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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】無線通信装置および防災無線装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20220425BHJP
【FI】
H04B1/04 E
H04B1/04 R
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018121133
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020005065
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】田中 海唯
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-173001(JP,A)
【文献】特開2001-352221(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0220243(US,A1)
【文献】特開平10-41767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナから送信される電波の周波数に対する利得調整量を、出力レベルごとに予め対応付けて記録した第1テーブルを記憶する記憶部と、
前記第1テーブルから、予め指定された前記電波の周波数および出力レベルに対応する利得調整量を取得し、前記利得調整量と、波形歪みを補償するための減衰量とを設定する設定部と、
前記設定部で設定された利得調整量により、無線帯域信号を利得調整する利得調整器と、
前記利得調整器の出力を送信レベルに増幅する送信増幅器と、
前記送信増幅器の歪み補償フィードバックラインに設けられ、前記設定部で設定された減衰量に減衰する減衰器と、
前記送信増幅器の出力をアンテナから同報的に送信する送信部と、
を具備する無線通信装置。
【請求項2】
前記第1テーブルは、少なくとも2つの周波数に対する前記送信増幅器の出力レベルの計測値に基づいて作成される、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記第1テーブルは、前記出力レベルの計測値に基づいて特定の出力レベルについて作成され、他の出力レベルについては線形補完により作成される、請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記記憶部は、周波数に対する前記減衰器の減衰量を、前記電波の出力レベルごとに予め対応付けて記録した第2テーブルをさらに記憶し、
前記設定部は、前記指定された周波数および出力レベルに対応する減衰量を前記第2テーブルから取得して、前記減衰器に設定する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第2テーブルは、少なくとも2つの周波数に対する前記送信増幅器の出力レベルの計測値に基づいて作成される、請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記第2テーブルは、前記出力レベルの計測値に基づいて特定の出力レベルについて作成され、他の出力レベルについては線形補完により作成される、請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
放送電波の周波数、および出力レベルが運用開始前に割り当てられる防災無線装置において、
前記放送電波が予め指定された周波数および出力レベルで送信されるべく、利得調整器の利得調整量を設定する設定部と、
無線帯域信号を前記設定部で設定された利得調整量により利得調整する利得調整器と、
前記利得調整器の出力を送信レベルに増幅する送信増幅器と、
前記送信増幅器の出力をアンテナから同報的に送信する送信部と、
を具備する防災無線装置
【請求項8】
周波数に対する前記利得調整器の利得調整量を、前記放送電波の出力レベルごとに予め対応付けて記録した第1テーブルを記憶する記憶部をさらに具備し、
前記設定部は、前記指定された周波数および出力レベルに対応する利得調整量を前記第1テーブルから取得して、前記利得調整器に設定する、
請求項7に記載の防災無線装置。
【請求項9】
前記第1テーブルは、少なくとも2つの周波数に対する前記送信増幅器の出力レベルの計測値に基づいて作成される、
請求項8に記載の防災無線装置。
【請求項10】
前記第1テーブルは、前記出力レベルの計測値に基づいて特定の出力レベルについて作成され、他の出力レベルについては線形補完により作成される、
請求項9に記載の防災無線装置。
【請求項11】
前記送信増幅器の歪み補償フィードバックラインに設けられる減衰器をさらに具備し、
前記設定部は、前記送信増幅器での波形歪みを補償すべく、前記減衰器の減衰量を設定する、
請求項8乃至10のいずれか1項に記載の防災無線装置。
【請求項12】
前記記憶部は、周波数に対する前記減衰器の減衰量を、前記放送電波の出力レベルごとに予め対応付けて記録した第2テーブルをさらに記憶し、
前記設定部は、前記指定された周波数および出力レベルに対応する減衰量を前記第2テーブルから取得して、前記減衰器に設定する、
請求項11に記載の防災無線装置。
【請求項13】
前記第2テーブルは、少なくとも2つの周波数に対する前記送信増幅器の出力レベルの計測値に基づいて作成される、
請求項12に記載の防災無線装置。
【請求項14】
前記第2テーブルは、前記出力レベルの計測値に基づいて特定の出力レベルについて作成され、他の出力レベルについては線形補完により作成される、
請求項13に記載の防災無線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線通信装置および防災無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
行政防災無線同報システムは、市区町村の庁舎等から発せられた音声放送を、行政管轄地域(同報対象エリア)内に分散して設置される無線通信装置で受信し、拡声出力するシステムである。音声放送の送出源となる装置を親局装置と称し、音声放送を受信、あるいは中継する装置を子局装置と称する。
【0003】
無線通信装置間で授受される放送電波は、例えば54MHz~70MHz帯域内で選択される。その周波数および出力レベルは、総務省管轄の総合通信局により、同報対象エリアの広さや電波伝搬条件等に応じて、例えば隣接する他のエリアと干渉しないように指定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-172309号公報
【文献】特許第3908164号明細書
【文献】特開平2-285803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内部デバイスの特性のばらつき等により、無線通信装置は固有の周波数特性を持つ。このため割り当て周波数・出力レベルを順守するために装置毎の調整が必要になり、人的な手間が大きかった。特に、周波数・出力レベルが運用開始の間際になってから指定された場合、短期間での作業を求められるので作業員の負荷は大きい。また、周波数・出力レベルの内示を受けるまで調整に着手できないことから、製造リードタイムが長期化するという課題もあった。
【0006】
目的は、周波数特性を簡便に調整可能な無線通信装置および防災無線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、無線通信装置は、アンテナから送信される電波の周波数に対する利得調整量を、出力レベルごとに予め対応付けて記録した第1テーブルを記憶する記憶部と、前記第1テーブルから、予め指定された前記電波の周波数および出力レベルに対応する利得調整量を取得し、前記利得調整量と、波形歪みを補償するための減衰量とを設定する設定部と、前記設定部で設定された利得調整量により、無線帯域信号を利得調整する利得調整器と、前記利得調整器の出力を送信レベルに増幅する送信増幅器と、前記送信増幅器の歪み補償フィードバックラインに設けられ、前記設定部で設定された減衰量に減衰する減衰器と、前記送信増幅器の出力をアンテナから同報的に送信する送信部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の無線通信装置を備えた行政防災無線同報システムの一例を示す概略図。
図2】無線子局装置20の一例を示すブロック図。
図3】送受信部23の一例を示す機能ブロック図。
図4】送信増幅部70の一例を示すブロック図。
図5図2に示される周波数特性調整テーブル22b,22cについて説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態の無線通信装置について説明する。
図1は、実施形態の無線通信装置を備えた行政防災無線同報システムの一例を示す概略図である。
この行政防災無線同報システムは、無線通信装置としての、無線親局装置10および複数の無線子局装置20を備える。無線親局装置10は、例えば市区町村における行政の庁舎40に設置される。無線子局装置20は、該当市区町村の同報対象エリアに分散して設置される。
【0010】
図1における屋外拡声子局装置20a、戸別子局装置20b,20d、屋外拡声子局装置20c、および、再送信子局装置20eが、無線子局装置20の一例である。このうち屋外拡声子局装置20aは、応答機能を有する。また、例えば屋外拡声子局装置20c、戸別子局装置20b,20dは、受信専用として機能する。また、再送信子局装置20eについては、応答機能付き、または受信専用のいずれであってもよい。
【0011】
各無線子局装置20は、AC100Vの商用電源から駆動電力を供給される。商用電源(AC100V)の停電時には、各無線子局装置20は内蔵の蓄電池、あるいは非常電源(図示せず)により駆動電力を得る。
【0012】
同報波Wsが、無線親局装置10、または中継局30から送信される。再送信波Wrsは、再送信子局装置20eから送信される。各無線子局装置20は、同報波Ws、または再送信波Wrsの何れかを受信して動作する。各無線子局装置20は、スピーカSPを備え、無線親局装置10から受信された音声放送を拡声出力する。また、無線親局装置10、各無線子局装置20、中継局30は、無線電波を送信、受信、あるいは送受信するアンテナATを有する。
【0013】
中継局30は、無線親局装置10から送信された中継波Wcを受信して中継し、各無線子局装置20への同報波Wsを送信する。同報波Wsと中継波Wcとは、例えば何れも60MHzの周波数帯で異なるチャンネルを使用する。
【0014】
無線親局装置10は、AC100Vの商用電源を耐雷トランスTから直流電源装置Eを介して直流に変換した電源電圧により、駆動される。無線親局装置10は、庁舎40内の操作卓41の操作、または、消防署や支所等42に設置された遠隔操作卓43の操作に応じて動作する。
【0015】
無線親局装置10の操作卓41には、地図表示制御装置44が設けられる。当該地図表示制御装置44は、例えば同報対象エリアの地図や当該エリア内の各種の情報・状況を表示する。
【0016】
そして、各無線子局装置20は、無線親局装置10から同報波Wsや再送信波Wrsで送信された音声放送を受信し、当該放送の音声を出力する。
【0017】
図2は、無線子局装置20の一例を示すブロック図である。図2を用いて、屋外拡声子局装置20a、戸別子局装置20b,20d、および再送信子局装置20eの構成が説明される。屋外拡声子局装置20cも、受信専用である点を除いて同様である。
【0018】
無線子局装置20は、操作部25からのユーザ操作に応じた入力信号、あるいは送受信部23による無線親局装置10からの受信信号に応じて起動される。無線子局装置20は、コンピュータとしての制御部(CPU)21を備える。制御部21は、メモリ部22に記憶されたプログラムデータ22aに従って、回路各部の動作を制御する。
【0019】
制御部21には、メモリ部22、送受信部23、操作部25が接続される他に、音声増幅部24を介してスピーカSPが接続され、また、タッチパネルなどの表示部26と、外部インターフェース27が接続される。
【0020】
無線子局装置20は、商用電源(AC100V)に接続した電源部28により駆動される。電源部28は、蓄電池28aを有する。蓄電池28aは、停電時に、例えば48時間あるいは72時間(停電時動作時間)電源を確保可能な容量を有する。
【0021】
送受信部23は、運用の開始前に割り当てられた周波数、および出力レベルの放送電波を、アンテナATを介して送受信する。なお実施形態では、割り当てられた周波数、出力レベル等の、放送電波の性質を示す量を「諸元」と総称する。また送受信部23は、ROM(Read Only Memory)231および、プロセッサとしてのコントローラ232を備える。ROM231は、周波数特性調整テーブル22b,22cを記憶するエリアを備える。周波数特性調整テーブル22b,22cは、送受信部23の周波数特性を調整するために用いられる、テーブル形式のデータである。コントローラ232は、ROM231に予め記憶されたプログラムやデータに基づいて送受信部23を制御する。
【0022】
メモリ部22は、RAM(Random Access Memory)やROMなどの半導体メモリ、あるいはハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)などのデータストレージである。メモリ部22は、プログラムデータ22aを記憶するエリアを備える。
【0023】
音声増幅部24は、無線親局装置10から音声放送の放送制御信号が受信されている状態で、送受信部23により復調された音声信号を増幅し、スピーカSPから拡声音声として出力させる。
【0024】
外部インターフェース27は、PC(Personal computer)やノートパソコンと無線子局装置20とを接続するためのインタフェースであり、例えばシリアルインタフェースである。外部インターフェース27を、シリアル-USB変換ケーブルを介してPCやノートパソコンのUSB(Universal Serial Bus)端子に接続して、無線子局装置20を操作することができる。例えば、無線子局装置20のプログラムデータ22aや、周波数特性調整テーブル22b,22cをメモリ部22に転送し、記憶させることができる。
【0025】
上記構成の無線子局装置20は、プログラムデータ22aに記述された命令に従って、制御部21が回路各部の動作を制御し、ソフトウェアとハードウェアとが協働して動作することで、以下に説明されるような各種の機能を実現する。また、コントローラ232も、ROM231に記憶されたプログラムおよびデータに基づいて、ソフトウェアおよびハードウェアの協調動作により以下の機能を実現する。
【0026】
図3は、送受信部23の一例を示すブロック図である。送受信部23は、ベースバンド部5、周波数変換部(RF/IF部)6、無線部(RF部)7、および、アンテナATを送信/受信で切り換える送受切換部(RF-SW)8を備える。これらはコントローラ232によって制御される。
【0027】
ベースバンド部5は、変復調部50、ディジタル/アナログ変換器(DAC)51、およびアナログ/ディジタル変換器(ADC)52を備える。無線部7は、送信増幅部70(PA(Power Amplifier)部)、および低雑音増幅器80(LNA:Low Noise Amplifier)を備える。
【0028】
図3において、アンテナATで受信された放送電波は、送受切換部8を介してLNA80に導かれ、信号処理レベルにまで増幅されたのち、周波数変換部6で中間周波数信号(IF信号)にダウンコンバートされる。このIF信号は、ベースバンド部5のアナログ/ディジタル変換器52でデジタル波形に変換され、変復調部50で復調される。
【0029】
一方、変復調部50から送出された送信ディジタル信号は、ディジタル/アナログ変換器51でアナログ波形に変調され、周波数変換部6でアップコンバートされて無線帯域信号が生成される。この無線帯域信号は、送信増幅部70で送信レベルに増幅され、送受切換部8を介してアンテナATから、放送電波として同報的に送信される。
【0030】
放送電波の周波数および出力レベルは、無線子局装置20ごとに、予め指定された値に厳密に合わせこむ必要がある。既存の技術ではそのための調整に手間と時間を要していたが、以下に、これを解決可能な技術について説明する。
【0031】
図4は、送信増幅部70の系統の一例を示すブロック図である。送信増幅部70は、例えばFETを備える送信増幅器78を含むメインラインと、送信増幅器78の歪特性を補償するためのフィードバックラインとを備える。
【0032】
メインラインに与えられた無線帯域信号は、バッファアンプ71および減衰器72を介して、ドライバアンプ73に入力される。ドライバアンプ73の出力は、移相器74、減衰器75、およびドライバアンプ76経由でディジタル減衰器100(DGATT:ディジタルステップアッテネータ)に入力される。利得調整器としてのディジタル減衰器100は、無線帯域信号の出力レベルを自動調整する。ディジタル減衰器100の出力は、さらに、ドライバアンプ77と、メインラインの最終段に設けられる送信増幅器78を介してアンテナATに接続される。
【0033】
一方、送信増幅器78の出力は一部が分岐されて、フィードバックライン上のディジタル減衰器200に入力され、メインラインに入力された無線帯域信号と同程度のレベルにまで減衰されたのち、振幅/位相検出器79に入力される。振幅/位相検出器79には、減衰器72から分岐された無線帯域信号も入力される。振幅/位相検出器79は、これら2系統の信号入力を元に、送信増幅部70への入出力の振幅差、および位相差を検出し、移相器74の移相量、および減衰器75の減衰量を調節する。これにより、送信増幅器78の歪特性が自動で補償され、良好な送信特性が得られる。
【0034】
ところで、メインラインのディジタル減衰器100は、周波数特性調整テーブル22b(図2図3)に基づいて動作する。また、フィードバックラインのディジタル減衰器200は、周波数特性調整テーブル22c(図2図3)に基づいて動作する
図5は、周波数特性調整テーブル22b,22cについて説明するための図である。周波数特性調整テーブル22bは、ディジタル減衰器100の、周波数に対する減衰量(利得調整量)を、アンテナATからの放送電波の出力レベルごとに予め対応付けて記録したテーブルである。
【0035】
ここで、市町村防災システムでは放送電波の出力レベルとして、例えば0.01W(ワット)、0.05W、0.1W、0.5W、1.0W、および、2.0Wの6段階が規定されている。周波数特性調整テーブル22bは、この6通りの出力レベルごとに、周波数と減衰量とが対応付けられたテーブルである。周波数特性調整テーブル22bは、例えば、2.0Wの出力レベルについて、少なくとも2つの周波数に対する送信増幅器78の出力レベルの計測値に基づいて作成される。他の出力レベルについては、線形補完により作成される。
【0036】
図3に示されるコントローラ232は、アンテナATから送信される放送電波が、運用の開始前に指定された諸元を満たすように、ディジタル減衰器100の減衰量を設定する。すなわち、放送電波の周波数および出力レベルが割り当てられると、コントローラ232は、対応する減衰量を周波数特性調整テーブル22bから取得して、ディジタル減衰器100に設定する。
【0037】
また、周波数特性調整テーブル22cは、ディジタル減衰器200の、周波数に対する減衰量(利得調整量)を、アンテナATからの放送電波の出力レベルごとに予め対応付けて記録したテーブルである。周波数特性調整テーブル22cも、上記6通りの出力レベルごとに、周波数と減衰量とが対応付けられたテーブルである。周波数特性調整テーブル22cは、例えば、2.0Wの出力レベルについて、少なくとも2つの周波数に対する送信増幅器78の出力レベルの計測値に基づいて作成される。他の出力レベルについては、線形補完により作成される。
【0038】
周波数特性調整テーブル22b,22cは、例えば以下の手順により作成される。
(1) 先ず、ディジタル減衰器200、振幅/位相自検出器79を含むフィードバックラインを無効にする。
(2) その状態で、送信増幅器78の出力レベルの計測値に基づいて、周波数特性調整テーブル22bを調整(作成)する。
(3) 次に、フィードバックラインを有効にする。そうすると送信増幅器78の出力レベルが変化する。
(4) 送信増幅器78の出力レベルを適切な値にするために、当該出力レベルの計測値に基づいて周波数特性調整テーブル22cを調整する。
(2)の調整により、大まかな調整が完了する。さらに、フィードバックラインを有効化して(4)の調整を行うことで、減衰器75の減衰量の変化を加味したうえで総合的なレベル調整が実現される。
【0039】
コントローラ232は、アンテナATから送信される放送電波が、運用の開始前に指定された諸元を満たすように、ディジタル減衰器200の減衰量を設定する。すなわち、放送電波の周波数および出力レベルが割り当てられると、コントローラ232は、対応する減衰量を周波数特性調整テーブル22cから取得して、ディジタル減衰器200に設定する。
【0040】
以上説明したようにこの実施形態では、出力レベルおよび周波数が割り当てられると、当該割り当てレベル/周波数を満たすための減衰量を、周波数特性調整テーブル22bから読み出し、メインラインのディジタル減衰器100にセットする。また、割り当てレベル/周波数に対応する減衰量を、周波数特性調整テーブル22cから読み出し、フィードバックラインのディジタル減衰器200にセットする。ここで、周波数特性調整テーブル22b,22cは、送信増幅器78の周波数特性の計測値に基づいて予め用意され、例えば送受信部23のROM231に記憶される。
【0041】
送信増幅器78の周波数特性のため、周波数と出力レベルごとにデジタル回路を使用してレベルを調整する必要がある。また、送信増幅器78等の非直線性の影響で波形歪みが生じるため、フィードバック制御などで歪補償を行う。このフィードバック制御も送信増幅器78の周波数特性の影響を受けるため、周波数と出力レベルごとに調整が必要である。このような事情に対し、既存の技術では、周波数と出力レベルごとに調整が必要なため、指定の周波数と出力レベルごとに個別の調整を必要としていた。
【0042】
これに対し実施形態によれば、周波数、および出力レベルを問わず、直ちに自動で調整することが可能となる。つまり、放送電波の諸元に係わる内示を待たずに、調整をすることが可能となる。従って、周波数特性を簡便に調整可能な無線通信装置および防災無線装置を提供することが可能となる。ひいては、システム構築にかかるリードタイムを短縮することができる。
【0043】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
5…ベースバンド部、6…周波数変換部、7…無線部、8…送受切換部、10…無線親局装置、20…無線子局装置、20a…屋外拡声子局装置、20b…戸別子局装置、20c…屋外拡声子局装置、20d…戸別子局装置、20e…再送信子局装置、21…制御部、22…メモリ部、22a…プログラムデータ、22b…周波数特性調整テーブル、22c…周波数特性調整テーブル、23…送受信部、24…音声増幅部、25…操作部、26…表示部、27…外部インターフェース、28…電源部、28a…蓄電池、30…中継局、40…庁舎、41…操作卓、42…支所等、43…遠隔操作卓、44…地図表示制御装置、50…変復調部、51…ディジタル/アナログ変換器、52…アナログ/ディジタル変換器、70…送信増幅部、71…バッファアンプ、72…減衰器、73…ドライバアンプ、74…移相器、75…減衰器、76…ドライバアンプ、77…ドライバアンプ、78…送信増幅器、79…振幅/位相検出器、80…低雑音増幅器、100…ディジタル減衰器、200…ディジタル減衰器、231…ROM、232…コントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5