(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】自転車レンタルシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/06 20120101AFI20220425BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20220425BHJP
【FI】
G06Q30/06 350
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2020036664
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 恒
【審査官】塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/079156(WO,A1)
【文献】特開2020-005463(JP,A)
【文献】特開2016-143185(JP,A)
【文献】特開2016-212107(JP,A)
【文献】特開2010-160064(JP,A)
【文献】特開2006-131136(JP,A)
【文献】特開2004-199163(JP,A)
【文献】特表2007-519912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者端末を携帯するユーザに貸し出される自転車と、前記自転車を管理する管理者端末と、で構成される自転車レンタルシステムであって、
前記自転車が、当該自転車の現在の情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得した情報を前記管理者端末に送信する通信部と、
電動アシスト装置と、を備え、
前記管理者端末は、前記自転車から送信された情報に基いて前記利用者端末に案内を送信
し、
前記現在の情報が、前記自転車の位置情報を含んでおり、
前記管理者端末は、
前記位置情報に基き前記自転車がサービス提供範囲の境界に近付いた際に、その旨の案内を前記利用者端末に送信し、
前記位置情報に基き前記自転車がサービス提供範囲の境界を越えた際に、その旨の警告を前記利用者端末に送信し、かつ、前記自転車に制御信号を送信して前記電動アシスト装置によるアシスト機能を解除する
ことを特徴とする自転車レンタルシステム。
【請求項2】
前記管理者端末は、前記位置情報に基き前記自転車がサービス提供範囲の境界を所定距離以上越えた際に、前記自転車に制御信号を送信して前記電動アシスト装置のモータに制動力を加え、前記自転車を進み難くする
ことを特徴とする請求項
1に記載の自転車レンタルシステム。
【請求項3】
前記管理者端末は、前記位置情報に基き前記自転車がサービス提供範囲の境界を所定距離以上越えた際に、前記自転車に制御信号を送信して、前記自転車が停止した際に車輪をロックする
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の自転車レンタルシステム。
【請求項4】
前記現在の情報が、前記電動アシスト装置のバッテリ残量情報を含んでおり、
前記管理者端末は、前記バッテリ残量が所定値を下回っている際に、その旨の案内を前記利用者端末に送信する
ことを特徴とする請求項1
~3の何れか1項に記載の自転車レンタルシステム。
【請求項5】
前記管理者端末は、前記バッテリ残量が所定値を下回っている際に、前記電動アシスト装置を用いた航続可能距離の案内を前記利用者端末に送信する
ことを特徴とする請求項
4に記載の自転車レンタルシステム。
【請求項6】
前記現在の情報が、前記自転車のタイヤ空気圧に関わる情報を含んでおり、
前記管理者端末は、前記タイヤ空気圧が異常値である際に、その旨の案内を前記利用者端末に送信する
ことを特徴とする請求項1~
5の何れか1項に記載の自転車レンタルシステム。
【請求項7】
前記自転車のタイヤにひずみゲージが取り付けられており、
前記ひずみゲージが検知した前記タイヤのひずみ量に基いて前記タイヤ空気圧が算出される
ことを特徴とする請求項
6に記載の自転車レンタルシステム。
【請求項8】
前記自転車の車輪中央に距離センサが配置されており、
前記距離センサが検知した地面までの距離に基いて前記タイヤ空気圧が算出される
ことを特徴とする請求項
6に記載の自転車レンタルシステム。
【請求項9】
前記自転車に振動計が取り付けられており、
前記振動計が検知した変位量の変化を周波数分析することにより前記タイヤ空気圧が算出される
ことを特徴とする請求項
6に記載の自転車レンタルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車レンタルシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部を中心に自転車のレンタルシステム(シェアリングシステムとも呼ばれる)が運用されている。このレンタルシステムは、エリア内に複数設置されているポートのすべてにおいて自転車の貸出・返却ができ、利用料金を交通系ICカードや電子マネーカード等で電子決済することができるものである(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の自転車レンタルシステムにおいては、管理者が自転車のバッテリ残量(電動自転車の場合)やタイヤ空気圧、現在位置などの状況を十分に把握できておらず、管理が行き届いていないという問題があり、改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、自転車レンタルシステムにおいて、管理者が自転車の状況をより把握することで、サービス向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、利用者端末を携帯するユーザに貸し出される自転車と、前記自転車を管理する管理者端末と、で構成される自転車レンタルシステムであって、前記自転車が、当該自転車の現在の情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得した情報を前記管理者端末に送信する通信部と、電動アシスト装置と、を備え、前記管理者端末は、前記自転車から送信された情報に基いて前記利用者端末に案内を送信し、前記現在の情報が、前記自転車の位置情報を含んでおり、前記管理者端末は、前記位置情報に基き前記自転車がサービス提供範囲の境界に近付いた際に、その旨の案内を前記利用者端末に送信し、前記位置情報に基き前記自転車がサービス提供範囲の境界を越えた際に、その旨の警告を前記利用者端末に送信し、かつ、前記自転車に制御信号を送信して前記電動アシスト装置によるアシスト機能を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記自転車が、当該自転車の現在の情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得した情報を前記管理者端末に送信する通信部と、を備えているので、管理者が自転車の状況を常に把握することができる。そして、前記管理者端末が前記自転車から送信された情報に基いて前記利用者端末に案内を送信することで、ユーザへのサービスを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる自転車レンタルシステムの構成図である。
【
図2】
図1の自転車のタイヤ空気圧を取得する方法の一例を説明する説明図である。
【
図3】
図1の自転車のタイヤ空気圧を取得する方法の一例を説明する説明図である。
【
図4】
図1の自転車のタイヤ空気圧を取得する方法の他の例を説明する説明図である。
【
図5】
図1の自転車のタイヤ空気圧を取得する方法のさらに他の例を説明する説明図であり、自転車に取り付けられた振動計が検知した変位量の変化を示すグラフである。
【
図6】
図1の自転車のタイヤ空気圧を取得する方法のさらに他の例を説明する説明図であり、
図5の変位量の変化を周波数分析して示すグラフである。
【
図7】
図1の自転車の現在位置に応じた管理者端末の処理内容を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態にかかる「自転車レンタルシステム」を
図1~7を参照して説明する。
【0010】
図1に示す自転車レンタルシステム1は、ユーザに有償で貸し出される自転車2と、自転車2を管理する管理者端末3と、ユーザが携帯する利用者端末4と、で構成される。この自転車レンタルシステム1においては、サービス提供範囲の各地に無人のポートが複数設置されており、これら複数のポートに駐車された複数台の自転車2のうちから所望の自転車2をレンタルすることができる。また、返却時は、所望の空きポートに返却することができる。
【0011】
管理者端末3は、管理事務所等に設置されており、複数台の自転車2を集中管理している。管理者端末3は、各自転車2から送られてくる情報を受信し、この情報に基いて各自転車2に制御信号を送信したり、ユーザの利用者端末4に各種案内メールを送信したりする。また、管理者は、各自転車2から管理者端末3に送られてくる情報に基いて自転車2に必要なメンテナンス(バッテリ交換やタイヤへの空気補充など)を施す。
【0012】
利用者端末4は、管理者端末3から送られてくる各種案内メールを受信可能なものであり、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット等である。また、本例において、管理者端末3から利用者端末4に各種案内メールを送信する時期は、ユーザが自転車2のレンタルを開始した時点から自転車2の返却時までの期間である。
【0013】
自転車2は、パスワード入力やICカードの読み取りによってユーザ認証を行う認証部と、車輪に取り付けられた電子錠と、当該自転車2の現在の情報を取得する情報取得部と、情報取得部が取得した情報を管理者端末3に送信する通信部と、制御部と、を備えている。また、本例においては、自転車2が、電動アシスト装置を備えている。
【0014】
本例において、「自転車2の現在の情報」は、電動アシスト装置のバッテリ残量情報、自転車2のタイヤ空気圧に関わる情報、自転車2の位置情報である。位置情報はGPSを用いて取得する。これらの情報は、所定の時間間隔おきに管理者端末3に送信される。また、前記通信部と管理者端末3との通信は、LPWA(Low Power, Wide Area)通信を使用する。
【0015】
管理者端末3は、レンタル前の自転車2のバッテリ残量が所定値を下回っている際には、巡回中の作業者が携帯する端末にバッテリ交換の指示等を送信する。また、管理者端末3は、レンタル中の自転車2のバッテリ残量が所定値を下回っている際には、その旨の案内をユーザの利用者端末4に送信する。即ち、管理者端末3は、自転車2をレンタル中のユーザに対し、バッテリ残量が所定値を下回ったことの注意喚起をメール送信によって行う。また、このメールの送信内容に、電動アシスト装置を用いた航続可能距離を追加してもよい。
【0016】
管理者端末3は、レンタル前の自転車2のタイヤ空気圧が異常値である際には、巡回中の作業者が携帯する端末に空気補充の指示等を送信する。また、管理者端末3は、レンタル中の自転車2のタイヤ空気圧が異常値である際には、その旨の案内をユーザの利用者端末4に送信する。即ち、管理者端末3は、自転車2をレンタル中のユーザに対し、タイヤ空気圧が適正値ではないことの注意喚起をメール送信によって行う。また、タイヤ空気圧の変化により使用中のパンクが考えられる場合は、その旨をメールの送信内容に追加してもよい。ユーザは、このような注意喚起により、安全に自転車2を使用することができる。
【0017】
図2,3は、上記タイヤ空気圧を取得する方法の一例を説明する説明図である。
図2は、タイヤ50の空気圧が適正である場合を示しており、
図3は、タイヤ50の空気圧が不足している場合を示している。これら
図2,3に示す例においては、自転車2のタイヤ50の側面にひずみゲージ6が取り付けられており、ひずみゲージ6が検知したタイヤ50のひずみ量に基いてタイヤ空気圧が算出される。このひずみ量をタイヤ空気圧に換算する計算は、自転車2側で行ってもよいし、管理者端末3側で行ってもよい。
【0018】
図4は、上記タイヤ空気圧を取得する方法の他の例を説明する説明図である。
図4に示す例においては、自転車2の車輪5の中央に距離センサ7が配置されており、距離センサ7が検知した地面までの距離に基いてタイヤ空気圧が算出される。この地面までの距離をタイヤ空気圧に換算する計算は、自転車2側で行ってもよいし、管理者端末3側で行ってもよい。
【0019】
図5,6は、上記タイヤ空気圧を取得する方法のさらに他の例を説明する説明図である。本例においては、自転車2に振動計が取り付けられており、振動計が検知した変位量の変化を周波数分析することによりタイヤ空気圧が算出される。
図5は、自転車2に取り付けられた振動計が検知した変位量の変化を示すグラフであり、
図6は、
図5の変位量の変化を周波数分析して示すグラフである。
図5,6から読み取れるように、タイヤ空気圧が高い場合は高い周波数が多く出現し、タイヤ空気圧が低い場合は、低い周波数が多く出現する。
【0020】
管理者端末3は、自転車2の現在位置を監視しており、レンタル中の自転車2の現在位置に応じて利用者端末4への各種案内送信及び自転車2への制御操作を以下のように行う。
図7は、自転車2の現在位置に応じた管理者端末3の処理内容を説明するための説明図である。
図7中のA2は、本自転車レンタルシステム1のサービス提供範囲の境界を示している。本例においては、自転車2の利用が境界A2内のみに制限されている。
図7中のA1は、境界A2の内側かつ境界A2の近傍の範囲を示している。
図7中のA3は、境界A2の外側かつ境界A2から所定距離離れた範囲を示している。
図7中のA4は、範囲A3の外側かつ範囲A3から所定距離離れた範囲を示している。なお、
図7においては、便宜的に各境界を円で示しているが、実際にはこれら境界は、行政区画に対応させる等、柔軟に設定することができる。
【0021】
まず、管理者端末3は、レンタル中の自転車2が範囲A1を超えた際に、自転車2が境界A2に近付いた旨の案内メールをユーザの利用者端末4に送信し、注意喚起を行う。さらに進み、自転車2が境界A2を越えた際に、管理者端末3は、自転車2が境界A2を越えた旨の警告メールを利用者端末4に送信し、かつ、自転車2に制御信号を送信して電動アシスト装置によるアシスト機能を解除する。さらに進み、自転車2が範囲A3を越えた際に、管理者端末3は、自転車2に制御信号を送信して電動アシスト装置のモータに制動力を加え、自転車2を進み難くする。さらに進み、自転車2が範囲A4を超えた際に、管理者端末3は、自転車2に制御信号を送信して、自転車2が停止したタイミングで車輪の電子錠をロックする。なお、自転車2が境界A2内に戻れば電子錠のロックを解除する。
【0022】
なお、上述したように管理者端末3から自転車2に制御信号を送信してアシスト機能を解除したり、モータに制動力を加えたり、車輪の電子錠をロックしたりするのに替えて、自転車2の制御部自体が、現在位置に応じてこれらのアクションを実行するようにしてもよい。
【0023】
上述した各種案内送信及び自転車2への制御操作により、レンタル中の自転車2がサービス提供範囲外に至らないように管理することができる。また、自転車2の現在位置に応じて車輪をロックすることで、自転車2の盗難も防止することができる。
【0024】
以上、説明したように、本自転車レンタルシステム1によれば、管理者が自転車の状況(バッテリ残量、タイヤ空気圧、現在位置)を常に把握することができる。これにより、レンタル前の自転車2を整備でき、コンディションのよい自転車2をユーザに貸し出すことができる。さらに、自転車2のレンタル中においても、ユーザに対し有益な案内を提供することができる。
【0025】
上述した実施形態では、管理者端末3から利用者端末4に各種案内メールを送信する時期が、ユーザが自転車2のレンタルを開始した時点から自転車2の返却時までの期間であったが、管理者端末3から利用者端末4に各種案内メールを送信する時期を、ユーザが自転車2のレンタルを予約した時点から自転車2の返却時までの期間としてもよい。その場合、予約した自転車2のバッテリ残量を管理者端末3から利用者端末4にメール送信してもよい。バッテリ残量を確認することにより、ユーザは、予約内容の変更や予約キャンセル等を検討することができる。
【0026】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 自転車レンタルシステム
2 自転車
3 管理者端末
4 利用者端末
5 車輪
6 ひずみゲージ
7 距離センサ
50 タイヤ
A1 サービス提供範囲の内側かつ近傍の範囲
A2 サービス提供範囲の境界
A3 サービス提供範囲の外側かつ所定距離離れた範囲
A4 A3の外側かつ所定距離離れた範囲