(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20220427BHJP
A61B 1/07 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
A61B1/00 524
A61B1/07 733
(21)【出願番号】P 2020563850
(86)(22)【出願日】2019-01-04
(86)【国際出願番号】 JP2019000007
(87)【国際公開番号】W WO2020141568
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】森 健
(72)【発明者】
【氏名】熊井 克範
(72)【発明者】
【氏名】三木 健寛
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅史
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-214459(JP,A)
【文献】特表2007-515211(JP,A)
【文献】特開2001-299699(JP,A)
【文献】特開2009-178229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
A61B 1/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部および基端部を有する長尺の挿入部と、
光源からの照明光を前記先端部に向かって導光する導光光学系と、
前記先端部に配置され、前記導光光学系によって導光された前記照明光を被写体に照射する球状レンズと、
前記先端部から前記基端部まで延び、前記被写体からの観察光を受光し該観察光を導光する光導波路と、
該光導波路によって導光された前記観察光を検出する光検出部とを備え、
前記先端部において、前記光導波路が、先端に向かうにつれて前記球状レンズの光軸に近付く方向に傾いている
走査型内視鏡。
【請求項2】
前記光導波路は、前記球状レンズの光軸に直交する径方向において前記球状レンズの外側に配置され、前記球状レンズの光軸回りの周方向に全周に配置される請求項1に記載の
走査型内視鏡。
【請求項3】
前記導光光学系が、屈折率分布型レンズを備え、該屈折率分布型レンズの先端面に前記球状レンズが固定され、
前記屈折率分布型レンズの先端または該屈折率分布型レンズを保持する外枠の先端が、前記光導波路の前記球状レンズ側の面に突き当たっている請求項1に記載の
走査型内視鏡。
【請求項4】
前記挿入部が、該挿入部の最外周面を形成する筒状の剛性の外被を備え、
該外被が、前記光導波路の前記球状レンズとは反対側の外側面を覆う請求項1に記載の
走査型内視鏡。
【請求項5】
前記外被は、前記光導波路の前記外側面上に該外側面の形状に沿って配置されている請求項4に記載の
走査型内視鏡。
【請求項6】
前記挿入部が、前記光導波路の前記球状レンズ側の内側面を覆う遮光性の内被を備える請求項4に記載の
走査型内視鏡。
【請求項7】
前記内被が、剛体である請求項6に記載の
走査型内視鏡。
【請求項8】
前記光導波路の先端面が、前記光導波路の光軸に対して傾斜している請求項1に記載の
走査型内視鏡。
【請求項9】
先端部および基端部を有する長尺の挿入部と、
前記先端部から前記基端部まで延び、光源からの照明光を前記先端部に向かって導光し被写体に照射する光導波路と、
前記先端部に配置され、前記被写体からの観察光を受光する球状レンズと、
該球状レンズによって受光された前記観察光を導光する導光光学系と、
該導光光学系によって導光された前記観察光を検出する光検出部とを備え、
前記先端部において、前記光導波路が、先端に向かうにつれて前記球状レンズの光軸に近付く方向に傾いている
走査型内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバの先端部を振動させることによって照明光を被写体上で走査し、被写体の各位置からの観察光に基づいて被写体の画像を形成する走査型の内視鏡装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内視鏡装置の観察視野を広げるためには、照明光学系および受光光学系の両方を広角化する必要がある。特許文献1の内視鏡装置において、照明光学系として球状レンズを用いることによって、照明光学系を広角化することができる。しかしながら、特許文献1において受光光学系として用いられているイメージファイバは、照明光学系の広角化に対応することができないため、観察視野を広げることができないという不都合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、球状レンズを用いた内視鏡装置において、照明光学系および受光光学系の両方の広角化を実現することができる内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、先端部および基端部を有する長尺の挿入部と、光源からの照明光を前記先端部に向かって導光する導光光学系と、前記先端部に配置され、前記導光光学系によって導光された前記照明光を被写体に照射する球状レンズと、前記先端部から前記基端部まで延び、前記被写体からの観察光を受光し該観察光を導光する光導波路と、該光導波路によって導光された前記観察光を検出する光検出部とを備え、前記先端部において、前記光導波路が、先端に向かうにつれて前記球状レンズの光軸に近付く方向に傾いている内視鏡装置である。
【0007】
本発明の他の態様は、先端部および基端部を有する長尺の挿入部と、前記先端部から前記基端部まで延び、光源からの照明光を前記先端部に向かって導光し被写体に照射する光導波路と、前記先端部に配置され、前記被写体からの観察光を受光する球状レンズと、該球状レンズによって受光された前記観察光を導光する導光光学系と、該導光光学系によって導光された前記観察光を検出する光検出部とを備え、前記先端部において、前記光導波路が、先端に向かうにつれて前記球状レンズの光軸に近付く方向に傾いている内視鏡装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、球状レンズを用いた内視鏡装置において、照明光学系および受光光学系の両方の広角化を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡装置の全体構成図である。
【
図2A】
図1の内視鏡装置の照明光学系および光導波路の縦断面図である。
【
図2B】
図2Aの照明光学系および光導波路を、先端側から照明光学系の光軸方向に見た正面図である。
【
図3A】テーパ部を有する光導波路の受光範囲を説明する図である。
【
図3B】テーパ部を有しない比較例の光導波路の受光範囲を説明する図である。
【
図4A】テーパ部を有する光導波路の設計値を説明する図である。
【
図4B】テーパ部を有しない比較例の光導波路の設計値を説明する図である。
【
図5B】
図5Aの照明光学系および光導波路を、先端側から照明光学系の光軸方向に見た正面図である。
【
図6A】光導波路の他の変形例を示す側面図である。
【
図6B】
図6Aの照明光学系および光導波路を、先端側から照明光学系の光軸方向に見た正面図である。
【
図7A】照明光学系の変形例と、光導波路の他の変形例とを示す縦断面図である。
【
図8A】照明光学系の他の変形例を示す縦断面図である。
【
図8C】挿入部の他の変形例を示す縦断面図である。
【
図10A】照明光学系の他の変形例を示す縦断面図である。
【
図10B】照明光学系の他の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の一実施形態に係る内視鏡装置1について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る内視鏡装置1は、
図1に示されるように、照明光Lを被写体S上で走査する走査型の内視鏡装置である。内視鏡装置1は、先端部2aおよび基端部2bを有する長尺の挿入部2と、光源7からの照明光Lを先端部2aに向かって導光する導光光学系3と、先端部2aに配置され導光光学系3によって導光された照明光Lを被写体Sに照射する照明光学系4と、先端部2aから基端部2bに向かって延び被写体Sからの観察光L’を受光し観察光L’を導光する光導波路5と、光導波路5によって導光された観察光L’を検出する光検出部6と、を備えている。
【0011】
挿入部2は、円筒状の剛性の外被8を備えている。外被8は、例えば、ステンレス鋼等の金属から形成されるパイプである。外被8は、挿入部2の最も径方向外側に配置される部材であり、外被8の外周面が挿入部2の最外周面を形成している。先端部2aは、先端に向かって次第に細くなるテーパ状である。
【0012】
導光光学系3は、光ファイバ3aと、スキャナ3bとを有している。
光ファイバ3aは、挿入部2内に配置され、挿入部2の長手方向に沿って延びている。光ファイバ3aの基端は、挿入部2の外部に配置されたレーザ光源7に接続され、レーザ光源7から出力されたレーザ光が照明光Lとして光ファイバ3aの基端に入力される。
【0013】
スキャナ3bは、光ファイバ3aの先端部を光ファイバ3aの長手方向に交差する方向に振動させることによって、光ファイバ3aの先端から射出される照明光Lを所定の走査軌跡に沿って走査する。走査軌跡は、例えば、渦巻状、ラスタ状またはリサージュ状である。スキャナ3bは、例えば、圧電素子の伸縮によって光ファイバ3aの先端部を振動させる圧電アクチュエータ、または、磁力によって光ファイバ3aの先端部を振動させる電磁アクチュエータである。
導光光学系3として、ガルバノミラーによって照明光Lを走査する方式を採用してもよい。
【0014】
照明光学系4は、完全球状の2つの球状レンズ4a,4bを備えている。2つの球状レンズ4a,4bは、挿入部2の長手軸に平行な方向に配列し、球状レンズ4a,4bの光軸Aは、挿入部2の長手軸に平行である。先端側の球状レンズ4aの直径は、基端側の球状レンズ4bの直径よりも小さい。光ファイバ3aの先端から射出された照明光Lは、2つの球状レンズ4a,4bを通過し、被写体Sに照射される。2つの球状レンズ4a,4bは、走査される照明光Lをさらに広角化する機能を有する。
【0015】
光導波路5は、先端部2aから基端部2bまで延びる筒状であり、光導波路5の先端面は、挿入部2の先端に配置されている。光導波路5は、先端面において観察光L’を受光し、観察光L’を基端部2bに向かって導光する。すなわち、光導波路5は、観察光L’を受光する受光光学系として機能する。外被8は、光導波路5の外周面(外側面)の形状に沿って光導波路5の外周面上に配置され、光導波路5の外周面を覆っている。これにより、光導波路5は、外被8によって保護され、また、外被8によって安定的に支持される。
【0016】
先端部2aに配置される光導波路5の先端部は、
図2Aおよび
図2Bに示されるように、先端に向かって次第に細くなるテーパ状のテーパ部5aであり、テーパ部5a内に2つの球状レンズ4a,4bが保持されている。テーパ部5aの先端面の開口の直径は、球状レンズ4aの直径よりも小さく、各球状レンズ4a,4bは、テーパ部5aの内周面と全周にわたって突き当たっている。このようなテーパ部5aによって、球状レンズ4a,4bは先端部2aの内側に安定的に保持される。また、テーパ部5aは、球状レンズ4a,4bの周囲に光軸A回りの周方向に全周にわたって配置されているので、観察光L’を空間的な偏りなく受光することができる。
【0017】
球状レンズ4aの先端側のレンズ面は接着剤9aによって覆われ、接着剤9aによって球状レンズ4aと光導波路5とが相互に固定されている。球状レンズ4bの基端側のレンズ面は接着剤9bによって覆われ、接着剤9bによって球状レンズ4bと光導波路5とが相互に固定されている。接着剤9aの先端側の面および接着剤9bの基端側の面は、それぞれ平坦であることが好ましい。
【0018】
図3Aは、光導波路5が観察光L’を受光することができる受光範囲B1,B2を説明している。
図3Bは、比較例としての光導波路5’の受光範囲B1,B2を説明している。光導波路5’の先端部は、光軸Aと平行である。
テーパ部5aは、先端側に向かうにつれて球状レンズ4a,4bの光軸Aに次第に近付く方向に傾いている。また、通常の内視鏡の設計において、挿入部2の直径に比べて、挿入部2の先端(光導波路5の先端)から被写体Sまでの観察距離は十分に大きい。したがって、
図3Aに示されるように、径方向に相互に対向する2つの位置での光導波路5の受光範囲B1,B2を考えたときに、2つの受光範囲B1,B2は、挿入部2の先端の近傍で相互に交差し、被写体Sに近付くにつれて、光軸Aに直交する径方向に相互に離れていく。一方、
図3Bに示されるように、光導波路5’の2つの受光範囲B1,B2は、相互に平行である。
このように、テーパ部5aが設けられていることによって、被写体S上での受光範囲が径方向に拡大され、光導波路5は、光導波路5’と比較して広角化される。
【0019】
光検出部6は、フォトダイオードのような受光素子を有している。光検出部6は、光導波路5の基端から受光素子に入射した観察光L’の強度を検出する。
光検出部6によって検出された観察光L’の強度の情報は、画像処理装置(図示略)に送信される。画像処理装置は、走査軌跡上における照明光Lの位置と、観察光L’の強度とを相互に対応づけることによって、被写体Sの2次元画像を形成し、ディスプレイ(図示略)に画像を表示させる。
【0020】
次に、このように構成された内視鏡装置1の作用について説明する。
本実施形態に係る内視鏡装置1によれば、レーザ光源7から出力された照明光Lは、導光光学系3によって挿入部2内を基端部2bから先端部2aに向かって導光され、先端部2aの球状レンズ4a,4bによって広角化され、被写体Sに照射される。照明光Lは、スキャナ3bによって被写体S上で走査され、走査軌跡上の照明光Lの照射位置で観察光L’が発生する。観察光L’は、例えば、照明光Lの反射光、または、照明光Lによって励起された蛍光である。被写体Sで発生した観察光L’の一部は、光導波路5によって受光されて光検出部6まで導光され、光検出部6によって検出される。被写体S上の走査軌跡の各位置での観察光L’が光検出部6によって検出され、検出された観察光L’の強度に基づいて被写体Sの画像が形成される。
【0021】
この場合に、内視鏡装置1による観察視野を広げるためには、照明光学系4および受光光学系である光導波路5の両方を広角化する必要がある。本実施形態によれば、照明光学系4は、球状レンズ4a,4bによって広角化され、光導波路5は、テーパ部5aによって広角化される。すなわち、被写体Sの広い観察視野に照明光Lを照射し、被写体Sの広い観察視野からの観察光L’を受光することができる。その結果、広い観察視野を観察することができるという利点がある。
【0022】
また、挿入部2の組立工程において、テーパ部5aの内周面に球状レンズ4a,4bの外面を突き当てることによって、球状レンズ4a,4bの光軸Aが光導波路5の中心軸に一致するように、球状レンズ4a,4bが位置決めされる。このように、光導波路5と球状レンズ4a,4bとの組み立てを容易に行うことができるという利点がある。
【0023】
図4Aは、光軸Aに対するテーパ部5aの傾斜角度φと、光導波路5の受光範囲H1との関係を説明している。
図4Bは、光導波路5’の受光範囲H2を説明している。
テーパ部5aの傾斜角度φ(>0)は、下式(1)を満たすことが好ましい。Dは、光導波路5の先端における直径である。すなわち、D/2は、光導波路5の先端と光軸Aとの間の距離である。Xは、光導波路5の先端から被写体Sまでの観察距離である。θ
NAは、光導波路5の片側受光角である。H1,H2は、被写体S上での観察光L’の受光範囲の半径を表している。傾斜角度φは、下式(1)を満たすように設計される。式(1)を満たすことによって、光導波路5’の受光範囲H2と比較して、光導波路5の受光範囲H1を拡大することができる。
【0024】
【0025】
傾斜角度φは、下式(2)を満たすことがさらに好ましい。Xmaxは、観察深度範囲の最大値である。式(2)を満たすことによって、光学系4,5の観察深度範囲内の少なくとも一部において、受光範囲H1を拡大する効果を得ることができる。なお、観察深度範囲とは、内視鏡装置1の被写界深度の近点から遠点までの間の範囲であり、Xmaxは、遠点までの観察距離に相当する。
【0026】
【0027】
なお、式(1)は、以下のようにして導かれる。
図4Aおよび
図4Bにおいて、受光範囲H1,H2は光線Rによって決定される。光線Rは、被写体Sから光導波路5に入射する光線の内、光軸Aに直交する径方向において最も外側の光線である。
図4Aおよび
図4Bに示される幾何学的関係から、H1およびH2は、それぞれ下記のように表される。
H1=X×tan(φ+θ
NA)-D/2 …(a)
H2=X×tanθ
NA+D/2 …(b)
テーパ部5aによる広角化の効果を得るための条件は、下式(c)の通りである。
H1>H2 …(c)
式(a),(b),(c)から、式(1)が導かれる。
【0028】
本実施形態において、球状レンズ4a,4bを、照明光学系として使用することとしたが、これに代えて、受光光学系として使用してもよい。この場合、光導波路5が照明光学系として使用される。
すなわち、レーザ光源7からの照明光Lは、光導波路5の基端から先端に向かって導光され、光導波路5の先端から被写体Sに照射される。観察光L’は、挿入部2の先端の球状レンズ4aによって受光され、導光光学系によって挿入部2の基端部に向かって導光される。この場合の導光光学系は、例えば、複数のレンズの組み合わせである。光検出部6は、例えば、撮像素子であり、導光光学系によって導光された観察光L’を検出する。
この構成によれば、照明光学系は、テーパ部5aによって広角化され、受光光学系は、球状レンズ4a,4bによって広角化される。したがって、広い観察視野を観察することができる。
【0029】
本実施形態において、筒状の光導波路5を用いることとしたが、光導波路5の具体的な構成はこれに限定されるものではない。
図5Aから
図6Bは、光導波路5の変形例を示している。
図5Aおよび
図5Bの光導波路51は、球状レンズ4a,4bの周囲に全周にわたって均等に配列された複数本の光ファイバ5bから構成されている。
図5Aおよび
図5Bの光導波路51は、4本の光ファイバ5bから構成されている。光ファイバ5bの数は、3本以下または5本以上であってもよい。複数本の光ファイバ5bに代えて、複数本のファイバ形状の光導波路から光導波路51が構成されていてもよい。光導波路51によれば、光導波路5と同様に、観察光L’を空間的な偏りなく受光することができる。
各光ファイバ5bの先端部は、先端側に向かうにつれて光軸Aに近付く方向に傾いている。テーパ部51aは、複数本の光ファイバ5bの先端部から構成されている。
【0030】
図6Aおよび
図6Bの光導波路52は、光導波路51と同様に、複数本の光ファイバ5bまたは複数のファイバ形状の光導波路から構成される。ただし、複数本の光ファイバ5bは、球状レンズ4a,4bの周囲に不均等に配列されている。テーパ部52aは、テーパ部51aと同様に、複数本の光ファイバ5bの先端部から構成されている。
【0031】
本実施形態において、
図7Aに示されるように、光導波路5の先端面5cが、光導波路5の光軸A’に対して傾斜していてもよい。
図7Aの例において、先端面5cは、光軸Aに垂直な平坦面である。このような先端面5cは、相互に固定された光導波路および球状レンズ4a,4bの組立体を先端側から研磨することによって形成される。したがって、球状レンズ4aの先端側の面も、光軸Aに垂直な平坦面であってもよい。
【0032】
図7Bは、光軸A’に対する先端面5cの傾きと、光軸Aに対する受光範囲B1の傾きとの関係を説明している。先端面5cが光軸A’に対して傾いていることによって、受光範囲B1は、先端面5cが光軸A’に垂直である場合と比較して、光軸A側により大きく傾く。したがって、光導波路5をさらに広角化することができる。また、球状レンズ4aの先端側の面が光軸Aに垂直な平坦面である場合には、照明光Lを効率良く射出することができる。
【0033】
図7Aおよび
図7Bの例では、テーパ部5aが光軸Aに対して傾斜角度φ’(>0)で傾き、先端面5cは、光軸Aに垂直である。このとき、傾斜角度φ’は、下式(3)を満たすことが好ましい。nは、光導波路5の軸上屈折率である。式(3)を満たすことによって、先端部が光軸Aに平行である光導波路5’の受光範囲と比較して、光導波路5の受光範囲を拡大することができる。
【0034】
【0035】
傾斜角度φ’は、下式(4)を満たすことがさらに好ましい。式(4)を満たすことによって、光学系4,5の観察深度範囲内の少なくとも一部において、受光範囲を拡大する効果を得ることができる。
【0036】
【0037】
なお、式(3)は、以下のようにして導かれる。
図7Bにおいて、スネルの法則から下式が成立する。
n×sinφ’=1×sinA …(d)
式(d)は、式(d’)に書き替えられる。
A=sin
-1(n×sinφ’) (d’)
式(1)において、φをAに置き換えることによって、式(1’)が得られる。
【数5】
式(1’)と式(d’)とから、式(3)が導かれる。
【0038】
本実施形態において、
図8Aから
図8Cに示されるように、照明光学系41が、球状レンズ4a,4bの基端側に像伝送系4cをさらに備えていてもよい。像伝送系4cは、屈折率分布型(GRIN)レンズであり、球状レンズ4bは、GRINレンズの先端面と接着剤9bによって固定されている。GRINレンズ4cは、導光光学系3の一部分であってもよい。像伝送系4cを備える照明光学系41は、内視鏡装置が硬性鏡である場合に好適である。像伝送系4cは、複数のレンズの組み合わせであってもよい。
【0039】
図8Aの変形例において、像伝送系4cの直径は、球状レンズ4bの直径よりも大きい。組立時には、像伝送系4cを内部に保持する筒状の外枠10の先端をテーパ部5aの内周面に突き当てることによって、接着剤9bによって一体化された球状レンズ4bおよび像伝送系4cが光導波路5に対して位置決めされる。外枠10が設けられていない場合には、像伝送系4cの先端がテーパ部5aの内周面に突き当てられてもよい。このように構成することによって、像伝送系4cの直径に合わせてテーパ部5aの傾斜を大きくした状態で位置決めすることができるため、受光光学系をより広角にすることができる。
【0040】
図8Bの変形例において、2つの球状レンズ4a,4bが相互に接触している。球状レンズ4a,4bの直径は、相互に等しくてもよい。
図8Cに示されるように、挿入部2が、円筒状の内被11をさらに備えていてもよい。内被11は、光導波路51と照明光学系41との間に配置され、光導波路51の照明光学系41側の内側面を覆う。内被11は、例えば、ステンレス鋼のような金属から形成されたパイプであり、遮光性および剛性を有する。照明光学系41と光導波路51とが、内被11によって相互に空間的に隔離される。したがって、照明光学系41から光導波路51に照明光Lが漏れ照明光Lが観察光L’に混入することを防止することができる。また、剛体の内被11によって、照明光学系41および光導波路51を安定的に支持することができる。内被11は、剛性を有しない、または剛性が低い遮光性のシート状の部材であってもよい。
【0041】
本実施形態において、光導波路5,51,52の外側面に密着する外被8に代えて、
図9に示されるように、光導波路5,51,52の外径よりも大きな内径を有する外被81を採用してもよい。
外被81は、金属から形成され、剛性を有する。外被81は、長手軸に対して傾斜する先端面を有する中空針であってもよい。照明光学系41および光導波路51は、外被81内で長手方向に移動可能である。外被81の内周面と光導波路51の外側面との間の隙間を流体の通路として使用してもよい。
【0042】
本実施形態において、照明光学系4が、2つの球状レンズ4a,4bを備えることとしたが、球状レンズの数は、
図10Aに示されるように、1つのみであってもよい。あるいは、
図10Bに示されるように、3つ以上の球状レンズ4a,4b,4dが設けられていてもよい。
球状レンズのレンズ面上の接着剤は、屈折力の低下を招く。したがって、球状レンズが1つのみである場合、照明光学系の全体の大きな正の屈折力を確保するために、
図10Aに示されるように、球状レンズ4aの先端側および基端側のレンズ面には、接着剤が設けられていないことが好ましい。
【0043】
上記の実施形態および変形例において、内視鏡装置1が、走査型であることとしたが、これに代えて、非走査型であってもよい。例えば、光ファイバ3aおよびスキャナ3bを有する導光光学系3に代えて、複数のレンズの組み合わせ、または、光ファイババンドルからなる導光光学系が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 内視鏡装置
2 挿入部
2a 先端部
2b 基端部
8,81 外被
3 導光光学系
3a 光ファイバ
3b スキャナ
4 照明光学系
4a,4b 球状レンズ
4c 像伝送系、屈折率分布型レンズ(導光光学系)
5,51,52 光導波路
5a,51a,52a テーパ部
5b 光ファイバ
5c 先端面
6 光検出部
7 レーザ光源
9a,9b 接着剤
10 外枠
11 内被
L 照明光
L’ 観察光
A 球状レンズの光軸
A’ 光導波路の光軸