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特許7058747ルートネットワーク上における複数の車両の移動をスケジューリング又は制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-14
(45)【発行日】2022-04-22
(54)【発明の名称】ルートネットワーク上における複数の車両の移動をスケジューリング又は制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/00 20220101AFI20220415BHJP
   G06Q 50/30 20120101ALI20220415BHJP
【FI】
B61L27/00 H
G06Q50/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020545595
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 DE2019100259
(87)【国際公開番号】W WO2019179576
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】102018204509.7
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520326301
【氏名又は名称】ドイチェ バーン アーゲー
【氏名又は名称原語表記】DEUTSCHE BAHN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル キンドラー
(72)【発明者】
【氏名】カール シェプフ
(72)【発明者】
【氏名】カイ ゴットハルト
(72)【発明者】
【氏名】モリッツ ヴォン ボニン
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル クペルベルグ
(72)【発明者】
【氏名】セルジュ-マテイ ブルシュ
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515728(JP,A)
【文献】特開2001-151114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 27/00
G06Q 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルート要素によって形成されたノード及びエッジを備えるルートネットワーク上における複数の車両の移動をスケジューリング又は制御するための方法であって、
分散型台帳システム内でエンティティとして表される各車両が、前記分散型台帳システム内でやはりエンティティとして表される前記ルート要素との取引契約を締結し、ルート要素と車両との間の各取引契約は、前記ルート要素が前記車両によって占有される期間を規定する少なくとも1つの時間指定を含み、前記ルート要素が、前記車両の走行に必要な経路に属していることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載のルートネットワーク上における複数の車両の移動をスケジューリング又は制御するための方法であって、ルート要素と車両との間の各取引契約が、前記車両による前記ルート要素の占有に対して支払うべき料金を指定する更なる取引基準を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のルートネットワーク上における複数の車両の移動をスケジューリング又は制御するための方法であって、前記分散型台帳システムが、ブロックチェーンとして構成されていることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のルートネットワーク上における複数の車両の移動をスケジューリング又は制御するための方法であって、該方法が、規定の期間中に第1車両によって占有されるルート要素の交換又は解放に関して、前記第1車両と第2車両との間で少なくとも1つの取引契約を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載のルートネットワーク上における複数の車両の移動をスケジューリング又は制御するための方法であって、規定の期間中に第1車両によって占有されるルート要素の交換又は解放に関する前記第1車両と第2車両との間の前記取引契約が、前記ルート要素の交換又は解放のために前記第2車両が支払うべき料金を指定する更なる取引基準を包含することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルート要素によって形成されたノード及びエッジを備えるルートネットワーク上における複数の車両の移動をスケジューリング又は制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最新技術によれば、鉄道輸送システムの安全性は、厳密に規制された中央システムに基づいており、その中央システムにおいては、線路の全要素、例えば、分岐器(ポイント)、線路部分、信号機が、信号扱所としての中央機関によって制御されると共に、個々の列車走行に割り当てられる。例えば、列車走行をさせるための許可は、第1ステップにて、列車走行に必要な全フィールド要素の利用可能性が信号扱所によって確認され、次いで第2ステップにて、これらフィールド要素が列車走行に関して確実に割り当てられると共に確保された場合にのみ、信号扱所から各車両に伝達される。自動化に関するこれまでのアプローチは、一方では、信号扱所が制御する各領域を拡大することにより、信号扱所の数及び信号扱所の操作をするのに必要な従業員の数を減らすことに向けられてきた。他方では、固定信号機による信号通知は、車両の運転室内における信号通知に置き換えられつつあり、これにより固定インフラ(信号機及びそのケーブル接続)をなくすことで更なる節約が可能である。しかしながら、そのようなシステムは、外部からシステム内への障害、又はシステム自体の内部不具合によって発生する障害に対して極めて脆弱である。例えば、列車から落下した氷の塊で塞がれた分岐器トングなどの比較的軽微な原因であっても、障害が続いている間、ポイントのセットで処理されるべき全ての列車走行が妨害される可能性があり、該当地域を担当する信号扱所における中央機関の従業員による手動介入に起因して再スケジューリングが必要になる。コンフリクトを自動的に検出すると共に、ルートコンフリクトを回避するためのソフトウェア支援されたアルゴリズムを使用することにより、再スケジューリングプロセスを自動化及び高速化する多数のアプローチが存在するが、妨害による運行プロセスの遅延を完全に排除することは不可能である。信号扱所とフィールド要素との間の通信リンクの中断、更には信号扱所自体の完全な故障が生じれば、より大きな影響が及ぶ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の課題は、ルート要素によって形成されたノード及びエッジを備えるルートネットワーク上における複数の車両の移動をスケジューリング又は制御するための方法を提供することである。本発明の方法により、ネットワーク内に維持すべき技術的インフラストラクチャ及びその利用可能性が簡素化され、従って技術的障害に対するネットワークの耐性も高まる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、本発明によれば、請求項1の前文との組み合わせで、分散型台帳システム内でエンティティとして表される各車両が、分散型台帳システム内でやはりエンティティとして表されるルート要素との取引契約を締結し、ルート要素と各車両との間の取引契約は、ルート要素が車両によって占有される期間を規定する少なくとも1つの時間指定を含むことにより解決される。これにより、分散型台帳システムの全参加者は、全てのルート要素における現在の状態を明瞭に把握可能であり、参加者が現在の状態を後発的に操作したり変更したりすることは不可能である。分散型台帳システム自体は、最新技術から知られている。本発明に係る方法の核心的思想は、ルートネットワーク内の各車両によって予測かつ予計画された移動ルートに沿った個々のルート要素との直接接触において、各車両が予測時点の移動許可に関して交渉をすることである。そのような取引契約の締結にとって重要な基準は、他の車両による競合契約又は障害による妨害が存在しない、各ルート要素である。このようにして可能になる車両とルート要素との間における仲介者としての中央機関の排除により、スケジューリング又は制御方法の利用可能性が大幅に向上する。これにより、動的スケジューリング、並びに計画されたルートを実現するのにルート要素を必要とする車両へのそれらルート要素の割り当てに関して、大幅な簡素化が可能になる。
【0005】
本発明に係るそのようなスケジューリング又は制御方法の対象になり得るのは、鉄道交通システムのみならず、使用規制された道路などの他の交通システムも対象になり得る。更に、駐車場などの使用規制された車両用駐車スペースのみならず、車両用ゲートの停止所、公共交通機関の停止所、並びに貨物輸送における荷積み・荷卸し所も、本発明に係るそのようなスケジューリング及び制御方法の対象になり得る。従って、本発明に係るスケジューリング及び制御方法により、滑走路とチェックインゲートとの間のエプロン上における航空機の移動のみならず、ハイベイ倉庫における異なるステーション間でのフォークリフトの移動もスケジューリング及び制御することができる。更に、所定の飛行経路上における航空機の移動も、飛行経路が空間要素に分割可能であることを条件に、本発明に係るそのようなスケジューリング及び制御方法の対象になり得る。この場合、航空機により、飛行経路上の計画的な飛行移動が予め(即ち、使用開始前に)記帳され、その飛行経路は、分散型台帳システム内でエンティティとして規定の時点で表される複数の空間要素で構成されている。これにより、ドローンなどの無人航空機に関しても、飛行経路の拘束的かつコリジョンフリーな占有又は記帳が可能である。本発明に係るスケジューリング及び制御方法により、国境を超えた空域における交通制御の標準化に寄与することができる。本発明の文脈において、「車両」とは、陸上、水中、又は空中を移動するか否かにかかわらず、任意の種類の交通手段又は輸送手段と見なされる。
【0006】
本発明における基本概念の特に有用な更なる発展によれば、ルート要素と車両との間の各取引契約は、車両によるルート要素の占有に対して支払うべき料金を指定する更なる取引基準を含む。これにより、ルート要素の走行権又は使用権について、他の取引条件に応じて価格を設定することができる。その適用例としては、例えば、ルート側における性能などの質的基準に応じて、同じルート要素の使用に対して異なる料金を規定することが想定可能である。従って、例えば、ルート要素が公称速度よりも遅い速度でしか使用できない場合、又はルート要素の占有に関する需要が規定の時点で非常に低い場合には、より小さな料金を設定することができる。本発明の重要な側面は更に、異なる車両による競合要求が金銭的な取引基準に基づいて決定され得ることである。従って、例えば、使用規制された道路システムにおいて、重量物交通及び低速道路利用者が不在の高速車線の使用は、より低速車線の使用に比べて高価格とすることができる。同じルート要素に対する異なる車両による競合的な使用要求は、エンティティとして表される2つ以上の車両間における使用の時間的順序に関する取引契約を締結することで調整可能である。
【0007】
本発明の一変形においては、分散型台帳システムがブロックチェーンとして構成されていることが想定される。
【0008】
本発明においては更に、本発明に係る方法が、規定の期間中に第1車両によって占有されるルート要素の交換又は解放に関して、第1車両と第2車両との間で少なくとも1つの取引契約を含むことが想定される。これは、本発明に係る方法によって車両がルート要素を一旦占有すると、それら車両は、同じ分散型台帳システム内で表されるエンティティとして取引契約を互いに締結すること、即ち分散型台帳システム内で表される他のエンティティとの間で取引契約を締結することを意味する。このように、本発明に係るスケジューリング及び制御方法に基づいて、使用のために解放されたルート要素の後発的な交換又は取引も、仲介者の介入なしに、車両間で直接的に実施可能である。
【0009】
従って、規定の期間中に第1車両によって占有されるルート要素の交換又は解放に関する第1車両と第2車両との間の取引契約は、ルート要素の交換又は解放のために第2車両が支払うべき料金を指定する更なる取引基準を包含する。
【0010】
以下、本発明を例示的な実施形態に基づいて詳述する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
鉄道ルートのルート要素(即ち、線路、分岐器、信号機など、車両の移動に必要なインフラストラクチャ要素)、並びにそれらの現在の状態は、ブロックチェーン内に表されている。状態に関しては、主に、取引契約により、現在又は将来の一定期間にわたってルート要素が他の車両に占有されているか否かが記録される。本発明に係る方法において、障害条件は、独立したエンティティによる恒久的な占有によって利用可能とすることができる。従って、ブロックチェーンは、現在の状態だけでなく、以前の取引から生じる過去の占有状態、並びに将来の占有状態に影響を及ぼす取引も含む。
【0012】
鉄道車両は、秘密鍵及び公開鍵を含む鍵ペアにより、ブロックチェーン内で表されている。鉄道車両の取引要求は、これら鍵で署名される。秘密鍵により、各取引要求を、ある鉄道車両に一意的に割り当てることが可能である。
【0013】
本発明に係る方法の実施に含まれる計算労力を低減するため、ブロックチェーンへのアクセスは、既知の「権限の証明」法に従って制限されている。
【0014】
列車走行に必要な少なくとも1個のルート要素の占有を含む経路の予約をするために、鉄道車両は、複数の取引パラメータ(例えば、出発地、最も早い出発時間、目的地、最も遅い到着時間)を含む取引要求を分散型台帳システムに送信し、その分散台帳システムは、想定され得る移動ルートに関する保存済み取引を検索し、想定され得る全てのバリアントを鉄道車両に返信する。鉄道車両に返信される取引パラメータには、付加的な取引基準として、様々なルート要素を使用する価格が含まれていてもよい。
【0015】
鉄道車両の制御コンピュータに実装されたアルゴリズムにより、複数のルート選択肢の中から選択が行われ、移動が開始する。ただし、本発明に係る方法においては、車両の移動を開始するための前提条件として、人間のオペレータによる付加的な手動確認も勿論想定可能である。ルート要素の割り当てにおけるコンフリクトの不在は、分散型台帳システム内における取引契約の一貫性によって保証されるが、鉄道ルートのルート要素を介して生じる各移動(例えば、接近し過ぎたり交差したりする列車走行の移動)に関する付加的な安全性が、鉄道ルートの従来の安全システム(例えば固定信号機)で実現可能である。