(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】組織係合装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
A61B17/00
(21)【出願番号】P 2018526813
(86)(22)【出願日】2016-11-25
(86)【国際出願番号】 US2016063772
(87)【国際公開番号】W WO2017091812
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-11-21
(32)【優先日】2015-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518176862
【氏名又は名称】タロン メディカル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TALON MEDICAL, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ ミューズ
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ジェリー クック
【審査官】安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/117087(WO,A1)
【文献】特表2006-508781(JP,A)
【文献】特開2010-099479(JP,A)
【文献】特表2008-532637(JP,A)
【文献】特開2002-191609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0224165(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織係合装置であって、
シースと、
少なくともその近位部分が前記シース内にある第1のアームであって、第1の貫通面を有する前記第1のアームと、
少なくともその近位部分が前記シース内にある第2のアームであって、第2の貫通面を有する前記第2のアームと、
前記シース内の作動部材であって、後退された位置と延ばされた位置との間の前記シース内で移動するように構成された前記作動部材と、を備え、
前記作動部材は前記延ばされた位置に遠位方向に移動すると、前記作動部材の外側表面と前記シースの内側表面との間の領域へと
前記第1のアームの少なくとも一部及び前記第2のアームの少なくとも一部を移動する、組織係合装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のアームがカニューレ基部の遠位端から遠位方向に延び、前記カニューレ基部の少なくとも一部が前記作動部材の前記外側表面と前記シースの前記内側表面との間に配置される、請求項1に記載の組織係合装置。
【請求項3】
前記作動部材が前記後退された位置にあるとき、前記第1のアームは、前記シース内において前記作動部材の前記遠位端に対して遠位である位置で前記第2のアームと交差する、請求項1又は2に記載の組織係合装置。
【請求項4】
前記作動部材が前記後退された位置から前記延ばされた位置に移動するとき、前記第1及び第2の貫通面のそれぞれは、前記装置の長手方向軸に対して水平方向の構成要素と、
遠位方向の長手方向の構成要素、
長手方向ではない構成要素、又は、
近位方向のみの長手方向の構成要素と、
を含む、別個の浅い展開路をたどる、請求項1から3のいずれか一項に記載の組織係合装置。
【請求項5】
前記作動部材の前記後退された位置から前記延ばされた位置への移動は、前記第1及び第2のアームを解放する、請求項4に記載の組織係合装置。
【請求項6】
前記作動部材の前記後退された位置から前記延ばされた位置への移動は、前記第1及び第2のアームの各々を曲げた構成から直線の構成へと移行させる、請求項1から5のいずれか一項に記載の組織係合装置。
【請求項7】
前記作動部材が前記後退された位置にあるときに、前記第1及び第2の貫通面が前記シースの外部にある、請求項1から6のいずれか一項に記載の組織係合装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の貫通面が、前記作動部材が前記後退された位置から前記延ばされた位置まで移行する間、前記シースの外部で移動される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組織係合装置。
【請求項9】
前記第1及び第2のアームが、前記作動部材が延ばされた向きから後退された向きへ移行するとき、前記アームの最大の横方向の寸法が前記シースの外径よりも小さな形状の向きに自動的に戻るように弾性的に付勢される、請求項1から8のいずれか一項に記載の組織係合装置。
【請求項10】
アクセス装置をさらに備え、前記第1及び第2のアームは、前記作動部材が前記延ばされた位置にあるときに、前記第1及び第2のアームの間の組織層の領域に張力をかけるように構成され、前記アクセス装置が、前記第1及び第2のアームの間の、前記第1及び第2のアームによって張力がかけられた前記組織層の前記領域を通って前進されるように構成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の組織係合装置。
【請求項11】
前記作動部材は、カニューレを備え、前記組織係合装置は、前記カニューレ内にアクセス装置をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の組織係合装置。
【請求項12】
前記作動部材が前記延ばされた位置にあるときに、前記アクセス装置は前記作動部材の遠位端を通過するように構成される、請求項11に記載の組織係合装置。
【請求項13】
前記作動部材が前記延ばされた位置にない場合に、前記アクセス装置が前記作動部材の前記遠位端を通って前進されるのを防止するように構成されるロック機構をさらに備える、請求項12に記載の組織係合装置。
【請求項14】
前記アクセス装置が後退された状態にない場合には、前記作動部材が前記延ばされた位置から前記後退された位置へ移行されるのを防止するように構成されるロック機構をさらに備える、請求項12又は13に記載の組織係合装置。
【請求項15】
前記アクセス装置は先端を備え、前記アクセス装置は前記作動部材が前記延ばされた状態にあるときに前記作動部材を通過するように構成され、前記第1の貫通面が前記第1のアームの遠位先端にあり、前記第2の貫通面は前記第2のアームの遠位先端にあり、前記アクセス装置の前記先端は、前記作動部材が前記延ばされた状態にあるときに、前記第1及び第2のアームの前記遠位先端間に延びるラインを通過するように構成される、請求項11から14のいずれか一項に記載の組織係合装置。
【請求項16】
前記作動部材が前記後退された向きにあるときに、前記作動部材の遠位開口の少なくとも一部を覆うように前記第1及び第2のアームが互いに交差し、前記延ばされた向きへの前記作動部材の移動が、前記第1及び第2のアームを前記遠位開口をもはや覆わない位置へと移動する、請求項1に記載の組織係合装置。
【請求項17】
前記作動部材が前記後退された位置にあるとき、前記第1のアーム及び前記第2のアームが前記作動部材の遠位端を覆い、前記延ばされた位置への前記作動部材の移動が、前記作動部材の前記遠位端の覆いを取る、請求項1から16のいずれか一項に記載の組織係合装置。
【請求項18】
前記第1及び第2の貫通面は、前記作動部材が前記延ばされた位置に遠位方向に移動するとき、下にある心外膜に接触及び/又は損傷することなく、患者の心臓の心膜内に埋め込まれ、或いは心膜を貫通するように構成される、請求項1から17のいずれか一項に記載の組織係合装置。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の組織係合装置と、トンネラーカニューレと、閉塞具と、を備えるキット。
【請求項20】
前記組織係合装置は、コネクタを備え、前記閉塞具は、コネクタを含み、前記トンネラーカニューレは、前記組織係合装置の前記コネクタ及び前記閉塞具の前記コネクタの各々に対して補完的であり、個別に接続可能なコネクタを有する、請求項19に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互対照】
【0001】
本願は、2015年11月25日出願の米国特許仮出願第62/260,212号(名称:組織係合装置、システム及び関連方法)の利益を主張し、これら全ての内容は、参照として本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、全体的に、組織層下の領域へのアクセスを提供するためのシステム、装置及び方法に関する。より具体的には、本開示は、組織層下の空間にアクセスするための装置及び方法に関し、この空間は組織層と下部構造(例えば、心膜腔)との間であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0003】
本願明細書に記載の開示は、非限定的及び非排他的である例示的な実施形態を記載する。図に示されている、このような例示的な特定の実施形態を参照する。
【
図1】組織係合システムの一実施形態の斜視図である。
【
図2】トンネラーカニューレの実施形態及び閉塞具の実施形態を含むトンネルシステムの一実施形態の斜視図であり、図示されたトンネルシステムは、
図1の組織係合システムのサブセットとすることができる。
【
図3】
図2のトンネラーカニューレ及び組織係合装置の一実施形態を含む組織係合システムの一実施形態の斜視図であり、図示されたトンネルシステムは、
図1の組織係合システムのサブセットとすることができる。
【
図4B】係合要素の一実施形態の遠位部分の拡大斜視図である。
【
図5A】トンネラーカニューレの遠位部分内に配置された組織係合装置の遠位部分の部分拡大斜視図である。
【
図5B】
図5Aの部分拡大斜視図のような、トンネラーカニューレの遠位端を通過して前進される組織係合装置の遠位部分を示す部分拡大斜視図であり、組織係合装置が係合アーム及びアクセス装置が後退された、完全に後退されているか、又は未作動の状態である。
【
図5C】
図5A及び
図5Bの部分拡大斜視図のような、部分的に展開された状態の組織係合装置を示す部分拡大斜視図であり、係合アームが展開され、アクセス装置は後退されたままである。
【
図5D】
図5Aから
図5Cの部分拡大斜視図のような、完全に展開された状態の組織係合装置を示す部分拡大斜視図であり、係合アームが展開され、アクセス装置は展開されている。
【
図6A】組織係合装置のハウジング及び作動機構の作動インタフェース部分の分解斜視図であり、これは連結機構とも称され得る。
【
図6B】ハウジングの上部構成要素の追加の斜視図である。
【
図6C】作動インタフェースの追加の斜視図である。
【
図6D】閉鎖状態のゲートを示す作動機構のゲート部分の一実施形態の斜視図である。
【
図6E】開状態のゲートを示すゲートの別の斜視図である。
【
図6F】作動カニューレの一実施形態及び非連結状態の作動シャトルの一実施形態を含むアクチュエータの一実施形態の一部の分解斜視図である。
【
図6G】アクセス装置の一実施形態及び非連結状態のハブの一実施形態を含むアクセスアセンブリの一実施形態の分解斜視図である。
【
図7A】トンネラーカニューレ(断面図も示す)と連結された
図1の視線7A-7Aに沿った組織係合装置の断面図であり、完全に後退した構成の作動装置を示し、
図5Bに示す遠位から見た図と対応する。
【
図7B】
図7Aの断面図のような、部分的に展開された状態の作動装置を示す組織係合装置の別の断面図であり、アクチュエータは中間位置に向かって遠位方向に前進される。
【
図7C】
図7A及び
図7Bの断面図のように、部分的に展開された状態の作動装置を示す組織係合装置の別の断面図であり、アクチュエータは最遠位位置を前進される。
【
図7D】
図7Aから
図7Cの断面図のような、アクチュエータが最遠位方向にある、完全に展開された状態の作動装置を示す組織係合装置の別の断面図であり、アクセスアセンブリはアクセス装置を展開するために遠位方向に前進される。
【
図7E】
図7Aから
図7Dの断面図のような、再度部分的に展開された状態の作動装置を示す組織係合装置の別の断面図であり、アクセスアセンブリはアクチュエータが後退できる構成へと遠位方向に引き出されている。
【
図8A】組織層下の領域にアクセスするための例示的な方法の初期段階を示しており、
図1の組織係合システムが使用されることができる。
【
図8B】閉塞具が組織層に接触する例示的な方法の別の段階を示す。
【
図8C】閉塞具がトンネラーカニューレから取り外されている別の段階を示す。
【
図8D】組織係合装置がトンネラーカニューレを通って前進される別の段階を示す。
【
図8E】
図5B及び
図7Aの段階のように、組織係合装置が完全に後退した構成にあり、係合アームの遠位先端は組織層に配置されている、別の段階を示す。
【
図8F】
図7Bの段階のように、組織係合装置が部分的に展開された状態にある別の段階を示し、アクチュエータは中間位置へと遠位方向に前進されて組織層の係合アームに埋め込まれる。
【
図8G】組織係合装置が
図5C及び
図7Cの段階のように、さらに部分的に展開された状態にある別の段階を示し、アクチュエータは最遠位位置へと前進されて組織層の係合アームにさらに埋め込まれる。
【
図8H】組織係合装置が
図8Gに示されたように同一の構成にあり、システムは組織層と下部構造との間の空間を拡大するために近位方向に引っ張られる別の段階を示す。
【
図8I】組織係合装置が
図5D及び
図7Dの段階のように、完全に展開された状態に移動された別の段階を示し、アクチュエータ及びアクセス装置の両方が遠位方向に前進されてきており、アクセス装置は、組織層を貫通して組織層と下部構造との間の空間にアクセスを提供する。
【
図8J】組織係合装置が完全に展開された状態のままであり、ガイドワイヤの遠位端は、アクセス装置を通って組織層と下部構造との間の空間へと前進されている別の段階を示す。
【
図8K】組織係合装置が
図5C及び
図7Cの段階のように、部分的に展開された状態に戻り、アクチュエータは完全に展開されたままであり、アクセスアセンブリが後退した別の段階を示す。
【
図9】製造の初期段階中の係合要素の一実施形態の側面立面図である。
【
図10A】係合アームの製造後の係合要素のさらなる側面立面図である。
【
図10B】係合アームの製造後の係合要素の平面図である。
【
図11A-1】本図に示されていないが(だが、例えば
図5Bを参照)、シースに設けられ得るような拘束状態の係合要素の斜視図である。
【
図11A-2】本図に示されていないが(だが、例えば
図5Bを参照)、シースに設けられ得るような拘束状態の係合要素の斜視図である。
【
図11B】拘束状態の係合要素の側面立面図である。
【
図11D】拘束状態の係合要素の正面立面図である。
【
図12A】本図に示されていないが(だが、例えば
図5Cを参照)、作動カニューレを介するように内部から作動された場合の拘束状態の係合要素の正面立面図である。
【
図12B】本図に示されていないが(だが、例えば
図5Cを参照)、作動カニューレを介するように内部から作動された場合の拘束状態の係合要素の斜視図である。
【
図13】完全に展開された構成における係合装置の一実施形態の遠位端の正面立面図(例えば、近位方向に向けられた端面図)である。
【
図14A】本明細書に開示される係合装置の実施形態とともに使用するのに好適な針の一実施形態における遠位端の斜視図である。
【
図15】完全に後退した状態で示されている組織係合システムの別の実施形態の斜視図である。
【
図16】係合アームが延ばされている、部分的に展開された状態のシステムを示す、
図15の組織係合システムの別の斜視図である。
【
図17】係合アームが延ばされ、アクセス装置が展開された完全に展開された状態のシステムを示す、
図15の組織係合システムの別の斜視図である。
【
図18】
図17の完全に展開された状態における組織係合システムの遠位部分の拡大斜視図である。
【
図19】
図17の完全に展開された状態における組織係合システムの遠位端の正面立面図(例えば、近位方向に向けられた端面図)である。
【
図20】完全に展開された状態における組織係合システムの遠位端の平面図である。展開されたアームを介して組織層を係合させ、アクセス装置を介して組織層を貫通させて組織層の下の領域にアクセスすることができるシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
組織層下の領域にアクセスするため、又はより詳細には、組織層(例えば、壁側心膜)と下部構造(例えば、心外膜)との間の空間(例えば、心膜腔又は囲心腔)にアクセスするための既知のシステム、装置及び方法には、種々の欠点がある。例えば、心臓医学の分野においては、心臓の表面又は心外膜の病気を治療するための低侵襲的治療が開発され、検討されてきた。例示的な治療は心外膜切除、左心耳を結紮、リードの配置、及び薬物送達を含む。これらの手順の重要な要素は、心膜を介した心膜腔へのアクセスを安全にし、これは、心臓を取り囲む薄い保護用多層膜である。最外層は線維性心膜であり、心膜腔に面する内部表面は、壁側層又は心膜と称する漿膜である。壁側心膜に対抗するのは、心外膜の外部表面を形成する臓側板と称する別の漿膜である。臓側板と壁側層との間の心膜腔は、潤滑を提供する漿液の薄膜である。心外膜に近接しているため、その下の心外膜、心筋(心筋組織)及び血管や神経のような他の構造を傷つけることなく非常に薄い心膜を通してアクセスポートを作ることは困難であり得る。心臓の拍動、呼吸運動、線維性心膜の外側表面上の脂肪の表面組織の存在、及び心膜の靭性は、アクセスするのを困難にする追加のいくつかの要因である。
【0005】
心膜腔にアクセスするための非低侵襲的な手順は、外科的な方法であると考えられ、胸腔鏡を使用して心膜に心膜窓と称する開口を作ることができる。体腔液を排出させる(心膜穿刺)以外の目的のために心膜と心外膜との間の心膜腔にアクセスする1つの確立した低侵襲的な方法は、蛍光透視法による誘導をしながら針を注意深く挿入することを含む。この手順は、長年使用されており、現在も依然として行われており、標準的な0.035インチ(8.9ミリメートル)のガイドワイヤを収容する市販のTuohy針(通常17ゲージ又は18ゲージ)を用いる。他の心外膜へのアクセス手順は、21ゲージの微小穿刺針を用いて行われ、これは非常に小さな直径であるため、意図しないで心臓を穿刺しても害がないが、硬度が低いために非常に使いづらいため、より大きく、より安定的な0.035インチ(8.9ミリメートル)のガイドワイヤに交換する必要がある。針の種類をどちらも使用するには、高度な技能や熟練を必要とし、非常に時間がかかることがあり、そのためこの手順は広く採用はされず、最新の心外膜の治療への使用に限定される。
【0006】
これら及び他の既知の装置及び手順は、本明細書の開示から明白であるように、様々な欠点がある。これらの制限は、本明細書で開示された実施形態によって改善又は排除されることが可能である。
【0007】
本開示は概して、組織係合装置、システム、及び方法に関する。特に、本明細書で開示された特定の実施形態は、2つの組織層間の空間を作るか拡大するために使用することができ、またさらに、空間にアクセスするために使用可能である。
【0008】
例示のために、本開示の大部分は、心膜腔を作るか拡大し、また本空間にアクセスすることに関する。特定の装置は心膜(すなわち、壁側心膜)に係合することができ、これは心臓から引き剥がされるか、又は別の言い方をすると、下部組織(例えば、臓側心膜又は心外膜)から引き剥がされて心膜腔を広げることができ、これはまた心膜腔と称され得る。この手法で心膜腔を拡大することで、針が心膜を通って前進されて、この空間へのアクセスを提供する場合に、下部組織(例えば心外膜)を穿刺するリスクを減らすことができる。例えば、心膜液の収集、心膜の生検、診断用及び治療用薬剤の送達、導線の配置、電気生理マッピング及び/又はアブレーション、血管形成術、再狭窄の減少、冠血管ステント配置、冠血管バイパスグラフト術等のような、多くの手順はこの手法で心膜腔にアクセスを提供するという利点を受けることができる。心膜へのアクセスとの関係においては、本明細書に開示されているが、限定するものと解釈するべきではない。他の実施形態又はさらなる実施形態が他の組織層に係合し、患者の組織層間の他の空間へのアクセスを提供するために使用することができるためである。
【0009】
図1は、組織係合システム100の一実施形態の斜視図である。より完全に本明細書で記載されるように、組織係合システム100は組織層を係合し、組織層を貫通して組織層下の領域にアクセスを提供するために使用することができる。特定の実施形態では、比較的薄く及び/又は下部構造に密接して位置する組織層を係合して貫通するために特に好適であり得る。例えば、いくつかの実施形態は心膜を係合し、貫通するのに特に好適であり、下にある心外膜に接触したり損傷したりすることなく行うように構成することができる。様々な実施形態の他の特徴及び利点は、以下の開示から明白になるだろう。
【0010】
図示された実施形態では、組織係合システム100は、トンネルシステム101及び組織係合システム102を含む。換言すれば、トンネルシステム101及び組織係合システム102の各々は、組織係合システム100のサブセットである。図示された実施形態では、トンネラーカニューレ110は、トンネルシステム101及び組織係合システム102の両方を共通して含む。すなわち、トンネラーカニューレ110は、トンネルシステム101とともに使用されて標的組織層への通路を通すことができ、また、その後の標的組織層を係合及び貫通する上で組織係合システム102とともにさらに使用することができる。
【0011】
トンネラーカニューレ110に加えて、トンネルシステム101は閉塞具120を含み、またトンネルシステム102は組織係合装置130を含む。図示された実施形態では、閉塞具120及び組織係合装置130の各々は、トンネラーカニューレ110に選択的に連結されるように構成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、組織係合システム100はキット103として設けられる。例えば、トンネラーカニューレ110、閉塞具120、及び組織係合装置130は、一組として組み立てられ、単一の滅菌包装として共に配布されることができる。他の実施形態では、キット103は閉塞具120又はトンネラーカニューレ110のうち1つ以上を除外してよい。その他の場合、トンネラーカニューレ110、閉塞具120、又は組織係合装置130のうち1つ以上は別に配布されることができる。
【0013】
図2を参照すると、トンネルシステム101はより詳細に示されている。図示された実施形態では、トンネラーカニューレ110は、カニューレ、シャフト、又は管腔112を画定する管111を含む。
【0014】
トンネラーカニューレ110は、さらに管111の近位端にコネクタ113を含むことができる。コネクタ113は、任意の好適な種類とすることができ、選択的に閉塞具120に/閉塞具120から、トンネラーカニューレ110に連結/分離するように構成されることができる。図示された実施形態では、コネクタ113は、トンネラーカニューレ110の長手方向軸に対して外側に曲がるように構成される2つの弾性プロング115a、115bを含む雌スナップ嵌め114を備える。各弾性プロング115a、115bの近位端は、閉塞具120の相補部分を係合することができる内側に向けられた隆起116を含む。図示されたスナップ嵌め114は、一対の互いに正反対のチャネル117を含む(そのうち1つのみを
図2に図示)。チャネル117は、プロング115a、115bの湾曲を容易にすることができる。いくつかの実施形態では、トンネラーカニューレ110は、任意の好適な種類の1つ以上の深さマーキング118を含む。
【0015】
図示された閉塞具120は、トンネラーカニューレ110の管腔112を実質的に充填するように寸法を合わせたロッド121を含む。例えば、ロッド121の外径は、管111の内径よりも僅かに小さく、閉塞具120を管111に容易に挿入し、また管111から取り出すことができる。一方、管111は、患者の組織(例えば、軟組織又は結合組織)中を前進するときでも管腔112を充填することにより芯が抜けるのを防止する。
【0016】
本明細書中で用いる場合、「直径」という用語は最も広い意味で用いられ、中心点を通るあるものの片側から他側への直線の定義又はあるものの中心を通る片側から他側への距離の定義を含む。すなわち、「直径」という用語は、必ずしも円形形状を意味するものではない。図面は、管111及びロッド121のような全体的に円形又は円筒状の左右対称形を示すが、本開示は、非円形の構成を想定している。例えば、様々な実施形態は、三角形、矩形、多角形、楕円形等のような非円形断面形状を有することができる。特に明記しない限り、「直径」という用語は、文脈から明らかなように、所与の特徴又はその一部の最大直径を指す。
【0017】
閉塞具120は、その遠位端に丸みをつけ得る鈍い又は尖っていない先端122を含むことができる。先端122は、閉塞具120が組織を通って容易に前進されることができるのに十分な傾斜のあるピッチ(例えば、十分に鋭いこと)を有することができる。しかし、いくつかの実施形態では、先端122は、先端122が標的組織層に押し当てられるときに標的組織層が意図せずに穿刺又は穿孔するのを防止するために十分な鈍さである。例えば、いくつかの実施形態では、先端122は、患者の組織を通って患者の心臓に向かって容易に前進され得る(例えば、約2ポンド又は約3ポンドの力を加えた場合)が、先端122が同じ力の量で心臓(例えば、心膜)と接触すると、先端122はそれによって停止し、心臓を穿刺しない。
【0018】
閉塞具120は、トンネラーカニューレ110のコネクタ113に選択可能に連結されるように構成されたコネクタ123を含むことができる。例示のコネクタ123は、トンネラーカニューレ110の雌スナップ嵌め114に対して補完的である雄スナップ嵌め124である。スナップ嵌め124は、隆起116がカム表面125の近位端の溝126へと受け入れられるまでプロング115a、115bを広げて離す傾斜面又はカム表面125を含む。閉塞具120とトンネラーカニューレ110との間の任意の他の好適な接続インタフェースが企図される。
【0019】
図示された実施形態では、閉塞具120は一対の互いに正反対の隆起127を含み、これはトンネル事象中にトンネルシステム101の捻りを容易に可能にする把持部として機能してよい。閉塞具120は、拡大された基部128を含むことができ、実質的に平坦であってよく、トンネル事象中にトンネルシステム101に遠位方向の力を加えることを促進し得る。
【0020】
図3を参照すると、組織係合装置130は、閉塞具120の組織係合装置と類似又は同一の連結特徴を含むことができる。例えば、図示された実施形態では、組織係合装置130は、閉塞具の類似の番号、類似の名称の機能と同じであるカム表面135及び溝136を有するコネクタ133を含む。したがって、トンネル事象後、閉塞具120は、トンネラーカニューレ110から容易に取り出され、組織係合装置130と交換することができる。
【0021】
組織係合装置130は、細長いハウジング又は管腔132を画定するシース131を含むことができる。患者に挿入される組織係合システム102の遠位部分の形状を小さくするために、シース131は管111の内径よりも僅かに小さな外径を有することができる。このような配置にすることで、シース131に容易に挿入し、管111から容易に取り外すことができ、一方、シース131内に収納された組織係合装置130の構成要素に対し大きな空間を提供する。様々な実施形態では、シース131の外径は、約0.15インチ、約0.10インチ、又は約0.09インチ(約3.8ミリメートル、約2.5ミリメートル又は約2.3ミリメートル)以下であり得る。いくつかの実施形態では、シース131の外径は約0.96インチ(約2.4ミリメートル)である。
【0022】
シース131内に収納される構成要素用に大きな空間を提供するために狭いのに対し、シース131の側壁の厚さは、また、曲げに抵抗するのに十分な硬さ又は剛性を有するシース131を提供するように選択されてよい。様々な実施形態では、シース131の側壁の厚さは、約0.005インチ、約0.004インチ、又は約0.003インチ(約0.13ミリメートル、約0.1ミリメートル、約0.08ミリメートル)以下である。
【0023】
シース131は、任意の好適な材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、シース131はステンレス鋼を備える。
【0024】
組織係合装置130は、ユーザが組織係合装置130の一部を展開可能な作動インタフェース138を含むことができる作動機構137を有し得る。図示された実施形態では、さらに後述するように、作動インタフェース138は、遠位方向に押されると係合アームを作動し、又は近位方向に引っ張られると作動後に係合アームを後退することができるボタンを備える。作動機構137はさらに、アクセスアセンブリ139を含むことができ、針のようなアクセス装置を展開するために使用され得る。図示された実施形態では、アクセスアセンブリ139は、以下にさらに記載するように、針を展開するために遠位方向に押されることができ、また展開後に針を後退させるために近位方向に引っ張られることができる。
【0025】
図4Aを参照すると、組織係合装置130の作動機構137は、内部に様々な構成要素が収納されるハウジング140を含むことができる。図示された実施形態では、ハウジング140は上部シェル141及び下部シェル142を含む。上部シェル141及び下部シェル142は、摩擦嵌め係合、スナップ嵌め係合、接着、溶接(例えば超音波溶接)等のうち1つ以上を含む、任意の好適なやり方で互いに固定されることができる。
【0026】
本明細書で「上部」及び「下部」のような方向を示す用語は、全体的に図面に描かれた向きに対する。このような方向を示す用語は、装置又は構成要素の可能な向きを制限することを必ずしも目的とはしない。例えば、場合によっては、ユーザは、作動機構の使用中に、上部シェル141を下向きに、下部シェル142を上向きに向けることを望む場合がある。
【0027】
いくつかの実施形態では、組み立てられたハウジング140は、ユーザの手の1つ以上の巻き、握りしめ、又は握りしめた、湾曲した指の中に収まるように寸法を合わせることが可能である。例えば、組み立てられたハウジング140の外部の幅は、約1/2インチ、約5/8インチ、約3/4インチ、約1インチ、約1.5インチ(約1.3センチメートル、約1.6センチメートル、約1.9センチメートル、約2.5センチメートル、又は約3.8センチメートル)以下であることができる。いくつかの実施形態では、幅は約5/8インチである。いくつかの実施形態では、組み立てられたハウジング140の外部の長さには、1つ以上の巻き、握りしめ、又は握りしめたユーザの手の指が3本まで、又は4本まで同時に接触することができる。このような構成はユーザにハウジング140上でしっかりしたハンドルを提供することができ、係合装置130を安定し、確実に、及び/又は人間工学的に使用することができる。様々な実施形態では、組み立てられたハウジングの把持領域(例えば、図示された実施形態の実質的に平行に供給される中央部分)は、約2インチ、約2.5インチ、又は約3インチ(約5.1センチメートル、約6.4センチメートル、又は約7.6センチメートル)以下である長さを有する。いくつかの実施形態では、その長さは約2.25インチである。
【0028】
さらに後述するように、作動インタフェース138は、ハウジング140に移動可能に連結されることができる。例えば、図示された実施形態では、作動インタフェース138は、遠位方向(作動のために)又は近位方向(後退のために)に選択的に動かすように構成され得る。ハウジング140に対する作動インタフェース138の位置は、使い易いように人間工学的に設計されることができる。図示された実施形態では、作動インタフェース138は、上部シェル141の上部表面の中心点を実質的に通るように構成される。作動インタフェース138は、さらに遠位及び近位の方向の各々における中心点からほぼ等距離に移動するように構成され得る。他の好適な構成も企図される。作動インタフェース138は、片手での操作に都合がいいように配置され得る。例えば、図示された実施形態では、ハウジングは、ユーザの手の多数の指で把持されることができ、作動インタフェース138は、その手の親指で制御されることができる。
【0029】
ハウジング140の下部シェル142はコネクタ133を画定できる。図示された実施形態では、シース131は任意の好適な手法でコネクタ133にしっかりと固定される。係合要素143は、シース131の管腔132内に受け入れられることができ、コネクタ133及び/又はシース131にしっかりと固定され得る。換言すれば、係合要素143は、シース131に対して及び/又はハウジング140に固定されることができる。図示された実施形態では、係合要素143の近位端は、シース131の近位端に取り付けられる。
【0030】
図4Bは、さらに詳細に係合要素143の遠位部分を示す。係合要素143は、基部104を備え、本基部は係合要素143の近位部分を画定する。図示された実施形態では、基部104は実質的に管状又はカニューレ構造であり、そのため基部104もまたカニューレ基部とも称され得る。カニューレ基部104は管腔105を画定する。図示された実施形態では、基部の外径はシース131の内径よりも僅かに小さい。
【0031】
図示された実施形態では、複数の可撓性アーム108a、108bは基部104の遠位端から遠位方向に延びる。アーム108a、108bもまた、タイン又はプロングと称され得る。さらに後述するように、アーム108a、108bは、基部104に一体的に接続されてよく、いくつかの実施形態では、又は換言すれば、基部104及びアーム108a、108bは単一片の材料から一体的に形成される。例えば、アーム108a、108bは、管(
図9を参照)の部分から切り取られ(例えばレーザ切断)、次に残りの突出を曲げることによって形成され得る。いくつかの実施形態では、係合要素143をシース131に挿入する前に、アーム108a、108bは、例えば、
図10A及び
図10Bに示されている構成のように、基部104の外周を越えて外側に横方向に延びる曲げ構成を保持し得る。
【0032】
各アーム108a、108bは、標的組織層内に埋め込まれ、標的組織層を貫通し、又は別の方法で標的組織層に取り付けられることが可能な組織係合部材109a、109bを含むことができる。組織係合部材は、各々、標的組織層へと貫通することが可能な角度のある端、スパイク、又はバーブのような尖った要素を含む。図示された実施形態では、各組織係合部材109a、109bは、それぞれのアーム108a、108bの角度のある遠位端を含む。
【0033】
図4Aを再度参照すると、係合装置130は、その近位端での作動インタフェース138の移動を作動部材145の遠位端へと通信する作動部材145を含むことができる。さらに後述するように、作動部材145は、係合要素143のアーム108a、108bを展開するように構成される。
図4Aに図示されるようないくつかの実施形態では、作動部材145は、管又はカニューレを備える。したがって、作動部材145もまた、作動カニューレと称され得る。
【0034】
さらに、図示された実施形態は、展開時には標的組織層を通ってアクセス開口を作るように構成される貫通部材又はアクセス装置147を含む。図示された実施形態では、アクセス装置147は針である。任意の好適な針又は他の貫通部材が使用され得る。作動部材145は、シース131の管腔132内に配置されることができ、摺動又は別の方法で内部を自由に動かすように寸法を合わせることができる。アクセス装置147は、作動部材145の管腔105内に配置されることができ、摺動又は別の方法で内部を自由に動かすように寸法を合わせることができる。
【0035】
作動機構137は、組織係合装置130の動作を拘束するように構成される多数の構成要素を含むことができる。特に、図示された実施形態では、作動機構137は、係合要素143に対して、またアクセス装置147に対しても作動部材145の移動を制御する構成要素を含む。さらに、作動機構137は、作動部材145及び係合要素143に対して、アクセス装置147の移動を制御する構成要素を含むことができる。図示された実施形態では、作動機構は、ハウジングの下部シェル142内に受け入れられるゲート144、作動部材145と連結されるシャトル146、及びアクセス装置147と連結されるハブ149を含む。これらの構成要素の各々の少なくとも一部はハウジング140内に配置される。これらの構成要素の様々な特徴及び機能は、以下の
図6Aから
図7Eに関連してさらに記載される。アクセスアセンブリ139は、ハブ149及びアクセス装置147を含む。作動インタフェース138、シャトル146、及び作動部材145は、本明細書において集合的に作動アセンブリ148と称され得る。
【0036】
図5Aから
図5Dは、様々な動作状態における組織係合システム102を示し、これはシステム102を使用する方法のステップに一致できる。これらの図は組み立てられた係合システム102の遠位端を示す。
図6Aから
図7Eに対してさらに以下に記載されるように、
図5Aから
図5Dに示された動作状態を達成するための例示的な実施例は図示された作動機構137を介して達成されることができる。記載された動作状態を達成するための任意の好適なシステム及び方法が企図されることを理解すべきである。
【0037】
図5Aは、トンネラーカニューレ110の遠位部分内に配置された組織係合装置130の遠位部分を示す。トンネラーカニューレの管111は最も外側の管として示されている。シース131の外部表面、カニューレ基部104、作動部材145、及びアクセス装置147は破線で示されている。このビューは、入れ子式、伸縮式、又は同軸配置の管111、シース131、カニューレ基部104、作動部材145、及びアクセス装置147によって達成されるコンパクトな構成を示す。
【0038】
アーム108a、108b及び組織係合部材109a、109bもまた、
図5Aにおいて識別されている。組織係合システム102のこの動作構成においては、組織係合装置130は、管111の遠位端に向かって、又は遠位端を通って遠位方向に前進されるか、もしくは管111を通って近位方向に後退される過程のいずれかにあり得る。いずれの場合も、組織係合部材109a、109bの先の尖った端は、管111の内部にもあり、換言すれば、管腔112内にある。この配置において、尖った端は、管111を通って前進するか、又は管111を通って後退する間、組織(すなわち、管111の外部の組織)に意図せずに接触できない。
【0039】
図5Bは、トンネラーカニューレ110の管111の遠位端を通過して前進される組織係合装置130の遠位端を示す。
図5Aと同様に、組織係合装置130は完全に後退されるか、未作動の状態で図示されている。完全に後退された状態では、アーム108a、108b又はアクセス装置147のどちらも展開されていない。図示された構成は、システム102が標的組織層へと前進され、かつアーム108a、108bを展開する直前の時点を表すことができる。
【0040】
図示された実施形態では、アーム108a、108bの係合部材109a、109bは、組織係合装置130が完全に後退した構成にある場合にはシース131の遠位端から僅かに外部に配置される。換言すれば、係合部材109a、109bはシース131の遠位端に対して遠位方向に配置される。係合部材109a、109bの露出された先端は、シース131の遠位端が標的組織層と接触して前進されるため、接触時に標的組織層に容易に係合し得る。また、図示された実施形態では、尖った先端は僅かに遠位方向に向けられ、その結果、係合装置130がトンネラーカニューレ110を通って遠位方向に前進される際に、尖った先端と標的組織層とが初めて接触して標的組織層に尖った先端を向かわせることができる。さらに、シース131の遠位端を通過して尖った先端が僅かに露出することによって、標的組織層にシース131の遠位端を当接して接触させ、組織層は最初に係合され、またアーム108a、108bの展開が進行可能であることをユーザに対し触覚でフィードバックを提供できる。
【0041】
図示された実施形態における係合部材109a、109bは長手方向に、又は遠位方向に、シース131の遠位先端を越えて延びるが、係合部材109a、109bは、やはり、延びないか、又はシース131の外周を越えて水平方向外側に大きく延びないかのいずれかである小さな形状の構成に制限される。例えば、
図5Bに示した配置が端面図(近位方向)で示された場合には、
図11D及び
図13に示されたビューと同様に、シース131の遠位端の全周は、係合部材109a、109bが周辺を越えて水平方向外側へ延びない状況で見えるであろう。このビューにおいては、係合部材109a、109bは周辺に対し内側にある。換言すれば、シース131の外部表面は、シース131の遠位端を越えて遠位方向に突出された場合には、係合部材109a、109bの全て又はほぼ全て(例えば75%以上)は、取り囲まれるか外接するであろう。このような配置は、係合部材109a、109bとシース131の周囲外に配置された組織との間の相互作用(例えば、引っ掛け、引き裂き等)を抑制又は回避することができる。これはトンネラーカニューレ110の遠位端を越えて組織係合装置130の展開中又はトンネラーカニューレ110へと係合装置130が後退する間のいずれにおいても有用であり得る。
【0042】
アーム108a、108bの残部はシース131の管腔132内に配置される。以下でさらに説明すると、また
図5Bに示すように、アーム108a、108bは、管腔132内かつ作動部材145の遠位端に対し遠位である位置で互いに交差する。
【0043】
図5Cは、アーム108a、108bが展開された後の組織係合システム102を示す。特に、作動部材145は、アーム108a、108bが互いに交差する位置を越えて遠位方向に前進されてきて、それによってアーム108a、108bの交差を解き、
図5Bに示されている非展開構造から変形させる。作動部材145は、アーム108a、108bの近位部分を作動部材147の外部表面とシース131の内部表面との間の環状領域へと押し込んだ。
【0044】
図示された実施形態では、アーム108a、108bは、装置130の正反対側にある(例えば、カニューレ基部104の反対側)。さらに後述するように、アーム108a、108bの展開により、実質的に対抗する方向に係合部材109a、109bを移動させる。係合部材109a、109bは、このように、内部に埋め込まれ、及び/又は実質的に対抗する方向に標的組織層に張力を加えることができる。アーム108a、108bは、シース131の周囲を越えて水平方向外側へ延びる大きな形状の構成である。
【0045】
図示された構成では組織係合装置130は、アーム108a、108bは展開されているがアクセス装置147は後退したままであるという点において、部分的に展開された状態である。アーム108a、108bを展開することにより、係合部材109a、109bを作動部材145の遠位端から外して、アクセス装置147を展開するために遮るもののない通路を提供する。換言すれば、
図5Bに示された構成において、アーム108a、108bは作動部材145の遠位端を覆う。アーム108a、108bの展開は、作動部材145の遠位端の覆いを効果的に取り、アクセス装置147にアクセス路を提供する。
【0046】
本発明で使用する場合、「覆う」という用語は、表面(例えば作動部材145の遠位端)に直接接触することを必要としないが、このような配置は本用語の範囲内に含まれる。「覆う」という用語は、本明細書ではより広範に使用され、直接接触することがない障害物の状況を含む。例えば、
図5Bに示された配置が、斜視図よりもむしろ
図13に示されたビューに類似する端面図(近位方向)で示された場合、作動部材145の遠位端における開口の大部分はアーム108a、108bによって視界が遮られるであろう。より適切に、対抗する方向、つまり、アクセス装置147の遠位端の斜視から見ると、作動部材145の遠位開口は遮られるであろう。換言すると、作動部材145の遠位開口を画定する作動部材145の内部表面が作動部材145の遠位端を越えて遠位方向に突出した場合には、アーム108a、108bはそれらによって取り囲まれるか、又は外接されるであろう。
【0047】
いくつかの実施形態では、作動機構137は作動部材145を介してアーム108a、108bの展開の前にアクセス装置147が展開するのを防止できる。これは、ユーザが不意にアームを通って遠位方向にアクセス装置147を動かすことによって、アーム108a、108bを部分的に展開しないことを確実にするための安全策になり得る。すなわち、アクセス装置147の外径が作動部材145の外径よりもほんの僅かだけ小さいため、作動部材145の展開前にアクセス装置147を展開すると、係合部材109a、109bを比較的大きな形状へと水平方向外側に延びるが、場合によっては作動部材145の展開によって達成され得るような幅又は大きな形状の配置ではない。
【0048】
図5Dは、完全に展開された状態の組織係合装置130を示す。特に、係合アーム108a、108bが展開され、アクセス装置147もまた展開されている。アクセス装置147は作動部材145を通り、遠位端を越えてその遠位方向に前進してきている。
【0049】
いくつかの実施形態では、アクセス装置147が始めに後退されない限り、作動機構137は作動部材145が係合アーム108a、108bを後退させないように防止することができる。これは、最初にアクセス装置147を最初に後退せずに作動部材145を後退させるとアーム108a、108bを部分的に展開された状態のままにする可能性があるため、安全策としての役割をすることができる。例えば、図示された実施形態では、アクセス装置147は作動部材145の外径よりも僅かに小さい外径を有する。したがって、作動部材145がアクセス装置147が展開された状態の間に引き出された場合には、弾性アーム108a、108bは作動部材145の後退時に小さな形状の構成に戻り始めるであろうが、しかし、その代わりに、アクセス装置147の外部表面と接触するようになることにより、この構成に到達することを防止するであろう。ユーザは、作動部材145が後退したため、アーム108a、108bがこの段階で完全に後退したと考え、組織係合装置130を部分的に展開された状態のアーム108a、108bで引き出す可能性がある。この状態で組織係合装置130を遠位方向に引き出すと、場合によっては組織の下にある標的組織層及び/又は係合装置130自体を損傷する可能性がある。
【0050】
特定の実施形態では、システム102を患者から後退させる方法は、逆の順序で
図5Aから
図5Dに示された段階をたどることができる。例えば、
図5Dに示された構成から始めると、アクセス装置147は
図5Cに示された方向に後退されることができる。その後、作動部材145は
図5Bに示された方向に後退されることができる。特定の実施形態では、アーム108a、108bが弾性であるため、この作動部材145の後退もまた、アーム108a、108bを
図5Cの変形された状態から
図5Bに示された構成へと自然に、又は自動的に戻らせるだろう。その後、組織係合装置130は
図5Aに示されるように、トンネラーカニューレ110の管腔を通って引き出され得る。
【0051】
図6Aから
図6Gは、組織係合装置130のための作動機構137の例示的な実施形態を示す。前述のように、他の好適な機構も企図され、本開示の範囲内である。図示された作動機構137は組織係合装置130の2つの潜在的に不都合な構成を防止することができる。特に、作動機構137は作動部材145を介してアーム108a、108bの展開の前にアクセス装置147が展開するのを防止するように構成され、これにより上述したこのような構成に対する潜在的に望ましくない結果を回避できる。図示された作動機構137はさらに、作動部材145の後退及び結果として生じるアーム108a、108bの後退を防止するように構成され、これにより上述したこのような構成に対する潜在的に望ましくない結果を回避できる。図示された駆動機構137は、二重連結システムと称され得る。換言すると、作動機構137は組織係合装置130の最初の潜在的に望ましくない構成を防止するためのロックとしての役割をすることができ、さらに、組織係合装置130の第2の潜在的に望ましくない構成を防止するためのロックとしての役割をすることができる。他の実施形態では、連結装置は潜在的に望ましくない構成のうち1つのみ防止し得る。さらに他の実施形態では、作動機構137はいずれかの潜在的に望ましくない構成に対する連結装置として機能しなくてよい。
【0052】
図6Aは、ハウジング140の実施形態の分解斜視図を示し、上部シェル141及び下部シェル142を含む。下部シェル142は、上述したようにその遠位端にあるコネクタ133を含むことができる。コネクタ133は、作動部材145及びアクセス装置147が展開された状態に前進又は後退された状態に後退するために中を通過できる管腔133aを画定できる。
【0053】
図6A及び
図6Bを参照すると、下部シェル142は、作動機構147の特定の構成要素又はその一部が受け入れられるキャビティ150aを画定できる。上部シェル141は、同様に、特定の構成要素又はその一部が受け入れられることが可能なキャビティ150bを画定する。上部シェル141及び下部シェル142が互いに連結されるときには、キャビティ150a、150bは単一の空間の容積を画定する。
【0054】
作動機構137の図示された実施形態の二重連結プロパティは、通常2つのレベル又は平面上で動作する。上位レベルは上部シェル141の下部分によって全体的に画定される。下部レベルは下部シェル142によって画定される。例えば、下部シェル142は、アクチュエータ停止部151を含み、これは下部シェル142の実質的に平坦な基部壁から上向きに延びる丸い突出である。さらに後述するように、アクチュエータ停止部151は、下部レベルにおける構成要素と相互作用するように構成される。
【0055】
下部シェル142はさらに、さらに後述するように、ゲート144と接続するように構成される連結突出152を含む。下部シェル142の近位端は、キーイング表面153aによって画定されるキースロット領域155aを含むことができる。上部シェル141の近位端は、キーイング表面155bによって画定されるキースロット領域155bを同様に含むことができる。上部シェル141及び下部シェル142が互いに連結されるときには、キースロット領域155a、155bは、単一のキースロットを画定し、キーイング表面153a、153bは、その部分がハウジング140から遠位方向に前進されるか、又は近位方向に後退されつつ、ハブ149の固定された回転方向を維持するように協働する。
【0056】
上部シェル141は、作動インタフェース138が前後に動かすことができる凹部156を画定する。上部シェル141は、さらに作動インタフェース138が前後に沿って動かすことができる長手方向のチャネル157を画定する。上部シェル141もまた、作動インタフェース138の一部が内部を通って前進されることができる横方向のチャネル158を含む。
【0057】
図6Bを参照すると、上部シェル141は、さらに以下に記載するように、シャトル146の近位方向の移動を選択的に防止できる一対の停止部159a、159bを画定する。停止部159a、159bは、二重連結機構が沿って作動する上位レベル内にある。
【0058】
図6Aを参照すると、図示された作動インタフェース138はボタン160として形成され、これはまたスライダと称され得る。図示されたボタン160はユーザの親指を介する作動に特に適しているが、他の作動把持部が可能であるがハウジング140は手の指で保持される。ボタン160は、ユーザの親指の先端を受け入れるような形状となっている近位面161を含む。近位面161は、把持部163に向かって遠位方向に上昇し、これはユーザに牽引力を提供できる。任意の好適な把持機構が企図されるが、図示された把持部は、横方向に向けられた溝を含む。遠位面162は頂点から急角度で下がる。ユーザは遠位面162の頂点及び/又は上部分を容易に把持して作動アセンブリ148を後退するために後方向の力を加える。
【0059】
図6Cを参照すると、ボタン160は、上部シェル141の長手方向のチャネル157内を摺動するように寸法を合わせた長手方向のガイド164を含むことができる。ボタン160はさらに、ボタン160の底部表面と協働してガイド164のいずれかの側上にあるチャネル166を画定する水平方向又は横方向の棒165を含むことができる。チャネル166は、長手方向のチャネル157と接する上部シェル141の一部を受け入れることができる。
【0060】
図6D及び
図6Eは、2つの異なる動作状態におけるゲート144を示す。
図6Dにおいては、ゲート144は閉鎖され、これに対して、ゲート144は
図6Eにおいて開かれている。ゲート144は、下部シェル142内に配置される。したがって、ゲート144は、二重連結機構のより低いレベルで動作する。
【0061】
ゲート144は、近位方向に延びる2つの弾性アーム171a、171bを含む。基部170は、下部シェル142の連結突出152を受け入れるように寸法を合わせた開口172を画定してゲート144を下部シェル142に接続する。アーム171a、171bの遠位端は、基部170の内部表面と協働して容器173を画定する。ゲート144は下部シェル142に連結される場合、アクチュエータ停止部151は容器173内にある。
【0062】
アーム171a、171bの略中央部分は、それぞれ内側に突出するカム表面174a、174bを含む。さらに下記に記載されているように、カム表面174a、174bは、シャトル146の一部と相互作用してゲート144を選択的に開くように構成される。
【0063】
アーム171a、171bの近位端は、ゲート144が
図6Dの閉鎖状態にあるときにハブ149の一部と当接してハブ149の遠位方向への移動を防ぐように構成される停止部175a、175bを含む。ゲート144は
図6Eの開状態にあるときに、停止部175a、175bは互いに分離されて、ハブ149の一部が遠位の方向に通ることができる通路176を画定する。
【0064】
図6Fはアクチュエータ148の一部を示し、これは作動部材145及びシャトル146を含む。前述したように、アクチュエータ148は、さらに作動インタフェース138を含む。
【0065】
前述したように、図示された実施形態では、作動部材145は管腔180を画定するカニューレである。管腔180は、アクセス装置147が通過できるような寸法である。作動部材145の近位端は、任意の好適な手法でシャトル146の本体181に連結されることができる。
【0066】
シャトル146は、長手方向のチャネル183及び水平方向のチャネル187を画定するように協働する一対の上向きに突出する側壁182を含む。チャネル183、187は、ボタン160から下向きに突出する長手方向のガイド164及び横方向の棒165を受け入れるように寸法を合わせられる。
【0067】
図6Aから
図6C及び
図6Fを参照すると、ボタン160をシャトル146及びハウジング140の上部シェル141の連結において、長手方向のガイド164及び横方向の棒165は、上部シェル141の長手方向のチャネル157及び横方向のチャネル158を通って、シャトル146の長手方向のチャネル183及び水平方向のチャネル187へと挿入される。ボタン160及びシャトル146は、摩擦嵌め、スナップ嵌め、接着等のうち1つ以上を含む任意の好適な手法で共に接続されることができる。一旦、ボタン160及びシャトル146が接続されると、ボタン160は上部シェルの長手方向のチャネル157内で前方及び後方に自由に摺動する。
【0068】
図6Fを再度参照すると、シャトル146はさらに、ウェッジ184のような下向きの突出を含む。ウェッジ184は、連結機構の下部面上で動作するように構成される。具体的には、ウェッジ184は、ゲート144のアーム171a、171bの近位部分間に配置されることができる。ウェッジ184は、ゲート144のカム表面174a、174bと相互作用するカム表面を含み、弾性的で可撓性のアーム171a、171bを離すようにさせることができる。ウェッジ184はアクチュエータ停止部151(
図6A)と相互作用してシャトルが遠位方向にあまりに遠く移動するのを防止できる。具体的には、停止部151は、作動部材145の遠位端が作動アーム108a、108b(
図5Cを参照)に対して例えば、作動アーム108a、108bの組織係合部材109a、109bの僅かに近位の位置のような、所望の位置で停止するのを確実にするように配置され得る。このような位置は、例えば、作動係合部材109a、109bの標的組織層の被係合部を押すことを回避し得る。
【0069】
図6Fを続いて参照すると、シャトル146の図示された実施形態は、水平方向かつ近位方向突出する一対の弾性的で可撓性のあるアーム185a、185bを含む。アーム185a、185bは、その基端に停止部186a、186bを含む。アーム185a、185b及び停止部186a、186bは、連結機構の上位レベル上で動作するように配置される。具体的には、さらに以下で説明するように、アーム185a、185bは、アクチュエータ148がハブ149の一部との接触を介して作動部材145を通じてアーム108a、108bを展開すべく遠位方向に前進させるように内側に曲げてよい。しかしながら、アクセス装置147を展開するためにハブ149を遠位方向へ前進させると、アーム108a、108bは、自動的に通常の延びた状態に自動的に戻ることができ、その時点で停止部186a、186bは、上部シェル141の停止部159a、159bに係合する。
図7Eに対してさらに以下に記載されるように、ハブ149が近位位置に戻って停止部186a、186bを停止部159a、159bから開放するまでシャトル146はこの位置に保持されることができる。
【0070】
図6Gは、アクセスアセンブリ139を示し、これはアクセス装置147又は貫通部材及びハブ149を含む。アクセス装置147の近位端は、任意の好適な手法でハブ149の本体191に連結されることができる。アクセス装置190は、一旦、アクセス装置147が標的組織層を貫通すると、標的組織層(例えば心膜腔)下の領域との連通を確立できる管腔190を画定することができる。例えば、ガイドワイヤは、管腔190を通して送達され得る。
【0071】
ハブ192は、下部シェル142及び上部シェル141のキーイング表面153a、153bにより画定されたキースロット内に適合するように形成されているネック192と含む。ネック192は、キーイング表面153a、153bと協働してその長手方向軸を中心とするハブ149の回転運動を防止する外側へ突出するフランジを含むことができる。
【0072】
ハブ192は把持部197を含むことができ、ネック192の近位に配置され得る。把持部197は、ユーザがハウジング140を第1の手で保持しながら第2の手を使用するなど、ユーザによって容易に操作されるような寸法に構成されることができる。図示された実施形態では、医療用コネクタ198は、ハブ192の近位端に配置される。任意の好適な接続インタフェースは、医療用コネクタ198のために企図され、流体をアクセス装置147の遠位端によってアクセスされた領域に、又は領域から送達及び/又は回収するために、ハブ149を任意の好適な医療装置(複数可)又は装置に連結する役割をすることができる。図示された実施形態では、コネクタ198はルアー継手199を備える。
【0073】
図6Gを続いて参照すると、ハブ149は、3つの遠位方向に突出するタイン、プロング又はアーム193、194a、194bを含む。図示された実施形態では、アーム193、194a、194bは実質的に三叉形状を形成する。中央アーム193は、外側アーム194a、194bよりも短く、またその遠位端に停止部195を含む。停止部195は、連結システムのより低いレベルで動作し、ゲート144の停止部175a、175bと相互作用するように構成される。
【0074】
上向きの突出196a、196bは側アーム194a、194bの各々の遠位端に配置される。突出196a、196bは、連結システムの上位レベルで動作するように配置される。具体的には、突出196a、196bは、ハブ149が後退状態に近位方向に引っ張られる場合には、アーム185a、186bの近位端を内側に曲げるように構成され、それによって
図7Eに関してさらに示されて記載されるように、シャトルを後退状態にまで近位移動できる。
【0075】
図示された作動機構137の特徴のいくつかは、所与の機能を達成するための一対の要素を含む。例えば、2つのアーム185a、186aは、2つの停止部159a、159bと相互作用して、特定の条件下で作動部材145の後退を防止する。他の実施形態では、相互作用する特徴の単一セットのみが使用され得る。しかしながら、場合によっては、相互作用する特徴の冗長なセットは、システムに対し強度、安定性及び/もしくはバランスを与え、並びに/又はバックアップ又は故障として作用することができる。
【0076】
図7Aから
図7Eは、作動機構137の動作の様々な段階を示す。動作のこれらの段階に関する多くの詳細は、既に提供されている。
図7Aから
図7E及びそれに続く記載は、様々な構成要素が相互作用する(例えば二重連結機構を達成するための)手法に関してさらに明瞭にするためである。本議論は図示された作動機構137の合理的な理解を目的とするため、少なくとも
図5Aから
図6Gに関して記載された特定の特徴は、以下の記載において繰り返されない可能性がある。少なくとも
図5Aから
図6Gに関してさらに開示された詳細は、完全に本明細書に適用されるが、簡潔かつ明瞭にするために省略されるであろう。
【0077】
図7Aは、トンネラーカニューレ110と連結された場合の
図1中の視線7A-7Aに沿った組織係合装置130の断面図であり、これはまた横断面で示されている。この図面は完全に後退した構成において、シャトル146を示している。それに対応して、図面は後退した構成における作動部材145を示す。同様に、アクセス装置147及びハブ149は後退した構成である。したがって、組織係合装置130は完全に後退した構成にある。
図7Aは、
図5Bに示す組織係合装置130の遠位端のビューに対応している。この動作状態においては、ゲート144は閉じられ、ハブ149の中央プロング193と相互作用して、アクセス装置147の展開を防止する。
【0078】
図7Bにおいて、部分的に展開された状態の組織係合装置130を示す。具体的に、シャトル146は遠位方向へ前進されてきたが、まだその最遠位の向きにまで前進されていない。すなわち、シャトル146は展開の中間段階にまで前進されてきた。ゲート144は開き始めるが、しかしまだハブ149の中央プロング193の遠位方向に通過することができるほど十分な広さで開いてはいない。
【0079】
図7Cは、別の部分的に展開された状態における組織係合装置130の作動機構137を示す。この状態では、シャトル146は最遠位位置に前進されて、その結果完全に展開されている。しかしながら、ハブ149及びアクセス装置147は後退された状態のままである。シャトル146が完全に遠位に移動することにより、ゲート144が開放されて通路176を作り、ここで、遠位方向においてハブ149の中央プロング193が通過できるのに十分な大きさである。
図7Cは、
図5Cに示す組織係合装置130の遠位端のビューに対応している。
【0080】
図7Dは、完全に展開された状態における組織係合装置130の作動機構137を示す。具体的には、シャトル146及び作動部材145は、その最遠位方向にあり、ハブ149は、遠位方向に移動して少なくとも部分的にアクセス装置147を展開してきた。
【0081】
この動作モードにおいては、ハブ149は、遠位方向及び近位方向に拘束されない手法で移動することができ、又は少なくともハウジング140の境界によって許容される範囲内では少なくとも拘束されない。拘束されていない遠位方向への移動により、ユーザは、アクセス装置147に加える力の量を選択して、アクセス装置147が組織層を通って挿入される距離(限定された範囲内で)と同様に、標的組織層を貫通することができる。
【0082】
拘束されていない近位の運動は、場合によっては、有用な安全特徴であり得る。例えば、ユーザが組織層を通じてアクセス装置147を挿入するが、その後注意散漫になるか、又はそうでなければ意図せずにハブ149を開放した場合には、下の層は近位方向にアクセス装置147を押すなどによって損傷から保護されることができる。心膜アクセスの文脈においては、例えば、アクセス装置147の遠位先端は、施術者がハウジング140に把持部を維持するがハブ149の把持部を解放する場合、拍動する心臓により後方に容易に押されてよい。
【0083】
ハブ149の移動及び遠位方向の上向きの突出196a、196bは、シャトル146のアーム185a、185bを開放して自動的に、かつ弾性的に外側に広げてハウジング140の側面に接触する。アーム185a、185bの近位端は、停止部159a、159bの遠位面と接触するようになり、これにより本構成においてシャトル146を遠位方向に移動することを防ぐ。
【0084】
図7Eは、部分的に展開された状態の作動機構137を再度示し、ハブ149は作動部材145が後退できる構成にまで遠位方向に引き出されている。さらに、ハブ149及びその上向きの突出196a、196bの近位方向への移動は、シャトル146のアーム185a、185bを圧縮して内側に変位し、停止部159a、159bの遠位面との接触を開放する。この構成により、シャトル146が近位移動をして作動部材145を後退位置へと引き出すことができる。
【0085】
図8Aから
図8Kは、標的組織層に係合し、かつ同一の下側の空間にアクセスする例示的な方法の種々の段階を示す。これらの方法の段階に関する多くの詳細は、既に提供されている。
図8Aから
図8K及び以下の記載は、方法に関してさらに明瞭にするためである。本議論の目的は図示された方法の段階の合理的な理解を提供するため、少なくとも
図5Aから
図7Eに関して記載された特定の特徴は、以下の記載において繰り返されない可能性がある。少なくとも
図5Aから
図7Eに関してさらに開示された詳細は、完全に本明細書で適用されるが、簡潔かつ明瞭にするために省略されるであろう。
【0086】
1つの図示された方法は、順番に示された
図8Aから
図8Kにおいて図示された各段階を含む。例示的な方法において、患者の心臓の心膜腔にアクセスする。図示された各方法の段階を採用せず、及び/又は追加の段階を使用するいくつかを含む、他の方法が考えられる。また、他の好適な文脈(例えば、心膜以外の標的組織層)が企図される。
【0087】
図8Aは、組織層下の領域にアクセスするための例示的な方法の初期段階を示す。特に、本方法は、患者Pの心臓50の心膜51と心外膜52との間の心膜腔53にアクセスするために使用される。
【0088】
図示された方法では、滅菌包装から除去されるなどによって、トンネルアセンブリ101が提供される。いくつかの実施形態では、閉塞具120及びトンネルカニューレ110が予め組み立てられた状態で提供される。その他の場合、方法の初期段階は、閉塞具120をトンネルカニューレ110と連結して示される構成にすることを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、前方アプローチはトンネリングアセンブリ101を心臓50に向かって方向づける際に使用され得る。他の実施形態では、下方又は後方アプローチが使用され、これはトンネリングアセンブリ101を横隔膜を通って通過する必要があり得る。このようなアプローチもまた横隔膜内外圧差法又は横隔膜下法と称され得る。このようなアプローチの各々は、剣状突起下法と称され得る。異なるアプローチは心臓に対して異なる結果をもたらす。さらにその他の例においては、例えば6番目と7番目の間の肋骨などの肋間法が用いられ、また心臓の異なる領域に直接のアクセスを提供し得る。場合によっては、肋間の空間によって、心尖にアクセスすることができ、それによりこのアプローチは肋間法と呼ばれる。
【0090】
前述したことを考慮すると、心臓に対するいくつかの異なるアプローチが考えられる。本明細書で開示された組織係合システム100、102及び組織係合装置130は、任意のこのような心臓に対するアプローチに特に適している。具体的には、システム100、102及び装置130は、係合、把持、引っ張り、又は別の方法で心膜51を任意の数の異なる近接角で操作するのに特に適している。例えば、組織係合装置130は、アプローチを低い角度又は急な角度で効果的に行うことができる。また、特定の実施形態は0度(例えば、完全に横方向)から90度(例えば、完全に直交する方向)のアプローチの角度で良好に機能することができる。0度のアプローチに対して、装置130の遠位端は、心膜と接触して波形、又は装置の遠位端の前に、実質的に垂直(又は上向きに延びる)組織の壁を作ることができる。この現象は、指を使って天板に一片の生地を押し付けて波形又は波の反応を生成することに似ている。局所の波又は波形は、装置130の遠位端に対し少なくとも横方向の面を作ることができ、タインが係合(例えば掴み、把持、埋め込み、引掛け、捕獲等)できる。
【0091】
図8Bは、トンネルアセンブリ101が患者の皮膚55の切開56を通って前進されてきた段階を示す。閉塞具120の鈍い先端122は、患者Pの結合組織54を通って心膜51の外部表面と接触させるように押し込まれている。
【0092】
図8Cは、閉塞具120が、トンネルカニューレ110から切り離され、そこから除去される段階を示す。トンネリングカニューレ110の管111の一部は、組織54に残されて心膜51へのチャネルを提供する。
【0093】
図8Dは、組織係合装置130がトンネラーカニューレ110に連結される段階を示す。特に、シース131は管111を通って心膜51に向かって前進される。
【0094】
図8Eは、
図5B及び
図7Aの段階のように、標的組織層に配置された係合アーム108a、108bの組織係合部材109a、109b(例えば、遠位先端)とともに、組織係合装置130が完全に後退した構成にある別の段階を示し、この例では、心膜51である。組織係合装置130はトンネラーカニューレ110に完全に連結されている。
【0095】
図8Fは、組織係合装置130が
図7Bの段階のように、部分的に展開された状態にある別の段階を示し、作動部材145が組織係合部材109a、109bのアームを心膜51に埋め込むために中間位置に向かって遠位方向に前進されている。図示された実施形態では、組織係合部材109a、109bは心膜51の厚さ全体を通って心膜腔53へと通過するようには延びない。換言すれば、係合部材109a、109bは、心膜51の内側表面又は底面を通過しない。これは、心膜51に対する係合部材109a、109bの初期の低い角度によるものであり、さらに、係合部材109a、109bの各々に対する浅い展開路によるものである。「浅い展開路」は、係合部材109a、109b(例えば、遠位先端)によって追跡される路は、作動部材145の遠位端から、又はそれぞれの係合部材109a、109bの開始点からの短い長手方向の距離だけ延びることを意味する。様々な実施形態では、各係合部材109a、109bは、開始点から1、2、3又は4ミリメートル以下の最大の長手方向の距離(すなわち、長手方向又は作動部材145の長手方向軸に対して同一直線上又は平行な方向で測定した場合のみの距離)へ遠位方向に進行する。また、いくつかの実施形態では、各係合部材109a、109bによって追跡される路の全体が、長手方向ではない構成要素(例えば、完全に水平方向であってよい)を有するか、又は近位方向にのみ進行するか、又は換言すると、開始点から水平方向かつ近位方向にのみ移動する長手方向の構成要素を有し得る。
【0096】
様々な実施形態では、各係合部材109a、109bは最大長を画定する。例えば、図示された実施形態では、各係合部材109a、109bの最大長さは、その遠点から主屈曲部まで(例えば、
図8Fにおいて容易に明白である各アーム108a、108b内で曲がるのみ)の距離である。様々な実施形態では、各係合部材109a、109bは開始点から、係合部材109a、109bの最大長が0.25倍、0.5倍、0.75倍、1倍、1.25倍、又は1.5倍以下の最大の長手方向の距離へ遠位方向に進行する。
【0097】
あるいは、各係合部材109a、109bは、標的組織層の表面を実質的に横方向の展開路をたどると言うことができる。実質的に横方向に展開した係合部材109a、109bは、組織層内の係合部材109a、109bに埋め込み、また横方向に組織層に張力をかけることができる。実質的に横方向の展開路もまた、心外膜52のような下部組織層に接触及び/又は損傷する危険性を低減させる。
【0098】
他の実施形態では、1つ以上の係合部材109a、109bのうち少なくとも一部分は、標的組織層の厚さ全体を貫通して延びることができる。換言すれば、他の実施形態では係合部材109a、109bは、組織層の底部又は内部表面を貫通し得る。
【0099】
図8Gは、組織係合装置130が
図5C及び
図7Cの段階のように、さらに部分的に展開された状態にある段階を示し、作動部材145が最遠位位置に向かって前進され、さらに係合部材109a、109bを心膜51に埋め込む。図示された実施形態では、係合部材109a、109bは、隣接するアーム108a、108bの近位部分に対して約90度の角度で水平方向外側に延びる。さらに後述するように、この完全な展開された状態におけるアーム108a、108bに対する他の角度も企図される。
【0100】
図8Hは、組織係合装置130が
図8Gに示されたように同一の構成にあり、組織係合装置130が係合部材109a、109bの近傍にある心膜51と心外膜52との間の心膜腔53を拡大するために近位方向に引っ張られる段階を示す。このような分離事象は、係合位置で心膜51のテンティングをもたらすことがある。このテンティングは
図8Hで模式的にのみ示されているが、心膜51は上向きに引き上げられるような手法で示されるように、場合によっては、テンティングは心膜腔53内の真空又は他の力から生じ得るように非常に急であり得る。
【0101】
図8Iは、組織係合装置130が
図5Dと7Dの段階のように、完全に展開された状態に移動された段階を示し、作動部材145及びアクセス装置147の両方が遠位方向に前進されている。図示された段階では、アクセス装置147は心膜51を貫通して心膜腔53にアクセスを提供する。流体の導入又は流体の除去のための心膜腔53との連通は、医療用コネクタ198を介して達成されることができる。
【0102】
図8Hを参照して説明したように、作動アーム108a、108bの近傍のテンティングは、かなり急であってよい。しかしながら、アーム108a、108b間の領域は、アーム108a、108bによってもたらされる張力により実質的に平坦であり得る。したがってアクセス装置147は張力がかかった心膜51の一部を通って容易に前進されてよく、これは隣り合うテンティングによって比較的影響を受けない。
【0103】
具体的には、アクセス装置147の遠位端は、尖っているか、又は装置の長手方向軸に対して角度があってよい。その結果、装置147の挿入は、例えば、アーム108a、108b間の領域を通って、アーム108a、108b間に保持される領域を包囲する急勾配のテント付表面のような、先端に対してより低い角度を有する領域を通してよりも、装置の長手方向軸と実質的に直交する平坦な領域を通じたほうがはるかに容易である。このため、いくつかの実施形態では、アクセス装置147の先端がアーム108a、108bが展開された状態にあるときにアーム108a、108b間に延びるラインを通過するのを確実にすることが有用である。
【0104】
図8Jは、組織係合装置130が完全に展開された状態のままであり、ガイドワイヤ200の遠位端は、アクセス装置147を通って心膜腔53へと遠位方向に前進されている段階を示す。ガイドワイヤ200は、任意の好適な寸法であり得る。様々な実施形態では、ガイドワイヤの太さは、0.035インチ(0.89ミリメートル)又は0.032インチ(0.81ミリメートル)とすることができる。
【0105】
図8Kは、組織係合装置130が
図5C及び
図7Cの段階のように、部分的に展開された状態に戻った別の段階を示し、特に、アクセス装置147は後退されている。この段階から、作動部材145は、続いて後退されてよく、装置130は次に患者Pから取り除かれることができる。ガイドワイヤ200の遠位端は、組織係合装置130が引き出されると、心膜腔53内の適所に留まることができる。アームが装置130を取り除いている間に後退された状態ではあるが、ガイドワイヤ200の位置決めは、装置130の引き抜き時に比較的影響を受けないであろう。特に、装置130が引き抜かれるとアーム108a、108bは、ガイドワイヤ200によって通過される。換言すると、アーム108a、108bが作動部材145の遠位開口を覆っていてもガイドワイヤ200は、アーム108a、108bによって画定された開口225、226を通過することができる。例えば開口225、226は、
図11C及び11Dにおいて見ることができる。
【0106】
図9は、その製造工程の段階中の係合要素143の実施形態を示す。図示された実施形態では、係合部材143は、単一片の材料から形成される。任意の好適な材料が企図される。材料は、本明細書に記載された特性を望ましくは呈することが可能である。いくつかの実施形態では、係合要素143は、管として形成されたステンレス鋼の単一片から形成される。
【0107】
図9に示される製造方法の段階の前に、管の一部が切断されるか、又は別の方法で取り除かれてアーム又はタイン108a、108bが形成される(タイン108bは、
図9では隠れているが
図10Aのような他の図で示されている)。いくつかの実施形態では、タインはレーザ切断である。タイン108a、108bは、元の管の残りの部分から遠位方向に延びることができ、これは本明細書ではカニューレ基部104とも呼ばれる。
【0108】
タイン108a、108bは、各々比較的広い基部領域210を含むことができ、これはカニューレ基部104の遠位端から遠位方向に延びることができる。様々な実施形態では、基部領域210の幅は、カニューレ基部104の直径の約2/3、約1/2、又は約1/3以下であり得る。基部領域210は、変位領域212まで傾斜した角度のあるステップを有することができる。各アームの変位領域212は、使用中の最大変位の領域である。より薄い変位領域212により、コンパクト又は小さな設計を可能にすることができる。特に、タイン108a、108bは、後退された向きで互いに交差し、展開中に互いに移動する場合には、薄い変位領域が望まれ得る。様々な実施形態では、変位領域の厚さは、カニューレ基部104の直径の約1/2、約1/3、約1/4、約1/6、約1/8以下である。
【0109】
元の管の部分を取り除くことにより、貫通面214a、214bも得ることができる(例えば
図10Aも参照)。図示された実施形態では、貫通面214a、214bは、タイン108a、108bの遠位先端の尖った端又はバーブとして形成されている。貫通面214a、214bの迎角αは、標的組織層との迅速な係合を提供するために選択することができる。様々な実施形態では、迎角αは約10度、約15度、約20度、約25度、又は約30度以下である。
【0110】
図10Aは、さらに処理をした後の係合要素143の側面立面図であり、
図10Bはその平面図である。
図10A及び
図10Bに示されている構成に至るさらなる工程の段階において、タイン108a、108bは多数の軸の周りで曲げられる。いくつかの実施形態では、主屈曲部216a、216bはタイン108a、108bの遠位端をy軸の周りで回転することによってなされる。具体的には、タイン108aはy軸の周りで第一の方向に回転され、タイン108bはy軸の周りで対抗する方向に回転される。様々な実施形態では、曲げに起因する塑性変形の角度は、約30度から約120度、約45度から約115度の範囲内であることができ、又は約45度、約60度、約90度又は約115度以下であり得る。
【0111】
主屈曲部216a、216bは、係合部材109a、109bを得ることができる。係合部材109a、109bの近位側の保持面219a、219bは、屈曲部216a、216bの塑性変形の角度に依存して、標的組織層を保持する効果において変わり得る。
【0112】
タイン108a、108bは回転され、z軸周りに同方向に恒久的に曲げることができる。追加的に又は代替的に、タイン108a、108bは回転され、x軸周りで対抗する方向に恒久的に曲げることができる。後者の曲げは、スプラインングと呼ばれ、追加の恒久曲げ、又は第2の曲げ218a、218b(
図10)が形成されるときに、タイン108a、108bを互いに移動させることができる。
【0113】
図10Bに示すように、いくつかの実施形態では、タイン108a、108bは、タイン108a、108bの遠位端の水平幅が、カニューレ基部104の直径よりも大きな自然な方向を画定する。その結果、タイン216a、216bは、基部104の外径を僅かにのみ超える内径を有するシース131内に受けられると、タイン108a、108bはスプリング負荷される。すなわち、タイン108a、108bは、
図10A及び
図10Bに示されている構成を自然に想定しようとしているが、シース131(
図5Bを参照)によって妨げられている。タイン108a、108bにこのような予荷重を与えることにより、作動部材145が後退された後、タイン108a、108bは
図5Bに示された拘束方向に自然に戻ることを可能にする。
【0114】
図11Aから
図11Dは、
図5Bに示されている配置におけるような、シース131によって提供される拘束された構成における場合の係合要素143の様々なビューを表す。明確にするために、シース131は、これらの図には示されていない。この動作状態においては、タイン108a、108bは、カニューレ基部104の遠位端の遠位の位置で互いに交差する。この1つの特定の実施形態では、タイン108a、108bは、交差点220で互いに接触する。他の実施形態は、交差点の近くで互いに交差するが、そこでは互いに接触しない。このような配置における交差点は、交差するタイン108a、108b間の最短距離の中間点であり得る。前述のように、タイン108a、108bは、ガイドワイヤが使用中に容易に通過し得る開口225、226を画定する。
【0115】
上記から理解できるように、特定の実施形態では、タイン108a、108bは互いに正反対に配置されることができる。後退された状態のときには、タイン108a、108bは実質的に曲がった構成にすることができる。作動時には、シース131内に拘束されている各タイン108a、108bの近位部分は、実質的に直線にすることができる。直線にされたタインは、互いに実質的に平行に及び/又は実質的にカニューレ基部104の長手方向軸に対して平行であってよい。各タイン108a、108bの長さは、展開中にタイン108a、108bの塑性変形を防止するのに十分な長さとすることができる。タインは、展開後に展開前の状態に自動的かつ自然に戻ることができる伸縮自在の弾性的な種類で形成されている。
【0116】
図12A及び
図12Bを参照すると、係合要素143の特定の実施形態は、センタリング用突出230を含むことができる。図示された実施形態では、センタリング用突出230は、カニューレ基部104に押し付けられた内側方向の隆起230である。他の実施形態では、センタリング用突出230は、代わりに異なる材料から形成され、カニューレ基部104の内壁にしっかりと固定される。
【0117】
図13に示すように、センタリング用突出230は作動部材145の移動を拘束(例えば、長手方向軸に対する水平方向の移動を拘束)し、これはアクセス装置147の移動を拘束する。この配置は、アクセス装置147の遠位先端240が係合要素143に対して実質的に中央にあることを確実にすることができる。いくつかの実施形態では、アクセス装置147の作動中、遠位先端240はタイン108a、108bの遠位先端を通って延びるラインLを通過することができる。このような配置は、タイン108a、108bの間にあり、それによって張力がかかる心膜の一部を通って先端240を送達するのを助けることができる。例えば、前述したように、これにより先端240が心膜の穿刺部分の頂部で比較的平坦又は平らな領域を通過することができる。
【0118】
図14A及び
図14Bに示されているように、いくつかの実施形態では、アクセス装置147は、中心に遠位先端240を有する針250とすることもできる。場合によっては、針250は、ベベル242(例えば、バイアス研削、ランセット研削等のうち1つ以上)で形成され、次に遠位先端240を曲げて移動し、針250の長手方向軸と並ばせる。
【0119】
図15から
図20は、多くの点で上述の組織係合システムに類似し得る組織係合システム300の別の実施形態を示す。したがって、類似の特徴は類似の参照番号で示され、先頭の桁は「3」に増加される。したがって、同様に、識別された特徴に関して上記で説明された関連する開示は、以降、繰り返さない場合がある。さらに、組織係合システム300の特定の特徴は、図面中の参照番号により示されたり、又は識別されたりしないか、又は以下に記載する明細書で議論されない可能性がある。しかし、この特徴は、他の実施形態では記載された特徴及び/又はこのような実施形態に関して記載される特徴と明白に同一であるか、又は実質的に同一である。したがって、このような特徴の関連する記載は、組織係合システム300の特徴と等しく当てはまる。上述したように、組織係合システムに関して記載したのと同様の特徴及び変形例の任意の好適な組合せは、組織係合システム300とともに採用され、またその逆もまた同様である。
【0120】
図17を参照すると、組織層に係合するため、また組織層下の領域内へのアクセスを提供するためのシステム300は、統合された組織係合部材308a、308bを備えるカニューレ基部又はハウジング304、ハウジング304の管腔内の組織係合部材308a、308bを作動するためのカニューレ345、またカニューレ345の管腔内の組織貫通部材347を有する組織係合要素343を含み、組織層下の領域にアクセスするのを確実にする。
【0121】
図15を参照すると、カニューレ345とハウジング304内に後退された組織貫通部材347を備えるシステム300の実施形態が示され、その結果、カニューレ345及び組織貫通部材347は組織係合部材308a、308bと接触しない。
【0122】
図16を参照すると、組織係合部材308a、308bが完全に展開されたハウジング304の実施形態が示されている。カニューレ345の遠位端がハウジング304の遠位端へと前進され、それによって組織係合部材308a、308bを外側に展開させる。
【0123】
図18を参照すると、システム300の一実施形態が示され、カニューレ345の遠位端が組織係合部材308aの近位端310aからハウジング304の遠位端へと前進され、それによって組織係合部材308aを展開する。組織係合部材308bは同様に展開される。組織貫通部材347は、ハウジング304の遠位端を越えて前進される。
【0124】
図19を参照すると、ハウジング304の遠位端の組織係合部材308a、308bのオフセット性を示す一実施形態の正面図が示されている。
【0125】
図20を参照すると、組織係合部材308a、308bによる組織層51の係合、及び組織層51の下の空間内への組織貫通部材347の展開の側面図が示されている。
【0126】
これらの図に示されているように図示されたシステム300は、細長いハウジング304を含み、これもまたカニューレと称され、近位端及び遠位端を有し得る。遠位端は、針347が
図17における場合のように延ばされるときに針347の遠位先端で終端し、遠位端は、針347が
図15における場合のように後退されるときにハウジング304の遠位先端で終端する。針347は、
図17における場合のように患者の皮膚の中への挿入を助けるために前進されることができ、次に
図15における場合のように装置300が組織層51に向かって移動されると後退されて係合され、延ばされた針によって生じ得る組織の損傷を低減する。図示された実施形態は、剣状突起下の手法を使用して心膜腔にアクセスを提供するために特に適している。
図15に示された非展開の組織係合部材308a、308bは、心膜に接触するまで患者の軟組織を効果的に通過してよく、また前進されるとき、心膜又は他の組織を穿孔又は貫通するのを防ぐために十分鈍くできる。
【0127】
ハウジング304は、任意の好適な材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、ハウジング304は金属製であるが、これに対して、他の実施形態又はさらなる実施形態では、ハウジング304は、実質的に剛性のプラスチックで形成することができる。
【0128】
針347は、任意の好適な材料から形成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、針347は、ステンレス鋼から形成される。材料は、組織層を貫通するのに十分な剛性を有するように選択される。
【0129】
カニューレ345は、任意の好適な材料から形成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、カニューレ345は、ステンレス鋼から形成される。材料は、組織係合部材308a、308bを展開するのに十分な剛性及び強さであるように選択される。
【0130】
システム300の使用中に、針347は、ハウジング304を通過して延び、所望の位置へと患者に挿入してよく、ハウジング304の近位端は患者の外側に残すことができる。一実施形態では、システムは、
図15に示されているように針347を後退された位置で所望の位置に患者の切開を介して患者に挿入される。いくつかの実施形態では、システム300は、ユーザが針347及び/又はカニューレ345を展開できる近位端に1つ以上のアクチュエータを含む。任意の適切なアクチュエータの配置も可能である。他又はさらなる実施形態では、カニューレ345及びアクセス針347は、ユーザにより直接操作されると、任意のアクチュエータに依存することなくハウジング304を通して前進され得る。
【0131】
一実施形態では、システム300は、針347を展開及び/又は後退するように構成されたシステムの近位端に第1のアクチュエータを含む。任意の好適なアクチュエータの配置も検討されるが、図示されたアクチュエータは、針347の近位部分に連結されたボタン、スイッチ、つまみ、又は突出を備える。図示された実施形態では、比較的大きな環状空間のアクセス針347の外側表面と、カニューレ345の内側表面と、ハウジング304の内側表面の間に示されている。いくつかの実施形態では、この環状空間は比例してはるかに小さく、最小化され、又は実質的に除去される。例えば、ハウジング304の側壁の内側表面の少なくとも一部と、カニューレ345の外側表面の少なくとも一部分と、アクセス針347との間に滑り嵌め、動き嵌め、又は最小の間隙が提供され、システム300の全直径(例えば、断面が必ずしも円形でない最大断面幅)、より具体的には、ハウジング304の外径を所望により減少できる。このような配置もまた、システム300が患者に前進されるとハウジング304によって組織の芯抜きを低減又は回避することができる。
【0132】
図20は、患者に前進させ、組織層51に係合させているシステム300の遠位端を示す。組織層51は、引き戻され、針347は組織層41の下に作られた空間へと前進される。ガイドワイヤが組織貫通層の管腔を通って組織層下の空間へと前進されている。
【0133】
図18を再度参照すると、ハウジング304に沿って延びると組織係合部材308a、308bの長さは、カニューレ345によって作動中組織係合部材308a、308bの塑性変形を防止するために十分な長さであることが好ましい。
【0134】
図19を再度参照すると、組織係合部材308a、308bの遠位端の形状は、組織層51に切り込むことができるように鋭い。
図15に示されるように作動されていないときは、プロングはハウジング304の境界を越えて延びないように、組織層51を係合するのに十分に長いが、ハウジング304の直径以下である。組織層に係合するプロングは、示されているように、90度で曲げるか、又は、60度から120度の間で曲げられてよく、組織係合及び保持を可能にすることができる。プロングの鋭い先端は、示されているように、組織を係合し、保持するために中心から切断されてよく、又は様々な角度で切断されてよく、又は任意の角度で切断されてよい。プロングの形状及び鋭さは、低角度や高角度で組織層50と係合するように設計されている。これにより低近接角及び高近接角、しかし、例えば、心臓への低角度の剣状突起下のアプローチに特に適し得る特に低角度を可能にする。
【0135】
図15及び
図19を再度参照すると、組織係合部材308a、308bは、カニューレ345によって作動中に互いに通過しないように図示されるようにオフセットであり得るか、又はオフセットでなくてよい。組織係合部材308a、308bの遠位端でのプロングの長さは、カニューレによって作動されていない場合には、ハウジング304の直径を越えて延びないように組み立てられる。
【0136】
本明細書に開示される任意の方法は、記載された方法を実行するために1つ以上のステップ又は動作を含む。方法のステップ及び/又は動作は、互いに交換し得る。換言すれば、実施形態の適切な作動のためにステップ又は動作の特定の順序が必要とされない限り、特定のステップ及び/又は動作の順序及び/又は使用は、修正され得る。
【0137】
近似値への参照は、本明細書を通して、「約」又は「およそ」という用語を使用することなどによってなされる。各々のこのような参照には、いくつかの実施形態では、値、特徴又は特性は、近似なしで特定され得ることを理解すべきである。例えば、「約」、「実質的に」、「全体的に」のような修飾が使用される場合、これらの用語は、それらの修飾がない場合の修飾語を範囲内に含む。例えば、「実質的に平坦」という用語が特徴に関して引用された場合には、さらなる実施形態では、この特徴は正確な平面方向を有することができると理解されている。
【0138】
本明細書を通して「特定の実施形態」等の任意の参照は、実施形態に関して記載された特別の特色、構造、又は特徴が少なくとも1つの実施形態に含まれているということを意味する。したがって、本明細書に引用された引用句、その変形は、必ずしも全て同じ実施形態を参照するわけではない。
【0139】
同様に、上記の実施形態の記載において、本開示を効率化するために、単一の実施形態、図、又はそれらの記載において、様々な特徴が共にグループ化されることがあることを理解すべきである。しかしながら、本開示の方法は、請求項に記載された請求項に明示されたものよりも多くの特徴を要するという意図を反映するように解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が表すように、本発明の態様は、先に開示された任意の単一の実施形態の全ての特徴よりも少ない数の組み合わせにある。
【0140】
この書面による開示に基づく特許請求の範囲は、別々の実施形態として独自に各請求項とともに本明細書によって明示的に本明細書の開示中に組み込まれる。この開示は、それらが従属請求項とともに独立請求項の全ての順列を含む。
【0141】
特徴又は要素に関する「第1」という用語の特許請求の範囲における記載は、必ずしも第2又は付加的な特徴又は要素の存在を意味しない。もしあれば、ミーンズ・プラス・ファンクション形式で具体的に引用される要素は、米国特許法第35条§112(f)に従って解釈されることが意図される。排他的所有権又は特権が請求される発明の実施形態は、以下のように定義される。
【図 】