(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-21
(45)【発行日】2022-05-02
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 33/06 20060101AFI20220422BHJP
B65D 33/02 20060101ALI20220422BHJP
【FI】
B65D33/06
B65D33/02
(21)【出願番号】P 2016255892
(22)【出願日】2016-12-28
【審査請求日】2019-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】興梠 貴久
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】実公昭44-004940(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0110290(US,A1)
【文献】特開2008-254782(JP,A)
【文献】特開2012-121592(JP,A)
【文献】実開昭63-154454(JP,U)
【文献】登録実用新案第3004939(JP,U)
【文献】特開2009-173334(JP,A)
【文献】特開平07-232748(JP,A)
【文献】実開昭53-009918(JP,U)
【文献】特開2004-359258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0307264(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/06
B65D 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被包装体を収容する本体部と、
前記本体部の上端に設けられた持手部と、
前記持手部に設けられた指掛部と、
前記指掛部の上方に形成された一対のスリットとを有し、
前記一対のスリットは、前記指掛部から前記持手部の上端に向かって傾斜して前記一対のスリットの間隔が前記持手部の長手方向に広がるように延び
、
前記一対のスリットの各スリットは、所定の長さを有する切り込み、または、該所定の長さよりも短い長さの複数の切り込みで構成され、
前記一対のスリットが、一対の第1スリットと一対の第2スリットで構成され、
前記第1スリットの前記第2スリットに近接する側の端部は、前記持手部の上端に向かって凸状に形成されている、包装袋。
【請求項2】
前記一対のスリット間の角度が90°~150°である、請求項
1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記一対のスリットと前記指掛部との間の最近接距離が3mm~10mmである、請求項2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記所定の長さよりも短い長さの複数の切り込みがミシン目である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項5】
前記指掛部は、前記持手部の高さ方向の中央より下方に位置する、請求項
1乃至
3のいずれか1項に記載の包装袋。
【請求項6】
前記一対のスリットの前記持手部の上端側の端部の上方に補強部が設けられている、請求項
1に記載の包装袋。
【請求項7】
前記補強部は、前記持手部の上端に向かって凸状に形成されている、請求項
6に記載の包装袋。
【請求項8】
前記補強部は、前記持手部の長手方向に延びる直線状に形成されている請求項
6に記載の包装袋。
【請求項9】
前記補強部は、前記一対のスリットに近接する第1補強部と前記第1補強部と所定の間隔をあけて設けられた第2補強部で構成されている、請求項
6乃至
8のいずれか1項に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパー等の物品は、樹脂等のフィルムで形成された包装袋に複数収容された状態で流通する。この包装袋には、トイレットペーパー等の購入者が持ち帰る際に、トイレットペーパー等を持ち運ぶことができるように指掛用の穴を備える持手部が設けられている(
図11、
図12参照)。
【0003】
例えば、特開2005-8248号公報(特許文献1)には、被包装体として複数個のトイレットペーパー等のロール製品を収容する包装体が開示されている。この包装体では、ロール製品が収容される本体部の上端側に持手部が設けられており、持手部にはさらに二つの指掛け穴が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の包装袋は、被包装体の重量や被包装体が収容された包装袋の持ち方等により、持ち運びの際に指掛け穴の形状が変化し、持手部に指が締め付けられて指が痛くなる等、指に負担がかかる場合がある。また、包装袋の材料となるフィルムは、巻かれた状態で管理されるため、圧縮されて固くなっていることが多く、このように固くなったフィルムで形成された持手部の指掛け穴に指を掛ける場合に、指が締め付けられると、指への負担がさらに大きくなる。このように、従来の包装袋では、持ち運びの際に指が締め付けられ、指への負担が大きいものとなっていた。
【0006】
本発明の目的は、指の締め付けを抑制し、指への負担を軽減することができる包装袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、被包装体を収容する本体部と、本体部の上端に設けられた持手部と、持手部に設けられた指掛部と、指掛部の上方に形成された一対のスリットとを有し、一対のスリットは、指掛部から前記持手部の上端に向かって傾斜して前記一対のスリットの間隔が持手部の長手方向に広がるように延びる、包装袋とする。
【0008】
本体部は、被包装体が収容される包装袋の本体を構成する。本体部は、樹脂等のフィルムで形成することができる。本体部に収容される被包装体は、特に限定されるものではなく、例えば、トイレットペーパー、キッチンペーパー、ベビー用または介護用の紙おむつ、生理用ナプキン等の物品を例示することができる。また、被包装体の形態は、特に限定されず、ロール状、積層状等の形態である。さらに、本体部に被包装体を構成する物品を収容する場合には、収容される物品は1つに限らず、複数であってもよい。
【0009】
持手部は、本体部の上端に設けられており、包装体の一部を構成する。持手部は、樹脂等のフィルムで構成することができ、フィルムの材質は本体部と同様の材質にしてもよい。持手部には、指掛部が設けられている。
【0010】
指掛部は、物品の購入者(以下ユーザという)が持手部を持つ際に、指を掛ける部分である。指掛部は持手部を貫通する孔で形成することができる。なお、持手部に設けられる指掛部は、複数の孔で形成してもよい。また、持手部を貫通する孔は、持手部に最初から設けられていてもよく、またミシン目等の切り込みを入れておき、ユーザが物品の購入時にこの切り込み等を破って自ら開ける態様にしてもよい。
【0011】
一対のスリットは、指掛部の上方に形成されている。一対のスリットは、指掛部から持手部の上端に向かって傾斜して一対のスリットの間隔が持手部の長手方向に広がるように延びる構成を有する。
【0012】
第1の態様では、このような一対のスリットが指掛部の上方に形成されているため、ユーザが持手部の指掛部に指を掛けた状態で、ユーザの指が締め付けられる程の力が指掛部にかかると、指掛部から一対のスリットにかけて持手部の一部が破れ、持手部の長手方向に指掛部が広がるように拡張される。そのため、被包装体が収容された包装袋を持ち運ぶ場合に、ユーザの指への締め付けが抑制される。
【0013】
また、持手部の一部が破れた後は、破れた持手部の一部が指と指掛部との間で緩衝材の役割を果たすことができる。そのため、被包装体が収容された包装袋を持ち運ぶ場合に、ユーザの指にかかる締め付け力を小さくすることができる。
【0014】
このように、第1の態様によれば、ユーザが持手部の指掛部に指を掛けて被包装体が収容された包装袋を持ち運ぶ場合に、ユーザの指への負担を軽減することができる。
【0015】
第2の態様では、各スリットが、所定の長さを有する切り込み、または、該所定の長さよりも短い長さの複数の切り込みで構成されている。スリットを所定の長さを有する切り込みで構成することにより、ユーザの指に締め付け力が加わって指掛部の一部が破れる際に、指掛部から一対のスリットに向かって持手部が破れ易くなるため、持手部が長手方向に広がるように拡張され易くなる。また、スリットを所定の長さよりも短い長さの複数の切り込みで構成することにより、包装袋に収容された被包装体の重量、包装袋の持ち方、ユーザの体格(手の大きさ)等に応じて、拡張される指掛部の開口の大きさ(拡張範囲)を徐々に変えることができる。
【0016】
第3の態様では、一対のスリット間の角度を90°~150°としている。一対のスリット間の角度をこのような角度範囲にすることにより、ユーザの指への締め付けを確実に抑制することができ、しかも、ユーザの指が締め付けられる程の力が指掛部にかかったときに、指掛部から一対のスリットに沿って持手部が破れるため、指掛部を確実に拡張することができる。
【0017】
なお、一対のスリット間の角度が90°未満の場合は、指への締め付け力が小さくても、持手部の一部が破れて指掛部か拡張されるため、却って持手部が持ちづらくなる。また、一対のスリット間の角度が150°を超える場合は、指への締め付け力が生じても、持手部の一部が破れず、指掛部か拡張されない可能性がある。
【0018】
第4の態様では、一対のスリットと指掛部との間の最近接距離を3mm~10mmとしている。ここで、最近接距離は一対のスリットと指掛部との間で最も近い距離を示す。かかる最近接距離をこのような距離範囲にすることにより、指への締め付け力がかかったときでも、締め付け力が小さいときは持手部の一部は破れず、締め付け力が大きくなったときに破れる。そのため、指が痛くなる程度の締め付け力が指にかかったときに、指掛部からスリットにかけて持手部の一部が破れて指掛部を拡張させることができる。なお、一対のスリットと指掛部との間の最近接距離が3mm未満の場合は、わずかな締め付け力が指にかかったときでも持手部が破れ、10mmを超える場合は、大きな締め付け力が指にかかったときでも持手部が破れないおそれがある。
【0019】
第5の態様は、一対のスリットが、一対の第1スリットと一対の第2スリットとで構成されている。一対のスリットをこのような2種類のスリットで構成することにより、指に締め付け力がかかった際に、指掛部から一対のスリットにかけて持手部の一部が2段階で破れることができる。そのため、包装袋に収容された被包装体の重量、包装袋の持ち方、ユーザの体格(手の大きさ、指の長さ)等によって指に加わる締め付け力が異なる場合でも、その締め付け力に応じて、拡張される指掛部の開口の大きさを変えることができる。
【0020】
第6の態様では、第1スリットの第2スリットに近接する側の端部が、持手部の上端に向かって凸状に形成されている。第1スリットをこのような形態にすることにより、指掛部から第1スリットにかけて持手部の一部が破れた際に、破れた勢いをこの第1スリットの端部で吸収することができる。そのため、指掛部から第2スリットにかけて持手部の一部が破れるような大きな締め付け力が指に加わった場合にだけ、第2スリットが設けられた位置まで持手部の一部が破れるようにすることができる。
【0021】
第7の態様では、各スリットを構成する切り込みが所定の長さよりも短い長さの複数の切り込みである場合、該切り込みがミシン目で構成されている。一対のスリットをこのようなミシン目で構成することにより、指に加わる締め付け力に応じて、ミシン目が徐々に切れる。そのため、各スリットの切り込みをこのようなミシン目で構成することにより、包装袋に収容された被包装体の重量、包装袋の持ち方、ユーザの体格(手の大きさ)等に応じて、拡張される指掛部の開口の大きさ(拡張範囲)を徐々に変えることができる。
【0022】
第8の態様では、指掛部が持手部の高さ方向の中央より下方に位置する構成を有する。持手部の高さ方向の中央とは、持手部の高さ方向の幅Lに対して持手部の上端から高さ方向にL/2離れた位置である。この構成により、指掛部の上方に一対のスリットが設けられる領域を確保することができるため、一対のスリットの形成が容易になる。
【0023】
第9の態様では、一対のスリットの持手部の上端側の端部の上方に補強部が設けられている。補強部は、ヒートシール等の融着部で構成することができる。このような補強部を設けることにより、一対のスリットの持手部の上端側の端部が破れて、指掛部の拡張範囲が大きくなり過ぎたり、また持手部が破断したりするのを防ぐことができる。
【0024】
第10の態様では、補強部が持手部の上端に向かって凸状に形成されている。すなわち補強部はスリットに対して凹となるように形成されている。補強部をこのような形状にすると、スリットの端部から補強部の端部に沿ってさらに持手部が破断するのを抑制することができる。
【0025】
第11の態様では、補強部が持手部の長手方向に延びる直線状に形成されている。このような構成により、補強部を一対のスリットの持手部の上端側の端部の上方に確実に設けることができる。
【0026】
第12の態様では、補強部は、一対のスリットに近接する第1補強部と、該第1補強部と所定の間隔をあけて設けられた第2補強部とから構成されている。このような2種類の補強部で構成された補強部は、凸状に形成された補強部(第9の態様)及び直線状に形成された補強部(第10の態様)のいずれの場合にも採用することができる。補強部をこのような2つの補強部で構成することにより、第1補強部が形成された部分で持手部が破断した場合でも、第2補強部により持手部がさらに破断するのを防ぐことができる。そのため、持手部が破断して指掛部に指がかけられない状態になるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、指の締め付けを抑制し、指への負担を軽減することができる包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係る包装袋を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る包装袋(第1実施形態)の持手部を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る包装袋を持った状態における手と持手部の関係を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る包装袋(第2実施形態)の持手部を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る包装袋(第3実施形態)の持手部を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る包装袋(第4実施形態(実施例1))の持手部を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る包装袋(第5実施形態(実施例2))の持手部を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る包装袋(第6実施形態(実施例3))の持手部を示す図である。
【
図9】従来の包装袋(比較例1)の持手部を示す図である。
【
図10】従来の包装袋(比較例2)の持手部を示す図である。
【
図13】従来の包装袋を持った状態における手と持手部の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の一例(第1実施形態)に係る包装袋を示す図である。
図2は、第1実施形態に係る包装袋の持手部を示す図である。なお、以下に示す説明では、各図において共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0030】
図1及び
図2において、包装袋100は、袋本体10、持手20、指掛部30、スリット40を備えている。この包装袋100は、本発明の包装袋の一例である。
【0031】
袋本体10には、被包装袋の一例としてロール状のトイレットペーパーTを12個収容することができる。袋本体10は、ポリエチレン等の樹脂フィルムまたはポリエチレン等とその他の樹脂を積層した積層体の樹脂フィルム等で形成されている。袋本体10は、この樹脂フィルムがサイドシールにより袋状にされ、袋状になった樹脂フィルムがガセット状に折り込まれた構造になっている(
図1参照)。なお、袋本体10は、本発明の包装袋の本体を構成する本体部の一例である。
【0032】
持手20は、包装袋100の一部を構成し、袋本体10と同様に、樹脂フィルム等で形成されている。持手20は、上述のガゼット状に折り込まれた樹脂フィルムを持手成形用の熱版で型押しすることにより、袋本体10の上端部に形成される。持手20は、ガゼット状に折り込まれた樹脂フィルムが、持手20の長手方向(
図2の左右方向)の両端部では4枚重ねで、持手20の中央付近では2枚重ねで、それぞれヒートシール50で接着されている。また、持手20には、持手20を取り付けた袋本体10が包装袋100の製造時または流通時に破裂しないように、袋本体10と連通する空気穴60(
図6~
図8参照)が設けられている。なお、持手20は、本発明の包装袋の一部を構成する持手部の一例である。
【0033】
持手20には、ユーザPが持手20を持つ際に指を掛けるための指掛部30が設けられている(
図3参照)。指掛部30は、
図2に示すように、楕円形状または長方形状に類似した形状を有する2つの指掛部31、32で構成されている。2つの指掛部31、32は、持手20の高さ方向の略中央部に位置し、持手20の長さ方向に所定の間隔をあけて配置されている。指掛部30(2つの指掛部31、32)は、ユーザPが持手20を持つ際にユーザPの指が掛かるように形成されている。なお、指掛部30は、本発明の包装袋において持手部に設けられる指掛部の一例である。
【0034】
また、持手20には、指掛部30を覆う図示しない補強フィルムを設けてもよい。この補強フィルムは、ポリエチレン等の樹脂フィルムで形成することができる。このような補強フィルムを設けることにより、持手20の指掛部30が設けられる部分を補強することができる。
【0035】
また、持手20には、予め切り込み(ミシン目M1)が設けられており、ユーザPがトイレットペーパーTの購入時にこのミシン目M1を破って自ら開けられるようになっている(
図6参照)。このミシン目M1が破られた後、指掛部30は持手20を貫通する孔となる。ミシン目M1は、
図2に示すように指掛部30の周囲のうち上端の一部には入っていない。このようにすると、切り離された部分は、一部が持手20に連結されたままになる。持手20から完全に切り離された場合は、切り離された部分は破棄する等の処分が必要となるが、このように一部を連結したままにすれば廃棄等の必要はなくなる。
【0036】
指掛部30の上方には、スリット40が形成されている。第1実施形態では、
図2に示すように、指掛部31、32の上方に、それぞれスリット40として一対のスリット41、42が形成されている。一対のスリット41、42は、指掛部30から持手20の上端21に向かって持手20の長手方向(
図2の左右方向)に広がるように延びている。すなわち、一対のスリット41、42は、指掛部30から持手20の上端21に向かって放射状に広がるように延びている。
【0037】
図2に示す第1実施形態では、指掛部30の上方にスリット40(一対のスリット41、42)が形成されているため、ユーザPが持手20の指掛部30に指を掛けた状態で、ユーザPの指がトイレットペーパーTの重みで締め付けられると、樹脂フィルムの指に当っている部分に破断に至る力が作用する。これにより、指掛部30から一対のスリット41、42に沿って持手20が破れ、破れた持手20の部分だけ指掛部30が拡張される。その結果、トイレットペーパーT等の被包装体が収容された包装袋100を持ち運ぶ場合に、ユーザPの指への締め付けが抑制される(
図3参照)。
【0038】
また、指掛部30から一対のスリット41、42に沿って持手20が破れた後は、破れた持手20の一部がユーザPの指と指掛部30との間に介在して緩衝材の機能を果たすことができる。そのため、複数個のロール状のトイレットペーパーT等の被包装体が収容された状態で包装袋を持ち運ぶ場合に、ユーザPの指にかかる締め付ける力(圧力)を小さくすることができる。
【0039】
このように、
図2に示す第1実施形態では、ユーザPの指に対する圧力を和らげることできる。したがって、ユーザPが持手20の指掛部に指を掛けて被包装体が収容された包装袋を持ち運ぶ場合に、ユーザPの指への負担を軽減することができる。
【0040】
なお、一対のスリット41、42間の角度は、好ましくは90°~150°とし、より好ましくは115°~135°とする。一対のスリット41、42間の角度をこのような角度範囲にすることで、ユーザPの指への締め付けを確実に抑制することができる。また、ユーザの指が強く締め付けられる程の力が指掛部30にかかったときに、指掛部30から一対のスリット41、42に沿って持手20が破れるため、指掛部30が確実に拡張される。
【0041】
なお、一対のスリット41、42間の角度が90°未満の場合は、指への締め付け力が小さくても、持手部の一部が破れて指掛部か拡張されるため、却って持手部が持ちづらくなる。また、一対のスリット41、42間の角度が150°を超える場合は、指への締め付け力が生じても、持手部の一部が破れず、指掛部か拡張されない可能性がある。
【0042】
第1実施形態では、一対のスリット41、42と指掛部30との間の最近接距離を、好ましくは3mm~10mmとし、より好ましくは4mm~8mmとしている。一対のスリット41、42と指掛部30との間の最も近い距離をこのような距離範囲にすることで、指に締め付け力がかかった際に、締め付け力が小さいときは持手部の一部は破れず、締め付け力が大きくなったときに破れる。そのため、指が痛くなる程度の大きな締め付け力が指にかかったときだけ、指掛部30から一対のスリット41、42にかけて持手20の一部が破れて指掛部30を拡張させることができる。
【0043】
なお、一対のスリット41、42と指掛部30との間の最近接距離が3mm未満の場合は、わずかな締め付け力が指にかかったときでも持手20が破れ、10mmを超える場合は、大きな締め付け力が指にかかったときでも持手20が破れないおそれがある。
【0044】
また、一対のスリット41、42は、指掛部30と同様に、切り込み(ミシン目M2)で構成されている。このような切り込みで構成された一対のスリット41、42は、ユーザPの指に加わる締め付け力に応じで、切れ込みが切れる。本実施形態では、特に切り込みがミシン目M2で構成されているため、指に加わる締め付け力によって、徐々に切り込みが切れていく。そのため、包装袋100に収容されたトイレットペーパーT等の被包装体の重量、包装袋100の持ち方、ユーザPの体格(手の大きさ)等に応じて、指掛部30の開口の大きさ(拡張範囲)が徐々に変わる。
【0045】
図4は、本実施形態の他の一例(第2実施形態)に係る包装袋の持手部を示す図である。第2実施形態では、一対のスリット41、42の端部41a、42a(持手20の上端21側の端部)の上方には、融着部70が設けられている。融着部70は、1つの指掛部30に対して一対の融着部70、70として配置されている。融着部70は、ヒートシール50と同様のヒートシールで構成されている。なお、融着部70は、本発明に係る包装袋の持手部に形成された補強部の一例である。
【0046】
このような融着部70の存在により、ユーザPの指に締め付け力がかかった際に、一対のスリット41、42の端部41a、42aが破れても、融着部70によりそれ以上破れることを止めることができる。そのため、指掛部30の拡張範囲が大きくなり過ぎて、持手20が持ち難くなるのを防ぐことができる。さらに、ユーザPの指に大きな締め付け力が加わった際に、一対のスリット41、42の端部41a、42aから持手20の上端21にかけて持手20が破断するのを防ぐことができる。
【0047】
また、融着部70の形状は、持手20の上端21に向かって凸状になっている。言い換えると、融着部70は、一対のスリット41、42に対して凹部となるように形成されている。このような形状の融着部70が存在することで、進行する破断の先端が凹部の内側にあると、破断の進行方向が多少変化しても、この破断の先端が凹部の融着部にぶつかるため、一対のスリット41、42の端部41a、42aから融着部70の内側端部70aに沿ってさらに持手20が破断するのを抑制することができる。
【0048】
図5は、本実施形態の他の一例(第3実施形態)に係る包装袋の持手部を示す図である。第3実施形態では、指掛部30が持手20の高さ方向(
図5の上下方向)の中央より下方に配置されている。また、指掛部30の配置位置に合わせて、融着部70も、
図4の第2実施例と比較して、下方に配置されている。指掛部30をこのような位置に形成することにより、指掛部30の上方にスリット40(一対のスリット41、42)及び融着部70が設けられる領域を十分に確保することができる。そのため、スリット40(一対のスリット41、42)および融着部70の形成が容易になる。
【0049】
図6は、本実施形態の他の一例(第4実施形態)に係る包装袋の持手部を示す図である。第4実施形態では、指掛部30が楕円形状に類似した形状を有する2つの指掛部で構成されている。さらに2つの指掛部30、30は、該楕円が略左右対称となるように傾斜して配置されている。第4実施形態では、袋本体10と連通する空気穴60が設けられている。
【0050】
第4実施形態では、融着部70は、第1融着部71と第2融着部72からなる2種類の融着部で構成されている。第1融着部71は、スリット40(一対のスリット41、42)に近接する位置に配置され、第2融着部72は、指掛部30との間に第1融着部71を挟むように第1融着部71に対して所定の間隔をあけて配置されている。なお、第1融着部71及び第2融着部72は、本発明の包装袋の持手20に形成された第1補強部及び第2補強部の一例である。
【0051】
このような2種類の融着部を設けることで、第1融着部71が形成された部分で持手20が破断した場合でも、第2融着部72によって持手20がさらに破断するのを防ぐことができる。そのため、持手20が大きく破断して持手20が持ちづらい状態または持手20が持てない状態になるのを防ぐことができる。
【0052】
図7は、本実施形態の他の一例(第5実施形態)に係る包装袋の持手部を示す図である。第5実施形態では、指掛部30が1つの指掛部で構成されている。そして、第5実施形態では、融着部70が持手20の長手方向に延びる直線状に形成されている。融着部70をこのような直線状に配置することにより、補強部となる融着部70を一対のスリット41、42の端部41a、42aの上方に確実に配置することできる。
【0053】
図8は、本実施形態の他の一例(第6実施形態)に係る包装袋の持手部を示す図である。第6実施形態では、指掛部30が1つの指掛部で構成され、さらに指掛部30が持手20の長手方向に延びる直線状の指掛部30で構成されている。直線状の指掛部30も、切り込み(ミシン目M1)で形成されている。
【0054】
第6実施形態では、スリット40が、一対のスリット41、42(一対の第1スリット)と一対のスリット43、44(一対の第2スリット)とで構成されている。一対の第1スリット41、42と一対の第2スリット43、44とは所定の間隔をあけて配置されている。具体的には、一対の第1スリット41、42は、指掛部30の直上に配置されており、一対の第2スリット43、44は、一対の第1スリット41、42の上方に(一対の第1スリット41、42の切り込みの方向の延長線方向に)配置されている。スリット40をこのような2種類のスリット(一対の第1スリット41、42及び一対の第2スリット43、44)で構成することにより、ユーザPの指に締め付け力がかかった際に、指掛部から一対のスリットにかけて持手部の一部が2段階で破れることとなる。
【0055】
例えば、指への締め付け力が比較的小さい場合は、指掛部30から一対の第1スリット41、42にかけて持手20の一部が破れ、さらに指への締め付け力が比較的大きい場合に、一対の第2スリット43、44にかけて持手20がさらに破れる。そのため、包装袋100に収容されたトイレットペーパーT等の被包装体の重量、包装袋100の持ち方、ユーザPの体格(手の大きさ、指の長さ)等によって指に加わる締め付け力が異なるときでも、その締め付け力に応じて、拡張される指掛部の開口の大きさを変えることができる。
【0056】
また、第6実施形態では、一対の第1スリット41、42の端部41a、42a(一対の第2スリット43、44に近接する側の端部)が、持手20の上端21に向かって凸状に形成されている。一対の第1スリット41、42の端部41a、42aをこのような形状にすると、指掛部30から一対の第1スリット41、42にかけて持手20の一部が破れた際に、破れた勢いは第1スリット41、42の端部41a、42aに吸収される。
【0057】
すなわち、第6実施形態では、指掛部30から一対の第1スリット41、42にかけて持手20が破れる程度の締め付け力が指に加わった場合に、指掛部30から第1スリット41、42にかけて持手20の一部が破れた勢いで、一対の第2スリット43、44が設けられた位置まで持手20が一気に破れること防ぐことができる。そのため、指掛部30から一対の第2スリット43、44にかけて持手20が破れる程度の大きな締め付け力が指に加わった場合にだけ、一対の第2スリット43、44が設けられた位置まで持手20の一部が破れるようにすることができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施形態について、実施例と比較例を参照しながら説明する。
[実施例1]
実施例1として、
図6に示す第4実施形態の包装袋100を用いた。実施例1では、包装袋100を、厚み25μmのポリエチレンのフィルムで製袋機により作製した。実施例1では、指掛部が楕円形状に類似した形状を有する2つの指掛部30、30で構成した。各指掛部30は、持手20の高さ方向の中央より下方に配置した。各指掛部30には、指掛部30の周囲のうち上端の一部を残すようにミシン目M1を入れた。2つの指掛部30、30は、楕円形状に類似した形状が略左右対称となるように傾斜して配置した。2つの指掛部30の上方には、それぞれスリット40(一対のスリット41、42)を形成した。一対のスリット41、42の端部41a、42a(持手20の上端21側の端部)の上方には、融着部70を形成した。融着部70は、2種類の融着部(第1融着部71と第2融着部72)で構成し、各融着部70は、スリット40に対して凹となるように形成した。実施例1では、一対のスリット41、42間の角度を約125°にした。スリット40(一対のスリット41、42)と指掛部30との間の最近接距離は約5mmにした。実施例1の包装袋100の各部の寸法(mm単位)は、
図6に示す。
[実施例2]
実施例2として、
図7に示す第5実施形態の包装袋100を用いた。実施例2では、指掛部を1つの指掛部30で構成し、各融着部70を持手20の長手方向に延びる直線状に形成した以外は、実施例1と同様に作製した。実施例2の包装袋100の各部の寸法(mm単位)は、
図7に示す。
[実施例3]
実施例3として、
図8に示す第6実施形態の包装袋100を用いた。実施例3では、指掛部を持手20の長手方向に延びる直線状の指掛部30で構成し、スリット40を2種類のスリット(一対の第1スリット41、42と一対の第2スリット43、44)で構成し、さらに一対の第1スリット41、42の端部41a、42a(一対の第2スリット43、44と近接する側の端部)を持手20の上端21に向かって凸状に形成した以外は、実施例2と同様に作製した。実施例3の包装袋100の各部の寸法(mm単位)は、
図8に示す。
[比較例1]
比較例1として、
図9に示す持手20を備える包装袋100を用いた。比較例1では、2つの指掛部30、30を持手20の高さ方向の略中央に配置し、スリット40および融着部70を形成しなかった以外は、実施例1と同様に包装袋100を作製した。比較例1の包装袋100の各部の寸法(mm単位)は、
図9に示す。
[比較例2]
比較例2として、
図10に示す持手20を備える包装袋100を用いた。比較例2では、各指掛部30(指掛部31、32)間の距離を長くし(各指掛部30の寸法を小さくし)、各指掛部30に指掛部30の周囲のうち下端の一部を残すようにミシン目M1を入れた以外は、比較例1と同様に包装袋100を作製した。比較例1の包装袋100の各部の寸法(mm単位)は、
図10に示す。
【0059】
これらの実施例及び比較例について、以下の試験方法により評価した。
[振り子試験]
12個のロール状のトイレットペーパーT(大王製紙株式会社製の「エリエール トイレットティシュー(シングル)」)を収納した包装袋100の指掛部30にユーザPが片手の指を2本掛けて持ち、180°の範囲で振り子のように10往復移動させた。このとき、包装袋100の耐久性を以下の基準で評価した。なお、振り子試験は、各実施例及び比較例につき5回の試験を行った。
【0060】
○:5回中1回も破損が確認できなかった
×:5回中1回以上破損を確認した
[指掛試験]
上記の振り子試験を1回行った後、1人のユーザPにおける指へ締め付けの程度を下記の5段階で評価した。この場合、実施例及び比較例ごとに10人により試験を行った結果を点数化し、その平均値から持ち易さを以下の基準で評価した。
【0061】
5点:指への締め付けが全くない
4点:指への締め付けはごく小さい
3点:指への締め付けは小さい、
2点:指への締めが大きい
1点:指への締め付けが非常に大きい
【0062】
【表1】
表1より、指掛部30の上方に、スリット40(一対のスリット41、42)を設け、一対のスリット41、42の端部41a、42aの上方に融着部70を配置した場合(実施例1~実施例3)、持ち易さの試験ではいずれも平均値が3以上となり、ユーザPの指への締め付けが抑制され、結果となった。また、振り子試験では、いずれも包装袋が破れなかった。
【0063】
これに対して、指掛部30の上方に、スリット40(一対のスリット41、42)及び融着部70を配置しなかった場合(比較例1、比較例2)、持ち易さの試験ではいずれも平均値が3未満となり、ユーザPの指への締め付けが大きい結果となった。また、振り子試験では、いずれも包装袋100の持手20が破れた。
【0064】
これらの結果から、指掛部30から持手20の上端21に向かって持手20の長手方向に広がるように延びる一対のスリット41、42が設けられた包装袋100は、ユーザPの指の締め付けを抑制し、指への負担を軽減することができることが判った。また、一対のスリット41、42の端部41a、42aの上方にさらに融着部70が設けられた包装袋は、持手20が破損し難いことが判った。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
100 包装袋
10 袋本体
20 持手
21 上端
30 指掛部
40(41~44) スリット
端部41a
70 融着部
71 第1融着部
72 第2融着部
M2 ミシン目