IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和電工株式会社の特許一覧

特許7065072含フッ素エーテル化合物、磁気記録媒体用潤滑剤および磁気記録媒体
<>
  • 特許-含フッ素エーテル化合物、磁気記録媒体用潤滑剤および磁気記録媒体 図1
  • 特許-含フッ素エーテル化合物、磁気記録媒体用潤滑剤および磁気記録媒体 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】含フッ素エーテル化合物、磁気記録媒体用潤滑剤および磁気記録媒体
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/13 20060101AFI20220428BHJP
   C10M 107/38 20060101ALI20220428BHJP
   G11B 5/725 20060101ALI20220428BHJP
   G11B 5/84 20060101ALI20220428BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20220428BHJP
   C10N 40/18 20060101ALN20220428BHJP
【FI】
C07C43/13 CSP
C10M107/38
G11B5/725
G11B5/84 Z
C10N30:00 Z
C10N40:18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019502840
(86)(22)【出願日】2018-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2018004411
(87)【国際公開番号】W WO2018159250
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2020-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2017039820
(32)【優先日】2017-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】福本 直也
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 隆太
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】瀬理 通夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直子
(72)【発明者】
【氏名】室伏 克己
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/054393(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0068778(US,A1)
【文献】GUO,X. et al.,Journal of Applied Physics,Vol.111,2012年,p.024503-1 - 024503-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C10M
G11B
C10N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする含フッ素エーテル化合物。
【化1】

(式中、Aは下記式(9)で表される連結基を表し、Bは下記式(2)、下記式(3)、下記式(4)または下記式(5)のいずれかを表し、Dは下記式(6)、下記式(7)または下記式(8)のいずれかを表し、lは1~10の整数を表す。)
【化2】

(式中、mは1~30の整数を表し、nは1~30の整数を表す。)
【化3】

(式中、mは1~30の整数を表す。)
【化4】

(式中、pは1~30の整数を表す。)
【化5】

(式中、qは1~30の整数を表す。)
【化6】

(式中、rは0~5の整数を表す。)
【化7】

(式中、sは0~5の整数を表す。)
【化8】

(式中、tは1~5の整数を表す。)
【化9】

(式中、uは1を表す。)
【請求項2】
数平均分子量が1000~10000の範囲内である請求項1に記載の含フッ素エーテル化合物。
【請求項3】
一般式(1)で表わされる化合物は、下記式(10):
【化10】

(式中、Rfは、下記式(11)で表わされ、mおよびnはそれぞれ1~30の整数を表わす。)
【化11】
で表わされる請求項1又は2に記載の含フッ素エーテル化合物。
【請求項4】
一般式(1)で表わされる化合物は、下記式(12):
【化12】

(式中、Rfは、下記式(11)で表わされ、mおよびnはそれぞれ1~30の整数を表わす。)
【化13】

で表わされる請求項1又は2に記載の含フッ素エーテル化合物。
【請求項5】
一般式(1)で表わされる化合物は、下記式(15):
【化14】

(式中、Rfは、下記式(14)で表わされ、mは1~30の整数を表わす。)
【化15】

で表わされる請求項1又は2に記載の含フッ素エーテル化合物。
【請求項6】
一般式(1)で表わされる化合物は、下記式(16):
【化16】

(式中、Rfは、下記式(14)で表わされ、mは1~30の整数を表わす。)
【化17】

で表わされる請求項1又は2に記載の含フッ素エーテル化合物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の含フッ素エーテル化合物を含むことを特徴とする磁気記録媒体用潤滑剤。
【請求項8】
基板上に、少なくとも磁性層と、保護層と、潤滑層とが順次設けられた磁気記録媒体であって、
前記潤滑層は、請求項7に記載の磁気記録媒体用潤滑剤からなることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項9】
前記潤滑層の平均膜厚は、0.5nm~3nmである請求項8に記載の磁気記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素エーテル化合物、磁気記録媒体用潤滑剤および磁気記録媒体に関する。
本願は、2017年3月2日に、日本に出願された特願2017-039820号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置の記録密度を向上させるために、高記録密度に適した磁気記録媒体の開発が進められている。
従来、磁気記録媒体として、磁気記録媒体用の基板上に記録層等を積層した後、記録層上にカーボン等の保護層を形成し、さらに保護層上に潤滑層を形成したものがある。保護層は、記録層に記録された情報を保護するとともに、磁気ヘッドの摺動性を高めるものである。しかし、記録層上に保護層を設けただけでは、磁気記録媒体の耐久性は十分に得られない。
【0003】
このため、一般に、保護層の表面に潤滑剤を塗布して潤滑層を形成している。保護層上に潤滑層を設けることによって、磁気記録再生装置の磁気ヘッドと保護層とが直接接触することを防止できるとともに、磁気記録媒体上を摺動する磁気ヘッドの摩擦力を著しく低減させることができ、耐久性が向上される。
【0004】
ハードディスク等の磁気記録媒体に使用される潤滑剤としては、例えば、特許文献1には、-C2mO-単位(但し、mは1~18の整数)を基本骨格とするフッ素化ポリエ-テルの少なくとも一つの末端に、-(OCHCHOH(但し、nは1~30の整数)で表される極性基を有するフッ素化ポリエ-テルを含有するものが提案されている。また、パーフルオロポリエーテル主鎖および極性基を有する類似の鎖状化合物が特許文献2~4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-258287号公報
【文献】特開平9-282642号公報
【文献】特開2009-245491号公報
【文献】特開2012-7008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
磁気記録再生装置の記録密度を向上させて、磁気記録再生装置の磁気ヘッドの浮上量をより小さくするために、潤滑層の厚みをより一層薄くすることが求められている。
しかし、潤滑層の厚みを薄くすると、潤滑層に隙間が形成されて潤滑層による磁気記録媒体の表面の被覆率が低下し、潤滑層の下層の一部が露出される場合があった。
潤滑層に隙間が形成されると、潤滑層の隙間から潤滑層の下層に汚染物質を生成させる環境物質が侵入して、磁気記録媒体が汚染されてしまう。
【0007】
より詳細には、潤滑層の隙間から潤滑層の下層に、イオン性不純物などの汚染物質を生成させる環境物質が侵入すると、潤滑層の下層に侵入した環境物質が、潤滑層の下層に存在するイオン成分を凝集させて磁気記録媒体を汚染する汚染物質を生成させる。
また、磁気記録媒体を備えたハードディスクドライブの内部は、通常、磁気記録媒体を駆動して磁気記録媒体に情報の記録再生を行うことにより、高温状態となる。上述した潤滑層の隙間からの環境物質の侵入、潤滑層の下層に存在するイオン成分の凝集、磁気記録媒体を汚染する汚染物質の生成は、高温条件下でより顕著となる。また、上述の特許文献1~4には、このような課題の認識はない。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、厚みを薄くしても、高い被覆率で保護層の表面を被覆できる潤滑層を形成することができ、潤滑層の下層に侵入した環境物質に起因する潤滑層の下層に存在するイオン成分の凝集を防止し、磁気記録媒体を汚染する汚染物質の生成を抑制して、磁気記録媒体の表面の汚染を効果的に防止でき、磁気記録媒体上に存在する汚染物質の磁気ヘッドへの付着(転写)を防止できる含フッ素エーテル化合物、含フッ素エーテル化合物を含む磁気記録媒体用潤滑剤、および、当該磁気記録媒体用潤滑剤を用いた磁気記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。
その結果、中央にジフルオロメチレン基(-CF-)からなる鎖状構造を有し、この鎖状構造の両末端に、少なくとも1つの極性基を含む連結基を介して、パーフルオロポリエーテル鎖を有し、このパーフルオロポリエーテル鎖の末端に水酸基を有する単位が結合した構造の化合物を潤滑剤に適用すればよいことを見出した。さらに、この潤滑剤を用いて、磁気記録媒体の保護層上に潤滑層を形成することにより、潤滑層と保護層とが高い結合力で結合され、潤滑層の厚みを十分に薄くできること、ほぼ均一の膜厚で保護層の表面を高い被覆率で潤滑層により被覆できることを見出し、以下の[1]~[13]に示す本発明を完成するに至った。
【0010】
[1]本発明の一態様に係る含フッ素エーテル化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Aは少なくとも1つの極性基を含む連結基を表し、Bは下記式(2)、下記式(3)、下記式(4)または下記式(5)のいずれかを表し、Dは水酸基、下記式(6)、下記式(7)または下記式(8)のいずれかを表し、lは1~10の整数を表す。)
【0013】
【化2】
(式中、mは1~30の整数を表し、nは1~30の整数を表す。式(2)において、2つの繰り返し単位(O-CF)、(O-CF-CF)の並び順は、特に限定されず、式(2)に示す順番と逆であってもよい。)
【0014】
【化3】
(式中、mは1~30の整数を表す。)
【0015】
【化4】
(式中、pは1~30の整数を表す。)
【0016】
【化5】
(式中、qは1~30の整数を表す。)
【0017】
【化6】
(式中、rは0~5の整数を表す。)
【0018】
【化7】
(式中、sは0~5の整数を表す。)
【0019】
【化8】
(式中、tは1~5の整数を表す。)
【0020】
[2]上記[1]に記載の含フッ素エーテル化合物において、上記一般式(1)におけるAが、少なくとも1つの極性基を有する炭素原子数が1~20の連結基であることが好ましい。
【0021】
[3]上記[2]に記載の含フッ素エーテル化合物において、上記一般式(1)におけるAが、下記式(9)で表される連結基であることが好ましい。
【0022】
【化9】
(式中、uは1~5の整数を表す。)
【0023】
[4]上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の含フッ素エーテル化合物において、数平均分子量が1000~10000の範囲内であることが好ましい。
【0024】
[5]上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の含フッ素エーテル化合物において、一般式(1)で表わされる化合物は、下記式(10):
【0025】
【化10】
(式中、Rfは、下記式(11)で表わされ、mおよびnはそれぞれ1~30の整数を表わす。)
【0026】
【化11】
【0027】
で表わされることが好ましい。
【0028】
[6]上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の含フッ素エーテル化合物において、一般式(1)で表わされる化合物は、下記式(12):
【0029】
【化12】
(式中、Rfは、下記式(11)で表わされ、mおよびnはそれぞれ1~30の整数を表わす。)
【0030】
【化13】
【0031】
で表わされることが好ましい。
【0032】
[7]上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の含フッ素エーテル化合物において、一般式(1)で表わされる化合物は、下記式(13):
【0033】
【化14】
(式中、Rfは、下記式(14)で表わされ、mは1~30の整数を表わす。)
【0034】
【化15】
【0035】
で表わされることが好ましい。
【0036】
[8]上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の含フッ素エーテル化合物において、一般式(1)で表わされる化合物は、下記式(15):
【0037】
【化16】
(式中、Rfは、下記式(14)で表わされ、mは1~30の整数を表わす。)
【0038】
【化17】
【0039】
で表わされることが好ましい。
【0040】
[9]上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の含フッ素エーテル化合物において、一般式(1)で表わされる化合物は、下記式(16):
【化18】
(式中、Rfは、下記式(14)で表わされ、mは1~30の整数を表わす。)
【0041】
【化19】
【0042】
で表わされることが好ましい。
【0043】
[10]上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の含フッ素エーテル化合物において、一般式(1)で表わされる化合物は、下記式(17):
【0044】
【化20】
(式中、Rfは、下記式(11)で表わされ、mおよびnはそれぞれ1~30の整数を表わす。)
【0045】
【化21】
【0046】
で表わされることが好ましい。
【0047】
[11]本発明の一態様に係る磁気記録媒体用潤滑剤は、上記[1]~[10]のいずれか一つに記載の含フッ素エーテル化合物を含む。
【0048】
[12]本発明の一態様に係る磁気記録媒体は、基板上に、少なくとも磁性層と、保護層と、潤滑層とが順次設けられた磁気記録媒体であって、前記潤滑層が、上記[11]に記載の磁気記録媒体用潤滑剤からなる。
【0049】
[13]上記[12]に記載の磁気記録媒体は、前記潤滑層の平均膜厚が、0.5nm~3nmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0050】
本発明の含フッ素エーテル化合物を磁気記録媒体用潤滑剤に適用すると、厚みを薄くしても、高い被覆率で保護層の表面を被覆できる潤滑層を形成することができる。したがって、本発明の磁気記録媒体用潤滑剤を用いた磁気記録媒体では、潤滑層の下層に侵入した環境物質に起因する潤滑層の下層に存在するイオン成分の凝集を防止して、磁気記録媒体を汚染する汚染物質の生成を抑制できる。その結果、磁気記録媒体の表面の汚染を効果的に防止でき、磁気記録媒体上に存在する汚染物質の磁気ヘッドへの付着(転写)を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の磁気記録媒体の一実施形態を示した概略断面図である。
図2】実施例および比較例において、連続LUL(Load/Unload)動作の繰り返しを行う環境を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、それらの形態のみに限定されるものではない。特に記載のない限り、数、位置、材料などを必要に応じて選択してよいものとする。
【0053】
[含フッ素エーテル化合物]
本実施形態の含フッ素エーテル化合物(フッ素を含有するエーテル化合物)は、下記一般式(1)で表される化合物である。
この化合物は、中央にジフルオロメチレン基(-CF-)からなる鎖状構造を有し、この鎖状構造の両端に、少なくとも1つの極性基を含む2価以上の連結基Aを介して、パーフルオロポリエーテル鎖Bを有し、末端に水酸基を有する単位Dが結合した構造をなしている。すなわち、この化合物は、中央に有するジフルオロメチレン基の鎖状構造の各端部に、A、B、Dが順に結合されている。
【0054】
【化22】
【0055】
(式中、Aは少なくとも1つの極性基を含む連結基を表し、Bは下記式(2)、下記式(3)、下記式(4)または下記式(5)のいずれかを表し、Dは水酸基、下記式(6)、下記式(7)または下記式(8)のいずれかを表し、lは1~10の整数を表す。)
【0056】
【化23】
(式中、mは1~30の整数を表し、nは1~30の整数を表す。式(2)において、2つの繰り返し単位の並び順は、特に限定されず、式(2)に示す順番と逆であってもよい。)
【0057】
【化24】
(式中、mは1~30の整数を表す。)
【0058】
【化25】
(式中、pは1~30の整数を表す。)
【0059】
【化26】
(式中、qは1~30の整数を表す。)
【0060】
【化27】
(式中、rは0~5の整数を表す。)
【0061】
【化28】
(式中、sは0~5の整数を表す。)
【0062】
【化29】
(式中、tは1~5の整数を表す。)
【0063】
一般式(1)において、lは、3~8であることが好ましく、4~6であればがより好ましい。
一般式(1)におけるlは、シリコーンコンタミ耐性等の本実施形態の潤滑剤に求められる性能に応じて適宜調整される。
【0064】
一般式(1)におけるAは、前述のジフルオロメチレン基(-CF-)からなる鎖状構造と、後述の含フッ素エーテル基とを結合する少なくとも1つの極性基を有する炭素原子数が1~20の連結基であればよい。極性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、アミノカルボニル基等が挙げられる。Aは、下記式(9)で表される連結基であることが好ましい。
【0065】
【化30】
(式中、uは1~5の整数を表す。)
【0066】
一般式(1)において、Aが上記式(9)で表わされる場合、uは、1~5であり、1~3であれば好ましく、1または2であればより好ましい。
一般式(1)におけるAの構造や、上記式(9)におけるuは、シリコーンコンタミ耐性等の本実施形態の潤滑剤に求められる性能に応じて適宜調整される。
【0067】
一般式(1)において、Bが上記式(2)で表わされる場合、mは、3~20であることが好ましく、4~10であればより好ましい。また、nは、3~20であることが好ましく、4~10であればより好ましい。
式(2)において、2つの繰り返し単位の並び順は、特に限定されず、式(2)に示す順番と逆であってもよい。
【0068】
一般式(1)において、Bが上記式(3)で表わされる場合、mは、3~20であることが好ましく、4~10であればより好ましい。
一般式(1)において、Bが上記式(4)で表わされる場合、pは、3~20であることが好ましく、4~10であればより好ましい。
一般式(1)において、Bが上記式(5)で表わされる場合、qは、3~20であることが好ましく、4~10であればより好ましい。
一般式(2)~(5)におけるBのm、n、pおよびqは、それぞれ、シリコーンコンタミ耐性等の本実施形態の潤滑剤に求められる性能に応じて適宜調整される。
【0069】
一般式(1)において、Dは、水酸基または上記式(6)~(8)のいずれかで表わされる。
一般式(1)において、Dが上記式(6)で表わされる場合、rは、0~4であることが好ましく、0~2であればより好ましい。
一般式(1)において、Dが上記式(7)で表わされる場合、sは、1~4であることが好ましく、1~2であればより好ましい。
一般式(1)において、Dが上記式(8)で表わされる場合、tは、1~4であることが好ましく、1~2であればより好ましい。
一般式(1)におけるDの構造や、上記式(6)におけるr、上記式(7)におけるs、および、上記式(8)におけるtは、シリコーンコンタミ耐性等の本実施形態の潤滑剤に求められる性能に応じて適宜調整される。
【0070】
一般式(1)で表される化合物は、数平均分子量が1000~10000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量が2000~6000の範囲内であることがより好ましく、2000~4000の範囲内であることがさらに好ましい。
一般式(1)で表される化合物の数平均分子量が10000を超えると、粘度が高く扱い難くなることがある。一方、一般式(1)で表される化合物の数平均分子量が1000未満では、潤滑剤が基板から蒸散し易くなり、蒸散した潤滑剤が磁気ヘッドに付着し、ハードディスクドライブに負荷がかかることがある。
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
GPCの測定条件は、以下の通りである。
カラム:Shodex製 KF803、溶離液:フッ素系溶剤(商品名:アサヒクリンAK-225、旭硝子社製)/アセトン=4/1(v/v)、流速:1mL/min、検出器:ELSD。
【0071】
また、本実施形態の潤滑剤には、一般式(1)で表される化合物を含むことによる特性を損なわない範囲内であれば、潤滑剤として使用されている公知の他の化合物が含まれていてもよい。
そのような化合物としては、例えば、一般式(1)で表される化合物以外の含フッ素エーテル化合物、他の官能基を有する含フッ素エーテル化合物が挙げられる。これら上記の一般式(1)で表される化合物以外の含フッ素エーテル化合物を含有する潤滑剤を「他の潤滑剤」と呼ぶ。本実施形態の潤滑剤には、これらの他の潤滑剤を必要に応じて混合して用いることができる。他の潤滑剤の具体例としては、FOMBLIN(登録商標) ZDIAC、FOMBLIN ZDEAL、FOMBLIN AM-2001(以上Solvey Solexis社製)、Moresco A20H(Moresco社製)が挙げられる。他の潤滑剤としては、数平均分子量が1000~10000であるものを用いることが好ましい。
上記他の潤滑剤を併用する場合、本実施形態の潤滑剤中の一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物の含有量が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0072】
炭素または炭化ケイ素からなる保護層上に上記一般式(1)の化合物を含む本実施形態の潤滑層を形成した場合、この化合物を構成する2つの連結基Aに各々存在する少なくとも1つの極性基と、2つの水酸基とが、保護層に含まれる炭素原子と強く結合する。その結果として、潤滑層と保護層とを高い結合力で結合することができる。そのため、潤滑層の厚みを十分に薄くすることができる。
【0073】
すなわち、本実施形態の潤滑剤によれば、厚みを薄くしても、塗布によって形成された潤滑層がアイランド状または網目状とならずに、ほぼ均一の厚さで保護層の表面を高い被覆率で被覆した潤滑層を形成することができる。また、形成された潤滑層は、磁気記録媒体を構成する各層に、イオン性不純物などの汚染物質を生成させる環境物質が、隙間から侵入することを防止する機能を有している。よって、本実施形態の潤滑層によれば、その表面上に存在する汚染物質が少ない磁気記録媒体を提供することができる。
【0074】
[磁気記録媒体]
図1は、本発明の磁気記録媒体の一実施形態を示した概略断面図である。
本実施形態の磁気記録媒体10は、基板11上に、付着層12と、軟磁性層13と、第1下地層14と、第2下地層15と、磁性層16と、保護層17と、潤滑層18とが順次設けられた構造をなしている。
【0075】
「基板」
基板11としては、AlもしくはAl合金などの金属または合金材料からなる基体上に、NiPまたはNiP合金からなる膜が形成された非磁性基板等を用いることができる。
また、基板11としては、ガラス、セラミックス、シリコン、シリコンカーバイド、カーボン、樹脂などの非金属材料からなる非磁性基板を用いてもよいし、この非金属材料からなる基体上にNiPまたはNiP合金の膜を形成した非磁性基板を用いてもよい。
【0076】
「付着層」
付着層12は、基板11と、付着層12上に設けられる軟磁性層13とを接して配置した場合において、基板11の腐食の進行を防止するための層である。
付着層12の材料としては、例えば、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金等から適宜選択できる。
付着層12は、例えば、スパッタリング法により形成できる。
【0077】
「軟磁性層」
軟磁性層13は、第1軟磁性膜と、Ru膜からなる中間層と、第2軟磁性膜とが順に積層された構造を有していることが好ましい。すなわち、軟磁性層13は、2層の軟磁性膜の間にRu膜からなる中間層を挟み込むことによって、中間層の上下の軟磁性膜がアンチ・フェロ・カップリング(AFC)結合した構造を有していることが好ましい。軟磁性層13がAFC結合した構造を有していることにより、外部からの磁界に対しての耐性、並びに、垂直磁気記録特有の問題であるWATE(Wide Area Tack Erasure)現象に対しての耐性を高めることができる。
【0078】
第1軟磁性膜および第2軟磁性膜は、CoFe合金からなる膜であることが好ましい。
第1軟磁性膜および第2軟磁性膜がCoFe合金からなる膜である場合、高い飽和磁束密度Bs(1.4(T)以上)を実現できる。
また、第1軟磁性膜および第2軟磁性膜に使用されるCoFe合金には、Zr、Ta、Nbの何れかを添加することが好ましい。これにより、第1軟磁性膜および第2軟磁性膜の非晶質化が促進され、シード層の配向性を向上させることが可能になるとともに、磁気ヘッドの浮上量を低減することが可能となる。
軟磁性層13は、例えば、スパッタリング法により形成できる。
【0079】
「第1下地層」
第1下地層14は、その上に設けられた第2下地層15および磁性層16の配向や結晶サイズを制御するための層であり、磁気ヘッドから発生する磁束の基板面に対する垂直方向成分を大きくするとともに、磁性層16の磁化の方向をより強固に基板11と垂直な方向に固定するために設けられている。
第1下地層14は、NiW合金からなる層であることが好ましい。第1下地層14がNiW合金からなる層である場合、必要に応じてNiW合金にB、Mn、Ru、Pt、Mo、Taなどの他の元素を添加してもよい。
第1下地層14は、例えば、スパッタリング法により形成できる。
【0080】
「第2下地層」
第2下地層15は、磁性層16の配向が良好になるように制御する層である。第2下地層15は、RuまたはRu合金からなる層であることが好ましい。
第2下地層15は、1層からなる層であってもよいし、複数層から構成されていてもよい。第2下地層15が複数層からなる場合、全ての層が同じ材料から構成されていてもよいし、少なくとも一層が異なる材料から構成されていてもよい。
第2下地層15は、例えば、スパッタリング法により形成できる。
【0081】
「磁性層」
磁性層16は、磁化容易軸が基板面に対して垂直方向を向いた磁性膜からなることが好ましい。磁性層16は、CoとPtを含む層であり、さらにSNR特性を改善するために、酸化物や、Cr、B、Cu、Ta、Zr等を含む層であってもよい。
磁性層16に含有される酸化物としては、SiO、SiO、Cr、CoO、Ta、TiO等が挙げられる。
【0082】
磁性層16は、1層から構成されていてもよいし、組成の異なる材料からなる複数層から構成されていてもよい。
例えば、磁性層16が、第1磁性層と第2磁性層と第3磁性層の3層からなる場合、第1磁性層は、Co、Cr、Ptを含み、さらに酸化物を含んだ材料からなるグラニュラー構造であることが好ましい。第1磁性層に含有される酸化物としては、例えば、Cr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Co等の酸化物を用いることが好ましい。その中でも、特に、TiO、Cr、SiO等を好適に用いることができる。また、第1磁性層は、酸化物を2種類以上添加した複合酸化物からなることが好ましい。その中でも、特に、Cr-SiO、Cr-TiO、SiO-TiO等を好適に用いることができる。
【0083】
第1磁性層は、Co、Cr、Pt、酸化物の他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reの中から選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。
上記元素を含むことにより、磁性粒子の微細化を促進、または結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。
【0084】
第2磁性層には、第1磁性層と同様の材料を用いることができる。第2磁性層は、グラニュラー構造であることが好ましい。
また、第3磁性層は、Co、Cr、Ptを含み、酸化物を含まない材料からなる非グラニュラー構造であることが好ましい。第3磁性層は、Co、Cr、Ptの他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Re、Mnの中から選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。第3磁性層がCo、Cr、Ptの他に上記元素を含むことにより、磁性粒子の微細化を促進、または結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性および熱揺らぎ特性を得ることができる。
【0085】
また、磁性層16が複数層からなる場合、隣接する磁性層の間には、非磁性層を設けることが好ましい。磁性層16が、第1磁性層と第2磁性層と第3磁性層の3層からなる場合、第1磁性層と第2磁性層との間と、第2磁性層と第3磁性層との間に、非磁性層を設けることが好ましい。
磁性層間に非磁性層を適度な厚みで設けることで、個々の膜の磁化反転が容易になり、磁性粒子全体の磁化反転の分散を小さくすることができ、S/N比をより向上させることができる。
【0086】
磁性層16の間に設けられる非磁性層は、例えば、Ru、Ru合金、CoCr合金、CoCrX1合金(X1は、Pt、Ta、Zr、Re,Ru、Cu、Nb、Ni、Mn、Ge、Si、O、N、W、Mo、Ti、V、Zr、Bの中から選ばれる少なくとも1種または2種以上の元素を表す。)等を好適に用いることができる。
【0087】
また、磁性層16の間に設けられる非磁性層としては、酸化物、金属窒化物、または金属炭化物を含んだ合金材料を使用することが好ましい。具体的には、酸化物としては、例えば、SiO、Al、Ta、Cr、MgO、Y、TiO等を用いることができる。金属窒化物として、例えば、AlN、Si、TaN、CrN等を用いることができる。金属炭化物として、例えば、TaC、BC、SiC等を用いることができる。
非磁性層は、例えば、スパッタリング法により形成できる。
【0088】
また、磁性層16は、より高い記録密度を実現するために、磁化容易軸が基板面に対して垂直方向を向いた垂直磁気記録の磁性層であることが好ましいが、面内磁気記録であってもよい。
磁性層16は、蒸着法、イオンビームスパッタ法、マグネトロンスパッタ法等、従来の公知のいかなる方法によって形成してもよいが、通常、スパッタリング法により形成される。
【0089】
「保護層」
保護層17は、磁性層16を保護するための層である。保護層17は、一層から構成されていてもよいし、複数層から構成されていてもよい。保護層17は、炭素系保護層(炭素または炭化ケイ素からなる層)であり、炭素からなることが好ましい。
保護層17上に形成されている潤滑層18は、炭素との結合力が非常に高い層である。
保護層17が炭素または炭化ケイ素からなる場合、保護層17に含まれる炭素原子と潤滑層18とが結合して、保護層17と潤滑層18とが高い結合力で結合される。その結果、潤滑層18の厚みが薄くても高い被覆率で保護層17の表面が被覆された磁気記録媒体10となり、磁気記録媒体10の表面の汚染を効果的に防止できる。
【0090】
特に、保護層17が炭素からなる場合、保護層17に含まれる炭素原子と潤滑層18との結合に起因する潤滑層18と保護層17との結合力がより一層高くなる。このため、保護層17が炭素からなる場合、磁気記録媒体10の表面の汚染をより効果的に防止できるとともに、潤滑層18の厚みをより薄くしても十分に高い被覆率で保護層17の表面を被覆できる。
保護層17の成膜方法としては、カーボンターゲット材を用いるスパッタ法や、エチレンやトルエン等の炭化水素原料を用いるCVD(化学蒸着法)法,IBD(イオンビーム蒸着)法等を用いることができる。
【0091】
「潤滑層」
潤滑層18は、磁気記録媒体10の汚染を防止するとともに、磁気記録媒体10上を摺動する磁気記録再生装置の磁気ヘッドの摩擦力を低減させて、磁気記録媒体10の耐久性を向上させる層である。
潤滑層18は、図1に示すように、保護層17上に接して形成され、上述の実施形態の磁気記録媒体用潤滑剤からなる層である。
【0092】
潤滑層18の平均膜厚は、0.5nm(5Å)~3nm(30Å)であることが好ましく、0.5nm(5Å)~2nm(20Å)であることがより好ましい。
潤滑層18の平均膜厚を0.5nm以上とすることにより、潤滑層18がアイランド状または網目状とならず均一の膜厚で、保護層17の表面を高い被覆率で被覆できる。
また、潤滑層18の平均膜厚を3nm以下とすることにより、磁気ヘッドの浮上量を十分小さくして、磁気記録媒体10の記録密度を高くすることができる。
【0093】
保護層17の表面が潤滑層18によって十分に高い被覆率で被覆されていない場合、磁気記録媒体10の表面に吸着したイオン性不純物などの汚染物質を生成させる環境物質を含む水が、潤滑層18の隙間を通り抜けて、潤滑層18の下に侵入することがある。潤滑層18の下層に侵入した環境物質は、潤滑層18の下に隠されていた微少なイオン成分を凝集させて、イオン性の汚染物質を生成する。そして、磁気記録再生の際に、この汚染物質(凝集成分)が磁気ヘッドに付着(転写)して、磁気ヘッドを破損したり、磁気記録再生装置の磁気記録再生特性を低下させたりする。
このような潤滑層18の隙間からの環境物質の侵入に起因する問題は、磁気記録媒体10を高温条件下に保持した場合、より顕著に現れる。
【0094】
汚染物質を生成させる環境物質は、例えば、イオン性不純物である。イオン性不純物に含まれる金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等を挙げることができる。イオン性不純物に含まれる無機イオンとしては、例えば、塩素イオン、臭素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、アンモニウムイオン、シュウ酸イオン、蟻酸イオン等を挙げることができる。
【0095】
「潤滑層の形成方法」
潤滑層18は、例えば、基板11上に保護層17までの各層が形成された製造途中の磁気記録媒体を用意し、製造途中の磁気記録媒体の保護層17上に、潤滑層形成用溶液を塗布することにより形成する。
潤滑層形成用溶液は、上述の実施形態の磁気記録媒体用潤滑剤を溶媒で希釈して、塗布方法に適した粘度および濃度とすることにより得られる。
【0096】
潤滑層形成用溶液に用いられる溶媒としては、例えば、バートレル(登録商標)XF(商品名、三井デュポンフロロケミカル社製)等のフッ素系溶媒等が挙げられる。
【0097】
潤滑層形成用溶液の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法やディップ法等が挙げられる。
ディップ法を用いる場合、例えば、次の処理を行う。ディップコート装置の浸漬槽に入れられた潤滑層形成用溶液中に、保護層17までの各層が形成された基板11を浸漬し、その後、浸漬槽から基板11を所定の速度で引き上げる。これにより、潤滑層形成用溶液を基板11の保護層17上の表面に塗布することができる。ディップ法を用いることで、潤滑層形成用溶液を基板11の保護層17上の表面に均一に塗布することができ、保護層17上に均一な膜厚の潤滑層18を形成できる。
【0098】
本実施形態の磁気記録媒体10では、少なくとも磁性層16と、保護層17と、潤滑層18とが順次設けられ、保護層17が、炭素または炭化ケイ素からなり、潤滑層18が保護層17上に接して形成され、潤滑層18が上述の実施形態の磁気記録媒体用の潤滑剤からなる。この潤滑剤には、上記一般式(1)で表される含フッ素エーテル化合物の2つの連結基Aの各々に存在する少なくとも1つの極性基と、2つの末端Dの各々に存在する少なくとも1つの水酸基とが、含まれている。2つの連結基Aの各々に存在する少なくとも1つの極性基と、2つの末端Dの各々に存在する少なくとも1つの水酸基とが、保護層17に含まれる炭素原子と強く結合することにより、潤滑層18と保護層17とが高い結合力で結合されるため、潤滑層18の厚みを十分に薄くすることが可能となる。
【0099】
すなわち、本実施形態の磁気記録媒体10は、潤滑剤塗布厚みを薄くしてもアイランド状または網目状とならずに、ほぼ均一の膜厚で保護層17の表面を高い被覆率で被覆できる潤滑層18を備え、イオン性不純物などの汚染物質を生成させる環境物質が潤滑層18の隙間から侵入することが防止される。よって、本実施形態の磁気記録媒体10は、その表面上に存在する汚染物質が少なくなる。
【実施例
【0100】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0101】
参考例1
(化合物の合成)
100mLのナスフラスコに、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン-1,6-ジオール1gと、アセトン19mLと、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH/水=0.8g/19g)19.8gとを投入し、70℃に加熱し、還流しながら、1時間撹拌した。
次いで、上記の混合物にエピクロロヒドリン15mLを加え、さらに、70℃に加熱し、還流しながら、5時間撹拌した。
その後、上記の混合物を25℃まで冷却して、塩酸で中和した後、フッ素系溶剤(商品名:アサヒクリン(登録商標)AK-225、旭硝子社製)を加えて、上記の混合物を水洗した。
次いで、ナスフラスコ内の有機相を回収し、その有機相に硫酸マグネシウムを加えて脱水し、フィルター濾過を行った。
次いで、エバポレーターを用いて、濾液から溶媒を留去し、さらに、カラム精製を行い、下記式(18)で表される化合物からなる無色透明な液状の化合物1(1.2g)を得た。
得られた化合物1のH-NMR測定および19F-NMR測定を行い、以下の結果より構造を同定した。
H-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=2.60(2H),2.77(2H),3.10~3.15(2H),3.54(2H),3.92~4.20(6H)
19F-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D6=4/1(v/v)):δ(ppm)=-125.43(4F),-122.15(4F)
【0102】
【化31】
【0103】
窒素雰囲気下、100mLのナスフラスコに、化合物1(1g)と、HO-CHCF(OCFCF)m(OCF)nOCFCHOHで表わされるフルオロポリエーテル(m=1~7、n=1~7、数平均分子量800、分子量分布1.1)22gとを投入し、これらを均一になるまで撹拌した。
次いで、上記の混合物にカリウムtert-ブトキシド1.8gを加え、70℃に加熱しながら、8時間撹拌した。
その後、上記の混合物を25℃まで冷却して、塩酸で中和した後、フッ素系溶剤(商品名:アサヒクリン(登録商標)AK-225、旭硝子社製)を加えて、上記の混合物を水洗した。
次いで、ナスフラスコ内の有機相を回収し、その有機相に硫酸ナトリウムを加えて脱水し、フィルター濾過を行った。
次いで、エバポレーターを用いて、濾液から溶媒を留去した後、60℃、18MPaの条件下で超臨界抽出を行い、下記式(17)で表される化合物からなる無色透明な液状の化合物2a(4.5g)を得た。なお、下記式(17)におけるRfは、下記式(11)で表わされる。
得られた化合物2aのH-NMR測定および19F-NMR測定を行い、以下の結果より構造を同定した。
H-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D6=4/1(v/v)):δ(ppm)=3.72~3.88(8H),3.88~4.04(6H),4.05~4.22(8H)
19F-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=-124.09(4F),-120.70(4F),-91.00~-88.49(27F),-83.19(2F),-81.13(2F),-80.61(2F),-78.58(2F),-55.65~-51.37(12F)
【0104】
【化32】
【0105】
【化33】
【0106】
(シリコーンコンタミ耐性評価)
化合物2aをバートレル(登録商標)XF(商品名、三井デュポンフロロケミカル社製)に溶解させ、塗布時の膜厚が10Å~15Åになるように、化合物2aの希釈液を調製し、ディップ法により、図1に示す構成の直径65mmの磁気記録媒体の保護層上に塗布した。
このとき、浸漬速度10mm/sec、浸漬時間30sec、引き上げ速度1.2mm/secの条件で、ディップ法により、保護層上に希釈液を塗布し、化合物2aからなる潤滑層を形成した。
潤滑層の膜厚を、FT-IR(商品名:Nicolet iS50、Thermo Fisher Scientific社製)を用いて測定した。
次に、LUL(Load/Unload)方式のハードディスクドライブを準備し、潤滑層を形成した磁気記録媒体を搭載した。ヘッドには、垂直磁気記録用ヘッドを用いた。
このハードディスクドライブ内に、市販のシリコーンゴムゲルチップ(1cm×1cm×0.5cm)を入れ、次の環境下で連続LUL動作を繰り返した。
Dry(相対湿度10%以下)環境25℃→60℃→25℃の5時間サイクル運転(立ち上げ、立ち下げ各1時間)を、以下の不具合が発生するまで続けた(図2参照)。
ハードディスクドライブのスピンドルモーターの駆動電流が、閾値を超えた時点を耐久時間とした。化合物2aからなる潤滑層が隙間なく均一であると、シリコーンゴムゲルチップから気化した環状シロキサンの磁気記録媒体への付着が防止され、ハードディスクドライブのスピンドルモーターに負荷がかからず、その結果、耐久時間が長くなる。一方、化合物2aからなる潤滑層に隙間があると、気化した環状シロキサンが磁気記録媒体に付着し、ハードディスクドライブのスピンドルモーターに負荷がかかり、耐久時間が短くなる。
耐久時間が150時間以上の場合を「○」、耐久時間が100時間以上、150時間未満の場合を「△」、耐久時間が100時間未満の場合を「×」と評価した。
結果を表1に示す。
【0107】
(オクタコサン付着試験)
上述のシリコーンコンタミ耐性評価と同様にして、化合物2aからなる潤滑層を形成した磁気記録媒体を作製した。
それとは別に、直径4.5mm、高さ0.5mmの凹部を形成した治具を準備し、その穴にオクタコサン(C2858)50ppm溶液(溶媒ヘキサン)を10μL滴下し、ヘキサンを完全に蒸発させた。
次に、オクタコサンが入っている治具に、潤滑層を形成した磁気記録媒体を被せた。
次いで、磁気記録媒体を治具とともにガラスシャーレに入れ、さらに、アルミホイルでくるんだ状態で、80℃にて、24時間加熱した後、室温で24時間静置した。
その後、治具と向かい合った側の磁気記録媒体の表面全面を、OSA(Optical Surface Analyzer:Candela 6300、KLA Tencor社製)で観察した。
OSAによる観察において、分割した微小エリアの散乱光強度がある一定強度を超えた場合を1カウントとし、その散乱光の数を計測した。化合物2aからなる潤滑層が隙間なく均一である(塗膜の被覆率が高い)場合には、気化したオクタコサンの磁気記録媒体への付着が妨げられるため、カウント数は少なくなる。一方、化合物2aからなる潤滑層に隙間があると、気化したオクタコサンが磁気記録媒体の表面に付着して結晶となり、光を強く散乱するため、散乱光のカウント数は多くなる。
散乱光の数が100個未満の場合を「○」、散乱光の数が100個以上、500個未満の場合を「△」、散乱光の数が500個以上の場合を「×」と評価した。
結果を表1に示す。
【0108】
<実施例2>
窒素雰囲気下、20mLのナスフラスコに、上記の化合物2a(4g)と、t-ブタノール40mLとを投入し、これらを均一になるまで撹拌した。
次いで、上記の混合物にカリウムtert-ブトキシド0.5gを加え、70℃に加熱しながら、グリシドールを250μL加え、8時間撹拌した。
その後、上記の混合物を25℃まで冷却して、塩酸で中和した後、フッ素系溶剤(商品名:アサヒクリンAK-225、旭硝子社製)を加えて、上記の混合物を水洗した。
次いで、ナスフラスコ内の有機相を回収し、その有機相に硫酸ナトリウムを加えて脱水し、フィルター濾過を行った。
次いで、エバポレーターを用いて、濾液から溶媒を留去した後、60℃、18MPaの条件下で超臨界抽出を行い、下記式(10)で表される化合物からなる無色透明な液状の化合物3a(2g)を得た。なお、下記式(10)におけるRfは、上記式(11)で表わされる。
得られた化合物3aのH-NMR測定および19F-NMR測定を行い、以下の結果より構造を同定した。
H-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=3.70~4.04(20H),4.05~4.22(12H)
19F-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D6=4/1(v/v)):δ(ppm)=-124.09(4F),-120.70(4F),-91.00~-88.49(27F),-80.61(4F),-78.58(4F),-55.65~-51.37(12F)
また、化合物3aを用いて、参考例1と同様にして、磁気記録媒体上に、化合物3aからなる潤滑層を形成し、参考例1と同様にして、化合物3aについて、シリコーンコンタミ耐性評価と、オクタコサン付着試験とを行った。結果を表1に示す。
【0109】
【化34】
【0110】
<実施例3>
窒素雰囲気下、300mLのナスフラスコに、上記の化合物2a(4.5g)と、t-ブタノール59mLとを投入し、これらを均一になるまで撹拌した。
次いで、上記の混合物にエピブロモヒドリン4.3gと、カリウムtert-ブトキシド0.7gとを順次加え、70℃に加熱しながら、9時間撹拌した。
その後、上記の混合物を25℃まで冷却して、フッ素系溶剤(商品名:アサヒクリン(登録商標)AK-225、旭硝子社製)を加えて、上記の混合物を水洗した。
次いで、ナスフラスコ内の有機相を回収し、その有機相に硫酸ナトリウムを加えて脱水し、フィルター濾過を行った。
次いで、エバポレーターを用いて、濾液から溶媒を留去し、さらに、カラム精製を行い、下記式(19)で表される化合物からなる淡黄色液状の化合物4a(4.5g)を得た。なお、下記式(19)におけるRfは、上記式(11)で表わされる。
得られた化合物4aのH-NMR測定および19F-NMR測定を行い、以下の結果より構造を同定した。
H-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=2.58~2.64(2H),2.75~2.81(2H),3.08~3.17(2H),3.58(2H),3.70~4.25(24H)
19F-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=-124.10(4F),-120.72(4F),-91.00~-88.49(27F),-80.70(2F),-80.58(2F),-78.69(2F),-78.58(2F),-55.65~-51.37(12F)
【0111】
【化35】
【0112】
窒素雰囲気下、300mLのナスフラスコに、上記の化合物4a(4.3g)と、t-ブタノール74mLとを投入し、これらを均一になるまで撹拌した。
次いで、上記の混合物に2,2,3,3-フルオロブタン-1,4-ジオール4.4gと、カリウムtert-ブトキシド0.8gとを順次加え、70℃に加熱しながら、9時間撹拌した。
その後、上記の混合物を25℃まで冷却して、塩酸で中和した後、フッ素系溶剤(商品名:アサヒクリンAK-225、旭硝子社製)を加えて、上記の混合物を水洗した。
次いで、ナスフラスコ内の有機相を回収し、その有機相に硫酸ナトリウムを加えて脱水し、フィルター濾過を行った。
次いで、エバポレーターを用いて、濾液から溶媒を留去した後、60℃、18MPaの条件下で超臨界抽出を行い、下記式(12)で表される化合物からなる無色透明な液状の化合物5a(3.5g)を得た。なお、下記式(12)におけるRfは、上記式(11)で表わされる。
得られた化合物5aのH-NMRおよび19F-NMR測定を行い、以下の結果より構造を同定した。
H-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=3.67~4.05(24H),4.05~4.22(16H)
19F-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=-125.27(4F),-124.09(4F),-123.31(4F),-120.70(4F),-91.00~-88.49(27F),-80.55(4F),-78.55(4F),-55.65~-51.37(12F)
また、化合物5aを用いて、参考例1と同様にして、磁気記録媒体上に、化合物5aからなる潤滑層を形成し、参考例1と同様にして、化合物5aについて、シリコーンコンタミ耐性評価と、オクタコサン付着試験とを行った。結果を表1に示す。
【0113】
【化36】
【0114】
参考例4
窒素雰囲気下、100mLのナスフラスコに、化合物1(1g)と、HO-CHCF(OCFCF)mOCFCHOHで表わされるフルオロポリエーテル(m=1~9、数平均分子量800、分子量分布1.02)22gとを投入し、これらを均一になるまで撹拌した。
次いで、上記の混合物にカリウムtert-ブトキシド1.8gを加え、70℃に加熱しながら、8時間撹拌した。
その後、上記の混合物を25℃まで冷却して、塩酸で中和した後、フッ素系溶剤(商品名:アサヒクリン(登録商標)AK-225、旭硝子社製)を加えて、上記の混合物を水洗した。
次いで、ナスフラスコ内の有機相を回収し、その有機相に硫酸ナトリウムを加えて脱水し、フィルター濾過を行った。
次いで、エバポレーターを用いて、濾液から溶媒を留去した後、60℃、18MPaの条件下で超臨界抽出を行い、下記式(13)で表される化合物からなる無色透明な液状の化合物2b(4.4g)を得た。なお、下記式(13)におけるRfは、下記式(14)で表わされる。
得られた化合物2bのH-NMRおよび19F-NMR測定を行い、以下の結果より構造を同定した。
H-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=3.71~3.89(8H),3.88~4.04(6H),4.05~4.22(8H)
19F-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=-124.09(4F),-120.70(4F),-91.00~-88.49(40F),-81.13(4F),-78.58(4F)
また、化合物2bを用いて、参考例1と同様にして、磁気記録媒体上に、化合物2bからなる潤滑層を形成し、参考例1と同様にして、化合物2bについて、シリコーンコンタミ耐性評価と、オクタコサン付着試験とを行った。結果を表1に示す。
【0115】
【化37】
【0116】
【化38】
【0117】
<実施例5>
窒素雰囲気下、20mLのナスフラスコに、上記の化合物2b(4g)と、t-ブタノール40mLとを投入し、これらを均一になるまで撹拌した。
次いで、上記の混合物にカリウムtert-ブトキシド0.5gを加え、70℃に加熱しながら、グリシドール250μLを加えて、8時間撹拌した。
その後、上記の混合物を25℃まで冷却して、塩酸で中和した後、フッ素系溶剤(商品名:アサヒクリン(登録商標)AK-225、旭硝子社製)を加えて、上記の混合物を水洗した。
次いで、ナスフラスコ内の有機相を回収し、その有機相に硫酸ナトリウムを加えて脱水し、フィルター濾過を行った。
次いで、エバポレーターを用いて、濾液から溶媒を留去した後、60℃、18MPaの条件下で超臨界抽出を行い、下記式(15)で表される化合物からなる無色透明な液状の化合物3b(2.2g)を得た。なお、下記式(15)におけるRfは、上記式(14)で表わされる。
得られた化合物3bのH-NMRおよび19F-NMR測定を行い、以下の結果より構造を同定した。
H-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=3.71~3.89(8H),3.88~4.04(6H),4.04~4.24(8H)
19F-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=-124.09(4F),-120.70(4F),-91.00~-88.49(40F),-78.58(8F)
また、化合物3bを用いて、参考例1と同様にして、磁気記録媒体上に、化合物3bからなる潤滑層を形成し、参考例1と同様にして、化合物3bについて、シリコーンコンタミ耐性評価と、オクタコサン付着試験とを行った。結果を表1に示す。
【0118】
【化39】
【0119】
<実施例6>
窒素雰囲気下、300mLのナスフラスコに、上記の化合物2b(4.2g)と、t-ブタノール58mLとを投入し、これらを均一になるまで撹拌した。
次いで、上記の混合物にエピブロモヒドリン4.1gと、カリウムtert-ブトキシド0.7gとを順次加え、70℃に加熱しながら、9時間撹拌した。
その後、上記の混合物を25℃まで冷却した後、フッ素系溶剤(商品名:アサヒクリン(登録商標)AK-225、旭硝子社製)を加えて、上記の混合物を水洗した。
次いで、ナスフラスコ内の有機相を回収し、その有機相に硫酸ナトリウムを加えて脱水し、フィルター濾過を行った。
次いで、エバポレーターを用いて、濾液から溶媒を留去し、下記式(20)で表される化合物からなる無色透明な液状の化合物4b(4.1g)を得た。なお、下記式(20)におけるRfは、上記式(14)で表わされる。
得られた化合物4bのH-NMR測定および19F-NMR測定を行い、以下の結果より構造を同定した。
H-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=2.58~2.64(2H),2.75~2.81(2H),3.08~3.17(2H),3.58(2H),3.70~4.25(24H)
19F-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=-124.09(4F),-120.70(4F),-91.00~-88.49(40F),-78.71(4F),-78.58(4F)
【0120】
【化40】
【0121】
窒素雰囲気下、300mLのナスフラスコに、上記の化合物4b(4.0g)と、t-ブタノール70mLとを投入し、これらを均一になるまで撹拌した。
次いで、上記の混合物に2,2,3,3-フルオロブタン-1,4-ジオール4.2gと、カリウムtert-ブトキシド0.7gとを順次加え、70℃に加熱しながら、9時間撹拌した。
その後、上記の混合物を25℃まで冷却して、塩酸で中和した後、フッ素系溶剤(商品名:アサヒクリン(登録商標)AK-225、旭硝子社製)を加えて、上記の混合物を水洗した。
次いで、ナスフラスコ内の有機相を回収し、その有機相に硫酸ナトリウムを加えて脱水し、フィルター濾過を行った。
次いで、エバポレーターを用いて、濾液から溶媒を留去した後、60℃、18MPaの条件下で超臨界抽出を行い、下記式(16)で表される化合物からなる無色透明な液状の化合物5b(3.4g)を得た。なお、下記式(16)におけるRfは、上記式(14)で表わされる。
得られた化合物5bのH-NMR測定および19F-NMR測定を行い、以下の結果より構造を同定した。
H-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=3.67~4.05(24H),4.05~4.22(16H)
19F-NMR(400MHz,ヘキサフルオロベンゼン/acetone-D=4/1(v/v)):δ(ppm)=-125.27(4F),-124.09(4F),-123.31(4F),-120.70(4F),-91.00~-88.49(40F),-78.68(4F),-78.55(4F)
また、化合物5bを用いて、参考例1と同様にして、磁気記録媒体上に、化合物5bからなる潤滑層を形成し、参考例1と同様にして、化合物5bについて、シリコーンコンタミ耐性評価と、オクタコサン付着試験とを行った。結果を表1に示す。
【0122】
【化41】
【0123】
(比較例)
Solvey Solexis社製のFomblin Z-tetraol(分子量約2000、下記式(21)に示す。)を用いて、参考例1と同様にして、磁気記録媒体上に、この化合物からなる潤滑層を形成し、参考例1と同様にして、この化合物について、シリコーンコンタミ耐性評価と、オクタコサン付着試験とを行った。結果を表1に示す。
【0124】
【化42】
【0125】
【表1】
【0126】
表1の結果から、参考例1、実施例2、3、参考例4、実施例5、6の化合物を用いて磁気媒体上に潤滑層を形成した場合、比較例の化合物を用いて磁気媒体上に潤滑層を形成した場合よりも、高い被覆率で磁気記録媒体の表面を被覆でき、シリコーンコンタミ耐性に優れることが分った。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の磁気記録媒体用潤滑剤を用いることにより、厚みを薄くしても、高い被覆率で磁気記録媒体の保護層の表面を被覆できる潤滑層を形成することができる。
【符号の説明】
【0128】
10・・・磁気記録媒体、11・・・基板、12・・・付着層、13・・・軟磁性層、14・・・第1下地層、15・・・第2下地層、16・・・磁性層、17・・・保護層、18・・・潤滑層。
図1
図2