(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-15
(45)【発行日】2022-04-25
(54)【発明の名称】過電流保護回路
(51)【国際特許分類】
H02H 3/08 20060101AFI20220418BHJP
H02H 3/087 20060101ALI20220418BHJP
H03K 17/08 20060101ALI20220418BHJP
H03K 17/082 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
H02H3/08 N
H02H3/087
H03K17/08 C
H03K17/082
(21)【出願番号】P 2018099883
(22)【出願日】2018-05-24
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宅間 徹
(72)【発明者】
【氏名】今村 夢我
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/187785(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0123541(US,A1)
【文献】特開平10-164825(JP,A)
【文献】特開2011-166872(JP,A)
【文献】特開2004-32641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/08
H02H 3/087
H03K 17/08
H03K 17/082
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1監視対象電流と対比する第1過電流検出閾値を第1設定値とするか前記第1設定値よりも低い第2設定値とするかを切り替えるための第1閾値制御信号と、第2監視対象電流と対比する第2過電流検出閾値を第3設定値とするか前記第3設定値よりも低い第4設定値とするかを切り替えるための第2閾値制御信号を生成する閾値制御部を有し、
前記閾値制御部は、
キャパシタの充電電圧と所定の第1基準電圧とを比較して第1内部信号を生成する第1コンパレータと、
前記充電電圧と前記第1基準電圧よりも低い第2基準電圧とを比較して第2内部信号を生成する第2コンパレータと、
前記第2内部信号に応じて前記第1監視対象電流が前記第2設定値に達したか否かを示す第1比較信号をラッチすることにより第1ラッチ信号を生成する第1ラッチと、
前記第2内部信号に応じて前記第2監視対象電流が前記第4設定値に達したか否かを示す第2比較信号をラッチすることにより第2ラッチ信号を生成する第2ラッチと、
前記第1内部信号と前記第1ラッチ信号に応じて前記第1閾値制御信号を生成する第1フリップフロップと、
前記第1内部信号と前記第2ラッチ信号に応じて前記第2閾値制御信号を生成する第2フリップフロップと、
前記第1ラッチ信号及び前記第2ラッチ信号と前記第1閾値制御信号及び前記第2閾値制御信号に応じて前記キャパシタの放電制御を行う放電制御部と、
前記第1比較信号と前記第2比較信号の双方に応じて前記キャパシタの充電制御を行う充電制御部と、
を含むことを特徴とする過電流保護回路。
【請求項2】
前記放電制御部は、前記第1比較信号及び前記第2比較信号の一方に論理レベル変化が生じて前記キャパシタの充電が開始された後、前記充電電圧が前記第2基準電圧よりも高く前記第1基準電圧よりも低いときに、前記第1比較信号及び前記第2比較信号の他方に論理レベル変化が生じた場合、その時点で前記キャパシタの放電を開始するのではなく、前記充電電圧が前記第1基準電圧を上回った時点で前記キャパシタの放電を開始し、その後、前記充電電圧が前記第2基準電圧を下回った時点で前記キャパシタの放電を停止することを特徴とする請求項1に記載の過電流保護回路。
【請求項3】
前記閾値制御部は、所定の基準電圧を分圧して前記第1基準電圧及び前記第2基準電圧を生成する抵抗ラダーをさらに含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の過電流保護回路
【請求項4】
前記閾値制御部は、前記キャパシタを外付けするための外部端子をさらに含むことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の過電流保護回路。
【請求項5】
前記第1設定値と前記第3設定値はいずれも固定値であり、前記第2設定値と前記第4設定値はいずれも可変値であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の過電流保護回路。
【請求項6】
前記第1閾値制御信号に応じて前記第1過電流検出閾値を前記第1設定値とするか前記第2設定値とするかを切り替える第1閾値生成部と、
前記第2閾値制御信号に応じて前記第2過電流検出閾値を前記第3設定値とするか前記第4設定値とするかを切り替える第2閾値生成部と、
前記第1監視対象電流に応じた第1センス信号と前記第1過電流検出閾値とを比較して第1過電流保護信号を生成する第1過電流検出部と、
前記第2監視対象電流に応じた第2センス信号と前記第2過電流検出閾値とを比較して第2過電流保護信号を生成する第2過電流検出部と、
前記第2設定値に応じた第1参照値と前記第1センス信号とを比較して前記第1比較信号を生成する第1比較部と、
前記第4設定値に応じた第2参照値と前記第2センス信号とを比較して前記第2比較信号を生成する第2比較部と、
をさらに有することを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の過電流保護回路。
【請求項7】
前記第1監視対象電流をオン/オフする第1スイッチと、
前記第2監視対象電流をオン/オフする第2スイッチと、
前記第1センス信号を生成する第1電流監視部と、
前記第2センス信号を生成する第2電流監視部と、
第1制御信号に応じて前記第1スイッチの第1駆動信号を生成する第1制御部と、
第2制御信号に応じて前記第2スイッチの第2駆動信号を生成する第2制御部と、
前記第1センス信号と前記第2センス信号を監視して前記第1過電流保護信号と前記第2過電流保護信号を生成する請求項6に記載の過電流保護回路と、
を集積化して成り、
前記第1制御部と前記第2制御部は、それぞれ、前記第1過電流保護信号及び前記第2過電流保護信号に応じて前記第1監視対象電流及び前記第2監視対象電流を制限するように前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を制御する機能を備えていることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体集積回路装置と、
前記第1スイッチに接続される第1負荷と、
前記第2スイッチに接続される第2負荷と、
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項9】
前記第1負荷及び前記第2負荷は、バルブランプ、リレーコイル、ソレノイド、発光ダイオード、または、モータであることを特徴とする請求項8に記載の電子機器。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の電子機器を有することを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、過電流保護回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路装置の多くは、その異常保護回路の一つとして過電流保護回路を備えている。例えば、車載IPD[intelligent power device]には、パワートランジスタに接続される負荷がショートした場合でもデバイスが破壊してしまわないように、パワートランジスタに流れる出力電流を過電流検出閾値以下に制限する過電流保護回路が設けられている。また、近年では、外付け抵抗を用いて過電流検出閾値を任意に調整することのできる過電流保護回路も提案されている。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1や特許文献2を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-46954号公報
【文献】特開2012-211805号公報
【文献】国際公開第2017/187785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パワートランジスタに接続される負荷には、その正常動作として瞬時的に大きな出力電流を流す必要のあるもの(容量性負荷など)も存在する。このような出力電流を監視対象とする場合、単一の過電流検出閾値を持つ従来の過電流保護回路では、瞬時電流の確保と負荷に応じた過電流保護とを両立することが困難であった。
【0006】
特に、近年では、車載用ICに対して、ISO26262(自動車の電気/電子に関する機能安全についての国際規格)を順守することが求められており、車載IPDについても、より高い信頼性設計が重要となっている。
【0007】
なお、本願出願人は、瞬時電流の確保と負荷に応じた過電流保護とを両立することのできる過電流保護回路を提案している(例えば特許文献3を参照)。ただし、過電流保護回路の多チャンネル化については、更なる検討の余地があった。
【0008】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者らにより見出された上記の課題に鑑み、瞬時電流の確保と負荷に応じた過電流保護とを両立することのできる多チャンネルの過電流保護回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書中に開示されている過電流保護回路は、第1監視対象電流と対比する第1過電流検出閾値を第1設定値とするか前記第1設定値よりも低い第2設定値とするかを切り替えるための第1閾値制御信号と、第2監視対象電流と対比する第2過電流検出閾値を第3設定値とするか前記第3設定値よりも低い第4設定値とするかを切り替えるための第2閾値制御信号を生成する閾値制御部を有し、前記閾値制御部は、キャパシタの充電電圧と所定の第1基準電圧とを比較して第1内部信号を生成する第1コンパレータと、前記充電電圧と前記第1基準電圧よりも低い第2基準電圧とを比較して第2内部信号を生成する第2コンパレータと、前記第2内部信号に応じて前記第1監視対象電流が前記第2設定値に達したか否かを示す第1比較信号をラッチすることにより第1ラッチ信号を生成する第1ラッチと、前記第2内部信号に応じて前記第2監視対象電流が前記第4設定値に達したか否かを示す第2比較信号をラッチすることにより第2ラッチ信号を生成する第2ラッチと、前記第1内部信号と前記第1ラッチ信号に応じて前記第1閾値制御信号を生成する第1フリップフロップと、前記第1内部信号と前記第2ラッチ信号に応じて前記第2閾値制御信号を生成する第2フリップフロップと、前記第1ラッチ信号及び前記第2ラッチ信号と前記第1閾値制御信号及び前記第2閾値制御信号に応じて前記キャパシタの放電制御を行う放電制御部と、前記第1比較信号と前記第2比較信号の双方に応じて前記キャパシタの充電制御を行う充電制御部と、を含む構成(第1の構成)とされている。
【0010】
なお、第1の構成から成る過電流保護回路において、前記放電制御部は、前記第1比較信号及び前記第2比較信号の一方に論理レベル変化が生じて前記キャパシタの充電が開始された後、前記充電電圧が前記第2基準電圧よりも高く前記第1基準電圧よりも低いときに、前記第1比較信号及び前記第2比較信号の他方に論理レベル変化が生じた場合、その時点で前記キャパシタの放電を開始するのではなく、前記充電電圧が前記第1基準電圧を上回った時点で前記キャパシタの放電を開始し、その後、前記充電電圧が前記第2基準電圧を下回った時点で前記キャパシタの放電を停止する構成(第2の構成)にするとよい。
【0011】
また、第1または第2の構成から成る過電流保護回路において、前記閾値制御部は、所定の基準電圧を分圧して前記第1基準電圧及び前記第2基準電圧を生成する抵抗ラダーをさらに含む構成(第3の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第1~第3いずれかの構成から成る過電流保護回路において、前記閾値制御部は、前記キャパシタを外付けするための外部端子をさらに含む構成(第4の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第1~第4いずれかの構成から成る過電流保護回路において、前記第1設定値と前記第3設定値はいずれも固定値であり、前記第2設定値と前記第4設定値はいずれも可変値である構成(第5の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第1~第5いずれかの構成から成る過電流保護回路は、前記第1閾値制御信号に応じて前記第1過電流検出閾値を前記第1設定値とするか前記第2設定値とするかを切り替える第1閾値生成部と、前記第2閾値制御信号に応じて前記第2過電流検出閾値を前記第3設定値とするか前記第4設定値とするかを切り替える第2閾値生成部と、前記第1監視対象電流に応じた第1センス信号と前記第1過電流検出閾値とを比較して第1過電流保護信号を生成する第1過電流検出部と、前記第2監視対象電流に応じた第2センス信号と前記第2過電流検出閾値とを比較して第2過電流保護信号を生成する第2過電流検出部と、前記第2設定値に応じた第1参照値と前記第1センス信号とを比較して前記第1比較信号を生成する第1比較部と、前記第4設定値に応じた第2参照値と前記第2センス信号とを比較して前記第2比較信号を生成する第2比較部と、をさらに有する構成(第6の構成)にするとよい。
【0015】
また、本明細書中に開示されている半導体集積回路装置は、前記第1監視対象電流をオン/オフする第1スイッチと、前記第2監視対象電流をオン/オフする第2スイッチと、前記第1センス信号を生成する第1電流監視部と、前記第2センス信号を生成する第2電流監視部と、第1制御信号に応じて前記第1スイッチの第1駆動信号を生成する第1制御部と、第2制御信号に応じて前記第2スイッチの第2駆動信号を生成する第2制御部と、上記第6の構成から成り前記第1センス信号と前記第2センス信号を監視して前記第1過電流保護信号と前記第2過電流保護信号を生成する過電流保護回路とを集積化して成り、前記第1制御部と前記第2制御部は、それぞれ、前記第1過電流保護信号及び前記第2過電流保護信号に応じて前記第1監視対象電流及び前記第2監視対象電流を制限するように前記第1駆動信号及び前記第2駆動信号を制御する機能を備えている構成(第7の構成)とされている。
【0016】
また、本明細書中に開示されている電子機器は、上記第7の構成から成る半導体集積回路装置と、前記第1スイッチに接続される第1負荷と、前記第2スイッチに接続される第2負荷と、を有する構成(第8の構成)とされている。
【0017】
なお、上記第8の構成から成る電子機器において、前記第1負荷及び前記第2負荷は、バルブランプ、リレーコイル、ソレノイド、発光ダイオード、または、モータである構成(第9の構成)にするとよい。
【0018】
また、本明細書中に開示されている車両は、上記第8または第9の構成から成る電子機器を有する構成(第10の構成)とされている。
【発明の効果】
【0019】
本明細書中に開示されている発明によれば、瞬時電流の確保と負荷に応じた過電流保護とを両立することのできる多チャンネルの過電流保護回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】半導体集積回路装置の第1実施形態を示すブロック図
【
図7】閾値電圧生成部と過電流検出部の一構成例を示す回路図
【
図9】参照電圧生成部と比較部の一構成例を示す回路図
【
図11】過電流保護動作の一例を示すタイミングチャート
【
図15】半導体集積回路装置の第2実施形態を示すブロック図
【
図16】2チャンネル化された過電流保護回路の一構成例を示すブロック図
【
図18】第1実施例の閾値切替動作を示すタイミングチャート
【
図19】第1実施例の問題点を示すタイミングチャート
【
図22】第2実施例の閾値切替動作を示すタイミングチャート
【
図23】第2実施例の問題点を示すタイミングチャート
【
図25】第3実施例の閾値切替動作を示すタイミングチャート
【
図29】第4実施例における閾値切替動作の第1例を示すタイミングチャート
【
図30】第4実施例における閾値切替動作の第2例を示すタイミングチャート
【
図31】第4実施例における閾値切替動作の第3例を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0021】
<半導体集積回路装置(第1実施形態)>
図1は、半導体集積回路装置の第1実施形態を示すブロック図である。本実施形態の半導体集積回路装置1は、ECU[electronic control unit]2からの指示に応じて電源電圧VBBの印加端と負荷3との間を導通/遮断する車載用ハイサイドスイッチIC(=車載IPDの一種)である。
【0022】
なお、半導体集積回路装置1は、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として、外部端子T1~T4を備えている。外部端子T1は、不図示のバッテリから電源電圧VBB(例えば12V)の供給を受け付けるための電源端子(VBBピン)である。外部端子T2は、負荷3(バルブランプ、リレーコイル、ソレノイド、発光ダイオード、または、モータなど)を外部接続するための負荷接続端子ないしは出力端子(OUTピン)である。外部端子T3は、ECU2から外部制御信号Siの外部入力を受け付けるための信号入力端子(INピン)である。外部端子T4は、ECU2に状態報知信号Soを外部出力するための信号出力端子(SENSEピン)である。なお、外部端子T4と接地端との間には、外部センス抵抗4が外付けされている。
【0023】
また、半導体集積回路装置1は、NMOSFET10と、出力電流監視部20と、ゲート制御部30と、制御ロジック部40と、信号入力部50と、内部電源部60と、異常保護部70と、出力電流検出部80と、信号出力部90と、を集積化して成る。
【0024】
NMOSFET10は、ドレインが外部端子T1に接続されてソースが外部端子T2に接続された高耐圧(例えば42V耐圧)のパワートランジスタである。このように接続されたNMOSFET10は、電源電圧VBBの印加端から負荷3を介して接地端に至る電流経路を導通/遮断するためのスイッチ素子(ハイサイドスイッチ)として機能する。なお、NMOSFET10は、ゲート駆動信号G1がハイレベルであるときにオンし、ゲート駆動信号G1がローレベルであるときにオフする。
【0025】
なお、NMOSFET10は、オン抵抗値が数十mΩとなるように設計すればよい。ただし、NMOSFET10のオン抵抗値が低いほど、外部端子T2の地絡時(=接地端ないしはこれに準ずる低電位端への出力ショート時)に過電流が流れやすくなり、異常発熱を生じやすくなる。従って、NMOSFET10のオン抵抗値を下げるほど、後述する過電流保護回路71や温度保護回路73の重要性が高くなる。
【0026】
出力電流監視部20は、NMOSFET21及び21’とセンス抵抗22を含み、NMOSFET10に流れる出力電流Ioに応じたセンス電圧Vs(=センス信号に相当)を生成する。
【0027】
NMOSFET21及び21’は、いずれもNMOSFET10に対して並列接続されたミラートランジスタであり、出力電流Ioに応じたセンス電流Is及びIs’を生成する。NMOSFET10とNMOSFET21及び21’とのサイズ比は、m:1(ただしm>1)である。従って、センス電流Is及びIs’は、出力電流Ioを1/mに減じた大きさとなる。なお、NMOSFET21及び21’は、NMOSFET10と同様、ゲート駆動信号G1がハイレベルであるときにオンし、ゲート電圧G2がローレベルであるときにオフする。
【0028】
センス抵抗22(抵抗値:Rs)は、NMOSFET21のソースと外部端子T2との間に接続されており、センス電流Isに応じたセンス電圧Vs(=Is×Rs+Vo、ただし、Voは外部端子T2に現れる出力電圧)を生成する電流/電圧変換素子である。
【0029】
ゲート制御部30は、ゲート制御信号S1の電流能力を高めたゲート駆動信号G1を生成してNMOSFET10及び21それぞれのゲートに出力することにより、NMOSFET10及び21のオン/オフ制御を行う。なお、ゲート制御部30は、過電流保護信号S71に応じて出力電流Ioを制限するようにNMOSFET10及び21を制御する機能を備えている。
【0030】
制御ロジック部40は、内部電源電圧Vregの供給を受けてゲート制御信号S1を生成する。例えば、外部制御信号Siがハイレベル(=NMOSFET10をオンさせるときの論理レベル)であるときには、内部電源部60から内部電源電圧Vregが供給されるので、制御ロジック部40が動作状態となり、ゲート制御信号S1がハイレベル(=Vreg)となる。一方、外部制御信号Siがローレベル(=NMOSFET10をオフさせるときの論理レベル)であるときには、内部電源部60から内部電源電圧Vregが供給されないので、制御ロジック部40が非動作状態となり、ゲート制御信号S1がローレベル(=GND)となる。また、制御ロジック部40は、各種の異常保護信号(過電流保護信号S71、オープン保護信号S72、温度保護信号S73、及び、減電圧保護信号S74)を監視している。なお、制御ロジック部40は、上記した異常保護信号のうち、過電流保護信号S71、オープン保護信号S72、及び、温度保護信号S73の監視結果に応じて出力切替信号S2を生成する機能も備えている。
【0031】
信号入力部50は、外部端子T3から外部制御信号Siの入力を受け付けて制御ロジック部40や内部電源部60に伝達するシュミットトリガである。なお、外部制御信号Siは、例えば、NMOSFET10をオンさせるときにハイレベルとなり、NMOSFET10をオフさせるときにローレベルとなる。
【0032】
内部電源部60は、電源電圧VBBから所定の内部電源電圧Vregを生成して半導体集積回路装置1の各部に供給する。なお、内部電源部60の動作可否は、外部制御信号Siに応じて制御される。より具体的に述べると、内部電源部60は、外部制御信号Siがハイレベルであるときに動作状態となり、外部制御信号Siがローレベルであるときに非動作状態となる。
【0033】
異常保護部70は、半導体集積回路装置1の各種異常を検出する回路ブロックであり、過電流保護回路71と、オープン保護回路72と、温度保護回路73と、減電圧保護回路74と、を含む。
【0034】
過電流保護回路71は、センス電圧Vsの監視結果(=出力電流Ioの過電流異常が生じているか否か)に応じた過電流保護信号S71を生成する。なお、過電流保護信号S71は、例えば、異常未検出時にローレベルとなり、異常検出時にハイレベルとなる。
【0035】
オープン保護回路72は、出力電圧Voの監視結果(=負荷3のオープン異常が生じているか否か)に応じたオープン保護信号S72を生成する。なお、オープン保護信号S72は、例えば、異常未検出時にローレベルとなり、異常検出時にハイレベルとなる。
【0036】
温度保護回路73は、半導体集積回路装置1(特にNMOSFET10周辺)の異常発熱を検出する温度検出素子(不図示)を含み、その検出結果(=異常発熱が生じているか否か)に応じた温度保護信号S73を生成する。なお、温度保護信号S73は、例えば、異常未検出時にローレベルとなり、異常検出時にハイレベルとなる。
【0037】
減電圧保護回路74は、電源電圧VBBないしは内部電源電圧Vregの監視結果(=減電圧異常が生じているか否か)に応じた減電圧保護信号S74を生成する。なお、減電圧保護信号S74は、例えば、異常未検出時にローレベルとなり、異常検出時にハイレベルとなる。
【0038】
出力電流検出部80は、不図示のバイアス手段を用いてNMOSFET21’のソース電圧と出力電圧Voとを一致させることにより、出力電流Ioに応じたセンス電流Is’(=Io/m)を生成して信号出力部90に出力する。
【0039】
信号出力部90は、出力選択信号S2に基づいてセンス電流Is’(=出力電流Ioの検出結果に相当)と固定電圧V90(=異常フラグに相当、本図では明示せず)の一方を外部端子T4に選択出力する。なお、センス電流Is’が選択出力された場合には、状態報知信号Soとして、センス電流Is’を外部センス抵抗4(抵抗値:R4)で電流/電圧変換した出力検出電圧V80(=Is’×R4)がECU2に伝達される。なお、出力検出電圧V80は、出力電流Ioが大きいほど高くなり、出力電流Ioが小さいほど低くなる。一方、固定電圧V90が選択出力された場合には、状態報知信号Soとして、固定電圧V90がECU2に伝達される。
【0040】
<信号出力部>
図2は、信号出力部90の一構成例を示すブロック図である。本構成例の信号出力部90はセレクタ91を含む。セレクタ91は、出力選択信号S2が異常未検出時の論理レベル(例えばローレベル)であるときに、センス電流Is’を外部端子T4に選択出力し、出力選択信号S2が異常検出時の論理レベル(例えばハイレベル)であるときに、固定電圧V90を外部端子T4に選択出力する。なお、固定電圧V90は、先述した出力検出電圧V80の上限値よりも高い電圧値に設定されている。
【0041】
このような信号出力部90によれば、単一の状態報知信号Soを用いて出力電流Ioの検出結果と異常フラグの双方をECU2に伝達することができるので、外部端子数の削減に貢献することが可能となる。なお、状態報知信号Soから出力電流Ioの電流値を読み取る場合には、状態報知信号SoをA/D[analog-to-digital]変換してやればよい。一方、状態報知信号Soから異常フラグを読み取る場合には、固定電圧V90よりもやや低い閾値を用いて状態報知信号Soの論理レベルを判定してやればよい。
【0042】
<ゲート制御部>
図3は、ゲート制御部30の一構成例を示すブロック図である。本構成例のゲート制御部30は、ゲートドライバ31と、オシレータ32と、チャージポンプ33と、クランパ34と、NMOSFET35と、抵抗36(抵抗値:R36)と、キャパシタ37(容量値:C37)と、を含む。
【0043】
ゲートドライバ31は、チャージポンプ33の出力端(=昇圧電圧VGの印加端)と外部端子T2(=出力電圧Voの印加端)との間に接続されており、ゲート制御信号S1の電流能力を高めたゲート駆動信号G1を生成する。なお、ゲート駆動信号G1は、ゲート制御信号S1がハイレベルであるときにハイレベル(=VG)となり、ゲート制御信号S1がローレベルであるときにローレベル(=Vo)となる。
【0044】
オシレータ32は、所定周波数のクロック信号CLKを生成してチャージポンプ33に出力する。なお、オシレータ32の動作可否は、制御ロジック部40からのイネーブル信号Saに応じて制御される。
【0045】
チャージポンプ33は、クロック信号CLKを用いてフライングキャパシタを駆動することにより、電源電圧VBBよりも高い昇圧電圧VGを生成する。なお、チャージポンプ33の動作可否は、制御ロジック部40からのイネーブル信号Sbに応じて制御される。
【0046】
クランパ34は、外部端子T1(=電源電圧VBBの印加端)とNMOSFET10のゲートとの間に接続されている。外部端子T2に誘導性の負荷3が接続されるアプリケーションでは、NMOSFET10をオンからオフへ切り替える際、負荷3の逆起電力により、出力電圧Voが負電圧(<GND)となる。そのため、エネルギー吸収用にクランパ34(いわゆるアクティブクランプ回路)が設けられている。
【0047】
NMOSFET35のドレインは、NMOSFET10のゲートに接続されている。NMOSFET35のソースは、外部端子T2に接続されている。NMOSFET35のゲートは、過電流保護信号S71の印加端に接続されている。また、NMOSFET35のドレイン・ゲート間には、抵抗36とキャパシタ37が直列に接続されている。
【0048】
本構成例のゲート制御部30において、過電流保護信号S71がハイレベルに立ち上げられると、ゲート駆動信号G1が定常時のハイレベル(=VG)から所定の時定数τ(=R36×C37)で引き下げられていく。その結果、NMOSFET10の導通度が徐々に低下していくので、出力電流Ioに制限が掛けられる。一方、過電流保護信号S71がローレベルに立ち下げられると、ゲート駆動信号G1が所定の時定数τで引き上げられていく。その結果、NMOSFET10の導通度が徐々に上昇していくので、出力電流Ioの制限が解除される。
【0049】
このように、本構成例のゲート制御部30は、過電流保護信号S71に応じて出力電流Ioを制限するようにゲート駆動信号G1を制御する機能を備えている。
【0050】
<過電流保護回路>
図4は、過電流保護回路71の一構成例を示すブロック図である。本構成例の過電流保護回路71は、第1電流生成部110と、第2電流生成部120と、閾値電圧生成部130と、過電流検出部140と、参照電圧生成部150と、比較部160と、閾値制御部170と、を含む。
【0051】
第1電流生成部110は、第1電流Irefを生成して閾値電圧生成部130に出力する。第1電流Irefの電流値は、半導体集積回路装置1の内部で固定されている。
【0052】
第2電流生成部120は、第2電流Isetを生成して閾値電圧生成部130に出力する。第2電流Isetの電流値は、半導体集積回路装置1の外部から任意に調整することが可能である。
【0053】
閾値電圧生成部130は、閾値制御信号S170に応じて閾値電圧Vth(=過電流検出閾値に相当)を内部設定値VthHとするか外部設定値VthL(ただしVthH>VthL)とするかを切り替える。なお、内部設定値VthHは、第1電流Irefに応じて設定される固定値(=第1設定値に相当)である。一方、外部設定値VthLは、第2電流Isetに応じて設定される可変値(=第2設定値に相当)である。
【0054】
過電流検出部140は、センス電圧Vsと閾値電圧Vthとを比較して過電流保護信号S71を生成する。
【0055】
参照電圧生成部150は、第2電流Isetに応じた参照電圧VIset(=参照値に相当)を生成する。
【0056】
比較部160は、センス電圧Vsと参照電圧VIsetとを比較して比較信号VCMPを生成する。
【0057】
閾値制御部170は、比較信号VCMPを監視して閾値制御信号S170を生成する。なお、閾値制御信号S170は、例えば、閾値電圧Vthとして内部設定値VthHを選択すべきときにローレベルとなり、閾値電圧Vthとして外部設定値VthLを選択すべきときにハイレベルとなる。
【0058】
<第1電流生成部>
図5は、第1電流生成部110の一構成例を示す回路図である。本構成例の第1電流生成部110は、オペアンプ111と、NMOSFET112と、抵抗113(抵抗値:R113)と、を含む。
【0059】
オペアンプ111の電源端は、内部電源電圧Vregの印加端に接続されている。オペアンプ111の基準電位端は、接地端GNDに接続されている。オペアンプ111の非反転入力端(+)は、基準電圧Vref(例えば、電源変動や温度変動などの影響を受けにくいバンドギャップ基準電圧)の印加端に接続されている。オペアンプ111の反転入力端(-)とNMOSFET112のソースは、抵抗113の第1端に接続されている。抵抗113の第2端は、接地端GNDに接続されている。オペアンプ111の出力端は、NMOSFET112のゲートに接続されている。NMOSFET112のドレインは、第1電流Irefの出力端に接続されている。
【0060】
上記のように接続されたオペアンプ111は、非反転入力端(+)と反転入力端(-)がイマジナリショートするように、トランジスタ112のゲート制御を行う。その結果、抵抗113には、固定値の第1電流Iref(=Vref×R113)が流れる。
【0061】
<第2電流生成部>
図6は、第2電流生成部120の一構成例を示す回路図である。本構成例の第2電流生成部120は、オペアンプ121と、NMOSFET122と、抵抗123(抵抗値:R123)と、外部端子SETと、を含む。
【0062】
オペアンプ121の電源端は、内部電源電圧Vregの印加端に接続されている。オペアンプ121の基準電位端は、接地端GNDに接続されている。オペアンプ121の非反転入力端(+)は、基準電圧Vrefの印加端に接続されている。オペアンプ121の反転入力端(-)とNMOSFET122のソースは、外部端子SETに接続されている。オペアンプ121の出力端は、NMOSFET122のゲートに接続されている。NMOSFET122のドレインは、第2電流Isetの出力端に接続されている。抵抗123は、半導体集積回路装置1の外部において、外部端子SETと接地端GNDとの間に接続されている。
【0063】
上記のように接続されたオペアンプ121は、非反転入力端(+)と反転入力端(-)がイマジナリショートするように、トランジスタ122のゲート制御を行う。その結果、抵抗123には、自身の抵抗値R123に応じた第2電流Iset(=Vref×R123)が流れる。すなわち、第2電流Isetは、抵抗値R123が高いほど大きくなり、逆に、抵抗値R123が低いほど小さくなる。従って、外付けの抵抗123を用いて第2電流Isetを任意に調整することが可能となる。なお、オペアンプ121内部の差動段をカスコード回路とすれば、第2電流Isetの設定精度を高めることが可能となる。
【0064】
<閾値電圧生成部・過電流検出部>
図7は、閾値電圧生成部130と過電流検出部140の一構成例を示す回路図である。閾値電圧生成部130は、電流源131と、抵抗132と、カレントミラー133と、を含む。一方、過電流検出部140は、コンパレータ141を含む。
【0065】
電流源131は、カレントミラー部133の電流入力端と定電圧VBBM5の印加端との間に接続されており、閾値制御信号S170に応じて第1電流Irefと第2電流Isetの一方を選択出力する。より具体的に述べると、電流源131は、閾値制御信号S170がローレベルであるときに第1電流Irefを選択出力し、閾値制御信号S170がハイレベルであるときに第2電流Isetを選択出力する。
【0066】
抵抗132は、カレントミラー部133の電流出力端と出力電圧Voの印加端(=外部端子T2)との間に接続されており、閾値制御信号S170に応じて、その抵抗値が第1抵抗値Rref1と第2抵抗値Rref2の一方に切り替えられる。より具体的に述べると、抵抗132の抵抗値は、閾値制御信号S170がローレベルであるときに第1抵抗値Rref1となり、閾値制御信号S170がハイレベルであるときに第2抵抗値Rref2となる。
【0067】
カレントミラー部133は、定電圧VBB_REFと昇圧電圧VGの供給を受けて動作し、電流源131から入力される第1電流Irefまたは第2電流Isetをミラーして抵抗132に出力する。従って、カレントミラー部133の電流出力端(=抵抗132の高電位端)には、閾値制御信号S170に応じてその電圧値が切り替わる閾値電圧Vthが生成される。より具体的に述べると、閾値電圧Vthは、閾値制御信号S170がローレベルであるときに内部設定値VthH(=Iref×Rref1)となり、閾値制御信号S170がハイレベルであるときに外部設定値VthL(=Iset×Rref2)となる。なお、カレントミラー部133は、第1電源系(VBB_REF-VBBM5系)から第2電源系(VG-Vo系)に第1電流Irefまたは第2電流Isetを受け渡すレベルシフタとしても機能する。
【0068】
なお、定電圧VBB_REF及び定電圧VBBM5は、いずれも、半導体集積回路装置1の内部で生成される基準電圧であり、例えば、VBB_REF≒VBB、VBBM5≒VBB-5Vとなる。
【0069】
コンパレータ141の電源端は、昇圧電圧VGの印加端に接続されている。コンパレータ141の基準電位端は、出力電圧Voの印加端(外部端子T2)に接続されている。コンパレータ141の非反転入力端(+)は、センス電圧Vsの印加端に接続されている。コンパレータ141の反転入力端(-)は、閾値電圧Vthの印加端に接続されている。このようにして接続されたコンパレータ141は、センス電圧Vsと閾値電圧Vthとを比較して過電流保護信号S71を生成する。過電流保護信号S71は、センス電圧Vsが閾値電圧Vthよりも低いときにローレベル(=過電流未検出時の論理レベル)となり、センス電圧Vsが閾値電圧Vthよりも高いときにハイレベル(=過電流検出時の論理レベル)となる。
【0070】
図8は、過電流検出閾値の一例を示す模式図である。先にも述べたように、センス電圧Vsと比較される閾値電圧Vthは、閾値制御信号S170に応じて、内部設定値VthHと外部設定値VthLの一方に切り替えられる。これは、出力電流Ioと比較される過電流検出閾値Iocpが内部設定値IocpHと外部設定値IocpLの一方に切り替えられることと等価である。
【0071】
なお、内部設定値IocpHは、負荷3のショート異常が生じた場合であっても半導体集積回路装置1が破壊されないように、NMOSFET10のオン抵抗値や素子耐圧に応じた固定値(例えば15A程度)とすることが望ましい。このように、内部設定値IocpHは、あくまで半導体集積回路装置1自体の保護を目的とするものであり、出力電流Ioの定常値から大きく乖離することも多い。
【0072】
一方、外部設定値IocpLは、負荷3に応じて出力電流Ioの異常値が異なることに鑑み、負荷3に応じた可変値(例えば1A~10A)とすることが望ましい。例えば、バルブランプ駆動時の出力電流Ioは、ソレノイド駆動時の出力電流Ioよりも一般的に大きい。これを鑑みると、バルブランプ駆動時には、ソレノイド駆動時よりも外部設定値IocpLを高めに設定すればよい。逆に、発光ダイオード駆動時の出力電流Ioは、ソレノイド駆動時の出力電流Ioよりも一般的に小さい。これを鑑みると、発光ダイオード駆動時には、ソレノイド駆動時よりも外部設定値IocpLを低めに設定すればよい。
【0073】
ところで、半導体集積回路装置1の駆動対象となる負荷3には、その正常動作として瞬時的に大きな出力電流Ioを流す必要のあるものも存在する。例えば、バルブランプの起動時には、定常動作時よりも大きな突入電流が瞬時的に流れる。負荷3によっては、起動時の出力電流Ioと定常動作時の出力電流Ioとの間で数十倍の差が生じることもある。
【0074】
そのため、瞬時電流の確保と負荷3に応じた過電流保護とを両立するためには、出力電流Ioと比較される過電流検出閾値Iocp(延いては、センス電圧Vsと比較される閾値電圧Vth)を適切なタイミングで切り替えてやる必要がある。
【0075】
以下では、閾値電圧Vthの適切な切替制御を実現するための手段(参照電圧生成部150、比較部160、及び、閾値制御部170)について、詳細な説明を行う。
【0076】
<参照電圧生成部・比較部>
図9は、参照電圧生成部150と比較部160の一構成例を示す回路図である。参照電圧生成部150は、電流源151と抵抗152(抵抗値:R152)を含む。また、比較部160は、コンパレータ161を含む。
【0077】
電流源151は、昇圧電圧VGの印加端と抵抗152との間に接続されており、第2電流生成部120で生成される第2電流Iset(より正確には、第2電流Isetと等価の可変電流)を出力する。
【0078】
抵抗152は、電流源151と出力電圧Voの印加端(=外部端子T2)との間に接続されており、第2電流Isetに応じた参照電圧VIset(=Iset×R152)を生成する電流/電圧変換素子である。
【0079】
コンパレータ161の電源端は、昇圧電圧VGの印加端に接続されている。コンパレータ161の基準電位端は、出力電圧Voの印加端(外部端子T2)に接続されている。コンパレータ161の非反転入力端(+)は、センス電圧Vsの印加端に接続されている。コンパレータ161の反転入力端(-)は、参照電圧VIsetの印加端に接続されている。このように接続されたコンパレータ161は、センス電圧Vsと参照電圧VIsetとを比較して比較信号VCMPを生成する。比較信号VCMPは、センス電圧Vsが参照電圧VIsetよりも低いときにローレベルとなり、センス電圧Vsが参照電圧VIsetよりも高いときにハイレベルとなる。
【0080】
なお、抵抗152の抵抗値R152は、比較信号VCMPに応じて第1抵抗値Rdet1と第2抵抗値Rdet2(ただしRdet1>Rdet2)の一方に切り替えられる。より具体的に述べると、抵抗152の抵抗値R152は、比較信号VCMPがローレベルであるときに第1抵抗値Rdet1となり、比較信号VCMPがハイレベルであるときに第2抵抗値Rdet2となる。このような抵抗値R152の切替制御により、比較部160にヒステリシス特性を付与することができる。
【0081】
<閾値制御部>
図10は、閾値制御部170の一構成例を示す回路図である。閾値制御部170は、コンパレータ171と、電流源172と、レベルシフタ173と、RSフリップフロップ174と、放電制御部175と、NMOSFET176と、キャパシタ177と、外部端子DLYと、を含む。
【0082】
コンパレータ171の電源端は、内部電源電圧Vregの印加端に接続されている。コンパレータ171の基準電位端は、接地端GNDに接続されている。コンパレータ171の非反転入力端(+)は、外部端子DLY(充電電圧Vdの印加端)に接続されている。コンパレータ171の反転入力端(-)は、マスク期間満了電圧Vdrefの印加端に接続されている。このように接続されたコンパレータ171は、充電電圧Vdとマスク期間満了電圧Vdrefとを比較して内部信号Sxを生成する。内部信号Sxは、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefよりも高いときにハイレベルとなり、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefよりも低いときにローレベルとなる。
【0083】
電流源172は、内部電源電圧Vregの印加端と外部端子DLYとの間に接続されており、所定の充電電流Idを生成する。なお、電流源172の動作可否は、内部信号Sy(=レベルシフト済みの比較信号VCMPに相当)に応じて制御される。より具体的に述べると、電流源172は、内部信号Syがハイレベルであるときに動作状態となり、内部信号Syがローレベルであるときに非動作状態となる。
【0084】
レベルシフタ173は、昇圧電圧VGと出力電圧Voとの間でパルス駆動される比較信号VCMPをレベルシフトさせることにより、内部電源電圧Vregと接地電圧GNDとの間でパルス駆動される内部信号Syを生成する。従って、比較信号VCMPがハイレベル(=VG)であるときには、内部信号Syもハイレベル(=Vreg)となり、比較信号VCMPがローレベル(=Vo)であるときには、内部信号Syもローレベル(=GND)となる。
【0085】
RSフリップフロップ174は、セット端(S)に入力される内部信号Sxとリセット端(R)に入力される内部信号Syに応じて、出力端(Q)から閾値制御信号S170を出力する。具体的に述べると、RSフリップフロップ174は、内部信号Sxの立上りタイミングで閾値制御信号S170をハイレベルにセットする一方、内部信号Syの立下りタイミングで閾値制御信号S170をローレベルにリセットする。なお、RSフリップフロップ174は、リセット優先型であり、内部信号Syがローレベルであるときには、たとえ内部信号Sxがハイレベルに立ち上がっても、閾値制御信号S170がローレベルに維持される。
【0086】
放電制御部175は、内部信号Sxに応じて、内部信号Szを生成する。より具体的に述べると、放電制御部175は、内部信号Sxの立上りタイミングで内部信号Szを所定の放電期間Tdchgに亘ってハイレベルとする。
【0087】
NMOSFET176は、内部信号Szに応じて外部端子DLYと接地端GNDとの間(=キャパシタ177の両端間)を導通/遮断する放電スイッチ素子である。なお、NMOSFET176は、内部信号Szがハイレベルであるときにオンし、内部信号Szがローレベルであるときにオフする。
【0088】
キャパシタ177は、半導体集積回路装置1の外部において、外部端子DLYと接地端GNDとの間に接続されている。NMOSFET176がオフされているときに、電流源172から充電電流Idが供給されると、キャパシタ177の充電電圧Vdが上昇する。一方、NMOSFET176がオンされているときには、キャパシタ177がNMOSFET176を介して放電されるので、充電電圧Vdが低下する。
【0089】
<過電流保護動作>
図11は、過電流保護動作の一例を示すタイミングチャートであり、上から順に、外部制御信号Si、第1電流Iref、第2電流Iset、センス電圧Vs、比較信号VCMP、充電電圧Vd、内部信号Sx~Sz、閾値制御信号S170、閾値電圧Vth、並びに、状態報知信号Soが描写されている。
【0090】
時刻t11において、外部制御信号Siがハイレベルに立ち上げられると、第1電流Irefの生成動作が遅滞なく開始される。ただし、時刻t11では、半導体集積回路装置1のシャットダウンが解除されておらず、NMOSFET10がオフされたままなので、NMOSFET10には出力電流Ioが流れない。従って、センス電圧Vsは0Vに維持されたままである。
【0091】
時刻t12において、時刻t11から所定の起動遅延期間Tdly(例えば5μs)が経過すると、半導体集積回路装置1のシャットダウンが解除される。その結果、NMOSFET10がオンされて出力電流Ioが流れ始めるのでセンス電圧Vsが上昇し始める。また、時刻t12では、第2電流Isetとこれに応じた参照電圧VIset(本図ではVIset=VthL)の生成動作も開始される。なお、時刻t12では、センス電圧Vsが参照電圧VIsetよりも低いので比較信号VCMPがローレベルとなる。従って、閾値制御信号S170がローレベルとなるので、閾値電圧Vthとして内部設定値VthHが選択された状態となる。
【0092】
時刻t13において、センス電圧Vsが参照電圧VIsetを上回ると、比較信号VCMPがハイレベルとなる。その結果、内部信号Syがハイレベルとなるので、充電電圧Vdが上昇し始める。なお、時刻t13では、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefよりも低いので、内部信号Sxがローレベルのままとなる。従って、閾値制御信号S170がローレベルに維持されるので、閾値電圧Vthとして内部設定値VthHが選択されたままとなる。そのため、センス電圧Vsが外部設定値VthL(=VIset)を上回っていても過電流保護は掛からない。
【0093】
時刻t14において、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefを上回ると、内部信号Sxがハイレベルとなる。従って、閾値制御信号S170がハイレベルにセットされるので、閾値電圧Vthが外部設定値VthLに切り替わる。その結果、時刻t14以降は、センス電圧Vsが外部設定値VthLを上回らないように過電流保護が掛かるようになる。また、内部信号Sxがハイレベルに立ち上がると、内部信号Szも所定の放電期間Tdchgに亘ってハイレベルとなるので、充電電圧Vdが0Vまで放電される。なお、放電期間Tdchgは、先述の起動遅延期間Tdlyよりも短時間(例えば3μs)であることが望ましい。
【0094】
このように、閾値電圧Vthが内部設定値VthHとされているときには、センス電圧Vsが参照電圧VIsetを上回ったまま、所定のマスク期間Tmask(=時刻t13~t14)が経過した時点で、閾値電圧Vthが外部設定値VthLに切り替えられる。従って、負荷3に応じた過電流保護を実現することが可能となる。
【0095】
一方、本図では明示していないが、センス電圧Vsが瞬時的に参照電圧VIsetを上回ったとしても、マスク期間Tmaskの満了前に再び参照電圧VIsetを下回れば、閾値電圧Vthが内部設定値VthHに維持されたままとなる。従って、意図しない過電流保護が掛からないので、起動時の瞬時電流を確保することが可能となる。
【0096】
また、当然のことながら、閾値電圧Vthが内部設定値VthHとされているときに、センス電圧Vsが内部設定値VthHを上回ると、その時点で遅滞なく過電流保護が掛かる。従って、負荷3のショート異常などが生じたときには、出力電流Ioを速やかに制限することができるので、半導体集積回路装置1の破壊を未然に防ぐことが可能となる。
【0097】
なお、上記のマスク期間Tmaskは、外付けのキャパシタ177を用いて任意に調整することのできる可変値である。より具体的に述べると、マスク期間Tmaskは、キャパシタ177の容量値が大きいほど長くなり、キャパシタ177の容量値が小さいほど短くなる。ただし、マスク期間Tmaskが長いほど、外部設定値VthLを用いた過電流保護の開始タイミングが遅れる。従って、マスク期間Tmaskは、起動時における瞬時電流の継続時間を考慮して、必要最小限の長さに設定しておくことが望ましい。
【0098】
また、半導体集積回路装置1の用途(負荷3の種類)に応じて、マスク期間Tmaskを設けるか否かを任意に使い分けることも可能である。例えば、外部端子DLYをオープンとしておけば、マスク期間Tmaskが実質的にゼロとなるので、外部設定値VthLのみが設けられている場合と等価になる。また、例えば、外部端子DLYを接地端GNDとショートしておけば、マスク期間Tmaskが無限大となるので、内部設定値VthHのみが設けられている場合と等価になる。
【0099】
時刻t15において、センス電圧Vsが参照電圧VIsetを下回ると、比較信号VCMPがローレベルとなり、延いては、内部信号Syがローレベルとなる。その結果、閾値制御信号S170がローレベルにリセットされるので、閾値電圧Vthが内部設定値VthHに切り替わる。
【0100】
このように、閾値電圧Vthが外部設定値VthLとされているときには、センス電圧Vsが参照電圧VIsetを下回った時点で、閾値電圧Vthが内部設定値VthHに切り替えられる。すなわち、外部設定値VthLを用いた過電流保護動作が解除されると、過電流保護回路71は、起動時の初期状態に戻される。
【0101】
時刻t16において、外部制御信号Siがローレベルに立ち上げられると、半導体集積回路装置1のシャットダウンされて上記一連の動作が終了する。
【0102】
なお、状態報知信号Soに着目すると、過電流未検出期間(時刻t14~t15以外)には、出力電流Ioの検出結果に相当する出力検出電圧V80(図中の破線も参照)が選択出力されている。一方、過電流検出期間(時刻t14~t15)には、出力検出電圧V80に代えて、異常フラグに相当する定電圧V90が選択出力されている。
【0103】
図12は、閾値切替動作の一例を示すフローチャートである。フローが開始されると、まず、ステップS101において、閾値電圧Vthが内部設定値VthH(=Iref×Rref1)に設定される(
図11の時刻t12に相当)。
【0104】
次に、ステップS102では、センス電圧Vsが参照電圧VIsetよりも高いか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS103に進められる。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS102に戻されて本ステップでの判定が繰り返される(
図11の時刻t12~t13に相当)。
【0105】
ステップS103では、ステップS102でのイエス判定を受けて、キャパシタ177の充電が開始される(
図11の時刻t13に相当)。
【0106】
次に、ステップS104では、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefよりも高いか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS105に進められる。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS104に戻されて本ステップでの判定が繰り返される(
図11の時刻t13~t14に相当)。
【0107】
ステップS105では、ステップS104でのイエス判定を受けて、キャパシタ177が放電される。また、ステップS106では、閾値電圧Vthが外部設定値VthL(=Iset×Rref2)に切り替えられる。これらのステップS105及びS106は、
図11の時刻t14に相当する。
【0108】
次に、ステップS107では、センス電圧Vsが参照電圧VIsetよりも低いか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS101に戻されて、閾値電圧Vthが再び内部設定値VthH(=Iref×Rref1)に切り替えられる(
図11の時刻t15に相当)。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS107に戻されて本ステップでの判定が繰り返される(
図11の時刻t14~t15に相当)。
【0109】
<使用例>
図13は、過電流保護回路71の第1使用例を示す模式図である。例えば、負荷3がバルブランプである場合には、本図中の実線で示したように、起動時の出力電流Ioとして定常動作時よりも大きい瞬時電流が流れる。ただし、先述のマスク期間Tmaskを適切に設定しておけば、上記の瞬時電流を検出対象から除外することができるので、意図しない過電流保護が掛かることはない。すなわち、過大な瞬時電流が流れる起動時には、出力電流Ioと内部設定値IocpHとが比較されることになり、定常動作時には出力電流Ioと外部設定値IocpLとが比較されることになる。従って、出力電流Ioの駆動エリアは、本図中のハッチングを付した領域として表すことができる。
【0110】
図14は、過電流保護回路71の第2使用例を示す模式図である。例えば、負荷3がモータである場合には、本図中の実線で示したように、ロック時の出力電流Ioとして定常動作時よりも大きい瞬時電流が流れる。ただし、先述のマスク期間Tmaskを適切に設定しておけば、上記の瞬時電流を検出対象から除外することができるので、意図しない過電流保護が掛かることはない。すなわち、過大な瞬時電流が流れるロック時には、出力電流Ioと内部設定値IocpHとが比較されることになり、定常動作時には出力電流Ioと外部設定値IocpLとが比較されることになる。従って、出力電流Ioの駆動エリアは、本図中のハッチングを付した領域として表すことができる。
【0111】
<作用・効果>
これまでに説明してきたように、過電流保護回路71では、出力電流Ioと比較される過電流検出閾値Iocpとして、2段階の内部設定値IocpHと外部設定値IocpLが用意されており、かつ、内部設定値IocpHから外部設定値IocpLに切り替えるまでの猶予期間として、所定のマスク期間Tmaskが設けられている。
【0112】
このような構成を採用することにより、瞬時電流の確保と負荷3に応じた過電流保護とを両立することが可能となる。特に、負荷3の定常動作時には、内部設定値IocpHよりも十分に低い外部設定値IocpLと出力電流Ioとが比較されるので、負荷3の駆動電流からかけ離れた大電流が出力電流Ioとして流れ続けることはない。従って、負荷3に接続されるハーネスを従来よりも細径化することが可能となる。
【0113】
また、過電流保護回路71であれば、負荷3に応じた過電流保護をECU2で行う必要がなくなるので、ECU2の負担(=出力電流Ioの常時監視など)を軽減することが可能となり、延いては、ECU2のマイコンレス化を実現することが可能となる。
【0114】
<半導体集積回路装置(第2実施形態)>
図15は、半導体集積回路装置1の第2実施形態を示すブロック図である。本実施形態の半導体集積回路装置1は、第1実施形態(
図1)をベースとしつつ、2チャンネルの負荷3X及び3Yをそれぞれ個別に駆動することができるように、これまでに説明してきた構成要素(機能ブロック10~90、外部端子T1~T4、及び、各種の電圧、電流、信号など)をチャンネル毎に有している。
【0115】
なお、負荷3Xの駆動に関わる構成要素には、符号の末尾に「X」を付してあり、負荷3Yの駆動に関わる構成要素には、符号の末尾に「Y」を付してあるが、それぞれの動作や機能については、末尾に「X」及び「Y」が付されていない先出の構成要素と基本的に共通である。例えば、NMOSFET10X及び10Yそれぞれの動作や機能は、先出のNMOSFET10と基本的に同一である。その他の構成要素についても同様である。そこで、特筆すべき事項がない限り、各構成要素の動作や機能については、重複した説明を割愛する。また、本図では、出力電流検出部80と信号出力部90を明示していないが、これらの機能ブロックについては別途後述する。
【0116】
本実施形態の半導体集積回路装置1では、2チャンネルの負荷3X及び3Yをそれぞれ個別に駆動することができるので、チャンネル毎の起動タイミングも異なる場合がある。そのため、各チャンネルで瞬時電流の確保と負荷に応じた過電流保護とを両立するためには、起動タイミングの違いに依ることなく、チャンネル毎に先述のマスク期間Tmaskを正しく設定しなければならない。
【0117】
これを実現するための最も簡易な構成は、先出の過電流保護回路71(
図4を参照)を2チャンネル分用意して、それぞれを各チャンネル用の過電流保護回路71X及び71Yとして並列に設けることである。しかしながら、このような構成では、マスク期間Tmaskを設定するための外部端子DLYが2つ必要となるので、半導体集積回路装置1のパッケージ変更やコストアップなどを招くおそれがある。
【0118】
そこで、以下では、外部端子DLYの追加を要することなく、チャンネル毎にマスク期間Tmaskを正しく設定することのできる過電流保護回路71を提案する。
【0119】
図16は、2チャンネル化された過電流保護回路71の一構成例を示すブロック図である。本構成例の過電流保護回路71は、第1電流生成部110と、第2電流生成部120と、閾値電圧生成部130X及び130Yと、過電流検出部140X及び140Yと、参照電圧生成部150X及び150Yと、比較部160X及び160Yと、閾値制御部170と、を含む。
【0120】
上記構成要素のうち、第1電流生成部110、第2電流生成部120、閾値電圧生成部130X、過電流検出部140X、参照電圧生成部150X、比較部160X、及び、閾値制御部170は、第1チャンネル用の過電流検出回路71Xとして機能する。
【0121】
一方、上記構成要素のうち、第1電流生成部110、第2電流生成部120、閾値電圧生成部130Y、過電流検出部140Y、参照電圧生成部150Y、比較部160Y、及び、閾値制御部170は、第2チャンネル用の過電流検出回路71Yとして機能する。
【0122】
このように、本構成例の過電流保護回路71において、第1電流生成部110、第2電流生成部120、及び、閾値制御部170は、第1チャンネルと第2チャンネルで兼用されている。
【0123】
第1電流生成部110は、第1電流Irefを生成して閾値電圧生成部130X及び130Yに出力する。第1電流Irefの電流値は、半導体集積回路装置1の内部で固定されている。第1電流生成部110の構成は、基本的に先出の
図5で示した通りである。第1電流Irefを閾値電圧生成部130X及び130Yの双方に出力する手段としては、例えば、2系統の電流出力端を持つカレントミラーを用いればよい。
【0124】
第2電流生成部120は、第2電流Isetを生成して閾値電圧生成部130X及び130Yに出力する。第2電流Isetの電流値は、半導体集積回路装置1の外部から任意に調整することが可能である。第2電流生成部120の構成は、基本的に先出の
図6で示した通りである。第2電流Isetを閾値電圧生成部130X及び130Yの双方に出力する手段としては、例えば、2系統の電流出力端を持つカレントミラーを用いればよい。
【0125】
閾値電圧生成部130Xは、閾値制御信号S170Xに応じて閾値電圧VthXを内部設定値VthXHとするか外部設定値VthXL(ただしVthXH>VthXL)とするかを切り替える。なお、内部設定値VthXHは、第1電流Irefに応じて設定される固定値(=第1設定値に相当)である。一方、外部設定値VthXLは、第2電流Isetに応じて設定される可変値(=第2設定値に相当)である。
【0126】
閾値電圧生成部130Yは、閾値制御信号S170Yに応じて閾値電圧VthYを内部設定値VthYHとするか外部設定値VthYL(ただしVthYH>VthYL)とするかを切り替える。なお、内部設定値VthYHは、第1電流Irefに応じて設定される固定値(=第3設定値に相当)である。一方、外部設定値VthYLは、第2電流Isetに応じて設定される可変値(=第4設定値に相当)である。
【0127】
過電流検出部140Xは、出力電流IoXに応じたセンス電圧VsXと閾値電圧VthXとを比較して過電流保護信号S71Xを生成する。
【0128】
過電流検出部140Yは、出力電流IoYに応じたセンス電圧VsYと閾値電圧VthYとを比較して過電流保護信号S71Yを生成する。
【0129】
参照電圧生成部150Xは、第2電流Isetに応じた参照電圧VIsetX(=第1参照値に相当)を生成する。
【0130】
参照電圧生成部150Yは、第2電流Isetに応じた参照電圧VIsetY(=第2参照値に相当)を生成する。
【0131】
比較部160Xは、センス電圧VsXと参照電圧VIsetXとを比較して比較信号VCMPXを生成する。
【0132】
比較部160Yは、センス電圧VsYと参照電圧VIsetYとを比較して比較信号VCMPYを生成する。
【0133】
閾値制御部170は、比較信号VCMPX及びVCMPYの双方を監視して閾値制御信号S170X及びS170Yを生成する。
【0134】
なお、閾値制御信号S170Xは、例えば、閾値電圧VthXとして内部設定値VthXHを選択すべきときにローレベルとなり、閾値電圧VthXとして外部設定値VthXLを選択すべきときにハイレベルとなる。
【0135】
一方、閾値制御信号S170Yは、例えば、閾値電圧VthYとして内部設定値VthYHを選択すべきときにローレベルとなり、閾値電圧VthYとして外部設定値VthYLを選択すべきときにハイレベルとなる。
【0136】
<閾値制御部(第1実施例)>
図17は、閾値制御部170の第1実施例を示すブロック図である。本実施例の閾値制御部170は、先の
図10をベースとしつつ、2チャンネル化を実現する手段として、コンパレータ171と、電流源172と、レベルシフタ173X及び173Yと、RSフリップフロップ174X及び174Yと、放電制御部175と、NMOSFET176と、キャパシタ177と、充電制御部178と、外部端子DLYと、を含む。
【0137】
コンパレータ171は、非反転入力端(+)に入力される充電電圧Vd(=外部端子DLYに現れるキャパシタ177の充電電圧)と、反転入力端(-)に入力されるマスク期間満了電圧Vdrefとを比較して内部信号Sxを生成する。内部信号Sxは、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefよりも高いときにハイレベルとなり、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefよりも低いときにローレベルとなる。この点については先の
図10と同様である。
【0138】
電流源172は、充電制御信号S178に応じて充電電流Idを生成する。具体的に述べると、電流源172は、電流制御信号S178がハイレベルであるときに充電電流Idを出力し、充電制御信号S178がローレベルであるときに充電電流Idを停止する。
【0139】
レベルシフタ173Xは、比較信号VCMPXをレベルシフトさせて内部信号SyXを生成する。
【0140】
レベルシフタ173Yは、比較信号VCMPYをレベルシフトさせて内部信号SyYを生成する。
【0141】
RSフリップフロップ174Xは、セット端(S)に入力される内部信号Sxとリセット端(R)に入力される内部信号SyXに応じて、出力端(Q)から閾値制御信号S170Xを出力する。より具体的に述べると、RSフリップフロップ174Xは、内部信号Sxの立上りタイミングで閾値制御信号S170Xをハイレベルにセットする一方、内部信号SyXの立下りタイミングで閾値制御信号S170Xをローレベルにリセットする。なお、RSフリップフロップ174Xは、リセット優先型であり、内部信号SyXがローレベルであるときには、たとえ内部信号Sxがハイレベルに立ち上がっても、閾値制御信号S170Xがローレベルに維持される。
【0142】
RSフリップフロップ174Yは、セット端(S)に入力される内部信号Sxとリセット端(R)に入力される内部信号SyYに応じて、出力端(Q)から閾値制御信号S170Yを出力する。より具体的に述べると、RSフリップフロップ174Yは、内部信号Sxの立上りタイミングで閾値制御信号S170Yをハイレベルにセットする一方、内部信号SyYの立下りタイミングで閾値制御信号S170Yをローレベルにリセットする。なお、RSフリップフロップ174Yは、リセット優先型であり、内部信号SyYがローレベルであるときには、たとえ内部信号Sxがハイレベルに立ち上がっても、閾値制御信号S170Yがローレベルに維持される。
【0143】
放電制御部175は、内部信号Sxに応じて、内部信号Szを生成する。より具体的に述べると、放電制御部175は、内部信号Sxの立上りタイミングで内部信号Szを所定の放電期間Tdchgに亘ってハイレベルとする。この点については、先の
図10と同様である。
【0144】
NMOSFET176は、内部信号Szに応じて外部端子DLYと接地端GNDとの間(=キャパシタ177の両端間)を導通/遮断する放電スイッチ素子である。なお、NMOSFET176は、内部信号Szがハイレベルであるときにオンし、内部信号Szがローレベルであるときにオフする。この点についても、先の
図10と同様である。
【0145】
キャパシタ177は、半導体集積回路装置1の外部において、外部端子DLYと接地端GNDとの間に接続されている。NMOSFET176がオフされているときに、電流源172から充電電流Idが供給されると、キャパシタ177の充電電圧Vdが上昇する。一方、NMOSFET176がオンされているときには、キャパシタ177がNMOSFET176を介して放電されるので、充電電圧Vdが低下する。この点についても、先の
図10と同様である。
【0146】
充電制御部178は、内部信号SyX及びSyY(延いては比較信号VCMPX及びVCMPY)の双方に応じて充電制御信号S178を生成する。なお、充電制御信号S178は、基本的に、内部信号SyXまたはSyYの立上りタイミングでハイレベル(=充電時の論理レベル)となる。
【0147】
図18は、第1実施例の閾値切替動作を示すタイミングチャートであり、上から順に、センス電圧VsX及びVsY、比較信号VCMPX及びVCMPY(内部信号SyX及びSyYと等価)、充電電圧Vd、内部信号Sx及びSz、閾値制御信号S170X及びS170Y、並びに、閾値電圧VthX及びVthYがそれぞれ描写されている。
【0148】
時刻t21において、NMOSFET10Xがオンされると、センス電圧VsXが上昇し始める。ただし、時刻t21では、センス電圧VsXが参照電圧VIsetXよりも低いので、比較信号VCMPX(=内部信号SyX)がローレベルとなる。従って、閾値制御信号S170Xがローレベルとなるので、閾値電圧VthXとして内部設定値VthXHが選択された状態となる。なお、時刻t21では、NMOSFET10Yがオフされたままであり、センス電圧VsYが0Vに維持されている。
【0149】
時刻t22において、センス電圧VsXが参照電圧VIsetXを上回ると、比較信号VCMPX(=内部信号SyX)がハイレベルとなり、充電電圧Vdが上昇し始める。ただし、時刻t22では、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefよりも低いので、内部信号Sxがローレベルのままとなる。従って、閾値制御信号S170Xがローレベルに維持され、閾値電圧VthXとして内部設定値VthXHが選択されたままとなる。そのため、センス電圧VsXが外部設定値VthXL(=VIsetX)を上回っていても過電流保護は掛からない。なお、時刻t22では、NMOSFET10Yがオフされたままであり、センス電圧VsYが0Vに維持されている。
【0150】
時刻t23では、NMOSFET10Yがオンされて、センス電圧VsYが上昇し始める。なお、時刻t23では、センス電圧VsYが参照電圧VIsetYよりも低いので、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)がローレベルとなる。従って、閾値制御信号S170Yがローレベルとなるので、閾値電圧VthYとして内部設定値VthYHが選択された状態となる。
【0151】
時刻t24において、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefを上回ると、内部信号Sxがハイレベルとなる。また、時刻t24では、比較信号VCMPX(=内部信号SyX)が既にハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)となっている。従って、閾値制御信号S170Xがハイレベルにセットされ、閾値電圧VthXが外部設定値VthXLに切り替わる。その結果、時刻t24以降、センス電圧VsXが外部設定値VthXLを上回らないように、過電流保護が掛かるようになる。また、内部信号Sxがハイレベルになると、内部信号Szも所定の放電期間Tdchgに亘ってハイレベルとなるので、充電電圧Vdが0Vまで放電される。
【0152】
すなわち、閾値電圧VthXに着目すると、閾値電圧VthXが内部設定値VthXHとされているときには、センス電圧VsXが参照電圧VIsetXを上回ったまま、所定のマスク期間Tmask(=時刻t22~t24)が経過した時点で、閾値電圧VthXが外部設定値VthXLに切り替えられる。従って、負荷3Xに応じた過電流保護を実現することが可能となる。
【0153】
一方、時刻t24では、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)がローレベル(=リセット時の論理レベル)に維持されている。従って、内部信号Sxがハイレベルに立ち上がっても、閾値制御信号S170Yがローレベルに維持されるので、閾値電圧VthYとして内部設定値VthYHが選択されたままとなる。
【0154】
時刻t25において、センス電圧VsYが参照電圧VIsetYを上回ると、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)がハイレベルとなるので、充電電圧Vdが再び上昇し始める。ただし、時刻t25では、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefよりも低いので、内部信号Sxがローレベルのままとなる。従って、閾値制御信号S170Yがローレベルに維持され、閾値電圧VthYとして内部設定値VthYHが選択されたままとなる。そのため、センス電圧VsYが外部設定値VthYL(=VIsetY)を上回っていても過電流保護は掛からない。
【0155】
なお、以下の説明では、比較信号VCMPXの立上りタイミングと比較信号VCMPYの立上りタイミングとの差(=第1チャンネルの起動タイミングと第2チャンネルの起動タイミングとの差)をシフト期間Tshiftと呼ぶ。
【0156】
時刻t26において、センス電圧VsXが参照電圧VIsetXを下回ると、比較信号VCMPX(=内部信号SyX)がローレベルとなる。その結果、閾値制御信号S170Xがローレベルにリセットされるので、閾値電圧VthXが内部設定値VthXHに切り替わる。
【0157】
すなわち、閾値電圧VthXに着目すると、閾値電圧VthXが外部設定値VthXLとされているときには、センス電圧VsXが参照電圧VIsetXを下回った時点で、閾値電圧VthXが内部設定値VthXHに切り替えられる。
【0158】
時刻t27において、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefを上回ると、内部信号Sxがハイレベルとなる。また、時刻t27では、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)が既にハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)となっている。従って、閾値制御信号S170Yがハイレベルにセットされ、閾値電圧VthYが外部設定値VthXLに切り替わる。その結果、時刻t27以降、センス電圧VsYが外部設定値VthYLを上回らないように、過電流保護が掛かるようになる。また、内部信号Sxがハイレベルになると、内部信号Szも所定の放電期間Tdchgに亘ってハイレベルとなるので、充電電圧Vdが0Vまで放電される。
【0159】
すなわち、閾値電圧VthYに着目すると、閾値電圧VthYが内部設定値VthYHとされているときには、センス電圧VsYが参照電圧VIsetYを上回ったまま、所定のマスク期間Tmask(=時刻t25~t27)が経過した時点で、閾値電圧VthYが外部設定値VthYLに切り替えられる。従って、負荷3Yに応じた過電流保護を実現することが可能となる。
【0160】
なお、時刻t27では、比較信号VCMPX(=内部信号SyX)がすでにローレベル(=リセット時の論理レベル)に立ち下がっている。従って、内部信号Sxがハイレベルに立ち上がっても、閾値制御信号S170Xがローレベルに維持されるので、閾値電圧VthXとして内部設定値VthXHが選択されたままとなる。
【0161】
時刻t28において、センス電圧VsYが参照電圧VIsetYを下回ると、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)がローレベルとなる。その結果、閾値制御信号S170Yがローレベルにリセットされるので、閾値電圧VthYが内部設定値VthYHに切り替わる。
【0162】
すなわち、閾値電圧VthYに着目すると、閾値電圧VthYが外部設定値VthYLとされているときには、センス電圧VsYが参照電圧VIsetYを下回った時点で、閾値電圧VthYが内部設定値VthYHに切り替えられる。
【0163】
上記一連の閾値切替動作から分かるように、本実施例の閾値制御部170であれば、外部端子DLYの追加を要することなく、チャンネル毎にマスク期間Tmask(時刻t22~t23、及び、時刻t25~t27)を正しく設定することが可能となる。
【0164】
なお、本図では、Tshift>Tmaskである場合を例に挙げて説明を行ったが、Tshift≦Tmaskである場合には、上記一連の閾値切替動作に不具合を生じるおそれがある。以下では、その問題点について詳述する。
【0165】
図19は、第1実施例の問題点を示すタイミングチャートであり、上から順に、比較信号VCMPX及びVCMPY、内部信号Sx、並びに、閾値制御信号S170X及びS170Yについて、Tshift<Tmaskである場合の挙動が描写されている。
【0166】
本図の例では、Tshift<Tmaskであることから、時刻t31で比較信号VCMPXがハイレベルに立ち上がった後、マスク期間Tmaskが経過するよりも先に、時刻t32で比較信号VCMPYがハイレベルに立ち上がっている。
【0167】
従って、時刻t31からマスク期間Tmaskが経過し、時刻t33で内部信号Sxがハイレベルに立ち上がったときには、比較信号VCMPXだけでなく、比較信号VCMPYも既にハイレベルとなっている。そのため、時刻t33では、閾値制御信号S170X及びS170Yが同時にハイレベルとなる。
【0168】
この場合、先に起動した先発チャンネルには特に問題を生じないが、後から起動した後発チャンネルについては、シフト期間Tshiftの分だけマスク期間Tmaskが短くなるので、瞬時電流の確保に支障を来たすおそれがある。以下では、この問題点を解消することのできる閾値制御部170の第2実施例を提案する。
【0169】
<閾値制御部(第2実施例)>
図20は、閾値制御部170の第2実施例を示すブロック図である。本実施例の閾値制御部170は、先出の第1実施例(
図17)をベースとしつつ、放電制御部175において、内部信号Sxだけでなく、内部信号SyX及びSyY(比較信号VCMPX及びVCMPYと等価)と閾値制御信号S170X及びS170Yの入力も受け付ける点に特徴を有する。そこで、以下では、放電制御部175の構成と動作について重点的に説明する。
【0170】
図21は、放電制御部175の一構成例を示すブロック図である。本図の放電制御部175は、否定論理和演算器NOR1と、論理積演算器AND1~AND3と、論理和演算器OR1と、インバータINV1~INV3と、パルス生成部PG1と、抵抗R1と、キャパシタC1と、を含む。
【0171】
否定論理和演算器NOR1は、閾値制御信号S170X及びS170Yの否定論理和演算により、論理信号SAを生成する。従って、論理信号SAは、閾値制御信号S170X及びS170Yがいずれもローレベルであるときにハイレベルとなり、閾値制御信号S170X及びS170Yの少なくとも一方がハイレベルであるときにローレベルとなる。
【0172】
論理積演算器AND1は、内部信号SyX及びSyYの論理積演算により、論理信号SBを生成する。従って、論理信号SBは、内部信号SyX及びSyYがいずれもハイレベルであるときにハイレベルとなり、内部信号SyX及びSyYの少なくとも一方がローレベルであるときにローレベルとなる。
【0173】
論理積演算器AND2は、論理信号SA及びSBの論理積演算により、論理信号SCを生成する。従って、論理信号SCは、論理信号SA及びSBがいずれもハイレベルであるときにハイレベルとなり、論理信号SA及びSBの少なくとも一方がローレベルであるときにローレベルとなる。
【0174】
インバータINV1は、論理信号SCを論理反転して反転論理信号SCBを生成する。
【0175】
抵抗R1とキャパシタC1は、反転論理信号SCBを所定の時定数τ(=R×C)で鈍らせた積分波形の論理信号SDを生成する。
【0176】
インバータINV2及びINV3は、論理信号SDと所定の閾値(=インバータINV2及びINV3の論理反転閾値)とを比較して矩形波形の論理信号SEを生成する。
【0177】
論理積演算器AND3は、論理信号SC及びSEの論理積演算により、論理信号SFを生成する。従って、論理信号SFは、論理信号SC及びSEがいずれもハイレベルであるときにハイレベルとなり、論理信号SC及びSEの少なくとも一方がローレベルであるときにローレベルとなる。
【0178】
パルス生成部PG1は、内部信号Sxの立上りタイミングで論理信号SGに所定のパルス幅(=放電期間Tdchgに相当)を持つワンショットパルスを生成する。
【0179】
論理和演算器OR1は、論理信号SF及びSGの論理和演算により、内部信号Szを生成する。従って、内部信号Szは、論理信号SF及びSGがいずれもローレベルであるときにローレベルとなり、論理信号SF及びSGの少なくとも一方がハイレベルであるときにハイレベルとなる。
【0180】
図22は、第2実施例の閾値切替動作を示すタイミングチャートであり、上から順に、比較信号VCMPX及びVCMPY(内部信号SyX及びSyYと等価)、論理信号SA~SG、内部信号Sz、充電電圧Vd、内部信号Sx、及び、閾値制御信号S170X及びS170Yについて、Tshift<Tmaskである場合の挙動が描写されている。
【0181】
本図の例では、時刻t41で比較信号VCMPXがハイレベルに立ち上がった後、マスク期間Tmaskが経過するよりも先に、時刻t42で比較信号VCMPYがハイレベルに立ち上がっている。すなわち、時刻t42の時点では、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefに到達しておらず、内部信号Sxはハイレベルに立ち上がっていない。
【0182】
ここで、放電制御部175の内部動作に着目すると、時刻t42では、閾値制御信号S170X及びS170Yがいずれもローレベルであることから、論理信号SAがハイレベルとなっている。また、時刻t42では、比較信号CMPX及びCMPY(延いては内部信号SyX及びSyY)がいずれもハイレベルとなるので、論理信号SBがハイレベルに立ち上がる。従って、論理信号SCがハイレベルに立ち上がり、論理信号SDが時定数τで低下し始める。ただし、時刻t42の時点では、論理信号SDがインバータINV2の論理反転閾値よりも高いので、論理信号SEがハイレベルに維持されている。
【0183】
従って、時刻t42では、論理信号SC及びSEがいずれもハイレベルとなるので、論理信号SFがハイレベルに立ち上がり、延いては、内部信号Szがハイレベルに立ち上がる。その結果、充電電圧Vdが放電される。
【0184】
このように、比較信号CMPX及びCMPYの一方がハイレベルに立ち上がってキャパシタ177の充電動作が開始された後、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefを上回るよりも先に、比較信号CMPX及びCMPYの他方がハイレベルに立ち上がったときには、キャパシタ177が一旦放電されるので、マスク期間Tmaskの計時動作がリセットされる。
【0185】
その後、時刻t43において、論理信号SDがインバータINV2の論理反転閾値を下回ると、論理信号SEがローレベルに立ち下がる。その結果、論理信号SFがローレベルに立ち下がり、延いては、内部信号Szがローレベルに立ち下がるので、上記の放電動作が停止されて充電電圧Vdが再び上昇に転じる。
【0186】
なお、論理信号SFのハイレベル期間(=時刻t42~t43)は、充電電圧Vdの放電期間Tdchg2に相当する。この放電期間Tdchg2は、抵抗R1とキャパシタC1の時定数τに応じて任意に設定することが可能であり、例えば、先述の放電期間Tdchgと同値(例えば3μs)に設定すればよい。
【0187】
その後、時刻t44において、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefを上回ると、内部信号Sxがハイレベルに立ち上がる。この時点では、比較信号VCMPXだけでなく、比較信号VCMPYも既にハイレベルとなっている。そのため、時刻t44では、閾値制御信号S170X及びS170Yが同時にハイレベルとなる。
【0188】
上記の閾値切替動作により、後発チャンネルの閾値制御信号S170Yについては、そのマスク期間が本来の設定値(=Tmask)となる。一方、先発チャンネルの閾値制御信号S170Xについては、そのマスク期間が本来の設定値よりも長い値(=Tmask+α)となる。
【0189】
なお、時刻t44において、内部信号Sxがハイレベルに立ち上がると、論理信号SGに所定のパルス幅(=Tdchg)を持つワンショットパルスが生成されるので、内部信号Szがハイレベルとなり、充電電圧Vdが放電される。
【0190】
また、時刻t44において、閾値制御信号S170X及びS170Yがハイレベルに立ち上がると、論理信号SAがローレベルに立ち下がり、論理信号SCがローレベルに立ち下がる。その結果、論理信号SDが時定数τを持って上昇を開始し、論理信号SDがインバータINV2の論理反転閾値を上回った時点で、論理信号SEがハイレベルに立ち上がる。ただし、このときには、論理信号SCが既にローレベルとなっているので、論理信号SFはローレベルに維持されたままとなる。
【0191】
上記したように、本実施例の閾値制御部170であれば、Tshift<Tmaskであっても、後発チャンネルのマスク期間が短くならないので、瞬時電流の確保に支障を来たすおそれがなくなる。
【0192】
なお、本図では、Tshift<Tmaskである場合を例に挙げて説明を行ったが、Tshift=Tmask(またはTshift≒Tmask)というクリティカルな条件下では、第2実施例を採用してもなお、意図しない不具合を生じるおそれがある。以下では、その問題点について詳述する。
【0193】
図23は、第2実施例の問題点を示すタイミングチャートであり、上から順に、比較信号VCMPX及びVCMPY(内部信号SyX及びSyYと等価)、充電電圧Vd、内部信号Sx、並びに、閾値制御信号S170X及びS170Yについて、Tshift=Tmaskである場合の挙動が描写されている。
【0194】
本図の例では、Tshift=Tmaskであることから、時刻t51において、比較信号VCMPXがハイレベルに立ち上がった後、時刻t52において、マスク期間Tmaskが経過すると同時、比較信号VCMPYがハイレベルに立ち上がっている。
【0195】
ここで、先述の放電動作(
図22の時刻t42を参照)が間に合わずに、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefを上回り、内部信号Sxがハイレベルに立ち上がると、閾値制御信号S170X及びS170Yが同時にハイレベルとなる。その結果、後発チャンネルのマスク期間がゼロとなるので、瞬時電流を確保することができなくなる。以下では、この問題点を解消することのできる閾値制御部170の第3実施例を提案する。
【0196】
<閾値制御部(第3実施例)>
図24は、閾値制御部170の第3実施例を示すブロック図である。本実施例の閾値制御部170は、先出の第2実施例(
図20)をベースとしつつ、遅延部179X及び179Yが設けられている点に特徴を有する。そこで、第2実施例と同様の構成要素については、
図20と同一の符号を付すことにより重複した説明を割愛し、以下では、遅延部179X及び179Yについて重点的な説明を行う。
【0197】
遅延部179Xは、内部信号SyX(比較信号VCMPXと等価)に遅延を与えて遅延信号SyXdを生成する。なお、遅延部179Xは、遅延信号SyXdの立上りタイミングにのみ遅延を与え、遅延信号SyXdの立下りタイミングには遅延を与えない。より具体的に述べると、遅延信号SyXdは、内部信号SyXがハイレベルに立ち上がってから遅延時間td(例えば3μs)だけ遅れてハイレベルに立ち上がり、内部信号SyXがローレベルに立ち下がると同時にローレベルに立ち下がる。
【0198】
遅延部179Yは、内部信号SyY(比較信号VCMPYと等価)に遅延を与えて遅延信号SyYdを生成する。なお、遅延部179Yは、遅延信号SyYdの立上りタイミングにのみ遅延を与え、遅延信号SyYdの立下りタイミングには遅延を与えない。より具体的に述べると、遅延信号SyYdは、内部信号SyYがハイレベルに立ち上がってから遅延時間tdだけ遅れてハイレベルに立ち上がり、内部信号SyYがローレベルに立ち下がると同時にローレベルに立ち下がる。
【0199】
上記した遅延部179X及び179Yの追加に伴い、RSフリップフロップ174X及び174Yには、それぞれ、内部信号SyX及びSyYに代えて、遅延信号SyXd及びSyYdが入力されている。
【0200】
図25は、第3実施例の閾値切替動作を示すタイミングチャートであり、上から順に、比較信号VCMPX(内部信号SyXと等価)、遅延信号SyXd、比較信号VCMPY(内部信号SyYと等価)、遅延信号SyYd、内部信号Sz、充電電圧Vd、内部信号Sx、並びに、閾値制御信号S170X及びS170Yについて、Tshift=Tmaskである場合の挙動が描写されている。
【0201】
本図の例では、Tshift=Tmaskであることから、時刻t61で比較信号VCMPX(=SyX)がハイレベルに立ち上がった後、時刻t62において、マスク期間Tmaskが経過すると同時、比較信号VCMPY(=SyY)がハイレベルに立ち上がっている。一方、遅延信号SyXd及びSyYdは、それぞれ、時刻t61及びt62から所定の遅延時間tdが経過した時点でハイレベルに立ち上がっている。
【0202】
なお、時刻t62で充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefを上回ると、内部信号Sxがハイレベルとなる。このとき、遅延信号SyXdは、既にハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)に立ち上がっている。従って、閾値制御信号S170Xは、時刻t62でハイレベルにセットされる。
【0203】
一方、時刻t62では、遅延信号SyYdが未だローレベル(=リセット時の論理レベル)に維持されている。従って、内部信号Sxがハイレベルに立ち上がっても、閾値制御信号S170Yは、ローレベルにリセットされたままとなる。
【0204】
また、内部信号Sxがハイレベルに立ち上がると、内部信号Szが所定の放電期間Tdchgに亘ってハイレベルとなるので、充電電圧Vdが0Vまで放電される。その後、時刻t63において、内部信号Szがローレベルに立ち下がると、上記の放電動作が停止されて充電電圧Vdが再び上昇に転じる。
【0205】
時刻t64において、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefを上回ると、内部信号Sxが再びハイレベルに立ち上がる。このとき、遅延信号SyYdは、既にハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)に立ち上がっている。従って、閾値制御信号S170Yは、時刻t64でハイレベルにセットされる。
【0206】
また、内部信号Sxがハイレベルに立ち上がると、内部信号Szが所定の放電期間Tdchgに亘ってハイレベルとなるので、充電電圧Vdが0Vまで放電される。その後、時刻t65において、内部信号Szがローレベルに立ち下がると、上記の放電動作が停止される。なお、この時点で2チャンネル分の充電動作は完了してことから、充電電圧Vdが再び上昇に転じることはない。
【0207】
その後、時刻t66において、比較信号VCMPX(=内部信号SyX)がローレベルに立ち下がると、遅延信号SyXdも遅滞なくローレベルに立ち下がる。その結果、閾値制御信号S170Xがローレベルにリセットされる。
【0208】
同様に、時刻t67において、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)がローレベルに立ち下がると、遅延信号SyYdも遅滞なくローレベルに立ち下がる。その結果、閾値制御信号S170Yがローレベルにリセットされる。
【0209】
このように、本実施例の閾値制御部170では、内部信号Sxと遅延信号SyXd及びSyYdとを用いて閾値制御信号S170X及びS170Yが生成される。そのため、Tshift≦Tmaskであるときには、遅延信号SyXd及びSyYdがハイレベルに立ち上がるよりも先に、比較信号VCMPX及びVCMPYの立上りタイミングで、必ず充電電圧Vdが放電されることになる。
【0210】
従って、Tshift=Tmaskというクリティカルな条件下でも、閾値制御信号S170X及びS170Yが同時にハイレベルとなることはないので、チャンネル毎にマスク期間Tmaskを正しく設定することが可能となる。
【0211】
<フローチャート>
図26は、2チャンネル化された閾値切替動作の一例を示すフローチャートである。フローが開始されると、まず、ステップS201では、起動しているチャンネルの閾値電圧Vth*が内部設定値Vth*H(ただし「*」は「X」及び「Y」の少なくとも一方、以下も同様)に設定される(
図18の時刻t21及びt23に相当)。
【0212】
次に、ステップS202では、比較信号VCMPX及びVCMPYの一方がハイレベルであるか否か(すなわち、片方のチャンネルだけが起動している状態か否か)の判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS203に進められる(
図18の時刻t22に相当)。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS208に進められる。
【0213】
ステップS203では、ステップS202でのイエス判定を受けて、キャパシタ177の充電が開始される(
図18の時刻t22に相当)。
【0214】
次に、ステップS204では、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefよりも高いか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS205に進められる(
図18の時刻t24に相当)。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS204に戻されて、本ステップでの判定が繰り返される(
図18の時刻t22~t24に相当)。
【0215】
ステップS205では、ステップS204でのイエス判定を受けてキャパシタ177が放電される。また、ステップS206では、起動しているチャンネルの閾値電圧Vth*が外部設定値Vth*Lに切り替えられる。これらのステップS205及びS206は、
図18の時刻t24に相当する。
【0216】
次に、ステップS207では、起動しているチャンネルのセンス電圧Vs*が参照電圧VIset*よりも低いか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS201に戻され、閾値電圧Vth*が再び内部設定値Vth*Hに切り替えられる(
図18の時刻t26に相当)。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS207に戻されて本ステップでの判定が繰り返される(
図18の時刻t24~t26に相当)。
【0217】
一方、ステップS208では、ステップS202でのノー判定を受けて、比較信号VCMPX及びVCMPYの両方がハイレベルであるか否か(すなわち、両方のチャンネルがいずれも起動している状態か否か)の判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS209に進められる(
図18の時刻t23、
図22の時刻t42、または、
図25の時刻t62に相当)。一方、ノー判定が下された場合には、いずれのチャンネルも起動していないので、フローがステップS201に戻される。
【0218】
ステップS209では、ステップS208でのイエス判定を受けて、閾値制御信号S170X及びS170Yの一方がハイレベルであるか否か(すなわち、先発チャンネルの閾値電圧Vth*が既に外部設定値Vth*Lに切り替わっている状態か否か)の判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS203に進められて、ステップS203~S207で後発チャンネルの閾値切替動作が行われる(
図18の時刻t25~t28に相当)。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS210に進められる。
【0219】
ステップS210では、ステップS209でのノー判定を受けて、閾値制御信号S170X及びS170Yの両方にローレベルであるか否か(すなわち、先発チャンネルのマスク期間Tmaskが経過する前に後発チャンネルの起動タイミングが到来したか否か)の判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS211に進められる(
図22の時刻t42に相当)。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS214に進められる。
【0220】
ステップS211では、ステップS210でのイエス判定を受けて、キャパシタ177が一旦放電されたのち、再充電が開始される(
図22の時刻t42~t43に相当)。
【0221】
次に、ステップS212では、充電電圧Vdがマスク期間満了電圧Vdrefよりも高いか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS213に進められる(
図22の時刻t44に相当)。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS212に戻されて、本ステップでの判定が繰り返される(
図22の時刻t43~t44に相当)。
【0222】
ステップS213では、ステップS212でのイエス判定を受けてキャパシタ177が放電される。また、ステップS214では、両チャンネルの閾値電圧VthX及びVthYLが外部設定値VthXL及びVthYLに同時に切り替えられる。これらのステップS205及びS206は、
図22の時刻t44に相当する。
【0223】
次に、ステップS215では、両チャンネルのセンス電圧VsX及びVsYが参照電圧VIsetX及びVIsetYよりも低いか否かの判定が行われる。ここで、イエス判定が下された場合には、フローがステップS201に戻されて、次回の起動を待機する状態となる。一方、ノー判定が下された場合には、フローがステップS215に戻されて、本ステップでの判定が繰り返される。
【0224】
<閾値制御部(第4実施例)>
図27は、閾値制御部170の第4実施例を示すブロック図である。本実施例の閾値制御部170は、先出の第2実施例(
図20)をベースとしつつ、コンパレータ17A、抵抗ラダー17B、並びに、ラッチ17CX及び17CYが設けられている点に特徴を有する。そこで、既出の構成要素については、
図20と同一の符号を付すことにより重複した説明を割愛し、以下では、新規の構成要素(及びこれに関係のある既出の構成要素)について詳細に説明する。
【0225】
コンパレータ171は、非反転入力端(+)に入力される充電電圧Vdと、反転入力端(-)に入力される基準電圧VH(=先のマスク期間満了電圧Vdref)とを比較して内部信号SxH(=先の内部信号Sx)を生成する。従って、内部信号SxHは、Vd>VHであるときにハイレベルとなり、Vd<VHであるときにローレベルとなる。
【0226】
コンパレータ17Aは、非反転入力端(+)に入力される充電電圧Vdと、反転入力端(-)に入力される基準電圧VL(ただし、VL<VHであり、例えば、VL=0.2~0.3×VH)とを比較して内部信号SxLを生成する。内部信号SxLは、Vd>VLであるときにハイレベルとなり、Vd<VLであるときにローレベルとなる。
【0227】
抵抗ラダー17Bは、基準電源端と接地端との間に直列接続された抵抗Ra~Rcを含み、所定の基準電圧Vrefを抵抗分圧することにより、基準電圧VH(={(Rb+Rc)/(Ra+Rb+Rc)}×Vref)と、これよりも低い基準電圧VL(={Rc/(Ra+Rb+Rc)}×Vref)をそれぞれ生成する。
【0228】
ラッチ17CXは、内部信号SxLの立上りタイミングで内部信号SyXをラッチすることにより、ラッチ信号SCXを生成する。
【0229】
ラッチ17CYは、内部信号SxLの立上りタイミングで内部信号SyYをラッチすることにより、ラッチ信号SCYを生成する。
【0230】
RSフリップフロップ174Xは、ラッチ17CXの導入に伴い、内部信号SyXに代えてラッチ信号SCXの入力を受け付けている。従って、RSフリップフロップ174Xは、内部信号SxHの立上りタイミングで閾値制御信号S170Xをハイレベルにセットする一方、ラッチ信号SCXの立下りタイミングで閾値制御信号S170Xをローレベルにリセットする。なお、RSフリップフロップ174Xは、リセット優先型であり、ラッチ信号SCXがローレベルであるときには、たとえ内部信号SxHがハイレベルに立ち上がっても、閾値制御信号S170Xがローレベルに維持される。
【0231】
RSフリップフロップ174Yは、ラッチ17CYの導入に伴い、内部信号SyYに代えてラッチ信号SCYの入力を受け付けている。従って、RSフリップフロップ174Yは、内部信号SxHの立上りタイミングで閾値制御信号S170Yをハイレベルにセットする一方、ラッチ信号SCYの立下りタイミングで閾値制御信号S170Yをローレベルにリセットする。なお、RSフリップフロップ174Yは、リセット優先型であり、ラッチ信号SCYがローレベルであるときには、たとえ内部信号SxHがハイレベルに立ち上がっても、閾値制御信号S170Yがローレベルに維持される。
【0232】
放電制御部175は、ラッチ信号SCX及びSCYと閾値制御信号S170X及びS170Yに応じて内部信号Szを生成することによりキャパシタ177の放電制御を行う。
【0233】
図28は、第4実施例で用いられる放電制御部175の一構成例を示すブロック図である。本構成例の放電制御部175は、バッファBUF1及びBUF2と、論理積演算器AND4及びAND5と、否定論理和演算器NOR2と、を含む。
【0234】
バッファBUF1は、閾値制御信号S170Xの入力を受け付けて論理信号BUFO1(=S170X)を出力する。
【0235】
バッファBUF2は、閾値制御信号S170Yの入力を受け付けて論理信号BUFO2(=S170Y)を出力する。
【0236】
論理積演算器AND4は、論理信号BUFO1とラッチ信号SCXの論理積演算により論理信号ANDO1を生成する。従って、論理信号ANDO1は、論理信号BUFO1とラッチ信号SCXがいずれもハイレベルであるときにハイレベルとなり、論理信号BUFO1とラッチ信号SCXの少なくとも一方がローレベルであるときにローレベルとなる。
【0237】
論理積演算器AND5は、論理信号BUFO2とラッチ信号SCYの論理積演算により論理信号ANDO2を生成する。従って、論理信号ANDO2は、論理信号BUFO2とラッチ信号SCYがいずれもハイレベルであるときにハイレベルとなり、論理信号BUFO2とラッチ信号SCYの少なくとも一方がローレベルであるときにローレベルとなる。
【0238】
否定論理和演算器NOR2は、論理信号ANDO1及びANDO2の否定論理和演算により、内部信号Szを生成する。従って、内部信号Szは、論理信号ANDO1及びANDO2がいずれもローレベルであるときにハイレベルとなり、論理信号ANDO1及びANDO2の少なくとも一方がハイレベルであるときにローレベルとなる。
【0239】
図29は、第4実施例における閾値切替動作の第1例を示したタイミングチャートであり、上から順に、センス電圧VsX及びVsY、比較信号VCMPX(内部信号SyXと等価)、ラッチ信号SCX、比較信号VCMPY(内部信号SyYと等価)、ラッチ信号SCY、充電電圧Vd、閾値制御信号S170X及びS170Y、内部信号SxH及びSxL、並びに、内部信号Szが描写されている。
【0240】
以下の説明では、先に起動した先発チャンネルの比較信号(本図では比較信号VCMPX)がハイレベルに立ち上がってから、充電電圧Vdが基準電圧VLに達するまでの期間をマスク期間Tmask2と呼ぶ。
【0241】
なお、本図では、Tmask2<Tshift<Tmaskである場合の挙動が描写されている。
【0242】
時刻t70において、NMOSFET10Xがオンされると、センス電圧VsXが上昇し始める。ただし、この時点では、センス電圧VsXが参照電圧VIsetXよりも低いので、比較信号VCMPX(=内部信号SyX)はローレベルとなる。また、NMOSFET10Yはオフされたままであり、センス電圧VsYが0Vに維持されているので、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)はローレベルとなる。なお、この時点では、内部信号Szがハイレベルとなり、充電電圧Vdが0V(<VL)となるので、内部信号SxH及びSxLがいずれもローレベルとなる。また、ラッチ信号SCX及びSCYがいずれもローレベル(=リセット時の論理レベル)となるので、閾値制御信号S170X及びS170Yがいずれもローレベルとなる。
【0243】
時刻t71において、センス電圧VsXが参照電圧VIsetXを上回ると、比較信号VCMPX(=内部信号SyX)がハイレベルとなり、内部信号Szがローレベルとなるので、充電電圧Vdが上昇し始める。ただし、時刻t71では、充電電圧Vdが基準電圧VLよりも低いので、内部信号SxH及びSxLがいずれもローレベルのままとなる。また、ラッチ信号SCX及びSCYもローレベルに維持されるので、閾値制御信号S170X及びS170Yがいずれもローレベルのままとなる。なお、時刻t71では、NMOSFET10Yがオフされたままであり、センス電圧VsYが0Vに維持されているので、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)はローレベルのままとなる。
【0244】
時刻t72では、NMOSFET10Yがオンされて、センス電圧VsYが上昇し始める。なお、時刻t72では、センス電圧VsYが参照電圧VIsetYよりも低いので、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)がローレベルのままとなる。また、この時点では、充電電圧Vdが基準電圧VLよりも低いので、内部信号SxH及びSxLがいずれもローレベルのままとなる。また、ラッチ信号SCX及びSCYもローレベルに維持されるので、閾値制御信号S170X及びS170Yがローレベルのままとなる。
【0245】
時刻t73において、充電電圧Vdが基準電圧VLを上回ると、内部信号SxLがハイレベルとなる。この時点では、比較信号VCMPX(=内部信号SyX)が既にハイレベルとなっているので、ラッチ信号SCXがハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)に立ち上がる。ただし、充電電圧Vdが基準電圧VHよりも低いので、内部信号SxHはローレベルのままとなる。従って、閾値制御信号S170Xはローレベルに維持される。一方、内部信号SxLがハイレベルに立ち上がった時点では、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)がローレベルなので、ラッチ信号SCYはローレベルのままとなる。
【0246】
時刻t74において、センス電圧VsYが参照電圧VIsetYを上回ると、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)がハイレベルとなる。ただし、内部信号SxLがハイレベルに立ち上がった後なので、ラッチ信号SCYはローレベルのままとなる。
【0247】
時刻t75において、充電電圧Vdが基準電圧VHを上回ると、内部信号SxHがハイレベルとなる。この時点では、ラッチ信号SCXが既にハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)となっているので、閾値制御信号S170Xがハイレベルにセットされる。一方、ラッチ信号SCYはローレベル(=リセット時の論理レベル)に維持されているので、内部信号SxHがハイレベルに立ち上がっても、閾値制御信号S170Yはローレベルに維持される。また、時刻t75では、内部信号Szがハイレベルとなるので、充電電圧Vdの放電動作が開始される。その結果、Vd<VHとなるので、内部信号SxHがローレベルに立ち下がる。
【0248】
時刻t76において、充電電圧Vdが基準電圧VLを下回ると、内部信号SxLがローレベルに立ち下がる。このとき、内部信号Szがローレベルとなり、充電電圧Vdの放電動作が停止されるので、充電電圧Vdが再び上昇に転じる。その結果、内部信号SxLが遅滞なくハイレベルに立ち上がる。なお、この時点では、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)が既にハイレベルとなっているので、ラッチ信号SCYがハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)に立ち上がる。ただし、充電電圧Vdが基準電圧VHよりも低いので、内部信号SxHはローレベルのままとなる。従って、閾値制御信号S170Yはローレベルに維持される。
【0249】
時刻t77において、充電電圧Vdが基準電圧VHを上回ると、内部信号SxHがハイレベルとなる。この時点では、ラッチ信号SCYが既にハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)となっているので、閾値制御信号S170Yがハイレベルにセットされる。また、内部信号Szがハイレベルとなるので、充電電圧Vdの放電動作が開始される。その結果、Vd<VHとなるので、内部信号SxHがローレベルに立ち下がる。
【0250】
時刻t78において、充電電圧Vdが基準電圧VLを下回ると、内部信号SxLがローレベルに立ち下がる。この時点では、閾値制御信号S170X及びS170Yがいずれもハイレベルとなっているので、内部信号Szがハイレベルに維持される。その結果、充電電圧Vdの放電動作が継続されるので、充電電圧Vdは0Vまで低下する。
【0251】
まとめると、放電制御部175は、先発チャンネルの比較信号(本図では比較信号VCMPX)がハイレベルに立ち上がった後、VL<Vd<VHであるときに、後発チャンネルの比較信号(本図では比較信号VCMPY)が立ち上がった場合、その時点でキャパシタ177の放電を開始するのではなく、Vd>VHとなった時点でキャパシタ177の放電を開始し、その後、Vd<VLとなった時点でキャパシタ177の放電を停止する。
【0252】
上記一連の閾値切替動作から分かるように、本実施例の閾値制御部170であれば、外部端子DLYの追加を要することなく、チャンネル毎に必要最小限のマスク期間Tmask(ないしはTmask+β)を設定することが可能となる。
【0253】
なお、先出の第2実施例(
図20)では、Tshift<Tmaskである場合、後発チャンネルのマスク期間が所望値Tmaskに固定される一方、先発チャンネルのマスク期間が所望値Tmaskよりも長い値Tmask+α(最大で2×Tmask)となる。
【0254】
これに対して、本実施例では、Tmask2<Tshift<Tmaskである場合、先発チャンネルのマスク期間が所望値Tmaskに固定される一方、後発チャンネルのマスク期間が所望値Tmaskよりも長い値Tmask+β(最大で2×(Tmask-Tmask2))となる。例えば、Tmask2=Tmask/4(すなわちVL=VH/4)である場合、後発チャンネルのマスク期間は、その最大値が所望値Tmaskの1.5倍となる。
【0255】
従って、第2実施例(
図20)と第4実施例(
図27)は、先発チャンネルと後発チャンネルのうち、いずれのマスク期間を固定すべきかに応じて使い分けることができる。
【0256】
図30は、第4実施例における閾値切替動作の第2例を示すタイミングチャートであって、上から順に、センス電圧VsX及びVsY、比較信号VCMPX(内部信号SyXと等価)、ラッチ信号SCX、比較信号VCMPY(内部信号SyYと等価)、ラッチ信号SCY、充電電圧Vd、閾値制御信号S170X及びS170Y、内部信号SxH及びSxL、並びに、内部信号Szについて、Tmask<Tshiftである場合の挙動が描写されている。
【0257】
なお、時刻t81以前の動作は、
図29における時刻t71以前の動作と変わらないので、重複した説明を割愛し、以下では、時刻t82以降の動作について説明する。
【0258】
時刻t82において、充電電圧Vdが基準電圧VLを上回ると、内部信号SxLがハイレベルとなる。この時点では、比較信号VCMPX(=内部信号SyX)が既にハイレベルとなっているので、ラッチ信号SCXがハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)に立ち上がる。ただし、充電電圧Vdが基準電圧VHよりも低いので、内部信号SxHはローレベルのままとなる。従って、閾値制御信号S170Xはローレベルに維持される。なお、時刻t82では、NMOSFET10Yがオフされたままであり、センス電圧VsYが0Vに維持されている。従って、内部信号SxLがハイレベルに立ち上がった時点では、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)がローレベルなので、ラッチ信号SCYはローレベルのままとなる。
【0259】
時刻t83において、充電電圧Vdが基準電圧VHを上回ると、内部信号SxHがハイレベルとなる。この時点では、ラッチ信号SCXが既にハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)となっているので、閾値制御信号S170Xがハイレベルにセットされる。一方、ラッチ信号SCYはローレベル(=リセット時の論理レベル)に維持されているので、内部信号SxHがハイレベルに立ち上がっても、閾値制御信号S170Yはローレベルに維持される。また、時刻t83では、内部信号Szがハイレベルとなるので、充電電圧Vdの放電動作が開始される。その結果、Vd<VHとなるので、内部信号SxHがローレベルに立ち下がる。
【0260】
時刻t84において、充電電圧Vdが基準電圧VLを下回ると、内部信号SxLがローレベルに立ち下がる。このとき、内部信号Szがハイレベルに維持されて、充電電圧Vdの放電動作が継続されるので、充電電圧Vdは0Vまで低下する。
【0261】
時刻t85において、NMOSFET10Yがオンされると、センス電圧VsYが上昇し始める。ただし、この時点では、センス電圧VsYが参照電圧VIsetYよりも低いので、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)はローレベルとなる。
【0262】
時刻t86において、センス電圧VsYが参照電圧VIsetYを上回ると、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)がハイレベルとなり、内部信号Szがローレベルとなるので、充電電圧Vdが上昇し始める。ただし、時刻t86では、充電電圧Vdが基準電圧VLよりも低いので、内部信号SxH及びSxLがいずれもローレベルのままとなる。
【0263】
時刻t87において、充電電圧Vdが基準電圧VLを上回ると、内部信号SxLがハイレベルとなる。この時点では、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)が既にハイレベルとなっているので、ラッチ信号SCYがハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)に立ち上がる。ただし、充電電圧Vdが基準電圧VHよりも低いので、内部信号SxHはローレベルのままとなる。従って、閾値制御信号S170Yはローレベルに維持される。
【0264】
時刻t88において、充電電圧Vdが基準電圧VHを上回ると、内部信号SxHがハイレベルとなる。この時点では、ラッチ信号SCYが既にハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)となっているので、閾値制御信号S170Yがハイレベルにセットされる。また、内部信号Szがハイレベルとなるので、充電電圧Vdの放電動作が開始される。その結果、Vd<VHとなるので、内部信号SxHがローレベルに立ち下がる。
【0265】
時刻t89において、充電電圧Vdが基準電圧VLを下回ると、内部信号SxLがローレベルに立ち下がる。この時点では、閾値制御信号S170X及びS170Yがいずれもハイレベルとなっているので、内部信号Szがハイレベルに維持される。その結果、充電電圧Vdの放電動作が継続されるので、充電電圧Vdは0Vまで低下する。
【0266】
このように、Tmask<Tshiftである場合には、先発チャンネルだけでなく、後発チャンネルについても、それぞれのマスク期間を所望値Tmaskに設定することが可能となる。
【0267】
図31は、第4実施例における閾値切替動作の第3例を示すタイミングチャートであって、上から順に、センス電圧VsX及びVsY、比較信号VCMPX(内部信号SyXと等価)、ラッチ信号SCX、比較信号VCMPY(内部信号SyYと等価)、ラッチ信号SCY、充電電圧Vd、閾値制御信号S170X及びS170Y、内部信号SxH及びSxL、並びに、内部信号Szについて、Tshift<Tmask2である場合の挙動が描写されている。
【0268】
時刻t90において、NMOSFET10Xがオンされると、センス電圧VsXが上昇し始める。ただし、この時点では、センス電圧VsXが参照電圧VIsetXよりも低いので、比較信号VCMPX(=内部信号SyX)はローレベルとなる。また、NMOSFET10Yはオフされたままであり、センス電圧VsYが0Vに維持されているので、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)はローレベルとなる。なお、この時点では、内部信号Szがハイレベルとなり、充電電圧Vdが0V(<VL)となるので、内部信号SxH及びSxLがいずれもローレベルとなる。また、ラッチ信号SCX及びSCYがいずれもローレベル(=リセット時の論理レベル)となるので、閾値制御信号S170X及びS170Yがいずれもローレベルとなる。
【0269】
時刻t91において、NMOSFET10Yがオンされると、センス電圧VsYが上昇し始める。ただし、この時点では、センス電圧VsYが参照電圧VIsetYよりも低いので、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)はローレベルとなる。
【0270】
時刻t92において、センス電圧VsXが参照電圧VIsetXを上回ると、比較信号VCMPX(=内部信号SyX)がハイレベルとなり、内部信号Szがローレベルとなるので、充電電圧Vdが上昇し始める。ただし、時刻t92では、充電電圧Vdが基準電圧VLよりも低いので、内部信号SxH及びSxLがいずれもローレベルのままとなる。また、ラッチ信号SCX及びSCYもローレベルに維持されるので、閾値制御信号S170X及びS170Yがいずれもローレベルのままとなる。
【0271】
時刻t93において、センス電圧VsYが参照電圧VIsetYを上回ると、比較信号VCMPY(=内部信号SyY)がハイレベルとなる。
【0272】
時刻t94において、充電電圧Vdが基準電圧VLを上回ると、内部信号SxLがハイレベルとなる。この時点では、比較信号VCMPX(=内部信号SyX)及びVCMPY(=内部信号SyY)がいずれもハイレベルとなっているので、ラッチ信号SCX及びSCYがいずれもハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)に立ち上がる。ただし、充電電圧Vdが基準電圧VHよりも低いので、内部信号SxHはローレベルのままとなる。従って、閾値制御信号S170X及びS170Yはいずれもローレベルに維持される。
【0273】
時刻t95において、充電電圧Vdが基準電圧VHを上回ると、内部信号SxHがハイレベルとなる。この時点では、ラッチ信号SCX及びSCYがいずれもハイレベル(=リセット解除時の論理レベル)となっているので、閾値制御信号S170X及びS170Yがいずれもハイレベルにセットされる。また、内部信号Szがハイレベルとなるので、充電電圧Vdの放電動作が開始される。その結果、Vd<VHとなるので、内部信号SxHがローレベルに立ち下がる。
【0274】
時刻t96において、充電電圧Vdが基準電圧VLを下回ると、内部信号SxLがローレベルに立ち下がる。この時点では、閾値制御信号S170X及びS170Yがいずれもハイレベルとなっているので、内部信号Szがハイレベルに維持される。その結果、充電電圧Vdの放電動作が継続されるので、充電電圧Vdは0Vまで低下する。
【0275】
このように、Tshift<Tmask2である場合には、後発チャンネルのマスク期間が所望値Tmaskよりもシフト期間Tshift(最大でマスク期間Tmask2)の分だけ短くなる。例えば、例えば、Tmask2=Tmask/4(すなわちVL=VH/4)である場合、後発チャンネルのマスク期間は、その最小値が所望値Tmaskの0.75倍となる。
【0276】
従って、マスク期間Tmask2(すなわち基準電圧VL)は、Tshift<Tmask2となる場合であっても、後発チャンネルのマスク期間が短くなり過ぎないように、適切に設定することが望ましい。
【0277】
なお、上記では、単一の外部端子DLYを用いて2チャンネルの閾値切替制御を行う例を挙げたが、3チャンネル以上の閾値切替制御を行うことも可能である。
【0278】
<マルチプレクサ>
図32は、これまでに説明してきた半導体集積回路装置1の2チャンネル化に伴い、状態報知信号Soの出力段として、マルチプレクサを導入した例を示すブロック図である。本構成例の半導体集積回路装置1には、出力電流検出部80X及び80Yと、信号出力部90X及び90Yと、マルチプレクサ100と、外部端子T5と、が集積化されている。
【0279】
出力電流検出部80Xは、出力電流IoXに応じたセンス電流IsX’を生成して信号出力部90Xに出力する。
【0280】
出力電流検出部80Yは、出力電流IoYに応じたセンス電流IsY’を生成して信号出力部90Yに出力する。
【0281】
信号出力部90Xは、制御ロジック部40Xから入力される出力選択信号S2Xに基づいて、センス電流IsX’(=出力電流IoXの検出結果に相当)と固定電圧V90(=異常フラグに相当)の一方を第1状態報知信号SoXとして選択出力するセレクタ91Xを含む。なお、セレクタ91Xは、出力選択信号S2Xが異常未検出時の論理レベル(例えばローレベル)であるときに、第1状態報知信号SoXとしてセンス電流IsX’を選択出力し、出力選択信号S2Xが異常検出時の論理レベル(例えばハイレベル)であるときに、第1状態報知信号SoXとして固定電圧V90を出力する。
【0282】
信号出力部90Yは、制御ロジック部40Yから入力される出力選択信号S2Yに基づいて、センス電流IsY’(=出力電流IoYの検出結果に相当)と固定電圧V90(=異常フラグに相当)の一方を第2状態報知信号SoYとして選択出力するセレクタ91Yを含む。なお、セレクタ91Yは、出力選択信号S2Yが異常未検出時の論理レベル(例えばローレベル)であるときに、第2状態報知信号SoYとしてセンス電流IsY’を選択出力し、出力選択信号S2Yが異常検出時の論理レベル(例えばハイレベル)であるときに、第2状態報知信号SoYとして固定電圧V90を出力する。
【0283】
マルチプレクサ100は、外部端子T5に入力される出力選択信号SELに応じて、第1状態報知信号SoX(=センス電流IsX’または固定電圧V90)と第2状態報知信号SoY(=センス電流IsY’または固定電圧V90)のいずれか一方を外部端子T4に選択出力する。
【0284】
外部端子T4にセンス電流IsX’が選択出力された場合には、状態報知信号Soとして、センス電流IsX’を外部センス抵抗4で電流/電圧変換した出力検出電圧V80X(=IsX’×R4)がECU2に伝達される。なお、出力検出電圧V80Xは、出力電流IoXが大きいほど高くなり、出力電流IoXが小さいほど低くなる。
【0285】
また、外部端子T4にセンス電流IsY’が選択出力された場合には、状態報知信号Soとして、センス電流IsY’を外部センス抵抗4で電流/電圧変換した出力検出電圧V80Y(=IsY’×R4)がECU2に伝達される。なお、出力検出電圧V80Yは、出力電流IoYが大きいほど高くなり、出力電流IoYが小さいほど低くなる。
【0286】
一方、外部端子T4に固定電圧V90が選択出力された場合には、状態報知信号Soとして、固定電圧V90がECU2に伝達される。なお、固定電圧V90は、出力検出電圧V80X及びV80Yの上限値よりも高い電圧値に設定しておけばよい。
【0287】
このようなマルチプレクサ100の導入により、任意のチャンネルについて、出力電流IoX及びIoYの検出結果と異常フラグの双方を外部監視することが可能となる。
【0288】
<車両への適用>
図33は、車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、バッテリ(本図では不図示)と、バッテリから電力供給を受けて動作する種々の電子機器X11~X18とを搭載している。なお、本図における電子機器X11~X18の搭載位置については、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0289】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0290】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0291】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0292】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
【0293】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0294】
電子機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、及び、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0295】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、及び、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0296】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0297】
なお、先に説明した半導体集積回路装置1、ECU2、及び、負荷3は、電子機器X11~X18のいずれにも組み込むことが可能である。
【0298】
<その他の変形例>
また、上記の実施形態では、車載用ハイサイドスイッチICを例に挙げて説明を行ったが、本明細書中に開示されている発明の適用対象は、これに限定されるものではなく、例えば、その他の車載用IPD(車載用ローサイドスイッチICや車載用電源ICなど)はもちろん、車載用途以外の半導体集積回路装置にも広く適用することが可能である。
【0299】
また、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0300】
本明細書中に開示されている発明は、車載用IPDなどに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0301】
1 半導体集積回路装置
2 ECU
3、3X、3Y 負荷
4 外部センス抵抗
10、10X、10Y NMOSFET
20、20X、20Y 出力電流監視部
21、21’ NMOSFET
22 センス抵抗
30、30X、30Y ゲート制御部
31 ゲートドライバ
32 オシレータ
33 チャージポンプ
34 クランパ
35 NMOSFET
36 抵抗
37 キャパシタ
40、40X、40Y 制御ロジック部
50、50X、50Y 信号入力部
60、60X、60Y 内部電源部
70、70X、70Y 異常保護部
71、71X、71Y 過電流保護回路
72 オープン保護回路
73 温度保護回路
74 減電圧保護回路
80、80X、80Y 出力電流検出部
90、90X、90Y 信号出力部
91、91X、91Y セレクタ
100 マルチプレクサ
110 第1電流生成部
111 オペアンプ
112 NMOSFET
113 抵抗
120 第2電流生成部
121 オペアンプ
122 NMOSFET
123 抵抗
130、130X、130Y 閾値電圧生成部
131 電流源
132 抵抗
133 カレントミラー
140、140X、140Y 過電流検出部
141 コンパレータ
150、150X、150Y 参照電圧生成部
151 電流源
152 抵抗
160、160X、160Y 比較部
161 コンパレータ
170 閾値制御部
171 コンパレータ
172 電流源
173、173X、173Y レベルシフタ
174、174X、174Y RSフリップフロップ
175 放電制御部
176 NMOSFET
177 キャパシタ
178 充電制御部
179X、179Y 遅延部
17A コンパレータ
17B 抵抗ラダー
17CX、17CY ラッチ
NOR1、NOR2 否定論理和演算器
AND1~AND3、AND4、AND5 論理積演算器
OR1 論理和演算器
INV1~INV3 インバータ
BUF1、BUF2 バッファ
PG1 パルス生成部
R1 抵抗
C1 キャパシタ
T1~T5、SET、DLY 外部端子
X 車両
X11~X18 電子機器