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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】ケーブル配線方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/48 20060101AFI20220414BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20220414BHJP
   G02B 6/46 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
G02B6/48
G02B6/44 386
G02B6/46
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019185500
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021060528
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】多木 剛
(72)【発明者】
【氏名】鯰江 彰
(72)【発明者】
【氏名】大里 健
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-197939(JP,A)
【文献】特開2000-102126(JP,A)
【文献】特開2011-059607(JP,A)
【文献】特開平08-043698(JP,A)
【文献】特開2012-096827(JP,A)
【文献】特開2011-232694(JP,A)
【文献】特開2008-129170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0146764(US,A1)
【文献】特開2014-121178(JP,A)
【文献】特開2005-184935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44-6/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルを供給するケーブル供給源を複数用意すること、
複数の前記ケーブル供給源から前記光ケーブルをそれぞれ引き出し、複数の光ケーブルを束ねることによって、ケーブル束を形成すること、
1配線経路のき線点となる電柱から前記第1配線経路上の分岐点までの間に複数の光ケーブルを架設すること、
前記分岐点において、前記ケーブル束を構成する前記複数の光ケーブルを第1グループ及び第2グループに分けること、
前記第1グループに属する前記光ケーブルを前記分岐点よりも先の前記第1配線経路に沿って架設すること、及び
前記第2グループに属する前記光ケーブルを前記第1配線経路から分岐する第2配線経路に沿ってドロップポイントまで架設すること
を行う光ケーブル配線方法であって、
前記き線点から前記ドロップポイントまでの間に架設され前記ケーブル供給源から引き出される前記光ケーブルの引き出される側の端部には、光コネクタが取り付けられていることを特徴とする光ケーブル配線方法。
【請求項2】
光ケーブルを供給するケーブル供給源を複数用意すること、
複数の前記ケーブル供給源から前記光ケーブルをそれぞれ引き出し、複数の光ケーブルを束ねることによって、ケーブル束を形成すること、
電柱間に架設された吊線に敷設されているケーブルハンガーに前記ケーブル束を挿通させることによって、第1配線経路のき線点となる電柱から前記第1配線経路上の分岐点までの間に複数の光ケーブルを架設すること、
前記分岐点において、前記ケーブル束を構成する前記複数の光ケーブルを第1グループ及び第2グループに分けること、
前記第1グループに属する前記光ケーブルを前記分岐点よりも先の前記第1配線経路に沿って架設すること、及び
前記第2グループに属する前記光ケーブルを前記第1配線経路から分岐する第2配線経路に沿ってドロップポイントまで架設すること
を行う光ケーブル配線方法であって、
前記き線点から前記ドロップポイントまでの間に架設され前記ケーブル供給源から引き出される前記光ケーブルの端部には、光コネクタが取り付けられており、
前記ケーブル束を構成する複数の前記光ケーブルの複数の前記光コネクタの長手方向の位置をずらして、前記ケーブルハンガーに前記ケーブル束を挿通させることを特徴とする光ケーブル配線方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光ケーブル配線方法であって、
前記第2グループに属する前記光ケーブルの前記端部に取り付けられた前記光コネクタを、前記第2配線経路に設けられたクロージャに接続することによって、前記き線点から前記クロージャまでの間の電柱間に前記光ケーブルを架設することを特徴とする光ケーブル配線方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の光ケーブル配線方法であって、
前記ケーブル供給源は、8の字状に巻き取られた状態で収容された光ケーブルを引出口から引き出し可能な収容箱であり
複数の前記収容箱からそれぞれ前記光ケーブルを一括して引き出し、複数の光ケーブルを束ねることによって、前記ケーブル束を形成することを特徴とする光ケーブル配線方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の光ケーブル配線方法であって、
複数の前記光ケーブルを架設した後、前記ケーブル束を挿通させたケーブルハンガーに別の光ケーブルを更に挿通させることを特徴とする光ケーブル配線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル配線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
き線点(始点)からドロップポイントまでの間に光ケーブルを敷設する際に、光ケーブルを配線経路上の電柱間に架設することがある。支持線の無い非自己支持型の光ケーブルを架設する場合、バゲット車を使用して、電柱間に架設された吊線にケーブルハンガーを介して光ケーブルを架設することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-304549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配線経路の分岐点において、光ケーブルから分岐させた分岐ケーブルを敷設することがある。この場合、分岐点において、光ケーブルにクロージャを取り付け、光ケーブルに分岐ケーブルを取り付ける等の分岐作業が必要となる。但し、架空での分岐作業は多大なコストがかかるため、架空での分岐作業を軽減することが望まれている。
【0005】
なお、特許文献1には、工場において、分岐点となる位置に予め分岐ケーブルを分岐させることが記載されている。但し、この場合、き線点から分岐点までの距離を予め把握する必要があり、また、光ケーブルの使用場所が限定されてしまう(また、予め分岐ケーブルを設けた光ケーブルを敷設させる作業は困難である)。
【0006】
本発明は、光ケーブルを簡易に分岐させて配線することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる第1の発明は、
光ケーブルを供給するケーブル供給源を複数用意すること、
複数の前記ケーブル供給源から前記光ケーブルをそれぞれ引き出し、複数の光ケーブルを束ねることによって、ケーブル束を形成すること、
1配線経路のき線点となる電柱から前記第1配線経路上の分岐点までの間に複数の光ケーブルを架設すること、
前記分岐点において、前記ケーブル束を構成する前記複数の光ケーブルを第1グループ及び第2グループに分けること、
前記第1グループに属する前記光ケーブルを前記分岐点よりも先の前記第1配線経路に沿って架設すること、及び
前記第2グループに属する前記光ケーブルを前記第1配線経路から分岐する第2配線経路に沿ってドロップポイントまで架設すること
を行う光ケーブル配線方法であって、
前記き線点から前記ドロップポイントまでの間に架設され前記ケーブル供給源から引き出される前記光ケーブルの引き出される側の端部には、光コネクタが取り付けられていることを特徴とする光ケーブル配線方法である。
また、上記目的を達成するための主たる第2の発明は、
光ケーブルを供給するケーブル供給源を複数用意すること、
複数の前記ケーブル供給源から前記光ケーブルをそれぞれ引き出し、複数の光ケーブルを束ねることによって、ケーブル束を形成すること、
電柱間に架設された吊線に敷設されているケーブルハンガーに前記ケーブル束を挿通させることによって、第1配線経路のき線点となる電柱から前記第1配線経路上の分岐点までの間に複数の光ケーブルを架設すること、
前記分岐点において、前記ケーブル束を構成する前記複数の光ケーブルを第1グループ及び第2グループに分けること、
前記第1グループに属する前記光ケーブルを前記分岐点よりも先の前記第1配線経路に沿って架設すること、及び
前記第2グループに属する前記光ケーブルを前記第1配線経路から分岐する第2配線経路に沿ってドロップポイントまで架設すること
を行う光ケーブル配線方法であって、
前記き線点から前記ドロップポイントまでの間に架設され前記ケーブル供給源から引き出される前記光ケーブルの端部には、光コネクタが取り付けられており、
前記ケーブル束を構成する複数の前記光ケーブルの複数の前記光コネクタの長手方向の位置をずらして、前記ケーブルハンガーに前記ケーブル束を挿通させることを特徴とする光ケーブル配線方法である。
【0008】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光ケーブルを簡易に分岐させて配線することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1A図1Dは、本実施形態の光ケーブル配線方法の概要説明図である。
図2図2は、き線点となる電柱21Sの近傍における架空構造物100の説明図である。
図3図3A及び図3Bは、本実施形態のケーブル供給源10の説明図である。
図4図4は、光ケーブル11の断面図である。
図5図5は、ケーブルハンガー33にケーブル束12を挿通させる様子の説明図である。
図6図6は、追加の光ケーブル11を架設する様子の説明図である。
図7図7Aは、第1参考例のケーブル供給源10の説明図である。図7Bは、第2参考例のケーブル供給源10の説明図である。
図8図8A図8Dは、比較例の光ケーブル配線方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
光ケーブルを供給するケーブル供給源を複数用意すること、
複数の前記ケーブル供給源から前記光ケーブルをそれぞれ引き出し、複数の光ケーブルを束ねることによって、ケーブル束を形成すること、
電柱間に架設された吊線に敷設されているケーブルハンガーに前記ケーブル束を挿通させることによって、第1配線経路の始点となる電柱から前記第1配線経路上の分岐点までの間に複数の光ケーブルを架設すること、
前記分岐点において、前記ケーブル束を構成する前記複数の光ケーブルを第1グループ及び第2グループに分けること、
前記第1グループに属する前記光ケーブルを前記分岐点よりも先の前記第1配線経路に沿って架設すること、及び
前記第2グループに属する前記光ケーブルを前記第1配線経路から分岐する第2配線経路に沿って架設すること
を行う光ケーブル配線方法が明らかとなる。
このような光ケーブル配線方法によれば、光ケーブルを簡易に分岐させて配線することができる。
【0013】
前記ケーブル供給源から引き出される前記光ケーブルの端部には、光コネクタが取り付けられていることが望ましい。これにより、光ケーブルの接続作業が簡易になる。
【0014】
前記第2グループに属する前記光ケーブルの前記端部に取り付けられた前記光コネクタを、前記第2配線経路に設けられたクロージャに接続することによって、前記始点から前記クロージャまでの間の電柱間に前記光ケーブルを架設することが望ましい。これにより、光ケーブルをクロージャに接続する作業が容易になる。
【0015】
前記ケーブル束を構成する複数の前記光ケーブルの複数の前記光コネクタの長手方向の位置をずらして、前記ケーブルハンガーに前記ケーブル束を挿通させることが望ましい。これにより、ケーブルハンガーにケーブル束を挿通させ易くなる。
【0016】
複数の前記光ケーブルを架設した後、前記ケーブル束を挿通させた前記ケーブルハンガーに別の光ケーブルを更に挿通させることが望ましい。これにより、追加の光ケーブルを配線できる。
【0017】
===実施形態===
まず、比較例について説明し、その後に本実施形態の光ケーブル配線方法を説明する。
【0018】
<比較例>
図8A図8Dは、比較例の光ケーブル配線方法の説明図である。
【0019】
図8Aに示すように、始点となる電柱21Sから第1ケーブル11Aが敷設されている。始点となる電柱21Sは、例えば、き線点(地下ケーブルと架空ケーブル(第1ケーブル11A)との接続箇所)における電柱である。仮にき線点から各ユーザー宅まで個別に光ケーブルを敷設すると、光ケーブルの敷設が非効率となる。このため、複数のエリアに分けて、第1ケーブル11Aから分岐ケーブル(第2ケーブル11B)を分岐させ、各エリアに第2ケーブル11Bを敷設することになる。ここでは、第1配線経路20Aに沿って第1ケーブル11Aを敷設するとともに、第1ケーブル11Aから分岐させた第2ケーブル11Bを第2配線経路20Bに沿って敷設することになる。ここでは、ドロップポイントは、第2配線経路20Bに位置している。
【0020】
図8Bに示すように、分岐点20Cにおいて第1ケーブル11Aにクロージャ35Aが設置されるとともに、図8Cに示すように、分岐点20Cから第2ケーブル11B(分岐ケーブル)が架設される。クロージャ35Aは、光ファイバの接続点や光ファイバの余長を収容する部材である。ここでは、クロージャ35Aは、第1ケーブル11Aの光ファイバと、第2ケーブル11Bの光ファイバとの接続点を収容することになる。光ファイバの接続点は、例えば融着接続による融着接続点や、メカニカルスプライスによるメカニカル接続点や、光コネクタ(現場組立光コネクタ)によるコネクタ接続点である。
【0021】
比較例の場合、分岐点20Cにおいて、第1ケーブル11Aの中間位置にクロージャ35Aを取り付けるとともに、第1ケーブル11Aから第2ケーブル11Bを分岐させる分岐作業が必要となる。第1ケーブル11Aから第2ケーブル11Bを分岐させる分岐作業としては、例えば、第1ケーブル11Aの外被を切除し、第1ケーブル11Aの内部の一部の光ファイバを切断し、切断した光ファイバと第2ケーブル11Bの光ファイバとを接続し、その接続点をクロージャ35Aに収容する等の作業が挙げられる。比較例では、このような分岐作業を架空にて行う必要があるため、分岐作業にはコストがかかることになる。また、分岐点20Cにおいて、光ファイバの接続損失が生じることになる。
【0022】
また、比較例の場合、分岐点20Cよりも先に敷設されている第1ケーブル11Aの内部には、分岐点20Cにおいて切断された光ファイバが残っている。つまり、分岐点20Cよりも先の配線経路には、不使用の光ファイバが含まれた状態で第1ケーブル11Aが架設された状態になる。
【0023】
なお、図8Dに示すように、第2ケーブル11Bの中間位置(ドロップポイント)に別のクロージャ35B(ドロップクロージャ)が取り付けられ、このクロージャ35Bからユーザー宅までの間に引込ケーブル41(例えばドロップケーブル)が敷設される。図8Dに示すように第2ケーブル11Bの中間位置(クロージャ35Bの取り付け位置)においても、作業者は、第2ケーブル11Bの内部から光ファイバの一部を取り出し、取り出した光ファイバを切断し、切断した光ファイバと引込ケーブル41とを接続する作業(切断した光ファイバの端部とクロージャ35Bとを接続する作業)が必要になる。クロージャ35Bよりも先に敷設されている第2ケーブル11Bの内部には、切断された光ファイバが残った状態になっている。
【0024】
<本実施形態の光ケーブル配線方法>
図1A図1Dは、本実施形態の光ケーブル配線方法の概要説明図である。図2は、き線点となる電柱21Sの近傍における架空構造物100の説明図である。
【0025】
図1Aに示すように、き線点からユーザー宅までの間に複数の電柱21が配置されている。き線点を始点とする第1配線経路20A上には、複数の電柱21が配置されている。第1配線経路20A上には分岐点20Cがあり、分岐点20Cにおいて第1配線経路20Aから第2配線経路20Bが分岐している。第2配線経路20B上にも、複数の電柱21が配置されている。ユーザー宅は、第1配線経路20Aから外れたエリアに位置しており、第2配線経路20B上の電柱21の近傍に位置している。ドロップポイントは、第2配線経路20B上に位置している。但し、ドロップポイントが、第2配線経路20Bから更に分岐した配線経路に位置していても良い。
【0026】
電柱21は、電線や光ケーブルを架け渡すための柱である。電柱21は、例えばコンクリート柱や鋼管柱である。配線経路上には、複数の電柱21が配置されている(図1A参照)。
【0027】
本実施形態では、図1A及び図2に示すように、作業者は、き線点となる電柱21Sの近傍に、複数のケーブル供給源10を用意する。ケーブル供給源10は、光ケーブル11を供給する供給源である。言い換えると、ケーブル供給源10は、光ケーブル11を収容した収容体(梱包物)である。なお、本実施形態のケーブル供給源10は、例えばリーレックス梱包(REELEX:登録商標)によって光ケーブル11を収容した収容体である。
【0028】
図3A及び図3Bは、本実施形態のケーブル供給源10の説明図である。図3Aは、本実施形態のケーブル供給源10の斜視図である。図3Bは、本実施形態の光ケーブル11の収容状態の説明図である。
【0029】
本実施形態では、ケーブル供給源10から供給される光ケーブル11の端部には、光コネクタ15が取り付けられている。本実施形態のケーブル供給源10は、光ケーブル11と、収容箱13と、光コネクタ15とを有する。
【0030】
図4は、光ケーブル11の断面図である。光ケーブル11は、光ファイバ111を外被114の内部に収容したケーブルである。本実施形態の光ケーブル11は、支持線の無い非自己支持型の光ケーブルである。光ケーブル11は、複数の光ファイバ111と、吸水部材112と、押え巻きテープ113と、外被114と、抗張力体115とを有する。但し、光ケーブル11の構造は、この構造に限られるものではない。
【0031】
収容箱13は、光ケーブル11を収容する箱(梱包箱)である(図3A及び図3B参照)。図3Aに示すように、収容箱13の側面には引出口13Aが設けられており、引出口13Aから光ケーブル11を引き出すことが可能である。図3Bに示すように、収容箱13の内部には、光ケーブル11が8の字状に巻き取られた状態で収容されている。これにより、光ケーブル11に捻れを与えずに、引出口13Aから光ケーブル11を引き出すことが可能である。
【0032】
図7Aは、第1参考例のケーブル供給源10の説明図である。第1参考例では、光ケーブル11がリールに巻き取られている。第1参考例では、リールを回転させながら光ケーブル11を引き出すことになる。このため、第1参考例では、リールから光ケーブル11を引き出すときに、大きな力を必要とする。これに対し、本実施形態のケーブル供給源10によれば、予め8の字状に巻き取られた状態の光ケーブル11を引き出す(繰り出す)だけなので、リールを回転させる必要が無く、光ケーブル11を引き出すときに大きな力を必要としない。また、第1参考例では、リールからの光ケーブル11の引き出しを止めるとき、リールが慣性によって回り続けると光ケーブル11が弛んでしまうため、リールの回転を調整する必要があり、リールの回転を調整するための作業員をケーブル供給源10に配置する必要がある。これに対し、本実施形態のケーブル供給源10によれば、リールのように慣性によって回り続ける部材が無いため、光ケーブル11の引き出しを止めても光ケーブル11が弛まず済み、ケーブル供給源10に配置する作業員の数を抑制できる。また、第1参考例のケーブル供給源10を複数用意して、複数のケーブル供給源10からそれぞれ光ケーブル11を一括して引き出す場合、非常に大きな力を必要とする。これに対し、本実施形態のケーブル供給源10によれば、複数のケーブル供給源10からそれぞれ光ケーブル11を一括して引き出すときに(後述)、大きな力を必要としないで済むので、特に有効である。また、第1参考例では、複数の光ケーブル11の引き出しを一括して止めるとき、それぞれのケーブル供給源10のリールの回転を同時に調整する必要があるため、それぞれのケーブル供給源10に作業員を配置する必要があり、多数の作業員を必要とする。これに対し、本実施形態のケーブル供給源10を複数用いる場合には、それぞれのケーブル供給源10に作業員を配置しなくて済むため、作業員の数を大幅に削減可能である。
【0033】
図7Bは、第2参考例のケーブル供給源10の説明図である。第2参考例では、光ケーブル11がコイル状に巻き取られており、コイルの中心軸に沿った方向(ここでは図中の右方向)に光ケーブル11が引き出されている。第2参考例では、第1参考例のようにリールを回転させる必要が無いため、光ケーブル11を引き出すときに大きな力を必要としない。但し、第2参考例では、光ケーブル11を引き出すときに、光ケーブル11に捻れが生じてしまう。これに対し、本実施形態のケーブル供給源10によれば、予め8の字状に巻き取られた状態の光ケーブル11を引き出すので、光ケーブル11に捻れを与えずに済む。
【0034】
光コネクタ15は、光ケーブル11の接続に用いられる部材である。本実施形態の光コネクタ15は、光ケーブル11をクロージャ35(ドロップクロージャ;図1D参照)に接続するために用いられることになる。但し、光コネクタ15がクロージャ35以外のものに接続されても良い(配線経路の終点がクロージャ35でなくても良い)。本実施形態の光コネクタ15は、例えば防水コネクタである。但し、光コネクタ15が防水機能を備えていなくても良い。光ケーブル11の端部に光コネクタ15が取り付けられていなくても良い。但し、光ケーブル11の端部に光コネクタ15が取り付けられていれば、後述するように、光ケーブル11をクロージャ35に接続する作業が容易になる。なお、比較例のような中間分岐が行われる光ケーブル(図8A図8Dの第1ケーブル11Aや第2ケーブル11B)を敷設する場合には、分岐点から先の光ファイバが不使用になるため、端部に光コネクタを取り付けた状態で光ケーブルを敷設することは行われていない。
【0035】
複数のケーブル供給源10を用意した後、作業者は、複数のケーブル供給源10から光ケーブル11をそれぞれ引き出し、複数の光ケーブル11を束ねることによって、ケーブル束12(多条ケーブル)を形成する。そして、作業者は、ケーブル束12を架設することによって、複数の光ケーブル11の架設を行うことになる。
【0036】
図2には、ケーブル束12を架設することによって、架空構造物100を構成する様子が示されている。架空構造物100は、架空の光ケーブル11を支持する構造物である。本実施形態の架空構造物100は、電柱21と、吊線31と、ケーブルハンガー33と、ケーブル束12とを有する。
【0037】
吊線31は、光ケーブル11を吊るすための線であり、電柱21間に架設されている。吊線31は、支持線の無い非自己支持型の光ケーブル11の張力を受け持つことになる。
【0038】
ケーブルハンガー33は、光ケーブル11を吊線31に吊るすための部材である。ケーブルハンガー33は、一束化部材と呼ばれることもある。ケーブルハンガー33は、電柱21間に架設された吊線31に敷設されている。支持線の無い非自己支持型の光ケーブル11を架設する場合、電柱21間に架設された吊線31にケーブルハンガー33を介して光ケーブル11(及びケーブル束12)が架設されることになる。ケーブルハンガー33は、例えばスパイラルハンガーやコサインカーブハンガー等のような長尺ハンガーでも良いし、吊線31に沿って複数配置させるU字型ハンガーでも良い。
【0039】
図5は、ケーブルハンガー33にケーブル束12を挿通させる様子の説明図である。
【0040】
本実施形態の光コネクタ15は、光ケーブル11よりも断面積が大きい。このため、仮に複数の光コネクタ15の位置を揃えてケーブル束12を形成すると、ケーブル束12の端部(複数の光コネクタ15)の断面積が大きくなってしまい、ケーブル束12をケーブルハンガー33に挿通させ難くなってしまう。これに対し、本実施形態では、作業者は、複数の光コネクタ15の長手方向の位置を互いにずらしてケーブル束12を形成し、これにより、ケーブル束12の端部の断面積の大きさを抑制している。このため、本実施形態では、ケーブルハンガー33にケーブル束12を挿通させ易くなる。なお、ケーブルハンガー33にケーブル束12を挿通させるとき、作業者は、通線工具(例えば、通線ロッドや、特開2018-46739号に記載の通線工具)を用いることが可能である。
【0041】
作業者は、図2及び図5に示すようにケーブルハンガー33にケーブル束12を挿通させることによって、図1Bに示すように、き線点となる電柱21Sから分岐点20Cとなる電柱21までの間の第1配線経路20Aにおいて、複数の光ケーブル11を架設する。本実施形態では、ケーブルハンガー33にケーブ束を挿通させることによって、複数の光ケーブル11(多条ケーブル)を一括して架設することができる。このため、複数の光ケーブル11の架設作業が簡易になる。
【0042】
ところで、ケーブルハンガー33にケーブル束12を挿通させる際に、複数のケーブル供給源10から光ケーブル11が同時に引き出されることになる。本実施形態では、それぞれのケーブル供給源10から光ケーブル11を引き出す力が小さくて済むため(図3A及び図3B参照)、複数のケーブル供給源10からそれぞれ光ケーブル11を一括して引き出すための力が小さくて済む。このため、本実施形態では、複数のケーブル供給源10からそれぞれ光ケーブル11を一括して引き出すことが容易になるため、ケーブルハンガー33にケーブル束12を挿通させる作業が容易になる。
【0043】
作業者は、分岐点20Cにおいて、ケーブル束12を構成する複数の光ケーブル11をグループ分けする。ここでは、作業者は、ケーブル束12を構成する複数の光ケーブル11を第1グループ又は第2グループの2グループに分ける。但し、複数の光ケーブル11を3以上のグループに分けても良い(なお、3以上のグループに分ける場合においても、少なくとも第1グループ及び第2グループが存在する)。第1グループに属する光ケーブル11は、1本でも良いし、複数本でも良い。また、第2グループに属する光ケーブル11は、1本でも良いし、複数本でも良い。
【0044】
図1Cに示すように、作業者は、第1グループに属する光ケーブル11(ケーブル束12の一部の光ケーブル11)を分岐点20Cよりも更に先の第1配線経路20Aに沿って架設する。また、作業者は、第2グループに属する光ケーブル11(ケーブル束12の一部の光ケーブル11)を第2配線経路20Bに沿って架設する。なお、各グループに属する光ケーブル11に対しても、作業者は、ケーブルハンガー33に光ケーブル11を挿通させることによって、光ケーブル11を架設することになる。
【0045】
上記のように、本実施形態では、複数の光ケーブル11を束ねることによってケーブル束12を形成し、ケーブル束12をケーブルハンガー33に挿通させることによって、き線点における電柱21から分岐点20Cとなる電柱21までの間の第1配線経路20Aに複数の光ケーブル11を架設している。そして、本実施形態では、分岐点20Cにおいてケーブル束12を構成する複数の光ケーブル11をグループ分けし、第1グループに属する光ケーブル11を分岐点20Cよりも先の第1配線経路20Aに沿って架設するとともに、第2グループに属する光ケーブル11を第2配線経路20Bに沿って架設している。これにより、本実施形態では、比較例のように分岐点20Cにおけるクロージャ35A(図8B参照)の取り付けや、第1ケーブル11Aからの第2ケーブル11Bの分岐等の分岐作業が不要になる。また、本実施形態では、分岐点20Cにおいてケーブル束12を構成する複数の光ケーブル11をグループ分けするだけなので、架空での作業が簡易であり、コストを抑制できる。また、本実施形態では、分岐点20Cにおける光ファイバ111の接続損失を抑制できる。
【0046】
また、図1Cに示すように、本実施形態では、分岐点20Cよりも先の第1配線経路20Aでは、光ケーブル11の本数が減っている(これに対し、比較例では、図8Cに示すように、不使用の光ファイバが含まれた状態で第1ケーブル11Aが架設されている)。このため、本実施形態では、比較例と比べて、分岐点20Cよりも先の第1配線経路20Aにおけるケーブルハンガー33にかかる負荷を軽減させることができる。
【0047】
本実施形態では、第1グループに属する光ケーブル11を分岐点20Cよりも更に先の第1配線経路20Aに沿って架設する作業(第1架設作業)と、第2グループに属する光ケーブル11を第2配線経路20Bに沿って架設する作業(第2架設作業)とを同時に行う。これにより、第1グループに属する光ケーブル11を繰り出す作業(第1繰出作業)と、第2グループに属する光ケーブル11を繰り出す作業(第2繰出作業)とが同時に行われるため、き線点から分岐点20Cまでの間における複数の光ケーブル11(ケーブル束12)の繰り出し作業を一緒に行うことができる。この結果、第1繰出作業及び第2繰出作業が容易になり、第1架設作業及び第2架設作業が容易になる。
【0048】
但し、第1架設作業や第2架設作業が別々のタイミングで行われても良い。この場合、第1グループに属する光ケーブル11を繰り出す作業(第1繰出作業)と、第2グループに属する光ケーブル11を繰り出す作業(第2繰出作業)とが別々のタイミングで行われるため、き線点から分岐点20Cまでの間のケーブルハンガー33の内部で移動する光ケーブル11の量(同時に繰り出される光ケーブル11の量)は、第1繰出作業と第2繰出作業とを同時に行う場合と比べて、軽減される。この結果、き線点から分岐点20Cまでの間のケーブルハンガー33にかかる負荷を軽減させることができる。
【0049】
図1Dに示すように、作業者は、第2配線経路20Bのユーザー宅の近傍にクロージャ35を設置する。クロージャ35は、ドロップポイントに設置されるドロップクロージャである。ここでは、ユーザー宅の近傍の電柱21にクロージャ35を設置しているが、第2配線経路20Bの電柱21間に架設された吊線31に架空クロージャを設置しても良い。
【0050】
クロージャ35には、光コネクタ15を差し込むための差込口(不図示)が形成されている。作業者は、図1Dに示すように、光ケーブル11(第2グループに属する光ケーブル11)の端部に取り付けられている光コネクタ15をクロージャ35の差込口に差し込むことによって、光ケーブル11とクロージャ35とを接続する。光ケーブル11(第2グループに属する光ケーブル11)の端部の光コネクタ15をクロージャ35に接続することによって、き線点からクロージャ35(第2配線経路20Bのクロージャ35)までの間に光ケーブル11を架設する作業が完了する。図8Dに示す比較例のように第2ケーブル11Bの中間位置にクロージャ35を設置する場合と比べると、本実施形態では、光ケーブル11(第2グループに属する光ケーブル11)とクロージャ35との接続作業が簡易になる。
【0051】
また、作業者は、図1Dに示すように、引込ケーブル41(例えばドロップケーブル)を介して、クロージャ35から光ファイバをユーザー宅に引き込む。例えば、作業者は、ドロップケーブルの一端に取り付けた光コネクタ(例えば現場組立光コネクタ)をクロージャ35に接続することによって、クロージャ35とユーザー宅との間に引込ケーブル41を配線し、クロージャ35からユーザー宅に光ファイバを引き込むことになる。
【0052】
図1Dに示すように、本実施形態では、クロージャ35よりも先の第2配線経路20Bでは、光ケーブル11(第2グループに属する光ケーブル11)の本数が減っている。このため、本実施形態では、比較例と比べて、クロージャ35よりも先の第2配線経路20Bにおけるケーブルハンガー33にかかる負荷を軽減させることができる。
【0053】
なお、光ケーブル11の配線を終えた後、作業者は、き線点において、ケーブル供給源10の側の光ケーブル11(架空ケーブル)と、地下ケーブルとを接続する接続作業を行うことになる。これにより、き線点(始点)からドロップポイント(終点)までの間における光ケーブル11の架設が完了する。
【0054】
図6は、追加の光ケーブル11を架設する様子の説明図である。
【0055】
光ケーブル11を架設した後、更に別の光ケーブル11(追加ケーブル)を追加して架設することがある。このような場合、図に示すように、作業者は、既にケーブル束12を挿通させたケーブルハンガー33に追加の光ケーブル11を挿通させる。
【0056】
すなわち、まず、作業者は、き線点となる電柱21Sの近傍に、ケーブル供給源10を用意する。既に説明したように、ケーブル供給源10から引き出される光ケーブル11の端部には、光コネクタ15(例えば防水コネクタ)が取り付けられていることが望ましい。また、ケーブル供給源10の収容箱13には、光ケーブル11が8の字状に巻き取られた状態で収容されており、光ケーブル11に捻れを与えずに引出口13Aから光ケーブル11を引き出せることが望ましい。そして、作業者は、ケーブル供給源10から光ケーブル11を引き出し、通線工具(例えば、通線ロッドや、特開2018-46739号に記載の通線工具)を用いて、既にケーブル束12を挿通させたケーブルハンガー33に追加の光ケーブル11を挿通させることになる。
【0057】
===その他===
上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
10 ケーブル供給源、11 光ケーブル、
11A 第1ケーブル、11B 第2ケーブル、
111 光ファイバ、112 吸水部材、
113 押え巻きテープ、114 外被、115 抗張力体、
12 ケーブル束、13 収容箱、13A 引出口、
15 光コネクタ、
20A 第1配線経路、20B 第2配線経路、20C 分岐点、
21 電柱、21S 電柱(始点;き線点)、
31 吊線、33 ケーブルハンガー、35 クロージャ、
41 引込ケーブル、100 架空構造物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8