能である。
【0047】
スライダ122が奥側へスライドしても突起132は奥側にスライドしないので、リンク128Aはバネ130のバネ力に抗して矢印R2方向に回転する。そして、トレイ126が下降位置DPへ移動する。このように、スライダ122の奥側へのスライドを利用して、上昇位置UPにあるトレイ126を下降位置DPへ移動させることができるように、連通溝140の位置が決められている。
【0048】
本体溝138Aからは、さらに、開放溝138Bが下方へ分岐している。開放溝138Bの分岐部144は、端壁142よりも所定距離だけ奥側に離れた位置であり、換言すれば、分岐部144の位置は、本体溝138Aの手前側の端部と奥側の端部の間の位置である。したがって、分析装置102の使用者は、分岐部144から開放溝138Bが分岐していることを知らされていない場合は、開放溝138Bが本体溝138Aから分岐していることを知ることが困難な構造である。開放溝138Bは、本体溝138Aから下側へ延出された縦溝部138Cと、縦溝部138Cの下端の角部146から手前側へ連続する横溝部138Dとを含んでいる。横溝部138Dの端部は手前側(矢印D2方向)へ開放されている。
【0049】
本体溝138A内に突起132がある状態で、突起132には、バネ130のバネ力がリンク128Aを介して作用する。この場合に突起132が受ける力は、上方向の成分を有している。これに対し、開放溝138Bは分岐部144において下側に分岐している。これにより、突起132が本体溝138A内をスライドした際に、突起132が開放溝138Bに不用意 に移動してしまうことがバネ130のバネ力によって抑制されている。そして、トレイ126も、リンク128Aを介してバネ130のバネ力を受けており、上昇位置UPに向かって付勢されているので、不用意 に下降位置DPに移動してしまうことが抑制されている。
【0050】
しかし、突起132が分岐部144にある状態で、バネ130のバネ力に抗してトレイ126を下方に押すと、突起132は開放溝138Bの縦溝部138Cに移動する。突起132は本体溝138Aには存在しないので、本体溝138Aの端壁142には接触しない状態となる。そして、突起132が、角部146に達した状態で、トレイ126又はスライダ122を手前側にスライドさせると、横溝部138Dは手前側に開放されているので、突起132を開放溝138B(横溝部138D)から手前側へ抜き出すことができる。これにより、トレイ126及びスライダ122も、装置本体104から手前側へ抜き出すことができるようになっている。
【0051】
トレイ126は、このように、突起144が本体溝138A内にあって端壁142に接触可能な状態と、開放溝138B内にあって端壁142に接触しない状態と、を切り替えるための操作を受ける部材でもある。
【0052】
次に、本実施形態の分析装置102の作用について説明する。
【0053】
分析装置102を用いて、試料の分析を行う場合には、図1に二点鎖線で示すように(図7にも示すように)、トレイ126及びスライダ122を手前側にスライドさせて突出位置PBとしておく。この状態で、トレイ126は、リンク128Aを介してバネ130のバネ力を受け、上昇位置UPにある。
【0054】
そして、試料(検体)が収容された分析用具42を、トレイ126の載置部120に載置する。
【0055】
開閉機構116から作用する駆動力により(あるいは手動により)、トレイ126及びスライダ122が奥側へスライドすると、図8に示すように、突起132が連通溝140の奥壁140Wに当たる。
【0056】
さらにスライダ122が奥側へスライドすると、図9に示すように、トレイ126が下降位置DPへ移動する。分析用具42がトレイ126と共に下降するので、たとえば装置本体104内の図示しない支持台等に分析用具を載置して支持させることが可能である。
【0057】
開閉機構116によって、スライダ122を手前側へスライドさせる。トレイ126は、バネ130のバネ力により上昇位置UPに移動する。そして、図7に示すように、トレイ126及びスライダ122が突出位置PBに至ると、トレイ126の載置部120から分析用具42を取り出すことが可能である。また、あらたな分析用具42を載置部120に載置することも可能である。
【0058】
この図7から分かるように、トレイ126が突出位置PBにある状態で、突起132は端壁142に接触している。したがって、トレイ126及び スライダ122が、突出位置PBからさらに手前側にスライドすることはなく、トレイ126及び スライダ122が装置本体104から離脱することは抑制される。
【0059】
また、開放溝138Bは、端壁142よりも奥側に離間した分岐部144において本体溝138Aから分岐している。したがって、端壁142に突起132が接触している状態で、トレイ126に下向きの力を作用させても、突起132は開放溝138Bに移動しない。突起132が本体溝138Aから抜けることはないので、トレイ126及びスライダ122が装置本体104から不用意 に脱離することもない。
【0060】
また、トレイ126が突出位置PBにある状態において、トレイ126に下向きの力が作用しても、トレイ126は下がらない。このため、たとえば、載置部120に分析用具42を上方から載置する作業が容易である。
【0061】
トレイ126を装置本体104から取り外すには、以下の所定の操作を行う。まず、トレイ126及びスライダ122を突出位置PBから奥側にスライドさせる。分岐部144に突起132が位置した状態で、トレイ126に下向きの力を作用させると、図10に示すように、突起132は開放溝138Bの縦溝部138Cに移動するので、バネ130のバネ力に抗して、トレイ126を下降させることができる。このような突起132の動作は、たとえば、分岐部144において開放溝138Bが本体溝138Aから分岐していることを知っている作業者であれば、トレイ126に対し下向きの力を加えつつ奥側へスライドさせることで実現できる。そして、突起132が角部146に至ると、トレイ126及びスライダ122を手前側へスライドさせることができる。この状態では、突起132は、横溝部138Dを手前側へ移動するが、横溝部138Dは手前側に開放されているので、トレイ126及び スライダ122のスライド(手前側へのスライド)は制限されず、トレイ126及び スライダ122は、装置本体104に対する離脱位置に至る。この状態では、トレイ126及びスライダ122を装置本体104取り外すことが可能である。
【0062】
たとえば、トレイ126の点検や清掃等が必要な場合には、トレイ126を装置本体104から取り外すので、装置本体104のカバー106を取り外す必要がなく、作業性に優れる。
【0063】
なお、分岐部114の位置は、本体溝138Aの端部ではなく、端壁142から所定距離だけ奥側に離れた位置、すなわち、本体溝138Aの手前側の端部と奥側の端部の間の位置である。したがって、分析装置102の使用者が、分岐部144から開放溝138Bが分岐していることを知らない場合は、突起132を分岐部144から開放溝138Bに無意識に移動させてしまう可能性は低く、トレイ126が不用意 に装置本体104から取り外されてしまう可能性も低い。
【0064】
本実施形態では、溝部138が、本体溝138Aと開放溝138Bとを備える簡易な構造である。そして、この簡易な構造で、本体溝138Aによって、トレイ126及びスライダ122を、装置本体104に対しスライド可能で、且つ突出位置PBからは不用意 に脱離しない状態を実現できる。また、開放溝138Bによって、トレイ126及びスライダ122を装置本体104から取り外しできる構造を実現できる。
【0065】
スライダ122とトレイ126とは、リンク128Aによって連結されているので、トレイ126はスライダ122に対し、安定した姿勢で平行姿勢を維持しつつ接近及び離間する。トレイ126の姿勢が安定することで、たとえば、トレイ126の載置部120に分析用具42を載置する作業を容易に行える。また、載置部120に分析用具42を載置した状態で、トレイ126がスライダ122に対し接離しても、分析用具42を一定の姿勢に維持できる。
【0066】
本実施形態の分析装置102はバネ130を有している。バネ130は付勢部材の一例であり、トレイ126はバネ130によってスライダ122から離間する方向に付勢されている。これにより、突起132は本体溝138A内をスライドする場合に、上向き成分を有する力を受けつつスライドするので、上下方向のガタツキが抑制され、スライダ122を安定してスライドさせることができる。
【0067】
また、これにより、突起132が分岐部144に位置している状態で、不用意 に突起132が開放溝138Bにスライドしてしまう事態を抑制できる。なお、付勢部材としては弾性部材を挙げることができ、バネ130は弾性部材の一例である。弾性部材の他の例としてはゴムを挙げることができる。
【0068】
本実施形態では、トレイ126はスライダ122に対し、スライド方向と交差する方向(交差方向)に相対移動可能である。そして、トレイ126をスライダ122に対し相対移動させる操作(具体的には下に押す操作)により、突起132を開放溝138Bにスライドさせることが可能である。この結果、トレイ126のスライド制限(突出方向へのスライド制限)を解除することが可能である。
【0069】
トレイ126は、突起132を開放溝138Bに移動させる操作、すなわち、突起132と端壁142とによる、手前側へのスライド制限を解除するための操作を受ける部材でもある。トレイ126とは別に操作のための部材を設ける必要がなく、部品点数が増加しない構造である。
【0070】
本実施形態では、溝部138(本体溝138A)の内部をトレイ126の突起132がスライドする構造であり、これにより、トレイ126を、溝部138に沿ってスムーズにスライドさせる構造を実現できる。そして、本体溝138Aの端壁142とトレイ126の突起132とを含む簡単な構造で、トレイ126の装置本体104からの不用意 な離脱を抑制できる。
【0071】
トレイ126の装置本体104からの不用意 な離脱を抑制する構造としては、上記した構造の他にも、たとえば、本体溝138Aの端壁142やトレイ126の突起132を幅方向(矢印W方向)あるいは上下方向(矢印U方向)に移動可能としておく構造も考えられる。すなわち、端壁142及び突起132のいずれか一方を幅方向又は上下方向に移動させることで、これらの接触を解消するような構造でもよい。ただし、このような構造では、端壁142や突起132を移動可能に保持する保持部材や、移動操作をするための操作部材が必要で、構造の複雑化を招く。これに対し、上記実施形態では、上記したように、端壁142や突起132の保持部材や操作部材が不要であり、簡素な構造である。特に本実施形態では、トレイ126をスライダ122に接近させることで、突起132を開放溝138Bに移動させている。トレイ126をたとえばスライダ122に対し離間させる操作と比較して、スライダ122に向かってトレイ126を押す簡易な操作で、トレイ126をスライダ122に接近させることが可能であり、操作性に優れる。
【0072】
さらに、本実施形態では、トレイ126がスライダ122に対し上下動することで接離(相対移動)する構造であるが、たとえば、トレイ126がその上下位置は維持したまま幅方向にスライドしてスライダ122に対し接離(相対移動)する構造でもよい。この構造では、トレイ126が幅方向の位置に応じて、突起132が端壁142と対向する位置と対向しない(手前側へスライド可能な)位置とをスライドするように構成すればよい。
【0073】
さらに、トレイ126は高さ位置が不変で、スライダ122がトレイに対し上下動あるいは幅方向へスライドする構造も採り得る。この場合には、スライダ122に突起132を設けて、スライダ122の上下動や幅方向へのスライドで、突起132が端壁142と対向して接触可能な位置と対向しない(手前側へ移動可能な)位置とを移動するように構成すればよい。
【符号の説明】
【0074】
42 分析用具
44 キャップ
102 分析装置
104 装置本体
106 カバー
120 載置部
122 スライダ
124 凹レール
126 トレイ
128 リンク
130 バネ(付勢部材の一例)
132 突起(被収容部の一例)
133 貫通部
138 溝部(収容部の一例)
138A 本体溝
138B 開放溝
142 端壁
144 分岐部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11