(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】電力変換装置、モータ駆動ユニットおよび電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
H02P 27/06 20060101AFI20220511BHJP
H02P 6/08 20160101ALI20220511BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220511BHJP
【FI】
H02P27/06
H02P6/08
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2019509081
(86)(22)【出願日】2018-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2018008278
(87)【国際公開番号】W WO2018180238
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2017064335
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】アハマッド ガデリー
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-033212(JP,A)
【文献】特開2016-019385(JP,A)
【文献】特開2015-231321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02P 6/08
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの電力を、一端同士がY結線されたn相(nは3以上の整数)の巻線を有するモータに供給する電力に変換する電力変換装置あって、
前記n相の巻線の他端に接続され、各々がローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を含むn個のレグを有するインバータと、
前記電源と前記n相の巻線との接続・非接続を相毎に切替える相分離リレー回路と、
ローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を含む中性点用レグであって、
前記n相の巻線の一端をY結線する前記モータの中性点ノードに接続される中性点用レグと、
前記電源と前記中性点ノードとの接続・非接続を切替える中性点分離リレー回路と、
を備え
、
前記相分離リレー回路は、前記インバータと前記n相の巻線の他端との間に接続され、前記インバータの前記n個のレグと前記n相の巻線の他端との接続・非接続を相毎に切替え、
前記中性点分離リレー回路は、前記電源と前記中性点用レグとの接続・非接続を切替え、
前記相分離リレー回路は、前記インバータの前記n個のレグと前記n相の巻線の他端との間に接続されたn個の相分離リレーを有し、
前記中性点分離リレー回路は、前記中性点用レグにおいて、前記インバータのn個のレグを接続するハイサイド側のノードと、前記ハイサイドスイッチ素子との間に接続された第1中性点分離リレーと、前記インバータのn個のレグを接続するローサイド側のノードと、前記ローサイドスイッチ素子との間に接続された第2中性点分離リレーとを有する、電力変換装置。
【請求項2】
前記中性点用レグは、前記インバータのn個のレグを接続するローサイド側およびハイサイド側のノードの間に接続される、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
電力変換の制御モードとして正常時の制御モードと異常時の制御モードとを備え、
前記正常時の制御モードにおいて、前記相分離リレー回路はオンし、かつ、前記中性点分
離リレー回路はオフする、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記異常時の制御において、前記中性点分離リレー回路はオンする、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
電力変換の制御モードとして正常時の制御モードと異常時の制御モードとを備え、
前記n個のレグのうちのn-2個のレグが故障した場合、
前記異常時の制御において、前記n個の第1相分離リレーおよび前記n個の第2相分離リレーのうちの、
前記n-2個の故障したレグの、n-2個の第1相分離リレー、および、n-2個の第2相分離リレーはオフし、
故障していない2個のレグの、2個の第1相分離リレー、および、2個の第2相分離リレーはオンし、
前記中性点分離リレー回路はオンする、
請求項1から4のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記モータと、
請求項1から5のいずれかに記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置を制御する制御回路と、
を有するモータ駆動ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載のモータ駆動ユニットを有する電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置、モータ駆動ユニットおよび電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動モータ(以下、単に「モータ」と表記する。)、電力変換装置およびECUが一体化された機電一体型モータが開発されている。特に車載分野において、安全性の観点から高い品質保証が要求される。そのため、部品の一部が故障した場合でも安全動作を継続できる冗長設計が取り入れられている。冗長設計の一例として、1つのモータに対して2つの電力変換装置を設けることが検討されている。他の一例として、メインのマイクロコントローラにバックアップ用マイクロコントローラを設けることが検討されている。
【0003】
特許文献1は、第1系統および第2系統を有するモータ駆動装置を開示する。第1系統は、モータの第1巻線組に接続され、第1インバータ部、電源リレーおよび逆接続保護リレーなどを有する。第2系統は、モータの第2巻線組に接続され、第2インバータ部、電源リレーおよび逆接続保護リレーなどを有する。モータ駆動装置に故障が生じていないとき、第1系統および第2系統の両方を用いてモータを駆動することが可能である。これに対し、第1系統および第2系統の一方、または、第1巻線組および第2巻線組の一方に故障が生じたとき、電源リレーは、電源から、故障した系統、または、故障した巻線組に接続された系統への電力供給を遮断する。故障していない他方の系統を用いてモータ駆動を継続させることが可能である。
【0004】
特許文献2および3も、第1系統および第2系統を有するモータ駆動装置を開示する。一方の系統または一方の巻線組が故障したとしても、故障していない系統によってモータ駆動を継続させることができる。
【0005】
特許文献4は、4つの電気的分離手段、および、2つのインバータを有し、三相モータに供給する電力を変換するモータ駆動装置を開示する。1つのインバータに対し、電源およびインバータの間に1つの電気的分離手段が設けられ、インバータおよびGNDの間に1つの電気的分離手段が設けられている。故障したインバータにおける巻線の中性点を用いて、故障していないインバータによってモータを駆動することが可能である。そのとき、故障したインバータに接続された2つの電気的分離手段を遮断状態にすることによって、故障したインバータは電源およびGNDから分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-34204号公報
【文献】特開2016-32977号公報
【文献】特開2008-132919号公報
【文献】特許第5797751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の技術では、異常時の制御におけるモータ出力のさらなる向上が求められていた。
【0008】
本開示の実施形態は、異常時の制御におけるモータ出力を向上させることが可能な電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の例示的な電力変換装置は、電源からの電力を、一端同士がY結線されたn相(nは3以上の整数)の巻線を有するモータに供給する電力に変換する電力変換装置あって、前記n相の巻線の他端に接続され、各々がローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を含むn個のレグを有するインバータと、前記電源と前記n相の巻線との接続・非接続を相毎に切替える相分離リレー回路と、ローサイドスイッチ素子およびハイサイドスイッチ素子を含む中性点用レグであって、前記n相の巻線の一端をY結線する前記モータの中性点ノードに接続される中性点用レグと、前記電源と前記中性点ノードとの接続・非接続を切替える中性点分離リレー回路と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の例示的な実施形態によると、相分離リレー回路および中性点分離リレー回路のオン・オフ状態を制御モードに応じて適切に決定することにより二相通電制御を行うことができる。これにより、異常時の制御におけるモータ出力を向上させることが可能な電力変換装置、当該電力変換装置を備えるモータ駆動ユニット、および、当該モータ駆動ユニットを備える電動パワーステアリング装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態1によるモータ駆動ユニット1000の典型的なブロック構成を模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、例示的な実施形態1による電力変換装置100の典型的な回路構成を模式的に示す回路図である。
【
図3】
図3は、制御回路300の典型的なブロック構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、三相通電制御を通じて巻線M1、M2およびM3に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示するグラフである。
【
図5】
図5は、モータの単位時間当たりの回転数(rps)とトルクT(N・m)との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、例示的な実施形態1のバリエーションによる電力変換装置100Aの典型的な回路構成を模式的に示す回路図である。
【
図7】
図7は、例示的な実施形態2による電力変換装置100Bの典型的な回路構成を模式的に示す回路図である。
【
図8】
図8は、例示的な実施形態2のバリエーションによる電力変換装置100Cの典型的な回路構成を模式的に示す回路図である。
【
図9】
図9は、例示的な実施形態3による電動パワーステアリング装置2000の典型的な構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の電力変換装置、モータ駆動ユニットおよび電動パワーステアリング装置の実施形態を詳細に説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0013】
本明細書において、電源からの電力を、三相(U相、V相、W相)の巻線を有する三相モータに供給する電力に変換する電力変換装置を例にして、本開示の実施形態を説明する。ただし、電源からの電力を、四相または五相などのn相(nは4以上の整数)の巻線を有するn相モータに供給する電力に変換する電力変換装置も本開示の範疇である。
【0014】
(実施形態1)
〔モータ駆動ユニット1000および電力変換装置100の構造〕
図1は、本実施形態によるモータ駆動ユニット1000の典型的なブロック構成を模式的に示す。
【0015】
モータ駆動ユニット1000は、典型的に、電力変換装置100、モータ200、制御回路300および角度センサ500を有する。モータ制御手法(例えばセンサレス制御)によっては、角度センサ500は不要な場合がある。
【0016】
モータ駆動ユニット1000は、モジュール化され、例えば、モータ、センサ、ドライバおよびコントローラを有するモータモジュールとして製造および販売され得る。本明細書では、構成要素としてモータ200を有するシステムを例に、モータ駆動ユニット1000を説明する。ただし、モータ駆動ユニット1000は、構成要素としてモータ200を有しない、モータ200を駆動するためのシステムであってもよい。
【0017】
電力変換装置100は、インバータ110、中性点用レグ120、相分離リレー回路130、中性点分離リレー回路140および電流センサ400を有する。電力変換装置100は、電源101(
図2を参照)からの電力をモータ200に供給する電力に変換することが可能である。インバータ110は、モータ200に接続される。例えば、インバータ110は、直流電力を、U相、V相およびW相の擬似正弦波である三相交流電力に変換することが可能である。本明細書において、部品(構成要素)同士の間の「接続」とは、主に電気的な接続を意味する。
【0018】
モータ200は、例えば三相交流モータである。モータ200は、U相の巻線M1、V相の巻線M2およびW相の巻線M3を有する。巻線M1、M2およびM3の一端同士はY結線されている。
【0019】
制御回路300は、マイクロコントローラなどから構成される。制御回路300は、電流センサ400および角度センサ500からの入力信号に基づいて電力変換装置100を制御する。その制御手法として、例えばベクトル制御、パルス幅変調(PWM)および直接トルク制御(DTC)がある。
【0020】
角度センサ500は、例えばレゾルバまたはホールICである。角度センサ500は、磁気抵抗(MR)素子を有するMRセンサとセンサマグネットとの組み合わせによっても実現される。角度センサ500は、モータ200のロータの回転角(以下、「回転信号」と表記する。)を検出し、回転信号を制御回路300に出力する。
【0021】
図2を参照して、電力変換装置100の具体的な回路構成を説明する。
【0022】
図2は、本実施形態による電力変換装置100の典型的な回路構成を模式的に示す。
【0023】
電源101は、所定の電源電圧(例えば12V)を生成する。電源101として、例えば直流電源が用いられる。ただし、電源101は、AC-DCコンバータまたはDC―DCコンバータであってもよいし、バッテリー(蓄電池)であってもよい。
【0024】
ヒューズ102が、電源101とインバータ110との間に接続される。ヒューズ102は、電源101からインバータ110に流れ得る大電流を遮断することができる。ヒューズの代わりにリレーなどを用いてもよい。
【0025】
図示されていないが、電源101とインバータ110との間にコイルが設けられる。コイルは、ノイズフィルタとして機能し、インバータに供給する電圧波形に含まれる高周波ノイズ、またはインバータで発生する高周波ノイズを電源101側に流出させないように平滑化する。また、インバータの電源端子には、コンデンサが接続される。コンデンサは、いわゆるバイパスコンデンサであり、電圧リプルを抑制する。コンデンサは、例えば電解コンデンサであり、容量および使用する個数は設計仕様などによって適宜決定される。
【0026】
インバータ110は、3個のレグから構成されるブリッジ回路を有する。各レグは、ハイサイドスイッチ素子およびローサイドスイッチ素子を有する。U相用レグは、ハイサイドスイッチ素子SW_AHおよびローサイドスイッチ素子SW_ALを有する。V相用レグは、ハイサイドスイッチ素子SW_BHおよびローサイドスイッチ素子SW_BLを有する。W相用レグは、ハイサイドスイッチ素子SW_CHおよびローサイドスイッチ素子SW_CLを有する。スイッチ素子として、例えば電界効果トランジスタ(典型的にはMOSFET)または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いることができる。
【0027】
インバータ110は、例えば、U相、V相およびW相の各相の巻線に流れる電流(「相電流」と呼ぶ場合がある。)を検出するための電流センサ400(
図1を参照)として、シャント抵抗(不図示)を各レグに有する。電流センサ400は、各シャント抵抗に流れる電流を検出する電流検出回路(不図示)を有する。例えば、シャント抵抗は、各レグにおいて、ローサイドスイッチ素子とグランドとの間に接続され得る。シャント抵抗の抵抗値は、例えば0.5mΩ~1.0mΩ程度である。
【0028】
シャント抵抗の数は3つに限られない。例えば、U相、V相用の2つのシャント抵抗、V相、W相用の2つのシャント抵抗、および、U相、W相用の2つのシャント抵抗を用いることが可能である。使用するシャント抵抗の数およびシャント抵抗の配置は、製品コストおよび設計仕様などを考慮して適宜決定される。
【0029】
インバータ110のU相用レグ(具体的には、ハイサイドスイッチ素子およびローサイドスイッチ素子の間のノードn1)は、モータ200のU相の巻線M1の他端に接続される。V相用レグのノードn2は、V相の巻線M2の他端に接続される。W相用レグのノードn3は、W相の巻線M3の他端に接続される。
【0030】
中性点用レグ120は、ハイサイドスイッチ素子SW_NHおよびローサイドスイッチ素子SW_NLを有する。中性点用レグ120は、他のレグと同様に、シャント抵抗を有する。中性点用レグ120は、インバータ110の3個のレグを接続するローサイド側およびハイサイド側のノードの間に接続される。インバータ110は、中性点用レグ120を含む4個のレグを備えるブリッジ回路として製造され得る。
【0031】
中性点用レグ120のノードn4を、モータ200の巻線M1、M2およびM3の一端同士をY結線するノードNに接続することが可能である。そのノードNは、モータ駆動時に中性点として機能するため、「中性点ノードN」と呼ぶこととする。
【0032】
相分離リレー回路130は、電源101と三相の巻線M1、M2およびM3との接続・非接続を相毎に切替える。本実施形態では、相分離リレー回路130は、電源101とインバータ110との接続・非接続を相毎に切替える。
【0033】
相分離リレー回路130は、インバータ110において、ハイサイド側のノードと、3個のハイサイドスイッチ素子SW_AH、SW_BHおよびSW_CHと、の間に接続された3個の相分離リレーISW_AH、ISW_BHおよびISW_CHを有する。相分離リレーISW_AHはU相用レグにある。相分離リレーISW_BHはV相用レグにある。相分離リレーISW_CHはW相用レグにある。
【0034】
相分離リレー回路130は、さらに、インバータ110において、ローサイド側のノードと、3個のローサイドスイッチ素子SW_AL、SW_BLおよびSW_CLと、の間に接続された3個の相分離リレーISW_AL、ISW_BLおよびISW_CLを有する。相分離リレーISW_ALはU相用レグにある。相分離リレーISW_BLはV相用レグにある。相分離リレーISW_CLはW相用レグにある。
【0035】
分離リレーとして、例えば、MOSFETなどの半導体スイッチを用いることができる。サイリスタ、アナログスイッチICなどの他の半導体スイッチまたはメカニカルリレーを用いても構わない。また、IGBTおよびダイオードの組み合わせを用いることができる。
【0036】
図2には、インバータ110のスイッチ素子および各分離リレーとして、内部に寄生ダイオードを有するMOSFETを例示する。各相のレグにおいて、ハイサイド側の相分離リレーおよびハイサイドスイッチ素子は、順方向電流が、内部の寄生ダイオードに同方向に流れるよう直列に接続される。ローサイド側の相分離リレーおよびローサイドスイッチ素子は、順方向電流が、内部の寄生ダイオードに同方向に流れるよう直列に接続される。
【0037】
中性点分離リレー回路140は、電源101と中性点ノードNとの接続・非接続とを切替える。本実施形態では、中性点分離リレー回路140は、中性点用レグ120と中性点ノードNとの間に接続される。中性点分離リレー回路140は、中性点用レグ120と中性点ノードNとの接続・非接続を切替える。
【0038】
中性点分離リレー回路140は、双方向スイッチを有する。例えば、中性点分離リレー回路140は、直列に接続された2個の中性点分離リレーISW_N1、ISW_N2を有する。中性点分離リレーISW_N1は、中性点用レグ120に接続される。中性点分離リレーISW_N2は、中性点ノードNに接続される。中性点分離リレーISW_N1は、内部のダイオードに中性点ノードNに向けて順方向電流が流れるよう配置される。中性点分離リレーISW_N2は、内部のダイオードに中性点用レグ120に向けて順方向電流が流れるよう配置される。
【0039】
中性点分離リレーISW_N1は、中性点用レグ120のハイサイドスイッチSW_NHおよびローサイドスイッチSW_NLの各々に直列に接続される。中性点分離リレーISW_N2も、ハイサイドスイッチSW_NHおよびローサイドスイッチSW_NLの各々に直列に接続される。
【0040】
図3は、制御回路300の典型的なブロック構成を示す。
【0041】
制御回路300は、例えば、電源回路310と、入力回路320と、マイクロコントローラ330と、駆動回路340と、ROM350とを備える。制御回路300は、電力変換装置100に接続される。制御回路300は、電力変換装置100を、具体的には、インバータ110、中性点用レグ120、相分離リレー回路130および中性点分離リレー回路140(
図1を参照)を制御することにより、モータ200を駆動することができる。制御回路300は、目的とするロータの位置、回転速度、および電流などを制御してクローズドループ制御を実現することができる。なお、角度センサ500(
図1を参照)に代えてトルクセンサを用いてもよい。この場合、制御回路300は、目的とするモータトルクを制御することができる。
【0042】
電源回路310は、回路内の各ブロックに必要なDC電圧(例えば3V、5V)を生成する。
【0043】
入力回路320は、電流センサ400によって検出されたモータ電流値(以下、「実電流値」と表記する。)を受け取る。入力回路320は、マイクロコントローラ330の入力レベルに実電流値のレベルを必要に応じて変換し、実電流値をマイクロコントローラ330に出力する。入力回路320は、アナログデジタル変換回路である。
【0044】
マイクロコントローラ330は、角度センサ500によって検出されたロータの回転信号を受信する。マイクロコントローラ330は、実電流値およびロータの回転信号などに従って目標電流値を設定してPWM信号を生成し、それを駆動回路340に出力する。
【0045】
例えば、マイクロコントローラ330は、電力変換装置100のインバータ110および中性点用レグ120における各スイッチ素子のスイッチング動作(ターンオンまたはターンオフ)を制御するためのPWM信号を生成する。マイクロコントローラ330は、電力変換装置100の各分離リレー回路内の各分離リレーのオン・オフの状態を決定する信号を生成する。
【0046】
駆動回路340は、典型的にはゲートドライバである。駆動回路340は、インバータ110および中性点用レグ120における各スイッチ素子のスイッチング動作を制御する制御信号(例えば、ゲート制御信号)をPWM信号に従って生成し、各スイッチ素子に制御信号を与える。さらに、駆動回路340は、マイクロコントローラ330からの、各分離リレーのオン・オフの状態を決定する信号に従って、各分離リレーをオン
・オフする制御信号(アナログ信号)を生成し、各分離リレーにその制御信号を与えることが可能である。マイクロコントローラ330は、駆動回路340の機能を有していてもよい。その場合、駆動回路340は必要とされない。
【0047】
ROM350は、例えば書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ)または読み出し専用のメモリである。ROM350は、マイクロコントローラ330に電力変換装置100を制御させるための命令群を含む制御プログラムを格納する。例えば、制御プログラムはブート時にRAM(不図示)に一旦展開される。
【0048】
電力変換装置100の制御モードに、正常時および異常時の制御モードがある。制御回路300(主としてマイクロコントローラ330)は、電力変換装置100の制御を正常時の制御モードから異常時の制御モードに切替えることができる。その制御モードに応じて、相分離リレー回路130および中性点分離リレー回路140の各分離リレーのオン・オフの状態が決定される。
【0049】
以下、相分離リレー回路130および中性点分離リレー回路140のオン・オフ状態、および、オン・オフ状態における、電源101、インバータ110およびモータ200の巻線M1、M2およびM3の電気的な接続関係を詳細に説明する。
【0050】
本明細書において、「相分離リレー回路130がオンする」とは、相分離リレー回路130の全ての相分離リレーISW_AH、ISW_BH、ISW_CH、ISW_AL、ISW_BLおよびISW_CLがオンすることを意味する。「相分離リレー回路130がオフする」とは、全ての相分離リレーISW_AH、ISW_BH、ISW_CH、ISW_AL、ISW_BLおよびISW_CLがオフすることを意味する。
【0051】
相分離リレー回路130がオンすると、インバータ110は電源101に電気的に接続される。相分離リレー回路130がオフすると、インバータ110は電源101から電気的に分離される。
【0052】
上述したとおり、電源101とインバータ110の3個のレグとの接続・非接続を相毎に切替えることが可能である。例えば、相分離リレーISW_AHおよび相分離リレーISW_ALをオフすることにより、U相用レグは電源101から電気的に分離される。V相およびW相用レグは電源101に接続されたままである。
【0053】
本明細書において、「中性点分離リレー回路140がオンする」とは、中性点分離リレー回路140の中性点分離リレーISW_N1、ISW_N2がオンすることを意味する。「中性点分離リレー回路140がオフする」とは、中性点分離リレーISW_N1、ISW_N2がオフすることを意味する。
【0054】
中性点分離リレー回路140がオンすると、中性点用レグ120のノードn4はモータ200の中性点ノードNに接続される。中性点分離リレー回路140がオフすると、中性点用レグ120のノードn4はモータ200の中性点ノードNから電気的に分離される。
【0055】
〔モータ駆動ユニット1000の動作〕 以下、モータ駆動ユニット1000の動作の具体例を説明し、主として電力変換装置100の動作の具体例を説明する。
【0056】
(1.正常時の制御)
先ず、電力変換装置100の正常時の制御方法の具体例を説明する。
【0057】
本明細書において、「正常」とは、インバータ110、中性点用レグ120、モータ200の巻線M1、M2およびM3に故障が生じていないことを指す。「異常」とは、インバータのブリッジ回路内のスイッチ素子において故障が発生すること、および、モータの巻線に故障が発生することを指す。スイッチ素子の故障は、主として半導体スイッチ素子(FET)の、オープン故障およびショート故障を指す。「オープン故障」は、FETのソース-ドレイン間が開放する故障(換言すると、ソース-ドレイン間の抵抗rdsがハイインピーダンスになること)を指し、「ショート故障」は、FETのソース-ドレイン間が短絡する故障を指す。巻線の故障は、例えば巻線の断線である。
【0058】
正常時の制御モードでは、制御回路300(主にマイクロコントローラ330)は、相分離リレー回路130をオンにする。この制御により、インバータ110は電源101に接続される。換言すると、モータ200の巻線M1、M2およびM3は、インバータ110を介して電源101に電気的に接続される。インバータ110からモータ200に電力を供給することが可能となる。
【0059】
制御回路300は、中性点分離リレー回路140をオフにする。この制御により、中性点用レグ120は、モータ200の中性点ノードNから電気的に分離される。中性点用レグ120から中性点ノードNに電力は供給されない。
【0060】
制御回路300は、インバータ110のスイッチ素子のスイッチング動作を制御することにより、三相の巻線M1、M2およびM3を通電することが可能である。本明細書では、このような通電制御を、「三相通電制御」と呼ぶ。
【0061】
図4は、三相通電制御を通じて巻線M1、M2およびM3に流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)を例示する。横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示している。I
pkは各相を流れる相電流の最大値(ピーク電流値)を表している。一般的なY結線の結線方式のモータでは、電流の向きを考慮した三相の巻線に流れる電流の総和は電気角毎に「0」である。
【0062】
制御回路300は、例えば、
図4に示される擬似正弦波が得られるようにインバータ110の各スイッチ素子のスイッチング動作を制御する。これにより、モータ200が駆動される。
【0063】
(2.異常時の制御)
電力変換装置100を長期間使用すると、インバータ110のスイッチ素子またはモータ200の巻線に故障が起こる可能性がある。これらの故障は、製造時に発生し得る製造故障とは異なる。そのような故障が発生すると、上述した正常時の制御は不可能となる。
【0064】
故障検知の一例として、駆動回路340は、スイッチ素子のドレイン-ソース間の電圧Vdsを監視し、所定の閾値電圧とVdsとを比較することによって、スイッチ素子の故障を検知する。閾値電圧は、例えば外部IC(不図示)とのデータ通信および外付け部品によって駆動回路340に設定される。駆動回路340は、マイクロコントローラ330のポートと接続され、故障検知信号をマイクロコントローラ330に通知する。例えば、駆動回路340は、スイッチ素子の故障を検知すると、故障検知信号をアサートする。マイクロコントローラ330は、アサートされた故障検知信号を受信すると、駆動回路340の内部データを読み出して、インバータ110における複数のスイッチ素子の中でどのスイッチ素子が故障しているのかを判別することが可能である。
【0065】
故障検知の他の一例として、マイクロコントローラ330は、モータの実電流値と目標電流値との差に基づいてスイッチ素子の故障を検知することも可能である。さらに、マイクロコントローラ330は、例えば、モータの実電流値と目標電流値との差に基づいて、モータ200の巻線が断線したかどうかを検知することも可能である。ただし、故障検知は、これらの手法に限られず、故障検知に関する公知の手法を広く用いることができる。
【0066】
マイクロコントローラ330は、故障検知信号がアサートされると、電力変換装置100の制御を正常時の制御から異常時の制御に切替える。例えば、正常時から異常時に制御を切替えるタイミングは、故障検知信号がアサートされてから10msec~30msec程度である。
【0067】
以下、代表的な故障パターンを挙げ、各分離リレー回路内の各分離リレーの制御方法を説明する。
【0068】
【0069】
例えば、インバータ110のU相用レグにおけるハイサイドスイッチ素子SW_AHがオープン故障した場合を考える。その場合、制御回路300は、その故障したスイッチ素子を含むU相用レグの2個の相分離リレーISW_AH、ISW_ALをオフにし、V相およびW相用レグに含まれる4個の相分離リレーISW_BH、ISW_BL、ISW_CHおよびISW_CLをオンにする。この制御により、故障したU相用レグは電源101から電気的に分離される。V相およびW相の巻線M2、M3は、V相およびW相用レグを介して電源101に接続される。
【0070】
制御回路300は、さらに、中性点分離リレー回路140をオンにする。この制御により、中性点用レグ120は、モータ200の中性点ノードNに接続される。この接続状態において、インバータ110のV相およびW相用レグを用いて、二相の巻線M2、M3を通電することにより、モータ200の駆動を継続することができる。本明細書では、二相のレグを用いた通電制御を「二相通電制御」と呼ぶ。
【0071】
V相用レグのノードn2から巻線M2を通ってモータ200の中性点ノードNに流れ込む相電流をIbと表記し、W相用レグのノードn3から巻線M3を通って中性点ノードNに流れ込む相電流をIcと表記する。また、中性点ノードNから中性点用レグ120のノードn4に流れ出る電流をIzと表記する。二相通電制御において、Ib+Ic=Izが成立する。
【0072】
制御回路300は、例えば、インバータ110のV相、W相用レグ、および、中性点用レグ120のスイッチ素子のスイッチング動作を制御することにより、巻線M2、M3を通電することができる。具体的に、Ib+Ic=Izを満足するよう、V相用レグのノードn2、W相用レグのノードn3および中性点ノードNの電位を制御することにより、二相通電制御を行うことが可能となる。ノードn2および中性点ノードNの間の電位差に応じた相電流Ibが流れる。ノードn3および中性点ノードNの間の電位差に応じた相電流Icが流れる。
【0073】
例えば、U相用レグの2個のスイッチ素子SW_AH、SW_ALが同時に故障した場合においても、二相通電制御を行うことができる。また、例えば、U相の巻線M1が故障した場合、U相用レグが故障した場合と同様に、2個の相分離リレーISW_AH、ISW_ALをオフにすることにより、巻線M1を電源101から電気的に分離すことができる。
【0074】
例えば、四相交流モータを駆動する、四相のレグを有するインバータにおいて、そのうちの二相のレグが故障した場合、本開示の二相通電制御の手法を好適に適用することができる。
【0075】
上述した制御方法によると、異常時の制御において、相分離リレーを用いて故障したレグを電源101から電気的に分離することができ、かつ、中性点分離リレー回路140を用いて中性点用レグ120を中性点ノードNに接続することができる。中性点用レグ120を用いて中性点ノードNの電位を適切に制御することにより二相通電制御を行うことが可能となる。モータ駆動ユニット1000を継続して駆動させることができる。
【0076】
図5は、モータの単位時間当たりの回転数(rps)とトルクT(N・m)との関係を示す。グラフの横軸は、回転数を示し、縦軸は、正規化トルクの値を示す。回転数のWmnは最大回転数を表す。Wcnは、モータ出力特性において、トルクが急激に変化する変化点における回転数を表す。
【0077】
図5に示されるいわゆるT-N曲線は、正常時の制御で得られるモータ出力および異常時の制御で得られるモータ出力の特性を示す。異常時の制御で得られるトルク値は、正常時の制御で得られるトルク値で正規化した値を示す。また、比較例として、特許文献1(特開2016-34204号公報)および特許文献4(特許第5797751号公報)に開示された制御手法により得られる、異常時の制御におけるモータ出力特性を
図5に示す。
【0078】
特許文献1(特開2016-34204号公報)のモータ駆動装置では、異常時の制御において第1系統および第2系統の故障していない一方を用いてモータは駆動される。異常時の制御における相電流の最大値は、正常時の制御におけるそれと比べ約50%に低下するので、異常時の制御で得られるトルクも、正常時の制御におけるそれと比べ約50%に低下する。一方、各相の巻線に印加される相電圧の最大値は、正常時および異常時の制御で変化しないので、最大回転数Wmnは維持される。
【0079】
特許文献4(特許第5797751号公報)のモータ駆動装置では、正常時の制御において、三相の巻線に流れる電流を独立に制御することが可能である。これに対し、異常時の制御では、故障したインバータの中性点を利用して実質的に片側のインバータのみでモータは駆動される。各相の巻線に印加される相電圧の最大値は、正常時のそれと比べ約58%に低下するので、正常時の制御で得られる最大の回転数は、正常時の最大回転数Wmnと比べ約58%に低下する。これにより、高速回転領域が低速側に縮小され、モータをより高速に駆動することができない。一方、モータの相電流の最大値は、正常時および異常時の制御で変化しないので、トルクは維持される。
【0080】
本開示による制御手法によると、正常時の三相通電制御における相電流の最大値Ipkを1とした場合、異常時の二相通電制御による相電流の最大値Ipkは、理論上、約0.58になる。従って、異常時の制御で得られるトルクは、正常時の制御におけるそれと比べ約58%になる。一方、各相の巻線に印加される相電圧の最大値は、正常時および異常時の制御で変化しないので、最大回転数Wmnを維持することができる。また、回転数Wcnを維持することができる。
【0081】
以上を纏めると、
図5に示すように、従来と比較して、異常時の制御において、モータの最大回転数Wmnおよび回転数Wcnを正常時と同じ値に維持することができる。その結果、モータ出力、つまり、モータの駆動範囲を改善することが可能となる。特に、高速回転領域においてより高いトルクを得ることができる。従来と比べ、得られるトルクは16%(=58/50)高くなる。本実施形態によると、異常時の制御におけるモータ出力特性をさらに向上させることができる。
【0082】
図6は、本実施形態のバリエーションによる電力変換装置100Aの典型的な回路構成を模式的に示す。
【0083】
電力変換装置100Aは、中性点分離リレー回路140が中性点用レグ120に設けられている点で、電力変換装置100とは異なる。以下、その差異点を主に説明する。
【0084】
このバリエーションでは、中性点分離リレー回路140は、電源101と中性点用レグ120との接続・非接続を切替える。中性点用レグ120は、中性点ノードNに接続されている。中性点分離リレー回路140は、中性点用レグ120において、ハイサイド側のノードと、ハイサイドスイッチ素子SW_NHとの間に接続された中性点分離リレーISW_NHと、ローサイド側のノードと、ローサイドスイッチ素子SW_NLとの間に接続された中性点分離リレーISW_NLとを有する。中性点分離リレーISW_NHは、ハイサイドスイッチ素子SW_NHに直列に接続され、中性点分離リレーISW_NLは、ローサイドスイッチ素子SW_NLに直列に接続される。
【0085】
正常時の制御では、2個の中性点分離リレーISW_NH、ISW_NLをオフすることにより、中性点用レグ120は電源101から電気的に分離される。中性点用レグ120は、モータ200への電力供給に関与しない。異常時の制御では、2個の中性点分離リレーISW_NH、ISW_NLをオンすることにより、中性点用レグ120は電源101に接続される。中性点用レグ120は、モータ200への電力供給に関与することができる。
【0086】
(実施形態2)
図7は、本実施形態による電力変換装置100Bの典型的な回路構成を模式的に示す。
【0087】
電力変換装置100Bは、相分離リレー回路130がインバータ110と、巻線M1、M2およびM3と、の間に接続されている点で、実施形態1による電力変換装置100とは異なる。以下、その差異点を主に説明する。
【0088】
相分離リレー回路130は、インバータ110と巻線M1、M2およびM3の他端との間に接続される。相分離リレー回路130は、インバータ110の3個のレグと、巻線M1、M2およびM3の他端と、の接続・非接続を相毎に切替える。
【0089】
相分離リレー回路130は、インバータ110の3個のレグと、巻線M1、M2およびM3の他端と、の間に接続された3個の相分離リレーISW_A、ISW_BおよびISB_Cを有する。3個の相分離リレーISW_A、ISW_BおよびISB_Cは、一方向スイッチ、または、
図2に示される中性点分離リレー回路140のような双方向スイッチであり得る。
【0090】
相分離リレーISW_Aは、U相用レグのハイサイドスイッチ素子SW_AHおよびローサイドスイッチ素子SW_ALの各々に直列に接続される。相分離リレーISW_Bは、V相用レグのハイサイドスイッチ素子SW_BHおよびローサイドスイッチ素子SW_BLの各々に直列に接続される。相分離リレーISW_Cは、W相用レグのハイサイドスイッチ素子SW_CHおよびローサイドスイッチ素子SW_CLの各々に直列に接続される。
【0091】
相分離リレーISW_Aをオンすることにより、インバータ110のU相用レグは巻線M1に接続され、相分離リレーISW_Aをオフすることにより、U相用レグは巻線M1から電気的に分離される。相分離リレーISW_Bをオンすることにより、V相用レグは巻線M2に接続され、相分離リレーISW_Bをオフすることにより、V相用レグは巻線M2から電気的に分離される。相分離リレーISW_Cをオンすることにより、W相用レグは巻線M3に接続され、相分離リレーISW_Cをオフすることにより、W相用レグは巻線M3から電気的に分離される。
【0092】
中性点分離リレー回路140は、電源101と中性点用レグ120との接続・非接続を切替える。中性点分離リレー回路140は、中性点用レグ120において、ハイサイド側のノードと、ハイサイドスイッチ素子SW_NHとの間に接続された中性点分離リレーISW_NHと、ローサイド側のノードと、ローサイドスイッチ素子SW_NLとの間に接続された中性点分離リレーISW_NLとを有する。
【0093】
本実施形態によると、実施形態1と同様に、相分離リレー回路130および中性点分離リレー回路140の各分離リレーのオン・オフ状態を故障パターンに応じて決定することにより、異常時において二相通電制御を行うことが可能となる。
【0094】
図8は、本実施形態のバリエーションによる電力変換装置100Cの典型的な回路構成を模式的に示す。
【0095】
電力変換装置100Cは、中性点分離リレー回路140が中性点用レグ120と中性点ノードNとの間に接続される点で、電力変換装置100Bとは異なる。
【0096】
中性点分離リレー回路140は、中性点用レグ120と中性点ノードNとの間に接続される。このバリエーションでは、相分離リレー回路130および中性点分離リレー回路140は、インバータ110とモータ200との間に接続される。相分離リレー回路130および中性点分離リレー回路140は、インバータ110とは別の部品として製造され得る。
【0097】
(実施形態3)
図9は、本実施形態による電動パワーステアリング装置2000の典型的な構成を模式的に示す。
【0098】
自動車等の車両は一般に、電動パワーステアリング(EPS)装置を有する。本実施形態による電動パワーステアリング装置2000は、ステアリングシステム520、および補助トルクを生成する補助トルク機構540を有する。電動パワーステアリング装置2000は、運転者がステアリングハンドルを操作することによって発生するステアリングシステムの操舵トルクを補助する補助トルクを生成する。補助トルクにより、運転者の操作の負担は軽減される。
【0099】
ステアリングシステム520は、例えば、ステアリングハンドル521、ステアリングシャフト522、自在軸継手523A、523B、回転軸524、ラックアンドピニオン機構525、ラック軸526、左右のボールジョイント552A、552B、タイロッド527A、527B、ナックル528A、528B、および左右の操舵車輪529A、529Bから構成され得る。
【0100】
補助トルク機構540は、例えば、操舵トルクセンサ541、自動車用電子制御ユニット(ECU)542、モータ543および減速機構544などから構成される。操舵トルクセンサ541は、ステアリングシステム520における操舵トルクを検出する。ECU542は、操舵トルクセンサ541の検出信号に基づいて駆動信号を生成する。モータ543は、駆動信号に基づいて操舵トルクに応じた補助トルクを生成する。モータ543は、減速機構544を介してステアリングシステム520に、生成した補助トルクを伝達する。
【0101】
ECU542は、例えば、実施形態1によるマイクロコントローラ330および駆動回路340などを有する。自動車ではECUを核とした電子制御システムが構築される。電動パワーステアリング装置2000では、例えば、ECU542、モータ543およびインバータ545によって、モータ駆動ユニットが構築される。そのシステムに、実施形態1によるモータ駆動ユニット1000を好適に用いることができる。
【0102】
本開示の実施形態は、シフトバイワイヤ、ステアリングバイワイヤ、ブレーキバイワイヤなどのエックスバイワイヤおよびトラクションモータなどのモータ制御システムにも好適に用いられる。例えば、本開示の実施形態によるモータ制御システムは、日本政府および米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)によって定められたレベル0から4(自動化の基準)に対応した自動運転車に搭載され得る。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本開示の実施形態は、掃除機、ドライヤ、シーリングファン、洗濯機、冷蔵庫および電動パワーステアリング装置などの、各種モータを備える多様な機器に幅広く利用され得る。
【符号の説明】
【0104】
100、100A、100B、100C:電力変換装置、101:電源、102:ヒューズ、110:インバータ、120:中性点用レグ、130:相分離リレー回路、140:中性点分離リレー回路、200:モータ、300:制御回路、310:電源回路、320:入力回路、330:マイクロコントローラ、340:駆動回路、350:ROM、400:電流センサ、500:角度センサ、1000:モータ駆動ユニット、2000:電動パワーステアリング装置