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特許7065907M様タンパク質をコードするmRNAを含む癌ワクチン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】M様タンパク質をコードするmRNAを含む癌ワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/09 20060101AFI20220502BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220502BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220502BHJP
   A61K 35/13 20150101ALN20220502BHJP
   C12N 5/09 20100101ALN20220502BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20220502BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20220502BHJP
【FI】
A61K39/09
A61K48/00 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61P43/00 105
A61K35/13
C12N5/09
C12N5/10
C12N15/31
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020101492
(22)【出願日】2020-06-11
(62)【分割の表示】P 2018512827の分割
【原出願日】2016-05-19
(65)【公開番号】P2020169185
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】62/163,446
(32)【優先日】2015-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517404108
【氏名又は名称】モルフォジェネシス、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】ローマン、マイケル ジェイ.ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ローマン、パトリシア、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジェントリン、メガーン
(72)【発明者】
【氏名】ラミヤ、ヴィジェイ
(72)【発明者】
【氏名】バスタウルス、マリナ ヴィクター アブデルマセー
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/050158(WO,A1)
【文献】特表2008-513009(JP,A)
【文献】特許第6717932(JP,B2)
【文献】国際公開第2009/117011(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0141981(US,A1)
【文献】Molecular Immunology,1995年,Vol.32,p.669-678
【文献】Cancer Therapy,2008年,Vol.6,p.827-840
【文献】Methods in Molecular Biology,2014年,Vol.1139,p.243-257
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61K 35/00-35/768
A61K 39/00-39/44
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌細胞を含む癌治療用ワクチンであって、
前記癌細胞が、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現するリボ核酸配列を有するリボ核酸によってインビトロで形質転換されたものである
癌治療用ワクチン。
【請求項2】
請求項1に記載の癌治療用ワクチンであって、
前記リボ核酸は、SEQ ID NO:3で表される配列中の5'-メチルグアノジンキャップ及び3'-ポリAテールを含む
癌治療用ワクチン。
【請求項3】
請求項1に記載の癌治療用ワクチンであって、
前記癌細胞は、自家又は同種の癌細胞の腫瘍流入リンパ節への針または無針注射によって投与される
癌治療用ワクチン。
【請求項4】
請求項1に記載の癌治療用ワクチンであって、
一次またはアジュバント治療としての抗癌治療を増強または強化するために用いられることを特徴とする
癌治療用ワクチン。
【請求項5】
請求項1に記載の癌治療用ワクチンであって、
前記形質転換された癌細胞は、リンパ腫、白血病、黒色腫、軟部組織肉腫、癌腫又はこれらの混在したものである
癌治療用ワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願を相互参照
本出願は、2015年5月19日出願の米国仮出願第62/163,446号の優先権を主張するものであり、図面、表、アミノ酸および核酸配列を含む全内容を参照することにより組み込まれる。
【0002】
本出願の配列リストは「Seq-List.txt」と名付けられ、2016年5月19日に作成された9KBのものである。配列リストの全内容を参照することにより組み込まれる。
【0003】
本発明は、概して、ワクチン、特に、癌細胞へのトランスフェクション、あるいは合成細菌メッセンジャーリボ核酸(mRNA)による直接腫瘍内投与により調製された癌ワクチンに関する。
【背景技術】
【0004】
本発明は、癌治療用に有効なmRNAワクチンの開発および使用に係る。デオキシリボ核酸(DNA)ワクチンには、低トランスフェクション効率や時間のかかる分配方法をはじめとするいくつかの欠点があるが、本発明のmRNAワクチンは、腫瘍細胞に直接投与され、免疫原性タンパク質へ即時に翻訳され、多発性腫瘍-抗原応答を引き起こす。mRNAワクチンは、対応のDNAに基づくワクチンよりも有効で、細胞中のDNAよりも早い発現を促し、DNAとは異なり、宿主細胞染色体に組み込まれない。
【0005】
癌の治療は、診断される特定の型に基づくものである。一般的な癌として、膀胱癌、乳癌、結腸癌、リンパ腫、黒色腫および前立腺癌が挙げられる。治療計画は、これらに限られるものではないが、病期、病因、患者の年齢や全身の健康状態をはじめとする多数の因子の評価に基づいて、医師が作成する。多くの癌について、治療計画には、手術、化学療法、放射線、骨髄幹細胞移植、抗癌剤または免疫療法あるいはこれらの組み合わせが含まれる。最も一般的な治療には、手術、化学療法、放射線および経口投与が含まれる。これらの治療は有効であるが、多くの副作用を引き起こす場合が多い。特に、化学療法は、癌細胞だけでなく、体の全ての新たな分裂細胞をターゲットにする。
【0006】
免疫療法には、罹患細胞を標的にし、罹患していない細胞は無傷のままとするという利点がある。癌細胞は、適正成長制御機構の機能停止から生じる。従って、体はこれら細胞の多くをまだ自己とみなす。癌免疫療法は、これら罹患自己細胞の体の耐性に打ち勝ち、体にそれらを異物と認識させる。癌はまた、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子等細胞での免疫活性マーカーの発現を減じることにより、体の免疫システムの直接抑制により、免疫検出も免れる。MHCは、細胞が自己か、異物または罹患しているかを、体が見分けるのを助ける成分である。
【0007】
固形癌の治療には、一般的に、化学療法および/または手術が含まれる。最近、自己免疫防御を刺激するワクチンの開発に関心が集まっている。特許文献1には、リンパ腫の診断対象から単離された形質転換自家または非自家細胞により、ステージの進んだリンパ腫を治療するためのリンパ腫ワクチンについて詳述されている。この単離細胞は、Streptococcus pyogenes Emm55遺伝子を含むプラスミドベクターによりトランスフェクトされる。細菌タンパク質は、細胞表面で発現し、トランスフェクトされた細胞は、癌対象に導入されて、リンパ腫細胞に対し免疫応答する。
【0008】
これまで、FDA(米国食品医薬品局)は、前立腺癌の治療には、細胞癌免疫療法ワクチン、プロベンジしか認可してこなかったが、いくつかのワクチンが、臨床検査で現在試験されている。BiovaxIdは、遅発性濾胞性非ホジキンリンパ腫の治療における、フェーズIII臨床試験を行っている自家腫瘍由来免疫グロブリンインディオタイプワクチンである。
【0009】
主に、外因性DNAまたはRNAは、哺乳類の体でタンパク質を発現できる。同様の免疫活性が、DNAとmRNAの両方でなされるかどうかにかかわらず、発現されたタンパク質は、不安定である。これまでの認識によれば、DNAは、その安定性と使いやすさから、ワクチンの製造および遺伝子治療に優れたものである。プラスミドDNAワクチンの一例としては、Merial's Onceptが挙げられ、これは、口腔内黒色腫の治療のために開発された。
【0010】
mRNAワクチンへの取り組みが報告されてきた。あるケースでは、有効mRNAワクチンは、リポソームを用いてデリバーされた。この特定のワクチンは、インフルエンザウィルスタンパク質をコードするmRNAのマウスへの投与後、インビボで細胞傷害性Tリンパ球を誘発した。CureVac GMHによる研究によれば、mRNAワクチンは、経皮デリバリーの際、体液および細胞免疫応答を引き起こすことが示された。このワクチンは、裸形態で投与され、mRNAの安定性を高めるタンパク質であるプロタミンと錯形成され、タンパク質発現を改善した。このワクチンは、現在、去勢抵抗性前立腺癌の臨床検査中である。
【0011】
液性および固形腫瘍にmRNAを用いた臨床検査が行われている。癌としては、急性骨髄リンパ腫、転移性黒色腫、前立腺癌、腎臓細胞癌/上皮癌、神経芽細胞腫、脳、肺、結腸、腎細胞癌が挙げられる。現在実施されている臨床検査の大半には、mRNAの、癌細胞でなく、自家樹状細胞へのトランスフェクションが含まれる。さらに、mRNAの腫瘍内投与を用いた臨床試験は試みられていない。図3は、mRNAワクチンを用いた、公表された臨床検査の表である。
【0012】
リポソームやカチオンポリマーといったデリバリービヒクルは、トランスフェクションを改善する見込みがあるように思われる。リポソームまたはポリマー錯体が細胞質に入ると、mRNAは、デリバリービヒクルから分離して、抗原翻訳を可能とするものでなければならない。残念ながら、これらビヒクルは、mRNAと適切に錯形成しないため、コードされたタンパク質の適切な翻訳がなされない。抗原生成はなされるものの、所望の効果を得るには不十分な量である。
【0013】
多くの免疫療法は、疾病特異的で、あり、その概念は複雑で、製造に関してはさらに複雑かつ高価なものである。かかる治療が商業的に実行可能であるかも分からない。免疫原性タンパク質へすぐに翻訳され、多発性腫瘍-抗原応答を引き起こす患者の腫瘍へのmRNAの直接投与は、将来にわたって影響を及ぼす。例えば、単一合成mRNAは、多種類の多様なタイプの癌の治療に用いることができる。mRNAは、デリバーが簡単で、コスト効率が高く、運搬保管が容易で、投与しやすい。優れた安全性プロフィールと共に、mRNAの属性によって、開発途上国も含めた世界中で癌患者を治療することができる。
【0014】
癌細胞を殺すための免疫システムの誘導は、全ての癌の免疫療法に基づくものである。任意の種類の免疫療法を成功させるには、腫瘍関連抗原の免疫応答を誘発して、増幅可能としなければならない。免疫応答には、抗原提示細胞、好中球、ナチュラルキラー細胞、Tヘルパー細胞、T細胞損傷性細胞およびB細胞等を含む数多くの免疫細胞が含まれる。しかしながら、単一の腫瘍抗原に対する免疫応答の誘発および活性化は、人体癌ワクチン検査において、恐らく、免疫逃避変異体のために、有益な臨床有効性へ翻訳するのに適切であることが証明されておらず、外因性アジュバントと混合される全腫瘍細胞または腫瘍細胞溶解物を、多数の関連腫瘍抗原の供給源として用いてもいない。このような理由で、腫瘍抗原が患者の腫瘍細胞で発現されるので、腫瘍抗原に関連して、誘発できることが原則である。これを行う唯一の方法は、コードする核酸を、腫瘍細胞に与えて、細胞機構が、抗原の全てが免疫系の細胞に露出されるようなやり方で、腫瘍抗原と共に誘発抗原を発現し得るようにするものである。かかる露出によって、抗原内エピトープ拡大となり、誘発抗原がなくても、適応免疫応答が、これら抗原を含む全腫瘍細胞について学び、活性化する。
【0015】
核酸をワクチンとして用いると、多数の他の利点もある。核酸ワクチンは、人体および細胞免疫応答の両方を誘発し、低有効薬量で、扱いやすく、即時試験に役立ち、大規模製造および単離においてコスト効率が高く、再生可能で、高頻度で製造して容易に単離でき、従来のワクチンより温度安定性があり、長貯蔵寿命で、保管運搬が容易で、コールドチェーンを必要としない(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第7,795,020号明細書
【非特許文献】
【0017】
【文献】Shedlock&Weiner,J Leukocyte Biol.Vol68,2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
DNAは、ワクチンとして成功してきた。DNAは、有機体のブループリント、すなわち、遺伝的命令として機能する二本鎖分子である。DNAは、極めて安定で未反応性のため、ワクチンとして用いるのに適しており、長期保存できる。しかしながら、DNAは、自己複製するため、紫外線により容易に損傷してしまう。
【0019】
一方、RNAは、一本鎖で、DNAの命令を実行する機能を果たす。すなわち、RNAは遺伝子コードを移して、タンパク質を形成する。RNAは、DNAより反応性があり、安定性は低いが、紫外線に対して抵抗力がある。結局、RNAの品質がワクチンとして用いるのに好適なものとさせている。一般に、mRNAは、宿主染色体と一体化する恐れはない。mRNAのデリバリーの結果、該当抗原のより早い発現となり、発現のために必要な複製は少なくて済む。mRNA発現は、一過性であるので欠点のようであるが、実際には、安全につながる。mRNAは、分裂終了および非分裂細胞におけるタンパク質製造についてはDNAより有効である。というのは、DNAは、核膜およびプラスミド膜を通した転座を必要とするが、mRNAは、プラスミド膜を通した転座を必要とするだけであるからである。mRNAは、翻訳の鋳型が必要なだけでなく、Toll様受容体のリガンドとしても作用し、ヌクレアーゼ感受性もあるため、水平伝播に関する懸念が少ない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、免疫原性細菌タンパク質をコードするリボ核酸メッセージ(mRNA)(SEQ ID NO:1)の使用に基づく。メッセージは、数多くの技術のいずれかを用いて、細胞質へデリバリーされる。mRNAが細胞質に届くと、既に実施されている細胞機構を用いて、コード化タンパク質へトランスレートされる。SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有するM様タンパク質のような細菌タンパク質は、細胞中で発現して、癌細胞に免疫原性を与える。例えば、M様タンパク質は、細菌源である、A群およびG群連鎖球菌(GASおよびGGS)由来であるため、哺乳類の体にとっては異物とみなされる。抗原提示細胞(APC)のような免疫監視細胞は、異種タンパク質に引きつけられれる。APCは、全癌細胞を食菌し、M様タンパク質を含む異種/ミュータントタンパク質を他の免疫細胞に与える。
【0021】
細胞中での細菌タンパク質の製造は、対応の遺伝コードの挿入によりなされる。M様タンパク質の遺伝子は、emmLと呼ばれる。emmLメッセージが、細胞のDNAにおける突然変異により製造された異常タンパク質を含む癌細胞へデリバリーされると、M様タンパク質は細胞中で発現し、免疫細胞を引き付けて取り込み、マスキングしておいた突然変異タンパク質を免疫系に与える。異常タンパク質は、長い時間、存在することになるが、「自己」タンパク質由来であるため、体は必ずしも異物または脅威とみなさない。細菌タンパク質抗原は、免疫系のプライマーまたはトリガーとして作用して、前は、損傷して有害と認識できなかった細胞に対応する。
【0022】
mRNAは、実施例に記載したとおりにして製造される。製造されると、免疫原性メッセージを含むmRNAは、上述したプライミング効果を必要とする自家または同種細胞へデリバリーされる。mRNAはまた、腫瘍内に、またはリンパ腫等の癌の場合には、リンパ節内にも直接デリバリーされる。
【0023】
emmL遺伝子によりコードされたM様タンパク質は、DNAを通して細胞へデリバリーされてきたが、細胞中で発現して、免疫学的効果が得られることが示された。染色体への遺伝子挿入の可能性をはじめとするDNAデリバリーに係る懸念から、RNAを介したメッセージのデリバリーは、宿主DNAへ挿入されないため、より安全な代替手段である。宿主DNAへ挿入するというDNAのこの能力は、外因性DNA挿入が有害となり得る医療用途に特に関与する。DNA発現に比べ、mRNA発現は、細胞内側で、僅か数時間から最大で数日しか続かない。細胞にデリバリーされないmRNAは、環境に存在するリボヌクレアーゼによりすぐに分解されるため、水平伝播の恐れがない。emmL mRNAが、癌細胞に上手くトランスフェクトされると、癌細胞中およびその表面で免疫原性細菌タンパク質を発現でき、免疫原性応答が誘発される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】M様タンパク質のmRNA製造のために設計された組み換えプラスミドの骨格に用いるプラスミドを示す図である。
図2図1の直鎖状ベクターへ結合されるemmL遺伝子のための源として用いるプラスミドDNAを示す図である。
図3A】固形癌で行われるmRNA検査をまとめたものである。
図3B】固形癌で行われるmRNA検査をまとめたものである。
図4】mRNAとDNA間での細胞製造経路の違いを示す図である。
図5】細菌性抗原をコードするmRNAを製造する組み換えDNAベクターの作製を示す図である。
図6】抗M様抗体に対する単離Emm55のウェスタンブロットである。
図7】DNAおよびRNAトランスフェクション(導入)からのタンパク質発現結果の比較を示す図である。
図8】フラッシュゲルシステムを用いた合成Emm55 mRNAのアガロースゲルの写真である。
図9】emmL mRNAまたは水(対照)(C2)のワクチン接種を受けたマウスの1、2、3および4週間後のEmmLタンパク質に反応する抗体を示すグラフである。
図10】emmL mRNAのワクチン接種前後の、EmmLタンパク質と反応する、マウス血液中の抗体の存在を示すウェスタンブロットである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、以前用いられていたワクチンよりも少ない費用で効率的に調製できる癌ワクチンを提供するものであり、これは、プラスミドDNAを細胞の核に直接導入することにより調製される。細胞質に挿入されたemmLをコードするmRNA(SEQ ID NO:1)を用いると、腫瘍細胞に導入するのにより効果的である。
【0026】
mRNAは、癌細胞に、抗原タンパク質メッセージをデリバリーすることができる。mRNAは、宿主DNAに挿入されないことから、より安全な代替手段であるばかりでなく、発現が僅か数時間から最大でも数日に限られている。mRNAデリバリーは、また、抗原メッセージを細胞タンパク質製造プロセスにおくため、細胞中における発現がさらに早くなる。mRNAは、細胞質にデリバリーしさえすればよいが、DNAは、最終的に、核を有効なものにしなければならない。mRNAは、分裂終了細胞と非分裂細胞の両方においてタンパク質製造を誘発可能であるため、mRNAは、タンパク質抗原製造に役立つ。
【0027】
抗原タンパク質のmRNAデリバリーは、DNAデリバリーのより安全な代替手段であるが、mRNAの安定性および免疫原性については対処しなければならない。安定性および免疫原性の増大を促す元素の多くは、組み換えベクター鋳型に組み込まれる。適切な元素がベクターに含まれていない場合には、加えることができる。例えば、鋳型ベクターが、ポリアデニル化(ポリA)テールコード配列を含んでいない場合には、転写中にテールに加える。
【0028】
細胞質の安定性を増大するには、mRNAは、5'-メチルグアノジンキャップと3'-ポリAテールの両方を含んでいなければならない(SEQ ID NO:3)。これらの元素には、mRNAをタンパク質に翻訳する役割の細胞機構の成分を引き付けそれに付加する役割がある。これらの成分がないと、分解の前に、mRNAをタンパク質の翻訳に利用できる時間が減じてしまう。従って、これらの元素は、実施例に記載したとおり、mRNAに組み込んでおく。
【0029】
効率的な免疫原性は、ウイルスベクター、ナノ粒子、カチオンポリマー、リピドおよびエレクトロポレーションによるデリバリーの増進といった技術を利用することにより増大させることができる。ウイルスベクターは、プラスミドDNA(pDNA)のデリバリーに広く利用されてきたが、いくつかリスクもあり、コストも増大する。mRNAによるエレクトロポレーションは、電気的な設定がそれほど厳しくないため、毒性が低く、mRNAのデリバリーには好ましい方法である。DNAを、外側細胞膜および核膜に通過させるには、DNAは、より高い電荷を必要とするが、mRNAに必要なのは、外側細胞膜のみの通過である。
【0030】
ワクチン用mRNAの製造は、pDNAに比べて、経済的かつ製造上の利点がある。mRNAは、直鎖状pDNA鋳型からインビトロで合成され、僅かの量のDNAしか必要としない。一方、大量のpDNAの製造は、労働集約型であり、ワクチン製造に必要な大量のpDNAを製造するために十分な細菌を成長させるには大きな発酵タンク等の機器を必要とする。大きな培地から単離したpDNAは純度が高いが、プラスミドの環状の性質のために、最終生成物は、弛緩、直鎖状および超らせん、の3つの構造形態で生じる。各形態は、細胞内部だと抗原タンパク質を製造する能力を持つが、各DNA形態は、形質膜を介して細胞に入る能力に関して異なる。mRNAの製造では、1つの構造形態しか形成されない。さらに、合成製造方法により、バッチ毎の再現性が高い。
【0031】
製造の観点から、mRNAはDNAから合成され、再現性が高い。大規模成長は必要でないことから、ワクチンとして用いるのにこれは重要なことである。すなわち、時間も材料も少なくて済み、コンタミネーションのリスクも少ない。これらの因子はコストを削減するのに寄与する。さらに、100個のmRNA分子を得るのに1つの直鎖状プラスミドDNAしか使わないため、mRNAの合成は、高収率となる。mRNAは、インビトロで製造され、単離後大腸菌コンタミネーション(ゲノムDNAまたはエンドトキシン)はない。これにより、精製ステップや品質管理試験が少なくて済む。また、インビトロでの転写の合成の性質により、バッチ毎の再現性とより純粋な生成物が確保される。選択マーカーを含むベクター配列が最終生成物の一部ではないからである。また、DNAとは対照的に、mRNAは、単一分子コンフォメーションを有し、プラスミドDNAは3つである。mRNAはまた、プラスミドDNAより容易に導入し、必要な電圧が低いため、エレクトロポレーション中の細胞死が少ない。DNA同様、mRNAもまた凍結乾燥可能である。規制の観点から、mRNAは、複製されず、一過性であるため、より安全である。mRNAはまた、容易に分解され、抗生物質耐性がないため、環境問題も最小である。
【0032】
以下の比較は、癌細胞への抗原emmLメッセージデリバリーについて、DNAの代わりにmRNAを用いた利点を示すものである。比較は、上流製造、下流製造、および細胞デリバリーの3つのパートに分かれている。製造コストの減少、製造時間の減少、優れたメッセージデリバリー、および安全性の増大をはじめとする利点の大半が、上流製造と細胞デリバリーで見られる。各セクションで、DNAとmRNAプロセス間、そして各プロセスの同様の工程間において、大きな差が示されている。
【0033】
上流製造:両方の核酸生成物の上流製造は、細胞培養増殖まではほぼ同じである。約100倍の量のmRNAを生成するのに、少量のDNAしか必要ない。例えば、インビトロ転写実験では、僅か0.2μgのDNAから25μgのmRNAが得られた。これは、同量の培養によって生成されたDNAの25倍のmRNAである。培養増殖は、非常に費用と時間がかかり、コンタミネーションやDNAの突然変異のリスクも増す。
【0034】
小さな細菌培養で成長させることの利点は大きい。この培養による少量のDNAの単離は小規模で済む。この小規模化によって、時間と資源を節約し、コンタミネーションのリスクも減じる。最終mRNA生成物の製造には、DNA鋳型からのmRNAの転写の追加の工程を必要とする。これは、インビトロで行われる合成工程である。転写の合成の性質により、バッチ毎の再現性が良好で、その手順も僅か数時間しかかからない。DNA含有細菌の培養には数日必要である。
【0035】
mRNAでなくpDNAを用いる大きな欠点は、最終生成物が、ゲノムDNA(gDNA)で汚染される可能性があることである。また、単離されたpDNAは、直鎖状、超らせん、環状の3つの形態を形成し、同じ効率で細胞に導入されない。mRNA最終生成物は、純粋な、単一の立体構造であり、gDNAまたはpDNAにより汚染されない。
【0036】
チャート1 DNAとmRNA製造に用いる工程の比較
【表1】
【0037】
下流製造(自家調製):
下流製造の大半は、DNAとmRNAについて同じである。1つの違いはエレクトロポレーション工程にある。mRNAは、核膜は通過せず、形質膜を通過するだけであるため、必要な電圧は低めであるが、DNAは、これとは異なり、形質膜と核膜の両方を通過しなければならない。エレクトロポレーション中、細胞死が少なくなるため、低めの電圧だと好ましい。mRNA導入細胞の増大した生存能力によって、適切な比率のM様タンパク質を発現するワクチン細胞へと容易に翻訳される。
【0038】
チャート2 導入された細胞でのワクチン調製により腫瘍組織中でのDNAおよびmRNAの処理の比較
【表2】
【0039】
細胞デリバリー:
mRNAデリバリーを用いる大きな利点を、以下の細胞デリバリーフローチャートに示す。表に示す通り、細胞へのmRNAデリバリーは、抗原M様タンパク質への即時翻訳にスキップされる。導入されたDNAが、さらに細胞膜を通過しなければならないばかりでなく、mRNAワクチンにより開始されるタンパク質合成の出発点であるサイトゾルへ戻るデリバリーのために、mRNAへ転写されなければならない。
【0040】
mRNAワクチンは、所望の効果に応じて、適合性免疫学的アジュバントまたはリプレッサーと結合させることができる。免疫賦活分子の混じり合ったTriMixのようなアジュバントを、コード化免疫原に対する増大した免疫応答を引き出すmRNAベースワクチンに追加することができる。免疫原リプレッサーは、十分な免疫応答を得るための身体の能力の妨げとなる他の元素の免疫抑制酵素と対抗するのに有用である。免疫抑制元素は、免疫付与中に同時デリバリーできるサイレンシングRNA(siRNA)を用いてサイレンシングすることができる。mRNAベースの癌ワクチンと共に投与できるさらなるタイプの免疫リプレッサーは、チェックポイント阻害剤である。これらは、概して、ブロックされないままだと、免疫抑制を誘発する、腫瘍細胞または免疫活性細胞に存在する受容体に結合する抗PD1および抗CTLA4等の抗体からなる。このプロセスは、「ブレーキ外し」と呼ばれ、この「ブレーキ」外しによって、mRNA癌ワクチン等の免疫療法がなされて、免疫系の癌細胞の攻撃がさらに後押しされるということである。
【0041】
ワクチンは、RNAワクチン投与前または同時に、チェックポイント阻害治療ばかりでなく、化学療法、放射線治療、全細胞ワクチン、他の核酸を用いた治療、ナチュラルキラー細胞治療またはキメラ抗原受容体治療と併用して用いることができる。
【0042】
他の場合、癌患者は、これらに限られるものではないが、ワクチン投与前または同時に、サイトカイン治療、抗fugetaxis(遊走運動)剤、走化性剤治療および化学物質のメトロノミック投与をはじめとする腫瘍微小環境を変える投薬計画により治療される。
【0043】
チャート3 細胞内移行から翻訳までのセル中のDNAとmRNA処理の比較
【表3】
【実施例
【0044】
以下の実施例は、本発明を例証するものであって、限定するものではない。
【0045】
実施例1
犬リンパ腫の自家mRNAワクチン
75ポンドのオス去勢済みローデシアン・リッジバックは、獣医に、腫れた下顎と鼠蹊部リンパ節の診察を受けた。患畜の肥大化した節の1つに微細針吸引が行われた。病理医の所見によれば、低悪性びまん性リンパ腫であった。
【0046】
患畜の飼い主は、免疫療法は副作用が最小であると報告されているため、化学療法やステロイドではなく免疫療法を行うことを選択した。獣医は、患畜に全身麻酔を行って、右下顎リンパ節を切除した。組織試料を研究所での処理のため翌日発送した。
【0047】
組織試料を受け取った研究所では次のことを実施した。1)送られた媒質が細菌に汚染されていないか検査した。2)組織寸法を測った。3)無傷のリンパ節を、水媒質ボーラスで繰り返し吸引し、腫瘍細胞を放出させた。4)吸引された細胞を集めて数えた。
【0048】
適正量の細胞は、emmLをコードするmRNAによるエレクトロポレーションに利用可能である。BioRad遺伝子パルサーマシーンを用いて、120x10個の細胞を80μgのmRNAを導入した。少量の導入された細胞を凍結保存し、残りを、約24時間培養した。24時間後、細胞を照射し、10x10個の細胞ワクチン用量に分け、必要になるまで凍結保存した。
【0049】
患畜は、計8回分ワクチン用量投与された。各用量を、翌日、予定投与日に届くよう、研究所から獣医クリニックに発送した。獣医は、各用量を注射器により投与した。8ワクチン用量を、4週間は7日(+/-1日)、4か月間は月1で与えた。1回目の用量の前に血液試料を採取した。5回目のワクチン、8回目のワクチン、最後のワクチンから8週間の前にも血液試料を採取した。血液試料は、末梢血および血漿を処理して、研究所で保管した。抗腫瘍免疫応答の評価のために後に用いた。
【0050】
治療中、患畜の全体的な生活の質と共にリンパ節サイズを観察した。全体的な疾病の状態は、腫瘍負荷の減少および抗腫瘍免疫応答により評価した。腫瘍負荷は、治療中、各リンパ節に行った測定により評価した。抗腫瘍免疫応答は、抗体レベルを評価する標準酵素結合免疫吸着法(ELISA)および細胞障害性T細胞(CTL)応答を評価するフローサイトメトリーを用いて測定した。
【0051】
治療中、患畜のリンパ節サイズは増加したが、継続により後に減少した。これは、恐らく、免疫細胞の腫瘍部位、このケースでは、リンパ節への湿潤によるものである。ELISAおよびフローサイトメトリーの結果は、4回目のワクチン後の抗体の生成およびCTLの増加を示し、一連のワクチン完了後も持続する。
【0052】
実施例2 馬黒色腫のダイレクトmRNAワクチン
15歳アンダルシアンは、獣医に、首、たてがみ、肛門周囲の黒病変の診察を受けた。穿刺吸引の所見によれば、病理医は患畜を黒色腫と診断した。飼い主は、患畜の肛門周囲病変の複雑性から、免疫療法を行うことを選択した。
【0053】
100μL無菌ヌクレアーゼフリーHO中100μgのmRNAを含有する3回分ワクチン用量が投与された。3回分用量および3本無針注射(J-Tip)が獣医に発送された。治療コースを受ける患畜の3か所の病変のを選択し、時点あたり計300μgのmRNAであった。2週間毎に、前回と同じ3回分用量を獣医クリニックに発送し、各用量を、J-Tip注射を使って同じ3つの病変に投与した。患畜は、病変につき合計で6ワクチン用量を付与された。
【0054】
ワクチンシリーズ開始前、5回目のワクチン用量前、シリーズ完了後2週間で、血液試料を集めた。血液試料の末梢血および血漿を処理した。抗腫瘍免疫応答の評価のために後に用いた。
【0055】
全体的な疾病の状態を、腫瘍負荷の減少および抗腫瘍免疫応答により評価した。腫瘍負荷は、各6回分ワクチン用量を投与する前、病変に行った測定により評価した。抗腫瘍免疫応答は、抗体レベルを評価するELISAおよびCTL応答を評価するフローサイトメトリーを用いて測定した。
【0056】
免疫療法を行っている他の患畜にも見られるとおり、黒色腫病変のサイズは増加したが、継続により後に減少した。ELISAおよびFACSの結果は、2回目のワクチン後の抗体の生成およびCTLの増加を示し、一連のワクチン完了後持続する。
【0057】
実施例3 emmL mRNA作製方法の概要
方法概要
ベクターおよびインサートの制限酵素消化
最良のmRNA生成のために適切な組み換えプラスミドを作製するために、原核生物と真核生物の二重プロモータ、未3'および5'領域、および選択マーカを含むプラスミド骨格を用いた。この種のベクター、例えば、pSFCMVT7は、Emm55のような抗原M様タンパク質をコードするmRNAの生成および安定化を補助する多くの特徴を有する。ベクターpSFCMVT7とプラスミドpAc/emmLを含有するインサートの両方を、制限酵素SacIおよびEcoRVを用いて切断した。図1および2のプラスミドマップを参照のこと。
【0058】
ゲル電気泳動によるDNA断片分離
制限分解を、適切な酵素により実施したら、DNA断片をゲル電気泳動により単離した。参照DNAラダーを両消化反応でDNAバンド長を評価することによって、当該バンドの識別の補助をする。DNAを含むバンドをゲルから抽出した。
【0059】
ゲル抽出/DNA単離
当該DNAを含むゲルスライスを溶解し、ベクターおよびインサートを連結すべくDNAを抽出して、組み換えプラスミドpSFCMVT7/emmLを作製した。
【0060】
ベクターおよびインサート連結
プラスミドを含有するベクターおよびインサートの制限酵素消化中、「粘着性末端」が形成され、後に連結によりつなぎあわさる。「粘着性末端」とは、相補的なヌクレオチドと水素結合可能な対になっていないヌクレオチドのことである。ベクターpSFCMVT7およびインサートemmLは、同じ制限酵素で切断されるため、T4 DNAリガーゼに露出させると結合する相補的な末端を含んでいる。
【0061】
細菌へのトランスフェクション
mRNA生成プラスミドpSFCMVT7/emmLを作製したら、適格な細菌へと形質転換、すなわち、導入し、それによって、単離後、インビトロmRNA合成に用いられるだけの十分なDNAを生成する。InvitrogenのStbl3 大腸菌は、トランスフェクションに用いることのできる細菌の一例である。形質転換は、細菌に熱衝撃を与え、細胞膜中の小さいオリフィスを開いて、プラスミドが細胞に、最終的に原子核に入れることにより、誘発された。
【0062】
細菌培養の成長と増殖
プラスミドによりトランスフェクトされた細菌を、選択性抗生物質を含有する適切な成長媒質に配置した。pSFCMVT7の場合は、カナマイシンである。細菌がプラスミドにより適正に形質転換されると、カナマイシンの抗菌性を妨害して、耐カナマイシン細菌を媒質で選択的に成長させるタンパク質が生成される。
【0063】
プラスミド単離と精製
pDNAを含有する適切な数の細菌が成長したら、細胞を溶解して、プラスミドを細胞内側から放出させた。pDNAを、ろ過およびアニオン交換カラムにより、gDNA、タンパク質およびその他細胞残骸から単離した。
【0064】
テンプレートDNAの作製:プラスミドDNA線形化
単離したDNAは、mRNA生成のためのテンプレートDNAを含有している。転写反応を起こすために、プラスミドは線形化しなければならない。線形化は、当該オープンリーディングフレーム遺伝子から下流で生じることが重要である。
【0065】
mRNA転写反応
テンプレート作製後、メッセージをインビトロ転写反応により作製する。この反応は、細胞中でのmRNAの転写をシミュレートするものであり、安定化増大のための5'末端のキャッピングおよびポリAテールの付加が含まれる。
【0066】
mRNA精製
メッセージがmRNAに転写されると、残留DNA鋳型が分解し、純粋なmRNA生成物を用いて、自己細胞、同種細胞または腫瘍内へ導入することができる。細胞内側で、mRNAは、免疫活性化のために細胞表面にM様タンパク質を生成して示す。
【0067】
mRNAの癌細胞へのトランスフェクション
mRNAを癌細胞にデリバーする1つの方法は、エレクトロポレーションの方法による。この方法は、弱い電流を利用して、細胞膜に小さな孔を空けて、mRNAが膜を通って動いて、細胞質に入るものである。
【0068】
実施例4 制限酵素消化
表1に、pDNAの即時消化の手順を示す。
【0069】
【表4】
【0070】
実施例5 ゲル電気泳動によるDNA断片分離
表2に、DNA断片分離のための手順を示す。
【0071】
【表5】
【0072】
実施例6 ゲル抽出/DNA単離
表3に、抽出およびDNA単離の手順を示す。
【0073】
【表6】
【0074】
実施例7 ベクターおよびインサート連結
表4に、ベクターインサートおよび連結の手順を示す。
【0075】
【表7】
【0076】
実施例8 DNAの大腸菌への形質転換
表5に大腸菌の形質転換のための手順を示す。
【0077】
【表8】
【0078】
実施例9 細菌培養の成長と増殖
表6に、細菌培養の成長と増殖のための手順を示す。
【0079】
【表9】
【0080】
実施例10 プラスミド単離と精製
表7に、プラスミド単離と精製のための手順を示す。
【0081】
【表10】
【0082】
実施例11 テンプレートDNAの作製
表8に、テンプレートDNAの精製とプラスミド線形化についての手順を示す。
【0083】
【表11】
【0084】
実施例12 mRNA転写
表9にmRNA転写の手順を示す。
【0085】
【表12】
【0086】
実施例13 mRNA精製
表10にmRNAの精製についての手順を示す。
【0087】
【表13】
【0088】
実施例14 mRNAの癌細胞へのトランスフェクション
【0089】
以下の表11に、emmL mRNAの哺乳類の癌細胞へのトランスフェクションについての手順を示す。
【0090】
【表14】
【0091】
実施例15 DNApSFCMVT7/emmLについてのクローニングステップ
図5に、細菌抗原をコードするmRNAを生成する組み換えDNAベクターの作製についての手順を示す。
【0092】
実施例16 抗体のM様タンパク質への直接結合
図6に示すウェスタンブロットは、抗M様タンパク質の、単離M様タンパク質、特に、Emm55に対する特異性を示すものである。
【0093】
タンパク質は、負荷緩衝液中、130mMのβ-MEを用いて、SDS-PAGE (10%)により分離した。試料を3分間100℃で沸騰させ、13,000xgで2分間、室温でスパンした。ブロット(左端)を、一次抗体(α-M様タンパク質)で、1.5時間、室温で、5%乳中でプローブした。一次抗体希釈度は1:500であった。二次抗体(ヤギのα-マウスコンジュゲートHRP)は、1:5000で希釈した。ゼロブロット(左から2番目)は、二次抗体の非特異性結合を示している。
【0094】
化学発光法を用いて、ニトロセルロースブロット(露光:10分)でタンパク質を可視化した。
【0095】
実施例17 DNAに比較して、mRNAで見られる発現の増大を示す蛍光顕微鏡画像およびチャート。結果を、RNAおよびDNAを、哺乳類細胞に導入し、タンパク質発現について分析した実験から比較した。結果によれば、等価の導入量のRNAは、発現量が5倍になったことが分かる(図7参照)。
【0096】
実施例18 合成emmL mRNA、テール無し、有り
図8に示す変性アガロースゲルを作製するのに用いた手順により、Lonza FlashGelシステムを用いて、合成emmL mRNA、特に、Emm55 mRNAの可視化を示す。
【0097】
20ngの試料および100ngのラダーを、全量を2.5μLの容積に、DEPC処理済み水を用いて希釈することにより調製した。等量のホルムアルデヒド試料緩衝液を各試料に加えた。試料を混合し、65℃で15分間培養した後、氷で1分間培養した。試料を1.2%RNAゲルカセットに充填し、225ボルトで8分間実行した。ゲルを室温で10分間培養し、FlashGelカメラを用いて視覚化した。mRNAのサイズをRNA Millennium Markerにより求めた。
【0098】
実施例19
チャート4は、RNA(emmL mRNA)およびDNA(pSF/emmL)を哺乳類の細胞に導入し、α-M様タンパク質により着色し、フローサイトメトリー分析を用いて分析した実験の結果を示すものである。結果によれば、RNA導入細胞が、DNA導入細胞と同等の信号、すなわち、9%を生成したことが分かる。
【0099】
【表15】
【0100】
実施例20
emmL mRNA(処置)または滅菌水(対照)でワクチン接種したマウスの血液試料について、emmLタンパク質と反応する抗体が存在するか試験した。図9に示すように、対照マウス(C2)の血液試料は、α-M様タンパク質抗体を含んでいなかったが、処置マウス(T2)の試料は僅かな上昇を示した。
【0101】
実施例21
チャート5は、黒色腫瘍細胞を移植した後、emmL mRNA(処置)または滅菌水(対照)を注射したマウスの実験結果を示す。注射は腫瘍移植後10日に始めた。処置か対照のいずれかの注射を3回、7日毎に行った。注射2回目の後、実験した5匹のマウスは全て生存していた。この時、3匹の処置マウスのうち2匹は、対照マウスより腫瘍が小さかった。注射3回目の後、5匹のマウスのうち3匹は生存しており、この時点で残り2匹の処理マウスは、残りの対照マウスの腫瘍より小さかった。
【0102】
【表16】
【0103】
実施例22
図10に、emmL mRNAによるワクチン接種前後のマウスの血液試料における、emmLタンパク質と反応する抗体の存在について実験の結果を示す。ウェスタンブロットの画像によれば、ワクチン接種後の血液試料は、ワクチン接種前試料よりも抗体への結合が増大していることが分かる。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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