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特許7063905サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20220426BHJP
   B41J 2/345 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
B41J2/335 101B
B41J2/335 101E
B41J2/335 101G
B41J2/335 101H
B41J2/345 A
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019535070
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2018027343
(87)【国際公開番号】W WO2019031199
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2017154913
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】吉川 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸哉
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-130707(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102107559(CN,A)
【文献】特開昭63-107093(JP,A)
【文献】特開昭62-251158(JP,A)
【文献】特開2014-087938(JP,A)
【文献】特開2008-168485(JP,A)
【文献】特開平03-061052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/335
B41J 2/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を含む支持体と、
電極層と、
前記電極層の少なくとも一部を覆う抵抗体層であって、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、を備え、
前記電極層は、
各々が前記主走査方向に交差する第1方向に延びる複数の共通電極帯状部を有する共通電極と、
各々が前記主走査方向に交差する第2方向に延びる個別電極帯状部を有する複数の個別電極と、を含み、
前記複数の共通電極帯状部の先端縁と前記複数の個別電極帯状部の先端縁とは、前記主走査方向に交差する第3方向に互いに離間して対向配置されており、
前記主走査方向に直交する方向を副走査方向とし、
前記第1方向、前記第2方向および前記第3方向が副走査方向となす角度は、それぞれ15°~30°であり、
前記抵抗体層は、前記複数の共通電極帯状部の前記先端縁と前記複数の個別電極帯状部の前記先端縁との間に位置する部分を含み、前記抵抗体層における前記部分によって、前記複数の発熱部が形成されている、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
基板を含む支持体と、
電極層と、
前記電極層の少なくとも一部を覆う抵抗体層であって、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、を備え、
前記電極層は、
各々が前記主走査方向に交差する第1方向に延びる複数の共通電極帯状部を有する共通電極と、
各々が前記主走査方向に交差する第2方向に延びる個別電極帯状部を有する複数の個別電極と、を含み、
前記複数の共通電極帯状部の先端縁と前記複数の個別電極帯状部の先端縁とは、前記主走査方向に交差する第3方向に互いに離間して対向配置されており、
前記抵抗体層は、前記複数の共通電極帯状部の前記先端縁と前記複数の個別電極帯状部の前記先端縁との間に位置する部分を含み、前記抵抗体層における前記部分によって、前記複数の発熱部が形成されており、
前記抵抗体層の前記複数の発熱部のいずれか1つは、
前記主走査方向両側にそれぞれ位置する2つの抵抗体側面と、
前記2つの抵抗体側面と前記支持体との間に介在する2つの抵抗体傾斜面と、を有する、サーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記抵抗体層の前記複数の発熱部のいずれか1つは、
前記主走査方向両側にそれぞれ位置する2つの抵抗体側面と、
前記2つの抵抗体側面と前記支持体との間に介在する2つの抵抗体傾斜面と、を有す
る、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記2つの抵抗体傾斜面のいずれか1つは、前記支持体の厚さ方向視において前記の共通電極帯状部および前記の個別電極帯状部の外方に位置する、請求項2または3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記2つの抵抗体傾斜面のいずれか1つの前記基板の厚さ方向における寸法は、前記2つの抵抗体側面のいずれか1つの前記厚さ方向における寸法よりも小である、請求項2ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記第1方向と前記第2方向とが、同方向である、請求項1ないし5のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記第1方向および前記第2方向と前記第3方向とが、同方向である、請求項1ないし6のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記抵抗体層には、複数のスリットが形成されており、前記複数のスリットのいずれか1つは、前記複数の発熱部のうち互いに隣り合う2つの発熱部の間に位置する、請求項1ないしのいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記スリットは、前記抵抗体層の副走査方向両端縁に到達している、請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記複数のスリットは、前記支持体の厚さ方向視において、前記複数の共通電極帯状部および前記複数の個別電極帯状部のいずれもと重ならない位置に形成されている、請求項またはに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
前記複数の共通電極帯状部の前記先端縁と前記複数の個別電極帯状部の前記先端縁とは、前記第3方向に対して直角である、請求項1ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
前記共通電極は、前記複数の共通電極帯状部に対して副走査方向において前記抵抗体層とは反対側に繋がり且つ前記主走査方向に延びる共通電極連結部を有する、請求項1ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
前記共通電極帯状部は、
前記第1方向に沿い且つ前記共通電極連結部に対して鋭角をなす第1側方端縁と、
前記第1方向に沿い且つ前記共通電極連結部に対して鈍角をなす第2側方端縁と、
前記第1側方端縁と前記共通電極連結部との間に介在し且つ前記共通電極連結部となす角が前記第1側方端縁がなす角よりも大である第3側方端縁と、を有する、請求項12に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
基板を含む支持体と、
電極層と、
前記電極層の少なくとも一部を覆う抵抗体層であって、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、を備え、
前記電極層は、
各々が前記主走査方向に交差する第1方向に延びる複数の共通電極帯状部を有する共通電極と、
各々が前記主走査方向に交差する第2方向に延びる個別電極帯状部を有する複数の個別電極と、を含み、
前記複数の共通電極帯状部の先端縁と前記複数の個別電極帯状部の先端縁とは、前記主走査方向に交差する第3方向に互いに離間して対向配置されており、
前記抵抗体層は、前記複数の共通電極帯状部の前記先端縁と前記複数の個別電極帯状部の前記先端縁との間に位置する部分を含み、前記抵抗体層における前記部分によって、前記複数の発熱部が形成されており、
前記共通電極は、前記複数の共通電極帯状部に対して副走査方向において前記抵抗体層とは反対側に繋がり且つ前記主走査方向に延びる共通電極連結部を有し、
前記共通電極帯状部は、
前記第1方向に沿い且つ前記共通電極連結部に対して鋭角をなす第1側方端縁と、
前記第1方向に沿い且つ前記共通電極連結部に対して鈍角をなす第2側方端縁と、
前記第1側方端縁と前記共通電極連結部との間に介在し且つ前記共通電極連結部となす角が前記第1側方端縁がなす角よりも大である第3側方端縁と、を有する、サーマルプリントヘッド。
【請求項15】
前記抵抗体層は、前記主走査方向と直角である断面形状が前記支持体から離間する側に膨出する形状である、請求項1ないし14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
前記支持体は、前記基板と前記電極層との間、かつ、前記基板と前記抵抗体層との間に介在するグレーズ層をさらに備える、請求項1ないし15のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項17】
前記グレーズ層は、膨出部を含み、前記膨出部は、前記複数の共通電極帯状部の前記先端縁および前記複数の個別電極帯状部の前記先端縁と前記基板との間に介在し且つ前記基板から離間する側に膨出する、請求項16に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項18】
基板を含む支持体に、導電性ペーストを印刷することと、
前記導電性ペーストを焼成することにより電極層を形成することであって、前記電極層は、
各々が主走査方向に交差する第1方向に延びる複数の共通電極帯状部を有する共通電極と、
各々が前記主走査方向に交差する第2方向に延びる個別電極帯状部を有する複数の個別電極と、を含み、前記複数の共通電極帯状部の先端縁と前記複数の個別電極帯状部の先端縁とが、前記主走査方向に交差する第3方向に互いに離間して対向配置されたことと、
前記電極層の前記複数の共通電極帯状部の先端縁と前記複数の個別電極帯状部の先端縁とを覆うように抵抗体ペーストを印刷その後前記抵抗体ペーストを乾燥させ、乾燥した前記抵抗体ペーストに、隣り合う前記共通電極帯状部と前記個別電極帯状部との間にスリットを形成したうえで、焼成することにより抵抗体層を形成することと、を備える、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項19】
前記スリットを形成することにおいては、ショットブラストを用いる、請求項18に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサーマルプリントヘッドは、基板と、当該基板に形成された電極層および抵抗体層を備える。電極層および抵抗体層は、いわゆる厚膜印刷された導電体ペーストを焼成することにより形成されている。電極層は、各々が副走査方向に延びる複数の共通電極帯状部および複数の個別電極帯状部を有する。複数の共通電極帯状部と複数の個別電極帯状部とは、主走査方向において交互に配置されている。抵抗体層は、複数の共通電極帯状部および複数の個別電極帯状部と交差し且つこれらを覆うように、主走査方向に延びる帯状に形成されている。
【発明の概要】
【0003】
本開示の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、支持体と、電極層と、抵抗体層と、を備える。前記支持体は、基板を含む。前記抵抗体層は、前記電極層の少なくとも一部を覆う。抵抗体層は、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む。前記電極層は、各々が前記主走査方向に交差する第1方向に延びる複数の共通電極帯状部を有する共通電極と、各々が前記主走査方向に交差する第2方向に延びる個別電極帯状部を有する複数の個別電極と、を含む。前記複数の共通電極帯状部の先端縁と前記複数の個別電極帯状部の先端縁とは、前記主走査方向に交差する第3方向に互いに離間して対向配置されている。前記抵抗体層は、前記複数の共通電極帯状部の前記先端縁と前記複数の個別電極帯状部の前記先端縁との間に位置する部分を含み、前記抵抗体層における前記部分によって、前記複数の発熱部が形成されている。
【0004】
本開示の第2の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドの製造方法は、基板を含む支持体に、導電性ペーストを印刷することと、前記導電性ペーストを焼成することにより電極層を形成することであって、前記電極層は、各々が主走査方向に交差する第1方向に延びる複数の共通電極帯状部を有する共通電極と、各々が前記主走査方向に交差する第2方向に延びる個別電極帯状部を有する複数の個別電極と、を含み、前記複数の共通電極帯状部の先端縁と前記複数の個別電極帯状部の先端縁とが、前記主走査方向に交差する第3方向に互いに離間して対向配置されたことと、前記電極層の前記複数の共通電極帯状部の先端縁と前記複数の個別電極帯状部の先端縁とを覆うように抵抗体ペーストを印刷することと、前記抵抗体ペーストを焼成することにより抵抗体層を形成することと、を備える。
【0005】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部平面図である。
図4】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
図5図4のV-V線に沿う要部断面図である。
図6図4のVI-VI線に沿う要部拡大断面図である。
図7図4のVII-VII線に沿う要部拡大断面図である。
図8図4のVIII-VIII線に沿う要部拡大断面図である。
図9】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部平面図である。
図10】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部平面図である。
図11図10のXI-XI線に沿う要部拡大断面図である。
図12】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法を示す要部拡大断面図である。
図13】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの変形例を示す要部断面図である。
図14】本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
図15】本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
図16】本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドの第1変形例を示す要部拡大平面図である。
図17】本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドの第2変形例を示す要部拡大平面図である。
図18】本開示の第4実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
図19】本開示の第5実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0008】
<第1実施形態>
図1図8は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの一例を示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA1は、支持体1、電極層3、抵抗体層4、保護層5、駆動IC71、封止樹脂72、コネクタ73、配線基板74および放熱部材75を備えている。サーマルプリントヘッドA1は、たとえばバーコードシートやレシートを作成するためにプラテンローラ81によって押圧される感熱紙82に対する印刷を施すプリンタに組み込まれるものである。なお、理解の便宜上、図1図3図4においては、保護層5を省略している。これらの図においては、主走査方向xおよび副走査方向yと基板11の厚さ方向zを座標基準として用いている。また、図4においては、理解の便宜上、支持体1を省略している。
【0009】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。図3は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部平面図である。図4は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。図5は、図4のV-V線に沿う要部断面図である。図6は、図4のVI-VI線に沿う要部拡大断面図である。図7は、図4のVII-VII線に沿う要部拡大断面図である。図8は、図4のVIII-VIII線に沿う要部拡大断面図である。
【0010】
支持体1は、電極層3、抵抗体層4および保護層5を支持するものである。支持体1は、基板11およびグレーズ層12からなる。
【0011】
基板11は、たとえばAlN、Al23などのセラミックスからなり、たとえばその厚さが0.6~1.0mm程度とされている。図1に示すように、基板11は、主走査方向xに長く延びる長矩形状とされている。図2に示すように、たとえばガラスエポキシ樹脂からなる基材層とCuなどからなる配線層とが積層された配線基板74が、支持体1に隣接して設けられた構造としてもよい。基板11の下面には、たとえばAlなどの金属からなる放熱部材75が設けられている。配線基板74を有する構成においては、たとえば放熱部材75上に基板11および配線基板74が隣接して配置され、基板11上の電極層3と配線基板74の配線(またはこの配線に接続されたIC)とが、たとえばワイヤボンディングなどにより接続される。さらに、配線基板74に、図1に示すコネクタ73を設けてもよい。
【0012】
グレーズ層12は、基板11上に形成されており、たとえば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。このガラス材料の軟化点は、たとえば800~850℃である。グレーズ層12は、ガラスペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。本実施形態においては、基板11の図中上面すべてがグレーズ層12によって覆われている。また、本実施形態においては、グレーズ層12は、膨出部121および補助部122を有する。
【0013】
膨出部121は、主走査方向xに延びる帯状であり、図中上方に若干膨出した断面円弧形状である。抵抗体層4は、膨出部121上に形成されている。膨出部121は、抵抗体層4の発熱部40から発せられた熱が、基板11へと過度に伝達されることを抑制するためのものである。
【0014】
補助部122は、基板11のうち膨出部121から露出した部分を覆うように形成されている。膨出部121は、相対的に粗面である基板11の表面を覆うことにより、電極層3を形成するのに適した平滑面を構成するためのものである。
【0015】
膨出部121および補助部122は、たとえばガラスからなる。かかるガラスの具体的選定は、膨出部121の蓄熱機能および補助部122の平滑機能を十分に発揮させることを鑑みてなされる。なお、補助部122の材料として、膨出部121の材料となるガラスペーストよりも低粘度のガラスペーストを用いることが好ましい。
【0016】
電極層3は、抵抗体層4に通電するための経路を構成するためのものであり、導電性材料によって形成されている。電極層3の材質は特に限定されず、たとえば添加元素としてロジウム、バナジウム、ビスマス、シリコンなどが添加されたAuまたはPtからなる。本実施形態においては、電極層3の主成分は、Auである。電極層3は、有機化合物を含むレジネートAuのペーストを厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。このような電極層3は、焼成過程を経ることにより、ガラス粒子を含みうる。電極層3は、複数のAu層を積層させることによって構成してもよい。電極層3の厚さは、たとえば0.4μm~1.0μm程度である。
【0017】
図3および図4に示すように、電極層3は、共通電極33および複数の個別電極36を有している。
【0018】
共通電極33は、複数の共通電極帯状部34および共通電極連結部35を有している。共通電極連結部35は、支持体1の副走査方向y下流側端寄りに配置されており、主走査方向xに延びる帯状である。複数の共通電極帯状部34は、各々が共通電極連結部35から図4に示す第1方向N1に沿ってに延びており、主走査方向xに等ピッチで配列されている。第1方向N1は、主走査方向xに交差する方向である。共通電極帯状部34は、先端縁341を有する。先端縁341は、共通電極帯状部34の先端に位置する端縁である。また、本実施形態においては、図3に示すように、共通電極連結部35には、Ag層351が積層されている。Ag層351は、共通電極連結部35の抵抗値を低減させるためのものである。
【0019】
複数の個別電極36は、抵抗体層4に対して部分的に通電するためのものであり、共通電極33に対して逆極性となる部位である。個別電極36は、抵抗体層4から駆動IC71に向かって延びている。複数の個別電極36は、主走査方向xに配列されており、各々が個別電極連結部37および個別電極帯状部38を有している。また、複数の個別電極36は、各々が駆動IC71に接続されるワイヤ61がボンディングされるためのボンディング部(図示略)を有していてもよい。
【0020】
図4に示すように、各個別電極帯状部38は、第2方向N2に沿って延びた帯状部分である。第2方向N2は、主走査方向xに交差する方向である。個別電極帯状部38は、先端縁381を有する。先端縁381は、個別電極帯状部38の先端に位置する端縁である。
【0021】
個別電極連結部37は、個別電極帯状部38から駆動IC71に向かって延びる部分であり、そのほとんどが副走査方向yに沿った部位および副走査方向yに対して傾斜した部位を有している。隣り合う個別電極連結部37同士の間隔は、隣り合う個別電極帯状部38同士の間隔よりも小さくてもよい。この場合、個別電極連結部37の幅は、個別電極帯状部38の幅よりも大きくなる。
【0022】
複数の共通電極帯状部34の先端縁341と複数の個別電極帯状部38の先端縁381とは、第3方向N3において離間し且つ対向するように配置されている。第3方向N3は、主走査方向xに交差する方向である。本実施形態においては、複数の共通電極帯状部34の先端縁341と複数の個別電極帯状部38の先端縁381とは、グレーズ層12の膨出部121上に位置している。また、本実施形態においては、複数の共通電極帯状部34の先端縁341および複数の個別電極帯状部38の先端縁381は、いずれも第3方向N3に対して直角である。
【0023】
本実施形態においては、第1方向N1は、副走査方向yと角度α1をなしている。第2方向N2は、副走査方向yと角度α2をなしている。第3方向N3は、副走査方向yと角度α3をなしている。第1方向N1と第2方向N2とが同一方向であり、さらに第1方向N1および第2方向N2と第3方向N3とが同一方向である。すなわち、角度α1、角度α2および角度α3は、同じ角度である。角度α1、角度α2および角度α3の角度は特に限定されず、15°~30°であることが好ましい。
【0024】
本実施形態においては、共通電極帯状部34は、第1側方端縁342、第2側方端縁343および第3側方端縁344を有する。第1側方端縁342は、共通電極連結部35(主走査方向x)に対して角度β1をなしている。角度β1は、鋭角であり、本実施形態においては、たとえば60°~75°である。第2側方端縁343は、第1側方端縁342と反対側に位置しており、共通電極連結部35(主走査方向x)に対して角度β2をなしている。角度β2は、鈍角であり、本実施形態においては、たとえば105°~120°である。第3側方端縁344は、第1側方端縁342と共通電極連結部35との間に介在しており、共通電極連結部35(主走査方向x)に対して角度β3をなしている。角度β3は、角度β1よりも大であり、本実施形態においては、たとえば90°である。
【0025】
隣り合う共通電極帯状部34同士の間隔および隣り合う個別電極帯状部38同士の間隔は、特に限定されず、たとえば15μm~30μmであり、たとえば20μm程度である。この場合、隣り合う共通電極帯状部34同士の中心距離および隣り合う個別電極帯状部38同士の中心距離を、42.3μmとすれば、いわゆる600dpiの印刷解像度となる。
【0026】
抵抗体層4は、電極層3を構成する材料よりも抵抗率が大であるたとえば酸化ルテニウムなどからなり、主走査方向xに延びる帯状に形成されている。図5に示すように、本実施形態においては、抵抗体層4は、主走査方向xと直角である断面形状が、支持体1から厚さ方向zに離間する側に膨出する形状である。抵抗体層4は、電極層3を部分的に覆うように、電極層3に対して支持体1とは反対側に積層されている。抵抗体層4は、共通電極33の複数の共通電極帯状部34の先端縁341と複数の個別電極36の個別電極帯状部38の先端縁381を覆っている。抵抗体層4のうち複数の共通電極帯状部34の先端縁341と複数の個別電極36の個別電極帯状部38の先端縁381とに挟まれた部位が、複数の発熱部40となっている。複数の発熱部40は、電極層3によって部分的に通電されることにより選択的に発熱する。発熱部40の発熱によって印字ドットが形成される。抵抗体層4の厚さは、たとえば4μm~10μmである。
【0027】
図4および図6図8に示すように、本実施形態においては、抵抗体層4は、複数のスリット41を有している。スリット41は、隣り合う発熱部40の間に位置しており、抵抗体層4を厚さ方向zに貫通している。スリット41は、厚さ方向z視において隣り合う共通電極帯状部34と個別電極帯状部38との間に設けられている。本実施形態においては、スリット41は、共通電極帯状部34および個別電極帯状部38とは、重ならない位置に設けられている。また、図示された例においては、スリット41は、抵抗体層4の副走査方向y両端縁に到達している。これにより、複数の発熱部40は、互いに離間した構成となっている。また、図示された例においては、スリット41は、第3方向N3に沿った形状である。
【0028】
図4および図6図8に示すように、抵抗体層4のうち1つの発熱部40を構成する部分は、一対の抵抗体側面411および一対の抵抗体傾斜面412を有する。
【0029】
一対の抵抗体側面411は、発熱部40の主走査方向x(厳密には、第3方向N3と直角である方向)の両側に位置しており、基板11が広がる方向(xy平面)に対して起立した面である。本明細書における起立した面とは、基準となる平面となす角度が典型的には90°の面であるが、少なくとも基準となる平面になだらかに繋がる面を含まない意図である。たとえば、抵抗体側面411の一例としては、図6図8に示す角度γが80°~90°程度である面をいう。
【0030】
一対の抵抗体傾斜面412は、一対の抵抗体側面411に対して支持体1側に繋がっており、一対の抵抗体側面411と支持体1との間に介在している。抵抗体傾斜面412は、厚さ方向zにおいて支持体1に近づくほど主走査方向x(厳密には、第3方向N3と直角である方向)外方に位置する形状の面である。図示された例においては、抵抗体傾斜面412は、凹曲面とされている。抵抗体傾斜面412の曲率半径は、たとえば0.5μm~2μmであり、たとえば1μm程度である。また、抵抗体傾斜面412の厚さ方向zにおける寸法は、抵抗体側面411の厚さ方向zにおける寸法よりも小である。
【0031】
本実施形態においては、抵抗体側面411は、厚さ方向z視において共通電極帯状部34および個別電極帯状部38と重ならない位置に設けられており、言い換えると共通電極帯状部34および個別電極帯状部38の外方に位置している。また、抵抗体傾斜面412は、厚さ方向z視において共通電極帯状部34および個別電極帯状部38と重ならない位置に設けられており、言い換えると共通電極帯状部34および個別電極帯状部38の外方に位置している。
【0032】
保護層5は、電極層3および抵抗体層4を保護するためのものである。保護層5は、たとえば非晶質ガラスからなる。
【0033】
駆動IC71は、複数の個別電極36を選択的に通電させることにより、該当する抵抗体層4の発熱部40を発熱させる機能を果たす。駆動IC71には、複数のパッドが設けられている。駆動IC71のパッドと複数の個別電極36とは、それぞれにボンディングされた複数のワイヤ61を介して接続されている。ワイヤ61は、Auからなる。図1および図2に示すように、駆動IC71およびワイヤ61は、封止樹脂72によって覆われている。封止樹脂72は、たとえば黒色の軟質樹脂からなる。また、駆動IC71とコネクタ73とは、図示しない信号線によって接続されている。
【0034】
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一例について、図9図12を参照しつつ以下に説明する。
【0035】
まず、図9に示すように、たとえばAl23からなる基板11を用意する。次いで、基板11上にガラスペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより、膨出部121および補助部122を有するグレーズ層12を形成する。次いで、レジネートAuのペーストを厚膜印刷する導電性ペースト印刷工程を行う。次いで、電極形成工程を行う。この工程においては、導電性ペーストを焼成することにより、金属膜を形成する。なお、当該厚膜印刷および焼成の工程を、複数回繰り返して行ってもよい。次いで、金属膜に対してたとえばエッチング等を用いたパターニングを施すことにより、電極層3を形成する。電極層3は、共通電極33および複数の個別電極36を有している。また、電極層3の形成の後に、または同時に、たとえばAgペーストの印刷および焼成を行うことにより、Ag層351を形成する。
【0036】
次いで、図10および図11に示すように、たとえば酸化ルテニウムなどの抵抗体を含む抵抗体ペースト4Aを厚膜印刷する抵抗体ペースト印刷工程を行う。この工程においては、複数の共通電極帯状部34の先端縁341および複数の個別電極帯状部38の先端縁381を覆うように、主走査方向xに延びる帯状に抵抗体ペースト4Aを印刷する。厚膜印刷された抵抗体ペースト4Aの表面は、厚さ方向zに緩やかに膨出する曲面である。
【0037】
次いで、乾燥工程を行う。この工程においては、電極層3および抵抗体ペースト4Aが意図しない変質等を生じない環境において、抵抗体ペースト4Aを乾燥させる。この乾燥により、抵抗体ペースト4Aに含まれる溶媒が減少する。このような乾燥した抵抗体ペースト4Aは、上述した断面形状を維持するものの、乾燥前と比べて顕著に脆い性質のものとなる。
【0038】
次いで、図12に示すように、乾燥した抵抗体ペースト4Aを部分的に除去する除去工程を行う。除去工程における除去手法は特に限定されず、本実施形態においては、ショットブラストを用いている。支持体1に対してマスク91を対面させる。マスク91は、複数の貫通部92が設けられている。複数の貫通部92は、各々がマスク91を厚さ方向zに貫通する貫通孔である。複数の貫通部92は、各々が第3方向N3に沿うスリットとなっており、主走査方向xに配列されている。本実施形態においては、貫通部92の副走査方向y寸法は、抵抗体ペースト4Aの副走査方向y寸法よりも大きい。また、複数の貫通部92は、隣り合う共通電極帯状部34および隣り合う個別電極帯状部38の間にそれぞれ配置される。
【0039】
複数の貫通部92が厚さ方向z視において隣り合う共通電極帯状部34および隣り合う個別電極帯状部38の間に位置する状態で、複数の貫通部92から投射材を抵抗体ペースト4Aに吹き付ける。投射材は、適宜選択される粒状体であり、本実施形態においては、乾燥した抵抗体ペースト4Aを適切に除去しつつ、電極層3やグレーズ層12を傷つけない硬度のものが選択されることが好ましい。このような投射材の材質としては、たとえばシリカが挙げられる。この吹き付けにより、抵抗体ペースト4Aが部分的に順次除去され、複数のスリット41が形成される。
【0040】
なお、粒状体である投射材は、所定の平均粒径を有するものである。この投射材の寸法を例示すると、球体の投射材の場合に、たとえば直径が1μm~4μmであり、たとえば2μm程度である。このため、除去工程を経て残存した抵抗体ペースト4Aのうち発熱部40となるべき部分には、厚さ方向z上側に位置する抵抗体側面411と厚さ方向z下側に位置する抵抗体傾斜面412とが形成される。抵抗体傾斜面412は、投射材の平均粒径に対応する曲率半径の凹曲面である。抵抗体傾斜面412の曲率半径は、たとえば0.5μm~2μmであり、たとえば1μm程度である。
【0041】
次いで、抵抗体層形成工程を行う。この工程においては、乾燥した抵抗体ペースト4Aを所定の温度によって焼成する。この結果、上述した構成の抵抗体層4が得られる。
【0042】
この後は、たとえばガラスペーストを厚膜印刷し、これを焼成することにより、保護層5を形成する。そして、駆動IC71の実装およびワイヤ61のボンディング、支持体1および配線基板74の放熱部材75への取り付けなどを行うことにより、サーマルプリントヘッドA1が得られる。
【0043】
次に、サーマルプリントヘッドA1およびサーマルプリントヘッドA1の製造方法の作用について説明する。
【0044】
本実施形態によれば、図4に示すように、共通電極33の複数の共通電極帯状部34と個別電極36の複数の個別電極帯状部38とは、主走査方向x視において重なっていない。抵抗体層4の発熱部40は、第3方向N3に離間した共通電極帯状部34の先端縁341と個別電極帯状部38の先端縁381との間の部分である。このため、複数の共通電極帯状部34と複数の個別電極帯状部38とが主走査方向xに交互に配置された構成と比べて、1つの発熱部40の主走査方向x寸法を縮小することが可能である。したがって、サーマルプリントヘッドA1の印刷の高精細化を図ることができる。
【0045】
また、電極層3と、電極層3の一部を覆う抵抗体層4とを、厚膜印刷を用いて形成された、いわゆる厚膜タイプのサーマルプリントヘッドであるサーマルプリントヘッドA1は、印刷による印刷対象物との摩擦による劣化を受けにくいという利点がある。したがって、製品寿命の短縮を回避しつつ、印刷の高精細化を図ることができる。
【0046】
抵抗体層4には、図4および図6図8に示すように、複数のスリット41が形成されている。本実施形態においては、スリット41は、抵抗体層4の副走査方向y両端に到達しており、隣り合う発熱部40同士を完全に区画している。これにより、ある個別電極36に通電させた際に、この個別電極36の個別電極帯状部38と1つのみの発熱部40とに電流が流れる。したがって、発熱させるべき発熱部40に集中して電流を流すことが可能であり、印刷の高精細化に好ましい。
【0047】
図12に示すように、抵抗体ペースト印刷工程によって印刷された抵抗体ペースト4Aを、乾燥工程において乾燥させる。そして、乾燥工程を経て脆い性質となった抵抗体ペースト4Aを、除去工程によって部分的に除去する。このため、除去工程においては、抵抗体ペースト4Aの所望の除去対象部分を容易に除去可能である。また、抵抗体ペースト4Aを除去するために、ことさらに強力な除去機能を発揮する除去手法を採用する必要がない。このため、除去工程において、電極層3やグレーズ層12を不当に傷つけるおそれが少ないという利点がある。また、抵抗体層4の複数のスリット41の寸法精度を向上させることができる。また、除去工程においてショットブラストを用いれば、抵抗体ペースト4Aの所望箇所を確実に除去することができる
【0048】
また、本実施形態においては、図4に示すように、第1方向N1、第2方向N2および第3方向N3が、副走査方向yに対して傾いている。このため、発熱部40の発熱により印刷媒体に形成される印刷ドットは、第3方向N3に沿って副走査方向yに対して傾いた形状となりやすい。隣り合う発熱部40は、スリット41によって区画されているものの、となりあう印刷ドットの副走査方向y下流端と副走査方向y上流端との主走査方向x距離は、第3方向N3が副走査方向yに対して傾いていることによって縮小されている。したがって、隣り合う印刷ドットの間の隙間を、肉眼で認識されにくいものとすることが可能であり、コントラストが強い、より鮮明な印刷を行うことができる。
【0049】
本実施形態においては、共通電極帯状部34の先端縁341と個別電極帯状部38の先端縁381とが、いずれも第3方向N3に対して直角である。これにより、先端縁341と先端縁381との距離は、均一である。このため、共通電極帯状部34と個別電極帯状部38とが通電されることにより、発熱部40に電流が流れる場合に、先端縁341と先端縁381との間において、より第3方向N3に沿って電流を流すことができる。先端縁341と先端縁381との第3方向N3における距離が不均一であると、第3方向N3に交差するように電流が流れたり、発熱部40の幅方向の一部に偏って電流が流れるおそれがあり、均一な発熱が阻害され、発熱効率が低下する。本実施形態によれば、より均一な発熱が可能であり、発熱効率を高めることができる。
【0050】
また、抵抗体層4は、図4および図6図8に示すように、抵抗体傾斜面412を有している。抵抗体傾斜面412は、抵抗体層4とグレーズ層12との接合部分において、接合面積を拡大する。このため、抵抗体層4の接合強度の向上に好ましい。また、サーマルプリントヘッドA1の使用における抵抗体層4の発熱部40の発熱等に起因して、抵抗体層4とグレーズ層12との接合箇所に応力が生じた場合に、この応力を緩和することが期待できる。
【0051】
複数のスリット41は、図4および図6図8に示すように、厚さ方向z視において複数の共通電極帯状部34および複数の個別電極帯状部38と重ならない位置に形成されている。これにより、スリット41を形成するための除去工程において、共通電極帯状部34や個別電極帯状部38を損傷することを防止可能であるという利点がある。また、抵抗体傾斜面412は、厚さ方向z視において複数の共通電極帯状部34および複数の個別電極帯状部38の外方に位置しており、これらと重ならない位置に設けられている。これにより、共通電極帯状部34や個別電極帯状部38を損傷することを防止可能であるという利点があるとともに、抵抗体層4の接合強度をさらに高めることができる。
【0052】
図4に示すように、共通電極帯状部34には、第3側方端縁344が設けられている。これにより、共通電極帯状部34が第1方向N1に沿って副走査方向yに対して傾いていても、共通電極帯状部34と共通電極連結部35との結合部分においては、電流が第3側方端縁344に沿ってより短い経路を流れることが可能である。これは、本実施形態と異なり共通電極帯状部34が第3側方端縁344を有さない場合に、共通電極帯状部34と共通電極連結部35との結合部分を流れる電流が迂回するような経路とならざるを得ないことと比較して、通電効率を高める上で有利である。
【0053】
図13図19は、本開示の変形例および他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0054】
<第1実施形態 変形例>
図13は、サーマルプリントヘッドA1の変形例を示している。本変形例においては、支持体1のグレーズ層12は、上述した例における膨出部121を有しておらず、補助部122に相当する部分のみによって形成されている。このため、グレーズ層12は、全体が平坦な形状である。本変形例によっても印刷の高精細化を図ることができる。また、本変形例から理解されるように、支持体1のグレーズ層12の構成は特に限定されず、またさらに、支持体1がグレーズ層12を備えない構成であってもよい。この点は以降の実施形態においても同様である。
【0055】
<第2実施形態>
図14は、本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA2は、複数の共通電極帯状部34の先端縁341と複数の個別電極帯状部38の先端縁381との構成が、上述した実施形態と異なっている。本実施形態においては、複数の共通電極帯状部34の先端縁341および複数の個別電極帯状部38の先端縁381が、いずれも主走査方向xに沿っている。このような実施形態によっても印刷の高精細化を図ることができる。また、本実施形態から理解されるように、先端縁341および先端縁381の角度は、適宜変更設定可能である。
【0056】
<第3実施形態>
図15は、本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA3は、抵抗体層4の複数のスリット41の構成が、上述した実施形態と異なっている。
【0057】
本実施形態においては、スリット41は、抵抗体層4の副走査方向y両端縁のいずれにも到達していない。すなわち、スリット41は、細長い形状の貫通孔の態様とされている。本実施形態においても、スリット41は、第3方向N3に沿って延びている。スリット41の第3方向N3寸法は、抵抗体層4のうちスリット41の第3方向N3両側に位置する部分の第3方向N3寸法よりも大である。また、第3方向N3方向において、スリット41は、先端縁341および先端縁381と重なっている。言い換えると、スリット41の第3方向N3の両端は、先端縁341および先端縁381よりも抵抗体層4の副走査方向y両端縁寄りに位置している。
【0058】
このような実施形態によっても、印刷の高精細化を図ることができる。また、本変形例から理解されるように、抵抗体層4は、複数の発熱部40毎に完全に区画された構成に限定されない。そして、本変形例によれば、スリット41の第3方向N3の両端は、先端縁341および先端縁381よりも抵抗体層4の副走査方向y両端縁寄りに位置していることにより、ある個別電極36を通電状態とした場合に、この個別電極36の個別電極帯状部38の先端縁381から第3方向N3に対向する共通電極帯状部34以外の共通電極帯状部34に電流が流れることを抑制することが可能である。
【0059】
<第3実施形態 第1変形例>
図16は、本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドの第1変形例を示している。本変形例のサーマルプリントヘッドA31においては、スリット41は、副走査方向yの図中下方端縁(上流側の端縁)に到達しており、副走査方向yの図中上方端縁(下流側の端縁)には到達していない。また、第3方向N3方向において、スリット41は、先端縁341および先端縁381と重なっている。スリット41の第3方向N3の図中上端(下流側端)は、先端縁341よりも抵抗体層4の副走査方向y図中上方端縁(下流側端縁)寄りに位置している。
【0060】
<第3実施形態 第2変形例>
図17は、本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドの第2変形例を示している。本変形例のサーマルプリントヘッドA32においては、スリット41は、副走査方向yの図中上方端縁(下流側の端縁)に到達しており、副走査方向yの図中下方端縁(上流側の端縁)には到達していない。また、第3方向N3方向において、スリット41は、先端縁341および先端縁381と重なっている。スリット41の第3方向N3の図中下端(上流側端)は、先端縁381よりも抵抗体層4の副走査方向y図中下方端縁(上流側端縁)寄りに位置している。
【0061】
これらの変形例によっても、印刷の高精細化を図ることができる。また、これらの変形例から理解されるように、抵抗体層4のスリット41の構成は、種々に変更可能である。
【0062】
<第4実施形態>
図18は、本開示の第4実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA4は、第1方向N1、第2方向N2および第3方向N3が、互いに異なる方向である。図示された例においては、第2方向N2が、副走査方向yと同方向である。また第1方向N1が副走査方向yとなす角度α1は、第3方向N3が副走査方向yとなす角度α3よりも小である。
【0063】
本実施形態によっても、印刷の高精細化を図ることができる。また、本実施形態から理解されるように、第1方向N1、第2方向N2および第3方向N3が副走査方向yとなす角度は、適宜変更設定が可能である。
【0064】
<第5実施形態>
図19は、本開示の第5実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA5は、第1方向N1、第2方向N2および第3方向N3が、いずれも副走査方向yと同方向である。本実施形態によっても、印刷の高精細化を図ることができる。
【0065】
本開示に係るサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係るサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0066】
本開示は、以下の付記にかかる実施形態を含みうる。
[付記1]
基板を含む支持体と、
電極層と、
前記電極層の少なくとも一部を覆う抵抗体層であって、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、を備え、
前記電極層は、
各々が前記主走査方向に交差する第1方向に延びる複数の共通電極帯状部を有する共通電極と、
各々が前記主走査方向に交差する第2方向に延びる個別電極帯状部を有する複数の個別電極と、を含み、
前記複数の共通電極帯状部の先端縁と前記複数の個別電極帯状部の先端縁とは、前記主走査方向に交差する第3方向に互いに離間して対向配置されており、
前記抵抗体層は、前記複数の共通電極帯状部の前記先端縁と前記複数の個別電極帯状部の前記先端縁との間に位置する部分を含み、前記抵抗体層における前記部分によって、前記複数の発熱部が形成されている、サーマルプリントヘッド。
[付記2]
前記第1方向と前記第2方向とが、同方向である、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記3]
前記第1方向および前記第2方向と前記第3方向とが、同方向である、付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記4]
前記第1方向、前記第2方向および前記第3方向が副走査方向となす角度は、15°~30°である、付記1ないし3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記5]
前記抵抗体層には、複数のスリットが形成されており、前記複数のスリットのいずれか1つは、前記複数の発熱部のうち互いに隣り合う2つの発熱部の間に位置する、付記1ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記6]
前記スリットは、前記抵抗体層の副走査方向両端縁に到達している、付記5に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記7]
前記複数のスリットは、前記支持体の厚さ方向視において、前記複数の共通電極帯状部および前記複数の個別電極帯状部のいずれもと重ならない位置に形成されている、付記5または6に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記8]
前記抵抗体層の前記複数の発熱部のいずれか1つは、
前記主走査方向両側にそれぞれ位置する2つの抵抗体側面と、
前記2つの抵抗体側面と前記支持体との間に介在する2つの抵抗体傾斜面と、を有する、付記7に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記9]
前記2つの抵抗体傾斜面のいずれか1つは、前記支持体の厚さ方向視において前記の共通電極帯状部および前記の個別電極帯状部の外方に位置する、付記8に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記10]
前記2つの抵抗体傾斜面のいずれか1つの前記基板の厚さ方向における寸法は、前記2つの抵抗体側面のいずれか1つの前記厚さ方向における寸法よりも小である、付記8または9に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記11]
前記複数の共通電極帯状部の前記先端縁と前記複数の個別電極帯状部の前記先端縁とは、前記第3方向に対して直角である、付記1ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記12]
前記共通電極は、前記複数の共通電極帯状部に対して副走査方向において前記抵抗体層とは反対側に繋がり且つ前記主走査方向に延びる共通電極連結部を有する、付記1ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記13]
前記共通電極帯状部は、
前記第1方向に沿い且つ前記共通電極連結部に対して鋭角をなす第1側方端縁と、
前記第1方向に沿い且つ前記共通電極連結部に対して鈍角をなす第2側方端縁と、
前記第1側方端縁と前記共通電極連結部との間に介在し且つ前記共通電極連結部となす角が前記第1側方端縁がなす角よりも大である第3側方端縁と、を有する、付記12に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記14]
前記抵抗体層は、前記主走査方向と直角である断面形状が前記支持体から離間する側に膨出する形状である、付記1ないし13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記15]
前記支持体は、前記基板と前記電極層との間、かつ、前記基板と前記抵抗体層との間に介在するグレーズ層をさらに備える、付記1ないし14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
[付記16]
前記グレーズ層は、膨出部を含み、前記膨出部は、前記複数の共通電極帯状部の前記先端縁および前記複数の個別電極帯状部の前記先端縁と前記基板との間に介在し且つ前記基板から離間する側に膨出する、付記15に記載のサーマルプリントヘッド。
[付記17]
基板を含む支持体に、導電性ペーストを印刷することと、
前記導電性ペーストを焼成することにより電極層を形成することであって、前記電極層は、
各々が主走査方向に交差する第1方向に延びる複数の共通電極帯状部を有する共通電極と、
各々が前記主走査方向に交差する第2方向に延びる個別電極帯状部を有する複数の個別電極と、を含み、前記複数の共通電極帯状部の先端縁と前記複数の個別電極帯状部の先端縁とが、前記主走査方向に交差する第3方向に互いに離間して対向配置されたことと、
前記電極層の前記複数の共通電極帯状部の先端縁と前記複数の個別電極帯状部の先端縁とを覆うように抵抗体ペーストを印刷することと、
前記抵抗体ペーストを焼成することにより抵抗体層を形成することと、を備える、サーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記18]
抵抗体ペーストを印刷することの後、抵抗体層を形成することの前に、
前記抵抗体ペーストを乾燥させることと、
乾燥した前記抵抗体ペーストに、隣り合う前記共通電極帯状部と前記個別電極帯状部との間にスリットを形成することと、
を更に備える、付記17に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
[付記19]
前記スリットを形成することにおいては、ショットブラストを用いる、付記18に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19