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特許7066578有機電子デバイス及び有機電子デバイス用基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】有機電子デバイス及び有機電子デバイス用基板
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20220506BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220506BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
H05B33/02
H05B33/14 A
H01L31/04 132
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018165275
(22)【出願日】2018-09-04
(65)【公開番号】P2020038790
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100158540
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 博生
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100187768
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 賢一
(72)【発明者】
【氏名】慈幸 範洋
(72)【発明者】
【氏名】村田 陽子
(72)【発明者】
【氏名】水野 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】平野 康雄
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-122903(JP,A)
【文献】特開平09-330793(JP,A)
【文献】特開2016-225091(JP,A)
【文献】特開2014-208479(JP,A)
【文献】特開2012-204019(JP,A)
【文献】特開2016-193512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28
H01L 51/50-56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板及びこの基板の一方の面に積層される有機電子素子を備える有機電子デバイスであって、
上記基板が、金属層と、この金属層の少なくとも一方の面側に積層され、合成樹脂を主成分とする絶縁層とを有し、
上記絶縁層をフーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる吸収スペクトルの波数1730cm-1にあるピークに対する波数910cm-1にあるピークの面積比が0.003以上0.017以下である有機電子デバイス。
【請求項2】
上記合成樹脂が熱硬化性アクリル樹脂又は熱硬化性不飽和ポリエステルの硬化物を含む請求項1に記載の有機電子デバイス。
【請求項3】
上記絶縁層が熱硬化剤を用いて硬化された合成樹脂を含む請求項1又は請求項2に記載の有機電子デバイス。
【請求項4】
上記絶縁層が顔料を含有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の有機電子デバイス。
【請求項5】
上記顔料が無機顔料であり、顔料の平均粒径が300nm以下、絶縁層における顔料の含有量が50質量% 以下である請求項4に記載の有機電子デバイス。
【請求項6】
上記金属層が鉄、チタン、又はこれらの合金を主成分とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
【請求項7】
有機EL照明又は有機太陽電池に用いられる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
【請求項8】
金属層と、この金属層の少なくとも一方の面側に積層され、合成樹脂を主成分とする絶縁層とを有し、
上記絶縁層をフーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる吸収スペクトルの波数1730cm-1にあるピークに対する波数910cm-1にあるピークの面積比が0.003以上0.017以下である有機電子デバイス用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子デバイス及び有機電子デバイス用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体を利用した有機電子デバイスは、柔軟で薄型化でき、さらに省電力であるため有機EL(エレクトロルミネッセンス)照明や太陽電池等への応用が期待されている。有機EL照明は、少なくとも有機半導体を含む発光層が必要であり、さらに発光効率を高めるため電荷注入層や電荷輸送層等を備える。また、太陽電池は、電子供与体、電子受容体等を備える。
【0003】
ところで、有機半導体は電荷移動度が低いため、極薄い膜状で利用されることが多く、数十nmから数μmの厚さの層に形成されることが一般的である。そのため、有機半導体を積層する基板(下地材料)に凹凸があると素子短絡の原因になり、製造歩留りを低下させる。
【0004】
そこで、基板の異常突起を平坦化するため、ポリッシングを行ったガラス基板上に膜厚0.1μm~数十μmの樹脂塗膜を塗装する有機EL素子が提案されている(特開2000-21563号公報参照)。しかしながら、ガラス基板を用いた有機電子デバイスは、曲面への設置に適さず、用途が限定される。
【0005】
これに対し、可撓性を有する金属板又は金属箔を基材とし、有機系樹脂からなる膜厚1~40μm、表面粗さRa≦0.5μm、Rmax≦1.5μmの絶縁層を基材表面に形成する有機EL素子用絶縁基板が提案されている(特開2002-25763号公報参照)。しかしながら、本発明者らの検証によれば、有機EL素子形成前に絶縁層の表面粗さを制御しても、有機EL素子形成中に上記絶縁層の表面粗さが増大し、素子短絡が発生する場合があり、有機EL素子形成前の絶縁層の表面粗さを規定するのみでは基板の平坦性の担保が不十分であることがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-21563号公報
【文献】特開2002-25763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、素子短絡の発生を抑制することで製造歩留りに優れる有機電子デバイス及び有機電子デバイス用基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討したところ、絶縁層の主成分である合成樹脂に含まれる未硬化の炭素-炭素二重結合の割合が高い(硬化度が低い)場合、有機EL素子形成中に絶縁層の表面粗さが増大し、素子短絡が発生し易くなるとの結論に達した。そして、本発明者らは、絶縁層中の炭素-炭素二重結合の割合、つまり硬化度を特定する指標として、フーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる吸収スペクトルの波数1730cm-1にあるピークに対する波数910cm-1にあるピークの面積比が有効であることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するためになされた発明は、基板及びこの基板の一方の面に積層される有機電子素子を備える有機電子デバイスであって、上記基板が、金属層と、この金属層の少なくとも一方の面側に積層され、合成樹脂を主成分とする絶縁層とを有し、上記絶縁層をフーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる吸収スペクトルの波数1730cm-1にあるピークに対する波数910cm-1にあるピークの面積比が0.017以下である。
【0010】
当該有機電子デバイスは、基板の絶縁層のフーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる上記面積比を上記上限以下とするので、絶縁層の主成分である合成樹脂に含まれる未硬化の炭素-炭素二重結合の割合が低く、絶縁層が適度に硬化している。このため、有機EL素子形成中に絶縁層の表面粗さが増大することによる素子短絡が発生し難い。従って、当該有機電子デバイスは、製造歩留りに優れる。
【0011】
上記面積比としては、0.003以上が好ましい。このように上記面積比を0.003以上とすることで、絶縁層の可撓性を確保し易く、当該有機電子デバイスを容易に曲面へ設置できる。
【0012】
上記合成樹脂が熱硬化性アクリル樹脂又は熱硬化性不飽和ポリエステルの硬化物を含むとよい。このように上記合成樹脂に熱硬化性アクリル樹脂又は熱硬化性不飽和ポリエステルの硬化物を含めることで、有機EL素子形成中に絶縁層の表面粗さが増大することを抑止しつつ、絶縁層をより容易に形成できる。
【0013】
上記絶縁層が熱硬化剤を用いて硬化された合成樹脂を含むとよい。このように上記絶縁層に熱硬化剤を用いて硬化された合成樹脂を含めることで、絶縁層の硬化の制御性が高められ、上記面積比の制御がし易い。
【0014】
上記絶縁層が顔料を含有するとよい。このように上記絶縁層に顔料を含有させることで、樹脂の収縮の抑制等により表面の平坦化を促進できる。
【0015】
上記顔料が無機顔料であるとよく、顔料の平均粒径としては300nm以下が好ましく、絶縁層における顔料の含有量としては50質量%以下が好ましい。このように平均粒径が300nm以下の無機顔料を50質量%以下含有させることで、絶縁層表面への突起の発生を抑制できるので、表面の平坦化をより促進できる。
【0016】
上記金属層が鉄、チタン、又はこれらの合金を主成分とするとよい。このように金属層の主成分をこれらの金属とすることで、強度や耐性に優れる基材を容易かつ確実に形成できる。
【0017】
当該有機電子デバイスは、有機EL照明又は有機太陽電池に用いられるとよい。当該有機電子デバイスは、上述のように製造歩留りに優れるため、有機EL照明又は有機太陽電池に好適に用いることができる。
【0018】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、金属層と、この金属層の少なくとも一方の面側に積層され、合成樹脂を主成分とする絶縁層とを有し、上記絶縁層をフーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる吸収スペクトルの波数1730cm-1にあるピークに対する波数910cm-1にあるピークの面積比が0.017以下である有機電子デバイス用基板である。
【0019】
当該有機電子デバイス用基板は、絶縁層のフーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる上記面積比を上記上限以下とするので、絶縁層の主成分である合成樹脂に含まれる未硬化の炭素-炭素二重結合の割合が低い。このため、当該有機電子デバイス用基板に有機EL素子を形成する際に、絶縁層の表面粗さが増大することによる素子短絡が発生し難い。従って、当該有機電子デバイス用基板を用いた有機電子デバイスは、製造歩留りに優れる。
【0020】
ここで、「主成分」とは最も多く含有される成分であり、例えば50質量%以上含まれる成分をいう。また、フーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる吸収スペクトルの「ピーク」は、特定の原子間結合に起因するものであるが、絶縁層の種類等によりそのピークの波数シフトが生じる場合がある。このため、「波数1730cm-1にあるピーク」及び「波数910cm-1にあるピーク」には、それぞれ±10cm-1以内で波数シフトしたピークを含むものとする。
【0021】
また、「平均粒径」とは、一般的な粒度分布計によって粒子の粒度分布を測定し、その測定結果に基づいて算出される小粒径側からの体積積算値50%の粒度(D50)を意味する。かかる粒度分布は、粒子に光を当てることにより生じる回折や散乱の強度パターンによって測定することができ、この様な粒度分布計としては、例えば日機装社製の「マイクロトラック9220FRA」や「マイクロトラックHRA」等が例示される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の有機電子デバイス及び有機電子デバイス用基板は、基板に有機EL素子を形成する際の素子短絡の発生を抑制することで製造歩留りに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態の有機電子デバイスを示す模式的断面図である。
図2図1とは異なる本発明の一実施形態の有機電子デバイスを示す模式的断面図である。
図3図1及び図2とは異なる本発明の一実施形態の有機電子デバイスを示す模式的断面図である。
図4】フーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる吸収スペクトルの例を示すグラフである。
図5】光学顕微鏡により観察した実施例1の有機電子デバイス用基板表面の写真である。
図6】光学顕微鏡により観察した比較例1の有機電子デバイス用基板表面の写真である。
図7】ATFにより観察した実施例3の有機電子デバイス用基板表面の写真である。
図8】ATFにより観察した比較例1の有機電子デバイス用基板表面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の有機電子デバイス及び有機電子デバイス用基板の実施形態を詳説する。
【0025】
図1に示す有機電子デバイスは、基板1及びこの基板1の一方の面に積層される有機電子素子2を備える。
【0026】
<基板>
基板1は、本発明の一実施形態である有機電子デバイス用基板であって、金属層1aと、この金属層1aの少なくとも一方の面(有機電子素子積層面)側に積層される絶縁層1bとを有する。
【0027】
(金属層)
金属層1aは、金属を主成分とする層であり、この金属としては、鉄、チタン、又はこれらの合金が用いられる。具体的には、金属層1aとしては、冷延鋼板、溶融純亜鉛めっき鋼板(GI)、合金化溶融Zn-Feめっき鋼板(GA)、合金化溶融Zn-5%Alめっき鋼板(GF)、電気純亜鉛めっき鋼板(EG)、電気Zn-Niめっき鋼板、チタン板、ガルバリウム鋼板(登録商標)等の金属板を使用できる。
【0028】
上記金属板としては、ノンクロメート処理をしたものが好ましいが、クロメート処理をしたもの又は無処理のものも使用可能である。
【0029】
図2に示すように、金属層1aの有機電子素子積層面側、つまり金属層1aと絶縁層1bとの間にリン酸系化成処理により形成された反応層1cが積層されていてもよい。特に亜鉛めっき系の金属板の場合、コロイダルシリカとリン酸アルミニウム塩化合物とを含む酸性水溶液によって化成処理を施して形成された反応層1cが好ましい。コロイダルシリカとリン酸アルミニウム塩化合物とを含む酸性水性液を化成処理液として使用すると、酸性水性液によって亜鉛系めっき層の表面がエッチングされる。これと同時に、亜鉛系めっき層の表面にリン酸アルミニウムの中でも難溶性の(水又はアルカリ性水溶液に溶け難い)AlPOやAl(HPO主体の反応層1cが形成される。この反応層1cにシリカ微粒子が沈着して取り込まれることでリン酸アルミニウムとシリカ微粒子とが複合一体化する。また、エッチングにより粗面化された亜鉛系めっき層との間で緻密な反応層1cが形成され、この反応層1cの上に形成される絶縁層1bとの結合も緻密で強固なものとなる。また、上記酸性水溶液にポリアクリル酸等の水溶性樹脂を含有させておくと、得られる反応層1c中のシリカ微粒子の沈着状態を一層強固なものとすることができる。
【0030】
また、図3に示すように金属層1aの両面に防錆層1dを設けてもよい。このように防錆層1dを設けることで、基板1の耐久性が向上し、長期間の利用が可能になる。防錆層1dを金属層1aの有機電子素子積層面側に設ける場合、反応層1cはこの防錆層1dの有機電子素子積層面側に積層される。なお、防錆層1dは金属層1aの片面、特に有機電子素子積層面側のみに積層してもよい。
【0031】
金属層1aの平均厚さは特に限定されないが、0.3mm以上2.0mm以下とすることができる。
【0032】
(絶縁層)
絶縁層1bは、絶縁性を有する層であり、合成樹脂を主成分とする。この絶縁層1bは熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂等の硬化物や熱可塑性樹脂とできる。なお、上記熱可塑性樹脂は架橋されていてもよい。
【0033】
これらの中でも熱硬化性樹脂の硬化物が好ましい。このように絶縁層1bの主成分を熱硬化性樹脂の硬化物とすることで、絶縁層1b形成時の硬化の制御性が高められ、絶縁層1bをより容易に形成できる。上記熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル樹脂、ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等を挙げることができるが、絶縁層1bの合成樹脂としては熱硬化性アクリル樹脂及び熱硬化性不飽和ポリエステルの硬化物を含むことが好ましい。このように絶縁層1bの合成樹脂に熱硬化性アクリル樹脂又は熱硬化性不飽和ポリエステルの硬化物を含めることで、有機EL素子形成中に絶縁層1bの表面粗さが増大することを抑止しつつ、絶縁層1bをより容易に形成できる。
【0034】
上記熱硬化性アクリル樹脂は、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合反応によって得られるものである。上記熱硬化性アクリル樹脂の原料としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸エチルへキシル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等が挙げられる。また、上記熱硬化性アクリル樹脂としては、種々の市販品を好適に用いることができ、例えば久保孝ペイント株式会社製の4timesレベルコート等を挙げることができる。
【0035】
上記熱硬化性不飽和ポリエステルは、二塩基酸等の多塩基酸と多価アルコール類との縮合反応によって得られるものである。上記熱硬化性不飽和ポリエステルの原料として用いられる多塩基酸としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸等のα,β-不飽和二塩基酸等が挙げられる。上記熱硬化性不飽和ポリエステルの原料として用いられる多価アルコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のエチレングリコール類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類等が挙げられる。また、上記熱硬化性不飽和ポリエステルとしては、種々の市販品を好適に用いることができ、例えば例えばバイロン(登録商標)23CS、バイロン(登録商標)29CS、バイロン(登録商標)29XS、バイロン(登録商標)20SS、バイロン(登録商標)29SS(以上、東洋紡社製)等を挙げることができる。
【0036】
絶縁層1bにおける合成樹脂の含有量の下限としては、50.0質量%が好ましく、60.0質量%がより好ましい。一方、合成樹脂の含有量の上限としては80.0質量%が好ましく、56.3質量%がより好ましい。このような合成樹脂の含有量とすることで、基板1に好適な絶縁層1bを形成できる。なお、合成樹脂の含有量は、絶縁層1b中の固形分(合成樹脂、熱硬化剤、顔料等)の合計質量に対する合成樹脂の含有量の比率を指す。後述の熱硬化剤等の含有量も同様である。
【0037】
絶縁層1bは、熱硬化剤を含有させて硬化させることが好ましい。つまり、絶縁層1bは熱硬化剤を用いて硬化された合成樹脂を含むことが好ましい。絶縁層1bは有機溶媒には溶解しないものとされるが、成形時に用いる溶媒が層内に浸入して膨潤等の変質が生じるおそれがある。これを抑制するため、所定量の熱硬化剤を含有させることによって、絶縁層1bの硬化度(架橋密度)を高めることが有効となる。また、熱硬化剤により硬化度が制御し易くなるため、後述するフーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる吸収スペクトルの波数1730cm-1にあるピークに対する波数910cm-1にあるピークの面積比の制御がし易い。
【0038】
上記熱硬化剤としては、特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂との相溶性がよく、熱硬化性樹脂を架橋させることができ、さらに液安定性のよいものが好ましい。
【0039】
硬化前の絶縁層1bにおける熱硬化剤の含有量の下限としては、10.0質量%が好ましく、20.0質量%がより好ましい。一方、熱硬化剤の含有量の上限としては、50.0質量%が好ましい。このような熱硬化剤の含有量とすることで、絶縁層1bを容易かつ確実に形成できる。
【0040】
硬化前の絶縁層1bにおける合成樹脂に対する熱硬化剤の質量比の下限としては、0.3が好ましく、0.4がより好ましく、0.65がさらに好ましい。一方、上記質量比の上限としては、1.0が好ましい。上記質量比が上記下限未満であると、熱硬化剤の効果を十分に得られないおそれがある。逆に、上記質量比が上記上限を超えると、硬化が急激に起こり絶縁層1bにヒビや割れが発生するおそれや、熱硬化剤が過剰となり製造コストが上昇するおそれがある。
【0041】
また、絶縁層1bは顔料を含有することが好ましい。合成樹脂を主成分とする絶縁層1bでは、硬化時に体積収縮が生じたり溶剤揮発ガス成分の影響で表面形状が大きくうねったり、凹凸ができたりする場合がある。そこで、顔料を絶縁層1bに含有させることで、合成樹脂の収縮の抑制や溶剤ガス脱離を促進することができるため表面形状を平坦化することができる。一方で、顔料の含有により、表面粗さが大きくなって表面に突起が多く形成され得る。この突起の形成を抑制するため、添加する顔料の種類、粒径、含有量を調整するとよい。
【0042】
上記顔料としては、有機顔料及び無機顔料が挙げられるが、本発明における顔料添加の目的は表面形状の制御であるため、無機顔料を用いることが好ましい。上記無機顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、リトポン、鉛白等の白色顔料、カーボンブラック、鉄黒等の黒色顔料などを挙げることができる。
【0043】
上記顔料の平均粒径としては、100nm以上300nm以下が好ましい。また、絶縁層1bにおける上記顔料の含有量としては、30質量%以上50質量%以下が好ましい。上記顔料の平均粒径が上記下限未満である場合、又は上記顔料の含有量が上記下限未満である場合、顔料添加による絶縁層1bの表面の平坦化効果が不十分となるおそれがある。逆に、上記顔料の平均粒径が上記上限を超える場合、又は上記顔料の含有量が上記上限を超える場合、顔料の含有に起因して絶縁層1bの面粗さが大きくなるおそれがある。
【0044】
上記顔料としては、上述した好ましい平均粒径を満足すれば、市販品を使用しても良く、例えばテイカ社製のJR-806(平均粒径250nm)、石原産業社製のタイペーク(登録商標)CR-50(平均粒径250nm)、R930(平均粒径250nm)等が挙げられる。
【0045】
なお、顔料の偏析を抑制するために、絶縁層1bには顔料分散剤を含有させてもよい。好適な顔料分散剤は、水溶性アクリル樹脂、水溶性スチレンアクリル樹脂、ノニオン系界面活性剤、又はこれらの組合せである。
【0046】
絶縁層1bの平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、絶縁層1bの平均厚さの上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましい。絶縁層1bの平均厚さが上記下限未満であると、基板1の絶縁性が不十分となるおそれがある。逆に、絶縁層1bの平均厚さが上記上限を超えると、基板1の可撓性が不十分となるおそれがある。
【0047】
絶縁層1bの抵抗率としては、1010Ωcm以上が好ましい。なお、「抵抗率」とは、JIS-K-7194(1994年)に準拠して測定される値である。
【0048】
(ピーク面積比)
当該有機電子デバイスでは、電子デバイス用基板1の絶縁層1bのフーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる吸収スペクトルの波数1730cm-1にあるピークに対する波数910cm-1にあるピークの面積比(以下、単に「ピーク面積比」ともいう)を所定値以下とする。
【0049】
ここで、「ピークの面積」とは、図4に示すように、例えば吸収スペクトルの波数1730cm-1にあるピークを例に説明すると、フーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる吸収スペクトルの波数1730cm-1にあるピークを形成する波形と、ベースラインBとにより囲まれる斜線部の面積をいう。
【0050】
上述のピークのうち、波数910cm-1にあるピークは、合成樹脂の化学構造において、枝別れのないオレフィンCH基の面外変角振動に由来し、このピークの面積は、絶縁層1bの構成成分のうち、硬化反応に関与する未硬化の炭素-炭素二重結合の総量に相当する。一方、波数1730cm-1にあるピークは、エステル結合(CとOとの二重結合)の伸縮振動に由来し、硬化反応の進行に対して不変である。つまり、波数1730cm-1にあるピークの面積は、絶縁層1bの総量に相当する。従って、上記面積ピーク比は、絶縁層1bにおける合成樹脂の硬化度を示す指標として機能し、小さいほど硬化が進行していることを意味する。
【0051】
上記ピークの面積比の上限としては、0.017であり、0.010がより好ましい。一方、上記ピークの面積比の下限としては、0.003が好ましく、0.005がより好ましい。上記ピークの面積比が上記上限を超えると、合成樹脂の硬化が不十分であるため、有機電子素子2の形成中に変形が発生し、絶縁層1bの表面粗さが増大するおそれがある。逆に、上記ピークの面積比が上記下限未満であると、合成樹脂の硬化が進み過ぎるため基板1の可撓性が低下するおそれや、合成樹脂が過度に収縮するため絶縁層1bに割れが発生するおそれがある。
【0052】
<有機電子素子>
有機電子素子2としては、例えば有機EL素子、太陽電池素子、液晶表示素子、薄膜トランジスタ、タッチパネル素子、電子ペーパー素子等が挙げられる。
【0053】
上記有機EL素子としては、例えば陽極と有機発光層と陰極とがこの順で積層されたものが挙げられる。上記有機EL素子は、これ以外の電子注入層、電子輸送層、ホール輸送層等が適時積層されてもよい。上記有機EL素子を構成する要素は、公知のものを用いることができる。上記陽極としては、例えば酸化インジウムスズ(ITO)を用いた透明電極を用いることができる。上記陰極としては、例えば金属や、酸化インジウム亜鉛(IZO)を用いた電極を用いることができる。上記有機発光層の主成分としては、ナフチル置換ジアミン誘導体(α-NPD)を用いることができる。
【0054】
有機電子素子2として上述のような有機EL素子を用いることで、当該有機電子デバイスは有機EL照明に好適に用いることができる。
【0055】
また、有機電子素子2として、例えば陽極、電子供与体、電子受容体、陰極がこの順に積層された太陽電池素子を用いることで、当該有機電子デバイスは有機太陽電池に好適に用いることができる。
【0056】
<製造方法>
当該有機電子デバイスは、例えば基板1を用意する工程と、基板1の一方の面に有機電子素子2を積層する工程とを備える製造方法により得ることができる。
【0057】
(基板用意工程)
本工程では、金属層1aの有機電子素子積層面側への絶縁層形成用組成物の塗布及び加熱により、絶縁層1bを積層し、基板1を形成する。この絶縁層形成用組成物は液状であることが好ましい。つまり、絶縁層形成用組成物は溶媒を含むことが好ましい。
【0058】
絶縁層形成用組成物に用いる溶媒は、絶縁層形成用組成物が含有すべき各成分を溶解又は分散させ得るものであれば、特に制限はない。上記溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、ベンゼン、キシレン、ソルベッソ(登録商標)100(エクソンモービル社製)、ソルベッソ(登録商標)150(エクソンモービル社製)等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などが挙げられる。絶縁層形成用組成物は、こういった溶媒を用いて固形分を調整することができる。
【0059】
絶縁層形成用組成物の固形分濃度の下限としては、20質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。一方、絶縁層形成用組成物の固形分濃度の上限としては、80質量%が好ましく、70質量%がより好ましい。固形分濃度が上記下限未満である、すなわち溶媒が多過ぎると、加熱時に溶媒が大量に蒸発し、その結果、金属層1aの表面近傍において気化した溶媒による対流が発生し易くなり、絶縁層1bの表面の平滑性が損なわれるおそれがある。逆に、固形分濃度が上記上限を超えると、絶縁層形成用組成物の塗布が困難になるおそれがある。
【0060】
絶縁層形成用組成物の塗布及び加熱(乾燥並びに焼付)方法は、特に制限されず、既知の方法を適宜採用することができる。上記塗布方法としては、例えばバーコーター法、ロールコーター法、カーテンフローコーター法、スプレー法、スプレーリンガー法等を挙げることができ、これらの中でも、コスト等の観点からバーコーター法、ロールコーター法、及びスプレーリンガー法が好ましい。
【0061】
絶縁層形成用組成物の加熱温度の下限としては、200℃が好ましく、210℃がより好ましい。一方、加熱温度の上限としては、250℃が好ましく、240℃がより好ましい。加熱温度が上記下限未満であると、絶縁層1bの強度が不十分となるおそれがある。逆に、加熱温度が上記上限を超えると、溶媒が激しく蒸発し、その結果絶縁層1bの表面の平滑性が損なわれるおそれがある。なお、加熱温度とは、到達板温(Peak Metal Temperature:PMT)を指す。
【0062】
絶縁層形成用組成物の加熱時間の下限としては、3.0分間が好ましく、3.5分間がより好ましく、4.0分間がさらに好ましい。一方、絶縁層形成用組成物の加熱時間の上限としては、20分間が好ましく、15分間がより好ましく、10分間がさらに好ましい。絶縁層形成用組成物の加熱時間が上記下限未満であると、合成樹脂の硬化が不十分となり易く、有機電子素子2の形成中に変形が発生し、絶縁層1bの表面粗さが増大するおそれがある。逆に、絶縁層形成用組成物の加熱時間が上記上限を超えると、合成樹脂の硬化が進み過ぎるため基板1の可撓性が低下するおそれや、合成樹脂が過度に収縮するため絶縁層1bに割れが発生するおそれがある。なお、絶縁層形成用組成物を塗布して加熱した後、いったん室温まで戻った基板1を再度加熱することで合成樹脂の硬化を進めてもよい。この場合、絶縁層形成用組成物の加熱時間とは、絶縁層形成用組成物の塗布時の加熱時間も含めた総加熱時間を指す。
【0063】
合成樹脂の硬化度は、主に絶縁層形成用組成物の加熱温度及び加熱時間により決まる。従って、絶縁層形成用組成物の加熱温度及び加熱時間は、ピーク面積比が0.017以下となるように決定される。
【0064】
なお、上述のように、金属層1aに絶縁層形成用組成物を塗付する前に、反応層1cを形成してもよい。また、金属層1aの表面に防錆層1dを設けてもよい。
【0065】
また、平坦性を高めるため、基板1の有機電子素子積層面(絶縁層1bの表面)に研磨処理を施しても良い。研磨法としては、化学研磨(CMP)、電解研磨、機械研磨等が挙げられる。これらの中でも、微細な凹凸を除去する観点から、研磨剤に例えばシリカ、アルミナ、セリア、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア等を用いた化学電解研磨法が好ましい。
【0066】
(有機電子素子積層工程)
本工程では、基板1の有機電子素子積層面に有機電子素子2を積層する。この積層方法としては、従来公知の方法を使用することができる。
【0067】
<利点>
当該有機電子デバイス及び当該電子デバイス用基板は、基板1の絶縁層1bのフーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる吸収スペクトルの波数1730cm-1にあるピークに対する波数910cm-1にあるピークの面積比を0.017以下とするので、絶縁層1bの主成分である合成樹脂に含まれる未硬化の炭素-炭素二重結合の割合が低く、絶縁層1bが適度に硬化している。このため、有機EL素子形成中に絶縁層1bの表面粗さが増大することによる素子短絡が発生し難い。従って、当該電子デバイス用基板を用いた当該有機電子デバイスは、製造歩留りに優れる。
【実施例
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
金属層として、板厚0.8mm、金属板両面における各面当たりの亜鉛めっき付着量が20g/mの電気亜鉛めっき金属板(EG)を用意した。この金属板の一方の面に、熱硬化性アクリル樹脂塗料(久保孝ペイント株式会社製の4timesレベルコート、標準タイプ/クリア)をスプレー塗布し、到達板温(PMT)が220℃となるように2分間加熱し、平均厚さが15μmの絶縁層を形成し、基板を得た。
【0070】
後硬化として、上記基板をさらに240℃の大気中で1.5分間の条件で加熱し、絶縁層の硬化を施した。従って、総加熱時間は3.5分間である。
【0071】
次に、上記基板に対し化学機械研磨行うことによって、絶縁層の表面を平滑にした。具体的には、研磨装置の基板取り付け用吸着パッドを貼り付けたホルダーに基板をセットし、絶縁層を下側にして研磨装置の定盤に取り付けた研磨パッドの上にセットした。研磨剤として粒状のアルミナ(平均粒径は約100nm)を用い、圧力65g/cm、1周当たりの回転距離を1m、基板と定盤との各回転速度を50rpmとし、10分間化学機械研磨を行った。なお、研磨深さは、研磨量換算で6μmとした。
【0072】
このようにして実施例1の有機電子デバイス用基板を得た。
【0073】
(実施例2)
後硬化の条件を230℃の大気中で3分間とした以外は実施例1と同様にして実施例2の有機電子デバイス用基板を得た。
【0074】
(実施例3)
後硬化の条件を220℃の大気中で6分間とした以外は実施例1と同様にして実施例3の有機電子デバイス用基板を得た。
【0075】
(比較例1)
後硬化を行わなかった以外は実施例1と同様にして比較例1の有機電子デバイス用基板を得た。
【0076】
<ピーク面積比>
実施例1~実施例3及び比較例1の有機電子デバイス用基板に対し、フーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる吸収スペクトルの波数1730cm-1にあるピークに対する波数910cm-1にあるピークの面積比を求めた。
【0077】
フーリエ変換赤外線吸収分光光度計としては、Varian社製の3100FT-IR/600UMAマイクロスコープ赤外顕微鏡システムを用い、顕微ATRモード、分解能4cm-1で測定した。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1で、参考例1は、使用した熱硬化性アクリル樹脂塗料を測定した結果である。
【0080】
<評価>
実施例1~実施例3及び比較例1の有機電子デバイス用基板上にスパッタリング法によりITO膜(平均膜厚200nm)を成膜し、表面の観察を行った。
【0081】
ITO膜の成膜は、株式会社島津製作所製のHSM-542を用い、利用ターゲットをITOターゲットとして行った。スパッタリング時の導入ガスは、Arガス20sccm及びOガス0.5sccmの混合ガスとし、ガス圧1.34mTorr(0.179Pa)、成膜パワー150Wとした。
【0082】
ITO膜を成膜した有機電子デバイス用基板の表面を光学顕微鏡により倍率10倍で観察した。その結果、実施例1~実施例3の有機電子デバイス用基板では、表面に皺が観測されず平坦であった。光学顕微鏡により観察された実施例1の有機電子デバイス用基板の表面の写真を図5に示す。一方、比較例1の有機電子デバイス用基板では、図6に示すように表面に皺が観測された。
【0083】
また、実施例3及び比較例1の有機電子デバイス用基板の表面をAFM(原子間力顕微鏡)を用いて観察し、表面粗さを算出した。なお、測定は1辺100μmの正方形に対して行った。AFMにより観察された実施例3の有機電子デバイス用基板の表面の写真及び比較例1の有機電子デバイス用基板の表面の写真を、それぞれ図7及び図8に示す。実施例3の表面粗さは3.4nmであり、比較例1の表面粗さは121nmであった。
【0084】
以上の結果から、フーリエ変換赤外線吸収分光光度計で測定して得られる吸収スペクトルのピーク面積比が0.017以下である実施例1~実施例3は、ITO膜形成後においても絶縁層の表面粗さが低い。これに対し、比較例1ではピーク面積比が0.017超であるため、ITO膜形成中に、絶縁層の表面粗さが増大したと考えられる。従って、ピーク面積比を0.017以下とすることで、有機EL素子形成中に絶縁層の表面粗さが増大することによる素子短絡を抑制できると言える。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明の有機電子デバイス及び有機電子デバイス用基板は、基板に有機EL素子を形成する際の素子短絡の発生を抑制することで製造歩留りに優れるため、種々の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 基板
1a 金属層
1b 絶縁層
1c 反応層
1d 防錆層
2 有機電子素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8