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特許7058349水素システムの制御装置、及び水素システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-13
(45)【発行日】2022-04-21
(54)【発明の名称】水素システムの制御装置、及び水素システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20220414BHJP
   H02J 3/28 20060101ALI20220414BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20220414BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J3/38 110
H02J3/28
G06Q50/06
H02J15/00 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020559597
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2018045626
(87)【国際公開番号】W WO2020121428
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2016年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】田丸 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 剛史
(72)【発明者】
【氏名】山根 史之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 新
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-111871(JP,A)
【文献】特開2017-34843(JP,A)
【文献】特表2015-500439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 15/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギー発電装置が生成する第1電力と、電力系統から供給される第2電力とにより水素を製造する水素システムを制御する水素システムの制御装置であって、
前記第2電力の受電電力量が設定された期間における前記第1電力の予測値を取得する取得部と、
前記第1電力の供給値が前記第1電力の予測値を超える余剰電力の利用比率に対応する水素量を前記水素システムに増加製造させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記期間内における第1期間の前記利用比率を第1期間よりも後の前記期間内における第2期間の前記利用比率よりも大きくする、水素システムの制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第2期間の前記利用比率を0または一定値にする、請求項1に記載の水素システムの制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1期間内の前記第1電力の積算電力量の増加に応じて前記利用比率をより小さくする、請求項1又は2に記載の水素システムの制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1期間内の前記利用比率を時間経過に従いより小さくする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の水素システムの制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記期間内における前記第1電力の予測された積算電力量の確率分布に基づく閾値に、前記期間内の前記第1電力の積算電力量が到達した時間以降の前記利用比率を0または一定値にする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水素システムの制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記期間内における前記第1電力の予測された積算電力量の分布確率に基づく閾値に、前記期間内の前記第1電力の積算電力量が到達するまでは前記利用比率は変化させず、閾値に到達した後の前記利用比率を0または一定値に減少させる、請求項1又は2に記載の水素システムの制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記期間内の前記第1電力の積算電力量が前記閾値に到達した後の経過時間に応じて前記閾値を増加させると共に、前記余剰電力に前記利用比率を乗算した値に対応する水素量を前記水素システムに増加製造させる、請求項5又は6に記載の水素システムの制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第2電力の受電電力量が設定される場合には、前記期間内における前記第1電力の予測された積算電力量より小さい第1閾値を設定し、
前記第2電力の受電電力量が設定されない場合には、前記期間内における前記第1電力の予測された積算電力量より大きい第2閾値を設定する、請求項5又は6に記載の水素システムの制御装置。
【請求項9】
閾値を操作者の操作に従い設定する設定部を更に備え、
前記制御部は、前記設定部により設定された前記閾値に、前記期間内の前記第1電力の積算電力量が到達した後の前記利用比率を0または一定値にする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水素システムの制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記再生可能エネルギー発電装置の予測発電量の変動量に応じて、前記閾値を変更する、
請求項5又は6に記載の水素システムの制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記期間内における前記第1電力の予測された積算電力量の確率分布に基づく閾値に応じて、前記利用比率を演算する比率演算部と、
前記利用比率に基づき、前記水素システム内の水素製造装置とパワーコンディショナへの指令値を演算する指令値演算部と、
前記水素製造装置と前記パワーコンディショナへ指令値を出力する出力部と、
を有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の水素システムの制御装置。
【請求項12】
再生可能エネルギー発電装置が生成する第1電力と、電力系統から供給される第2電力とにより水素を製造する水素システムの制御方法であって、
前記第2電力の受電電力量が設定された期間における前記第1電力の予測値を取得する取得工程と、
前記第1電力の供給値が前記第1電力の予測値を超える余剰電力の利用比率に対応する水素量を前記水素システムに増加製造させる制御工程と、を備え、
前記制御工程は、前記期間内における第1期間の前記利用比率を第1期間よりも後の前記期間内における第2期間の前記利用比率よりも大きくする、水素システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水素システムの制御装置、及び水素システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統から供給される電力と、電力系統と比較して発電電力の変動がより大きい再生可能エネルギー発電装置の電力とを用いて、水素を製造する水素システムが一般に知られている。このような水素システムでは、電力系統から供給される電力の需給バランスを調整しつつ、水素需要を満す水素量の製造が行われる。このため、再生可能エネルギー発電装置の発電電力予測値を利用して、水素製造量の目標値を設定する。
【0003】
一方で、発電電力予測値よりも多くの電力を再生可能エネルギー発電装置が発電した場合に、計画値を超えた水素量を生産することにより、再生可能エネルギー発電装置の発電電力の利用率を上げる制御が可能となる。ところが、水素製造装置の制御応答は再生可能エネルギー発電装置の制御と比較すると一般的に遅くなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6038085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、再生可能エネルギー発電装置における発電電力の利用調整が可能な水素システムの制御装置、及び水素システムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る水素システムの制御装置は、再生可能エネルギー発電装置が生成する第1電力と、電力系統から供給される第2電力とにより水素を製造する水素システムを制御する水素システムの制御装置であって、前記第2電力の受電電力量が設定された期間における前記第1電力の予測値を取得する取得部と、前記第1電力の供給値が前記第1電力の予測値を超える余剰電力の利用比率に対応する水素量を前記水素システムに増加製造させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記期間内における第1期間の前記利用比率を第1期間よりも後の前記期間内における第2期間の前記利用比率よりも大きくする、水素システムの制御装置を有する。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、再生可能エネルギー発電装置における発電電力の利用調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】水素生成システムの構成を示すブロック図。
図2】水素システムの構成を示すブロック図。
図3】制御装置の構成を示すブロック図。
図4】本実施形態に係る予測製造電力を概念的に説明する図。
図5】指令値演算部の構成例を示す制御ブロック図。
図6】指令値演算部が演算した製造電力を概念的に示す図。
図7】利用比率を設定する方法の一例を示す図。
図8】利用比率に基づき演算した製造電力を概念的に示す図。
図9】利用比率を設定する別の一例を示す図。
図10図9に示す利用比率に基づく製造電力を概念的に示す図。
図11】本実施形態に係る制御例を示すフローチャート。
図12】非需給調整時間帯の利用比率を設定する方法の一例を示す図。
図13】第2実施形態に係る水素生成システムのブロック図。
図14】第3実施形態に係る制御装置のブロック図。
図15】第4実施形態に係る制御装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る水素システムの制御装置、水素システムの制御方法、及び水素生成システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る水素生成システム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る水素生成システム1は、水素を生成するシステムであり、水素システム10と、エネルギー管理システム20と、制御装置30とを備えて構成されている。図1では、更に電力系統Epsが図示されている。
【0011】
水素システム10は、水素システム10内の再生可能エネルギー発電装置が生成する第1電力P0(k)と、電力系統Epsから供給される第2電力G(k)とにより水素を製造する。また、水素システム10は、第1電力P0(k)の情報を含む測定信号を制御装置30に出力する。ここで、kは時間を示す。
【0012】
エネルギー管理システム20は、再生可能エネルギー発電装置の予測発電電力PreP(k)、及び所定の期間における目標受電電力量Rの情報を含む指令信号を制御装置30に出力する。また、電力系統Epsから受電する第2電力G(k)の目標受電電力量Rが設定された所定の時間区間は、所謂ディマンドリスポンス期間に対応する。ディマンドリスポンス期間では、目標受電電力量Rが例えば電力会社との取り決めにより設定される。このため、ディマンドリスポンス期間における目標受電電力量Rを超えて、電力系統Epsから電力を受電すると、例えば目標受電電力量Rを超えた受電電力に対してペナルティーとして、通常よりも高額の電力料金が課せられる。ディマンドリスポンス期間は、例えば30分単位であり、その期間は例えば30~120分である。このディマンドリスポンス期間は、例えば電力需要の多い時間帯に設定される。一方で、目標受電電力量Rよりも受電電力が少ない場合には、ペナルティーは課されないが、水素製造量を計画値に近づける必要があるので、受電電力量を単純に減らすことは困難である。
【0013】
制御装置30は、水素システム10から供給される第1電力P0(k)の情報を含む測定信号と、電力系統Epsから受電する電力G(k)の情報を含む計測信号と、エネルギー管理システム20から供給される目標受電電力量R及び予測発電電力PreP(k)の情報を含む指令信号とに基づき、水素システム10の製造電力u(k)と、パワーコンディショナの出力電力P(k)の情報を含む指令信号を水素システム10出力する。すなわち、制御装置30は、水素システム10から供給される第1電力P0(k)の情報を含む測定信号と、電力系統Epsから受電する電力G(k)の情報を含む計測信号と、エネルギー管理システム20から供給される目標受電電力量R及び予測発電電力PreP(k)の情報を含む指令信号とに基づき、水素システム10の製造電力u(k)、及びパワーコンディショナの出力電力P(k)を制御する。
電力系統Epsは、例えば電力会社が管理する送配電網である。
【0014】
図2は、水素システム10の構成を示すブロック図である。図2に示すように、水素システム10は、再生可能エネルギー発電装置10a、パワーコンディショナ10b、水素製造装置10c、水素貯蔵装置10dを備える。図2では、さらに水素負荷HRが図示されている。
【0015】
エネルギー管理システム20は、上述したように、ディマンドリスポンス期間の時間区間における電力系統Epsからの目標受電電力量R、再生可能エネルギー発電装置10aの予測発電電力PreP(k)の情報を含む指令信号を制御装置30に出力する。ここで、予測発電電力PreP(k)は、再生可能エネルギー発電装置10aの発電電力を交流に換算した交流電力値である。なお、本実施形態では、交流電力値を基準値として説明するが、これに限定されず直流電力値を基準値としてもよい、例えば、本実施形態に係る予測発電電力PreP(k)は交流電力値であるが、これに限定されず直流電力値で予測発電電力PreP(k)を示してもよい。また、目標受電電力量Rをディマンドリスポンス期間で除算した値が目標受電電力r(k)となる。
【0016】
再生可能エネルギー発電装置10aは、自然エネルギー由来の発電設備を有する。この再生可能エネルギー由来の発電設備は、例えば太陽光を用いた太陽光発電装置(PV)である。再生可能エネルギー発電装置10aは、発電電力PW(k)の交流電力値である第1電力P0(k)の情報を含む測定信号を制御装置30に出力する。すなわち、第1電力P0(k)は、発電電力PW(k)の交流電力値である。
【0017】
再生可能エネルギー発電装置10aは、化石燃料などの燃料が不要であるが、その発電量は天候などの環境の影響を受けるため不安定である。なお、再生可能エネルギー発電装置10aは、風力発電設備でもよく、或いはバイオマスやバイオマス由来廃棄物などの新エネルギーを利用した発電設備でもよい。
【0018】
パワーコンディショナ10bは、例えばコンバータを含んで構成される。このコンバータは、再生可能エネルギー発電装置10aが出力した発電電力PW(k)を所定の出力電力P(k)に変換する。より具体的には、パワーコンディショナ10bは、制御装置30から入力された出力電力P(k)の情報を含む指令信号に従い、発電電力PW(k)の大きさを調整した出力電力P(k)を水素製造装置10cに供給する。すなわち、パワーコンディショナ10bが出力する出力電力P(k)の大きさは第1電力P0(k)以下に調整される。
【0019】
水素製造装置10cは、電気と水から、水電解により水素を製造する。水素製造装置10cは、例えば、アルカリ性の溶液に電流を流すことにより、水素及び酸素を製造する電気水分解装置である。また、水素製造装置10cは、水素配管を介して、生成した水素量H(k)を、水素貯蔵装置10dに蓄える。
【0020】
水素製造装置10cは、制御装置30から入力された製造電力u(k)の情報を含む指令信号に従い、製造電力u(k)に対応する水素量H(k)を製造する。ここで、製造電力u(k)は(1)式の関係を有する。また、水素製造装置10cは、生成した水素量H(k)の情報を含む測定信号を制御装置30に供給する。
G(k)=u(k)-P(k) (1)式
【0021】
上述のように、第2電力G(k)は、電力系統Epsからの受電電力であり、出力電力P(k)は、再生可能エネルギー発電装置10aの発電電力である第1電力P0(k)を、パワーコンディショナ10bにより大きさを調整した交流電力である。電力系統Epsの変圧器は、第2電力G(k)を水素製造装置10cに供給する。つまり、第2電力G(k)を平均的に目標受電電力r(k)に一致させると、第2電力G(k)のディマンドリスポンス期間における第2電力G(k)の積算値は目標受電電力量Rに一致する。
【0022】
また、水素製造装置10cの制御応答時間は、再生可能エネルギー発電装置10a及びパワーコンディショナ10bの制御応答よりも遅くなる。例えば、水素製造装置10cは、一般的に蓄電池よりも制御反応遅れが大きく、制御周期毎の変化量も小さくなる。このため、再生可能エネルギー発電装置10aの第1電力P0(k)が増加した際に、水素製造装置10cの製造電力u(k)を増加させても、応答遅れが生じる。これにより、水素製造装置10cの水素製造量を増加させた時点で、再生可能エネルギー発電装置10aの発電電力である第1電力P0(k)が減少し、パワーコンディショナ10bの出力電力P(k)が低下する場合がある。この場合、(1)式で示すように、電力系統Epsから受電する第2電力G(k)が増加してしまい、第2電力G(k)が目標受電電力r(k)を超える要因となる。このような、応答遅れにより生じ、第2電力G(k)を増加させる電力を正の応答遅れ電力と呼ぶこととする。特に、ディマンドリスポンス期間のける終了直前に正の応答遅れ電力が発生すると、ディマンドリスポンス期間における第2電力G(k)の積算電力量の調整が困難となり、ディマンドリスポンスに失敗する可能性が考えられる。
【0023】
同様に、再生可能エネルギー発電装置10aの第1電力P0(k)が減少した際に、水素製造装置10cの製造電力u(k)を減少させても、応答遅れが生じる。これにより、水素製造装置10cの水素製造量を減少させた時点で、パワーコンディショナ10bの出力電力P(k)が増加する場合がある。この場合、(1)式で示すように、電力系統Epsから受電する第2電力G(k)が減少し、目標受電電力r(k)よりも下回る要因となる。このような、応答遅れにより生じ、第2電力G(k)を減少させる電力を負の応答遅れ電力と呼ぶこととする。なお、目標受電電力量Rよりも第2電力G(k)の積算電力量が下回っても、本実施形態に係るディマンドリスポンスでは、ペナルティーは課せられない。
【0024】
水素貯蔵装置10dは、水素製造装置10cにより製造された水素を蓄える。この水素貯蔵装置10dは、水素製造装置10cと、水素負荷HRと、に配管を介して接続される。また、水素貯蔵装置10dは、配管を介して、水素負荷HRに水素を供給する。水素負荷HRは、例えば燃料電池発電装置、燃料電池自動車などである。なお、再生可能エネルギー発電装置10a及びパワーコンディショナ10bは水素システム10外に配置してもよい。すなわち、水素システム10は、再生可能エネルギー発電装置10a及びパワーコンディショナ10bを含まない構成でもよい。
【0025】
図3は、制御装置30の構成を示すブロック図である。図3に示すように、制御装置30は、記憶部30aと、インターフェース部30bと、制御部30cとを有する。
【0026】
記憶部30aは、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク等により実現される。この記憶部30aは、制御部30cが実行するプログラムと、各種の制御用のデータを記憶する。
【0027】
インターフェース部30bは、再生可能エネルギー発電装置10a(図2)、水素製造装置10c(図2)、及び水素貯蔵装置10d(図2)、エネルギー管理システム20(図2)と通信する。これにより、インターフェース部30bは、目標受電電力量Rが設定された期間における第1電力P0(k)の予測値である予測発電電力PreP(k)を取得する。
【0028】
ここで、ディマンドレスポンス期間などの制御の時間区間における開始時刻はコマ開始時刻と呼び、終了時刻はコマ終了時刻と呼ぶ。例えば、インターフェース部30bは、制御の時間区間毎に、予測発電電力PreP(k)、目標受電電力量R、及びPV発電量信頼区間などの情報を含む指令信号と、第1電力P0(k)、及び生成した水素量H(k)の情報を含む測定信号を受信する。PV発電量信頼区間は、予測発電電力PreP(k)の積算値の確率分布を示す情報である。例えば、確率分布は、標準偏差σの正規分布により示される。なお、本実施形態に係るインターフェース部30bが取得部に対応する。
【0029】
制御部30cは、例えばCPU(Central Processing Unit)を含んで構成され、記憶部30aに記憶されるプログラムに基づき、制御を実行する。この制御部30cは、指令値演算部302と、余剰量瞬時利用比率演算部304と、出力部306とを、有する。
【0030】
図4は、本実施形態に係る予測製造電力Preu(k)を概念的に説明する図である。縦軸は電力を示し、横軸はディマンドリスポンス期間内の時刻を示している。図4に示すように、本実施形態に係る予測製造電力Preu(k)は(2)式で示される。
Preu(k)=r(k)+PreP(k) (2)式
【0031】
指令値演算部302は、パワーコンディショナ10bの出力電力P(k)、水素製造装置10cの製造電力u(k)、などの指令値を演算する。指令値演算部302の詳細は後述する。
【0032】
余剰量瞬時利用比率演算部304は、余剰電力Sp(k)を水素製造装置10Cの水素製造に利用する利用比率ratioを演算する。余剰電力Sp(k)は(3)式で示すことができる。余剰量瞬時利用比率演算部304の詳細も後述する。なお、本実施形態に係る余剰量瞬時利用比率演算部304が比率演算部に対応する。
【数1】
【0033】
出力部306は、指令値演算部302により演算された値を含む指令信号を出力する。すなわち出力部306は、出力電力P(k)を含む指令信号をパワーコンディショナ10bに出力し、製造電力u(k)を含む指令信号を水素製造装置10cに出力する。
【0034】
図5は、指令値演算部302の構成例を示す制御ブロック図であり、図5に基づき、指令値演算部302の詳細を説明する。図5に示すように、指令値演算部302は、目標受電電力r(k)と第2電力G(k)との差分値が縮小するように製造電力u(k)の値を演算するフィードバックコントローラである。すなわち、この指令値演算部302は、積分部400と、PI制御部402とを備える。更にPI制御部402は、P制御部404と、I制御部406と、加算部408とを有する。
【0035】
積分部400は、受電電力量積算誤差e(k)を(4)式で示すように演算する。すなわち、積分部400は、目標受電電力r(k)と第2電力G(k)の差分を各時刻kにおいて加算する。Nは、ディマンドリスポンス内の時間に対応する。
【数2】
【0036】
P制御部404は、e(k)に対する比例動作を行う。また、I制御部406は、e(k)に対する積分動作を行う。これにより、P制御部404の出力値とI制御部406の出力値の加算値は(5)式で示すΔu(k)で表される。ここで、Kは比例ゲインであり、Tは、積分時間である。
【数3】
【0037】
そして、加算部408は、(6)式に示す加算を行い、製造電力u(k)を時刻kにおける指令値演算部302のフィードバックコントローラ出力として出力する。
【数4】
【0038】
図6は、指令値演算部302が演算した製造電力u(k)を概念的に示す図である。図6に示すように、ディマンドリスポンス期間では、指令値演算部302は、目標受電電力r(k)と第2電力G(k)との差分値が縮小するように製造電力u(k)の値を演算する。換言すると、製造電力u(k)と第1電力P0(k)の差分が目標受電電力r(k)と一致するように、製造電力u(k)を演算する。
【0039】
また、(6)式で示すu(k)を用いて(3)式で示す余剰電力Sp(k)は、(7)式として表すことが可能である。
【数5】
【0040】
上述のように余剰電力Sp(k)を全て、水素製造装置10c(図2)に使用すると、制御応答の遅れにより、目標受電電力量Rを超えてしまう恐れがある。そこで、ディマンドレスポンス期間に水素製造装置10c(図2)に出力される指令信号には、製造電力u(k)の代わりに(8)式で示される製造電力u’(k)の情報が含まれる。本実施形態に係る利用比率ratioは、例えば1.0から0の範囲である。
【数6】
【0041】
同様に、ディマンドレスポンス期間にパワーコンディショナ10bへ出力される指令信号には、出力電力P(k)の代わりに(9)式で示されるp’(k)の情報が含まれる。
【数7】
【0042】
図7は、利用比率ratioを設定する方法の一例を示す図であり、図7に基づき、余剰量瞬時利用比率演算部304の構成の詳細を説明する。図7の上図は、再生可能エネルギー発電装置10a(図2)の第1電力P0(k)の積算電力量を示している。図7の下図は、利用比率ratioの値を示している。また、確率分布は予測発電電力PreP(k)の積算値の確率分布を標準偏差σの正規分布で示している。つまり正規分布の積分値を1に正規化することにより、正規分布の値が予測発電電力PreP(k)の積算値における発生確率を示す。
【0043】
図7に示すように、余剰量瞬時利用比率演算部304は、第1電力P0(k)を積算し、積算電力量P0が信頼区間の-σの値に対応する閾値TH1に時刻T1で達すると、時刻T1よりも後の第2期間における利用比率ratioの値を0に変更する。時刻T1に達するまでの第1期間における利用比率ratioは例えば(10)式で示すことができる。
【0044】
ratio=max{0,((TH1-P0)/PREP)}
(10)式
ここで、TH1は、信頼区間-1σに対応する閾値であり、P0は、第1電力P0(k)の積算電力量であり、PREPは、予測発電電力PreP(k)のディマンドレスポンス期間における積算値である。つまり、PREPは、ディマンドレスポンス期間における再生可能エネルギー発電装置10aの予測発電電力量である。このように、余剰量瞬時利用比率演算部304は、時刻T1に達するまでの第1期間内の第1電力P0(k)の積算電力量P0の増加に応じて、利用比率ratioをより小さくする。すなわち、時間経過に応じて、余剰電力Sp(k)の利用比率を低減させる。換言すると、余剰量瞬時利用比率演算部304は、ディマンドレスポンス期間内における第1期間の利用比率ratioを第1期間よりも後の第2期間の利用比率ratioよりも大きくする。これにより、正の応答遅れ電力が発生する量を低減できる。また、時間経過に応じて利用比率ratioを低下させることにより、正の応答遅れ電力が発生した場合にも残りの時間での、第2電力G(k)の積算電力量の調整がより容易となる。
【0045】
なお、-1σら1σの区間に予測発電電力PreP(k)の積算値が達する確率は68.3パーセントである。第2期間における利用比率ratioは、0でなくてもよく、例えば第1期間における利用比率ratioの最低値よりも小さい定数でもよい。このように、余剰量瞬時利用比率演算部304は、所定期間内、例えばディマンドリスポンス期間における第1期間の利用比率ratioを第1期間よりも後の第2期間の利用比率ratioよりも大きくする。
【0046】
なお、(2)式から予測製造電力Preu(k)も予測発電電力PreP(k)と同一の確率分布を有する。すなわち、水素製造量の積算値の確率分布は、予測発電電力PreP(k)の積算値の確率分布に対応する。例えば、予測発電電力PreP(k)の積算値に対応する水素製造量の積算値は、予測発電電力PreP(k)の積算値の確率と同一である。
【0047】
図8は、図7に示す利用比率ratioに基づき演算した製造電力u’(k)を概念的に示す図である。図8に示すように、指令値演算部302は、第1電力P0(k)の積算電力量P0が閾値TH1に時刻T1で到達すると、余剰電力Sp(k)の使用を停止する。また、時刻T1に達するまでは、第1電力P0(k)の積算電力量P0の増加に応じて、余剰電力Sp(k)の利用比率ratioを低下させる。
【0048】
すなわち、時刻T1に、第1電力P0(k)の積算電力量が到達するまでは、指令値演算部302により第2電力G(k)が目標受電電力r(k)に一致するようにフィードバック制御されつつ、実際に余剰電力Sp(k)が水素製造に使用される量は時間経過に従い抑制される。このため、正の応答遅れ電力を抑制しつつ、再生可能エネルギー発電装置の10aの発電電力を水素製造に使用可能となる。
【0049】
一方で、時刻T1に達した後は、(8)、(9)式で示すように製造電力u’(k)は予測製造電力Preu(k)と一致し、第1電力p’(k)は予測発電電力PreP(k)と一致する。このため第2電力G(k)は、(11)式で示すように、目標受電電力r(k)と一致する。
G(k)=u’(k)-p’(k)=r(k) (11)式
すなわち、時刻T1に達した後は、余剰電力Sp(k)を水素製造に利用しないため、第2電力G(k)は、目標受電電力r(k)と一致する。また、時刻T1までの第2電力G(k)の積算電力量が目標受電電力r(k)の積算電力量を超えている場合には、製造電力u’(k)を減少させることにより、第2電力G(k)の積算電力量を調整することも可能である。また、閾値TH1(-σ)の積算電力量に対応する水素量が既に生成されているので、少なくとも水素製造量の目的値から信頼区間-σの範囲内の水素製造量が確保される。ここで、水素製造量の目的値は、予測製造電力Preu(k)をディマンドリスポンス期間で積算した値に対応する水素量である。
【0050】
図9は、利用比率ratioを設定する別の一例を示す図である。図9の上図は、再生可能エネルギー発電装置10a(図2)の第1電力P0(k)の積算電力量P0を示している。図9の下図は、利用比率ratioの値を示している。
【0051】
図9に示すように、余剰量瞬時利用比率演算部304は時刻T1に達するまでの第1期間における利用比率ratioの値を1とし、時刻T1に達した後の第2期間における利用比率ratioの値を0とする。このように、余剰量瞬時利用比率演算部304は、第1電力P0(k)の予測された積算電力量の確率分布に基づく閾値(-σ)に、第1電力P0(k)の積算電力量が到達した後の第2期間の比率を0または一定値にする。換言すると、余剰量瞬時利用比率演算部304は、第1電力P0(k)の予測された積算電力量の確率分布に基づく閾値(-σ)に、第1電力P0(k)の積算電力量が到達するまでは利用比率ratioを変化させず、閾値(-σ)に到達した第2期間以降の利用比率ratioを0または一定値に減少させる。
【0052】
なお、第2期間における利用比率ratioは、0でなくてもよく、例えば第1期間における利用比率ratioよりも小さい定数でもよい。このように、余剰量瞬時利用比率演算部304は、所定期間内、例えばディマンドリスポンス期間における第1期間の利用比率ratio=1を第1期間よりも後の第2期間の利用比率ratio=0よりも大きくする。これにより、ディマンドリスポンス期間の終わりに近づくに従い、正の応答遅れ電力の発生をより抑制できる。
【0053】
図10は、図9に示す利用比率ratioに基づき演算した製造電力u’(k)を概念的に示す図である。図10に示すように、指令値演算部302は、時刻T1に、第1電力P0(k)の積算電力量が閾値TH1に到達すると、水素製造装置10c(図2)の水素製造に使用する余剰電力Sp(k)の使用を抑制する。
【0054】
すなわち、時刻T1に、第1電力P0(k)の積算電力量が到達するまでは、指令値演算部302により第2電力G(k)が目標受電電力r(k)に一致するように、余剰電力Sp(k)を水素製造に使用する。このため、再生可能エネルギー発電装置の10aの発電電力のほぼ全てを水素製造に使用可能となる。
【0055】
一方で、時刻T1に達した後は、図8と同様に、余剰電力Sp(k)を水素製造に利用しないために、第2電力G(k)は、目標受電電力r(k)と一致する。また、時刻T1までの第2電力G(k)の積算電力量が目標受電電力r(k)の積算電力量を超えている場合には、製造電力u’(k)を減少させることにより、第2電力G(k)の受電電力量を調整することも可能である。
【0056】
なお、本実形態に係る余剰量瞬時利用比率演算部304は、時刻T1を第1電力P0(k)の積算電力量に基づき設定しているが、時刻T1を予め固定値として設定してもよい。この場合には、第1電力P0(k)の積算電力量が閾値TH1に達しない場合にも、余剰電力Sp(k)の利用比率を所定値にすることが可能となる。これにより、コマ終了時において、利用比率ratioを0にできるので、第2電力G(k)の積算電力量を目標受電電力量Rに一致させることがより容易となる。
【0057】
また、本実施形態に係る閾値TH1を発電量の信頼区間-1σに対応させた一定としていたが、これに限定されない。例えば、再生可能エネルギー発電装置10aの第1電力P0(k)が予測発電電力PreP(k)よりも大きい場合には、第1電力P0(k)の積算電力量P0に応じて閾値TH1を信頼区間-1σに対応する値から徐々に大きくしてもよい。
【0058】
例えば、30分間のディマンドリスポンス期間の中で再生可能エネルギー発電装置10aの有効利用を行う時間(PV有効利用時間帯)を設定し、積算電力量P0が閾値TH1に到達した時刻からPV有効利用時間帯終了時までの残り時間に応じて、閾値TH1の値を増加させてもよい。これにより、第1電力P0(k)が予測発電電力PreP(k)よりも大きい場合でも、更に再生可能エネルギー発電装置10aの第1電力P0(k)の有効利用が可能となる。
【0059】
図11は、本実施形態に係る制御例を示すフローチャートである。図11に示すように、まず、インターフェース部30bは、予測発電電力PreP(k)、目標受電電力量R、及び発電量信頼区間などの情報を含む指令信号を取得する(ステップS100)。これにより、指令値演算部302は、目標受電電力量Rをディマンドレスポンス期間で除算した目標受電電力r(k)を演算する。また、余剰量瞬時利用比率演算部304は、信頼区間-σの値に対応する閾値TH1を設定する。
【0060】
次に、インターフェース部30bは、発電電力PW(k)の情報を含む測定信号を受信する(ステップS102)。
次に、余剰量瞬時利用比率演算部304は、発電電力PW(k)を交流電力値に変換した第1電力P0(k)の積算値P0を演算し、積算値P0に応じた利用比率ratioを設定する(ステップS104)。
【0061】
次に、指令値演算部302は、製造電力u(k)、出力電力P(k)、および第2電力G(k)を演算し、製造電力u(k)、出力電力P(k)、および第2電力G(k)それぞれを含む指令信号を生成する(ステップS106)。続けて、出力部306は、出力電力P(k)を含む指令信号をパワーコンディショナ10bに出力し、製造電力u(k)を含む指令信号を水素製造装置10cに出力する(ステップS108)。
【0062】
次に、制御部30cは、ディマンドリスポンスの時間が終了したか否かを判定し(ステップS110)、終了していない場合(ステップS110のNO)、ステップS102からの処理を繰り返す。一方で、終了する場合(ステップS110のYES)、制御部30cは、全体処理を終了するか否かを判定する(ステップS112)。全体処理を終了しない場合(ステップS112のNO)、ステップS100からの処理を繰り返す。一方で、終了する場合(ステップS112のYES)、制御部30cは、全体処理を終了する。
【0063】
このように、天候の影響を受ける再生可能エネルギー発電装置10aを利用し、制御の応答遅れがより大きい水素製造装置10cにより水素を製造する場合でも、目標とする水素量を製造しつつ目標受電電力量Rを達成することが可能となる。これにより、再生可能エネルギー発電装置10aが予測値よりも多くの発電した場合でも、この余剰電力を抑制するのではなく、余分に水素量を生産することでより経済的な制御が可能となる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、再生可能エネルギー発電装置10aが発電する第1電力p0(k)が予測発電電力PreP(k)を超えた余剰電力Sp(k)の利用比率ratioに対応する水素量を水素製造装置10cに増加製造させる。この利用比率ratioを所定期間内の時間経過に応じて減少させることにより、時間経過に従い正の応答遅れ電力が発生する量をより抑制できる。これにより、所定期間内において電力系統から供給される第2電力G(K)の積算電力量を目標受電電力量Rにするための調整をより高精度に行うことが可能となる。
【0065】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る制御装置30は、ディマンドレスポンス期間である需給調整時間帯の第1制御と、ディマンドレスポンス期間でない非需給調整時間帯の第2制御とを、異ならす点で第1実施形態に係る水素システムの制御装置と相違する。以下では、第1実施形態と相違する点を説明する。
【0066】
図12は、非需給調整時間帯の利用比率ratioを設定する方法の一例を示す図である。図12の上図は、再生可能エネルギー発電装置10a(図2)の第1電力P0(k)の積算電力量P0を示している。図12の下図は、利用比率ratioの値を示している。また、確率分布は予測発電電力PreP(k)の積算値の確率分布を標準偏差σの正規分布で示している。
【0067】
図12に示すように、第2実施形態に係る余剰量瞬時利用比率演算部304は、非需給調整時間帯の第2制御では、第1電力P0(k)の積算値P0が+σの値に対応する閾値TH2に時刻T2で達すると、時刻T2よりも後の第2期間における利用比率ratioの値を0に変更する。時刻T2に達するまでの第1期間における利用比率ratioは(12)式で示すことができる。
ratio=max{0,((TH2-P0)/PREP)}
(12)式
ここで、TH2は、信頼区間+1σに対応する発電量閾値であり、P0は、第1電力P0(k)の積算電力量であり、PREPは、予測発電電力PreP(k)のディマンドレスポンス期間における積算値である。すなわち、本実施形態に係る利用比率ratioは1.0を超える。
【0068】
このように、式(12)では閾値TH2を利用する点が式(10)式と異なる。非需給調整時間帯の場合には、目標受電電力量Rよりも水素製造量の目標値と一致させることがより重要となる。このため、図12に示すように、受電電力量は正制御の反応遅れにより正の制御応答遅れは増加するが、再生可能エネルギー発電装置10a(図2)の第1電力P0(k)がより有効利用される。なお、本実施形態に係る余剰量瞬時利用比率演算部304において、需給調整時間帯の場合は信頼区間-1σに対応する閾値TH1を使用し、非需給調整時間帯の場合は信頼区間+1σに対応する閾値TH2を利用したが、これに限定されない。例えば需給調整時間帯の場合は発電電力量の予測値PREPよりも小さい値を閾値に設定し、非需給調整時間帯の場合は発電電力量の予測値PREPよりも大きい値を閾値に設定すればよい。
【0069】
図13は、第2実施形態に係る水素生成システム1のブロック図である。第2実施形態に係る水素生成システム1は、切り替え部40を更に備えることで、第1実施形態に係る水素生成システム1と相違する。図13に示すように、エネルギー管理システム20は、水素製造目標値h(k)と、需給調整時間帯であるDR時間帯を含む指令信号を制御部30と切り替え部40に出力する。
【0070】
切り替え部40は、DR時間帯を含む指令信号によりDR時間帯の場合には、スイッチをDR時間帯側にし、それ以外の場合に非DR時間帯側にする。これにより、DR時間帯の場合には、制御装置30は、目標受電電力r(k)に第2電力G(k)が一致するように、フィードバック制御を行う。一方で、非DR時間帯の場合には、制御装置30は、水素製造目標値h(k)に水素量H(k)が一致するように、フィードバック制御を行う。なお、水素システム10から電力系統Epsへの電力の逆潮流が禁止されている場合には、水素システム10が一定の受電電力量となるように制御してもよい。
【0071】
以上のように本実施形態によれば、非DR時間帯では水素製造量を目標値と一致させるため、より多くの再生可能エネルギー発電装置10aの第1電力P0(k)を用いて水素製造が可能となる。また、余剰量瞬時利用比率演算部304において信頼区間+1σに対応する閾値TH2を使用することで、閾値TH1を使用する場合よりも再生可能エネルギー発電装置10aの第1電力P0(k)をより多く用いて水素製造が可能となる。
【0072】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る制御装置30は、管理者設定部30dを更に備えることで第1実施形態に係る水素システムの制御装置と相違する。以下では、第1実施形態と相違する点を説明する。
【0073】
図14は、第3実施形態に係る制御装置30のブロック図である。図14に示すように、管理者設定部30dは、余剰量瞬時利用比率演算部304における閾値TH3を管理者が設定する。なお、本実施形態に係る管理者設定部30dが設定部に対応する。
【0074】
余剰量瞬時利用比率演算部304は、管理者設定部30dで設定された閾値TH3を使用して、式(13)のように利用比率ratioを演算する。ここで、P0は、第1電力P0(k)の積算電力量であり、PREPは、予測発電電力PreP(k)のディマンドレスポンス期間における積算値である。
ratio=max{0,((TH3-P0)/PREP)}
(13)式
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、利用比率ratioの閾値TH3を管理者が設定することで、管理者の経験やノウハウを考慮することが可能となる。
【0076】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る制御装置30は、再生可能エネルギー変動量予測部30eを更に備える点で第1実施形態に係る水素システムの制御装置30と相違する。以下では、第1実施形態と相違する点を説明する。
【0077】
図15は、第4実施形態に係る制御装置30のブロック図である。図15に示すように、再生可能エネルギー変動量予測部30eは、予測発電電力PreP(k)、発電量信頼区間、気温予測値T(k)、発電電力P(k)、風速の現在値V(k)を用いて、一制御区間、例えば30分毎の再生可能エネルギー発電装置10aの第1電力量P0の変動量を予測する。この変動量は、例えば10段階の離散値または連続値で示す評価値でもよいし、或いは、大・中・小などで表現してもよい。
【0078】
変動量の予測方法については、一般に知られた方法を用いる。例えば、回帰モデルを作成し変動量を予測してもよいし、決定木やk平均法などのクラスタリング手法を用いて変動量を予測してもよい。
【0079】
余剰量瞬時利用比率演算部304は、再生可能エネルギー変動量予測部30eにおいて予測された第1発電電力量PREPの変動量Xに応じて変動するTH4(X)に(10)式のTH1を変更する。この場合、利用比率ratioは例えば式(14)式で示される。ここで、P0は、第1電力P0(k)の積算電力量であり、PREPは、予測発電電力PreP(k)のディマンドレスポンス期間における積算値である。変動量Xは、例えば予測発電電力PreP(k)のディマンドレスポンス期間における積算値の確率分布のσである。
ratio=max{0,((TH4(X)-P0)/R)}
(14)式
【0080】
再生可能エネルギー発電装置10aの第1発電力P0(k)の変動量Xが大きいと予測された場合は、より小さな値を示す。例えば、閾値TH4(X)は、変動量Xの単調減少関数である。
【0081】
以上説明したように、本実施形態によれば、利用比率ratioの閾値TH4(X)を変動量Xの単調減少関数とした。これにより、受電電量の目標値Rをより達成し易くなる。また、変動量Xが小さいと予測された場合は、TH4(X)をより大きくすることで再生可能エネルギー発電装置10aの第1発電力P0(k)をより有効に利用できる。
【0082】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法及びプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法及びプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15