(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】検知領域データベース作成装置
(51)【国際特許分類】
B61L 23/00 20060101AFI20220509BHJP
G06F 16/907 20190101ALI20220509BHJP
B61L 25/04 20060101ALI20220509BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220509BHJP
【FI】
B61L23/00 A
G06F16/907
B61L25/04
G06T7/00 650Z
(21)【出願番号】P 2018120441
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄介
(72)【発明者】
【氏名】小林 広幸
(72)【発明者】
【氏名】二神 拓也
(72)【発明者】
【氏名】堀江 勝大
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 直人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 世支明
(72)【発明者】
【氏名】服部 陽平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博章
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-10003(JP,A)
【文献】特開2019-84881(JP,A)
【文献】特開平4-347300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00
G06F 16/907
B61L 25/04
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両から、当該鉄道車両が有する撮像部によって前記鉄道車両の進行方向を撮像して得られる撮像画像、および当該撮像画像が得られた際の前記鉄道車両の走行位置を取得する取得部と、
前記撮像画像および前記走行位置に基づいて、前記撮像画像内において前記鉄道車両の走行の支障となる支障物を検知する検知領域を前記鉄道車両の車両限界または建築限界の外側の拡大領域まで拡大する前記走行位置である対象位置と、前記拡大領域の三次元の形状を示す検知領域情報と、を対応付ける検知領域データベースを作成する作成部と、
を備える検知領域データベース作成装置。
【請求項2】
前記作成部は、前記撮像画像と、前記対象位置および前記検知領域情報を入力可能な入力欄を含む画面を表示部に表示させ、前記入力欄を用いて入力される前記検知領域情報と前記対象位置とを対応付ける前記検知領域データベースを作成する請求項1に記載の検知領域データベース作成装置。
【請求項3】
前記作成部は、さらに、画像認識処理によって、前記撮像画像から、前記対象位置を示す対象位置画像を検出し、かつ前記対象位置画像が検出されたことを示す検出情報を前記表示部に表示させる請求項2に記載の検知領域データベース作成装置。
【請求項4】
前記作成部は、さらに、作成した前記検知領域データベースに基づいて、前記撮像画像に対して、前記検知領域を示す検知領域画像を重畳したプレビュー画像を前記表示部に表示させる請求項2または3に記載の検知領域データベース作成装置。
【請求項5】
前記作成部は、さらに、画像認識処理によって、前記撮像画像から、前記鉄道車両の進路に存在する分岐器を検出し、当該検出された分岐器の後の前記鉄道車両の進路を示す進路情報を含む前記検知領域データベースを作成する請求項1から4のいずれか一に記載の検知領域データベース作成装置。
【請求項6】
前記作成部は、前記撮像画像が得られた際の前記走行位置を特定可能な地図情報を含む前記画面を前記表示部に表示させる請求項2から4のいずれか一に記載の検知領域データベース作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検知領域データベース作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の運行に際して、鉄道車両の安全を確保するために、鉄道車両の進路上に、当該鉄道車両の走行の支障となる物体(以下、支障物と言う)が存在するか否かを確認する必要がある。駅のホームからの旅客や荷物の転落、踏切での自動車や自転車の立往生等によって鉄道車両の進路に支障物が発生し易い区間には、支障物の発生を防止する設備や、支障物を検知する検知設備の導入が進んでいる。
【0003】
しかしながら、鉄道車両の進路に支障物が発生し易い区間に検知設備を導入する方法では、鉄道車両の進路全体において支障物を検知することは困難である。そのため、鉄道車両に搭載される撮像部によって当該鉄道車両の前方を撮像して得られる撮像画像を用いて、支障物を検知する支障物検知技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、支障物検知技術では、撮像画像内における予め設定された検知領域の中から、支障物を検知するが、鉄道車両の走行位置に応じて、その検知領域を拡大することにより、鉄道車両の進路に存在する支障物をより高精度に検知することが求められている。その場合、鉄道車両の走行位置のうち検知領域を拡大する走行位置と、当該走行位置における検知領域の形状を示す検知領域情報と、を対応付ける検知領域データベースを予め作成しておくことが望ましい。検知領域データベースを作成する方法としては、鉄道車両の走行位置を上方から撮像した航空写真等を用いて作成する方法が開発されているが、航空写真等からは、駅ホームの端や、駅ホームの幅および高さ等を正確に把握することが困難であるため、鉄道車両の進路に存在する支障物を高精度に検知可能とする検知領域データベースを作成することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の検知領域データベース作成装置は、取得部と、作成部と、を備える。取得部は、鉄道車両から、当該鉄道車両が有する撮像部によって鉄道車両の進行方向を撮像して得られる撮像画像、および当該撮像画像が得られた際の鉄道車両の走行位置を取得する。作成部は、撮像画像および走行位置に基づいて、撮像画像内において鉄道車両の走行の支障となる支障物を検知する検知領域を鉄道車両の車両限界または建築限界の外側の拡大領域まで拡大する走行位置である対象位置と、拡大領域の三次元の形状を示す検知領域情報と、を対応付ける検知領域データベースを作成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態にかかる鉄道用走行安全支援システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態にかかる鉄道車両の走行支障物検知装置および検知領域データベース作成装置の制御部の機能構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベースの作成処理の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベースの作成処理の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベースの作成処理の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベースの作成処理の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベース作成処理の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベースの作成処理の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベースの作成処理の一例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置において表示されるデータベース作成画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置を備えた鉄道用走行安全支援システムについて説明する。
【0009】
図1は、本実施形態にかかる鉄道用走行安全支援システムの構成の一例を示す図である。本実施形態にかかる鉄道用走行安全支援システムは、
図1に示すように、鉄道車両RV、および検知領域データベース作成装置Dを有する。鉄道車両RVと検知領域データベース作成装置Dとは、無線通信等によって、互いに各種情報を通信可能である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態にかかる鉄道車両RVは、センサ101、走行支障物検知装置102、記録装置103、表示部104、および位置計測部105を備える。
【0011】
センサ101は、鉄道車両RVの進行方向を撮像可能に設けられる撮像部の一例である。走行支障物検知装置102は、鉄道車両RVの走行の支障となる物体(以下、支障物と言う)を検知する支障物検知装置である。記録装置103は、走行支障物検知装置102による支障物の検知結果を記憶する記憶部である。
【0012】
表示部104は、センサ101によって鉄道車両RVの進行方向を撮像して得られる撮像画像や、走行支障物検知装置102による支障物の検知結果等の各種情報を表示する。位置計測部105は、鉄道車両RVの走行位置を計測する。本実施形態では、位置計測部105には、速度発電機(TG:Rate Generator)や、衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)、加速度センサ、ジャイロセンサ等を用いて、鉄道車両RVの走行位置を計測する。
【0013】
本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置Dは、パーソナルコンピュータ等である。具体的には、検知領域データベース作成装置Dは、
図1に示すように、制御部201と、記録装置202と、表示部203と、を有する。
【0014】
制御部201は、検知領域データベース作成装置D全体を制御する。本実施形態では、制御部201は、対象位置と、検知領域情報と、を対応付けるデータベース(以下、検知領域データベースと言う)を作成する。ここで、対象位置は、撮像画像内において支障物を検知する領域(以下、検知領域と言う)を鉄道車両RVの車両限界または建築限界の外側の拡大領域まで拡大する鉄道車両RVの走行位置である。検知領域情報は、対象位置における拡大領域の三次元の形状を示す情報である。
【0015】
記録装置202は、鉄道車両RVが搭載されるセンサ101の撮像により得られる撮像画像等の各種情報を記憶する。表示部203は、LCD(Liquid Crystal Display)等であり、検知領域データベースの作成に用いる画面(以下、データベース作成画面と言う)を表示する。
【0016】
図2は、本実施形態にかかる鉄道車両の走行支障物検知装置および検知領域データベース作成装置の制御部の機能構成の一例を示す図である。鉄道車両RVが有する走行支障物検知装置102は、
図2に示すように、画像取得部301、レール認識部302、検知領域認識部303、支障物候補認識部304、支障物判定部305、および結果出力部306を有する。
【0017】
本実施形態では、画像取得部301、レール認識部302、検知領域認識部303、支障物候補認識部304、支障物判定部305、および結果出力部306のうち一部若しくは全ては、鉄道車両RVが有するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが記録装置103等に記憶されるソフトウェアを実行することにより実現される。
【0018】
また、画像取得部301、レール認識部302、検知領域認識部303、支障物候補認識部304、支障物判定部305、および結果出力部306のうち一部若しくは全ては、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路基板であるハードウェアによって実現されても良い。または、画像取得部301、レール認識部302、検知領域認識部303、支障物候補認識部304、支障物判定部305、および結果出力部306は、プロセッサによって実行されるソフトウェア、およびハードウェアの協働によって実現されても良い。
【0019】
記憶部307は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SDカード等の不揮発性の記憶媒体、およびRAM(Random Access Memory)、レジスタ等の揮発性の記憶媒体を含む。そして、記憶部307は、検知領域データベース等の各種情報を記憶する。
【0020】
画像取得部301は、センサ101によって鉄道車両RVの進行方向を撮像して得られる撮像画像を取得する。レール認識部302は、撮像画像から、鉄道車両RVが走行するレールを検出する。
【0021】
検知領域認識部303は、レール認識部302により検出したレールを基準として、撮像画像に対して三次元の検知領域を設定する。ここで、検知領域は、撮像画像内において、鉄道車両RVの車両限界または建築限界によって規定される規定領域を含む三次元の領域である。
【0022】
また、検知領域認識部303は、鉄道車両RVが対象位置を走行する際に、検知領域を拡大領域まで拡大する。具体的には、検知領域認識部303は、予め、検知領域データベース作成装置Dから、検知領域データベースを受信しておく。検知領域データベースは、対象位置(例えば、キロ程、または、緯度および経度)と、拡大領域の三次元の形状を示す検知領域情報と、を対応付けるデータベースである。
【0023】
本実施形態では、検知領域データベースは、鉄道車両RVの進路に存在する分岐器の位置(以下、分岐位置と言う。例えば、キロ程、または、緯度および経度)と、当該分岐器の後の鉄道車両RVの進路を示す進路情報と、を対応付ける。さらに、本実施形態では、検知領域データベースは、鉄道車両RVの進路に存在するトンネルの位置(以下、トンネル位置と言う。例えば、キロ程、または、緯度および経度)を含む。
【0024】
次いで、検知領域認識部303は、検知領域データベースにおいて、位置計測部105により計測される鉄道車両RVの走行位置と一致する対象位置と対応付けられる検知領域情報を特定する。そして、検知領域認識部303は、特定した検知領域情報に基づいて、対象位置において、検知領域に拡大領域が含まれるように、検知領域を拡大する。
【0025】
これにより、歩行者や、二輪車、自動車等がレール上を往来して鉄道車両RVの走行に支障が発生し得る踏切、乗降客や荷物等が転落してレール上で鉄道車両RVの走行の支障となり得る駅ホーム等を対象位置に設定することにより、車両限界または建築限界の周囲において鉄道車両RVの走行の支障となる可能性が高い物体も支障物として検出可能となる。その結果、鉄道車両RVの周囲の状況も把握可能となるので、鉄道車両RVが踏切や駅ホーム等に接近してから物体が車両限界または建築限界に入り、鉄道車両RVとの接触につながるリスクを軽減できる。
【0026】
また、検知領域認識部303は、位置計測部105により計測される走行位置が、検知領域データベースにおいて進路情報と対応付けられる分岐位置と一致した場合、分岐器の後の複数の進路のうち、進路情報が示す進路に対してのみ検知領域を設定する。これにより、鉄道車両RVが進行しない進路に存在する物体が支障物として検知されることを防止できる。
【0027】
さらに、検知領域認識部303は、位置計測部105により計測される走行位置が、検知領域データベースが含むトンネル位置(例えば、トンネルの入口、トンネルの出口)と一致した場合、位置計測部105による走行位置の計測方法や、センサ101の撮像条件を変更する。
【0028】
具体的には、検知領域認識部303は、位置計測部105により計測される走行位置が、検知領域データベースが含むトンネルの入口と一致した場合、位置計測部105による走行位置の計測方法を、衛星測位システムを用いた計測方法から、速度発電機、加速度センサ、またはジャイロセンサを用いた計測方法に切り替える。また、検知領域認識部303は、位置計測部105により計測される走行位置が、検知領域データベースが含むトンネルの入口と一致した場合、センサ101の感度を上げる。
【0029】
一方、検知領域認識部303は、位置計測部105により計測される走行位置が、検知領域データベースが含むトンネルの出口と一致した場合、位置計測部105による走行位置の計測方法を、衛星測位システムを用いた計測方法に戻す。また、検知領域認識部303は、位置計測部105により計測される走行位置が、検知領域データベースが含むトンネルの出口と一致した場合、センサ101の感度を下げる。
【0030】
支障物候補認識部304は、検知領域が設定された撮像画像に基づいて、検知領域内に含まれる物体を支障物の候補(以下、支障物候補と言う)として抽出する。支障物判定部305は、支障物候補認識部304により抽出される支障物候補の大きさおよび当該支障物候補の移動ベクトルの少なくとも1つに基づいて、支障物候補の中から、支障物を検知する。これにより、検知領域に存在する物体のうち、支障物となり得る可能性が高い物体を支障物として検出できるので、支障物の検知精度を向上させることができる。
【0031】
結果出力部306は、支障物判定部305による支障物の検知結果を出力する。また、結果出力部306は、センサ101の撮像により得られる撮像画像に対して、当該撮像画像が得られた際に位置計測部105により計測される鉄道車両RVの走行位置を付して、検知領域データベース作成装置Dに送信する。
【0032】
次に、検知領域データベース作成装置Dの機能構成について説明する。検知領域データベース作成装置Dは、
図2に示すように、取得部310、作成部311、出力部312、および記憶部313を備える。
【0033】
本実施形態では、取得部310、作成部311、および出力部312のうち一部若しくは全ては、検知領域データベース作成装置Dが有するCPU等のプロセッサが記録装置202に記憶されるソフトウェアを実行することにより実現される。
【0034】
また、取得部310、作成部311、および出力部312のうち一部若しくは全ては、LSI、ASIC、FPGA等の回路基板であるハードウェアによって実現されても良い。または、取得部310、作成部311、および出力部312は、プロセッサによって実行されるソフトウェア、およびハードウェアの協働によって実現されても良い。
【0035】
記憶部313は、ROMや、フラッシュメモリ、HDD、SDカード等の不揮発性の記憶媒体、およびRAMやレジスタ等の揮発性の記憶媒体を含む。そして、記憶部313は、検知領域データベース等の各種情報を記憶する。
【0036】
取得部310は、鉄道車両RVから、撮像画像、および当該撮像画像が得られた際の鉄道車両RVの走行位置を取得する。そして、取得部310は、取得した撮像画像と、当該撮像画像が得られた際の鉄道車両RVの走行位置と、を対応付けて、記録装置202に保存する。例えば、鉄道車両RVからの情報の取得は、所定の走行が行われた後、車両基地や駅等にてオフラインで行われても良いし、また、走行中に無線回線を介してリアルタイムで行われても良い。
【0037】
作成部311は、記録装置202において対応付けて記憶される撮像画像および鉄道車両RVの走行位置に基づいて、検知領域データベースを作成する。そして、作成部311は、作成した検知領域データベースを、記憶部313に保存する。
【0038】
これにより、鉄道車両RVの走行区間を上方から撮像した画像(例えば、航空写真)からは確認できない対象位置の情報(例えば、駅のホームの高さや幅)に基づいて、検知領域データベースを作成できるので、鉄道車両RVの支障物を高精度に検知可能とする検知領域データベースを作成することができる。
【0039】
ここで、検知領域データベースの一例について説明する。
図3は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベースの作成処理の一例を説明するための図である。本実施形態では、検知領域データベースは、下記の表1に示すように、対象位置(例えば、キロ程)と、検知領域情報と、を対応付ける。
【0040】
検知領域情報は、表1に示すように、種別番号、有効範囲N1、内側距離N2、幅N3、下側距離N4、および高さN5を含む。また、検知領域情報は、対象位置における拡大領域の位置情報を含んでいても良い。例えば、検知領域情報は、鉄道車両RVが走行するレールRを基準として、鉄道車両RVの幅方向X(
図3参照)において、拡大領域が右側および左側のいずれに位置するかを示す位置情報を含んでも良い。また、本実施形態では、検知領域データベースは、対象位置に対応付けて、検知領域データベースを鉄道車両RVに送信する送信位置を特定可能とする送信位置情報を含んでいても良い。
【表1】
【0041】
種別番号は、鉄道車両RVの進行方向に向かって左側の駅ホーム(対向式ホーム)、鉄道車両RVの進行方向に向かって右側の駅ホーム(島式ホーム)、鉄道車両RVの進行方向に向かって左側の遮断機、鉄道車両RVの進行方向に向かって右側の遮断器、標識、信号、トンネル、鉄橋等、対象位置の種別を表す番号である。本実施形態では、検知領域データベース作成装置Dは、種別番号と、対象位置の種別と、を対応付ける種別データベース(下記の表2参照)を記憶部313等に予め保存している。そして、作成部311は、検知領域データベース作成装置Dのユーザが検知領域データベースを作成する際に、種別データベースを表示部203に表示させて、種別データベースを参照可能とする。
【表2】
【0042】
有効範囲N1は、
図3に示すように、規定領域T(車両限界または建築限界)の外側に存在する拡大領域Eの奥行き、言い換えると、鉄道車両RVの進行方向Zへの拡大領域Eの長さである。内側距離N2は、
図3に示すように、鉄道車両RVの幅方向Xにおける、レールRの間の中間点から、拡大領域Eの内側の端までの距離である。幅N3は、
図3に示すように、鉄道車両RVの幅方向Xにおける、拡大領域Eの幅である。下側距離N4は、
図3に示すように、鉄道車両RVの高さ方向Yにおける、レールRから、拡大領域Eの下側の端までの距離である。高さN5は、
図3に示すように、鉄道車両RVの高さ方向Yにおける、拡大領域Eの高さである。
【0043】
図2に戻り、本実施形態では、作成部311は、撮像画像、および入力欄を含む画面(以下、データベース作成画面と言う)を表示部203に表示させる。ここで、入力欄は、検知領域データベース作成装置Dのユーザによって入力された対象位置および検知領域情報を表示する欄である。これにより、検知領域データベース作成装置Dのユーザは、表示部203に表示される撮像画像を確認しながら、対象位置および検知領域情報を入力することができるので、検知領域データベースの作成作業を容易化することができる。この場合、作成部311は、入力欄を用いて入力される対象位置と検知領域情報とを対応付ける検知領域データベースを作成する。
【0044】
また、本実施形態では、作成部311は、画像認識処理によって、撮像画像から、対象位置のシンボルとなる画像(以下、対象位置画像と言う)を検出する。具体的には、作成部311は、撮像画像から、駅のホームの柵、踏切、専用の標識、信号等を対象位置画像として検出する。本実施形態では、作成部311は、鉄道車両RVの進行方向Zに向かって、鉄道車両RVの先端から、予め設定された距離(例えば、30m)先に存在する対象位置のシンボルとなる画像を対象位置画像として検出する。
【0045】
そして、作成部311は、対象位置画像を検出した場合、当該対象位置画像を検出したことを示す検出情報(例えば、対象位置画像を検出したことを示すメッセージ)を表示部203に表示させる。これにより、検知領域データベース作成装置Dのユーザが、表示部203に表示される撮像画像を確認しながら、検知領域データベースを作成する際に、撮像画像に対象位置画像が含まれることを容易に認識することができるので、検知領域データベースの作成作業を容易化することができる。
【0046】
また、本実施形態では、作成部311は、作成した検知領域データベースに基づいて、撮像画像に対して、検知領域を示す画像である検知領域画像を重畳したプレビュー画像を表示部203に表示させる。これにより、撮像画像上において検知領域を確認することができるので、鉄道車両RVの支障物をより高精度に検知可能とする検知領域データベースを作成することができる。
【0047】
また、本実施形態では、作成部311は、地図情報を含むデータベース作成画面を表示部203に表示させる。ここで、地図情報は、撮像画像が得られた際の鉄道車両RVの走行位置が特定可能な地図である。これにより、検知領域データベース作成装置Dのユーザは、表示部203に表示される地図情報によって、鉄道車両RVの走行区間全体を確認しながら、検知領域データベースの作成作業を行うことができるので、検知領域データベースの作成作業を容易化することができる。
【0048】
出力部312は、記憶部313に記憶される検知領域データベースを鉄道車両RVに送信(出力)する。本実施形態では、出力部312は、検知領域データベースが含む送信位置情報を含む場合、当該送信位置情報が示す送信位置(例えば、対象位置の手前、200mの位置)に鉄道車両RVが達した際に、当該送信位置情報と対応付けられた対象位置および検知領域情報を含む検知領域データベースを、鉄道車両RVに送信する。
【0049】
図4は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベースの作成処理の一例を説明するための図である。例えば、作成部311は、
図4に示すように、撮像画像Fに含まれる駅のホームの柵を対象位置画像Sとして検出し、対象位置画像を検出したことを示す検出情報を表示部203に表示させる。そして、
図4に示すように、検出した対象位置画像CGが対向式ホームの画像である場合、作成部311は、対象位置と、鉄道車両RVの進行方向Zにおいて規定領域T(車両限界または建築限界)の左側に存在する拡大領域Eの検知領域情報と、を対応付ける検知領域データベース(下記の表3参照)を作成する。
【表3】
【0050】
図5は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベースの作成処理の一例を説明するための図である。例えば、作成部311は、
図5に示すように、撮像画像Fに含まれる駅のホームの柵を対象位置画像Sとして検出し、対象位置画像Sを検出したことを示す検出情報を表示部203に表示させる。そして、
図5に示すように、検出した対象位置画像CGが島式ホームの画像である場合、作成部311は、対象位置と、鉄道車両RVの進行方向Zにおいて規定領域Tの右側に存在する拡大領域Eの検知領域情報と、を対応付ける検知領域データベース(下記の表4参照)を作成する。
【表4】
【0051】
図6は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベースの作成処理の一例を説明するための図である。例えば、作成部311は、
図6に示すように、撮像画像Fに含まれる遮断機を対象位置画像Sとして検出し、当該対象位置画像Sを検出したことを示す検出情報を表示部203に表示させる。そして、
図6に示すように、検出した対象位置画像CGが遮断機である場合、作成部311は、対象位置と、規定領域Tの両側に存在する拡大領域Eの検知領域情報と、を対応付ける検知領域データベース(下記の表5参照)を作成する。
【表5】
【0052】
図6に示すように、検出した対象位置画像Sが遮断機でありかつ対象位置が複線である場合、作成部311は、鉄道車両RVが走行するレールに並行して敷設されたレール側の拡大領域Eの幅を、鉄道車両RVが走行するレール側の拡大領域Eの幅よりも長くするものとする。例えば、左側通行を採用している場合には、作成部311は、鉄道車両RVの進行方向Zの右側に存在する拡大領域Eの幅を、鉄道車両RVの進行方向Zの左側に存在する拡大領域Eの幅よりも長くする。
【0053】
図7は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベース作成処理の一例を説明するための図である。例えば、作成部311は、
図7に示すように、撮像画像Fに含まれる分岐器BGを検出する。作成部311は、撮像画像Fから分岐器BGが検出された場合、分岐器BGの先の進路のうち鉄道車両RVが進む進路を特定可能とする進路情報(例えば、直進を示す種別番号)と、分岐器BGの分岐位置と、を対応付ける検知領域データベース(下記の表6参照)を作成する。
【表6】
【0054】
これにより、鉄道車両RVが有する検知領域認識部303が撮像画像F内に検知領域を設定する際に、鉄道車両RVが進む進路に対してのみ検知領域を設定することが可能となり、鉄道車両RVの走行の支障となり得る支障物をより高精度に検知することが可能となる。本実施形態では、分岐器BGの分岐位置は、予め設定された駅から分岐器までの距離(キロ程)である。
【0055】
図8は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベースの作成処理の一例を説明するための図である。例えば、作成部311は、
図8に示すように、撮像画像Fに含まれるトンネルの入口EGを検出する。作成部311は、撮像画像Fからトンネルの入口EGが検出された場合、トンネルの入口EGを示す種別番号と、トンネルの入口EGの位置であるトンネル入口位置と、を対応付けるトンネル情報を含む検知領域データベース(下記の表7参照)を作成する。
【表7】
【0056】
これにより、鉄道車両RVがトンネルを通過する際に鉄道車両RVが有するセンサ101の感度を上げて撮像画像Fを用いた支障物の検知精度を上げたり、鉄道車両RVの走行位置の計測方法を、衛星測位システムを用いた計測方法から加速度センサやジャイロセンサ等を用いた計測方法に切り替えたりすることが可能となる。
【0057】
図9は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置による検知領域データベースの作成処理の一例を説明するための図である。例えば、作成部311は、
図9に示すように、撮像画像Fに含まれるトンネルの出口OGを検出する。作成部311は、撮像画像Fからトンネルの出口OGが検出された場合、トンネルの出口OGを示す種別番号と、トンネルの出口OGの位置であるトンネル出口位置と、を対応付けるトンネル情報を含む検知領域データベース(下記の表8参照)を作成する。
【表8】
【0058】
これにより、鉄道車両RVがトンネルから出る際に鉄道車両RVが有するセンサ101の感度を下げて撮像画像Fの白とびを防止したり、鉄道車両RVの走行位置の計測方法を、衛星測位システムを用いた計測方法に戻したりすることが可能となる。
【0059】
図10は、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置において表示されるデータベース作成画面の一例を示す図である。例えば、作成部311は、
図10に示すように、動画像G1、入力欄G2、地図情報G3、および各種ボタンB1~B7を含むデータベース作成画面Gを表示部203に表示させる。
【0060】
巻戻しボタンB1は、データベース作成画面Gに表示される動画像G1(撮像画像の一例)の巻戻しを指示するためのボタンである。コマ戻しボタンB2は、動画像G1のコマ戻しを指示するためのボタンである。停止ボタンB3は、動画像G1の再生の停止を指示するためのボタンである。コマ送りボタンB4は、動画像G1のコマ送りを指示するためのボタンである。一時停止ボタンB5は、動画像G1の再生の一時停止を指示するためのボタンである。早送りボタンB6は、動画像G1の早送りを指示するためのボタンである。作成指示ボタンB7は、検知領域データベースの作成を指示するためのボタンである。
【0061】
作成部311は、各種ボタンB1~B6の操作に応じて、動画像G1を含むデータベース作成画面Gを表示部203に表示させる。その際、作成部311は、
図10に示すように、動画像G1を構成する各フレームに対して、鉄道車両RVのセンサ101によって当該フレームが得られた際の鉄道車両RVの走行位置(例えば、緯度および経度、キロ程)や日時を示す場所日時情報I1を表示させる。
【0062】
また、作成部311は、
図10に示すように、動画像G1を構成する各フレームにおいて対象位置画像を検出する位置(例えば、鉄道車両RVの進行方向に向かって、鉄道車両RVの先端から予め設定された距離(例えば、30m)先)に、鉄道車両RVの幅方向Xに描かれる基準線Lを表示させる。これにより、検知領域データベース作成装置Dのユーザが、動画像G1内における対象位置画像の位置を容易に把握することができる。
【0063】
地図情報G3は、動画像G1が得られた際の鉄道車両RVの走行位置を含む地図である。作成部311は、
図10に示すように、地図情報G3に対して、鉄道車両RVの走行位置を示す走行位置表示Pを含める。これにより、検知領域データベース作成装置Dのユーザは、地図情報G3によって、鉄道車両RVの走行区間全体を確認しながら、検知領域データベースの作成作業を行うことができるので、検知領域データベースの作成作業を容易化することができる。
【0064】
入力欄G2は、検知領域データベースのインデックスと、対象位置(例えば、緯度および経度、キロ程)と、検知領域情報(例えば、種別番号、有効範囲、内側距離、幅、下側距離、高さ、対象位置が属する駅または施設の情報である駅・施設情報)と、送信位置情報と、を対応付けて表示する欄である。
【0065】
本実施形態では、作成部311は、入力欄G2に対して、対象位置、検知領域情報、および送信位置情報が入力されていない場合、当該入力欄G2に対して、対象位置、検知領域情報、および送信位置情報それぞれのデフォルト値を表示させるものとする。ここで、対象位置のデフォルト値は、動画像G1が得られた際の鉄道車両RVの走行位置から、予め設定された距離(例えば、30m)先の走行位置とする。送信位置情報のデフォルト値は、動画像G1が得られた際の鉄道車両RVの走行位置から、予め設定された距離(例えば、200m)手前の走行位置とする。検知領域情報のデフォルト値は、対象位置の種別毎に予め設定された検知領域情報とする。
【0066】
検知領域データベース作成装置Dのユーザは、入力欄G2に表示される対象位置、検知領域情報、および送信位置情報のデフォルト値を参照しながら、対象位置、検知領域情報、および送信位置情報を入力欄G2に入力可能である。その後、ボタンB7が押下されて、検知領域データベースの作成が指示されると、作成部311は、入力欄G2に入力される対象位置と、検知領域情報と、送信位置情報と、を対応付けた検知領域データベースを作成する。
【0067】
本実施形態では、作成部311は、入力欄G2に入力される検知領域情報を含む検知領域データベースを作成しているが、撮像画像および走行位置に基づいて、自動的に、検知領域データベースを作成するものであれば良い。例えば、作成部311は、撮像画像が得られた際の鉄道車両RVの走行位置から予め設定された距離先の走行位置を対象位置に決定する。さらに、作成部311は、撮像画像上において、検知領域データベース作成装置Dのユーザによって指定された拡大領域(例えば、矩形の領域)の形状を、実空間における拡大領域の実寸の形状に変換する。そして、作成部311は、決定した対象位置と、拡大領域の実寸の形状を示す検知領域情報と、を対応付けるデータベースを検知領域データベースとして作成しても良い。
【0068】
このように、本実施形態にかかる検知領域データベース作成装置Dによれば、鉄道車両RVの走行区間を上方から撮像した画像からは確認できない対象位置の情報に基づいて、検知領域データベースを作成できるので、鉄道車両RVの支障物を高精度に検知可能とする検知領域データベースを作成することができる。
【0069】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
101 センサ
102 走行支障物検知装置
103,202 記録装置
104,203 表示部
105 位置計測部
201 制御部
310 取得部
311 作成部
312 出力部
313 記憶部
RV 鉄道車両
D 検知領域データベース作成装置