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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/472 20060101AFI20220512BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20220512BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20220512BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20220512BHJP
   A61F 13/474 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
A61F13/472 500
A61F13/511 100
A61F13/472 300
A61F13/475 200
A61F13/47 300
A61F13/474
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017186126
(22)【出願日】2017-09-27
(65)【公開番号】P2019058427
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-08-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】長谷澤 敦子
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-029807(JP,A)
【文献】特開2017-140442(JP,A)
【文献】特開2013-172845(JP,A)
【文献】特開2002-165833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/472
A61F 13/511
A61F 13/475
A61F 13/47
A61F 13/474
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記吸収体の周囲において、吸収体の存在しない外周フラップ部が形成された吸収性物品において、
前記吸収性物品の後端に、幅方向に離間して内方側に至るミシン目が複数箇所に設けられ、前記ミシン目の左右両側のうち少なくとも一方側の前記裏面シートの外面に、前記吸収性物品の使用に際して、前記ミシン目によって分割された左右の端部同士を重ね合わせて接合するための接合部が設けられ、
前記吸収体は、前記ミシン目より前側に設けられ、前記ミシン目は、前記吸収体に至らない外周フラップ部に形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
記ミシン目によって分割された左右の端部同士を重ね合わせて前記接合部で接合した際に、前記吸収性物品の後端部が屈曲変形する基端部に沿って、前記透液性表面シートの肌当接面に非肌側に窪むエンボス溝が設けられている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記エンボス溝は、前記吸収性物品の長手方向中心線を境に左側領域及び右側領域のそれぞれに設けられるか、前記左側領域及び右側領域に亘って連続して設けられている請求項記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、詳しくは使用に際して後端部が肌側に向けて屈曲変形可能に形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などからなる不透液性裏面シートと、不織布または透孔性プラスチックシートなどからなる透液性表面シートとの間に綿状パルプなどからなる吸収体を介在させたものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品においては、これまで体液の漏れなどを防止するために種々の改良が行われている。例えば、下記特許文献1においては、縦方向に延びる中心線上に位置して排泄部対向部に亘って延びる排泄部可撓軸と、縦方向に延びる中心線上に位置して排泄部可撓軸の前方部側に延びる前方可撓軸と、縦方向に延びる中心線上に位置して排泄部可撓軸の後方部側に延びる後方可撓軸とを有する吸収性物品であり、包装材から取り出されて非応力下におかれた際に、排泄部可撓軸にて表面シート側に凸状に屈曲し、前方可撓軸及び後方可撓軸にて裏面シート側に凸状に屈曲している吸収性物品が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2においては、吸収性物品の長手方向の中央長軸部及び幅方向の中央短軸部には、それぞれ第1可撓軸及び第2可撓軸が設けられ、上記第1可撓軸は、上記第2可撓軸よりも後方部においては、上記吸収性物品を該第1可撓軸で表面材側に凸状に折曲し易いように形成され且つ上記第2可撓軸よりも前方部においては上記吸収性物品を該第1可撓軸で表面材側に凹状に折曲し易いように形成され、また、上記第2可撓軸は、上記吸収性物品を該第2可撓軸で上記表面材側に凹状に折曲し易いように形成されている吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-108869号公報
【文献】特開平4-341261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2記載の吸収性物品は、吸収性物品を所定の可撓軸で折り曲げることにより身体にフィットさせ、漏れを低減しようとするものであるが、吸収性物品の端縁部のフィット性については考慮されておらず、吸収性物品の端縁部が身体にフィットしない場合には、体液の漏れや装着感の悪化を引き起こすことが問題となっていた。特に、吸収性物品の後端部が臀部にフィットしない場合には、運動時や階段昇降時などの脚を動かす動作をしたときに、吸収性物品と身体との間に隙間が生じて体液の漏れが発生するおそれがあった。このような漏れを防止するため、大型の吸収性物品を使用したり、慣れないタンポンを使用したりすると、使用者は常に違和感を感じながら生活しなければならなかった。また、身体にフィットしない吸収性物品を使用していると、肌との擦れが発生しやすく、痒みなどの肌トラブルをもたらす原因となっていた。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、身体の動きに追従し、身体にフィットすることで、漏れを防止するとともに、装着感を良好にした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、前記吸収体の周囲において、吸収体の存在しない外周フラップ部が形成された吸収性物品において、
前記吸収性物品の後端に、幅方向に離間して内方側に至るミシン目が複数箇所に設けられ、前記ミシン目の左右両側のうち少なくとも一方側の前記裏面シートの外面に、前記吸収性物品の使用に際して、前記ミシン目によって分割された左右の端部同士を重ね合わせて接合するための接合部が設けられ、
前記吸収体は、前記ミシン目より前側に設けられ、前記ミシン目は、前記吸収体に至らない外周フラップ部に形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、吸収性物品の使用に際して、前記ミシン目によって分割された左右の端部同士を重ね合わせて前記接合部で接合することにより、吸収性物品の後端部を肌側に向けて屈曲変形させた状態で装着できるようにしている。これによって、吸収性物品の後端部が臀部の形状にフィットした立体形状となるので、脚を動かす動作などに追従しやすくなり、体液の漏れが防止できるようになる。また、吸収性物品の後端部が身体にフィットするため、装着感が良好になる。
【0010】
前記吸収体は前記ミシン目より前側の領域に設けられ、前記ミシン目は前記吸収体に至らない外周フラップ部に形成されている。このため、前記ミシン目が設けられた吸収性物品の後端部が肌側に向けて屈曲変形しやすくなり、臀部に対するフィット性が向上する。
【0011】
前記ミシン目を吸収性物品の後端部に幅方向に離間して複数箇所に設けることにより、使用に際して、複数のミシン目のうち、任意のミシン目を所定の形状に屈曲変形させることにより、吸収性物品の後端部が屈曲変形する度合いを段階的に変化させることができるようになる。
【0012】
請求項に係る本発明として、前記ミシン目によって分割された左右の端部同士を重ね合わせて前記接合部で接合した際に、前記吸収性物品の後端部が屈曲変形する基端部に沿って、前記透液性表面シートの肌当接面に非肌側に窪むエンボス溝が設けられている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0013】
上記請求項記載の発明では、吸収性物品の使用に際して吸収性物品の後端部が屈曲変形する基端部に沿って、前記透液性表面シートの肌当接面に非肌当接面側に窪むエンボス溝が設けられているため、前記エンボス溝を可撓軸として吸収性物品の後端部が屈曲変形しやすくなり、より一層フィット性を向上させることができるようになる。
【0014】
請求項に係る本発明として、前記エンボス溝は、前記吸収性物品の長手方向中心線を境に左側領域及び右側領域のそれぞれに設けられるか、前記左側領域及び右側領域に亘って連続して設けられている請求項記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項記載の発明では、前記エンボス溝を左右のそれぞれの領域に設けた場合には、左右のそれぞれの領域における異なる変形や動きに対して、各領域に設けられたエンボス溝で対応できるようになり、吸収性物品のフィット性をより向上させることができる。一方、エンボス溝を前記左側領域及び右側領域に亘って連続して設けた場合には、吸収性物品の後端部がより屈曲変形しやすくなるとともに、この屈曲変形した状態が維持できるようになる。
【発明の効果】
【0016】
以上詳説のとおり本発明によれば、身体の動きに追従して、身体にフィットすることによって、漏れが防止できるとともに、装着感が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2図1のII-II線矢視図である。
図3】生理用ナプキン1の裏面図である。
図4】生理用ナプキン1の使用状態を示す斜視図である。
図5】変形例に係る生理用ナプキン1の展開図(その1)である。
図6】変形例に係る生理用ナプキン1の展開図(その2)である。
図7】(A)、(B)は、変形例に係る生理用ナプキン1の展開図(その3)である。
図8】(A)、(B)は、変形例に係る生理用ナプキン1の展開図(その4)である。
図9】変形例に係る生理用ナプキン1の裏面図である。
図10】(A)、(B)は、変形例に係る生理用ナプキン1の展開図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0019】
〔生理用ナプキン1の基本構成〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1及び図2に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5と、肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイドシート7、7とから構成されている。また、前記吸収体4の周囲において、そのナプキン長手方向の前後端縁部では、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4の側縁よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイドシート7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しない外周フラップ部が形成されている。
【0020】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0021】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0022】
本生理用ナプキン1では、後段で詳述するように、生理用ナプキン1の使用に際して、切込み10によって分割された左右の端部同士を重ね合わせ、一方側の不透液性裏面シート2の外面に設けられた接合部11を他方側の透液性表面シート3に接合するため、前記接合部11が前記透液性表面シート3に接合しやすいように、前記透液性表面シート3として、表面の毛羽立ちが少ないものを用いるのが好ましい。具体的には、スパンボンド法又はサーマルボンド法によって得られた不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いるのが好ましい。
【0023】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、図示のように、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するためにクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5によって囲繞されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また、前記吸収体4として、嵩を小さくできるエアレイド吸収体や、2層の不織布層間に高吸水性樹脂を配置してなるポリマーシートを用いてもよい。
【0024】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0025】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル-酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。
【0026】
前記吸収体4を囲繞する被包シート5としては、薄葉紙やティッシュペーパーなどのクレープ紙や不織布を用いることが可能である。前記クレープ紙を構成する繊維素材は、パルプ繊維100%からなるのが望ましく、薄葉紙やティシュペーパーに用いられる針葉樹パルプ及び広葉樹パルプであるのが望ましい。前記親水性は、スパンボンド不織布やSMS不織布(SMS、SSMMS等)が好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。本例のように、吸収体4を囲繞する被包シート5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになり、吸収性に優れる前記被包シート5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0027】
一方、本生理用ナプキン1の肌当接面側の両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイドシート7、7が設けられ、このサイドシート7、7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによって、本体部分の両側部に外側に突出するウイング状フラップW、Wが形成されている。前記ウイング状フラップW、Wは、装着時に下着のクロッチ部分を巻き込むように、基端部の折り線RL(図1)にて外側に折り返して使用され、ウイング状フラップWの不透液性裏面シート2の外面に備えられたズレ止め粘着剤層9(図3)を下着の外面に貼着することにより、下着とのズレ止めを図るためのものである。
【0028】
前記サイドシート7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。前記サイドシート7の内方側部分をほぼ二重に折り返すとともに、この二重シート内部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の糸状弾性伸縮部材(図示せず)を生理用ナプキン1の長手方向に沿って配置することにより、図4に示されるように、生理用ナプキン1が、非荷重下(自然状態)で、長手方向に沿って肌当接面側に凹状に湾曲するように形成してもよい。
【0029】
図3に示されるように、前記透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に吸収体4が介在された本体部分の非肌当接面(不透液性裏面シート2の外面側)には、下着に対する固定のために適宜の塗布パターンによって複数条の、図示例では3条の本体ズレ止め粘着剤層8、8…が形成されている。また、前記ウイング状フラップW、Wの不透液性裏面シート2側の面には、ウイングズレ止め粘着剤層9が形成されている。これら本体ズレ止め粘着剤層8及びウイングズレ止め粘着剤層9は、生理用ナプキン1を使用するまでの間、剥離材によって覆われている。
【0030】
前記ズレ止め粘着剤層8、9を形成する粘着剤としては、たとえばスチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤のいずれかが主成分であるものが好適に使用される。前記スチレン系ポリマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体等が挙げられるが、これらのうち1種のみを使用しても、二種以上のポリマーブレンドであってもよい。この中でも熱安定性が良好であるという点で、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体が好ましい。また、前記粘着付与剤および可塑剤としては、常温で固体のものを好ましく用いることができ、粘着付与剤ではたとえばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、前記可塑剤では例えば、リン酸トリフレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤の他、ビニル重合体やポリエステルのようなポリマー可塑剤が挙げられる。
【0031】
また、前記粘着剤を塗布する方法としては、例えば、接触式のスロット法や、非接触式のスパイラル法、オメガ法、ビート法、カーテン法等、周知の塗布方法(例えば、スプレー塗布やブレードコートなど)を採用することができる。
【0032】
〔生理用ナプキン1の後端部の構造〕
次に、本生理用ナプキン1の特徴的部分である後端部の構造について説明する。本生理用ナプキン1では、図1及び図3に示されるように、生理用ナプキン1の後端から内方側に至る切込み10が設けられ、前記切込み10の左右両側のうち少なくとも一方側の不透液性裏面シート2の外面(非肌当接面)に、生理用ナプキン1の使用に際して、前記切込み10によって分割された左右の端部同士を重ね合わせて接合するための接合部11が設けられている。前記切込み10は、生理用ナプキン1の後側端縁から生理用ナプキン1の略長手方向に沿って生理用ナプキン1の前側に向けて延びており、生理用ナプキン1の後端部は、前記切込み10を境として左右に分離されている。
【0033】
生理用ナプキン1の使用に際しては、図4に示されるように、前記切込み10によって分割された左右の端部同士を重ね合わせて、一方側の不透液性裏面シート2の外面に設けられた前記接合部11を他方側の透液性表面シート3の外面(肌当接面)に接合することにより、生理用ナプキン1の後端部を肌側に向けて屈曲変形させた状態で装着する。
【0034】
これによって、生理用ナプキン1の後端部が臀部の形状にフィットした立体形状となるので、脚を動かす動作などに対して、生理用ナプキン1の表面が肌面に密着した状態が持続する追従性が良好になり、体液の漏れが防止できるようになる。また、生理用ナプキン1の後端部が身体にフィットするため、装着感が良好になる。
【0035】
また、図4に示されるように、生理用ナプキン1の後端部が船の舳先のような形態で肌側に屈曲変形しているため、前側から後側に向けて流れてきた体液が屈曲変形した部分によって波返しのように折り返され、後側端部からの漏れが確実に防止できるようになっている。
【0036】
前記切込み10は、カッターなどによって切断した線状の切断部であり、この切断部によって分離された左右の端縁同士がほぼ対向するように配置されている。本生理用ナプキン1では、この切込み10に代えて、図5に示されるように、切欠き12を形成する形態を採用することもできる。前記切欠き12は、略V字状に切り欠いた部分であり、この切欠き部によって分離された左右の端縁同士が略V字状に離間して配置されたものである。更に、図6に示されるように、前記切込み又は切欠き(図示例は切込み)を形成するためのミシン目13を形成しておき、使用者が使用に際して前記ミシン目13を切り離して切込み10若しくは切欠き12を形成する形態を採用することもできる。
【0037】
前記切込み10は、生理用ナプキン1の後側端縁であれば、任意の位置に形成することができる。ただし、生理用ナプキン1の使用に際して、前記切込み10によって分割された左右の端部同士を重ね合わせて前記接合部11で接合した状態で、肌当接面側に重ねられた切込み10の端部が生理用ナプキン1の長手方向中心線CL上に位置すると、臀部溝を伝って後側に流れてきた体液が前記切込み10の隙間を通って外部に漏れ出る可能性が高くなるため、好ましくない。
【0038】
したがって、前記切込み10は、図1に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向中心線CL上に生理用ナプキン1の長手方向に沿って設けるか、図7に示されるように、生理用ナプキン1の幅方向に偏倚した位置に形成するのがよい。
【0039】
前記切込み10を長手方向中心線CL上に設けた場合には、使用に際して、前記切込み10によって分割された左右の端部同士を重ね合わせて前記接合部11で接合した状態で、肌当接面側に重ねられた切込み10の端部は、臀部溝に対して必ず傾斜する位置に配置されるため、臀部溝を伝って流れてきた体液を、前記切込み10以外の部分で受け止めることができ、前記切込み10の隙間を通って体液が外部に漏れるのが防止できるようになる。
【0040】
また、前記切込み10を生理用ナプキン1の幅方向に偏倚した位置に設けた場合も同様に、使用に際して、前記切込み10によって分割された左右の端部同士を重ね合わせて前記接合部11で接合した状態で、肌当接面側に重ねられた切込み10の端部は、臀部溝が延びる方向と異なる位置に形成されるため、臀部溝を伝って流れてきた体液を、前記切込み10以外の部分で受け止めることができ、前記切込み10の隙間を通って体液が外部に漏れるのが防止できるようになる。上述の幅方向に偏倚した位置とは、長手方向中心線CLから生理用ナプキン1の幅方向に外れた位置のことであり、図7(A)に示されるように、切込み10の後側端部が長手方向中心線CLから外れた位置に設けられ、切込み10の前側端部が長手方向中心線CL上に設けられる場合や、同図7(B)に示されるように、切込み10の後側端部及び前側端部が長手方向中心線CLから外れた位置に設けられる場合を含むものである。
【0041】
前記吸収体4は、図1に示されるように、切込み10より前側に設けることが可能である。すなわち、切込み10が吸収体4に至らない範囲に設けられている。これにより、生理用ナプキン1の使用に際して、前記切込み10によって分割された左右の端部同士を重ね合わせて前記接合部11で接合した状態で、生理用ナプキン1の後端部が肌側に向けて屈曲変形しやすくなり、臀部に対するフィット性が向上する。また、切込み10が吸収体4に至らない範囲に設けられているため、切込み10が生理用ナプキン1の吸収性能に影響を与えることがなく、生理用ナプキン1の本来の吸収性能が維持できる。更に、前記切込み10の前側端部を吸収体4の後側端部の近傍に位置させた場合には、前記吸収体4の後側端縁を基端として生理用ナプキン1の後端部が肌側に向けて屈曲変形しやすくなり、より一層身体とのフィット性を向上させることができるようになる。前記切込み10の前側端部と吸収体4の後側端部との離隔距離(最短距離)は、1~5mm、好ましくは1~3mm程度とするのがよい。
【0042】
一方、前記吸収体4は、図8に示されるように、切込み10の両側部分にまで延在させてもよい。これにより、生理用ナプキン1の使用に際して、前記切込み10によって分割された左右の端部同士を重ね合わせて接合部11で接合することにより臀部の形状に沿って屈曲変形させた部分まで吸収体4が介在するようになり、生理用ナプキン1の吸収能力の向上が図れるようになる。前記吸収体4は、図8(A)に示されるように、使用者の体液排出部位を含む本体部分4Aと、前記切込み10の両側部分4Bとが連続する一体型に形成してもよいし、図8(B)に示されるように、本体部分4Aと、前記切込み10の両側部分4Bとが分離する別体で形成してもよい。別体で形成した場合には、前記本体部分4Aと前記切込み10の両側部分4Bとの間が可撓軸となって、生理用ナプキン1の後端部が肌側に屈曲変形しやすくなるため、好ましい形態である。
【0043】
前記切込み10の長さは、10~50mm、好ましくは25~30mmとするのがよい。図5に示されるように、切欠き12の後側端部の離隔幅cは、5~15mmとするのがよい。
【0044】
上記形態例では、前記切込み10は、生理用ナプキン1の後端部に1箇所のみ設けられているが、前記切込み10を生理用ナプキン1の後端部に幅方向に離間して複数箇所設けてもよい。これにより、生理用ナプキン1の使用に際して、複数の切込み10、10…のうち、任意の切込み10を所定の形状に屈曲変形させることにより、生理用ナプキン1の後端部が屈曲変形する度合いを段階的に変化させることができるようになる。この場合、使用方法によっては屈曲変形させない切込み部分もあるため、前記切込み10は、前記ミシン目13によって形成するのが好ましい。
【0045】
前記接合部11は、前記切込み10の左右両側のうち少なくとも一方側の前記不透液性裏面シート2の外面(非肌当接面)に設けられ、使用に際して、前記切込み10によって分割された左右の端部同士を重ね合わせた状態で、反対側の切込み10の端部の透液性表面シート3の外面(肌当接面)に接合されるものである。
【0046】
前記接合部11としては、上記ズレ止め粘着剤層8、9を構成する粘着剤を同様に用いることが可能である。前記接合部11は、生理用ナプキン1を使用するまでの間、上記ズレ止め粘着剤層8、9とともに剥離材によって覆われている。
【0047】
前記接合部11の平面形状は、前記切込み10によって分割された左右の端部同士を重ね合わせた状態を保持できれば、長方形、正方形、三角形、円形など適宜の形態で形成することができる。特に好ましくは、図9に示されるように、切込み10に沿って、切込み10の前側端部から後側端部に向けて徐々に幅広となる三角形状に形成するのが好ましい。これにより、切込み10の前側端部を基点として、切込み10によって分割された左右の端部同士を重ね合わせたほぼ全面に亘って接合部11によって接合されるようになり、接合強度が向上するようになるとともに、前記接合部11の大きさに合わせて左右の端部同士を重ね合わせることにより、臀部の形状にフィットさせるのに最適な角度で生理用ナプキン1の後端部を屈曲変形させることができるようになる。前記接合部11を三角形状に形成したとき、図9に示されるように、切込み10に沿う辺の長さaと、切込み10の後側端部から生理用ナプキン1の略幅方向に延びる辺の長さbとの比a/bは、1~3、好ましくは1.5~2.5とするのがよい。
【0048】
上記形態例では、前記接合部11は、前記切込み10の一方側にのみ設けられているが、前記接合部11は、前記切込み10の左右両側にそれぞれ設けてもよい。これにより、一方側の接合部11は、左右の端部同士を重ね合わせた際の接合に使用でき、他方側の接合部11は、下着に対するズレ止めとして使用することができる。また、接合部11を切込み10の左右両側に設けることにより、任意の方向に重ね合わせることができ、使用に際しての生理用ナプキン1の組立作業が簡単になる。
【0049】
図1に示されるように、前記生理用ナプキン1の装着に際して、前記切込み10によって分割された左右の端部同士を重ね合わせて前記接合部11で接合した際に、生理用ナプキン1の後端部が屈曲変形する基端に沿って、前記透液性表面シート3の肌当接面に非肌側に窪むエンボス溝14を設けるのが好ましい。これにより、前記エンボス溝14を可撓軸として、生理用ナプキン1の後端部が屈曲変形しやすくなり、より確実にフィット性を向上させることができるようになる。
【0050】
前記エンボス溝14は、生理用ナプキン1の後端部が屈曲変形する基端にほぼ沿うように形成され、切込み10の前側端部又はこれより前側を通るとともに、吸収体4の後側端縁又はその近傍を通る位置に形成されている。前記エンボス溝14は、吸収体4と切込み10との間を通る位置に形成するのが好ましいが、一部又は全部が吸収体4と重なっていても構わない。
【0051】
前記エンボス溝14は、少なくとも透液性表面シート3を肌当接面側から厚み方向に圧搾することにより形成したものである。前記エンボス溝14は、前記吸収体4が切込み10の両側部分にまで延在している場合には、前記透液性表面シート3及び吸収体4を一体的に圧搾することにより形成してもよい。
【0052】
前記エンボス溝14は、図1に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向中心線CLを境に左側領域及び右側領域のそれぞれの領域に1本ずつ設けることができる。これにより、左右のそれぞれの領域における異なる変形や動きに対応できるようになり、フィット性をより向上させることができる。左右のエンボス溝14、14同士の離隔幅は、0~10mmとするのがよい。
【0053】
前記エンボス溝14は、図10に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向中心線CLの左側領域及び右側領域に亘って連続して設けてもよい。これにより、生理用ナプキン1の後端部がより屈曲変形しやすくなるとともに、屈曲変形した状態が維持できるようになる。前記エンボス溝14は、切込み10の前側端部を通るか、これより前側に形成するのが好ましく、前記切込み10の前側端部と前記吸収体4の後側端部との間に形成するのがより好ましい。これにより、前記エンボス溝14を基端として生理用ナプキン1の後端部が屈曲変形しやすくなる。
【0054】
前記エンボス溝14は、直線、曲線、折れ線、波線など適宜の形態で形成することができる。また、連続線でもよいし、エンボス部と非エンボス部とが交互に配置された不連続線としてもよい。
【0055】
前記エンボス溝14は、図1などに示されるように、生理用ナプキン1の幅方向両端が、前記サイドシート7まで延びているのが好ましい。これにより、サイドシート7が積層された部分まで確実に屈曲変形できるようになる。
【0056】
前記エンボス溝14の溝幅は、1.0~2.0mmとするのが好ましい。溝幅が小さすぎると、生理用ナプキン1の後端部を屈曲変形させる基端となりにくく、溝幅が大きすぎると、硬くなって装着時に違和感が生じるようになる。
【0057】
図8(A)に示されるように、前記吸収体4を切込み10の両側部分にまで延在させた実施形態において、前記エンボス溝14は、前記切込み10の両側に延在させた吸収体の延在部分4Bの基端部を、生理用ナプキン1の幅方向にほぼ横断するように配置するのが好ましい。これにより、前記エンボス溝14を可撓軸として吸収体の延在部分4Bが基端部にて屈曲変形しやすくなる。
【0058】
前記切込み10に代えて前記切込み10又は切欠き12を形成するためのミシン目13を形成した生理用ナプキン1においては、激しい運動などで漏れが心配なときに使用者が使用時にミシン目13を切り離して切込み10若しくは切欠き12を形成して所定の形状に屈曲変形させて使用することができ、脚を動かす動作を殆ど行わず漏れの心配がないときにはミシン目13を切り離さずにそのままの形態で使用するという、2通りの使用方法が可能である。
【0059】
図3に示されるように、前記不透液性裏面シート2の外面に形成された本体ズレ止め粘着剤層8、8…のうち、前記切込み10と生理用ナプキン1の長手方向に重ならない位置に配置された本体ズレ止め粘着剤層8(図示例では、3本の本体ズレ止め粘着剤層8、8…のうち、両側の本体ズレ止め粘着剤層8、8)は、生理用ナプキン1の使用に際して肌側に屈曲変形させる生理用ナプキン1の後端部にまで延在して形成するのが好ましい。これにより、本体部分から肌側に屈曲変形した生理用ナプキン1の後端部にかけて連続的に下着に固定でき、臀部にフィットした状態が確実に保持できるようになる。
【0060】
前記切込み10を備えた生理用ナプキン1の製造方法は、通常の方法で生理用ナプキン1を製造した後、後端部に、ダイカッターなどの公知の切断手段を用いて切込み10を施工する。
【符号の説明】
【0061】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、7…サイド不織布、10…切込み、11…接合部、12…切欠き、13…ミシン目、14…エンボス溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10