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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】半導体冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018115733
(22)【出願日】2018-06-19
(65)【公開番号】P2019220539
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(74)【代理人】
【識別番号】100194467
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 健文
(72)【発明者】
【氏名】安西 智洋
(72)【発明者】
【氏名】松島 誠二
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-098439(JP,A)
【文献】特開2016-225531(JP,A)
【文献】特開2006-294971(JP,A)
【文献】特開2013-080806(JP,A)
【文献】米国特許第06397932(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第107078111(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器と、
前記冷却器の第一の面側に接合され、半導体素子を実装する配線層が積層された絶縁基板と、
前記冷却器の第一の面と対向する第二の面に接合され、前記冷却器の材料より線膨張係数の小さい材料からなる反り防止板とを備え、
前記冷却器が、第二の面に前記絶縁基板を投影した投影領域内に露出が必要な要素を有し、
前記反り防止板が前記要素に対応する位置に該要素の輪郭に沿った形状の欠損部を有することを特徴とする半導体冷却装置。
【請求項2】
前記冷却器が内部に冷却媒体流通空間を有する液冷式冷却器であり、前記要素が冷却媒体の入口および/または出口である請求項1に記載の半導体冷却装置。
【請求項3】
前記要素が突起物である請求項1に記載の半導体冷却装置。
【請求項4】
前記反り防止板が、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、窒化ケイ素(Si)、アルミニウムめっき鋼、ステンレス鋼、鉄(Fe)のうちのいずれか、あるいはこれらの複合材で形成されている請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の半導体冷却装置。
【請求項5】
前記絶縁基板と冷却器との間に伝熱層を有する請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の半導体冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を搭載した基板を冷却する半導体冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子は大電力を扱うことが多く、それに伴って発熱量が増大している。このため、半導体素子を実装した基板に冷却器を接合して放熱している。放熱に大きなスペースを確保できる定置設備では強制空冷が可能であるが、限られたスペース内に機器は配置する場合は液冷式冷却器が有用である。
【0003】
半導体素子はセラミック等の絶縁基板に積層された配線層に実装され、前記絶縁基板の反対側の面に、アルミニウムや銅の高熱伝導金属からなる冷却器がろう付等により接合される。このような半導体冷却装置において、半導体素子の発熱によって温度が上昇すると、冷却器の材料である金属の線膨張係数が絶縁基板の材料であるセラミックの線膨張係数よりも大きいために、膨張しようとする冷却器が絶縁基板に引っ張られて反りが生じる。そして、冷却器に反りが生じると、絶縁基板にクラックが生じたり、絶縁基板が剥離することがある。
【0004】
このような冷却器の反りに対して、特許文献1、2は、冷却器の反対側の面の絶縁基板に対向する位置に、絶縁基板と同程度の線膨張率を有する材料からなり、絶縁基板と同形の拘束部材を接合することによって反りを防止する技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-294971号公報
【文献】特開2017-98439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記半導体冷却装置において、液冷式冷却器の冷却媒体の出入口が絶縁基板に対向する面に設けられている場合、拘束部材は出入口を塞がない位置に配置しなければならない。従って、前記拘束部材を絶縁基板の対向位置に配置するという条件を満たすには、絶縁基板の対向位置に拘束部材を配置し、拘束部材の外側に出入口を設けることになる(特許文献2の図2参照)。このため、冷却器は寸法が大きくなり、半導体冷却装置の小型化を妨げている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した背景技術に鑑み、反り防止板によって反りを防止した冷却器を小型化した半導体冷却装置を提供するものである。
【0008】
即ち、本発明は下記[1]~[5]に記載の構成を有する。
【0009】
[1]冷却器と、
前記冷却器の第一の面側に接合され、半導体素子を実装する配線層が積層された絶縁基板と、
前記冷却器の第一の面と対向する第二の面に接合され、前記冷却器の材料より線膨張係数の小さい材料からなる反り防止板とを備え、
前記冷却器が、第二の面に前記絶縁基板を投影した投影領域内に露出が必要な要素を有し、
前記反り防止板が前記要素に対応する位置に欠損部を有していることを特徴とする半導体冷却装置。
【0010】
[2]前記冷却器が内部に冷却媒体流通空間を有する液冷式冷却器であり、前記要素が冷却媒体の入口および/または出口である前項1に記載の半導体冷却装置。
【0011】
[3]前記要素が突起物である前項1に記載の半導体冷却装置。
【0012】
[4]前記反り防止板が、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、窒化ケイ素(Si)、アルミニウムめっき鋼、ステンレス鋼、鉄(Fe)のうちのいずれか、あるいはこれらの複合材で形成されている前項1~3のうちのいずれか1項に記載の半導体冷却装置。
【0013】
[5]前記絶縁基板と冷却器との間に伝熱層を有する前項1~4のうちのいずれか1項に記載の半導体冷却装置。
【発明の効果】
【0014】
上記[1]に記載の半導体冷却装置は、冷却器の第一の面側に絶縁基板が接合され、第一の面に対向する第二の面に、前記絶縁基板の投影領域に露出を必要とする要素を有している。冷却器の第二の面に接合される反り防止板は前記要素に対応する位置に欠損部を有し、欠損部によって前記要素を避けた位置に接合されているので、前記要素を露出させることができる。従って、冷却器の第二の面において、露出を必要とする要素を反り防止板を避けて絶縁基板の投影領域外に設ける必要がなく、前記要素を投影領域内に設けることによって冷却器、ひいては半導体冷却装置を小型化できる。
【0015】
上記[2]に記載の半導体冷却装置は、冷却器が第二の面に冷却媒体の入口および/または出口を有する液冷式冷却器であり、入口および/または出口が露出を必要とする要素である。反り防止板の欠損部が冷却器の入口および/または出口に対応する位置に欠損部を有しているので、前記入口および/または出口を投影領域内に設けることによって冷却器、ひいては半導体冷却装置を小型化できる。
【0016】
上記[3]に記載の半導体冷却装置は、冷却器の第二の面に突起物が設けられ、前記突起物が露出を必要とする要素である。反り防止板の欠損部が冷却器の突起物に対応する位置に欠損部を有しているので、前記突起物を投影領域内に設けることによって冷却器、ひいては半導体冷却装置を小型化できる。
【0017】
上記[4]に記載の半導体冷却装置によれば、反り防止板が所定の材料で形成されているので適正な反り防止効果が得られる。
【0018】
上記[5]に記載の半導体冷却装置によれば、絶縁基板と冷却器の間に介在する伝熱層によって半導体素子が発する熱の放熱が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の半導体冷却装置の一実施形態の分解斜視図である。
図2図1の半導体冷却装置の組み立て状態におけるA-A線断面図である。
図3図1の半導体冷却装置を底面から見た斜視図であり、冷却器の底壁に絶縁基板を投影した図である。
図4】他の半導体冷却装置を底面から見た斜視図である。
図5】さらに他の半導体冷却装置における、絶縁基板の投影領域と反り防止板の欠損部の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[半導体冷却装置の構造]
図1~3に、本発明の半導体冷却装置の一実施形態を示す。
【0021】
半導体冷却装置1は、絶縁基板10、冷却器20および反り防止板40を備えている。
【0022】
前記絶縁基板10は四角形であり、一方の面に半導体素子11を実装するための配線層12が接合され、他方の面に冷却器20への放熱を促す伝熱層13が接合されている。
【0023】
前記冷却器20は、四角形の放熱基板21とジャケット30とにより冷却媒体流通空間が形成される液冷式冷却器である。前記放熱基板21は中央部に多数のフィン22が一体に立設され、フィン22群の周囲がフランジ23となされている。前記ジャケット30は、フィン22群を収容する凹部31を有する箱型であり、凹部31の深さがフィン22の高さと同寸に設定されている。前記凹部31の底壁32に冷却媒体の入口33aおよび出口33bとなる2つの円形孔が穿設されている。前記入口33aおよび出口33bは四角形の底壁32の対向する2辺の近傍にそれぞれ設けられている。
【0024】
前記放熱基板21をジャケット30に被せ、凹部31にフィン22群を収容して放熱基板21で凹部31の開口部を閉じると、フィン22の先端が凹部31の底壁32の内面32bに当接する。前記放熱基板21とジャケット30は、フランジ23と凹部31の上面が接合されるとともに、フィン22の先端と底壁32の内面32bが接合されて、冷却媒体流通空間が形成されている。
【0025】
前記冷却器20は、放熱基板21の外面21aが本発明の冷却器の第一の面に対応し、ジャケット30の底壁32の外面32aが第二の面に対応する。そして、前記冷却器20の放熱基板21の外面21aに伝熱層13を介して絶縁基板10が接合され、底壁32の外面32aに反り防止板40が接合されている。また、前記入口33aおよび出口33bは露出が必要な要素である。
【0026】
前記半導体冷却装置1は、配線層12、絶縁基板10、伝熱層13、放熱基板21、ジャケット30、反り防止板40の各部材を、各接合部位にろう材を介在させて組み立て、組み立て物をろう付加熱することにより作製される。
【0027】
前記半導体冷却装置1において、絶縁基板10はセラミック等で作製され、冷却器20はアルミニウムや銅の高熱伝導金属で作製され、反り防止板40は冷却器20の材料よりも線膨張率の小さい材料で作製されている。前記冷却器20を構成する金属はセラミックよりも線膨張係数が大きいので、半導体冷却装置1を上述した方法で作製すると、ろう付 加熱の後室温まで冷却する際、冷却器20が絶縁基板10よりも縮んで反ろうとするが、冷却器20の底壁32の外面32aに接合された反り防止板40が冷却器20の伸びを抑制する。その結果として、冷却器20の反りが抑制され、絶縁基板10のクラック発生や接合部分の剥離を防ぐことができる。また、前記配線層12に実装した半導体素子11が発熱して温度が上昇すると、冷却器20が絶縁基板10よりも伸びて反ろうとするが、反り防止板40によって冷却器20の伸びが抑制されるので、絶縁基板10のクラック発生や接合部分の剥離を防ぐことができる。前記半導体冷却装置1の各構成部材の好適材料については後に詳述する。
【0028】
図3において、点線は冷却器20の底壁32の外面32aに投影した絶縁基板10の輪郭dを示しており、輪郭dで囲まれた領域が絶縁基板10の投影領域Pである。前記冷却器20に接合された反り防止板40と絶縁基板10の各辺の長さは同一であるが、説明の便宜のために、冷却器20に投影された絶縁基板10の輪郭dは反り防止板40の僅かに外側に表示している。前記冷却器20の入口33aおよび出口33bは露出が必要が要素であり、それらの一部が前記投影領域P内に存在している。
【0029】
前記反り防止板40は対向する2辺の中央部に半円形の欠損部41を有している。これらの欠損部41の位置は冷却器20の入口33aおよび出口33bに対応しているので、反り防止板40は欠損部41によって入口33aおよび出口33bを避けた位置に接合されて、入口33aおよび出口33bは塞がれることなくそれらの機能を果たすことができる。このように、反り防止板40に欠損部41を形成することによって投影領域P内に露出が必要な要素を設けることができる。反り防止板40は欠損部41を有していても相応に反り防止効果を発揮するので、反り防止効果を得つつ、投影領域P内に入口33aおよび出口33bを設けることが可能となり、冷却器20、ひいては半導体冷却装置1を小型化できる
冷却器の第二の面において、絶縁基板の投影領域内の露出が必要な要素は冷却媒体の出入口等の開口部に限定されないし、要素の数も限定されない。突起物は反り防止板の接合を妨げる障害物であるから、その種類に関係なく露出が必要な要素である。例えば、図4の冷却器50は第二の面の四隅に設けられた取付用ボス51が投影領域内の障害物であり、反り防止板52の四隅に欠損部53が形成されている。
【0030】
前記反り防止板40、52は欠損部41、53の面積が大きくなるほど反り防止効果が小さくなる。このため、反り防止効果を維持するために欠損部41、53の合計面積は投影領域Pの面積の50%以下であることが好ましく、特に20%以下であることが好ましい。また、欠損部41、53の面積を可及的に小さくするために、露出が必要な要素の輪郭に沿った形状に形成することが好ましい。図3の欠損部41は円形の入口33aおよび出口33bの輪郭に沿って半円形に形成され、図4の欠損部53は取付用ボス51の輪郭に沿って四半円形に形成されている。但し、本発明は欠損部が露出が必要な要素の輪郭に沿った形状であることに限定されない。図5は、図3の冷却器20に適用する他の形状の反り防止板55の例を示している。前記反り防止板55は円形の入口33aおよび出口33bと重なる辺を辺の長さ方向の全体を長方形に切り欠いて欠損部56(斜線を付した部分)を形成している。これらの欠損部56の面積は投影領域Pと入口33aおよび出口33bの重複部分の面積よりも大きい。このように欠損部56の面積を拡大することによって反り防止板55の形状を単純化できる。前記反り防止板55は図3の反り防止板40よりもそり防止効果が小さくなるが、相応の効果は得られる。
【0031】
また、本発明の反り防止板は全体が絶縁基板の投影領域内に収まる形状であることにも限定されない。反り防止板の輪郭が欠損部以外の部分で投影領域の外側にある形状であってもよい。
【0032】
[半導体冷却装置の構成部材の材料]
本発明の半導体冷却装置1の構成部材の好ましい材料および好ましい形態は以下のとおりである。
【0033】
絶縁基板10を構成する材料は、電気絶縁性が優れていることはもとより、熱伝導性が良く放熱性が優れていることが好ましい。かかる点で窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、窒化ケイ素(Si)、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックを例示できる。これらのセラミックは電気絶縁性が優れていることはもとより、熱伝導性が良く放熱性が優れている点で推奨できる。また、絶縁基板10の厚さは0.2mm~3mmの範囲が好ましい。
【0034】
配線層12を構成する材料は導電性に優れかつ熱伝導性に優れたものが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金、銅または銅合金が好ましい。これらの中でも特に純アルミニウムが好ましい。また、配線層12の厚さは0.2mm~1mmの範囲が好ましい。また、半導体素子11は前記配線層12にはんだ付等によって接合される。
【0035】
伝熱層13を構成する材料および厚みは配線層12を構成する材料に準じる。前記伝熱層13は半導体素子11が発する熱の冷却器20への放熱を促す効果がある。また、前記伝熱層13は必須の層ではなく、絶縁基板10が直接冷却器20に接合された半導体冷却装置も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0036】
冷却器20を構成する材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金、銅または銅合金などの高熱伝導性材料が好ましい。これらの金属の線膨張係数は前記絶縁基板10を構成する材料の線膨張係数よりも大きい。また、図示例の冷却器20は放熱基板21に多数のピン状フィン22を一体に設けた構造であるが、フィンの有無およびフィンの形態は問わない。
【0037】
反り防止板40を構成する材料は、冷却器20よりも線膨張係数が小さいことが条件であり、特に純アルミニウムよりも線膨張係数が小さい材料が好ましい。線膨張係数の条件を満たす材料として、上記の絶縁基板10と同じ材料、アルミニウムめっき鋼、ニッケルめっき鋼、ステンレス鋼、鉄(Fe)およびこれらの複合材等を例示できる。これらの材料のなかでも、特に窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、窒化ケイ素(Si)、アルミニウムめっき鋼、ニッケルめっき鋼、鉄(Fe)のうちのいずれか、あるいはこれらの複合材が好ましい。また、反り防止板40の厚さは絶縁基板10と同等であることが好ましく、0.2mm~3mmの範囲が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は発熱量の大きい半導体素子の冷却装置として利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1…半導体冷却装置
10…絶縁基板
11…半導体素子
12…配線層
13…伝熱層
20、50…冷却器
21…放熱基板
21a…外面(第一の面)
30…ジャケット
32a…外面(第二の面)
33a…入口(要素)
33b…出口(要素)
40、52、55…反り防止板
41、53、56…欠損部
51…取付用ボス(要素、突起物)
P…絶縁板の投影領域
図1
図2
図3
図4
図5