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特許7058006遠心バッグと一体になった動物細胞培養用バッグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】遠心バッグと一体になった動物細胞培養用バッグ
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20220414BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220414BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20220414BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/00 C
C12N5/07
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018078898
(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公開番号】P2019180365
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 江梨
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 睦
【審査官】名和 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-058103(JP,A)
【文献】特開2006-116092(JP,A)
【文献】特開2018-027030(JP,A)
【文献】特開2015-223169(JP,A)
【文献】特開平08-172956(JP,A)
【文献】国際公開第2016/148265(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/136371(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/00
B04B 1/00-15/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料からなる培養バッグと、細胞分離用遠心管と、前記培養バッグから前記細胞分離用遠心管に培養液を移送するための培養液移送用チューブと、を有し、
前記細胞分離用遠心管は、開口部を有する容器本体と、該容器本体の開口部を閉蓋する蓋体と、を有し、
前記蓋体は、蓋部と、該蓋部の容器本体とは反対側に形成された、前記培養バッグ及び前記培養液移送用チューブを収容する収容部と、を有し、
前記培養液移送用チューブは培養液の移送経路に開閉コックを有する、
ことを特徴とする培養装置。
【請求項2】
前記蓋体は、第一の蓋体と、第二の蓋体とからなり、
前記第一の蓋体は前記細胞分離用遠心管の容器本体の開口部を閉蓋する蓋部と、該蓋部の周縁部に前記容器本体とは反対側に立設された壁部とを有し、前記蓋部と前記壁部とによって、前記収容部が形成されており、
前記第二の蓋体は、前記第一の蓋体の前記壁部の端部によって形成される開口部を閉蓋する蓋体である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の培養装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の培養装置を用いた培養方法であって、
前記細胞分離用遠心管の容器本体内が減圧にされた前記培養装置を準備する工程と、
前記培養バッグを用いてバッチ式で培養を行う培養工程と、
前記培養液移送用チューブの開閉コックを開いて、培養液を前記培養バッグから前記細胞分離用遠心管の容器本体に移送する培養液移送工程と、
前記培養バッグを折り畳んで、折り畳まれた培養バッグと培養液移送用チューブを前記細胞分離用遠心管の前記蓋体の収容部に収容する工程と、
前記培養液を収容した細胞分離用遠心管の容器本体、前記折り畳まれた培養バッグ、培養液移送用チューブ、及び蓋体からなる培養装置を遠心分離機にかけて細胞を分離する細胞分離工程と、
前記細胞分離用遠心管内の分離後の上清又は細胞を回収する工程と、
を有する培養方法。
【請求項4】
前記分離後の上清または細胞を回収する工程の後に、上清に含まれる抗体を精製する工程、または、分離した細胞を再度培地に懸濁させて、新しい培地に播種する工程を有する請求項3に記載の培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養バッグと細胞分離用遠心管とを一体化した培養装置、及び前記培養装置を用いた培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品等の生産には、微生物、動物細胞、植物細胞、菌類などの生体細胞を培養する培養法が用いられている。
培養に用いられるバイオリアクターとして、時間のかかる洗浄と殺菌の工程をなくすために、プラスチック製の一回で使い捨てされる(シングルユース)培養バッグ及び配管材料が使用されるようになっている。
使い捨ての培養バッグを利用した培養方法として、シーソー運動で培養液が入ったバイオリアクターを揺動させることで、培養液に供給された栄養源等を混合するとともに液表面から酸素の供給及び炭酸ガスの供給あるいは除去を行うウェーブ式攪拌培養があり、動物細胞や昆虫細胞の培養、抗体医薬やワクチンの種培養などに用いられている。
【0003】
例えば、ウェーブ式攪拌培養に用いる培養バッグとして、特許文献1には、ボトムシートとトップシートの2枚で形成されており、互いに接合されて2つのエンドエッジ及び2つのサイドエッジを形成するバイオリアクターバッグであって、バッフルが2つのエンドエッジのいずれか1つまでの最短距離が2つのエンドエッジ間の距離の四分の一よりも大きい領域でボトムシートから伸延、膨張可能なバイオリアクターバッグが開示されている。バッフルの位置を上記の様にすることにより、攪拌強度が増大し、空気-液体界面でのガス交換が改良されると記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、可撓性を有し、内部に培養液を封入可能な培養バッグを収めるハウジング部を備え、培養バッグと当接するハウジング部の当接面の一部に、湾曲凸状の突起部を設けることにより、培養液の攪拌効率を向上させると共に、培養液が漏出する懸念をより低減させたシングルユース細胞培養装置が提案されている。
【0005】
培養バッグを用いて細胞培養を行った後、培養液から培養バッグで培養された細胞を分離するために培養バッグ内の細胞を含んだ培地を細胞分離装置で処理する必要がある。このため、上記のような培養バッグを用いた場合、培養バッグの内容物を細胞分離装置に移送するための移送用チューブと細胞分離装置の接続部とを接続する作業が必要となり、また、移送用チューブを細胞分離装置の接続部と接続する際の環境をクリーンな状態とする必要があるため、取り扱いの簡便さに欠け、またコンタミネーションが発生する虞があった。
【0006】
コンタミネーションの発生を極力防止する細胞の遠心分離方法として、特許文献3には、培地が漏出することのないガス透過膜を有した培養容器を用い、当該容器内において密閉状態にて細胞を付着培養した後、前記容器ごと遠心分離を行い、前記細胞を遠沈させる遠心分離方法が記載されている。この方法によると、細胞の培養時における培地の交換に際して、容器を交換することなく、細胞のみを回収することができる。この細胞の遠心分離方法は、付着培養に関し、培地に付着している細胞を、遠心分離により培地から剥離し、培養容器の下隅部に遠沈させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2014-507959号公報
【文献】特開2017-35009号公報
【文献】特開2004-105139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、浮遊培養において、培養バッグ内の細胞を含んだ培養液を培養バッグから遠心管に移送する際の取り扱いを容易にし、またコンタミネーションを防止することができる培養装置及び培養方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、以下のとおりである。
(1)可撓性材料からなる培養バッグと、細胞分離用遠心管と、前記培養バッグから前記細胞分離用遠心管に培養液を移送するための培養液移送用チューブと、を有し、
前記細胞分離用遠心管は、開口部を有する容器本体と、該容器本体の開口部を閉蓋する蓋体であって、蓋部と、該蓋部の容器本体とは反対側に形成された、前記培養バッグ及び前記培養液移送用チューブを収容する収容部と、を有し、
前記培養液移送用チューブは培養液の移送経路に開閉コックを有する、
ことを特徴とする培養装置。
(2)前記蓋体は、第一の蓋体と、第二の蓋体とからなり、
前記第一の蓋体は前記細胞分離用遠心管の容器本体の開口部を閉蓋する蓋部と、該蓋部の周縁部に前記容器本体とは反対側に立設された壁部とを有し、前記蓋部と前記壁部とによって、前記収容部が形成されており、
前記第二の蓋体は、前記第一の蓋体の前記壁部の端部によって形成される開口部を閉蓋する蓋体である、
ことを特徴とする、上記(1)に記載の培養装置。
(3)上記(1)または(2)に記載の培養装置を用いた培養方法であって、
前記細胞分離用遠心管の容器本体内が減圧にされた前記培養装置を準備する工程と、
前記培養バッグを用いてバッチ式で培養を行う培養工程と、
前記培養液移送用チューブの開閉コックを開いて、培養液を前記培養バッグから前記細胞分離用遠心管の容器本体に移送する培養液移送工程と、
前記培養バッグを折り畳んで、折り畳まれた培養バッグと培養液移送用チューブを前記細胞分離用遠心管の前記蓋体の収容部に収容する工程と、
前記培養液を収容した細胞分離用遠心管の容器本体、前記折り畳まれた培養バッグ、培養液移送用チューブ、及び蓋体からなる培養装置を遠心分離機にかけて細胞を分離する細胞分離工程と、
前記細胞分離用遠心管内の分離後の上清又は細胞を回収する工程と、
を有する培養方法。
(4)前記分離後の上清または細胞を回収する工程の後に、上清に含まれる抗体を精製する工程、または、分離した細胞を再度培地に懸濁させて、新しい培地に播種する工程を有する上記(3)に記載の培養方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の培養装置及び培養方法を用いることにより、浮遊培養において、培養バッグ内の細胞を含んだ培養液を培養バッグから遠心管に移送する際の取り扱いを容易にし、またコンタミネーションを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の培養装置を用いた培養方法の一例を示す概略図である。
図2】本発明の細胞分離用遠心管の構造の一例を示す図である。
図3】本発明の細胞分離用遠心管の構造の他の例を示す図である。
図4】本発明の培養方法のフローを示す概略図である。
図5】従来の培養方法のフローを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の培養装置は、培養バッグと細胞分離用遠心管とを一体化させた培養装置である。
図1及び図2に基づいて本発明の培養装置の実施形態について説明する。
図1に本発明の培養装置の基本的な構成の一例を示す。
本発明の培養装置10は、図1に示すように、可撓性材料からなる培養バッグ1と、細胞分離用遠心管(以下「遠心管」という)20とを、培養液を培養バッグ1から遠心管20に移送するための培養液移送用チューブ5で接続したものである。
図2に示すように、前記遠心管20は、開口部を有する容器本体2と、前記容器本体2の開口部を閉蓋する第一の蓋体3と、第一の蓋体3の開口部を閉蓋する第二の蓋体4とを有する。前記容器本体2は培養開始時には内部が減圧状態となっており、前記第一の蓋体3には前記培養液移送用チューブ5が接続されている。前記第一の蓋体3は、容器本体2の開口部を閉蓋する蓋部3aと、前記培養液移送用チューブ5及び培養バッグ1を収容する収容部3cとを有している。前記培養液移送用チューブ5は移送経路中に開閉コック6を有している。
本発明の培養装置10は、全てが樹脂性、滅菌済みの1回使い捨て(シングルユース)製品である。培養装置10の培地接触部は予め滅菌されている。最初、培養液移送用チューブ5上の開閉コック6は閉じられ、培養バッグ1は折り畳まれ、遠心管20の容器本体内を減圧とした状態で提供されることが好ましい。培養バッグ1が折り畳まれた状態で、第一の蓋体3の収容部3cに収容され、第二の蓋体4で閉蓋されている状態で提供されると、取扱いが容易となる。
【0013】
従来は、例えば図5に示すように、前段の細胞のバッチ式の培養工程で得られた培養液を遠心分離処理するには、クリーンベンチにおいて、手作業により、培養バッグ1に移送用チューブ5を接続して培養液を遠心分離管2に移送するか、あるいはピペットなどを用いて培養液を遠心分離管2に移し替える必要があった。
【0014】
本発明の培養装置10は、図1に示すように、培養バッグ1と細胞分離用遠心管20とが開閉コック6を有する培養液移送用チューブ5を介して一体化しているため、培養液を移送するためのラインチューブの接続操作が不要となる。これにより、チューブ接続操作に伴うコンタミネーションが防止され、作業時間が短縮される。また、これにより、バイオ医薬品の生産効率が向上する。
【0015】
以下、培養バッグ、遠心管及び培養液移送用チューブについて説明する。
(培養バッグ)
本発明における培養バッグ1は、可撓性材料からなる。可撓性材料としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体樹脂の多層フィルムで構成されたものを好適に用いることができる。中が見えるように透明であるものが好ましい。このような培養バッグは、医薬品包装用途のシングルユースのバッグとして各社から市販されているものと同様なものを用いることができる。
【0016】
培養バッグ1には、開閉コック6を有する培養液移送用チューブ5が接続されており、その他、ガス入口1a、ガス出口1b、細胞・培地注入口1c、サンプリング口1d、等が設けられていてもよい。ガス入口1a、ガス出口1b、細胞・培地注入口1cは、ガス、細胞、培地などの材料を培養バッグ1に出し入れするために設けられた開口であり、気密接続を容易にするための継ぎ手を備えていることが多い。
培養液移送用チューブ5は、上記ガス入口1a、ガス出口1b、細胞・培地注入口1c、サンプリング口1dと同様、コンタミネーション防止の観点で、培養バッグ1の上部の空間部分となる位置に接続されることが好ましい。
また、培養バッグ1は、予めガンマ線、紫外線、エチレンオキシドガスなどによって滅菌されて無菌状態が維持され、気体や液体などの内容物がほぼ抜かれて、折り畳まれた状態で提供されることが好ましい。
【0017】
(遠心管)
遠心管20は、図2に示すように、開口部を有する容器本体2と、容器本体2の開口部を閉蓋する第一の蓋体3と、前記第一の蓋体3の開口部を閉蓋する第二の蓋体4とを有している。
第一の蓋体3は、蓋部3aと、該蓋部3aの周縁部に容器本体2とは反対側に立設された壁部3bとを有し、蓋部3aと壁部3bとによって、前記培養バッグ1及び前記培養液移送用チューブ5を収容する収容空間を有する収容部3cが形成されている。
また、第二の蓋体4は、第一の蓋体3の壁部3bの端部によって形成される、収容部3cの開口部を閉蓋する蓋体である。
第一の蓋体3には、途中に開閉コック6を有する培養液移送用チューブ5の一端が接続され、培養液移送用チューブ5の他端は培養バッグ1に接続されている。
遠心管20の容器本体2、第一の蓋体3、及び第二の蓋体4としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック製のものが好ましく使用できる。
遠心管20の容器本体2の開口部は第一の蓋体の蓋部3aで閉じられ、容器本体2の内部は無菌状態が維持され、培養液が移送される前は、培養液移送用チューブ5に設けられたコック6が閉じられ、減圧状態となっている。容器本体2内を減圧状態とすることにより、培養液が移送される際に、培養液とガスが遠心管20の容器本体2内に移送されやすく、ガスで満たされた培養バッグ1の内容物が抜かれ、培養バッグ1を折り畳めるようにすることができる。
この時、遠心管20の容器本体2の容積が培養バッグ1の容積と同程度以上であれば、培養バッグ1の内容物が全て遠心管20の容器本体2に移送され、培養バッグ1が空になり、折り畳むことができる。尚、遠心管20の容器本体2の容積が培養バッグ1の容積よりも小さい場合は、培養バック1の培養液移送用チューブ5が取り付けられた位置に培養液を移動させてからコック6を開いて、培養バッグ1から培養液を(優先的に)遠心管20の容器本体2に移送し、培養バッグ1に残ったガスをガス出口1bから排出することで培養バック1を空にし、折り畳むことができる。遠心管20の容器本体2の容積は培養バッグ1の容積と同程度の容積であると無駄がなく、好ましい。
前記第一の蓋体3は、培養液移送用チューブ5が接続された培養バッグ1を収容する収容部3cを有し、培養液が移送された後の培養バッグ1を折り畳んで収容することができる。
【0018】
図3に第二の蓋体4の別の態様を示す。
図3Aは第一の蓋体3の開口部を開けた状態を示し、図3Bは第一の蓋体3の開口部を第二の蓋体4で閉じた状態を示している。図3Cは第二の蓋体4を真上から見た図である。
第二の蓋体4は蓋部4aと、ヒンジ部4bと係止部4cとからなっており、蓋部4aはヒンジ部4bを介して第一の蓋体3の壁部3bと連結されている。
第一の蓋体3と第二の蓋体4とは一体成形によって成形することができる。
第二の蓋体4を図3に示したような構成とすることにより第一の蓋体3の開口部の開閉が簡単になる。
【0019】
(培養液移送用チューブ)
培養液移送用チューブ5は、培養バッグ1と、遠心管20の第一の蓋体3に接続され、開閉コック6が設けられている。細胞の培養を行う時は、開閉コック6を閉じた状態で行い、培養液を移送する際に開閉コック6を開いて培養液を遠心管20の容器本体2に移送する。
前記培養液移送用チューブ5としては、シリコン、ポリ塩化ビニル製のものが好ましく使用できる。
【0020】
(培養方法)
本発明の培養方法は、図4に示すように、容器本体2内が減圧状態となっている培養装置10を準備する、培養装置準備工程(4A)と、前記培養バッグ1でバッチ培養を行う培養工程(4B)と、前記培養液移送用チューブ5の開閉コック6を開いて、培養液を培養バッグ1から遠心管20の容器本体2に移送する、培養液移送工程(4C)と、培養バッグ1を折り畳んで、培養液移送用チューブ5と共に、遠心管20の第一の蓋体3に設けられた収容部3cに収容し、第一の蓋体3を第二の蓋体4で閉蓋する、培養バッグ及び培養液移送用チューブの収容工程(4D)と、遠心分離機によって培養液から細胞を遠心分離する、細胞分離工程(4E)と、前記遠心管20の第一の蓋体3を開蓋し、分離後の上清又は細胞を回収する、上清又は細胞の回収工程(4F)とを有する。
【0021】
以上に説明した培養装置を用いた培養方法について、図4を参照して以下に詳細に説明する。なお、以下の説明は操作の概要について説明するものであり、必ずしも下記の手順に拘束されるものではない。
【0022】
[培養装置準備工程](図4A参照)
培養バッグ1と、細胞分離用遠心管20と、開閉コック6付き培養液移送用チューブ5とを有する培養装置10であって、前記細胞分離用遠心管20の容器本体2内を減圧状態とし、この減圧状態が開閉コック6を閉とすることによって保たれている培養装置10を準備する。
【0023】
[培養工程](図4B参照)
培養バッグ1が、折り畳まれた状態で提供された場合は、培養バッグ1を広げ、培養液移送チューブ5の開閉コック6が閉じていることを確認する。
細胞・培地注入口1cを介して、培養バッグ1の内部に目的の細胞31と培地32を懸濁した培養液を充填する。培養液は、予め所定の細胞濃度となるように調製された後に充填してもよいが、培地32を充填した後に、細胞31を播種して所定の細胞濃度となるように調製してもよい。なお、図には記載していない培地供給槽または培養液調製槽と、細胞・培地注入口1cとは、無菌的に接続されることは言うまでもない。
培養バッグ1は、ガス入口1aを介してガス供給手段と接続されている。液中通気用のガス供給手段と気相用のガス供給手段を駆動させて培養バッグ1内に所定濃度の酸素混合ガスを通気し、培養を開始する。
培養は、バッチ培養で行ない、具体的な培養法としてはWAVE式のバッチ培養法などを挙げることができる。
培養液を揺り動かす際には、例えば、培養液移送用チューブ5と遠心管20を培養バッグ1から離して配置し培養バッグ1のみを揺動させることができる。
培養バッグ1の容量は、最大培地容量の2倍程度であることが好ましい。
【0024】
培養液のpH、温度、DO(溶存酸素濃度)、DCO(溶存二酸化炭素濃度)は、計測手段としてセンサおよび計測器によって測定され、制御装置に入力される。制御装置では、空気と酸素、および窒素の混合ガスの各通気量を調整することにより所定のpH、DO、DCOを維持して培養を継続する。また、細胞濃度や培地成分濃度の測定は、サンプリング口1dによって、培養中の培養液の一部を無菌的に取り出して計測することができる。細胞濃度の計測を光学的濁度によって行う場合には、計測手段として、予め設けた濁度センサを接続することによって可能となる。これによって、培養を行っている間、培養液中の培養環境を、細胞の培養に適正な状態に維持することができる。
培養を行う際は、遠心管20の第二の蓋体4は取り外しておく。
【0025】
[培養液移送工程](図4C参照)
サンプリング口1dより培地32を採取し、細胞数および細胞の生存率を計測し、目標値に達したことを確認し、培養が終了すると、揺動が停止される。その後、培養バッグ1に設けた培養液移送用チューブ5の開閉コック6を開にして遠心管20の容器本体2に培養液を送り込む。遠心管20の容器本体2内が減圧状態であるため、開閉コック6を開にすることにより容器本体2に培養液を送り込むことができる。
培養バック1の内容物がすべて容器本体2に移送されるよう、容器本体2の容積が、培養バッグ1の容積と等しいことが好ましい。
【0026】
[培養バッグ及び培養液移送用チューブの収容工程](図4D参照)
培養液が容器本体2内に収容された後、空になった培養バッグ1及び培養液移送用チューブ5を折り畳んで、遠心管20の第一の蓋体3に設けられた培養バッグの収容部3cに収容し、第二の蓋体4で閉蓋する。
【0027】
[細胞分離工程](図4E参照)
培養バッグ1を収容した培養装置10を、遠心分離機にセットする。バランサーが必要な場合は、バランサー用の遠心管に、培養液の入った遠心管20と同じ質量になるように容器本体2に水33を入れ、培養バッグ1と培養液移送チューブ5の質量の合計と同じ質量の重りを収容部3cに収容し、両者を対に遠心分離機にセットすることが好ましい。但し、培養装置10が偶数個ある場合は、これらを遠心分離機に対にセットすればバランサーは不要である。
遠心分離の条件は培養する細胞の種類によって適宜調整する。例えば、4℃、500~1000rpm、5分間の遠心分離を行うことができる。
【0028】
[上清又は細胞の回収工程](図4F参照)
クリーンベンチ等の無菌状態で、遠心分離を行った遠心管20の第一の蓋体3を開蓋し、分離後の培地上清または沈殿した細胞を回収する。
【0029】
[抗体精製-スケールアップ培養工程]
前記分離後の上清または細胞を回収する工程の後に、上清に含まれる抗体(バイオ原薬)を精製する工程、または、分離した細胞を再度培地に懸濁させて、新しい培地に播種する工程を有することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 培養バッグ
1a ガス入口
1b ガス出口
1c 細胞・培地注入口
1d サンプリング口
2 容器本体、遠心分離管
3 第一の蓋体
3a 蓋部
3b 壁部
3c 収容部
4 第二の蓋体
4a 蓋部
4b ヒンジ部
4c 係止部
5 培養液移送用チューブ
6 開閉コック
10 培養装置
20 細胞分離用遠心管
31 細胞
32 培地
図1
図2
図3
図4
図5