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特許7071822電気車制御装置および電気車制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】電気車制御装置および電気車制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20220512BHJP
   B60L 15/42 20060101ALI20220512BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20220512BHJP
【FI】
B60L15/20 Y
B60L15/20 A
B60L15/42
B60L9/18 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017238040
(22)【出願日】2017-12-12
(65)【公開番号】P2019106796
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】服部 陽平
(72)【発明者】
【氏名】牧野 友由
(72)【発明者】
【氏名】結城 和明
(72)【発明者】
【氏名】尾谷 浩昭
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-164016(JP,A)
【文献】特開2000-032615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
B60L 15/42
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールを走行する電気車の車輪に空転滑走が生じたときに前記車輪を駆動する電動機のトルク電流を低減させた後再び増加させる再粘着制御を行う電気車制御装置であって、
前記電動機の回転速度を検出する速度検出部と、
前記回転速度の変化量が、前記再粘着制御の途中で再びしきい値を超えると、前記しきい値を超えた時点における前記レールに対する前記車輪の粘着度合いを示す粘着係数を算出し、算出結果に基づいて前記トルク電流を調整する調整部と、
前記調整部で調整された実トルク電流に基づいて前記電動機を駆動する駆動部と、
を備える電気車制御装置。
【請求項2】
前記調整部は、前記粘着係数に応じて、前記しきい値、前記トルク電流の低減時間、および前記トルク電流の増加率の少なくとも一つを変化させる、請求項1に記載の電気車制御装置。
【請求項3】
前記粘着係数に応じた前記しきい値、前記トルク電流の低減時間、および前記トルク電流の増加率の少なくとも一つを変化させる量は、速度に応じた係数を持たせるようにした、請求項2に記載の電気車制御装置。
【請求項4】
レールを走行する電気車の車両速度と、前記電気車の車輪に連結された電動機の回転速度との差であるクリープ量に基づいて前記電気車を制御する電気車制御装置であって、
前記クリープ量を算出するクリープ量算出部と、
前記クリープ量が許容値を超えると、前記許容値を超えた時点における前記レールに対する前記車輪の粘着度合いを示す粘着係数を算出し、算出結果に基づいて前記電動機のトルク電流を調整する調整部と、
前記調整部で調整された実トルク電流に基づいて前記電動機を駆動する駆動部と、
を備える電気車制御装置。
【請求項5】
前記調整部は、前記粘着係数に応じて、前記クリープ量を変化させる、請求項4に記載の電気車制御装置。
【請求項6】
前記調整部が前記粘着係数を算出するたびに、前記粘着係数を連続的に記憶する記憶部をさらに備える、請求項1からのいずれかに記載の電気車制御装置。
【請求項7】
前記調整部と前記記憶部との間に設けられ、前記調整部の算出データに含まれたノイズ成分を除するフィルタをさらに備える請求項に記載の電気車制御装置。
【請求項8】
レールで連結された複数の電気車に設置された、請求項1からのいずれかに記載の複数の電気車制御装置と、
前記複数の電気車制御装置と個々に通信可能な複数の制御端末と、を備え、
前記複数の制御端末の一つが、
前記複数の電気車制御装置から前記トルク電流を収集する収集部と、
前記収集部で収集された前記トルク電流に基づいて、車両ごとに前記トルク電流の配分を決定する分配部と、
を有する電気車制御システム。
【請求項9】
前記分配部は、先頭車両の前記トルク電流が他の車両の前記トルク電流よりも低くなるように配分を決定する、請求項に記載の電気車制御システム。
【請求項10】
前記分配部は、前記レールに対する前記車両全体の粘着力が最も大きくなるように前記トルク電流の配分を設定する、請求項に記載の電気車制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気車制御装置および電気車制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両では、レールに対する車輪の粘着力が低下すると、車輪が空転滑走する場合がある。車輪の空転滑走は、例えば、車輪に連結された電動機の回転速度の変化量に基づいて検出できる。この空転滑走が検出されると、電動機のトルク電流が一定時間低減される。その結果、粘着力が回復して空転状態または滑走状態が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-92954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車輪の空転滑走に関し、上述した従来の対処方法では、電動機の回転速度の異変が生じたときに電動機のトルク電流を一律に増減している。そのため、車輪の空転滑走を検知することはできるものの、空転滑走それ自体の発生を抑制する対策が不十分である。
そこで、本発明の実施形態は、車輪の空転滑走の抑制化を図ることが可能な電気車制御装置、および電気車制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、電気車制御装置は、レールを走行する電気車の車輪に空転滑走が生じたときに、車輪を駆動する電動機のトルク電流を低減させた後再び増加させる再粘着制御を行う。この電気車制御装置は、回転速度を検出する速度検出部と、変化量が、再粘着制御の途中で再びしきい値を超えると、しきい値を超えた時点におけるレールに対する車輪の粘着度合いを示す粘着係数を算出し、算出結果に基づいてトルク電流を調整する調整部と、調整部で調整された実トルク電流に基づいて電動機を駆動する駆動部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る電気車制御装置の簡略的な構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る電気車制御装置の動作手順を示すフローチャートである。
図3】速度信号とトルク電流の変化を示す図である。
図4】第2実施形態に係る電気車制御装置の簡略的な構成を示すブロック図である。
図5】第2実施形態に係る電気車制御装置の動作手順を示すフローチャートである。
図6】クリープ量およびトルク電流の変化を示す図である。
図7】第3実施形態に係る電気車制御システムの簡略的な構成を示すブロック図である。
図8】第3実施形態に係る電気車制御システムの動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電気車制御装置の簡略的な構成を示すブロック図である。図1に示す電気車制御装置1は、例えば、電動機101を駆動するVVVF(Variable Voltage Variable Frequency)インバータの中に組み込むことができる。
【0009】
電動機101は、レール121上を走行する電気車の車輪111に連結されている。なお、図1では、一台の電動機101が電気車制御装置1に連結されているが、複数台の電動機101が連結されていてもよい。
【0010】
図1に示す電気車制御装置1は、速度検出部11と、調整部12と、駆動部13と、記憶部14と、フィルタ15と、を備える。
【0011】
速度検出部11は、電動機101の回転速度を検出する。本実施形態では、速度センサ(不図示)が電動機101に設置されている。速度検出部11は、この速度センサから出力された速度信号に基づいて電動機101の回転速度を検出する。
【0012】
調整部12は、速度検出部11で検出された電動機101の回転速度の変化量を算出する。この変化量は、車輪111の空転を検知する場合に加速度に相当し、滑走を検知する場合に減速度に相当する。調整部12は、この変化量に基づいて、電動機101のトルク電流を調整する。
【0013】
駆動部13は、調整部12で調整されたトルク電流に基づいて電動機101を駆動する。駆動部13は、例えば、PWM(Pulse With Modulation)制御を用いて直流電力を交流電力に変換するインバータ回路等を有する。
【0014】
記憶部14は、調整部12の算出データ等の種々のデータを記憶する。フィルタ15は、調整部12と記憶部14との間に設けられている。フィルタ15は、例えば変化率リミッタまたは所定の時定数が設定されたフィルタ回路等で構成され、調整部12から出力された算出データに含まれたノイズ成分を除去する。
【0015】
以下、図2および図3を参照して、本実施形態に係る電気車制御装置1の動作について説明する。図2は、本実施形態に係る電気車制御装置1の動作手順を示すフローチャートである。また、図3は、速度信号とトルク電流の変化を示す図である。
【0016】
調整部12は、速度検出部11で検出された速度信号PG(図3参照)に基づいて電動機101の回転速度の変化量を算出するたびに、その変化量がしきい値を超えたか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11において、調整部12は、車輪111の空転を検知する場合には加速度を上記変化量として算出する。一方、車輪111の滑走を検知する場合には、調整部12は減速度を上記変化量として算出する。
【0017】
変化量がしきい値を超えた時点t1(図3参照)で、調整部12は、車輪111の空転または滑走が発生していると判定し、トルク電流を低減させる(ステップS12)。その後、所定の低減時間tdが経過すると(ステップS13)、調整部12は、再びトルク電流を増加させる(ステップS14)。
【0018】
上記のような再粘着制御を行っている途中で、変化量が再びしきい値を超えると(ステップS15)、調整部12は、その時点t2(図3参照)における粘着係数を算出する(ステップS16)。ここで、粘着係数について説明する。
【0019】
粘着係数は、レール121に対する車輪111の粘着度合いを示すものである。本実施形態では、調整部12は、変化量が最初にしきい値を超えた時点t1におけるトルク電流値Iq1と変化量が再びしきい値を超えた時点t2におけるトルク電流値Iq2との割合(Iq1/Iq2)を粘着係数として算出する。この粘着係数は、車輪111の粘着限界に相当する。
【0020】
粘着係数が調整部12により算出されるたびに、粘着係数はフィルタ15を介して記憶部14に連続的に記憶される(ステップS17)。本実施形態では、フィルタ15によってノイズ成分が除去されるので、粘着係数データを高精度に記憶部14に記憶することができる。
【0021】
その後、調整部12は、記憶部14のデータを学習して、実トルク電流を調整する(ステップS18)。例えば、空転滑走が発生しやすい雨天時等の場合、調整部12は、上記しきい値を晴天時よりも低い値に設定する。また、ステップS18では、調整部12は、記憶部14に記憶された粘着係数に応じて、図3に示す低減時間tdまたはトルク電流の増加率(傾き)kを変化させてもよい。さらに、調整部12は、速度に応じて、しきい値、低減時間およびトルク電流の増加率を変化させてもよい。粘着力は、速度が高いほど悪化する傾向を示すため、速度に応じた係数を掛けて補正を行うことにより、より空転滑走を抑制することが可能となる。
【0022】
以上説明した本実施形態によれば、電動機101の回転状態の異変が再び起こったときに調整部12が粘着係数を算出することによって、車輪111の粘着限界を把握することができる。また、この粘着係数に基づいて電動機101の実トルク電流が調整される。これにより、車輪111の実際の粘着特性に応じて当該車輪111を駆動する電動機101の駆動条件が調整される。よって、車輪111の空転滑走の抑制化を図ることができる。
【0023】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る電気車制御装置の簡略的な構成を示すブロック図である。図4では、上述した第1実施形態に係る電気車制御装置1と同様の構成要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。本実施形態に係る電気車制御装置2は、速度検出部11ではなくクリープ量算出部21を備えている点で、図1に示す電気車制御装置1と異なる。
【0024】
クリープ量算出部21で算出されるクリープ量は、レール121上を走行する電気車の車両速度と、電気車の車輪に連結された電動機101の回転速度との速度差である。上記車両速度は、複数の車輪111のうち、速度の基準となる車輪の回転軸の軸速度に相当する。クリープ量は、換言すると、レール121上における車輪111のすべり量である。
【0025】
以下、図5および図6を参照して、本実施形態に係る電気車制御装置2の動作について説明する。図5は、本実施形態に係る電気車制御装置2の動作手順を示すフローチャートである。また、図6は、クリープ量およびトルク電流の変化を示す図である。
【0026】
クリープ量算出部21が、クリープ量を算出するたびに、調整部12は、そのクリープ量が許容値を超えたか否かを判定する(ステップS21)。車輪111の空転または滑走が発生すると、図6に示すように、その車輪111に連結された電動機101の回転速度Vcと、車両速度Vrefとの差、すなわちクリープ量Crが大きくなる。
【0027】
そこで、クリープ量Crが許容値を超えた時点t3で、調整部12は、車輪111の空転または滑走が発生していると判定し、トルク電流を低減させる(ステップS22)。
【0028】
続いて、調整部12は、上記時点t3における粘着係数を算出する(ステップS23)。本実施形態では、調整部12は、車両速度Vrefに対応する基準トルク電流Iqref(図6参照)と、低減後のトルク電流Iq3(図6参照)との差を粘着係数として算出する。
【0029】
粘着係数が調整部12により算出されるたびに、第1実施形態と同様に、粘着係数はフィルタ15を介して記憶部14に連続的に記憶される(ステップS24)。その後、調整部12は、記憶部14のデータを学習して、実トルク電流を調整する(ステップS25)。例えば、空転滑走が発生しやすい雨天時等の場合、調整部12は、クリープ量Crが晴天時よりも低くなるようにトルク電流を調整する。さらに、調整部12は、速度に応じて、クリープ量を変化させてもよい。粘着力は、速度が高いほど悪化する傾向を示すため、速度に応じた係数を掛けて補正を行うことにより、より空転滑走を抑制することが可能となる。
【0030】
以上説明した本実施形態によれば、クリープ量Crの異変時に調整部12が粘着係数を算出することによって、車輪111の粘着限界を把握することができる。また、この粘着係数に基づいて電動機101の実トルク電流が調整される。そのため、第1実施形態と同様に、車輪111の空転滑走の抑制化を図ることができる。
【0031】
なお、本実施形態では、第1実施形態で説明したトルク電流制御を併用してもよい。すなわち、調整部12は、電動機101の回転速度の変化量の異変時およびクリープ量Crの異変時における粘着係数を算出し、その粘着係数に基づいて実トルク電流を調整してもよい。この場合、空転滑走をより一層抑制することができる。
【0032】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態に係る電気車制御システムの簡略的な構成を示すブロック図である。本実施形態に係る電気車制御システム3は、複数の電気車制御装置30と、複数の制御端末40a~40nと、を備える。
【0033】
各電気車制御装置30は、第1実施形態で説明した電気車制御装置1または第2実施形態で説明した電気車制御装置2に相当する。各電気車制御装置30は、複数の制御端末40a~40nと個々に通信可能である。また、制御端末40a~40n同士も通信可能である。電気車制御装置30および制御端末40a~40nは、レール121上で連結された複数の電気車にそれぞれ1台ずつ設置される。本実施形態では、制御端末40aが先頭車両に設置されている。
【0034】
制御端末40aは、図7に示すように、収集部41および分配部42を有する。収集部41はトルク電流を収集する。このトルク電流は、粘着係数に基づいて各電気車制御装置30の調整部12で最適化されたものである。換言すると、収集部41に収集されたトルク電流は、車両単位で最適化されたものである。
【0035】
分配部42は、収集部41に収集されたトルク電流および電気車の車両位置に基づいて、複数の電気車制御装置30へのトルク電流の配分を決定する。
【0036】
なお、本実施形態では、収集部41および分配部42は、先頭車両に設置された制御端末40aに設けられているが、これらは制御端末40aの代わりに制御端末40b、40nに設けられていてもよい。
【0037】
以下、図8を参照して、本実施形態に係る電気車制御システム3の動作について説明する。図8は、本実施形態に係る電気車制御システム3の動作手順を示すフローチャートである。
【0038】
まず、制御端末40aの収集部41が、トルク電流を収集する(ステップS31)。ステップS31では、制御端末40b、40nに接続された電気車制御装置30のトルク電流データは、各制御端末を介して制御端末40aに収集される。収集されたトルク電流データは、分配部42に入力される。
【0039】
次に、分配部42は、トルク電流の配分を決定する(ステップS32)。一般的に先頭車両の粘着力は、他の車両の粘着力よりも低い傾向にある。すなわち、先頭車両では空転滑走が起こりやすい。そこで、分配部42は、例えば、先頭車両のトルク電流が他の車両のトルク電流よりも低くなるように配分を決定する。
【0040】
なお、ステップS32では、分配部42は、トルク電流データの収集やトルク電流の配分の繰り返しによって、トルク電流をどの程度低減すると車両編成全体で最大の粘着力を得られるか、その重み付けを学習することが望ましい。例えば、分配部42は、最大の粘着力が得られるようにするために、予め設定された基準となるトルク電流に係数(重み付け)を変えることによって、空転滑走が起こりにくい最適なトルク電流の配分を見出してもよい。
【0041】
さらに、ステップS32では、分配部42は、先頭車両だけでなく残りの車両についてもどのようなトルク電流の配分にすれば最大の粘着力が得られるか学習することが望ましい。この場合も、分配部42は、車両ごとに上記係数を変えることによって、最適なトルク電流の配分を見出す。
【0042】
その後、分配部42は、各電気車制御装置30へ配分に応じたトルク電流を通知する(ステップS33)。このとき、制御端末40b、40nに接続された電気車制御装置30に対し、トルク電流は、各制御端末を介して通知される。各電気車制御装置30は、通知されたトルク電流に基づいて電動機101を駆動する。
【0043】
以上説明した本実施形態によれば、分配部42によって、トルク電流の配分が、各車両の粘着特性に応じて決定される。そのため、車両編成全体として空転滑走の抑制化を図ることが可能となる。
【0044】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
1、2、30 電気車制御装置、3 電気車制御システム、11 速度検出部、12 調整部、13 駆動部、14 記憶部、15 フィルタ、21 クリープ量算出部、40a~40n 制御端末、41 収集部、42 分配部、101 電動機、111車輪、121 レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8