(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】環境熱エネルギー変換
(51)【国際特許分類】
F03G 7/05 20060101AFI20220506BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20220506BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20220506BHJP
B63B 21/50 20060101ALI20220506BHJP
F01K 25/10 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
F03G7/05
B63B35/00 T
B63B35/44 N
B63B21/50 Z
F01K25/10 F
F01K25/10 E
(21)【出願番号】P 2019545693
(86)(22)【出願日】2017-11-01
(86)【国際出願番号】 US2017059485
(87)【国際公開番号】W WO2018085361
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-01-20
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519152722
【氏名又は名称】シートレック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SEATREC,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フラタントニ、デイビッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】ゼデルマイアー、マイケル マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ、ジャック エイ.
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、イー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリス、ロビン エドワード
(72)【発明者】
【氏名】リーランド、ロバート スコット
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0120126(US,A1)
【文献】特開2014-058911(JP,A)
【文献】特開2006-264343(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104314782(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 1/00-69/00
B63J 1/00-99/00
F01K 23/00-27/02
F03G 1/00- 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水熱エネルギーを使用した発電方法において、
密封された作動流体を、閉ループ内で、水体の第2の深度まで上昇させ、その後、前記水体の第1の深度まで下降させるために、前記密封された作動流体を前記第1の深度で圧縮する工程であって、前記第2の深度の水は、前記密封された作動流体が前記第1の深度における液相と前記第2の深度における気相との間で移行するように、前記第1の深度の水よりも高い温度を有し、前記圧縮はバッテリからの電力を使用する、密封された作動流体を圧縮する工程と、
前記バッテリを充電するための電気を生成するために、前記密封された作動流体を前記第2の深度で膨張させる工程と、
前記閉ループを収容する装置を、前記バッテリからの電力を使用して前記水体を通して推進させる工程とを備える、方法。
【請求項2】
前記装置は、前記装置が前記水体を通って推進されるときに、固定構成から、前記固定構成に比べて抗力が低減される可動構成に移行するように動作可能である、請求項1に記載の発電方法。
【請求項3】
水熱エネルギーを使用した発電方法において、
密封された作動流体を、閉ループ内で、水体の第2の深度まで上昇させ、その後、前記水体の第1の深度まで下降させるために、前記密封された作動流体を前記第1の深度で圧縮する工程であって、前記第2の深度の水は、前記密封された作動流体が前記第1の深度における液相と前記第2の深度における気相との間で移行するように、前記第1の深度の水よりも高い温度を有し、前記圧縮はバッテリからの電力を使用する、密封された作動流体を圧縮する工程と、
前記バッテリを充電するための電気を生成するために、前記密封された作動流体を前記第2の深度で膨張させる工程と、
配置場所への輸送をより容易にするために、又は前記水の中での動きをより容易にするために、巻き付け、折り畳み、又は折り曲げ動作可能な装置内に前記閉ループを収容する工程とを備える、発電方法。
【請求項4】
水熱エネルギーを使用することによって、水体を通して装置を推進させる方法において、
密封された作動流体を水体の第1の深さから、閉ループ内で第2の深度まで上昇させ、その後、前記水体の第1の深度まで下降させるために、前記密封された作動流体を加圧する工程であって、前記第2の深度の水は、前記密封された作動流体が前記第1の深度における前記閉ループのコンデンサ部分での液相から前記第2の深度における前記閉ループのボイラ部分での気相に移行するように、前記第1の深度の水よりも高い温度を有し、加圧はバッテリからの電力を使用するポンプによって行う、密封された作動流体を加圧する工程と、
前記バッテリを充電するための電気を生成するために、前記密封された作動流体をタービンによって前記第2の深度で膨張させる工程と、
前記閉ループ、前記ポンプ、及び前記タービンを格納する装置を、前記閉ループの垂直方向の範囲が少なくとも前記第1の深さから前記第2の深さまで延びる固定構成から、前記閉ループの前記垂直方向の範囲が前記固定構成に相対して少ない可動構成まで移行させる工程と、
前記装置が前記可動構成にある間に前記バッテリからの電力を使用して前記水体を通して前記装置を推進させる工程とを備える、方法。
【請求項5】
前記水体内に前記装置を完全に沈める工程をさらに備え、前記装置は、水面下フロートを含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水体内に前記装置を部分的に沈める工程をさらに備え、前記装置は前記水体の表面に配置された水面フロートを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記水体内に前記装置を完全に沈める工程をさらに備え、前記装置は中立浮力装置を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記装置は、前記密封された作動流体が上昇液体チューブの中を前記第1の深度から前記第2の深度へ上昇する前記上昇液体チューブと、前記密封された作動流体が下降蒸気チューブの中を前記第2の深度から前記第1の深度へ下降する前記下降蒸気チューブとを備え、前記上昇液体チューブ及び前記下降蒸気チューブは、前記第1の深度における前記水体の圧力、及び前記第1の深度と前記第2の深度との間の前記水体内において変化する海流、のうちの少なくとも一方による座屈又はクリンピングを回避するために十分な耐久性を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記装置は、前記密封された作動流体が上昇液体チューブの中を前記第1の深度から前記第2の深度へ上昇する前記上昇液体チューブと、前記密封された作動流体が下降蒸気チューブの中を前記第2の深度から前記第1の深度へ下降する前記下降蒸気チューブとを備え、前記上昇液体チューブ及び前記下降蒸気チューブは、前記第1の深度と前記第2の深度との間の前記水体内において変化する海流による圧力を緩和するように撓むことができる、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
AUV、調査プラットフォーム、又は他の電力使用デバイス内に設置された外部バッテリを充電するために、生成された電力を断続的に使用する工程をさらに備える、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記移行させる工程は、前記装置を、巻き付け、折り畳み、又は折り曲げることからなる、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記装置は、前記密封された作動流体が上昇液体チューブの中を前記第1の深度から前記第2の深度へ上昇する前記上昇液体チューブと、前記密封された作動流体が下降蒸気チューブの中を前記第2の深度から前記第1の深度へ下降する前記下降蒸気チューブとを備え、
前記方法は、前記装置に含まれる作動流体リザーバを使用して、前記上昇液体チューブ及び前記下降蒸気チューブ、又はそのいずれかにおける作動流体の量又は高度を制御する工程とをさらに備える、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記装置は、前記密封された作動流体が前記第1の深度から前記第2の深度に上昇する上昇液体チューブと、前記密封された作動流体が前記第2の深度から前記第1の深度へ下降する下降蒸気チューブとを備え、前記移行させる工程は、前記上昇液体チューブと前記下降上記チューブとを前記バッテリに給電される1つ以上のアクチュエータを用いて折り曲げることからなる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上のアクチュエータは、前記装置の対向する端にケーブルによって接続され、電気的に作動されるウィンチを含んでなる、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記可動構成における前記装置は前記固定構成における前記装置の約半分の長さである、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
前記移行させる工程は、前記閉ループの水平方向の範囲が最小となる水平な配置に前記装置を配備することからなる、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記コンデンサ部分は一連のチューブを備えたコンデンサを備える、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
前記ボイラ部分は一連のチューブを備えたボイラを備える、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、遠隔海洋発電に関し、より具体的には、海洋温度差発電(OTEC:ocean thermal energy conversion)システムなどの熱エネルギー変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔海洋電力は、商業的、科学的、及び防衛の目的にとってますます重要になりつつある。現在、ほとんどの無人潜水艇(UUV:Unmanned Underwater Vehicle)/自律型潜水艇(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)及び遠隔海洋発電ステーションは、バッテリで電力供給され、寿命が限られている。これにより、発電可能な電力量も、AUVが走行可能な距離も、大幅に制限される。
【0003】
ほとんどの海洋温度差発電(OTEC)システムは、海洋からの熱を使用して、高圧で揮発性冷媒を沸騰させる。得られた高圧蒸気は、タービンを通過するときに発電し、部分的に凝縮された流出する蒸気は、冷気又は冷水によって完全に凝縮される。従来のOTECシステムは、冷却を行うために、深い深度から水面に大量の冷たい海洋水を搬送する。これは、垂直方向の長い距離にわたる冷水の汲み上げに伴う機械的及び熱的損失のため、(たとえば、数キロワットを下回る電力の)小規模発電には実用的ではない。
【0004】
その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる特許文献1では、相変化材料(PCM:Phase Change Material)が、たとえば摂氏15度の暖かい温度で溶融(膨張)され、たとえば摂氏10度のより低い温度で凍結(収縮)されるシステムが開示されている。ペンタデカン等のパラフィンである可能性のあるPCMを収容するチューブが、油圧油が充填された容器内に挿入されている。PCMが溶融(膨張)されると、それによりオイルが約20.69MPa(3000psi)に加圧された容器内に押し出される。バルブが開かれると、高圧油が油圧モータを通過し、それにより発電機が回転してバッテリが充電される。PCMチューブが凍結(収縮)されると、低圧油は最終的にPCMキャニスタに再吸収される。生成された電気の一部は、非常に長期間にわたる深部循環が継続されるように、テザーラインに対する外部ブラダ又はモータの制御に使用され得る。あるいは、ブラダを充填することでAUVが上昇し、ブラダを空にすることでAUVが降下するように、油圧モータから流出する低圧油はAUV上の外部ブラダに直接排出され得る。これは、熱エネルギーを電気エネルギーに変換して機械的エネルギーに変換することの非効率性が回避されるという点で、はるかにエネルギー効率が高い。
【0005】
このシステムは、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる特許文献1及び特許文献2において、製造され、試験され、特許を受けているが、0.5ワット未満の平均電力を供給する間、(中立浮揚性であるが、典型的には100kgを超える)大量の海水を変位させる多数の機器を必要とする。たとえば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、非特許文献1を参照されたい。
【0006】
浮遊ブイ上の波によって生成された電気を使用し、浮遊ブイ上の太陽光バッテリからの電気を使用する、遠隔海洋充電ステーション及びAUVも開発されている。しかし、かかるブイの露出部は、暴風害、不慮の海洋船の衝突、及び敵の探知又は妨害行為の影響を受けやすい。
【0007】
風力、波、又は太陽エネルギーの使用による、極地における遠隔電力が提案されている。しかし、これらのシステムはすべて、厳しい高緯度の天候状態で動作することが困難である。
【0008】
したがって、当技術分野において、関連技術に伴う上述の欠点を克服する遠隔海洋発電のシステム及び方法に対する需要がある。本開示の様々な態様は、以下でより詳細に説明するように、これらの特定の需要に対処するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第7987674号明細書
【文献】米国特許第8117843号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】イー・チャオ(Chao,Yi)「Thermal Recharging Battery for Underwater Instrumentations」、2013 OBS Workshop
【発明の概要】
【0011】
本開示の1つ以上の態様によると、無人調査ステーション又は自律車両などの固定又は可動装置による、水熱エネルギーを使用した発電方法が提供される。海洋における2つの深度の間の温度差、又は冷気とより暖かい海洋水との間の温度差が、ランキンサイクル(Rankine cycle)に応じて作動流体を沸騰させて凝縮させることによる電気の生成に使用される。電気は、作動流体を駆動するポンプに電力を供給するために使用され得るバッテリに貯蔵される。2つの海洋水深間の温度差が使用される場合、装置は、上方から見えないようにするために、ならびに暴風及び外洋航行船舶による損傷を回避するために、水面下のブイ又はAUVへの接続によって完全に水中に沈められ得る。たとえば、極地において、空気と水との間の温度差が使用される場合は、装置はフロート、バージ、又は氷に取り付けられ得る。
【0012】
本開示の実施形態の一態様は、水熱エネルギーを使用した発電方法である。この方法は、密封された作動流体を、閉ループ内で、水体の第2の深度まで上昇させ、その後、水体の第1の深度まで下降させるために、密封された作動流体を第1の深度で圧縮することを含む。第2の深度の水は、密封された作動流体が第1の深度における液相と第2の深度における気相との間で移行するように、第1の深度の水よりも高い温度を有する。圧縮は、バッテリからの電力を使用する。この方法はさらに、バッテリを充電するための電気を生成するために、密封された作動流体を第2の深度で膨張させることを含む。
【0013】
方法は、水体内に完全に沈められた装置内に閉ループを収容することを含み得、装置は、水面下フロートと水体の底部に配置されたアンカーとを含む。
方法は、水体の表面に配置された水面フロートを含む装置内に閉ループを収容することを含み得る。装置は、水体の底部に配置されたアンカーを含み得る。
【0014】
方法は、水体内に完全に沈められた中立浮力装置内に閉ループを収容することを含み得る。
方法は、密封された作動流体がその中を第1の深度から第2の深度へ上昇する上昇液体チューブと、密封された作動流体がその中を第2の深度から第1の深度へ下降する下降蒸気チューブと、を含む装置内に閉ループを収容することを含み得る。上昇液体チューブ及び下降蒸気チューブは、第1の深度における水体の圧力、及び第1の深度と第2の深度との間の水体内において変化する海流、のうちの少なくとも一方による座屈又はクリンピングを回避するのに十分な耐久性を有し得る。上昇液体チューブ及び下降蒸気チューブは、第1の深度と第2の深度との間の水体内の変化する海流による圧力を緩和するように撓むことができ得る。方法は、装置内に含まれる作動流体リザーバを使用して、上昇液体チューブ及び下降蒸気チューブ、又はそのいずれかにおける作動流体の量又は高度を制御することを含み得る。
【0015】
方法は、閉ループを収容する装置を、バッテリからの電力を使用して水体を通して推進させることを含み得る。装置は、装置が水体を通って推進されるときに、固定構成から、固定構成に比べて抗力が低減される可動構成に移行するように動作可能であり得る。
【0016】
方法は、AUV、調査プラットフォーム、又は他の電力使用デバイス内に設置された外部バッテリを充電するために、生成された電力を断続的に使用することを含み得る。
方法は、配置場所への輸送をより容易にするために、又は水の中での動きをより容易にするために、巻き付け、折り畳み、又は折り曲げ動作可能な装置内に閉ループを収容することを含み得る。
【0017】
本開示の実施形態の別の態様は、地球の極地における水熱エネルギーを使用した発電方法である。この方法は、密封された作動流体を、閉ループ内で、水体の第1の深度まで降下させ、その後、水体の上方の大気の第1の高度まで上昇させるために、密封された作動流体を第1の高度で圧縮することを含み得る。第1の深度の水は、密封された作動流体が第1の高度における液相と第1の深度における気相との間で移行するように、第1の高度の大気よりも高い温度を有する。圧縮は、バッテリからの電力を使用する。方法はさらに、バッテリを充電するための電気を生成するために、密封された作動流体を第1の深度で膨張させることを含む。
【0018】
方法は、強制対流によって、密封された作動流体を第1の高度で冷却することを含み得る。
方法は、強制対流によって、密封された作動流体を第1の深度で加熱することを含み得る。
【0019】
方法は、バッテリからの電力を使用してAUV又は他の沖合の電力供給デバイスを断続的に充電することを含み得る。
この方法では、膨張のための熱は、地球の内部の熱エネルギーから、核エネルギーから、又は別の種類の熱源からのものであり得る。方法は、水体の第2の深度から第1の深度まで水を汲み上げることを含み得、第2の深度の水は第1の深度の水よりも高い温度を有する。
【0020】
方法は、密封された作動流体がその中を第1の高度から第1の深度へ下降する下降液体チューブと、密封された作動流体がその中を第1の深度から第1の高度へ上昇する上昇蒸気チューブと、を含む装置内に閉ループを収容することを含み得る。方法は、装置内に含まれる作動流体リザーバを使用して、下降液体チューブ及び上昇蒸気チューブ、又はそのいずれかにおける作動流体の量又は高度を制御することを含み得る。
【0021】
本開示の実施形態の別の態様は、水熱エネルギーを使用した発電方法である。この方法は、密封された作動流体を、閉ループ内で、水体の表面に対する第2の垂直位置に移動させ、その後、水体の表面に対する第1の垂直位置に移動させるために、密封された作動流体を第1の垂直位置で圧縮することを含む。第2の垂直位置における外部環境は、密封された作動流体が第1の垂直位置における液相と第2の垂直位置における気相との間で移行するように、第1の垂直位置における外部環境よりも高い温度を有する。圧縮は、バッテリからの電力を使用する。方法はさらに、バッテリを充電するための電気を生成するために、密封された作動流体を第2の垂直位置で膨張させることを含む。
【0022】
本開示は、添付の図面とあわせて以下の詳細な説明を参照することにより、最もよく理解されるであろう。
本明細書に開示された様々な実施形態のこれら及び他の特徴及び利点は、以下の説明及び図面によってよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】典型的なランキンパワーサイクルの概略図である。
【
図2】水熱エネルギーを使用した、開示された発電のシステム及び方法で使用するための装置の例示的な実施形態を示す。
【
図3】熱帯、中緯度、及び極地における海洋温度と深度との関係を示す。
【
図4A】水熱エネルギーを使用した、開示された発電のシステム及び方法で使用するための可動型中立浮力装置の例示的な実施形態を示す。
【
図4C】水熱エネルギーを使用した、開示された発電のシステム及び方法で使用するための可動型中立浮力装置の別の例示的な実施形態を示す。
【
図4D】水熱エネルギーを使用した、開示された発電のシステム及び方法で使用するための可動型中立浮力装置の別の例示的な実施形態を示す。
【
図5A】水熱エネルギーを使用した、開示された発電のシステム及び方法で使用するための可動型中立浮力装置の別の例示的な実施形態を示し、固定した垂直方向の構成を示す。
【
図5B】水熱エネルギーを使用した、開示された発電のシステム及び方法で使用するための可動型中立浮力装置の別の例示的な実施形態を示し、折り曲げた構成を示す。
【
図5C】水熱エネルギーを使用した、開示された発電のシステム及び方法で使用するための可動型中立浮力装置の別の例示的な実施形態を示し、完全に水平方向のコンパクトな構成を示す。
【
図6】極地における、水熱エネルギーを使用した、開示された発電のシステム及び方法で使用するための装置の例示的な実施形態を示す。
【
図7】様々な極地における海洋温度(及び塩度)と深度との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
同じ要素を示すために、図面及び詳細な説明を通して共通の参照番号を使用する。
添付の図面に関して以下に記載する詳細な説明は、水熱エネルギーを使用した発電のシステム及び方法の特定の実施形態の説明を意図するものである。説明される実施形態は、開発又は使用され得る形態のみを表すことを意図するものではない。説明は、図示される実施形態に関して様々な構造及び機能又は構造もしくは機能を記載しているが、同じ又は同等の構造及び機能又は構造もしくは機能は、本開示の範囲内に包含されることが意図される異なる実施形態によっても達成され得ることが理解されるべきである。さらに、第1及び第2などの相関的な用語の使用は、1つの実体を別の実体から、かかる実体の間の事実上のかかる関係又は順序を必ずしも要求又は暗示することなく、区別するためにのみ使用されていることが理解される。
【0025】
本開示の様々な態様は、多くの蒸気発電機、及びほとんどの既存の海洋温度差発電(OTEC)システムで使用されている、典型的なランキンパワーサイクルを使用している。ランキンサイクルによれば、
図1に示すように、(たとえば、化石燃料の燃焼や海洋からの)熱q
inを使用して冷媒(たとえば、水)をボイラ内で高圧で沸騰させる。得られた高圧蒸気(たとえば、スチーム)はタービンを通って膨張する際に電力を生成し、部分的に凝縮された流出する蒸気は(たとえば、冷気又は冷水によって)コンデンサ内で完全に凝縮され、熱q
outを除去する。コンデンサを出る飽和液冷媒は、その後、サイクルを再開するためにボイラへ汲み上げられる。
【0026】
ランキンサイクルを使用した従来のOTECシステムは、冷媒を冷却して凝縮させるために、深い深度から水面へ大量の冷たい海洋水を搬送する。これは、生成される電力量よりはるかに多くの汲み上げ電力が消費されない限り、冷水への熱漏洩が大きすぎるため、非常に低い発電量(たとえば、1キロワット未満)では実用的ではない。このような従来のOTECシステムとは異なり、本明細書で説明する開示された方法は、冷媒自体を深い深度へ(又は極地における水面の上方の冷たい大気へ)移動させることを含み、効率的な低電力システムのための冷却及び凝縮を可能にする。生成された電力はバッテリを充電し得、同バッテリは、サイクルを駆動する液体ポンプに電力を供給するために使用され得る。バッテリはさらに、AUVに電力を供給することを含む他の目的のために使用され得る。
【0027】
図2は、水熱エネルギーを使用した、開示されたシステム及び方法で使用するための装置200の例示的な実施形態を示す。装置200は、密封された作動流体10がその中を水体20の第1の深度D1から第2の深度D2へ装置200の液体ポンプ230の動作によって上昇する上昇液体チューブ210、及び密封された作動流体10がその中を第2の深度D2から第1の深度D1へ液体ポンプ230の動作によって下降する下降蒸気チューブ220を含む。ポンプ230は、
図2に曲線の矢印で概略的に示すように、密封された作動流体10を、閉ループ内で、第2の深度D2へ上昇させ、その後、第1の深度D1へ下降させるために、密封された作動流体10を第1の深度D1で圧縮する。液体ポンプ230は、上昇液体チューブ210と下降蒸気チューブ220との間に、それらのそれぞれの下限位置又はその近傍に配置され得る。コンデンサ225は、下降蒸気チューブ220の下限位置に、下降蒸気チューブ220と流体接続するように設けられ得る。接続チューブ240は、コンデンサ225をポンプ230の入口に流体接続し得、別の接続チューブ240は、ポンプ230の出口を上昇液体チューブ210に流体接続し得る。
【0028】
図2に示す装置200はさらに、上昇液体チューブ210と下降蒸気チューブ220との間に、それらのそれぞれの上限位置又はその近傍に配置されたタービン250を含む。ボイラ215は、上昇液体チューブ210の上限位置に、上昇液体チューブ210と流体接続するように設けられ得る。接続チューブ240は、ボイラ215をタービン250の入口に流体接続し得、別の接続チューブ240は、タービン250の出口を下降蒸気チューブ220に流体接続し得る。このように、上昇液体チューブ210、ボイラ215、下降蒸気チューブ220、コンデンサ225、ポンプ230、タービン250、及び接続チューブ240は、密封された作動流体10がポンプ230の作動によりその中を流れる閉ループを形成し得る。
【0029】
装置200が、
図2に示すように、水体20内に垂直に配置される場合、第2の深度D2の水は、(たとえば、太陽光により水体20の表面が暖まることによって)第1の深度D1の水よりも高い温度を有し得る。その結果、密封された作動流体10は、第1の深度D1における液相10aと第2の深度D2における気相10bとの間を移行し得る。液相10aから気相10bへの移行は、ボイラ215によって支援され得、ボイラは、第2の深度D2における密封された作動流体10と水体20との間の熱伝達を促進するために(たとえば、一連のチューブなどの)公知の原理に従って構成され得る。同様に、気相10bから液相10aへの移行は、コンデンサ225によって支援され得、コンデンサは、第1の深度D1における密封された作動流体10と水体20との間の熱伝達を促進するために(たとえば、一連のチューブなどの)公知の原理に従って構成され得る。タービン250の入口において、密封された作動流体10は、飽和蒸気となり得、その後、タービン250を通って膨張し、バッテリ260を充電するための電力を(たとえば、タービンシャフトの回転によって)生成し、次いで、ポンプ230に電力を供給する。バッテリ260はさらに、
図2に概略的に示すように、他のデバイスに電力を供給し得る。バッテリ260がポンプ230に電力を供給するため、装置200に電力を供給するために、ランキンパワーサイクルの従来の大規模「発電プラント」の実施態様で典型的であり得るような、外部又は燃料に依存する電源(たとえば、陸上電力、ディーゼル発電機)を使用する必要はない。その結果、装置200は、以下でより詳細に説明するように、完全に自給自足型で、長期間の浸水に適し、かつ完全に移動可能なAUVの実施形態であり得る。
【0030】
上昇液体チューブ210及び下降蒸気チューブ220は、加圧された作動流体を密封するのに適した任意の材料で作成され得る。好ましくは、上昇チューブ210及び下降蒸気チューブ220は、第1の深度D1における水体20の圧力、及び第1の深度D1と第2の深度D2との間の水体20内の変化する海流、のうちの少なくとも一方による座屈又はクリンピングを回避するのに十分な耐久性を有する。あるいは、又はさらに、チューブ210,220は、水体20内の変化する海流による圧力を緩和するように撓むことができ得る。この点については、チューブ210,220は、それらの長さに沿って、蛇腹、ジョイント、又は他の可撓性構成要素を含み得る。
【0031】
図2の装置200はさらに、ブイ270及びアンカー280を含む。ブイ270は、水面下フロートであり得、この場合、装置200は、たとえば、海底などの、水体20の底部に配置されたアンカー280を用いて水体20内に完全に沈められ得る。あるいは、ブイ270は、水体20の表面に配置された水面フロートであり得、この場合、アンカー280は、水体20の底部に配置され得、又は、装置200を水体20の底部に接触させることなく垂直方向に方向付けるように作用し得る。以下でより詳細に説明するように、たとえば、ブイ270が水面下フロートであり、アンカー280が水体20の底部に接触しない場合、完全に沈められた中立浮揚性の構成もまた想定される。アンカー280は、
図2において方向付けられているように、上昇液体チューブ210、下降蒸気チューブ220、及びポンプ230のうちの1つ以上などの装置200の任意の部分に、装置200の底部で、アンカーラインによって取り付けられ得る。たとえば、アンカー280は、図示のように、上昇液体チューブ210及び下降蒸気チューブ220に取り付けられ得、あるいはポンプ230のみに取り付けられ得る。ブイ270も同様に、
図2において方向付けられているように、上昇液体チューブ210、下降蒸気チューブ220、及びタービン250のうちの1つ以上などの装置200の任意の部分に、装置200の上部で、ブイラインによって取り付けられ得る。たとえば、ブイ270は、図示のように、上昇液体チューブ210及び下降蒸気チューブ220に取り付けられ得、あるいはタービン250のみに取り付けられ得る。装置200を適切に方向付けるために、ブイ270の取り付け位置は、アンカー280の取り付け位置よりも装置200の上部に近接していることが好ましいが、他の構成も可能である。
【0032】
図2に示すような固定装置200の場合、バッテリ260による他のデバイスの電力供給は、装置200に関連付けられた調査機器、通信機器又は保守機器などのローカルデバイスを含み得る。別の実施例として、バッテリ260による他のデバイスの電力供給は、装置200に一時的に結合する可動デバイス(たとえば、AUV)などの沖合の電力供給デバイスを含み得る。このように、装置200は、沖合の電力供給デバイスのための充電ステーションとして作用し得、バッテリ260に貯蔵された(又はタービン250が直接出力する)生成された電力は、AUV、調査プラットフォーム、又は他の電力使用デバイス内に設置された外部バッテリを断続的に充電するために使用され得る。
【0033】
装置200はさらに、それにより上昇液体チューブ210及び下降蒸気チューブ220内又は上昇液体チューブ210もしくは下降蒸気チューブ220内の作動流体10の量又は高度を制御し得る、作動流体リザーバ285を含み得る。作動流体リザーバ285は、作動流体10が(たとえば、ポンプ230の前に接続チューブ240においてバルブを介して)その中を流れる閉ループに接続され得る。バルブは、所定の規則に従って、(たとえば、保守要員によって)手動で、又はオンボード制御デバイス(たとえば、プロセッサ及びメモリ又はプログラマブルもしくは専用回路)によって自動で制御され得る。かかるオンボード制御デバイスは、バッテリ260によって電力供給され得る。
【0034】
密封された作動流体10がアンモニア(NH3)である場合の例示的な圧力及び温度を
図2に示す。アンモニアは、一般的な非CFC作動流体である。
図2の数値で示す特定の実施例では、ポンプ230は、深度D1とD2との間の400メートルの差に対して、液圧を0.57MPa(5.7バール)から3.42MPa(34.2バール)に上昇させる。タービン250を通って膨張すると、密封された作動流体10は、ボイラ215から流出する摂氏23度で0.95MPa(9.45バール)から、タービン250から流出する摂氏7度で0.55MPa(5.5バール)に移行する。直径1.27センチメートル(1/2インチ)の上昇液体チューブ210及び直径2.54センチメートル(1インチ)の下降蒸気チューブ220を用いると、NH3流は、約0.0088kg/秒であり得、理想的なタービンの電力出力は約542ワットに等しく、理想的なポンプの所要入力電力は約62.3ワットに等しい。これにより、電力入力に対する電力出力の比率、約8.7がもたらされ、この比率は、現実的非効率性を考慮すると、4.0の高さの有効比率に達し得る。かかるシステムは、100ワットの電力入力に対して連続した400ワットの電力、したがって、300ワットの連続した正味出力を生成できることが期待される。タービン250及びポンプ230は、それぞれ約1~2kgの変位水量質量を有する。総変位質量は、約200kg(ブイ270、アンカー280、ボイラ215、コンデンサ225などを含む)であり、これは、以前のPCM型のSOLO‐TREC設計(非特許文献1)の約2倍であり、約1000倍、あるいはそれ以上の電力を生成することが可能である。上述の特定の実施例では、ボイラ215内のアンモニアを沸騰させるために、約10kWの海洋熱が必要であり、約10kWの熱がコンデンサ225で海洋に排出されることが要求される。
【0035】
他の冷媒及び組み合わせも可能である。たとえば、アンモニアの代わりに、密封された作動流体10としてCO2を使用する場合、ポンプ230は、液体CO2の重量を考慮して、深度D1とD2との間の400メートルの差に対して、液圧を4.3MPa(43バール)から9.5MPa(95バール)まで上昇させ得る。タービン250を通って膨張すると、密封された作動流体10は、ボイラ215から流出する摂氏23度で6.14MPa(61.4バール)から、タービン250から流出する摂氏3.1度で3.8MPa(38バール)に移行し得る。直径1.27センチメートル(1/2インチ)の上昇液体チューブ210及び直径2.54センチメートル(1インチ)の下降蒸気チューブ220を用いると、CO2流は、約0.0088kg/秒であり得、理想的なタービンの電力出力は約120ワットに等しく、理想的なポンプの所要入力電力は約50ワットに等しい。これにより、電力入力に対する電力出力の比率、約2.4がもたらされる。(たとえば、数キロワット未満の発電などの)小システムを除いて、このタイプのOTECシステムは、実際に、この増大した汲み上げに必要とされる余分な電力のため、従来のOTECシステムよりも高価であり得る。現実的非効率性を考慮すると、かかるシステムは、実際には正味の正エネルギーを生成しない可能性がある。作動流体10として使用可能なさらなる冷媒としては、CFC(R‐11,R‐12など)、HCFC(R‐22,R123など)、HFC(R134a,R245faなど)、HC(ブタン、ペンタン、プロパンなど)、FC(フルオロカーボン)、及び許容可能な圧力を有する任意の他の低凝固点流体を含み得る。
【0036】
図3は、熱帯、中緯度、及び極地における海洋温度と深度との関係を示す。かかる経験的データは、装置200の最も効率的な配置及び垂直方向の長さを決定するために使用され得る。図示のように、熱帯及び中緯度の領域において(特に、中緯度の領域では夏において)、海面下約50メートルから450メートルの間で比較的大きな温度差が見られる。したがって、コンデンサ225及びポンプ230を約450メートルの第1の深度D1に、ボイラ215及びタービン250を約50メートルの第2の深度D2に配置するように装置200を配置することによって、少なくとも熱帯及び中緯度の領域において、海洋温度勾配の非常に効率的な使用を実現することができる。装置200の上端部(ボイラ215及びタービン250)を
図2に示すように水面下(たとえば、50メートル下方)に配置することにより、暴風害、不慮の海洋船の衝突、及び敵の探知又は妨害行為を回避することができる。
【0037】
図4A~
図4Dは、水熱エネルギーを使用した、開示された発電のシステム及び方法で使用するための可動型中立浮力装置400a,400c,400dの例示的な実施形態を示す。
図4A~
図4Dに示す装置400a,400c,400dの実施例は、
図2の装置200の実施例と略同じであり得、たとえば、装置200の上昇液体チューブ210、ボイラ215、下降蒸気チューブ220、コンデンサ225、ポンプ230、接続チューブ240、タービン250、バッテリ260、ブイ270、アンカー280、及び作動流体リザーバ285に対応しかつ略同じである、上昇液体チューブ410a,410c,410d、ボイラ415a,415c,415d、下降蒸気チューブ420a,420c,420d、コンデンサ425a,425c,425d、ポンプ430a,430c,430d、接続チューブ440a,440c,440d、タービン450a,450c,450d、バッテリ460a,460c,460d、ブイ470a,470c,470d、アンカー480a,480c,480d、及び作動流体リザーバ485a,485c,485dを含み得る。しかし、
図4A~
図4Dは、
図2の固定構成の実施形態よりもむしろ、可動構成の実施形態に関連し得る特徴をさらに示す。この点については、たとえば、密封された作動流体10及び他の設計材料を適切に選択し、装置400a,400c,400dを
図2に示すように約50メートルから約450メートルに垂直に延在するように配置することによって、装置400a,400c,400dの中立浮揚性が達成され得るため、ブイ470a,470c,470d及びアンカー480a,480c,480d又はブイ470a,470c,470dもしくはアンカー480a,480c,480dを含んでも含まなくてもよい。
【0038】
装置400a,400c,400dは、タービンによって充電される同じバッテリ(たとえば、
図4A~
図4Dに図示しない、バッテリ460a,460c,460d)によって電力を供給することができる、可動性のための1つ以上のプロペラ490a,490c,490dをさらに含み得る。1つ以上のプロペラ490a,490c,490dによって、装置400a,400c,400dは、前方推進、後方推進、旋回及び/又は深度調節を含む運動能力を有し得る。装置400a,400c,400dの所望の可動性に応じて、プロペラ490a,490c,490dは、方向の範囲内の推進のためにプロペラ490a,490c,490dを方向付けるために装置400a,400c,400dに対して1つ以上の軸上で傾斜可能、回転可能、又はその他の動きが可能であり得る。かかる方向付けもまた、タービンによって充電される同じバッテリ(たとえば、
図4A~
図4Dに図示しない、バッテリ460a,460c,460d)によって電力を供給され得る。
【0039】
図4Aに示すように、1つ以上のプロペラ490aが装置400aの端部上に配置され得、1つのプロペラ490aはタービン450a近傍の上端に配置され、別のプロペラ490aはポンプ430a近傍の下端に配置される。
図4Bは、
図4AのA‐A線に沿った装置400aの概略断面図である。
図4Bに示すように、下降蒸気チューブ420aは、上昇液体チューブ410aの約2倍の直径(たとえば、上述のように2.54センチメートル(1インチ)及び1.27センチメートル(1/2インチ))を有し得る。プロペラ490aは、図示のように、装置400aを推進させるために、下降蒸気チューブ420aと同じ側に配置され得る。このように、チューブ410a,420aの相対的な大きさが、装置400aを、抗力の低減を支援する翼形状にし得る。さらに抗力を低減するために、1つ以上のフェアリング411を含み得る。フェアリング411は、たとえば、図示のように、チューブ410a,420aの両側の長さ方向に沿って延び、より大きな下降蒸気チューブ420aの湾曲した外面によって(運動方向の)前方で分離された細長い垂直板であり得る。フェアリング411は、図示のように、後方(より小さい上昇液体チューブ410aの後方)で合流し得る。
【0040】
あるいは、
図4Cに示すように、単一のプロペラ490cが装置400cの中央近傍に配置され得、上昇液体チューブ410c及び下降蒸気チューブ420cは、装置400cの垂直方向中央近傍のプロペラハブで可撓ジョイントにより折り畳み可能である。上昇液体チューブ410c及び下降蒸気チューブ420cの折り畳みは、タービンによって充電される同じバッテリ(たとえば、
図4Cに図示しない、バッテリ460c)によって電力が供給される1つ以上のアクチュエータによって行われ得る。図示のように、折り畳んだチューブ410c,420cを、その長さ方向に沿った1つ以上の位置で支持するために、ストラット492が延在し得る。たとえば、ストラット492は、図示のように、まず、チューブ410c,420cと平行に整列され得、チューブ410c,420cの2つの折り畳んだ端部を接続するためにチューブ410c,420cから離れる方向に延びるようにヒンジ結合され得る。整列位置と延伸位置との間のストラット492の作動は、タービンによって充電される同じバッテリ(たとえば、
図4Cに図示しない、バッテリ460c)によって電力が供給される1つ以上のアクチュエータによって行われ得る。このように、装置400cは、固定の展開された構成から、装置が水体を通って推進されるときに、固定構成に比べて抗力が低減される可動の折り畳み構成へ移行するように動作可能である。
図4Cの構成などの、巻き付け、折り畳み、又は折り曲げ構成はまた、装置400cの配備位置への輸送を容易にし得る。
【0041】
別の代替例としては、
図4Dに示すように、単一のプロペラ490dが装置400dの垂直方向一端部、たとえば、図示のようにボイラ415d及びタービン450d近傍の上端部(又は代替的に/さらにコンデンサ425d及びポンプ430d近傍の下端部)に、配置され得る。かかる構成では、装置400dは、それ自体を水平位置に回転させ、装置400d全体を略同じ深度で長手方向に移動させ得る。装置400dの回転は、プロペラ490dによって、たとえば、上述のようにプロペラ400dを1つ以上の軸上で傾斜させることによって、達成され得る。このように、装置400dは、固定の垂直方向の構成から、装置が水体を通って推進されるときに、固定構成に比べて抗力が低減される可動の水平方向の構成へ移行するように動作可能である。
【0042】
図5A~
図5Cは、水熱エネルギーを使用した、開示された発電のシステム及び方法で使用するための可動型中立浮力装置500の別の例示的な実施形態を示す。
図5A~
図5Cに示す装置500の実施例は、
図2の装置200の実施例と略同じであり得、たとえば、装置200の上昇液体チューブ210、ボイラ215、下降蒸気チューブ220、コンデンサ225、ポンプ230、接続チューブ240、タービン250、バッテリ260、ブイ270、アンカー280、及び作動流体リザーバ285に対応しかつ略同じである、上昇液体チューブ510、ボイラ515、下降蒸気チューブ520、コンデンサ525、ポンプ530、接続チューブ540、タービン550、バッテリ560、ブイ570、アンカー580、及び作動流体リザーバ585を含み得る。しかし、
図5A~
図5Dは、
図2の固定構成の実施形態よりもむしろ、可動構成の実施形態に関連し得る特徴をさらに示す。この点については、たとえば、密封された作動流体及び他の設計材料を適切に選択し、装置500を
図2に示すように約50メートルから約450メートルに垂直に延在するように配置することによって、装置500の中立浮揚性が達成され得るため、ブイ570及びアンカー580、又はそのいずれかを含んでも含まなくてもよい。
【0043】
装置500は、タービンによって充電される同じバッテリ(たとえば、
図5A~
図5Cに図示しない、バッテリ560)によって電力を供給することができる、可動性のためのプロペラ590をさらに含み得る。プロペラ590によって、装置500は、前方推進、後方推進、旋回及び/又は深度調節を含む運動能力を有し得る。装置500の所望の可動性に応じて、プロペラ590は、方向の範囲内の推進のためにプロペラ590を方向付けるために装置500に対して1つ以上の軸上で傾斜可能、回転可能、又はその他の動きが可能であり得る。かかる方向付けもまた、タービンによって充電される同じバッテリ(たとえば、
図5A~
図5Cに図示しない、バッテリ560)によって電力を供給され得る。
【0044】
図5A~
図5Cに示すように、プロペラ590は、
図4Cに関して上述した装置400cのプロペラ490cと同様、装置500の中心近傍に配置され得る。また、装置400cと同様に、上昇液体チューブ510及び下降蒸気チューブ520は、装置500の垂直方向中央近傍のプロペラハブで可撓ジョイントにより折り畳み可能であり得る。装置500の場合、電気的に作動されるウィンチ592が、上端部(ボイラ515及びタービン550近傍)及び下端部(コンデンサ525及びポンプ530近傍)にケーブルによって接続されて、設けられ得る。タービンによって充電される同じバッテリ(たとえば、
図5A~
図5Cに図示しない、バッテリ560)によって電力を供給されると、ウィンチ592は、
図5Bに下向き及び上向きの矢印で概略的に示すように、ケーブルを引き込み得る。ケーブルは、たとえば、ウィンチ592のハウジング内の1つ以上のスプールに巻き付き得る。
図5Cは、ウィンチ592の動作が完了した後の、装置500の完全に折り畳まれた状態を示す。図示のように、折り畳まれた状態の装置400は、展開された状態の約半分の長さである。装置500が使用中であるとき、ユニットが
図5Aに示すように固定かつ垂直状態で、ポンプ530及びタービン550が冷水中及び温水中でそれぞれ動作されている間、電力が生成されてバッテリ560(図示せず)内に貯蔵され得る。バッテリ560が充電されると、装置500は、
図5Cに示す完全に水平かつコンパクトな位置になるまで
図5Bに示すように折れ曲がり得、その後、(プロペラ590は、装置500が
図5Bに示すように折れ曲がるときにゆっくり始動し得るが)装置500はプロペラ590によって任意の所望の方向に推進されることができる。このように、装置500は、固定の展開された構成から、装置が水体を通って推進されるときに、固定構成に比べて抗力が低減される可動の折り畳み構成へ移行するように動作可能である。
図4Cの構成などの、巻き付け、折り畳み、又は折り曲げ構成はまた、装置500の配備位置への輸送を容易にし得る。
【0045】
図4A~
図4D及び
図5A~
図5Cに関して上述した、装置400a,400c,400d,500などの可動装置の場合、バッテリ460a,460c,460d,560は、ポンプ430a,430c,430d,530に加えて、プロペラ490a,490c,490d,590及び上述のような可動性に関連付けられた他のローカルデバイス(たとえば、巻き付け、折り畳み、又は折り曲げデバイス)に電力を供給するために使用され得る。このように、バッテリ460a,460c,460d,560は、AUV、すなわち、装置400a,400c,400d,500を含むAUVに電力を供給し得る。さらに、固定装置200の場合と同様に、バッテリ460a,460c,460d,560はさらに、装置400a,400c,400d,500に関連付けられた調査機器、通信機器、又は保守機器などの他のローカルデバイス、及び可動デバイス(たとえば、第2のAUV)などの外部の沖合の電力供給デバイスに電力を供給し得る。
【0046】
図6は、地球の極地において、水熱エネルギーを使用した、開示された発電のシステム及び方法で使用するための装置600の例示的な実施形態を示す。
図3に関して上述したように、地球の熱帯及び中緯度の領域は、本明細書に開示する装置200,400a,400c,400d,500のランキンサイクルによって使用され得る大きな海洋温度勾配を示し得るが、極地はより小さな海洋温度勾配を示す。装置600は、極地における海水温と大気温との間のより大きな差を使用することにより、この難点に対処している。
【0047】
装置600は、密封された作動流体10がその中を水体20の上方の大気40の第1の高度H1から水体の第1の深度D3へ装置600の液体ポンプ630の動作によって下降する下降液体チューブ610、及び密封された作動流体10がその中を第2の深度D3から第1の高度H1へ液体ポンプ630の動作によって上昇する上昇蒸気チューブ620を含む。ポンプ630は、密封された作動流体10を、閉ループ内で、第1の深度H1から第1の深度D3へ下降させ、その後、第1の高度H1へ上昇させるために、密封された作動流体10を圧縮する。液体ポンプ630は、下降液体チューブ610の上部に配置され、上昇蒸気チューブ620の上部の高度H1に配置されたコンデンサ625の出力を受けるように構成され得る。接続チューブ640は、コンデンサ625の出口をポンプ630の入口に流体接続し得る。上昇蒸気チューブ620は、その上限位置で、コンデンサ625の入口に接続し得る。
【0048】
図6に示す装置600はさらに、上昇蒸気チューブ620の底部に配置され、下降液体チューブ610の底部の深度D3に配置されたボイラ615の出力を受けるように構成されたタービン650をさらに含む。接続チューブ640は、ボイラ615の出口をタービン650の入口に流体接続し得る。下降液体チューブ610は、その下限位置で、ボイラ615の入口に接続し得る。このように、下降液体チューブ610、ボイラ615、上昇蒸気チューブ620、コンデンサ625、ポンプ630、タービン650、及び接続チューブ640は、密封された作動流体10がポンプ630の動作によりその中を流れる閉ループを形成し得る。
【0049】
図6に示すように、装置600は、たとえば、下降液体チューブ610及び上昇蒸気チューブ620を支持するシース694によって貫通された1つ以上のボアホールを介して、氷又は浮遊バージ30内に垂直に配置され得る。極地において典型的であるように、第1の深度D3の水は(たとえば、わずかに暖かい、塩分を含む水のより高い比重のため)第1の高度H1の空気よりも高い温度を有し得る。その結果、密封された作動流体10は、第1の高度H1における液相と第1の深度D3における気相との間で移行し得る。液相10aから気相10bへの移行はボイラ615によって支援され得、ボイラは、第1の深度D3における密封された作動流体10と水体20との間の熱伝達を促進するように公知の原理(たとえば、一連のチューブなど)に従って構成され得る。同様に、気相10bから液相10aへの移行はコンデンサ625によって支援され得、コンデンサは、第1の高度H1における密封された作動流体10と大気40との間の熱伝達を促進するように公知の原理(たとえば、一連のチューブなど)に従って構成され得る。タービン650の入口において、密封された作動流体10は、飽和蒸気となり得、その後、タービン650を通って膨張し、バッテリ660を充電するための電力を(たとえば、タービンシャフトの回転によって)生成し、次いで、ポンプ630に電力を供給する。バッテリ660はさらに、他のデバイスに電力を供給し得る。
図6に概略的に示すように、タービン650とバッテリ660との間の接続は、シース694のうちの1つを介して行われ得る。
【0050】
バッテリ660による他のデバイスの電力供給は、装置600に関連付けられた調査機器、通信機器又は保守機器などのローカルデバイスを含み得る。別の実施例として、バッテリ660による他のデバイスの電力供給は、装置600に一時的に結合する可動デバイス(たとえば、AUV)などの沖合の電力供給デバイスを含み得る。このように、装置600は、沖合の電力供給デバイスのための充電ステーションとして作用し得、バッテリ660に貯蔵された(又はタービン650が直接出力する)生成された電力は、AUV、調査プラットフォーム、又は他の電力使用デバイス内に設置された外部バッテリを断続的に充電するために使用され得る。
【0051】
装置600はさらに、それにより下降液体チューブ610及び上昇蒸気チューブ620内又は下降液体チューブ610もしくは上昇蒸気チューブ620内の作動流体10の量又は高度を制御し得る、作動流体リザーバ685を含み得る。作動流体リザーバ685は、作動流体10が(たとえば、ポンプ630の前に接続チューブ640においてバルブを介して)その中を流れる閉ループに接続され得る。バルブは、所定の規則に従って、(たとえば、保守要員によって)手動で、又はオンボード制御デバイス(たとえば、プロセッサ及びメモリ又はプログラマブルもしくは専用回路)によって自動で制御され得る。かかるオンボード制御デバイスは、バッテリ660によって電力供給され得る。
【0052】
密封された作動流体10がアンモニア(NH3)である場合の例示的な圧力及び温度を
図6に示す。
図6の数値で示す特定の実施例では、チューブがコンデンサ625内で冷たい極地の空気の自然対流に晒されるとき、アンモニアは、0.18MPa(1.75バール)で摂氏マイナス22度(-22℃)で凝縮する。作動流体10は、第1の高度H1で、たとえば、バッテリ660によって電力供給されるファンによって、強制対流によってさらに冷却され得る。(たとえば、直径1.27センチメートル(1/2インチ)の下降液体チューブ610及び直径2.54センチメートル(1インチ)の上昇蒸気チューブ620を使用して)約0.01キログラム/秒で流れるアンモニアの使用により、液体アンモニアがポンプ630によって約0.4MPa(4.0バール)まで汲み上げられ、摂氏約マイナス2度(-2℃)で海洋からの熱を使用してボイラ615内で沸騰させられ、その後、タービン650を介して0.18MPa(1.75バール)に膨張させられるとき、約958ワットの理想的なタービン電力が可能となる。実際のタービン効率及びポンプ効率を用いると、ほんの約10ワットの電動ポンプの電力及び海洋水からの多数キロワットの熱を使用することにより、約660ワットの電気を生成することが期待される。
【0053】
いくつかの実施形態では、水の凍結防止を助けるためにボイラ615(たとえば、ボイラフィン)で、(たとえば、バッテリ660によって電力が供給される)強制対流が採用され得る。このように、密封された作動流体は、強制対流によって第1の深度D3で加熱され得る。あるいは、又はさらに、第1の深度D3の下方の第2の深度D4からのより暖かい(たとえば、摂氏0度)の海洋水を、バッテリ660によって電力が供給される二次ポンプ(図示せず)を使用して、
図6に示すように、温水入力チューブ696及び冷水出力チューブ698によってボイラ615へ循環させ得る。あるいは、沸騰自体を氷の少し下方(たとえば、第2の深度D4)で行うことができる。このように、氷30直下の、そうでなければほとんど凍結する海水から熱が除去されるため、ボイラ615上に氷が形成されることを防止できる。
【0054】
図7は、様々な極地における海洋温度(及び塩度)と深度との関係を示す。
図7に示すような経験的データは、ボイラ615の最も効率的な配置又は冷水入力チューブ696及び冷水出力チューブ698の汲み上げ深度を決定するために使用することができる。
図7に示すように、約200メートルから約900メートルの間の深度の水は、水面に氷が存在するため、極地の水面近傍の水よりも暖かい可能性がある。したがって、たとえば、チューブ696,698は、約200メートルから900メートルの間の水を循環させ得、あるいは、ボイラ615及びタービン650は、約200メートルから900メートルの間の深度に配置され得る(チューブ696,698を省略する)。
【0055】
下降液体チューブ610及び上昇蒸気チューブ620は、加圧された作動流体を密封するのに適した任意の材料で作成され得る。温水入力チューブ696及び冷水出力チューブ698を追加的に使用する場合、又は下降液体チューブ610及び上昇蒸気チューブ620自体が上述のようにより深い第2の深度D4まで延在する場合、チューブは、好ましくは、第2の深度D4における水体20の圧力、及び水体内の第2の深度D4と第1の深度D3との間もしくは第2の深度D4と水体20の表面との間において変化する海流、のうちの少なくとも一方による座屈又はクリンピングを回避するのに十分な耐久性を有する。あるいは、又はさらに、チューブ610,620,696,698は、水体20内の変化する海流による圧力を緩和するように撓むことができ得る。この点については、チューブ610,620,696,698は、それらの長さに沿って、蛇腹、ジョイント、又は他の可撓性構成要素を含み得る。
【0056】
本明細書に示す詳細は、説明のみを目的とする例示のためのものであり、本開示の様々な実施形態の原理及び概念的な態様の最も有用で容易に理解されると信じるものを提供するために提示されるものではない。この点で、様々な実施形態の異なる特徴、それらがどのように実際に実施され得るかを当業者に明らかにする図面を参照した説明の基本的な理解のために必要とされる以上の詳細を示す試みは行わない。