(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】混合粉砕片材料の分別回収システム及び分別回収方法
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20220415BHJP
B03B 5/28 20060101ALI20220415BHJP
B03B 7/00 20060101ALI20220415BHJP
B07B 4/08 20060101ALI20220415BHJP
B07C 5/342 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
B09B5/00 Z ZAB
B03B5/28 B
B03B7/00
B07B4/08 Z
B07C5/342
(21)【出願番号】P 2021191951
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2021-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507330578
【氏名又は名称】株式会社ダイトク
(74)【代理人】
【識別番号】100211719
【氏名又は名称】伊藤 和真
(72)【発明者】
【氏名】星山 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】漆原 友紀
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0232784(US,A1)
【文献】特開平10-225676(JP,A)
【文献】特開2001-096261(JP,A)
【文献】特表2017-525562(JP,A)
【文献】米国特許第05236603(US,A)
【文献】特開2002-192138(JP,A)
【文献】特開2012-011611(JP,A)
【文献】特開2002-254430(JP,A)
【文献】特開2011-089085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 5/00
B03B 5/28
B03B 7/00
B07B 4/08
B07C 5/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂片と金属片とが混合された粉砕片である混合粉砕片材料から、該合成樹脂片と該金属片とを夫々分別回収する混合粉砕片材料の分別回収システムであって、
前記混合粉砕片材料を含んだスラリーを生成するための攪拌機と、
前記スラリーに遠心力を作用させることで、前記合成樹脂片と前記金属片とを分別する遠心分離機と、
前記スラリーから分別された前記合成樹脂片を収容するホッパーと、
前記ホッパーから供給された前記合成樹脂片に照射した光の反射に基づいて、該合成樹脂片を分別する光学式選別装置と、
前記スラリーから分別された前記合成樹脂片を搬送するためのコンベアであって、前記遠心分離機と前記ホッパーとの間に設けられた第1コンベア、及び前記ホッパーと前記光学式選別装置との間に設けられた第2コンベアを含んで構成されるコンベアと、
を備え、
前記攪拌機は、前記混合粉砕片材料と水とシリコーンエマルジョンとを含んだ混合液を攪拌することで、前記スラリーを生成し、
前記第2コンベア近傍には、該第2コンベアによって搬送されている前記合成樹脂片
であって、前記シリコーンエマルジョンに含まれるシリコーンによって表面改質された前記合成樹脂片に風力を作用させる送風機が配置される、
混合粉砕片材料の分別回収システム。
【請求項2】
前記第1コンベア近傍には、該第1コンベアによって搬送されている前記合成樹脂片に温風を送るヒーターが配置される、
請求項1に記載の混合粉砕片材料の分別回収システム。
【請求項3】
合成樹脂片と金属片とが混合された粉砕片である混合粉砕片材料から、該合成樹脂片と該金属片とを夫々分別回収する混合粉砕片材料の分別回収方法であって、
前記混合粉砕片材料と水とを含んだ混合液を攪拌して、該混合粉砕片材料を含んだスラリーを生成する攪拌ステップと、
前記スラリーに遠心力を作用させることで、前記合成樹脂片と前記金属片とを分別する第1分別ステップと、
前記スラリーから分別された前記合成樹脂片を搬送する搬送ステップであって、該合成樹脂片を収容するホッパーへ搬送する第1搬送ステップと、
前記ホッパーから供給された前記合成樹脂片を搬送する第2搬送ステップと、
前記第2搬送ステップによって搬送された前記合成樹脂片に照射した光の反射に基づいて、該合成樹脂片における各合成樹脂片を分別する第2分別ステップと、
を有し、
前記攪拌ステップでは、前記混合液に対して所定の頻度でシリコーンエマルジョンを加えながら攪拌して、前記スラリーを生成し、
前記第2搬送ステップでは、搬送している前記合成樹脂片
であって、前記シリコーンエマルジョンに含まれるシリコーンによって表面改質された前記合成樹脂片に対して、送風機によって風力を作用させる、
混合粉砕片材料の分別回収方法。
【請求項4】
前記第1搬送ステップでは、搬送している前記合成樹脂片に対して、ヒーターによって温風を送る、
請求項3に記載の混合粉砕片材料の分別回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂片と金属片とが混合された混合粉砕片材料の分別回収システム及び分別回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療機器や薬品、食料品等を包装するために、合成樹脂と金属箔からなる包装容器が大量に生産・使用されている。そして、サスティナブル社会実現に向けて、使用後に集められた又は製造過程で不良品として集められたこのような包装容器をリサイクルすることが益々重要となっている。
【0003】
ここで、上記のように集められた包装容器は比較的小さく粉砕されることが多く、このような包装容器をリサイクルしようとするとき、包装容器が粉砕された粉砕片材料から、粉砕された合成樹脂片の中に混入する粉砕された金属片を取り除かなければリサイクルが困難となる。そこで、プラスチック残さから金属を除去することを可能にする技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、被覆電線を含む廃プラスチックからなる廃棄物から、再利用可能なプラスチックを生産する再利用可能プラスチック生産方法が開示されている。この技術では、粉砕された金属とプラスチックを含んだ廃棄物から、静電選別によって金属が選別除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サスティナブル社会実現およびカーボンニュートラルの実現に向けて、廃棄物を焼却することなく資源として循環させるための種々のリサイクル技術が開発されている中で、プラスチックの再資源化が注目されている。しかしながら、再資源化のために集められたプラスチックは、比較的小さく粉砕され、且つ複数種類の合成樹脂片や金属片が混合されたプラスチック混合物となっていることが多い。したがって、小さく粉砕された混合粉砕片材料の取扱いや、該混合粉砕片材料からの各資源物の分別回収が課題となる。
【0007】
ここで、特許文献1に記載の技術によれば、被覆電線等を含むプラスチック残さから金属が除去されることで、再生利用可能なプラスチックを得ることができるため、プラスチックと金属の混合物からの各資源物の分別回収が可能になるようにも思われる。しかしながら、この技術では、小さく粉砕されたプラスチック残さの取扱いについて、選別精度を向上させるために、該プラスチック残さをあらかじめ所定の粒度範囲に分級している。そうすると、プラスチック残さの粒度範囲を管理する必要が生じ、その影響で資源物の分別回収の生産性が悪化してしまう虞がある。このように、優れたリサイクル性でプラスチックと金属の混合物を分別回収する技術については、未だ改良の余地を残すものである。
【0008】
本開示の目的は、合成樹脂片と金属片とが混合された混合粉砕片材料に対するリサイクル性に優れた分別回収技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の混合粉砕片材料の分別回収システムは、合成樹脂片と金属片とが混合された粉砕片である混合粉砕片材料から、該合成樹脂片と該金属片とを夫々分別回収する混合粉砕片材料の分別回収システムである。この混合粉砕片材料の分別回収システムは、前記混合粉砕片材料を含んだスラリーを生成するための攪拌機と、前記スラリーに遠心力を作用させることで、前記合成樹脂片と前記金属片とを分別する遠心分離機と、前記スラリーから分別された前記合成樹脂片を収容するホッパーと、前記ホッパーから供給された前記合成樹脂片に照射した光の反射に基づいて、該合成樹脂片を分別する光学式選別装置と、前記スラリーから分別された前記合成樹脂片を搬送するためのコンベアであって、前記遠心分離機と前記ホッパーとの間に設けられた第1コンベア、及び前記ホッパーと前記光学式選別装置との間に設けられた第2コンベアを含んで構成されるコンベアと、を備える。そして、前記第2コンベア近傍には、該第2コンベアによって搬送されている前記合成樹脂片に風力を作用させる送風機が配置される。
【0010】
上記の混合粉砕片材料の分別回収システムは、複数種類の合成樹脂片と金属片とが混合された混合粉砕片材料から、各合成樹脂片と金属片とを夫々分別回収するシステムである。ここで、上記の複数種類の合成樹脂片とは、例えば、コンタクトレンズの個別包装容器におけるポリプロピレン(PP)製のケースが粉砕されたポリプロピレン片、および所定の合成樹脂(例えば、アクリル樹脂)によって形成されたコンタクトレンズが粉砕されたコンタクトレンズ片である。また、上記の金属片とは、例えば、上記PP製ケースの開口をシールするアルミニウム箔が粉砕されたアルミニウム片である。このような粉砕片を含んだ混合粉砕片材料から、先ず、遠心分離機によって金属片とコンタクトレンズ片が分別回収される。一方で、残りの合成樹脂片(これには、例えば、ポリプロピレン片と、アルミニウム箔が付着したポリプロピレン片と、が含まれる。)は光学式選別装置に搬送され、該光学式選別装置によってポリプロピレン片と、アルミニウム箔が付着したポリプロピレン片と、に分別回収される。ここで、混合粉砕片材料には、ポリエチレン製の包装袋に起因する軟質系のポリエチレン片が混入することがある。そして、このような軟質系のポリエチレン片を含んだ合成樹脂片が光学式選別装置に供給されると、該光学式選別装置が選別不具合を生じさせ得る。そこで、本開示の分別回収システムでは、光学式選別装置に接続された第2コンベア近傍に送風機が配置され、該第2コンベアによって搬送されている合成樹脂片に風力を作用させる。これによれば、合成樹脂片のうち、箔状の軟質ポリエチレン片のみが風力で吹き飛ばされることになり、第2コンベアによって搬送されている合成樹脂片からポリエチレン片を容易に除去することができる。その結果、光学式選別装置に上記のポリエチレン片が送り込まれてしまう事態を抑制することができ、以て、混合粉砕片材料の分別回収に対する優れたリサイクル性を実現することができる。また、このような構成によれば、第2コンベアによる搬送工程と合成樹脂片からのポリエチレン片の除去工程とが統合されることになるため、分別回収の生産性を高く維持することができる。
【0011】
ここで、本開示の混合粉砕片材料の分別回収システムでは、上記の構成において、前記攪拌機は、前記混合粉砕片材料と水とシリコーンエマルジョンとを含んだ混合液を攪拌することで、前記スラリーを生成してもよい。これによれば、混合液に泡が発生してしまう事態が抑制され、生成されたスラリーを好適にポンプで遠心分離機に送り込むことができる。更に、遠心分離された後の合成樹脂片について、シリコーンの撥水効果および該合成樹脂片に対する表面改質効果によって、光学選別するのに適した状態とすることができる。
【0012】
そして、この場合、前記第1コンベア近傍には、該第1コンベアによって搬送されている前記合成樹脂片に温風を送るヒーターが配置されてもよい。これによれば、第1コンベアによって搬送されている合成樹脂片から好適に水分を除去することができ、水分によって光学式選別装置が選別不具合を生じさせてしまう事態を抑制することができる。
【0013】
また、本開示は、混合粉砕片材料の分別回収方法の側面から捉えることができる。すなわち、本開示の混合粉砕片材料の分別回収方法は、合成樹脂片と金属片とが混合された粉砕片である混合粉砕片材料から、該合成樹脂片と該金属片とを夫々分別回収する混合粉砕片材料の分別回収方法であって、前記混合粉砕片材料と水とを含んだ混合液を攪拌して、該混合粉砕片材料を含んだスラリーを生成する攪拌ステップと、前記スラリーに遠心力を作用させることで、前記合成樹脂片と前記金属片とを分別する第1分別ステップと、前記スラリーから分別された前記合成樹脂片を搬送する搬送ステップであって、該合成樹脂片を収容するホッパーへ搬送する第1搬送ステップと、前記ホッパーから供給された前記合成樹脂片を搬送する第2搬送ステップと、前記第2搬送ステップによって搬送された前記合成樹脂片に照射した光の反射に基づいて、該合成樹脂片を分別する第2分別ステップと、を有する。そして、前記第2搬送ステップでは、搬送している前記合成樹脂片に対して、送風機によって風力を作用させる。
【0014】
ここで、前記攪拌ステップでは、前記混合液に対して所定の頻度でシリコーンエマルジョンを加えながら攪拌して、前記スラリーを生成してもよい。
【0015】
そして、この場合、前記第1搬送ステップでは、搬送している前記合成樹脂片に対して、ヒーターによって温風を送ってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、合成樹脂片と金属片とが混合された混合粉砕片材料に対するリサイクル性に優れた分別回収技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態における混合粉砕片材料の分別回収システムの概略構成を示す第1の図である。
【
図2】第2コンベアによって搬送されている合成樹脂片から軟質系のポリエチレン片を除去する工程を説明するための図である。
【
図3】シリコーンエマルジョンが加えられない場合のポリエチレン片を含んだ合成樹脂片と、シリコーンエマルジョンが加えられる場合のポリエチレン片を含んだ合成樹脂片と、の比較を模式的に表す図である。
【
図4】第1実施形態における混合粉砕片材料の分別回収システムの概略構成を示す第2の図である。
【
図5】第1実施形態の変形例における混合粉砕片材料の分別回収方法の処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0019】
<第1実施形態>
第1実施形態における混合粉砕片材料の分別回収システムの概要について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態における混合粉砕片材料の分別回収システムの概略構成を示す第1の図である。本実施形態に係る分別回収システム1は、複数種類の合成樹脂片と金属片とが混合された粉砕片である混合粉砕片材料から、各合成樹脂片と金属片とを夫々分別回収するシステムである。なお、本実施形態では、上記の混合粉砕片材料が、個別包装されたコンタクトレンズの製造過程で発生した不良品である場合を例にして、以下に説明する。
【0020】
ここで、コンタクトレンズの個別包装容器は、合成樹脂であるポリプロピレン(PP)製のケースと、このPP製ケースの開口をシールする金属箔であるアルミニウム箔と、によって構成される。また、コンタクトレンズは、所定の合成樹脂(例えば、アクリル樹脂)によって形成される。そして、製造過程で不良品として集められた、このようなコンタクトレンズやその個別包装容器は、比較的小さく粉砕される。したがって、本実施形態において分別回収される混合粉砕片材料2とは、複数種類の合成樹脂片(ポリプロピレン片およびコンタクトレンズ片)と、アルミニウム片と、アルミニウム箔が付着したポリプロピレン片と、が混合された粉砕片であって、分別回収システム1は、この混合粉砕片材料2から、アルミニウム片と、コンタクトレンズ片と、ポリプロピレン片と、アルミニウム箔が付着したポリプロピレン片と、を夫々分別回収する。
【0021】
そして、
図1に示すように、本実施形態に係る分別回収システム1は、混合粉砕片材料2を含んだスラリー3を生成する攪拌機10と、このスラリー3に遠心力を作用させ合成樹脂片4とアルミニウム片とを分別する遠心分離機20と、スラリー3から分別された合成樹脂片4を搬送するコンベア30と、スラリー3から分別された合成樹脂片4を収容するホッパー40と、ホッパー40から供給された合成樹脂片4を分別する光学式選別装置50と、備える。
【0022】
ここで、分別回収システム1を構成する各構成要素について、以下に詳しく説明する。
【0023】
攪拌機10は、混合粉砕片材料2と水とを含んだ混合液を攪拌して、該混合粉砕片材料2を含んだスラリー3を生成する。ここで、攪拌機10は、攪拌槽と攪拌スクリューとを有して構成され、該攪拌槽には、材料供給コンベアによって搬送される混合粉砕片材料2と、水供給配管によって供給される水と、が投入される。そして、これらの混合液が攪拌スクリューによって攪拌されることで、スラリー3が生成される。
【0024】
遠心分離機20は、スラリー3に遠心力を作用させて比重選別するハイドロサイクロンであって、スラリー3に含まれる合成樹脂片4とアルミニウム片とコンタクトレンズ片との比重差を利用して、スラリー3から合成樹脂片4とアルミニウム片とコンタクトレンズ片とを分別する。
図1に示すように、遠心分離機20の下方には回収容器22が配置されていて、合成樹脂片4よりも重比重のアルミニウム片が遠心分離機20の底部から分別回収される。なお、遠心分離機20と回収容器22との間には洗浄脱水機21が設けられていて、該洗浄脱水機21によって、スラリー3から分別されたアルミニウム片が洗浄・脱水される。
【0025】
また、合成樹脂片4よりも重比重のコンタクトレンズ片(アクリル樹脂片)も、遠心分離機20の底部から分別回収される。ここで、このコンタクトレンズ片(アクリル樹脂片)は、上記の洗浄脱水機21の手前で所定のフルイ機によって分別回収される。そして、分別回収されたコンタクトレンズ片は、例えば、サーマルリサイクル処理によって熱エネルギーとしてリサイクルされる。また、上記のようにして分別回収されたアルミニウム片は、例えば、アルミニウムとアルカリ溶液とを反応させて水素を発生させる水素発生装置に投入され、発生した水素を利用して発電が行われることでリサイクルされる。
【0026】
また、アルミニウム片およびコンタクトレンズ片(アクリル樹脂片)よりも軽比重の合成樹脂片4も遠心分離機20によって分別され、コンベア30に送られる。ここで、遠心分離機20によって分別される合成樹脂片4には、ポリプロピレン片と、アルミニウム箔が付着したポリプロピレン片と、が含まれる。そして、遠心分離機20とコンベア30との間にも洗浄脱水機21が設けられていて、該洗浄脱水機21によって、スラリー3から分別された合成樹脂片4が洗浄・脱水される。
【0027】
コンベア30は、遠心分離機20とホッパー40との間に設けられた第1コンベア31、及びホッパー40と光学式選別装置50との間に設けられた第2コンベア32を含んで構成される。なお、コンベア30は、スクリューコンベアなどの粉体を搬送可能な周知の構成である。
【0028】
ホッパー40は、第1コンベア31に接続され、スラリー3から分別され該第1コンベア31によって搬送された合成樹脂片4を収容する。そして、ホッパー40は、更に第2コンベア32に接続されていて、収容した合成樹脂片4を該第2コンベア32に供給する。
【0029】
ここで、後述するように、光学式選別装置50は、照射した光の反射に基づいて材料を仕分けるソーター部に該材料が付着して異常停止してしまうことがある。そして、分別回収システム1によって混合粉砕片材料2の分別回収を行っているときに、仮に、光学式選別装置50が停止してしまうと、分別回収システム1全体を停止せざるを得ない事態が生じ得る。これに対して、遠心分離機20から第1コンベア31に送られた合成樹脂片4が一旦ホッパー40に収容される構成によれば、仮に、光学式選別装置50が停止してしまったとしても、遠心分離機20を作動させ続けることができ、分別回収システム1全体を停止させる必要がない。そのため、混合粉砕片材料2を分別回収リサイクルするときの分別回収効率を維持することができる。
【0030】
光学式選別装置50は、照射した光の反射に基づいて材料を仕分けるソーター部を有する。詳しくは、光学式選別装置50は、ホッパー40から供給された合成樹脂片4に照射した光の反射に基づいて、合成樹脂片4における、ポリプロピレン片と、アルミニウム箔が付着したポリプロピレン片と、を色別する。そして、色別されたアルミニウム箔が付着したポリプロピレン片をエアジェットで吹き飛ばすことで、ホッパー40から供給された合成樹脂片4について、ポリプロピレン片と、アルミニウム箔が付着したポリプロピレン片と、に分別する。
【0031】
そして、このようにして分別回収されたポリプロピレン片は、例えば、任意の形状に成型されてプラスチックペレットとしてリサイクルされる。
【0032】
なお、好ましくは、光学式選別装置50は2台配置されてもよい。これによれば、合成樹脂片4からのポリプロピレン片の回収率を向上させることができる。
【0033】
ここで、混合粉砕片材料2には、ポリエチレン製の包装袋に起因する軟質系のポリエチレン片が混入することがある。そして、このような軟質系のポリエチレン片を含んだ合成樹脂片4が光学式選別装置50に供給されると、エアジェットの影響で該光学式選別装置50内の空気中で該ポリエチレン片が舞ってしまい、エアジェットによる選別に異常が生じたり、ソーター部に該ポリエチレン片が付着して光学式選別装置50が異常停止してしまう虞がある。
【0034】
そこで、本開示の分別回収システム1では、
図1に示すように、第2コンベア32の近傍に、該第2コンベア32によって搬送されている合成樹脂片4に風力を作用させる送風機60が配置される。なお、送風機60は、羽根車61の回転運動によって風を送る装置であって、周知のファン等を用いることができる。
【0035】
そして、このように合成樹脂片4に風力が作用することによれば、光学式選別装置50に上記のポリエチレン片が送り込まれてしまう事態を抑制することができる。これについて、
図2に基づいて説明する。
【0036】
図2は、第2コンベア32によって搬送されている合成樹脂片4から軟質系のポリエチレン片を除去する工程を説明するための図である。
図2に示すように、ポリエチレン製の包装袋に起因する軟質系のポリエチレン片(PE片)は、箔状となっている。そこで、本開示の分別回収システム1では、第2コンベア32によって搬送されている合成樹脂片4に送風機60からの風力を作用させる。そうすると、合成樹脂片4のうち、粒状のポリプロピレン片(アルミニウム箔が付着したポリプロピレン片を含む)は大きく吹き飛ばされることなく、箔状の軟質ポリエチレン片のみが風力で吹き飛ばされることになる。これにより、第2コンベア32によって搬送されている合成樹脂片4から軟質系のポリエチレン片(PE片)を容易に除去することができる。なお、上述したように、第2コンベア32によって搬送中の合成樹脂片4に送風機60からの風力を作用させるという構成によれば、第2コンベア32による搬送工程と合成樹脂片4からのポリエチレン片の除去工程とが統合されることになるため、分別回収の生産性を高く維持することができる。また、合成樹脂片4に作用する送風機60からの風力の強さは、箔状の軟質ポリエチレン片のみが吹き飛ばされるように、粒状のポリプロピレン片の大きさに基づいて適宜調整され得る。
【0037】
そして、このように合成樹脂片4に風力が作用することによりポリエチレン片が除去されると、光学式選別装置50にポリエチレン片が送り込まれてしまう事態を抑制することができる。これにより、光学式選別装置50においてエアジェットによる選別に異常が生じてしまう事態や、ソーター部にポリエチレン片が付着して光学式選別装置50が異常停止してしまう事態を抑制することができ、以て、混合粉砕片材料2の分別回収に対する優れたリサイクル性を実現することができる。
【0038】
そして、以上に述べた分別回収システム1によれば、合成樹脂片と金属片とが混合された混合粉砕片材料に対するリサイクル性に優れた分別回収技術を提供することができる。
【0039】
また、本開示人は、混合粉砕片材料2にコンタクトレンズ片を含むことで生じ得る攪拌工程での課題を、シリコーンエマルジョンを加えながら攪拌することで解決できることを新たに見出した。
【0040】
ここで、攪拌工程においては、上述したように、攪拌機10によって混合粉砕片材料2と水とを含んだ混合液が攪拌され、該混合粉砕片材料2を含んだスラリー3が生成される。このとき、コンタクトレンズ片を含んだ混合粉砕片材料2と水との混合液では、該混合液に泡が発生してしまい、その泡の影響で、生成されたスラリー3をポンプで遠心分離機20に送り込めない事態が生じ得る課題が新たに見出された。
【0041】
そこで、本実施形態では、攪拌機10は、混合粉砕片材料2と水とシリコーンエマルジョンとを含んだ混合液を攪拌して、該混合粉砕片材料2を含んだスラリー3を生成してもよい。この場合、混合粉砕片材料2と水とを含んだ混合液に対して所定の頻度でシリコーンエマルジョンが加えられることで、混合粉砕片材料2と水とシリコーンエマルジョンとを含んだ混合液が撹拌されてスラリー3が生成される。これにより、混合液に泡が発生してしまう事態が抑制され、生成されたスラリー3を好適にポンプで遠心分離機20に送り込むことができる。
【0042】
なお、上記のシリコーンエマルジョンは、シリコーンオイルコンパウンドを乳化した、有効成分15%のエマルジョン型シリコーンであって、希釈分散性に優れていることから、コンタクトレンズ片を含んだ混合粉砕片材料2と水との親和性が高い。そして、本実施形態では、このようなシリコーンエマルジョンが、1時間毎に原液のまま攪拌槽に投入され、1日当たり500ccのシリコーンエマルジョンが攪拌槽に投入される。
【0043】
更に、攪拌機10が混合粉砕片材料2と水とシリコーンエマルジョンとを含んだ混合液を攪拌してスラリー3を生成することによれば、光学式選別装置50において、ソーター部に合成樹脂片4が付着して該光学式選別装置50が異常停止してしまう事態を抑制することができる。
【0044】
ここで、遠心分離機20によってスラリー3から分別された合成樹脂片4は、コンベア30によって搬送される前に洗浄脱水機21で洗浄・脱水されるが、該合成樹脂片4には水分が残ってしまうことがある。そうすると、この水分によって、光学式選別装置50においてソーター部に合成樹脂片4が付着してしまう事態が生じ得る。これに対して、シリコーンエマルジョンを含んだ混合液を攪拌してスラリー3が生成されることによれば、シリコーンの撥水効果によって、洗浄脱水機21による洗浄・脱水で好適に水分が除去される。また、仮に、光学式選別装置50に送り込まれる合成樹脂片4に水分が残っていたとしても、シリコーンによる該合成樹脂片4に対する表面改質効果によって、ソーター部に合成樹脂片4が付着してしまう事態を抑制することができる。これにより、混合粉砕片材料2から資源物を好適に分別回収することが可能になる。
【0045】
更に、このような構成では、送風機60からの風力によって、第2コンベア32によって搬送されている合成樹脂片4から軟質系のポリエチレン片を好適に除去することが可能になる。これについて、
図3に基づいて説明する。
【0046】
図3は、シリコーンエマルジョンが加えられない場合のポリエチレン片を含んだ合成樹脂片4と、シリコーンエマルジョンが加えられる場合のポリエチレン片を含んだ合成樹脂片4と、の比較を模式的に表す図である。ここで、
図3(a)は、シリコーンエマルジョンが加えられない場合のポリエチレン片を含んだ合成樹脂片4を表していて、この場合、合成樹脂片4に残った水分の影響で合成樹脂片同士が重なり合ってしまい、更にそこにポリエチレン片が付着してしまう傾向にある。一方、
図3(b)は、シリコーンエマルジョンが加えられる場合のポリエチレン片を含んだ合成樹脂片4を表していて、この場合、シリコーンの撥水効果および合成樹脂片4に対する表面改質効果によって、合成樹脂片同士が付着せず更にそこにポリエチレン片が付着してしまうこともない。
【0047】
これによれば、合成樹脂片同士の重なりや、ポリエチレン片の合成樹脂片への付着によって、送風機60からの風力によるポリエチレン片の除去が妨げられる虞が少ない。そのため、第2コンベア32によって搬送されている合成樹脂片4から軟質系のポリエチレン片(PE片)を更に容易に除去することができ、以て、混合粉砕片材料2の分別回収に対する優れたリサイクル性を実現することができる。
【0048】
そして、このような分別回収システム1では、第1コンベア31近傍に、該第1コンベア31によって搬送されている合成樹脂片4に温風を送るヒーター70が配置されてもよい。ここで、
図4は、本実施形態における混合粉砕片材料の分別回収システムの概略構成を示す第2の図である。
【0049】
図4に示すように、ヒーター70が配置されると、第1コンベア31によって搬送されている合成樹脂片4がヒーター70からの温風によって乾燥されることになる。そうすると、第1コンベア31によって搬送されている合成樹脂片4から好適に水分を除去することができ、水分によって光学式選別装置50のソーター部に合成樹脂片4が付着してしまう事態を抑制することができる。
【0050】
以上に述べた分別回収システム1によれば、合成樹脂片と金属片とが混合された混合粉砕片材料に対するリサイクル性に優れた分別回収技術を提供することができる。
【0051】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態の変形例について、
図5に基づいて説明する。本変形例は、複数種類の合成樹脂片と金属片とが混合された粉砕片である混合粉砕片材料から、各合成樹脂片と金属片とを夫々分別回収する混合粉砕片材料の分別回収方法である。
【0052】
そして、
図5は、本変形例における混合粉砕片材料の分別回収方法の処理フローを示すフローチャートである。
【0053】
本フローでは、先ず、S101において、攪拌ステップが実行される。S101の処理では、混合粉砕片材料と水とを含んだ混合液を攪拌して、該混合粉砕片材料を含んだスラリーを生成する。なお、この攪拌ステップの詳細は、上記の第1実施形態の説明で述べたとおりである。また、この攪拌ステップでは、上記の混合液に対して所定の頻度でシリコーンエマルジョンを加えながら攪拌して、スラリーを生成してもよい。
【0054】
次に、S102において、第1分別ステップが実行される。S102の処理では、スラリーに遠心力を作用させることで、合成樹脂片と金属片とを分別する。なお、この第1分別ステップの詳細は、上記の第1実施形態の説明で述べたとおりである。
【0055】
次に、S103において、第1搬送ステップが実行される。S103の処理では、スラリーから分別された合成樹脂片をホッパーへ搬送する。なお、この第1搬送ステップの詳細は、上記の第1実施形態の説明で述べたとおりである。また、この第1搬送ステップでは、搬送している合成樹脂片に対して、ヒーターによって温風を送ってもよい。
【0056】
次に、S104において、第2搬送ステップが実行される。S104の処理では、ホッパーから供給された合成樹脂片を搬送する。そして、この第2搬送ステップでは、搬送している合成樹脂片に対して、送風機によって風力を作用させる。なお、この第2搬送ステップの詳細は、上記の第1実施形態の説明で述べたとおりである。
【0057】
次に、S105において、第2分別ステップが実行される。S105の処理では、第2搬送ステップによって搬送された合成樹脂片に照射した光の反射に基づいて、該合成樹脂片を分別する。なお、この第2分別ステップの詳細は、上記の第1実施形態の説明で述べたとおりである。そして、S105の処理の後、本フローの実行が終了され、混合粉砕片材料から合成樹脂片と金属片とが分別回収されることになる。
【0058】
そして、以上に述べた混合粉砕片材料の分別回収方法によっても、合成樹脂片と金属片とが混合された混合粉砕片材料に対するリサイクル性に優れた分別回収技術を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・・・分別回収システム
2・・・・・混合粉砕片材料
10・・・・攪拌機
20・・・・遠心分離機
30・・・・コンベア
31・・・・第1コンベア
32・・・・第2コンベア
40・・・・ホッパー
50・・・・光学式選別装置
60・・・・送風機
【要約】
【課題】合成樹脂片と金属片とが混合された混合粉砕片材料に対するリサイクル性に優れた分別回収技術を提供する。
【解決手段】本開示の混合粉砕片材料の分別回収システム1は、混合粉砕片材料2を含んだスラリー3を生成するための攪拌機10と、スラリー3に遠心力を作用させることで合成樹脂片4と金属片とを分別する遠心分離機20と、スラリー3から分別された合成樹脂片4を収容するホッパー40と、ホッパー40から供給された合成樹脂片4に照射した光の反射に基づいて各合成樹脂片を分別する光学式選別装置50と、合成樹脂片4を搬送するためのコンベア30と、を備える。そして、コンベア30が有する第2コンベア32近傍には、該第2コンベア32によって搬送されている合成樹脂片4に風力を作用させる送風機60が配置される。
【選択図】
図1