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特許7067874着用可能なステップカウンタシステムとその製造方法、及び使用者の歩行数を検出する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】着用可能なステップカウンタシステムとその製造方法、及び使用者の歩行数を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   G06M 3/00 20060101AFI20220509BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20220509BHJP
   A61B 5/25 20210101ALI20220509BHJP
   A61B 5/263 20210101ALI20220509BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G06M3/00 L
G01B7/00 101C
A61B5/25
A61B5/263
A41D13/00 102
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017089420
(22)【出願日】2017-04-28
(65)【公開番号】P2017211985
(43)【公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-01-14
(31)【優先権主張番号】16167598.8
(32)【優先日】2016-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】オズギュル シバノグル
(72)【発明者】
【氏名】フェヒム チャグラル
(72)【発明者】
【氏名】アリ ケマル アグルマン
(72)【発明者】
【氏名】イトカ イルマズ
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-509635(JP,A)
【文献】特表2013-534833(JP,A)
【文献】国際公開第2016/025554(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/053624(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02591717(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0177059(US,A1)
【文献】Marian Haescher, Denys J.C. Matthies, Gerald Bieber, Bodo Urban,CapWalk: A Capacitive Recognition of Walking-Based Activities as a Wearable Assistive Technology,Proceedings of the 8th ACM International Conference on PErvasive Technologies Related to Assistive Environments,2015年,DOI:10.1145/2769493.2769500
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06M 1/00- 3/14
G01B 7/00- 7/34
A41D 13/00-13/12
A61B 5/25, 5/263
G01L 1/00- 1/26
G01L 5/00- 5/28
G06F 3/03
G06F 3/041- 3/047
D03D 1/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の両脚用の衣服(10)、容量電極(3)、及びマイクロコントローラ(1)を備える着用可能なステップカウンタシステム(100)であって、
前記衣服(10)は、第1の脚部(11a)、第2の脚部(11b)、及び編織布部分(12)を含んでおり、
前記編織布部分(12)は、非絶縁性導電性ヤーン(23)と絶縁性編織用ヤーン(24)とに織り込まれた導電性ヤーン(22)を含んでおり、
前記導電性ヤーン(22)と、電気的接地グリッドとして機能する前記非絶縁性導電性ヤーン(23)とにより、1つの前記容量電極(3)が形成されており、
前記編織布部分(12)は、前記第1の脚部の一部として形成され、前記容量電極(3)と前記衣服の第2の脚部(11b)の寄生容量との間に寄生容量結合を提供するように構成され、
前記マイクロコントローラ(1)は、前記容量電極(3)に電気的に接続されて、前記寄生容量結合を評価するようになっており、もって前記衣服の第1の脚部と前記第2の脚部の間の相対運動を前記マイクロコントローラ(1)で検出するように構成されている着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項2】
前記マイクロコントローラ(1)は、前記容量電極(3)の容量値(C)を検出することによって、前記寄生容量結合を評価するように構成されている、請求項1に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項3】
前記マイクロコントローラ(1)は、前記寄生容量結合に基づいて、前記第1の脚部(11a)と前記第2の脚部(11b)の間の距離(D)、及び/又は前記第2の脚部(11b)と前記容量電極(3)の横断面の重なり部(O)を評価するように構成されている、請求項1又は2に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項4】
前記編織布部分(12)は、前記衣服(10)の縫い目に沿って配置されており、
前記マイクロコントローラ(1)は、前記衣服(10)の縫い目に沿って伸びる接続ケーブル(2)によって前記容量電極(3)に電気的に接続されている、請求項1又は2に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項5】
前記マイクロコントローラ(1)は、前記容量電極(3)の前記容量値(C)を、時間の関数として評価するように構成されている、請求項に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項6】
前記容量電極(3)は、前記衣服(10)の前記第1の脚部の全長に沿って配設されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項7】
前記マイクロコントローラ(1)は、前記衣服(10)の全長に沿った複数の場所で、前記寄生容量結合に関連する寄生容量の値を検出する、請求項1に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項8】
前記導電性ヤーン(22)は、導電性コア(25)及び電気絶縁性外表面(27)を含んでいる、請求項に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項9】
前記導電性コア(25)は、鋼、銅、銀、及び導電性ポリマーの少なくとも1つから製造されている、請求項に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項10】
前記電気絶縁性外表面(27)は、コットン、ポリエステル、ポリウレタン及びポリプロピレンから選択された材料から製造されている、請求項に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項11】
前記導電性ヤーン(22)、前記絶縁性編織用ヤーン(24)、及び前記非絶縁性導電性ヤーン(23)のセットは、単一の紡織層を形成している、請求項1に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)
【請求項12】
前記導電性ヤーン(22)及び前記絶縁性編織用ヤーン(24)は、第1の編織布層(120)を形成しており、前記非絶縁性導電性ヤーン(23)のセットは、前記第1の編織布層(120)に重なる第2の編織布層(130)を形成している、請求項1に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)
【請求項13】
前記非絶縁性導電性ヤーン(23)は、鋼、コットンの周りに巻かれた鋼、又は鋼-コットンの混合物から製造される、請求項に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項14】
前記編織布部分(12)は、前記衣服の第1の脚部(11a)用の第1の編織布部分(12a)、及び前記衣服の第2の脚部(11b)用の第2の編織布部分(12b)を含んでおり、
前記システム(100)は、第1の容量電極(3a)及び第2の容量電極(3b)とを含んでおり、
前記第1の容量電極(3a)の前記導電性ヤーン(22)は、前記第1の編織布部分(12a)の中に織り込まれており、前記第2の容量電極(3b)の前記導電性ヤーン(22)は、前記第2の編織布部分(12b)の中に織り込まれており、
前記マイクロコントローラ(1)は、前記第1の容量電極(3a)及び前記第2の容量電極(3b)に電気的に接続されて、夫々の前記寄生容量結合を評価するようになっている、請求項に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項15】
前記衣服の第2の脚部(11b)の少なくとも一部を形成している整合電極(4)を含んでおり、前記整合電極(4)は、接地された第2の導電性ヤーン(40)を含んでおり、
前記第2の導電性ヤーン(40)は、導電性コア(25)及び電気絶縁性外表面(27)を含んでいる、請求項に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項16】
前記整合電極(4)は、前記衣服(10)の全長に沿って配設されている、請求項15に記載の着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項17】
着用者の両脚用の衣服(10)、容量電極(3)、及びマイクロコントローラ(1)を備える着用可能なステップカウンタシステム(100)であって、
前記衣服(10)は、第1の脚部(11a)、第2の脚部(11b)、及び編織布部分(12)を含んでおり、
前記編織布部分(12)は、非絶縁性導電性ヤーン(23)と絶縁性編織用ヤーン(24)とに織り込まれた導電性ヤーン(22)を含んでおり、
前記編織布部分(12)は、前記第1の脚部の一部として形成され、前記導電性ヤーン(22)は接地されており、
前記編織布部分(12)の上には、前記マイクロコントローラ(1)に電気的に接続されている導電性コーティング(50)が配置されており、前記導電性コーティング(50)は、導電性不純物が分散されている軟質(コ)ポリマーマトリックスを含んでおり、
前記導電性コーティング(50)と前記導電性ヤーン(22)とにより1つの前記容量電極(3)が形成されており、前記容量電極(3)と前記衣服の第2の脚部(11b)の寄生容量との間に寄生容量結合を提供するように構成され、
前記マイクロコントローラ(1)は、前記衣服の第1の脚部と前記第2の脚部の間の相対運動を前記マイクロコントローラ(1)で検出するように構成されている着用可能なステップカウンタシステム(100)。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の着用可能なステップカウンタシステムにより、使用者の歩行数を検出する方法であって、
前記使用者に、前記第1の脚部(11a)及び前記第2の脚部(11b)を有する前記両脚用の衣服(10)を供給するステップと、
前記マイクロコントローラにより、前記容量電極と前記衣服(10)の前記第2の脚部(11b)との間の前記寄生容量結合を検出するステップと、
前記寄生容量結合の検出結果に基づいて、前記使用者の歩行数を検出するステップとを含む、使用者の歩行数を検出する方法。
【請求項19】
前記寄生容量結合は、前記第2の脚部に沿った複数の位置で検出される、請求項18に記載の使用者の歩行数を検出する方法。
【請求項20】
前記マイクロコントローラにより、前記寄生容量結合を、前記第1の脚部(11a)の前記容量電極(3)と前記第2の脚部(11b)中に配置された前記使用者の脚の間の距離(D)に変換するステップさらに含む、請求項18又は19に記載の使用者の歩行数を検出する方法。
【請求項21】
前記寄生容量結合を検出するステップは、ある時間に亘って少なくとも周期的に検出することを含み、かつ、前記検出に基づいて、前記使用者の歩行数を計算することを更に含む、請求項18~20のいずれか1項に記載の衣服の使用者の歩行数を検出する方法。
【請求項22】
請求項1に記載の着用可能なステップカウンタシステムを製造する方法であって、
前記第1の脚部(11a)及び前記第2の脚部(11b)を有する着用者の両脚用の衣服(10)を供給するステップと
前記第1の脚部(11a)の前記編織布部分(12)の中に前記導電性ヤーン(22)を織り込んで、前記容量電極(3)を供給するステップと
-前記容量電極(3)に電気的に接続された前記マイクロコントローラ(1)を供給し、前記容量電極(3)と前記衣服の第2の脚部(11bとの間の前記寄生容量結合を評価して、前記着用者の両脚の間の相対運動を前記マイクロコントローラ(1)で検出するように構成するステップとを含む着用可能なステップカウンタシステムの製造方法。
【請求項23】
前記導電性ヤーンは、織布の製造時に前記編織布部分の前記非絶縁性導電性ヤーンと前記絶縁性編織用ヤーンに織り込まれるステップを含んでいる、請求項22に記載の着用可能なステップカウンタシステムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の身体活動を測定する分野に関する。特に本発明は、着用可能なステップカウンタシステム、使用者の歩行数を検出する方法、及び着用可能なステップカウンタシステムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステップカウンタは、通常、使用者の歩行を計数して、例えば、身体活動中に、使用者が歩行した距離を計測するのに使用される。ステップカウンタは、主として、使用者のベルト、腕、又は手首に装着した嵩張った加速度計によって、使用者の運動を検出するものである。これにより、身体のこれらの部位が、歩行又は走行運動している旨が判断される。従来のステップカウンタは、或る状況、例えば使用者が車を運転している場合、又は、使用者が何らかの身体的運動を行なうことなく、加速を行なわざるを得ない場合に、間違った歩行数をカウントしてしまうという問題がある。
【0003】
この問題を解消するために、ステップカウンタシステムには、使用者の脚に筋電図検査(EMG)センサを取り付け、脚の筋肉の活動を検出するようにしたものがある。この場合、使用者の歩行数を、使用者の加速度とは無関係に検出することができる。他の解決策として、使用者の靴の底に取り付けた歪み計により、使用者の体重(質量)を検出するものがある。
【0004】
然しながら、これらの解決策には、幾つかの欠点がある。EMGセンサは、それぞれの脚毎に、少なくとも3個の電極を必要とし、電極を使用者の皮膚と接触させなければならないので、使用者が着用すると不快感を感じる。歪み計の場合、適切に歪み計を機能させるには、複雑な材料が必要である。更に、使用者の足の下に配置すると、信号を捕捉するのが極めて難しくなる。いずれのやり方にしても、高価で、かつ使用者が日常実施するには不快感を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願第15179147.2号(対応日本出願、特表2018-520813)
【文献】欧州特許出願第15193723.2号(対応日本出願、特表2018-534445)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする課題は、上述した従来技術の欠点を解消し、身体的快適さ、及びスタイリッシュな外観を失うことなく、使用者が行っている歩行数を、信頼性のある方法で、かつ正確に検出することができるステップカウンタシステム、及び前記歩行数を検出する方法を提供することである。
【0007】
発明が解決しようとする更なる課題は、身体的快適さ、及びスタイリッシュな外観を失うこと無く、ステップカウンタを容易に衣服に取り付けることができる着用可能なステップカウンタシステムを製造する方法を提供することである。
【0008】
発明が解決しようとする更に別の課題は、多種多様な歩行、又は走行スタイルを検出することが出来る着用可能なステップカウンタシステムを提供することである。多くの態様において、着用可能なステップカウンタは、衣服の生地の一部を構成しており、例えば導電性ヤーンが、編織布部分に織り込まれるか、又は編み込まれて、衣服の一部を形成している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの課題及び目的は、請求項1に記載の着用可能なステップカウンタシステム、請求項18に記載の使用者の歩行数を検出する方法、及び請求項22に記載の着用可能なステップカウンタシステムを製造する方法によって達成される。本発明の好ましい態様は、従属請求項に記載されている。
【0010】
特に、本発明による着用可能なステップカウンタシステムは、着用者の脚用衣服、容量電極、及びマイクロコントローラを備えている。
【0011】
用語「着用者の脚用衣服」は、パンツ、スポーツパンツ、ショーツ、ソックス、タイツ、レッグウオ-マ等のように、使用者の片方又は両方の脚を少なくとも部分的に覆う衣服類を意味する。
【0012】
様々な態様において、本発明の衣服は、編織布部分、及び編織布部分に織り込まれるか、又は編み込まれている導電性ヤーンを含んでいる容量電極を備えている。編織布部分は衣服に取り付けられて、容量電極と着用者の脚の間で、寄生容量結合を形成している。マイクロコントローラが、無給電静電容量結合を評価するために、容量電極に電気的接続され、着用者の脚の間の相対運動を検出するようになっている。
【0013】
用語「寄生容量結合」とは、容量電極と着用者の脚の寄生容量との間の容量結合を意味する。一般に、寄生容量を供給することができる物体(例:着用者の脚)が、ステップカウンタシステムの容量電極に接近すると、容量電極の容量が大きくなる。この事実は、容量電極と、容量電極に接近している物体の寄生容量との間の容量結合に起因する。換言すれば、本発明のシステムにおける容量電極は、他の物体に対する使用者の脚との近接度を検出する一種の容量センサとして作用する。
【0014】
本発明の実施態様によると、本発明の着用可能なステップカウンタシステムは、身体的快適さ、及びお洒落な外観を失うこと無く、簡単な方法で、衣服と一体化することができる。更に、本発明の着用可能なステップカウンタシステムは、着用者の脚用の衣服がどのようなタイプであっても、経済的に製造することができる。
【0015】
本発明によると、マイクロコントローラは、容量電極の容量値を検出することにより、寄生容量結合を評価するように構成されている。
【0016】
前記マイクロコントローラは、寄生容量結合に基づいて、着用者の脚の間の距離、及び/又は横断面の重なり部を算出するように構成されていることが好ましい。
【0017】
本発明によると、着用者の脚の間の距離は、使用者が受ける加速とは無関係(例:使用者が車を運転している時、又は一般的に、使用者が身体的活動を行なっていない時)に検出することが出来る。
【0018】
更に、本発明によると、マイクロコントローラは、容量電極の容量値を時間の関数として評価する。これにより、本発明のステップカウンタシステムは、使用者による歩行を、信頼できる方法で正確に検出することができる。
【0019】
本発明の一態様によると、容量電極は、衣服の概ね全長に亘って配設される。これにより、多種多様な足取りでも、正確かつ信頼度をもって検出することができる。然しながら、他の態様では、容量電極は、衣服のごく一部に沿って配設される。
【0020】
本発明の一態様によると、導電性ヤーンは、導電性コア及び電気絶縁性外表面を含んでいる。
【0021】
好ましくは、導電性コアは、鋼、銅、銀、及び導電性ポリマーから選択された材料で製造される。
【0022】
好ましくは、電気絶縁性外表面は、綿、ポリエステル、ポリウレタン及びポリプロピレンから選択された材料で製造される。
【0023】
編織布部分は、1セット、即ち1組の導電性ヤーンを交絡させた非絶縁性導電性ヤーンを含んでいることが好ましい。1セットの非絶縁性導電性ヤーンは、電気的接地グリッドを提供し、この電気的接地グリッドは、着用者の皮膚に接するように配設される。
【0024】
非絶縁性導電性ヤーンは、鋼、又は綿の周りに巻かれた鋼、或いは鋼-綿の混合物で製造することが好ましい。
【0025】
本発明の多様な態様において、衣服は、第1の衣服脚部及び第2の衣服脚部を有する二脚型衣服で、編織布部分は、第1の衣服脚部に配設される。
【0026】
編織布部分は、第1の衣服脚部に配設された第1の編織布部分、及び第2の衣服脚部に配設された第2の編織布部分を含んでいるのが好ましい。本発明のステップカウンタシステムは、第1及び第2の容量電極、前記第1の編織布部分の中に織り込まれている第1の容量電極の導電性ヤーン、前記第2の編織布部分の中に織り込まれている第2の容量電極の導電性ヤーンを含んでいる。
【0027】
この態様により、例えば、第2の容量電極から検出された容量値と、第1容量電極から検出された容量値とを合計することによって、寄生容量結合の感度が改良される。
【0028】
さらに、本発明の態様によると、着用可能なステップカウンタシステムは、第2の衣服脚部に配設された整合電極を有している。前記整合電極は、接地された導電性ヤーンを含んでいる。この態様により、地面に対する容量電極の容量値を、正確かつ信頼度をもって検出することができる。
【0029】
整合電極は、実質的に、前記衣服の全長に沿って配設すると有利である。
【0030】
更に、本発明の一態様によると、本発明の着用可能なステップカウンタシステムは、容量性センサとして役立つコーティングと一緒に衣服に織り込まれる導電性ヤーンを含んでいる。前記コーティングは、多種多様な材料を使用して形成された導電性不純物が分散された柔軟性(コ)ポリマーでよい。
【0031】
有利な態様としての衣服は、1対のパンツである。着用可能なステップカウンタは、着用者の身体活動のモニターだけではなく、着用者の通常の健康状態もモニターすることが出来る。例えば、着用可能なステップカウンタを使用して、ストレス度、又は腰掛け仕事の間の使用者の両脚の位置等を、モニターすることが出来る。
【0032】
本発明は、更に、使用者の歩行数を検出する方法に関し、この方法は、下記のステップを含んでいる。
a) 着用者の両脚用の衣服であって、前記衣服は、容量電極、及び容量電極に結合されたマイクロコントローラを含んでおり、更に前記衣服は、導電性ヤーンが織り込まれている編織布部分を含んでおり、かつ前記衣服の第1の脚部の一部を形成し、前記導電性ヤーンは、前記容量電極を形成している衣服を、着用者の両端に供給すること;及び
b)前記容量電極と前記衣服の第2の脚との間の寄生容量を検出すること。
【0033】
幾つかの態様において、前記ステップ(b)は、前記第2の脚部に沿った複数の位置における寄生容量の検出を提供する。
【0034】
幾つかの態様において、前記方法は、更に、ステップ(c)「前記寄生容量を、前記第1の脚部の前記容量電極と、前記衣服の前記第2の脚部に配置されている前記着用者の脚の間の距離に変換すること」を含んでいる。
【0035】
幾つかの態様において、前記ステップ(b)は、或る時間に亘って少なくとも周期的に実施され、さらにステップ(d)「前記或る時間に亘って少なくとも周期的に実施された前記検出に基づいて、着用者が取った歩行の数を計算すること」を含んでいる。
【0036】
更に、本発明は、下記のステップを含む着用可能なステップカウンタシステムを製造する方法にも関する。
―編織布部分を含む着用者の脚用の衣服を供給すること、
―導電性ヤーンを前記衣服の編織布部分の中に織り込んで容量電極を供給すること、
―前記容量電極に電気的に接続されているマイクロコントローラを供給して、前記容量電極と着用者の脚の間の寄生容量結合を評価し、着用者の両脚の相対運動を前記マイクロコントローラで検出すること。
【発明の効果】
【0037】
本発明によると、身体的快適さ及びスタイリッシュな外観を失うこと無く、使用者の衣服の一部として衣服に織り込まれていて、着用者の歩行を、高い信頼感をもって、かつ正確に検出することが出来るステップカウンタシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一態様による着用可能なステップカウンタシステムの斜視図。
図2A】本発明の一態様による着用可能なステップカウンタシステムで検出された容量電極の容量値の経時的グラフ。
図2B】本発明の一態様による着用可能なステップカウンタシステムで検出された容量電極の容量値の周波数スペクトル。
図2C】本発明の一態様による着用可能なステップカウンタシステムを横方向から観察した略斜視図。
図3】本発明の一態様による着用可能なステップカウンタシステムを横方向から観察した略斜視図。
図4】本発明の一態様による着用可能なステップカウンタシステムの編織布部分の略断面図。
図5図4に示した編織布部分の略平面図。
図6】本発明の別の態様による着用可能なステップカウンタシステムの編織布部分の略断面図。
図7図6の編織布部分12の略底面図。
図8】本発明の別の態様による着用可能なステップカウンタシステムの編織布部分の略断面図。
図9】本発明の更に別の態様による着用可能なステップカウンタシステムの斜視図。
図10】本発明の更に別の態様による着用可能なステップカウンタシステムの斜視図。
図11】本発明の更に別の態様による着用可能なステップカウンタシステムの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明の一態様による着用可能なステップカウンタシステム100を示している。ステップカウンタシステム100は、着用者の両脚用の衣服10、容量電極3、及びマイクロコントローラ1を備えている。
【0040】
図1における衣服10は、二脚衣服、好ましくは1対のパンツで、第1の衣服の脚部11a及び第2の衣服の脚部11bを備えている。容量電極3は、衣服10の編織布部分12に織り込まれている導電性ヤーン22を備えている。好ましくは、衣服10は、2本の脚部11a及び11bの一つの部分を形成する編織布部分12を含んでいる。図1に示す態様において、編織布部分12は、第1の衣服の脚部11aに配設されている。一般に、編織布部分12は、衣服10の一部を形成しており、容量電極3と着用者の脚の間に寄生容量結合を供給している。
【0041】
換言すれば、衣服10の編織布部分12には、容量電極3の導電性ヤーン22が織り込まれており、少なくとも部分的に着用者の脚を覆うような形状になっている。従って、編織布部分12は、衣服10において、容量電極3が着用者の一方の脚に対向するような位置に配設されている。図1に示した態様では、容量電極3は、着用者の両脚の間の衣服部分、即ち使用者が衣服10を着用した時、着用者の両脚の間に位置するように構成される部分に配設されている。編織布部分12は、衣服10において、着用者の内股に置かれるような構成になっている部分に配設することが好ましい。然しながら、他の態様として、導電性ヤーン22を含んでいる編織布部分12を、他の様々な位置に配置してもよい。
【0042】
マイクロコントローラ1は、(例えば、図1図2C図3、及び図9図11において、点線で示すように接続ケーブル2で)容量電極3に電気的に接続されており、容量電極3と、第2の衣服の脚部11bの中の着用者の脚、即ち、導電性ヤーンが織り込まれている編織布部分12が少なくとも部分的に覆っている脚に対向している着用者の脚との間の寄生容量結合を行うようになっている。様々な態様において、接続ケーブル2は、衣服10の縫い目に沿って延びているのが好ましい。幾つかの態様では、接続ケーブル2は、マイクロコントローラ1を、容量電極3の編織布部分12に接続するのが好ましい。
【0043】
このようして、着用者が歩行する時、容量電極3は、着用者の脚に追随して、一方の脚に対して動かされる。この運動は、容量電極3と第2の衣服の脚部11bの間の寄生容量結合に影響を与える。従って、寄生容量結合を感知することにより、マイクロコントローラ1によって、着用者の両脚の間の運動を検出することができる。特に、容量電極3の容量値Cを検出することにより、寄生容量結合を評価することができる。
【0044】
実際、着用者の脚(又は、一般に、他の静電容量供給物体)が容量電極3に向かって動いている時、着用者の脚の寄生容量CLEGが容量値Cに加えられて、マイクロコントローラ1によって感知された広域容量の新しい値が導出されるので、容量値Cは変化する。容量値Cは、容量電極3、と第2の衣服の脚部11bの中の着用者の片脚の間の距離が短くなり、かつ、断面の重なりが増えると、大きくなる。
【0045】
好ましくは、マイクロコントローラ1は、入力段回路(図示せず)によって、容量電極3に電気的に接続されている電子ボタンの中に収容することもできる。前記入力段回路は、特許文献1の特に第15頁、第5~20行に記載されている。特許文献1は、本願と同じ出願人によるもので、発明の名称は「スマートな衣服用電子ボタン」である。なお、ヨーロッパ特許出願第15179147.2号(特表2018-520813)の内容は、本明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の一部を構成するものとして、その全てを援用する。
【0046】
より好ましくは、容量電極3の充電/放電時間の変化、次いで容量電極3の容量値Cの変化による時間遅延を測定することによって、マイクロコントローラ1は、容量電極3の容量値Cを検出することができる。
【0047】
マイクロコントローラ1は、容量電極3の容量値Cを時間の関数として、より好ましくは、図2Aに示すように、経時的-サンプル信号C(t)の形で得られた検出された容量値Cを評価するような構成が有利である。特に、容量値Cは、着用者の両脚の間の距離が小さくなるに従って増加し、かつ容量電極3と、第2の衣服の脚部11bの中の着用者の片脚の間の横断面の重なりが増えるに従って増える。
【0048】
図2Cに示すように、容量電極3と、第2の衣服の脚部11bの中の着用者の片脚の間の横断面の重なりOの量は、第1の衣服の脚部11aの中の着用者の片脚の位置、従って、第2の衣服の脚部11bの中の着用者の片脚に対する容量電極3の位置に依存している。
【0049】
図2Aにおいて、容量値Cは、2つのピーク5a、5bを示していて、これらは歩行者による歩行を表している。図2Aでは、歩行者の両脚は、象徴的にセグメント7a、7bで示してある(容量電極3は、象徴的にセグメント7aで示す脚に配設されている)。換言すれば、2つのピーク5a、5b間の時間間隔は、着用者が歩行する間の時間を示している。このようにして、マイクロコントローラ1は、身体活動の間、着用者による歩行を検出し、かつ計算する。更に、マイクロコントローラ1は、寄生容量結合に基づいて着用者の両脚の間の距離Dを評価するような構成になっている。例えば、距離Dは、着用者の両脚の間に形成される角度、又は容量電極3が配置されている着用者の脚の所定の点と、一方の脚の間の平均距離によって定義することができる。例えば、距離Dは、容量値Cの逆数に換算係数K(D=K1/C)を掛けることで導出される。但し、Kは、前の試験から実験的に誘導される計数である。好ましくは、着用者の両脚の間の距離Dは、2つのピーク5a、5bの間の谷6で与えられる容量値Cから求められる。このようにして、距離Dは、歩行の間(即ち、2つのピーク5a、5b間の時間間隔の間)使用者が実行した距離を示している。他の態様では、別の方法を使用して、距離Dを決定することができる。
【0050】
図2Bは、図2Aに示した試料信号C(t)の周波数スペクトル(Cf)を示している。特に、本発明のステップカウンタシステムの好ましい態様は、マイクロコントローラ1が、時間領域で検出された容量信号(Ct)のフーリエ変換を評価して、異なる歩行スタイルを区別するような構成になっているということを示している。例えば、マイクロコントローラは、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムを使用して、フーリエ変換を計算することができる。次いで、算出された周波数スペクトル(Cf)を、以前の試験から実験的に誘導された複数の歩行スタイルに結合させ、メモリーに記憶させた複数の周波数スペクトルと比較する。この比較に基づいて、マイクロコントローラ1が、着用者の歩行スタイルを検出する。より好ましくは、複数の値から、変換係数kが選択される。記憶装置に記憶させた歩行スタイル毎に、変換係数値が関連づけて記憶されているので、着用者の歩行距離を、非常に正確に決定することができる。
【0051】
図3は、容量電極3が衣服10の概ね全長に沿って配設されている本発明の態様を示している。用語「衣服10の概ね全長に沿って」は、容量電極3が、衣服の主要な長さの半分以上の長さの領域に沿って、衣服に配設されているということを意味している。
【0052】
図3に示した態様では、衣服は1対のパンツである。従って、主要な長さとは、衣服の脚部の内側の長さ11a、11bである。この場合、編織布部分12は、パンツのクロッチ8とパンツのアンクル部9を接続するパス(インシーム)に沿って配設することが好ましい。
【0053】
発明者は、衣服10の概ね全長に沿って配設された容量電極3を備えるステップカウンタシステム100が、歩行スタイルの検出精度を向上させることを観察した。この向上は、ステップカウンタシステム100を含む衣服10が、着用者の片脚又は両脚の全長又は殆ど全長に亘って、例えば図3の態様に示したようにクロッチからアンクル部を覆う長さを有する衣服の片脚又は両脚を含む衣服において、特に顕著である。
【0054】
衣服が1対のパンツの場合のステップカウンタシステム100においては、容量電極3の導電性ヤーン12は、パンツの内股に沿うような縫い目に沿って配設された編織布部分12に織り込まれている。この様にして、身体的快適さ及びスタイリッシュな外観を損なうことなく、容量電極3を衣服10に組み入れることができる。
【0055】
本発明の好ましい態様における編織布部分12は、特許文献2の特に第5頁、第13~第8頁第30行に記載されている。なお、特許文献2は、本願と同じ出願人によるもので、発明の名称は「容量グリッド用編織布」である。なお、ここで、ヨーロッパ特許出願第15193723.2号(特表2018-534445)の内容は、本明細書、特許請求の範囲、図面、要約書の一部を構成するものとして、その全てを援用する。
【0056】
図4は、導電性ヤーン22と交絡された非絶縁性導電性ヤーン23のセット、即ち導電性ヤーン22と交絡された非絶縁性導電性ヤーン23グループを含んでいる本発明の態様による編織布部分12を示している。
【0057】
好ましくは、導電性ヤーン22と、非絶縁性導電性ヤーン23のセット即ちグループは、複数本の交絡編織用ヤーンと交絡されている。この場合、交絡編織用ヤーンの一部は、非絶縁性導電性ヤーン23であり、上記非絶縁性導電性ヤーン23セット中の導電性ヤーン23と共に電気的接地グリッドを形成している(以下、「非絶縁性導電性ヤーン23のセット」を、「導電性ヤーン23の非絶縁性セット」若しくは「ヤーン23の非絶縁性セット」と記載する場合有)。
【0058】
更に、交絡編織用ヤーンの一部は、通常の絶縁性編織用ヤーン24である。従って、交絡編織用ヤーンは、絶縁性及び非絶縁性ヤーンの両者を含んでいる。このようにして、電気的接地グリッドが形成される。
【0059】
図4に示す態様では、導電性ヤーン22と導電性ヤーン23の非絶縁性セットは、縦糸ヤーンであり、交絡編織用ヤーン23、24は、横糸ヤーンである。
【0060】
然しながら、別の態様では、導電性ヤーン22と導電性ヤーン23の非絶縁性セットは、横糸ヤ-ンであり、かつ交絡編織用ヤーン23、24は、縦糸ヤーンであってもよい。
【0061】
図4に示す編織布部分では、導電性ヤーン22、絶縁性編織用ヤーン24、及び導電性ヤーン23の非絶縁性セットは、単一の紡織層を形成している。
【0062】
導電性ヤーン22は外部絶縁が好ましい。より好ましくは、導電性外部絶縁ヤーン22は、導電性コア25、及び絶縁性外表面27を備える二重構造である。絶縁性外表面27は、例えば、絶縁性樹脂及び/又は絶縁性繊維で製造することができる。
【0063】
導電性外部絶縁ヤーン22の導電性コア25は、鋼、銅、銀、導電性ポリマー又はそれらの多種多様な混合物で製造するのが好ましい。別の態様では、導電性コア25は、磁性ワイヤ又はエナメル被覆ワイヤ、即ち極めて薄い絶縁層(主として、銅又はアルミニウム製)で被覆した金属線でもよい。
【0064】
導電性外部絶縁ヤーン22の絶縁性外表面27は、コットン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン、又はそれらの多種多様な混合物で製造するのが好ましい。
【0065】
非絶縁性導電性ヤーン23は、鋼、又はコットンの周りに巻いた鋼、或いは鋼-コットン混合物で製造するのが好ましい。
【0066】
絶縁性ヤーン24は、コットン、ポリエステル、ナイロン、それらの種々の機能性誘導体、又はそれらの様々な組み合わせから選択された紡織材料で製造するのが好ましい。
【0067】
図5は、図4の編織布部分の平面図である。図5において、非絶縁性導電性ヤーン23は、電気的アースに接続された接触ヤーンの密な配列(シークエンス)を形成し、電気的接地グリッドを供給している。
【0068】
図6は、本発明の別の態様を示している。図6において、導電性ヤーン22及び絶縁性ヤーン24は、第1の編織布層120を形成しており、導電性ヤーン23の非絶縁性セットは、第1の編織布層120に重なる第2の編織布層130を形成している。
【0069】
この態様において、第1の編織布層120及び第2の編織布層130は、紡織繊維を交絡することによって一緒に織られている。特に、交絡紡織繊維の一部は、非絶縁性導電ヤーン23であり、第2の編織布層130のヤーンの非絶縁性セットの非絶縁性導電性ヤーン23と電気的接地グリッドを形成している。交絡紡織繊維の一部は、絶縁性ヤーン24である。
【0070】
この態様の場合も、導電性ヤーン22と導電性ヤーン23の非絶縁性セットは、縦糸ヤーンであり、交絡紡織繊維23、24は横糸ヤーンである。
【0071】
別の態様において、導電性ヤーン22とヤーン23の非絶縁性セットは横糸ヤーンであり、交絡紡織繊維23、24は縦糸ヤーンでもよい。
【0072】
図6の編織布部分12の底面図である図7は、横糸の非絶縁性導電性ヤーン23と交絡されている縦糸の非絶縁性ヤーン23によって形成された電気的接地グリッドを示している。
【0073】
図8は、本発明による編織布部分12の更に別の態様を示している。この態様においては、導電性ヤーン22及び絶縁性ヤーン24は、第1の紡織層120を形成していて、ヤーン23の非絶縁性セットは、第2の紡織層130を形成している。
【0074】
図8の編織布部分12は、更に、構造的絶縁ヤーン55の別のセットを含んでおり、このセットは第1及び第2の紡織層120及び130の間に介挿された中間の紡織層140を形成している。
【0075】
更に、図8の編織布部分12は、第1及び第2の紡織層並びに構造的絶縁ヤーン55の第3の中間紡織層140と交絡している複数本の構造的絶縁ヤーン65を備えている。
【0076】
中間の紡織層140は、多様な態様において、普通の紡織繊維として機械的に一緒に織られるコットン、ポリエステル等通常の紡織ヤーン55、65で製造された実際の紡織層140である。
【0077】
図8の態様において、第2の紡織層130は、交絡編織用ヤーンと一緒に織られる。交絡編織用ヤーン部分は、非絶縁性導電性ヤーン23で、第2の紡織層130のヤーンの非絶縁性セットの非絶縁性導電性ヤーン23と共に電気的接地グリッドを形成している。
【0078】
図8の態様の場合を含めて、如何なる場合でも、導電性ヤーン22及びヤーン23の非絶縁性セットは、縦糸ヤーンでよく、交絡ヤーンは、横糸ヤーンでよい。然しながら、態様によっては、導電性ヤーン22及びヤーン23の非絶縁性セットは、横糸ヤーンでよく、交絡ヤーンは縦糸ヤーンでもよい。
【0079】
図9は、本発明によるステップカウンタシステム100の更に別の態様を示している。この態様では、編織布部分12は、第1の衣服の脚部11aに配設された第1の編織布部分12a及び第2の衣服の脚部11bに配設された第2の編織布部分12bを含んでいる。
【0080】
図9のステップカウンタシステム100は、2個の容量電極3を備えている。それぞれの容量電極3は、衣服の脚部に配設されている。特に、第1の容量電極3aは、第1の編織布部分12aに織り込まれている導電性ヤーン22を有しており、第2の容量電極3bは、第2の編織布部分12bに織り込まれている導電性ヤーン22を有している。換言すれば、図9のステップカウンタシステム100は、図3において示す両脚の衣服脚部11a、11bに容量検出部を有している。図9の態様は、それぞれ衣服脚部11a、11bに、かつ衣服10のほぼ全長に沿って配設された2個の容量電極3a、3bを備えている。更なる態様では、本発明は、互いに異なる長さを有していて、及び/又は衣服脚部11a、11bの異なる位置に配設されている2個の容量電極3a、3bを備えているステップカウンタシステム100を提供する。
【0081】
図9に示すように、第1容量電極3a及び第2容量電極3bは、例えば、(点線で示した)接続ケーブル2a及び2bでマイクロコントローラ1に、それぞれ電気的に接続されている。
【0082】
この態様において、マイクロコントローラは、各容量電極3a、3bの容量値を検出するような構成になっていることが好ましい。このようにして、容量電極値Cは、図2Aに示したように、経時時間に対する2つのサンプル信号C(t)の形で得られる。より好ましくは、マイクロコントローラ1は、各容量電極3a、3bの検出された容量値Cを合計することにより、改良された検出感度で時間領域の検出容量信号C(t)を与える。
【0083】
図10は、本発明の別の態様を示している。この態様では、着用可能なステップカウンタシステム100は、実質的に衣服10の全長に沿う第2の衣服脚部11bに配設された整合電極4を備えている。整合電極4は、導電性ヤーン40を具備している。整合電極4は、図9に示した態様と同じような方法で、着用者の両脚の相対運動に反応して、寄生容量結合を高感度で検出する。(衣服脚部11aに配設された)容量電極3と(第2の衣服脚部11bに配設された)整合電極4の間の寄生容量結合は、時間の関数としての、正確でかつ精密な動的容量プロファイルを与える。好ましくは、導電性ヤーン40は、例えば、導電性コア25及び電気的絶縁性外表面27(図4図5)を備えている導電性ヤーン22として製造された絶縁性ヤーンである。導電性ヤーン40を接地して、容量電極3を検出電極として機能させ、整合電極4を容量電極3の基準として機能させるのが好ましい。このようにして、マイクロコントローラは、地面に対する容量電極3の容量値を検出する。

【0084】
図11は、本発明の更に別の態様を示している。図11において、容量電極3は、容量センサとして機能するコーティング50を備えている。図11は、第1の衣服脚部11aに取り付けられたコーティング50を示している。図11に示す態様では、衣服10の編織布部分12に織り込まれている導電性ヤーン22は、コーティング50と連動して作用している。この態様では、コーティング50は、軟質(コ)ポリマーマトリックスである。この軟質(コ)ポリマーマトリックスには、多種多様な材料を使用して形成された導電性不純物が分散されている。様々な態様において、使用に適した多くの導電性不純物を使用することが出来、かつ様々なタイプの使用に適した導電性コーティングを使用することが出来る。この態様では、コーティング50は、導電性コーティングで、容量センサとして機能する。導電性ヤーン22は、シールド又は接地系として機能する。コーティング50は、衣服の生地の内側又は外側に形成されている。幾つかの態様では、点線で示した接続ケーブル2は、衣服の縫い目に沿って延びており、マイクロコントローラ1を、容量電極3のコーティング50に電気的に接続している。
【0085】
要約すると、本発明は、着用者の脚用の衣服10、容量電極3及びマイクロコントローラ1を備えている着用可能なステップカウンタシステム100であって、前記衣服10は、編織布部分12を有しており、前記容量電極3は、前記編織布部分12の中に織り込まれている導電性ヤーン22を含んでおり、前記編織布部分12は、前記衣服10に接して、その上又は前記衣服10の中に配設されているか、或いは前記衣服10の一部を形成しており、前記容量電極3と着用者の脚の間に寄生容量結合を形成しており、前記マイクロコントローラ1は、前記容量電極3と電気的に接続されて、寄生容量結合を評価するようになっており、もって着用者の両脚の間の相対運動を前記マイクロコントローラ1で検出するようになっている着用可能ステップカウンタシステム100に関するものである。
【0086】
幾つかの態様では、前記マイクロコントローラ1は、前記容量電極(3)の容量値(C)を検出することによって、前記寄生容量結合を評価するような構成になっている。
【0087】
幾つかの態様では、前記マイクロコントローラ1は、前記衣服の縫い目に沿って延びている線によって、前記容量電極(3)に電気的に接続されている。
【0088】
幾つかの態様では、前記導電性ヤーンを含んでいる前記編織布部分は、前記衣服の縫い目に沿って配置されている。
【0089】
幾つかの態様では、前記マイクロコントローラ1は、前記寄生容量結合に基づいて、着用者の両脚の間の距離を評価するような構成になっている。
【0090】
幾つかの態様では、前記マイクロコントローラ1は、前記寄生容量結合に基づいて、着用者の両脚の間の距離(D)、及び容量電極と着用者の片脚の横断面の重なり部分(O)の少なくとも1つを評価するような構成になっている。
【0091】
幾つかの態様では、前記マイクロコントローラ1は、前記寄生容量結合に関連した寄生容量値を時間の関数として評価するような構成になっている。
【0092】
幾つかの態様においては、前記容量電極は、前記衣服のほぼ全長に沿って配設される。
【0093】
幾つかの態様においては、前記マイクロコントローラは、前記衣服の全長に沿った複数の点において、前記寄生容量結合に関連した寄生容量を検知する。
【0094】
幾つかの態様においては、前記導電性ヤーンは、導電性コアと電気絶縁性外表面を備えている。
【0095】
幾つかの態様においては、前記導電性コアは、少なくとも1つの鋼、銅、銀、及び導電性ポリマーの少なくとも1つから製造される。
【0096】
幾つかの態様においては、前記電気絶縁性外表面は、コットン、ポリエステル、ポリウレタン又はポリプロピレンから製造される。
【0097】
幾つかの態様においては、前記編織布部分は、前記導電性ヤーンと交絡された複数本の非絶縁性導電性ヤーンを含んでおり、前記複数本の非絶縁性導電性ヤーンは、着用者の皮膚に接触している電気的接地グリッドを供給するようになっている。
【0098】
幾つかの態様においては、前記非絶縁性導電性ヤーンは、鋼、コットンの周りに巻かれた鋼又は鋼-コットンの混合物から製造されている。
【0099】
幾つかの態様においては、前記衣服は、第1の脚用衣服及び第2の脚用衣服を持った二脚型衣服であって;
前記編織布部分(12)は、前記第1の脚用衣服(11a)の第1の編織布部分(12a)及び第2の脚用衣服(11b)の第2の編織布部分(12b)を有しており、
前記容量電極は、第1容量電極(3a)及び第2容量電極(3b)を有していて、前記第1容量電極(3a)の導電性ヤーン(22)は、前記第1の編織布部分(12a)の中に織り込まれており、かつ前記第2容量電極(3b)の導電性ヤーン(22)は、前記第2の編織布部分(12b)の中に織り込まれている。
【0100】
幾つかの態様において、前記衣服は、第1の脚用衣服及び第2の脚用衣服を持った二脚型衣服であって;
前記編織布部分(12)は、前記第1の脚用衣服(11a)の第1の編織布部分(12a)を有しており、
更に、前記編織布部分(12)は、前記第2の脚用衣服(11b)の少なくとも一部に接してその上に配設された整合電極(4)、又は前記第2の脚用衣服(11b)の少なくとも一部の中に配設された整合電極(4)を含んでいるか、或いは前記第2の脚用衣服(11b)の少なくとも部分を形成しており、
前記整合電極(4)は、接地された導電性ヤーン(40)を備えている。
【0101】
幾つかの態様において、前記整合電極(4)は、前記衣服(10)のほぼ全長に沿って配設されており、前記衣服(10)は1対のパンツである。
【0102】
幾つかの態様において、着用可能なステップカウンタシステムは、着用者の脚用衣服、容量電極、及びマイクロコントローラを具備しており、前記衣服は、編織布部分、及び前記編織布部分の中に織り込まれ、かつ、前記衣服の一部を形成している導電性ヤーンを含んでおり、前記導電性ヤーンは、電気的に接地されており、かつ前記編織布部分は、前記編織布部分に接してその上に配置された導電性コーティングを更に有しており、かつ、前記容量電極を、前記容量電極と着用者の脚の間に寄生容量結合を提供するように形成し、前記マイクロコントローラは、前記容量電極に電気的に接続されており、前記寄生容量結合を評価して、着用者の両脚の間の相対運動を検出するようになっている。
【0103】
幾つかの態様において、前記導電性コーティングは、内部に導電性不純物が分散された軟質コポリマーマトリクッスを含んでいる。
【0104】
使用者の歩行数を検出する方法は、以下のステップを含んでいる。
a) 着用者の脚用の衣服を供給すること。此処において、前記衣服は、容量電極、及び容量電極に結合されたマイクロコントローラを備えており、前記衣服は、編織布部分、及び編織布部分の中に織り込まれている導電性ヤーンを含んでいて、かつ前記衣服の第1脚部分を形成している。及び
b) 前記容量電極、及び前記衣服の前記第2脚との間の寄生容量を検出すること。
【0105】
幾つかの態様において、前記ステップ(b)は、前記第2の脚に沿った複数の位置における前記寄生容量の検出を提供する。
【0106】
幾つかの態様において、前記方法は、更に、ステップ(c)前記寄生容量を、前記第1の脚における前記容量電極と前記衣服の前記第2の脚に配設されている前記着用者の脚の間の距離に変換することを含んでいる。
【0107】
幾つかの態様において、前記ステップ(b)は、一定時間に亘って、少なくとも周期的に実行され、かつステップ(d)一定時間に亘って、少なくとも周期的に行なった前記検出に基づいて、着用者が取ったステップの数を計算することを含む。
【0108】
本発明による着用可能なステップカウンタシステムは、下記のステップを含む方法によって製造することができる。
―編織布部分(12)を含む着用者の脚用の衣服(10)を提供すること。
―前記編織布部分(12)の中に導電性ヤーン(22)を織り込んで、容量電極(3)を提供すること。
―前記容量電極(3)に電気的に接続されたマイクロコントローラ(1)を提供し、前記容量電極(3)と着用者の脚の間の寄生容量結合を評価し、着用者の両脚の間の相対運動を、マイクロコントローラ(1)で検出すること。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の着用可能なステップカウンタシステムは、着用者の歩行を高い信頼感をもって、かつ正確、精密に検出するというステップカウンタ本来の機能を発揮することはもとより、使用者の衣服の一部として衣服に織り込まれているので、着用していても身体的快適さ及びスタイリッシュな外観を失うことがない。従って、衣料産業、電子電気部品産業をはじめ、健康志向に伴い、各種健康衣料産業にも資することができる。
【符号の説明】
【0110】
1:マイクロコントローラ
2:接続ケーブル
2a:接続ケーブル
2b:接続ケーブル
3:容量電極
3a:第1の容量電極
3b:第2の容量電極
4:整合電極
8:パンツのクロッチ
9:パンツのアンクル部
10:着用者の脚用の衣服
11a:第1の衣服の脚部
11b:第2の衣服の脚部
12:編織布部分
12a:第1の編織布部分
12b:第2の編織布部分
22:導電性ヤーン
23:導電性ヤーン
24:絶縁性編織用ヤーン
25:導電性コア
27:絶縁性外表面
40:導電性ヤーン
50:コーティング
55:構造的絶縁ヤーン
65:構造的絶縁ヤーン
100:ステップカウンタシステム
120:第1の編織布層
130:第2の編織布層
140:中間の紡織層
C:容量値
C(t):経時的-サンプル信号
C(f):周波数スペクトル
O:横断面の重なり
D:着用者の両脚の間の距離
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11