(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】部分放電検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20200101AFI20220509BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G01R31/12 A
G01R31/00
(21)【出願番号】P 2020075588
(22)【出願日】2020-04-21
(62)【分割の表示】P 2018513955の分割
【原出願日】2016-04-25
【審査請求日】2020-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】水谷 元春
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 欣一
(72)【発明者】
【氏名】塩入 哲
(72)【発明者】
【氏名】水出 隆
(72)【発明者】
【氏名】樽井 将邦
(72)【発明者】
【氏名】宮内 康寿
(72)【発明者】
【氏名】長 広明
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇介
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-149896(JP,A)
【文献】特開2010-038602(JP,A)
【文献】特開2012-220208(JP,A)
【文献】特開2010-230497(JP,A)
【文献】特開2009-080057(JP,A)
【文献】特開平01-234015(JP,A)
【文献】米国特許第06414829(US,B1)
【文献】特開平11-064431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
G01R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を収容した収容部材に設けられて部分放電に起因する電気的な変化を示す検出信号を取得する信号取得部と、
前記検出信号に含まれる、部分放電が電磁波に由来するものとして定められた第1周波数以上の周波数の第1検出信号を抽出して通過させ、前記検出信号に含まれる当該第1周波数未満の周波数の検出信号を遮断する第1フィルタ部と、
前記検出信号に含まれる、前記第1周波数より低い周波数帯域であって、部分放電によって接地電位へと流れる接地電流に由来するものとして定められ、かつ
前記収容部材を介して表面電位の変化として検出される第2周波数と第3周波数との間の周波数帯域である抽出用周波数帯域の第2検出信号を抽出して通過させ、前記検出信号に含まれる前記抽出用周波数帯域以外の検出信号を遮断する第2フィルタ部と、
前記第1フィルタ部を通過した前記第1検出信号及び前記第2フィルタ部を通過した前記第2検出信号に基づいて、部分放電の存在を判定する判定部と、
を備える部分放電検出装置。
【請求項2】
前記判定部は、
前記第1検出信号及び前記第2検出信号のいずれか一方の強度が予め定められた第1強度閾値以上となった時刻である開始時刻から予め定められた判定時間の間に、前記第1検出信号及び前記第2検出信号の他方の強度が予め定められた第2強度閾値以上となった場合、前記部分放電が存在すると判定する
請求項1に記載の部分放電検出装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記第1検出信号の強度が前記第1強度閾値以上となった前記開始時刻から前記判定時間の間に、前記第2検出信号の強度が前記第2強度閾値以上となった場合、前記部分放電が存在すると判定する
請求項2に記載の部分放電検出装置。
【請求項4】
前記信号取得部が取得した前記検出信号を前記第1フィルタ部及び前記第2フィルタ部へ伝送する第1配線及び第2配線を有する伝送部を更に備え、
前記信号取得部は、
前記第1配線と接続され前記検出信号を取得する平面状の第1電極と、
前記第2配線と接続され前記第1電極と対向する平面状の第2電極と、
を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の部分放電検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、部分放電検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器及び電気機器を収容する箱体を有する電気装置の内部の破損等に起因する部分放電を検出する部分放電検出装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-149896号公報
【文献】特開2012-220209号公報
【文献】特開2012-220208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、部分放電検出装置の部分放電の検出精度は十分と言えないといった課題がある。
【0005】
実施形態は、上記に鑑みてなされたものであって、部分放電の検出精度を向上させることができる部分放電検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の部分放電検出装置は、信号取得部と、第1フィルタ部と、第2フィルタ部と、判定部と、を備える。信号取得部は、電気機器を収容した収容部材に設けられて部分放電に起因する電気的な変化を示す検出信号を取得する。第1フィルタ部は、前記検出信号に含まれる、部分放電が電磁波に由来するものとして定められた第1周波数以上の周波数の第1検出信号を抽出して通過させ、前記検出信号に含まれる当該第1周波数未満の周波数の検出信号を遮断する。第2フィルタ部は、前記検出信号に含まれる、前記第1周波数より低い周波数帯域であって、部分放電によって接地電位へと流れる接地電流に由来するものとして定められ、かつ前記収容部材を介して表面電位の変化として検出される第2周波数と第3周波数との間の周波数帯域である抽出用周波数帯域の第2検出信号を抽出して通過させ、前記検出信号に含まれる前記抽出用周波数帯域以外の検出信号を遮断する。判定部は、前記第1フィルタ部を通過した前記第1検出信号及び前記第2フィルタ部を通過した前記第2検出信号に基づいて、部分放電の存在を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態の部分放電検出装置を有する電気装置システムの斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の電気装置システムの回路構成を説明する内部構成図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の部分放電検出装置の処理部の機能を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、制御部が実行する判定用プログラムのフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2実施形態の部分放電検出装置の処理部の機能を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態の部分放電検出装置を有する電気装置システムの全体構成図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態の部分放電検出装置を有する電気装置システムの全体構成図である。
【
図9】
図9は、第5実施形態の部分放電検出装置を有する電気装置システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の例示的な実施形態や変形例には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、重複する説明が部分的に省略される。実施形態や変形例に含まれる部分は、他の実施形態や変形例の対応する部分と置き換えて構成されることができる。また、実施形態や変形例に含まれる部分の構成や位置等は、特に言及しない限りは、他の実施形態や変形例と同様である。
【0009】
実施形態による部分放電検出装置は、電気装置の電気機器をモールドする絶縁材料の破損等に起因する部分放電の存在を、検出信号から抽出した部分放電に由来する第1検出信号及び第2検出信号に基づいて判定して検出する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の部分放電検出装置14を有する電気装置システム10の斜視図である。
図1に示すように、電気装置システム10は、電気装置12と、部分放電検出装置14とを備える。
【0011】
電気装置12は、収容部材の一例である箱体20と、電気機器22と、接地部材24とを有する。
【0012】
箱体20は、金属等の導体材料を含む。箱体20は、例えば、6枚の平面を有する中空の直方体形状に構成されている。箱体20は、電気機器22及び接地部材24を収容して保持する。
【0013】
電気機器22は、箱体20の内部に設けられている。電気機器22は、電気的な動作をする電気部品である。電気機器22は、例えば、遮断器、スイッチ及び主回路導体等である。
【0014】
接地部材24は、箱体20の内部に設けられている。接地部材24は、地面等の接地電位に接続されている。接地部材24は、箱体20及び電気機器22を接地する。
【0015】
部分放電検出装置14は、信号取得部30と、伝送部32と、処理部34とを有する。
【0016】
信号取得部30は、箱体20に設けられている。信号取得部30は、例えば、絶縁材料を介して、箱体20に固定または設置されている。信号取得部30は、例えば、電極を含む。信号取得部30は、部分放電に起因する電気的な変化(例えば、表面電位の変化)を示す検出信号DS0を取得する。
【0017】
伝送部32は、信号取得部30と処理部34とを接続する。伝送部32の一例は、同軸ケーブルである。伝送部32は、信号取得部30が取得した検出信号DS0を処理部34へ伝送する。
【0018】
処理部34は、伝送部32を介して、信号取得部30から検出信号DS0を取得する。処理部34は、検出信号DS0に基づいて、部分放電の存在を判定して検出する処理を実行する。
【0019】
図2は、第1実施形態の電気装置システム10の回路構成を説明する内部構成図である。
図2に示すように、電気機器22は、商用電源等の電源90に接続されている。電気機器22は、電源90から交流電力を受電する。
【0020】
電気機器22及び箱体20は、接地部材24に接続されている。これにより、電気機器22及び箱体20は、接地部材24を介して、接地電位に接続される。この結果、電気機器22及び箱体20は、接地部材24を介して、矢印AR1で示すように、接地電位との間で電流を流す。
【0021】
箱体20の内部には空気または樹脂等の絶縁材料が充填されている。これにより、電気機器22は、絶縁材料によってモールドされる。電気機器22は箱体20と間隔を空けて配置されている。これにより、電気機器22と箱体20との間には、容量が構成される。この結果、矢印AR2で示すように、電気機器22と箱体20とを含む回路に電流が流れる。更に、箱体20に流れる電流が生じさせた起電力が、矢印AR3で示すように、部分放電検出装置14へと電流を流す。
【0022】
図3は、第1実施形態の部分放電検出装置14の処理部34の機能を示すブロック図である。
図3に示すように、部分放電検出装置14の処理部34は、第1フィルタ部の一例であるハイパスフィルタ40と、第2フィルタ部の一例であるバンドパスフィルタ42と、制御装置44と、出力部46とを備える。
【0023】
ハイパスフィルタ40は、伝送部32を介して、信号取得部30と接続されている。ハイパスフィルタ40は、信号取得部30から検出信号DS0を受信する。ハイパスフィルタ40は、検出信号DS0に含まれる、予め定められた第1周波数以上の周波数の第1検出信号DS1を抽出して通過させ、第1周波数未満の周波数の検出信号DS0を遮断する。第1周波数の一例は、100MHzである。ハイパスフィルタ40は、制御装置44と接続されている。ハイパスフィルタ40は、第1検出信号DS1を制御装置44へと送信する。
【0024】
バンドパスフィルタ42は、伝送部32を介して、信号取得部30と接続されている。バンドパスフィルタ42は、信号取得部30から検出信号DS0を受信する。バンドパスフィルタ42は、検出信号DS0に含まれる、第2周波数と第3周波数との間の周波数帯域である抽出用周波数帯域の第2検出信号DS2を抽出して通過させ、抽出用周波数帯域以外の検出信号DS0を遮断する。第2周波数及び第3周波数は、第1周波数よりも小さい。第2周波数の一例は、1MHzである。第3周波数の一例は、20MHzである。バンドパスフィルタ42は、制御装置44と接続されている。バンドパスフィルタ42は、第2検出信号DS2を制御装置44へと送信する。
【0025】
制御装置44は、制御部50と、記憶部52とを有する。制御装置44の一例は、マイクロコンピュータ等のコンピュータである。
【0026】
制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む演算装置である。制御部50は、判定部の一例である第1判定部54及び第2判定部56を有する。第1判定部54及び第2判定部56は、伝送部32によって伝送された第1検出信号DS1及び第2検出信号DS2に基づいて、部分放電の存在を判定して検出する。制御部50は、例えば、記憶部52に記憶された判定用プログラムを読み込むことによって、第1判定部54及び第2判定部56として機能する。第1判定部54及び第2判定部56の少なくとも一部は、回路等のハードウエアによって構成してもよい。
【0027】
第1判定部54は、第1検出信号DS1及び第2検出信号DS2のいずれか一方の強度が予め定められた第1強度閾値Th1以上となった時刻である開始時刻STを抽出する。本実施形態の第1判定部54は、第1検出信号DS1の強度が第1強度閾値Th1以上となった開始時刻STを抽出する。第1判定部54は、開始時刻STを第2判定部56へ出力する。
【0028】
第2判定部56は、開始時刻STから判定時間JTの間に第1検出信号DS1及び第2検出信号DS2の他方の強度が予め定められた第2強度閾値Th2以上となった場合、部分放電が存在すると判定する。判定時間JTは、一般的な部分放電が継続する時間であり、例えば、数μ秒である。開始時刻STから判定時間JTの間に第2検出信号DS2の強度が第2強度閾値Th2以上となった場合、本実施形態の第2判定部56は、部分放電が存在すると判定する。一方、第2検出信号DS2の強度が開始時刻STから判定時間JTの間に第2強度閾値Th2以上とならない場合、第2判定部56は、部分放電が存在しないと判定する。この場合、第2検出信号DS2の強度は第1検出信号DS1の強度よりも小さくなることが多いので、第2強度閾値Th2は、第1強度閾値Th1よりも小さいことが好ましい。第2判定部56は、部分放電の存在を判定した結果である判定結果を出力部46へ送信する。
【0029】
記憶部52は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置を含む。記憶部52は、制御部50によって実行される判定用プログラム等のプログラム、及び、プログラムの実行において使用されるパラメータ等を記憶する。記憶部52は、例えば、判定時間JT、第1強度閾値Th1及び第2強度閾値Th2等をパラメータとして記憶する。
【0030】
出力部46の一例は、液晶ディスプレイ等の画像表示装置である。出力部46は、制御部50の第2判定部56から判定結果を取得する。出力部46は、部分放電の判定結果を示す画像を表示して出力する。出力部46は、音声等によって判定結果を出力してもよい。
【0031】
図4は、検出信号を説明する図である。
図4に示すように、信号取得部30は、箱体20の表面電位の時間変化を検出信号DS0として取得する。
【0032】
ハイパスフィルタ40は、検出信号DS0のうち、第1周波数である100MHz以上の周波数の第1検出信号DS1を通過させて、制御部50へと送信する。バンドパスフィルタ42は、第2周波数である1MHzと第3周波数である20MHzとの間の抽出用周波数帯域の第2検出信号DS2を通過させて、制御部50へと送信する。
【0033】
一般に、部分放電は、電気機器22に電源90から供給される交流電力の周波数の2倍の周波数で数μ秒の間発生する場合が多い。本願発明者は、複数種の電気機器22によって発生する数μ秒の各部分放電を測定した。これにより、本願発明者は、各部分放電が電磁波に由来すると考えられる100MHz(即ち、第1周波数)以上の第1検出信号DS1と、部分放電によって接地電位へと流れる接地電流に由来すると考えられる1MHz(即ち、第2周波数)と20MHz(即ち、第3周波数)との間の周波数帯域の第2検出信号DS2とを含むことを見出した。即ち、本願発明者は、部分放電が存在する時間帯に、第1検出信号DS1及び第2検出信号DS2の両方が強くなることを見出した。
【0034】
例えば、部分放電は、第1検出信号DS1及び第2検出信号DS2の両方の電位(即ち、強度)が高くなっている時間帯(
図4の点線の四角で示す時間帯)に存在する。一方、
図4に一点鎖線の四角で示す時間帯は、第1検出信号DS1及び第2検出信号DS2のいずれか一方の電位しか高くなっていないので、部分放電は存在しない。これにより、制御部50は、第1検出信号DS1の強度が第1強度閾値Th1以上となる開始時刻STから判定時間JTの間に、第2検出信号DS2が第2強度閾値Th2以上となった場合、部分放電が存在すると判定できる。このように、制御部50は、第1検出信号DS1及び第2検出信号DS2の強度に基づいて、部分放電の存在を判定することができる。
【0035】
図5は、制御部50が実行する判定用プログラムのフローチャートである。制御部50は、記憶部52から判定用プログラムを読み込むことによって、
図5に示すフローチャートの処理を開始する。
【0036】
図5に示すように、制御部50の第1判定部54は、ハイパスフィルタ40から第1検出信号DS1を取得する(S100)。例えば、第1判定部54は、第1検出信号DS1の電位または当該電位の絶対値(即ち、大きさ)に対応する強度を取得する。
【0037】
第1判定部54は、記憶部52から第1強度閾値Th1を取得して、第1検出信号DS1の強度が第1強度閾値Th1以上か否かを判定する(S102)。第1判定部54は、第1検出信号DS1の強度が第1強度閾値Th1以上でないと判定すると(S102:No)、ステップS100以降を繰り返す。この後、第1判定部54は、第1検出信号DS1の強度が第1強度閾値Th1以上となるまで、ステップS100、S102を繰り返す。
【0038】
第1判定部54は、第1検出信号DS1の強度が第1強度閾値Th1以上であると判定すると(S102:Yes)、当該判定の時刻を開始時刻STとして、第2判定部56へ出力する(S104)。
【0039】
第2判定部56は、開始時刻STを取得すると、バンドパスフィルタ42から第2検出信号DS2を取得する(S106)。第2判定部56は、第2検出信号DS2の電位または当該電位の絶対値(即ち、大きさ)に対応する強度を取得する。尚、第2判定部56は、開始時刻STとともに、第1判定部54を介してバンドパスフィルタ42から第2検出信号DS2を取得してもよい。
【0040】
第2判定部56は、記憶部52から第2強度閾値Th2を取得して、第2検出信号DS2の強度が第2強度閾値Th2以上か否かを判定する(S108)。
【0041】
第2判定部56は、第2検出信号DS2の強度が第2強度閾値Th2以上でないと判定すると(S108:No)、記憶部52から判定時間JTを取得して、開始時刻STから判定時間JTが経過したか否かを判定する(S110)。第2判定部56は、判定時間JTが経過していないと判定すると(S110:No)、ステップS106以降を繰り返す。即ち、第2判定部56は、第2検出信号DS2の強度が第2強度閾値Th2以上とならない場合、開始時刻STから判定時間JTが経過するまで、ステップS106、S108を繰り返す。
【0042】
一方、第2判定部56は、開始時刻STから判定時間JTが経過したと判定すると(S110:Yes)、ステップS100以降を繰り返す。このように、判定時間JT内に第2検出信号DS2の強度が第2強度閾値Th2以上とならないことは、第1検出信号DS1及び第2検出信号DS2の両方の強度が同じ時間帯内で大きくならなかったことを意味する。この場合、第2判定部56は、部分放電が存在しないと判定して、ステップS100以降を繰り返す。
【0043】
ここで、開始時刻STから判定時間JT内に第2検出信号DS2の強度が第2強度閾値Th2以上となった場合、第1検出信号DS1及び第2検出信号DS2の両方の強度が同じ時間帯内で大きくなっていることを意味し、部分放電が存在することを示す。この場合、第2判定部56は、第2検出信号DS2の強度が第2強度閾値Th2以上になったと判定することにより(S108:Yes)、部分放電が存在すると判定して、存在する旨の判定結果を出力部46へ送信する(S112)。この後、出力部46は、当該判定結果を画像または音声等によって出力する。
【0044】
上述したように、部分放電検出装置14では、第1判定部54及び第2判定部56が、検出信号DS0のうち、部分放電によって大きくなる第1周波数以上の第1検出信号DS1及び抽出用周波数帯域の第2検出信号DS2に基づいて、部分放電の存在を判定して検出している。このように、部分放電検出装置14は、部分放電の検出においてノイズとなる第1検出信号DS1及び第2検出信号DS2以外の信号成分を検出信号DS0から除去して、部分放電の存在を判定するので、部分放電の検出精度を向上させることができる。
【0045】
部分放電検出装置14では、第1判定部54が、抽出用周波数帯域よりも周波数が高くノイズの少ない第1検出信号DS1に基づいて開始時刻STを判定するので、開始時刻STの判定を向上させて、部分放電の判定精度を向上させることができる。
【0046】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態の部分放電検出装置114の処理部134の機能を示すブロック図である。
図6に示すように、部分放電検出装置114の処理部134は、ハイパスフィルタ40と、バンドパスフィルタ42と、ピーク検波部60と、制御装置44と、出力部46とを備える。
【0047】
ピーク検波部60は、ハイパスフィルタ40が送信した高周波数の第1検出信号DS1のピークを鈍らせ低周波にする。例えば、ピーク検波部60は、検波用閾値以上の強度を有する各ピークの時間幅(例えば、半値幅)が広がるように、第1検出信号DS1のピークを鈍らせる。検波用閾値は、例えば、第1強度閾値Th1よりも小さい。
【0048】
制御装置44の制御部50は、第1判定部54と、第2判定部56と、ウェーブレット処理部62とを有する。制御部50は、例えば、記憶部52に記憶された判定用プログラムを読み込むことによって、第1判定部54、第2判定部56及びウェーブレット処理部62として機能する。
【0049】
第1判定部54は、ピーク検波部60が鈍らせた第1検出信号DS1の強度と第1強度閾値Th1とを比較する。第1判定部54は、第1検出信号DS1の強度が第1強度閾値Th1以上となった時刻を開始時刻STとして、第2判定部56へ出力する。
【0050】
ウェーブレット処理部62は、ノイズ等を含む第2検出信号DS2にウェーブレット処理を実行することにより、第2周波数と第3周波数との間の抽出用周波数帯域のノイズが低減された第2検出信号DS2を抽出する。本実施形態では、バンドパスフィルタ42及びウェーブレット処理部62が、第2フィルタ部の一例である。
【0051】
本実施形態では、バンドパスフィルタ42を省略してもよい。この場合、ウェーブレット処理部62は、検出信号DS0にウェーブレット処理を実行して、第2周波数と第3周波数との間の抽出用周波数帯域の第2検出信号DS2を抽出する。
【0052】
ウェーブレット処理部62は、記憶部52に予め格納された複数のウェーブレット解析を含むウェーブレットデータベースから、ノイズの少ない第2検出信号DS2を抽出するために選択した最適なウェーブレット解析に基づいてウェーブレット処理を実行してもよい。
【0053】
ウェーブレット処理部62は、
図5のフローチャートにおいて、ステップS102とステップS106との間で、ウェーブレット処理を実行する。ウェーブレット処理部62は、抽出した第2検出信号DS2を第2判定部56へ出力する。
【0054】
第2判定部56は、ウェーブレット処理部62がウェーブレット処理を実行した第2検出信号DS2に基づいて、部分放電の存在を判定する。
【0055】
第2実施形態の部分放電検出装置114では、ピーク検波部60が鈍らせた第1検出信号DS1に基づいて、第1判定部54が開始時刻STを判定するので、より確実に開始時刻STを判定することができる。
【0056】
部分放電検出装置114では、制御部50のウェーブレット処理部62が検出信号DS0をウェーブレット処理して第2検出信号DS2を生成するので、第2検出信号DS2の抽出用周波数帯域の変更等に容易に対応できる。更に、ウェーブレット処理部62は、バンドパスフィルタ42が送信した第2検出信号DS2に対してウェーブレット処理を実行するので、部分放電検出装置114は、第2検出信号DS2のノイズをより低減できる。
【0057】
<第3実施形態>
図7は、第3実施形態の部分放電検出装置214を有する電気装置システム210の全体構成図である。
図7に示すように、第3実施形態の部分放電検出装置214は、伝送部32と、信号取得部230と、処理部34とを備える。
【0058】
伝送部32は、第1配線の一例であり芯線とも呼ばれる内部配線64と、第2配線の一例である外周配線66と、絶縁部材68とを有する。内部配線64及び外周配線66は、銅等の導電性材料を含む。内部配線64及び外周配線66は、信号取得部230と処理部34とを電気的に接続する。これにより、伝送部32は、信号取得部230が取得した検出信号をハイパスフィルタ40及びバンドパスフィルタ42へ伝送する。外周配線66は、内部配線64を囲むように、内部配線64の外周側に設けられている。絶縁部材68は、絶縁材料を含む。絶縁部材68は、内部配線64と外周配線66との間、及び、外周配線66の外周側に設けられている。これにより、絶縁部材68は、内部配線64と外周配線66とを電気的に絶縁する。尚、外周配線66の外周側に設けられた絶縁部材68は、シースとも呼ばれる。
【0059】
信号取得部230は、第1電極70と、第2電極72と、第1接続配線74と、第2接続配線76とを有する。
【0060】
第1電極70及び第2電極72は、平面状に構成されている。第1電極70及び第2電極72は、導電性材料を含む。
【0061】
第1電極70は、絶縁塗料等を含む絶縁膜78を介して、箱体20に設けられている。第1電極70は、検出信号DS0を取得する。尚、絶縁膜78の比誘電率は、小さいほど好ましい。第1電極70は、箱体20の一面とほぼ平行に設置されている。第1電極70は、第1接続配線74と接続されている。これにより、第1電極70は、第1接続配線74を介して、伝送部32の内部配線64と電気的に接続される。
【0062】
第2電極72は、第1電極70を挟み、箱体20の反対側に配置されている。即ち、第2電極72は、第1電極70よりも箱体20の遠方に設けられている。第2電極72は、伝送部32の箱体20側の端部よりも、箱体20側に配置されている。第2電極72は、第1電極70と間隔dを空けて配置されている。第2電極72と第1電極70との間には、空気または絶縁材料等が介在している。従って、第2電極72は、第1電極70と電気的に絶縁されている。第2電極72は、第1電極70及び箱体20の一面とほぼ平行に設置されている。第2電極72の中央部には、第1接続配線74を通すための開口73が形成されている。第2電極72は、第2接続配線76と接続されている。これにより、第2電極72は、第2接続配線76を介して、伝送部32の外周配線66と電気的に接続される。第2電極72は、電気的にフローティングしている。尚、第2電極72は、地面等の接地電位に接続されていてもよい。
【0063】
次に、第1電極70と第2電極72との間の間隔dの一例について説明する。第1電極70及び第2電極72と間の間隔dは、次の式(1)で示す検出信号DS0の強度Vが最大になるように設定することが好ましい。
V=E×sin(2πd/λ) ・・・(1)
尚、式(1)における“E”は検出信号DS0の強度Vの最大値である。“λ”は、第1検出信号DS1及び第2検出信号DS2のいずれかの周波数に対応する波長である。尚、波長λは、強度の小さい第2検出信号DS2の抽出用周波数帯域に対応する波長であることがより好ましい。従って、間隔dは、次の式(2)を満たすことが好ましい。但し、nは正の整数。
d=(2n+1)λ/4 ・・・(2)
【0064】
第2電極72は、箱体20の一面と対向する領域の面積が大きいほど、大きい電流を流すことができ、検出信号DS0を大きくできる。従って、第2電極72は、対向する箱体20の一面と同じ形状及び同じ面積であることが好ましい。
【0065】
上述したように部分放電検出装置214の信号取得部230は、伝送部32の外周配線66と接続され、箱体20及び第1電極70と対向する第2電極72を有する。これにより、第1電極70は、第2電極72の電位を基準とする電位である、第1電極70と第2電極72との間に生じる直線的な電界による起電力を、部分放電に対応する検出信号DS0として電気装置12から取得する。これにより、信号取得部230は、伝送部32の長さ及び配置等によって変化する部分放電の電荷量の影響による検出信号DS0の揺らぎを低減して、検出信号DS0を安定させることができる。
【0066】
部分放電検出装置214では、第1電極70と箱体20の一面との間に容量が形成されている。これにより、第1電極70が、箱体20の一面の電位の変化を検出信号DS0として取得する。ここで、部分放電検出装置214は、箱体20の一面と対向する第2電極72を有するので、箱体20の一面に流れる表面電流の大きさに応じた電流が第2電極72に流れる。この結果、部分放電検出装置214は、第1電極70が取得する検出信号DS0を大きくすることができ、相対的にノイズを小さくすることができる。更に、第2電極72の面積が、対向する箱体20の一面と同じ面積なので、部分放電検出装置214の大型化を抑制しつつ、検出信号DS0をより大きくすることができる。
【0067】
また、部分放電検出装置214では、第2電極72の位置を式(2)で示す位置に配置することによって、検出信号DS0をより大きくすることができる。
【0068】
部分放電検出装置214では、第2電極72が、伝送部32よりも箱体20側に配置されている。これにより、第2電極72は、箱体20の一面に流れる電流による電磁波を遮断することができるので、伝送部32へのノイズとなる当該電磁波の影響を低減できる。
【0069】
<第4実施形態>
図8は、第4実施形態の部分放電検出装置314を有する電気装置システム310の全体構成図である。
図8に示すように、第4実施形態の部分放電検出装置314は、信号取得部330と、伝送部32と、処理部34とを備える。
【0070】
信号取得部330は、第1電極70と、第2電極72と、第1接続配線74と、第2接続配線376とを有する。第2接続配線376は、折り返し部377を有する。折り返し部377は、第2電極72の近傍から第1電極70の近傍まで延び、第1電極70の近傍で折り返して、第2電極72まで延びる。これにより、第2接続配線376の折り返し部377を流れる往路の電流と復路の電流とが互いに打ち消し合うので、電磁ノイズを低減できる。
【0071】
<第5実施形態>
図9は、第5実施形態の部分放電検出装置414を有する電気装置システム410の全体構成図である。
図9に示すように、第5実施形態の部分放電検出装置414は、信号取得部430と、伝送部32と、処理部34とを備える。
【0072】
信号取得部430は、第1電極470と、第2電極472と、第1接続配線74と、第2接続配線76とを有する。
【0073】
第1電極470及び第2電極472は、平面状に構成されている。第1電極470及び第2電極472は、箱体20の一面とほぼ平行に配置されている。
【0074】
第2電極472は、絶縁塗料等を含む絶縁膜78を介して、箱体20に設けられている。第1電極470は、第2電極472を挟み、箱体20の反対側に配置されている。即ち、第2電極472は、第1電極470よりも箱体20の近傍に設けられている。
【0075】
部分放電検出装置414では、第2電極472が箱体20に設けられているので、高周波数の信号において、第2電極472の電位と箱体20の電位とをほぼ等しくすることができる。これにより、部分放電検出装置414では、第1電極470が取得する検出信号DS0のノイズを低減して、検出信号DS0を安定化することができる。
【0076】
上述した各実施形態は適宜変更してよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0077】
上述の第3~第5実施形態は、処理部34を有する構成を例に説明したが、他の構成の処理部を有してもよい。例えば、第3~第5実施形態は、処理部134等の他の部分放電の存在を判定可能な処理部を有していてもよい。他の処理部は、ハイパスフィルタ40、バンドパスフィルタ42、及び、ウェーブレット処理部62のいずれかを有し、いずれかを省略していてもよい。
【0078】
上述の実施形態では、収容部材として箱体20を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、収容部材は、電気機器22がモールドされた絶縁材料によって構成してもよい。この場合、信号取得部30、230、330、430は、モールドの絶縁材料に設けられる。
【0079】
上述の実施形態では、第1判定部54及び第2判定部56は、部分放電が存在すると一度判定すると、その旨の判定結果を出力したが、これに限定されない。例えば、第1判定部54及び第2判定部56が、部分放電が存在すると複数回判定した場合に、部分放電が存在する旨の判定結果を出力してもよい。更に、第1判定部54及び第2判定部56は、複数回の部分放電が予め定められた判定用周期ごとに存在すると判定した場合、部分放電が存在する旨の判定結果を出力してもよい。判定用周期の一例は、電源90が電気機器22に供給する交流電力の周期の2倍である。この判定用周期の値は、部分放電が当該交流電力の2倍の周期で発生することによる。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。